特許第6073408号(P6073408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073408ロボット装置のための高速調整液圧供給装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073408
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ロボット装置のための高速調整液圧供給装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 13/00 20060101AFI20170123BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20170123BHJP
   B25J 11/00 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
   F04B13/00 F
   F15B11/028 A
   !B25J11/00 Z
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-94933(P2015-94933)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-212580(P2015-212580A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】61/989,517
(32)【優先日】2014年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/704,960
(32)【優先日】2015年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515059108
【氏名又は名称】サルコス・エルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレーザー・エム・スミス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エックス・オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】シェーン・オルセン
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−200600(JP,U)
【文献】 特開平06−213266(JP,A)
【文献】 特開昭50−009803(JP,A)
【文献】 実開平07−044791(JP,U)
【文献】 特公昭50−006043(JP,B1)
【文献】 実公昭34−015764(JP,Y1)
【文献】 特公昭36−005228(JP,B1)
【文献】 特公昭44−000603(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 13/00
F15B 11/00−11/22
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を受け入れるためのチャンバと、
前記流体を前記チャンバから移動させるように動作可能な変位部材と、
前記チャンバから吐出された前記流体の流量を変えるように動作可能な流量調整システムと、を備え、
第一の流量は、第一の吐出圧力に対応し、前記変位部材の類似の動きに対する第二の吐出圧力に対応した第二の流量とは異なっており、
前記流量調整システムは、
前記チャンバ内に配置され且つ前記変位部材に対向した可動ヘッドと、
くさび形状を備えて、前記可動ヘッドの前記チャンバ内での作動範囲を、第一の作動範囲と第二の作動範囲との間に制限した可動止め部材と、を具備し、
前記第一の作動範囲は、前記変位部材の移動が前記第一の流量を供給するように前記可動ヘッドとともに動作可能であるような範囲であり、前記第二の作動範囲は、前記変位部材の移動が前記第一の流量より少ない前記第二の流量を供給するように、前記可動ヘッドとともに動作可能であるような範囲であり、
前記可動止め部材は、第一の位置において前記第一の作動範囲を提供し、および第二の位置において前記第二の作動範囲を提供するように、前記可動ヘッドとともに動作可能である、高速調整液圧供給装置。
【請求項2】
前記チャンバがシリンダを備え、前記変位部材が、前記シリンダ内に配置され且つ前記シリンダの中で往復運動をするように構成されるピストンを備えている、請求項1に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項3】
前記流量調整システムが、
互いに相対的に動くことができる、前記ピストンの第一の部分および第二の部分と、
前記ピストンの前記第一の部分と前記第二の部分とを互いに連結すること、および前記第一の部分と前記第二の部分の連結を外すことを選択的に行うように構成された連結機構と、を備え、
前記ピストンの前記第一の部分と前記第二の部分とが互いに連結されると、前記ピストンの前記第一の部分と前記第二の部分の往復運動は前記第一の流量を供給し、
前記ピストンの前記第一の部分と前記第二の部分との互いの連結が外されると、前記ピストンの前記第一の部分の往復運動は前記第一の流量よりも少ない前記第二の流量を供給する、
請求項2に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項4】
前記ピストンの前記第二の部分が、前記ピストンの前記第一の部分の周りにスリーブを形成している、請求項3に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項5】
前記連結機構がピンおよびアクチュエータを備えている、請求項3に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項6】
前記アクチュエータが、ソレノイド、電気モータ、空気圧アクチュエータ、液圧アクチュエータ、またはそれらの組合せを備えている、請求項5に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項7】
前記流量調整システムが、
前記チャンバと流体リザーバとの間に、選択的に開閉するように構成された弁を備え、
前記弁が開いている場合、前記変位部材の往復運動が流体を前記流体リザーバから前記チャンバ内へ引き入れて、前記第一の流量を供給し、
前記弁が閉じている場合、前記変位部材の往復運動が流体を前記チャンバから実質的に吐出させず、その結果、前記弁を選択的に開閉することによって前記第二の流量を供給する、
請求項1に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項8】
前記チャンバがシリンダを備え、前記変位部材が、前記シリンダ内に配置され且つ前記シリンダの中で往復運動をするように構成されたピストンを備えている、請求項7に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項9】
前記弁が一方向弁を備えている、請求項7に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項10】
前記弁が、ソレノイド、電気モータ、空気圧アクチュエータ、液圧アクチュエータ、またはそれらの組合せによって作動されている、請求項7に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項11】
前記流量調整システムが、
前記チャンバと流体リザーバとの間に、選択的に開閉するように構成された弁と、
前記チャンバと流体リザーバとの間に、前記弁と並列な逆止弁と、を備え、
前記弁が閉じている場合、前記変位部材の往復運動は流体を前記流体リザーバから前記逆止弁を経由して前記チャンバ内へ引き入れて、前記第一の流量を供給し、
前記弁が開いている場合、前記変位部材の往復運動は流体を前記チャンバから実質的に吐出させず、その結果、前記弁を選択的に開閉することによって前記第二の流量を供給する、
請求項1に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項12】
前記チャンバがシリンダを備え、前記変位部材が、前記シリンダ内に配置され且つ前記シリンダの中で往復運動をするように構成されたピストンを備えている、請求項11に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項13】
前記弁が、ソレノイド、電気モータ、空気圧アクチュエータ、液圧アクチュエータ、またはそれらの組合せによって作動されている、請求項11に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項14】
前記可動ヘッドが前記変位部材に向かって付勢されている、請求項に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項15】
前記可動ヘッドを前記変位部材に向かって付勢するばねをさらに備えている、請求項に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項16】
前記第一の作動範囲がゼロである、請求項に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項17】
前記止め部材が、ソレノイド、電気モータ、空気圧アクチュエータ、液圧アクチュエータ、またはそれらの組合せによって作動されている、請求項に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項18】
前記流量調整システムが、
前記チャンバと流体リザーバとの間の入口弁と、
前記入口弁の作動範囲を第一の作動範囲と第二の作動範囲との間に制限した作動範囲制限機構と、を備え、
前記第一の作動範囲は前記入口弁の閉止を容易にして、前記変位部材の移動が前記第一の流量を供給するように動作可能としており、
前記第二の作動範囲は前記入口弁の閉止を容易にして、前記変位部材の移動が前記第一の流量より少ない前記第二の流量を供給するように動作可能としている、
請求項1に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項19】
前記作動範囲制限機構が前記入口弁とともに動作可能な可動止め部材を備え、第一の位置において前記第一の作動範囲を提供し、および第二の位置において前記第二の作動範囲を提供している、請求項18に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項20】
前記止め部材がくさび形状を備えている、請求項19に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項21】
前記止め部材が、ソレノイド、電気モータ、空気圧アクチュエータ、液圧アクチュエータ、またはそれらの組合せによって作動されている、請求項19に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項22】
前記第二の流量がゼロである、請求項1に記載の高速調整液圧供給装置。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の高速調整液圧供給装置の圧力および流量を容易に調整して、アクチュエータの現在の要求を追随する方法であって、
流体を受け入れるためのチャンバを提供するステップと、
前記流体を前記チャンバから移動させるように動作可能な変位部材を提供するステップと、
前記チャンバから吐出される前記流体を容易に可変流量にするステップであって、第一の流量が、第一の吐出圧力に対応し、前記変位部材の類似の動きに対する第二の吐出圧力に対応した第二の流量とは異なっている、前記流体を容易に可変流量にするステップと、
を含んでいる方法。
【請求項24】
前記チャンバがシリンダを備え、前記変位部材が、前記シリンダ内に配置され且つ前記シリンダの中で往復運動をするように構成されるピストンを備える、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2014年5月6日に出願した米国仮出願第61/989517号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
多種多様な外骨格型、人型、および他の脚型ロボットシステムがある。このようなシステムで解決すべき基本的な技術的問題はエネルギー自律性に関するもので、それは動力である。二つの選択肢を取ることができる。すなわちロボットシステムの要求に合致することができる高出力の動力供給装置を用いるか、またはより小さい動力を用いるか、である。持ち運び可能な動力はまだ課題があるので、第一の選択肢は実用性に欠けており、第二の選択肢が残る。したがって、現存の外骨格型ロボットまたは歩行型ロボットは、長時間強力な出力を提供することができない。言い換えれば、動力の問題は困難な障害となっており、典型的な解決策は、システムが出せる力を下げることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、典型的なロボットシステムの液圧供給装置の効率を改善する新しいロボットシステムのための高速調整液圧供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴と利点は、本発明の特徴を例によって示す添付図面と併せ読むことにより、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の例によるロボット装置の図である。
図2】本開示の例による、図1のロボット装置のための動力システムの概略図である。
図3】本開示の例による、図2の動力システムの液圧システムの概略図である。
図4A】本開示の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図4B】本開示の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図4C】本開示の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図4D】本開示の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図5A】本開示の別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図5B】本開示の別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図5C】本開示の別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図5D】本開示の別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図6A】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図6B】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図6C】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図6D】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図7A】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図7B】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図7C】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図7D】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
図8】本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
次に、図示する例示的な実施形態を参照し、特定の用語を本明細書では使用してそれらを説明する。それでもやはり、本発明の範囲をそれによって限定するものではないことが理解されよう。
【0007】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、作用、特徴、性質、状態、構造、項目、または結果が、完全なまたはほとんど完全な範囲または程度であることを指す。例えば、「実質的に」取り囲まれた物体とは、その物体が完全に取り囲まれているか、またはほとんど完全に取り囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱が許容できる正確な程度は、いくつかの場合では特定の文脈に依存する場合がある。しかし、一般的に言えば、完全さに近いとは、あたかも絶対的かつ全体的な完全さが得られたのとの同様の総合的な結果を有するようなものであろう。「実質的に」の使用は、作用、特徴、性質、状態、構造、項目、または結果の完全なまたはほぼ完全な欠如を指すような否定的な意味において用いられる場合にも、同様に適用可能である。
【0008】
本明細書で使用される場合、「隣接する」は、二つの構造物または要素の近接を指す。特に、「隣接する」と同定される要素は、当接する、または結合されるという場合がある。そのような要素は、必ずしも互いに接触せずに、互いに近い、または接近している場合がある。正確な近接の度合は、いくつかの場合では特定の文脈に依存する場合がある。
【0009】
はじめに技術実施形態の概要を下記で説明し、次いで、その後に特定の技術実施形態をさらに詳細に説明する。はじめに説明するこの概要は、読者が技術をより速く理解するのを助けることを意図するが、本技術の主な特徴または本質的な特徴を同定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0010】
外骨格型、人型、および他の脚型ロボットシステムの出力性能および耐久性能を、利用可能な限られた動力で改善するために、このようなシステムの効率を、改善の中心とすることができる。例えば、ロボット装置に動力を与える典型的な液圧システムでは、液圧アクチュエータを使用するために3000psi(20.7MPa)以上の高圧が保たれる。使用中に必要な実際の圧力の大部分は、連続して与えられる圧力よりかなり低いため、ほとんどの時間、動力は無駄になっている。それでもなお、この高い圧力レベルは、このような動力が必要とされるまたは望まれるような状況のために、維持され、利用できるようになっている。しかし、この圧力はエネルギーを無駄にするだけでなく、圧力を所望のレベルまで落とすことによって熱が生じることは、熱発生プロセスでもある浪費プロセスであり、これは、効率を大きく下げることになるさらなる問題を起こす。
【0011】
したがって、典型的なロボットシステムの液圧供給装置の効率を改善する新しいロボットシステムのための高速調整液圧供給装置が開示される。一つの態様では、流量を可変にして、ロボットシステムの瞬間的な要求に合致するのに適する圧力および流れを発生させる。高速調整液圧供給装置は、流体を受け入れるためのチャンバを含むことができる。高速調整液圧供給装置はまた、流体をチャンバから移動させるように動作可能な変位部材を含むことができる。加えて、高速調整液圧供給装置は、チャンバから吐出される流体の流量を変えるように動作可能な流量調整システムを含むことができる。第一の流量は、第一の吐出圧力に対応し、変位部材の類似または同様の動きに対する第二の吐出圧力に対応する第二の流量とは異なる。
【0012】
ロボット装置100の例が図1に示される。ロボット装置100は、人体への取付け用の外骨格構造として、または人型ロボットとして構成することができ、軍事、緊急対応要員、商業部門などに関係する用途に使用することができる。ロボット装置100は一緒に連結された支持部材を含んで、人の四肢の自由度に対応することができる自由度で決められた相対的な動きをすることができる。
【0013】
人間の使用者または操作者は、自分自身の足をロボット装置100の足部分に入れることで、足が対応する力センサに接触可能となることにより、ロボット装置100を使用、またはロボット装置100と相互作用することができる。人間の操作者の部分もまた、ロボット装置100の様々な場所に配置された力センサと接触することができる。例えば、ロボット装置100の股関節部または肩部は、操作者の股関節または肩とそれぞれ相互作用するように構成される力センサを有することができる。操作者は、腰ひも、肩ひも、または他の適切な結合装置によって、ロボット装置100に結合することができる。操作者はさらに、足ひもおよび/または操作者が握るハンドルによって、ロボット装置100に結合することができる。一つの態様では、力センサは、操作者の膝または肘のそれぞれの近くの脚型ロボット装置100の膝部または肘部の近傍に配置することができる。脚型ロボット装置100上の、または近傍の特定の場所に配置された力センサを言及したが、力センサは、ロボット装置100が正しく作動しやすくするために、ロボット装置100上の、または近傍の多くの場所に、方策をもって配置することができることを理解すべきである。
【0014】
図2はロボット装置100のための動力システム101の概略図である。動力システム101は、例えば電気モータ、内燃機関であり得る原動機111のためにエネルギーを供給する電池、タービン発電機、化石燃料、その他のエネルギー源110を含むことができる。原動機111は、機械的および/電気的に高速調整液圧供給装置112に接続することができ、高速調整液圧供給装置112は液圧ポンプとして働いて、ロボット装置100の一つまたは複数の自由度を作動させるために使われる液圧アクチュエータ113a〜cに加圧流体を供給する。一つの態様では、高速調整液圧供給装置112は流体通路114を経由してアクチュエータ113a〜cに流体的に接続することができる。したがって、単一の高速調整液圧供給装置112は、ロボット装置100の自由度を作動させるために、任意の数のアクチュエータ、またはアクチュエータの組合せに流体を供給することができる。例えば、単一の高速調整液圧供給装置112は、ロボット装置の脚または腕、ロボット装置100の側(すなわち、右または左)、あるいはロボット装置100の四肢の一つのグループ(すなわち、両脚または両腕)のすべてのアクチュエータに加圧流体を供給するように構成することができる。下記でより詳しく論じるように、制御システム115は、ロボット装置100を効率的に作動させやすくすることなどのために、ロボット装置100の近傍に配置された様々なセンサからの入力に少なくとも部分的に基づいて、原動機111、高速調整液圧供給装置112、および/またはアクチュエータ113a〜cの作動を制御するように構成することができる。例えば、可変液圧は、無駄を最小限にして実行効率を改善するために利用することができる。一つの態様では、高速調整液圧供給装置112は、供給圧力を動的に変えることができ、したがって、任意の所与の時点で必要な液圧システムの圧力だけを供給する。そうでなければ、典型的なロボットシステムの場合のように、エネルギーが無駄になり、熱が発生する。例えば、図1のロボット装置100の場合、高速調整液圧供給装置112は動的に圧力を変えて、二本のロボットの脚を作動させるのに必要な液圧を供給することができる。このようなロボット装置100のロボットの典型的な作動において、アクチュエータが必要とする圧力は時間とともに変わる。
言い換えれば、ロボット装置100は異なる動きおよび仕事を行うので、時間の関数としての圧力である「圧力プロファイル」は変動する。例えば、歩行動作では、揺動動作(このときは圧力は低い)の後に、脚が地面に接触するときに高い圧力が供給される。動的に圧力を変えて、実質的に圧力プロファイルに合わせて歩行動作中に必要な圧力を供給することによって、無駄の量を削減することができる。ロボット装置100の動作に応じて異なる圧力プロファイルがあるが、動力システム101は、これらの動作に対応して異なる動作状態または条件にわたって圧力を動的に変えるように構成することができる。したがって、動力システム101の一つの有利な点は、ロボット装置100を作動させるのに必要な圧力の低下である。
【0015】
液圧システムの圧力を動的に変える一つの例示的な方法は、高速調整液圧供給装置112が、各脚の所要動力を削減するように両脚を作動させるように、動力システム101を構成することである。動力システム101の別の構成例は、二つの高速調整液圧供給装置112を含み、脚ごとに一つの高速調整液圧供給装置112を利用する。この場合、各脚の圧力プロファイルに時間と共に連続的に従うことができる。これを行うと、脚ごとをベースにして最適化することができるので、単一の可変液圧供給装置のみを備える前者の例よりもさらに所要動力を低減することができる。
【0016】
図3は動力システム101の液圧システム102の概略図である。液圧システム102は、高速調整液圧供給装置112、およびロボット装置100の自由度を作動させるためのアクチュエータ113のうちの一つを含むことができ、アクチュエータは、流体通路114または他の適切な液圧ラインを経由して高速調整液圧供給装置112に接続される。アクチュエータ113からの流体はリザーバ116に戻ることができ、流体はリザーバ116から高速調整液圧供給装置112へ供給することができる。一般に、液圧供給装置112の出口および入口に接続される逆止弁117a、117bによって、それぞれ液圧供給装置112への、および液圧供給装置112からの流体の流量を確実に適切にすることができる。液圧システム102はまた、アキュムレータ118を含んで、流体通路114または流体供給ライン内の圧力変動を抑えて(すなわち、エネルギーを蓄えて動力の急変に対応する)、流れをスムーズにすることができる。高速調整液圧供給装置112からの流出流を制御することによって、アキュムレータ118に蓄えられる流体の量、およびその結果としてシステム液圧は、動的に変えることができる。
【0017】
高速調整液圧供給装置112は、リザーバ116からの流体を受け入れるチャンバ120を含むことができる。液圧供給装置112はまた、流体をチャンバ120から移動させるように動作可能な変位部材121を含むことができる。加えて、液圧供給装置112は、液圧供給装置112から吐出される流体の流量を変えるように動作可能な流量調整システム122を含むことができる。様々な流量調整システムを下記で説明する。一つの態様では、第一の流量は、第一の吐出圧力に対応し、変位部材121の同様または類似の動きに対する第二の吐出圧力に対応する第二の流量とは異なる。言い換えれば、例えば、変位部材がピストンを備える実施形態では、変位部材121は、液圧供給装置112の作動中を通して一貫した行程長さで動くことができ、液圧供給装置112によって供給される流量は、流量調整システム122により変えることができる。一つの態様では、変位部材121がチャンバ120内で一周期を動く速度は実質的に一定に維持することができ、流量調整システム122が流量を変えることができる。言い換えれば、流量調整システム122は変位部材121の動きまたは動作とは独立に液圧供給装置112の流量を効果的に調整することができる。一つの態様では、原動機111はほぼ一定の速度および平均動力入力で作動することができ、それによって、原動機111および/または液圧供給装置112の加速および減速に関係する慣性力に関する損失は大きく除かれる。別の態様では、液圧供給装置112の吐出圧力は、液圧供給装置112からの流量を調整すること、およびその結果としてアキュムレータ118の充填レベルによって制御することができる。
【0018】
図4A図4Dは本開示の例による高速調整液圧供給装置212を示す。入口および出口ライン、逆止弁などの作動流体の配管および弁の機構または構成部品は、説明を明瞭にするために省略されている。液圧供給装置212は、チャンバ220、変位部材221、および流量調整システム222を含む。この場合、チャンバ220はシリンダを備えることができ、変位部材221は、シリンダ内に配置されシリンダの中で往復運動または周期運動をするように構成されるピストンを備えることができる。一つの態様では、変位部材221は連接棒231を介してクランク軸230に連結しており、変位部材221は、クランク軸が方向232の方に回転するとき、連接棒231によってチャンバ220内を動くことができる。フライホイール233は、クランク軸230に付随して、過渡動作のためにエネルギーを貯蔵することができる。
【0019】
流量調整システム222は、ピストンの第一の部分240およびピストンの第二の部分241を含むことができ、これらは互いに相対的に動くことができる。一つの態様では、ピストンの第二の部分241は、ピストンの第一の部分240の少なくとも一部分の周りにスリーブを形成することができる。流量調整システム222はまた、連結機構242を含むことができ、これは、ピストンの第一の部分240と第二の部分241を互いに連結することと、それらが互いに連結しているのを外すこととを選択的に行うように構成されるピン243を含むことができる。一つの態様では、連結機構242はアクチュエータ244(例えば、ソレノイド、電気モータ、空気圧アクチュエータ、および/または液圧アクチュエータ)を含むことができ、これによって、ピン243はピストンの第一の部分240と第二の部分241を連結させたり、またそれらが連結しているのを外したりする。例えば、アクチュエータ244は、ピン243を方向245の方へ動かせて(図4A)、ピストンの第一の部分240と第二の部分241を互いに連結することができ、またアクチュエータ244は、ピン243を方向246の方へ動かして(図4C)、ピストンの第一の部分240と第二の部分241が互いに連結しているのを外すことができる。このようにして、ピストンは可変ピストン面積を有すること、すなわち押し退け量を可変にすることができ、したがって、液圧供給装置212に可変の幾何形状をもたらす。一つの態様では、図4Aおよび図4Cに示すように、ピストンの第一の部分240と第二の部分241は、下死点で連結する、また連結を外すことができ、この位置では、可動ピストン部分240、241の速度はゼロかほぼゼロであり、ピストン部分240、241にかかる負荷は最小限である。
【0020】
したがって、ピストンの第一の部分240と第二の部分241が互いに連結されると、クランク軸からの力がピン243を介して第一の部分240と第二の部分241との両方へ伝えられるので、両方の部分は一緒に動かされる(図4B)。その結果、ピストンの第一の部分240と第二の部分241の往復運動は、液圧供給装置212から第一の流量を供給する。ピストンの第一の部分240と第二の部分241が互いに連結しているのを外されると(図4D)、クランク軸から第二の部分241へ力が伝えられないので、第一の部分240は第二の部分とは独立に動く。この場合、第二の部分241は静止状態で保持され、ピストンの第一の部分240の往復運動は、液圧供給装置212から第二の流量を供給する。ピストンの第一の部分240だけでポンピングする押し退け量は比較的少ないため、第二の流量は第一の流量より少ない。動作中、アクチュエータ244は、ピン243を高速に挿入する、また抜き出すように制御されて、ピストンの任意の所与のサイクルで第一の部分240と第二の部分241を連結する、またそれらが連結しているのを外して、所望通りに流量を変えることができる。一つの態様では、アクチュエータ244を作動させるのに必要な動力は小さくすることができ、それによって、液圧供給装置212によって供給される流量を調整するのに必要な動力は最小限になる。
【0021】
図5A図5Dは本開示の別の例による高速調整液圧供給装置312を示す。入口および出口ライン、逆止弁などの作動流体の本質的でない配管および弁の機構または構成部品は、説明を明瞭にするために省略されている。液圧供給装置312はチャンバ320、変位部材321、および流量調整システム322を含む。一つの態様では、チャンバ320はシリンダを備えることができ、変位部材321は、シリンダ内に配置されシリンダの中で往復運動または周期運動をするように構成されるピストンを備えることができる。
【0022】
流量調整システム322は、チャンバ320と流体リザーバ316との間に、選択的に開閉するように構成される弁350を含むことができ、弁350は大流量弁とすることができる。アクチュエータ344は弁350を開閉させるために含むことができる。一つの態様では、アクチュエータ344はソレノイドを備えることができる。弁350が開いて流体がその中を通って流れることができる場合(図5Aおよび図5B)、変位部材321の往復運動は、流体を流体リザーバ316からチャンバ320内へ引き入れ、液圧供給装置312から第一の流量を供給し、したがって、液圧供給装置312は流体をポンピングしている。弁350が閉じて流体がその中を通って流れるのが妨げられている場合(図5Cおよび図5D)、変位部材321の往復運動は流体をチャンバ320から実質的に吐出さず、したがって、液圧供給装置312は流体をポンピングしていない。液圧供給装置312が流体をポンピングしていないとき、原動機は低い動力で動作することができ、したがって、動力が節約される。一つの態様では、変位部材321が、図5Aおよび図5Cに示すように下死点にあるとき、弁350は開閉することができ、この位置では、変位部材321の速度はゼロかほぼゼロであり、変位部材321にかかる負荷は最小限である。
【0023】
一つの態様では、弁350は、一方向弁または逆止弁を備えて、ポンピング時に流体が変位部材321によって押し出されてリザーバ316へ戻るのを妨げることができる。その代わりに、逆止弁をチャンバ320と弁350との間の352に配置して、ポンピング時に流体が変位部材321によって押し出されてリザーバ316へ戻るのを妨げることができる。
【0024】
代替の実施形態では、逆止弁353を、リザーバ316とチャンバ320を接続する流体導管354に含めることができ、その結果、逆止弁353は、リザーバ316とチャンバ320との間で弁350と平行になっている。この構成では、弁350が閉じて流体がその中を通って流れるのが妨げられた場合(図5Cおよび図5D)、変位部材321の往復運動は流体を流体リザーバ316から流体導管354および逆止弁353を経由してチャンバ320内へ引き入れ、液圧供給装置312から第一の流量を供給する。したがって、液圧供給装置312は流体をポンピングしている。弁350が開いて流体がその中を通って流れることができる場合(図5Aおよび図5B)、変位部材321の往復運動は流体をチャンバ320内へ引き入れ、そしてチャンバ320から弁350を経由して流体を押し出し、その結果、変位部材321はチャンバ320から流体を実質的に吐出させない。したがって、液圧供給装置312は流体をポンピングしていない。
【0025】
動作中、アクチュエータ344は、弁350を高速に開閉するように制御されて、変位部材321の任意の所与のサイクルでポンピングを可能にして、または妨げて、所望通りに流量を変えることができる。したがって、弁350を選択的に開閉することによって、第二の流量を液圧供給装置312によって供給することができる。一つの態様では、アクチュエータ344を作動させるのに必要な動力は小さくすることができ、それによって、液圧供給装置312によって供給される流量を調整するのに必要な動力は最小限になる。
【0026】
図6A図6Dは本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置412を示す。入口および出口ライン、逆止弁などの作動流体の配管および弁の機構または構成部品は、説明を明瞭にするために省略されている。液圧供給装置412は、チャンバ420、変位部材421、および流量調整システム422を含む。一つの態様では、チャンバ420はシリンダを備えることができ、変位部材421は、シリンダ内に配置されシリンダの中で往復運動または周期運動をするように構成されるピストンを備えることができる。
【0027】
流量調整システム422は、チャンバ420内に配置され変位部材421に対向する可動ヘッド460を含むことができる。可動ヘッド460は、チャンバ420内で変位部材421の移動方向と平行な方向464の方へ移動可能とすることができる。流量調整システム422はまた、作動範囲制限機構461を含んで、可動ヘッド460のチャンバ420内での作動範囲を第一の作動範囲と第二の作動範囲との間に制限することができる。一つの態様では、作動範囲制限機構461は、可動止め部材462を備えることができる。下記でより詳細に説明するように、可動止め部材462を動かすためにアクチュエータ444を含むことができる。一つの態様では、アクチュエータ444はソレノイドを備えることができる。
【0028】
可動止め部材462は可動ヘッド460とともに動作可能とされ、第一の位置(例えば、図6Aおよび図6B)において第一の作動範囲を提供し、および第二の位置(例えば、図6Cおよび図6D)において第二の作動範囲を提供することができる。例えば、可動止め部材462は、可動ヘッド460に対して、可動ヘッド460の方向464に垂直な方向465などに移動可能とすることができる。可動止め部材462は、可動ヘッド460またはそれから延在する構成部品と接して可動ヘッド460を止めるように構成することができ、これによって、可動ヘッド460の作動範囲を確定または画定することができる。可動止め部材462は、図示のようなくさび形状、または任意の他の適切な形状とすることができる。一つの態様では、可動ヘッド460の作動範囲は、可動止め部材462と可動ヘッド460の相対位置(すなわち横方向位置)に基づいて変わることができる。
【0029】
例えば、可動止め部材462が、くさび形状の広い部分が可動ヘッド460と係合する図6Aおよび図6Bに示す位置にあるとき、可動ヘッド460が移動することを妨げることができる。この場合、可動ヘッドの第一の作動範囲はゼロである。可動ヘッド460がチャンバ420に対して固定されている状態では、変位部材421のチャンバ420内での往復運動は、液圧供給装置412から流体を効果的にポンピングすることができる。言い換えれば、可動止め部材462のくさび形状が完全に挿入されたこの構成では、液圧供給装置412は、大きな吐出量を供給するように機能することができる。したがって、第一の作動範囲とは、変位部材421の移動が、液圧供給装置412から第一の流量を供給するように可動ヘッド460とともに動作可能であるような範囲とすることができる。
【0030】
一方、可動止め部材462が、くさび形状の狭い部分が可動ヘッド460と係合する図6Cおよび図6Dに示す位置にあるとき、または可動部材462が、可動ヘッド460と可動止め部材462との間で接触が起こらないように引っ込められる、または引き抜かれるとき、可動ヘッド460は、第二の作動範囲によって制限されるように、チャンバ420内を動くことができる。図6Cおよび図6Dに示すように、可動ヘッド460がチャンバ420に対して可動である状態では、変位部材421によって生成される圧力が可動ヘッド460によって吸収されるので、変位部材421のチャンバ420内での往復運動は、液圧供給装置412から流体をあまり効果的にはポンピングしない、またはポンピングが無効となる。言い換えれば、可動ヘッド460が、図6Cおよび図6Dに示す位置の方へ移動できるときは、変位部材421の運動によってチャンバ420内にはほとんど、またはまったく圧力を生成することができない。したがって、第二の作動範囲とは、変位部材421の移動が、液圧供給装置412から第二の流量を供給するように可動ヘッド460とともに動作可能であるような範囲とすることができ、第二の流量は、可動止め部材462の位置に応じて、第一の流量より少ない。場合によっては、第二の流量がゼロのときもある。
【0031】
一つの態様では、可動ヘッド460を変位部材421の方へ付勢することができ、その結果、可動ヘッド460は、利用できる作動範囲内で変位部材421とともに移動することができる。例えば、可動ヘッド460を変位部材421の方へ付勢するために、ばね463を含むことができる。この場合には、可動ヘッド460の移動によって圧力の一部分のみが失われ、いくらかの圧力は、ゼロより多い第二の流量を供給するように働くが、それでも第一の流量よりも圧力は低い。
【0032】
動作中、アクチュエータ444は、可動止め部材462を高速に挿入する、および引っ込めるように制御されて、変位部材421の任意の所与のサイクルで、可動止め部材462の選択された位置に応じて、流体のポンピングを可能にして、または減少させて/妨げて、所望通りに流量を変えることができる。したがって、可動止め部材462を選択的に挿入して、および引っ込めて、液圧供給装置412から所望の流量を供給することができる。一つの態様では、アクチュエータ444を作動させるのに必要な動力は小さくすることができ、それによって、液圧供給装置412によって供給される流量を調整するのに必要な動力は最小限になる。
【0033】
図7A図7Dは本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置512を示す。入口および出口ライン、逆止弁などの作動流体の本質的でない配管および弁の機構または構成部品は、説明を明瞭にするために省略されている。液圧供給装置512はチャンバ520、変位部材521、および流量調整システム522を含む。一つの態様では、チャンバ520はシリンダを備えることができ、変位部材521は、シリンダ内に配置されシリンダの中で往復運動または周期運動をするように構成されるピストンを備えることができる。
【0034】
流量調整システム522は、チャンバ520と流体リザーバ516との間に入口弁570を含むことができる。入口弁570は、変位部材521の移動方向と平行な方向564の方へ移動可能とすることができる。流量調整システム522はまた、作動範囲制限機構561を含んで、入口弁570の作動範囲を第一の作動範囲と第二の作動範囲との間で制限することができる。一つの態様では、作動範囲制限機構561は、可動止め部材562を備えることができる。下記でより詳細に説明するように、可動止め部材562を動かすためにアクチュエータ544を含むことができる。一つの態様では、アクチュエータ544はソレノイドを備えることができる。
【0035】
可動止め部材562は入口弁570とともに動作可能であり、第一の位置(例えば、図7Aおよび図7B)において第一の作動範囲を提供し、および第二の位置(例えば、図7Cおよび図7D)において第二の作動範囲を提供することができる。例えば、可動止め部材562は、入口弁570に対して、入口弁570の方向564に垂直な方向565などに移動可能とすることができる。可動止め部材562は、入口弁570と接して入口弁570を止めるように構成することができ、これによって、可動止め部材562と弁座571との間で入口弁570の作動範囲を確定または画定することができる。可動止め部材562は、図示のようなくさび形状、または任意の他の適切な形状を有することができる。一つの態様では、入口弁570の作動範囲は、可動止め部材562と入口弁570の相対位置(すなわち横方向位置)に基づいて変わることができる。
【0036】
例えば、可動止め部材562が、くさび形状の広い部分が入口弁570と係合するように図7Aおよび図7Bに示す位置にあるとき、入口弁570は、弁座571から可動止め部材562まで動くことができ、その距離は、チャンバ520内で変位部材521が、(下記で説明し、図7Cおよび図7Dに示す、入口弁が弁座からより長い距離を動かされる場合に比べて)吐出量の多いポンピング動作を行うのを容易にする距離である。言い換えれば、入口弁570は、より大量の流体を容易にポンピングするように開閉することができる。したがって、可動止め部材562によって確定される第一の作動範囲は、変位部材521が移動して液圧供給装置512から第一の流量を供給するように動作可能となるような入口弁570の閉止を容易にすることができる。
【0037】
一方、可動止め部材562が、くさび形状の狭い部分が入口弁570と係合する図7Cおよび図7Dに示す位置にあるとき、入口弁570は、第二の作動範囲によって制限されるように、弁座571と可動止め部材562との間でチャンバ520内を動くことができる。図7Cおよび図7Dに示すように、入口弁570がチャンバ520に対して可動状態では、変位部材521がチャンバ520内で圧力を発生するために移動するとき、弁570と弁座571との間の大きな隙間によって、流体は弁570を経由してチャンバ520から逃げることができるので、変位部材521のチャンバ520内での往復運動は、液圧供給装置512から流体をあまり効果的にポンピングしない、またはポンピングはまったく無効となる場合がある。言い換えれば、入口弁570が、図7Cおよび図7Dに示す範囲の方へ、または範囲まで移動できるときは、変位部材521の運動によってチャンバ520内には低い圧力を生成するか、またはまったく圧力を生成することができない。したがって、可動止め部材562によって確定される第二の作動範囲は、変位部材521が移動して、可動止め部材562の位置に応じて、第一の流量より少ない第二の流量を供給するように動作可能となるような入口弁570の閉止を容易にすることができる(すなわち、入口弁570は閉じるためにより長い距離を動かされる)。場合によっては、第二の流量がゼロのときもある。
【0038】
動作中、アクチュエータ544は、可動止め部材562を様々な位置に高速に挿入する、および引っ込めるように制御されて、変位部材521の任意の所与のサイクルでポンピングを可能にして、または妨げて、所望通りに流量を変えることができる。したがって、可動止め部材562を選択的に挿入して、および引っ込めて、液圧供給装置512から所望の流量を供給することができる。一つの態様では、アクチュエータ544を作動させるのに必要な動力は小さくすることができ、それによって、液圧供給装置512によって供給される流量を調整するのに必要な動力は最小限になる。
【0039】
図8は本開示のさらに別の例による高速調整液圧供給装置612を示す。作動流体の本質的でない配管および弁の機構または構成部品は、説明を明瞭にするために省略されている。液圧供給装置612はチャンバ620、変位部材621、および流量調整システム622を含む。
【0040】
流量調整システム622は、アキュムレータ680およびアクチュエータ644(例えば、ソレノイド、電気モータ、空気圧アクチュエータ、および/または液圧アクチュエータ)を含むことができる。アキュムレータ680は、液圧システムの流体を受け入れるためのチャンバ682、およびチャンバ682内の流体に対して力を働かせるためのピストン683を含むことができる。アクチュエータ644はピストン683に連結することができる。一つの態様では、ばね684は、ピストン683とアクチュエータ644との間でピストン683に連結することができる。したがって、アクチュエータ644が停止しているとき、または作動していないとき、アキュムレータ680は通常のばね型アキュムレータとして機能することができる。
【0041】
しかし、動作中、アクチュエータ644は、ピストン683をチャンバ682内の様々な位置に高速に延ばす、および引っ込めるように制御して、システム内の圧力を所望通りに変えることができる。したがって、ピストン683を選択的に延ばして、および引っ込めて、液圧供給装置612から所望の圧力を供給することができる。アクチュエータ644によってピストン683がチャンバ682内を動かされるとき、ばね684によって滑らかに流体に圧力をかける、および圧力を抜くことができる。一つの態様では、アクチュエータ644を作動させるのに必要な動力は小さくすることができ、それによって、液圧供給装置612によって供給される流量を調整するのに必要な動力は最小限になる。
【0042】
本明細書で開示したような高速調整液圧供給装置は、システムの瞬間的または平均的な要求(これにはいくらかの付加的な圧力/動力が含まれる場合がある)に従うために、高速で効率的に流れを調整して、液圧システムの圧力を動的に変えることができる。言い換えれば、負荷のある歩行および走行などの仕事を行っている間、供給圧力および液圧動力は調整されてアクチュエータの瞬間的な要求に追随することができる。任意の所与の瞬間に遅れずに、所要のシステム圧力をシステムの要求に合致するように最適に調節するように供給圧力を変えることによって、動力を節約し、望ましくない熱発生を最小限にすることができる。例えば、制御ポートをほぼ全開にして作動させることによって、絞り損失(例えば、関節の動きとトルクを制御するために用いられる圧力調節器やサーボ弁を大流量が通る際の大きな圧力降下)を減少させることができ、これによって、アクチュエータが正の動力を発生しているときの動力の消失が最小限になる。加えて、圧力調節器での大きな動力損失を大部分除くことができる。
【0043】
本発明の一つの実施形態によれば、液圧供給装置の圧力および流量を容易に調整して、アクチュエータの現在の要求を追随する方法が開示されている。本方法は、流体を受け入れるためのチャンバを提供するステップを含むことができる。本方法はまた、流体をチャンバから移動させるように動作可能な変位部材を提供するステップを含むことができる。加えて、本方法は、チャンバから吐出される流体を容易に可変流量にするステップを含むことができ、ここで、第一の流量は、第一の吐出圧力に対応し、変位部材の類似または同様の動きに対する第二の吐出圧力に対応する第二の流量とは異なる。本方法の一つの態様では、チャンバはシリンダを備えることができ、変位部材は、シリンダ内に配置されシリンダの中で往復運動または周期運動をするように構成されるピストンを備えることができる。この方法では特定の順序は要求されないが、一つの実施形態では一般に、方法のこれらのステップは順次実行することができることに留意されたい。
【0044】
開示された本発明の実施形態は、本明細書で開示された特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されるものではなく、当業者が認識するであろうそれらの等価物に広げられることを理解されたい。また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためだけに使用されており、限定することを意図していないことも理解すべきである。
【0045】
この明細書の全体を通して言及される「一つの実施形態」または「実施形態」は、この実施形態に関連して説明される、特定の機構、構造、または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、この明細書の全体を通して様々な場所の「一つの実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしも同じ実施形態にすべて言及しているわけではない。
【0046】
本明細書で用いられる場合、複数の項目、構造的要素、組成的要素、および/または材料は、便宜上共通のリストで提示される場合がある。しかしながら、これらリストは、リストの各要素が別々のおよび唯一の要素として個々に同定されるように解釈されるべきである。したがって、そのようなリストの個々の要素は、それとは反対の指示なしに、共通のグループ中でのそれらの提示のみに基づいて、同じリストの任意の他の要素と事実上等価であると解釈すべきでない。加えて、本発明の様々な実施形態および例は、それらの様々な構成部品の代替物とともに本明細書で言及される場合がある。そのような実施形態、例、および代替物は、互いに事実上等価であると解釈されるべきではなく、本発明の別々の自律的な表現として考えられるべきである、ということが理解される。
【0047】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、一つまたは複数の実施形態において、任意の適切な態様で組み合わせることができる。説明において、本発明の実施形態を完全に理解するために、長さ、幅、形状等の例などの多くの具体的な詳細を提供している。しかしながら、当業者であれば、本発明が、一つまたは複数の具体的な詳細なしに、または、他の方法、構成部品、材料等を用いて、実施することができることを認識するであろう。他の例では、公知の構造、材料、または動作は、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、詳細に示されない、または詳細に説明されない。
【0048】
上述の例は、一つまたは複数の特定の用途における本発明の原理を例示しているが、実施の形態、使用、および詳細における多くの変更が、発明的才能を使わないで、また本発明の原理および概念から逸脱しないで行うことができることは当業者には明らかだろう。したがって、以下に記載する特許請求項による限定を除いては、本発明が限定されることは意図されていない。
【符号の説明】
【0049】
100 ロボット装置
101 動力システム
102 液圧システム
110 エネルギー源
111 原動機
112 高速調整液圧供給装置
113a アクチュエータ
113b アクチュエータ
113c アクチュエータ
114 流体通路
115 制御システム
116 リザーバ
117a 逆止弁
117b 逆止弁
118 アキュムレータ
120 チャンバ
121 変位部材
122 流量調整システム
212 高速調整液圧供給装置
220 チャンバ
221 変位部材
222 流量調整システム
230 クランク軸
231 連接棒
232 方向
233 フライホイール
240 ピストンの第一の部分
241 ピストンの第二の部分
242 連結機構
243 ピン
244 アクチュエータ
245 方向
246 方向
312 高速調整液圧供給装置
316 リザーバ
320 チャンバ
321 変位部材
322 流量調整システム
344 アクチュエータ
350 弁
352 チャンバ320と弁350との間
353 逆止弁
354 流体導管
412 高速調整液圧供給装置
420 チャンバ
421 変位部材
422 流量調整システム
444 アクチュエータ
460 可動ヘッド
461 作動範囲制限機構
462 可動止め部材
463 ばね
464 方向
465 方向
512 高速調整液圧供給装置
516 リザーバ
520 チャンバ
521 変位部材
544 アクチュエータ
561 作動範囲制限機構
562 可動止め部材
564 方向
565 方向
570 入口弁
571 弁座
612 高速調整液圧供給装置
620 チャンバ
621 変位部材
622 流量調整システム
644 アクチュエータ
680 アキュムレータ
682 チャンバ
683 ピストン
684 ばね
図1
図2
図3
図8
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D