特許第6073410号(P6073410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073410石英ガラス用の坩堝引抜き法において使用するための部材、及びこのような部材を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073410
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】石英ガラス用の坩堝引抜き法において使用するための部材、及びこのような部材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/43 20060101AFI20170123BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20170123BHJP
   C03B 5/08 20060101ALI20170123BHJP
   C22C 27/00 20060101ALI20170123BHJP
   F27B 14/10 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C03B5/43
   F27D7/06 B
   C03B5/08
   C22C27/00
   F27B14/10
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-104408(P2015-104408)
(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-231940(P2015-231940A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】14001805.2
(32)【優先日】2014年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ボリス グローマン
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル ホイッピー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シェンク
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−098749(JP,A)
【文献】 特公昭49−006023(JP,B1)
【文献】 特開平11−250806(JP,A)
【文献】 特開平04−305023(JP,A)
【文献】 特表2012−512121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−40/04
C22C 27/00
F27B 14/10
F27D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部分の接合によって英ガラス用の坩堝引抜き法において使用するための部材を製造する方法であって、高融点金属製又は高融点金属をベースとする合金製の少なくとも2つの壁部分(1)を準備し、該壁部分(1)を、互いに当接させて接合部(3)を形成し、1500℃を超える温度で焼結によって1つの部材にまとめる方法において、シール部材(5)を前記接合部(3)内に挿入することを特徴とする、法。
【請求項2】
ハフニウム、ニオブ又はジルコニウム製のシール部材(5)又は、ハフニウム、ニオブ又はジルコニウムをベースエレメントとして含有する合金製のシール部材(5)を、前記接合部(3)内に挿入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シール部材(5)は、78質量%のハフニウム成分を含有するタングステン・ハフニウム合金を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
プラチナ製又はプラチナ合金製のシール部材(5)を前記接合部(3)内に挿入する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記接合部(3)は、互いに当接させられる壁部分(1)の間に、前記シール部材(5)が挿入される溝(4)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
構造部材として形成されたシール部材(5)を挿入する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ワイヤとして形成されたシール部材(5)を挿入する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
円形断面形状と0.1mm〜1.0mmの範囲のワイヤ直径を有するワイヤを挿入する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
多角形断面形状有するワイヤを挿入する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
0.05mm〜0.5mmの範囲のシート厚さを有するシートとして形成されたシール部材(5)を挿入する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記壁部分(1)用の高融点金属として、タングステン又はモリブデンを使用するか、又はタングステン又はモリブデンをベースとする合金を使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
高融点金属製又は高融点金属をベースとする合金製の少なくとも2つの壁部分(1)を有していて、該壁部分(1)が互いに当接させられて接合部(3)を形成する、英ガラス用の坩堝引抜き法のための材であって、前記接合部(3)はシール部材(5)によって気密に閉鎖されていることを特徴とする、部材。
【請求項13】
前記接合部(3)は、ハフニウム、ニオブ又はジルコニウム製のシール部材(5)によって、又はハフニウム、ニオブ又はジルコニウムをベースエレメントとして含有する合金製のシール部材(5)によって閉鎖されている、請求項12記載の部材。
【請求項14】
前記接合部(3)は、78質量%のハフニウム成分を含有するタングステン・ハフニウム合金製のシール部材(5)によって閉鎖されている、請求項12又は13記載の部材。
【請求項15】
高融点金属として、タングステン又はモリブデンが使用されているか、又はタングステン又はモリブデンをベースとする合金が使用されている、請求項12から14までのいずれか1項記載の部材。
【請求項16】
前記接合部(3)は、プラチナ製又はプラチナ合金製のシール部材(5)によって閉鎖されている、請求項12記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁部分の接合によって部材を製造する方法、特に石英ガラス用の坩堝引抜き法において高い作業温度で使用するための溶融坩堝を製造する方法であって、高融点金属製又は高融点金属をベースとする合金製の少なくとも2つの壁部分を準備し、該壁部分を、互いに当接させて接合部を形成し、1500℃を超える温度で焼結によって1つの部材にまとめる方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、高融点金属製又は高融点金属をベースとする合金製の少なくとも2つの壁部分を有していて、該壁部分が互いに当接させられて接合部を形成する、特に石英ガラス用の坩堝引抜き法のための、特に溶融坩堝である、部材に関する。
【背景技術】
【0003】
任意の横断面形状を有する、石英ガラス製の円筒形の部材を製造するために、坩堝引抜き法(Tiegelziehverfahren)が一般に使用されている。このときに使用される坩堝は、特にハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)といった金属のグループを含む高融点金属から成っている。一般的には、タングステン製の坩堝が使用される。その他に、壁部分のための坩堝材料としてはモリブデン(Mo)も使用され、又はタングステン及びモリブデンのベース合金も使用されている。本発明においてベース合金というのは、少なくとも50質量%のベースエレメントの成分を有する合金のことである。しかしながら高融点金属又はこのような金属の合金は、溶融された石英ガラスに対して完全には耐食性でなく、高温において石英ガラスからの酸素と反応する。このとき、溶融坩堝の底部領域及び坩堝壁において増加する酸化金属が形成され、このような酸化金属は、溶融坩堝の底部領域及び坩堝壁から時々、濃縮された形で、ガラス溶融物の溶融物流と共に引き出され、石英ガラスストランドの条痕又は変色部として顕著になり、同様に、石英ガラス溶融物内に不溶融の酸化金属粒子を含有するスクラップを生ぜしめることになる。溶融坩堝は幾つかの壁部分から成っており、これらの壁部分は、可能な限り高い適合精度をもって製造されている。壁部分は、突き合わせられてまとめられ、溶融運転中に焼結される。しかしながら、このとき気密性は得られず、その結果、石英ガラス溶融物内に気泡を閉じ込めることになる。さらに、汚染された又は湿ったガスによる、外部からの壁部分の突き合わせ箇所における腐食作用が観察され、このことは、溶融物内への、通常はタングステンである高融点金属の侵入を促進する。
【0004】
イリジウム、レニウム、オスミウム及びルテニウムのグループの高温溶融金属製の溶融坩堝は、確かに、石英ガラス溶融物に対して著しく良好な耐食性を示すが、このような溶融坩堝は極めて高価である。イリジウムから成る溶融坩堝の構成は、例えば特開平02−022132号公報に提案される。
【0005】
上記構成とは択一的に、他の部分がタングステン又はモリブデンから成る溶融坩堝の内側面にだけ、イリジウム、レニウム、オスミウム及びルテニウムといったグループの金属から成る保護層を被着することが提案された。このような溶融坩堝は、例えば米国特許第6632086号明細書、米国特許第6422861号明細書及び米国特許第6739155号明細書に基づいて公知である。これらの明細書には、坩堝内側面に、イリジウム、レニウム、オスミウム又はこれらの被覆金属の合金から成る保護層を設けることが提案されている。このとき保護層は、坩堝壁と冶金学的に結合されているか、又は保護層は、坩堝壁に接触して該坩堝壁に機械的に固定されている別個の挿入部材を形成している。
【0006】
最後に記載した溶融坩堝は、石英ガラス溶融物に対して改善された耐食性を有している。坩堝を製造するための材料コストは、保護層を製造するための高価な被覆金属のために極めて高価である。さらに内側の被覆体によっても、坩堝壁の十分な気密性を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−022132号公報
【特許文献2】米国特許第6632086号明細書
【特許文献3】米国特許第6422861号明細書
【特許文献4】米国特許第6739155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ゆえに本発明の課題は、従来技術における欠点を排除すべく改良して、シール性を改善された、石英ガラス用の坩堝引抜き法において使用するための部材を提供すること、並びにこのような部材を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明による方法の発明では、冒頭に述べた方法を出発点として、シール部材を接合部内に挿入することによって解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る方法では、個々の壁部分を可能な限り適合正確に互いに突き合わせた後で、壁部分の間に形成された接合部内に、シール部材が挿入される。このようにして結合された壁部分は、1500℃を上回る温度において焼結されて1つの部材に形成される。シール部材は、焼結補助手段として作用し、かつ個別部材の壁の間における接合部を焼結時に気密に閉鎖するように働く。シール部材によって焼結のための時間を短縮することができ、このことは経済的に好適である。本発明に係る方法によって製造された部材は、特に、石英ガラスのための坩堝引抜き法において使用するのに適している。それというのは、この場合には気密性が重要だからである。
【0011】
シール部材によって、1500℃を上回る温度が作用した後で、シール部材の材料と高融点金属とから成る混合相が、壁部分の接触面において形成される。これによって接合箇所における気密性が得られるので、壁部分の焼結中及び部材の運転中における、汚染された又は湿ったガスの侵入が阻止される。部材の個別部分の間におけるシール作用は、既にその焼結前に生じるので、本発明に係る方法による壁部分の焼結は、シール部材を有しない汎用の方法による壁部分の焼結に比べてより迅速に行われる。それというのは、ガス、特に酸素が壁部分の接触面に達することが不可能だからである。シール部材は単に外側から、互いに当接させられた壁部分の接合部内に挿入され、そして個別部分の壁厚さ全体の僅かな部分だけを覆うだけで十分である。
【0012】
本発明に係る方法において、ハフニウム、ニオブ又はジルコニウム製のシール部材又は、ハフニウム、ニオブ又はジルコニウムをベースエレメントとして含有する合金製のシール部材が、特に適している。これらの金属又は合金から成るシール部材は、壁部分の高融点金属との接触部において特に容易に金属相を形成する。シール部材としての純粋なハフニウムは、タングステン製の壁部分と共に、壁部分の焼結を促進するハフニウム・タングステン合金を形成する。シール部材としては、またハフニウム、ニオブ及びジルコニウムの3つのエレメントから成る合金を使用することも可能であり、このときに重要なことは、シール部材としての加工可能性の他に、酸化性の溶融物に対する耐食性と、例えば延性のような機械的な特性である。回避不能なその他のエレメントは、合金内に不純物として僅かな量であれば受け入れることができるが、しかしながら基本的には、場合によっては生じる、脆性のセラミック状の混合相の形成、特に炭化物の形成を回避するために、高い純度が望ましい。このような混合相もしくは炭化物は、壁部分の焼結を阻止することがある。
【0013】
焼結特性に関しては、シール部材が、78質量%のハフニウム成分を含有するハフニウム・タングステン合金を含むと、特に好適であることが判明している。このような合金組成は、タングステン・ハフニウム相線図によれば、約1950℃の融点を示す。従ってシール部材は、相応の焼結温度時に軟化し、壁部分の間における接合部を間隙なしに満たし、かつ気密に閉鎖する。
【0014】
ハフニウム、ニオブ又はジルコニウム又はこれらのエレメントの合金の代わりに、プラチナ製又はプラチナ合金製のシール部材を使用することも可能である。プラチナ又はプラチナ合金をシール部材として使用すると、例えばハフニウム、ニオブ又はジルコニウムのような卑金属の高温溶融金属の使用時に比べて、より高い材料コストを計算に入れなくてはならない。しかしながら本発明におけるシール部材としては、プラチナ又はプラチナ合金は、ハフニウム、ニオブ又はジルコニウムと同様に適している。プラチナ合金としては、プラチナ・タングステン合金が有用であり、この合金は、タングステン成分に応じて、約1850℃〜1910℃の溶融範囲を有している。
【0015】
壁部分のための材料としては、タングステン又はモリブデン又はタングステン・モリブデン合金が良好であることが判明している。これらの高融点金属は、高い融点、比較的低い熱膨張率及び比較的高い熱伝導率並びに導電率を示すので、高温時に使用するための材料として、特に石英ガラス用の溶融坩堝を製造するための材料として、良好に適している。
【0016】
本発明に係る方法の変化態様では、接合部は、互いに当接させられる壁部分の間に、シール部材が挿入される溝を有している。このとき、個々の壁部分の当接面は、溝として形成された凹部を備えており、この凹部にシール部材が、壁部分を互いに接合させる前に挿入される。これによってシール部材はその所定ポジションにおいて特に良好に固定され、個別部分の焼結前における振動時にも、例えば互いになおルーズに組み立てられている壁部分の入れ換え時にも、シール部材が失われることを回避することができる。
【0017】
シール部材に関して述べれば、本発明に係る方法の好適な態様では、シール部材は構造部材として形成されて挿入される。構造部材というのは、関連した幾何学形状を有する完成品のことを意味する。シール部材のこのような形状には、例えばシール部材の固着性又は流動性に影響を及ぼす物質が、接合箇所に侵入して、そこで汚れの原因になることがないという利点がある。
【0018】
ワイヤとして形成されたシール部材を挿入すると、特に好適である。ワイヤのための態様としては、円形断面形状と0.1mm〜1.0mmの範囲のワイヤ直径を有するワイヤが、良好であることが判明している。
【0019】
同様に好適な別の態様では、多角形断面形状、好ましくは三角形断面形状を有するワイヤが挿入される。丸い又は角張ったワイヤ断面形状は、種々様々な寸法のものが市販されている規格形状である。ワイヤとして形成されたシール部材を挿入することによって、部材の製造時における追加的な費用はほとんど不要である。
【0020】
同様なことが言える、同じように好適な択一的な方法変化態様では、0.05mm〜0.5mmの範囲のシート厚さを有するシートとして形成されたシール部材が挿入される。例えばハフニウム製のシートも、市販の構造部材である。本発明においてシートというのは、金属薄板をも意味する。
【0021】
部材に関して述べれば、前記本発明の課題を解決するために、本発明による部材では、冒頭に述べた形式の部材において、接合部がシール部材によって気密に閉鎖されている。
【0022】
本発明に係る部材は、引抜きプロセス時にSiO2と接触する対象である。例としては、溶融坩堝及びその構成部分が挙げられる。溶融坩堝の構成部分としては、例えばノズル又はノズルホルダ、又は石英ガラス材料内に進入するガス供給管、測定装置用の被覆体又は混合装置が挙げられる。当該部材の規定通りの使用時における作業温度は、明らかに2000℃を超える温度であり、通常、2050℃〜2300℃の温度範囲である。当該部材の壁は、主として、例えばタングステンのような高温耐熱性の金属から成っており、タングステンの他には、ニオブ、モリブデン及びタンタルも使用することができる。接合部は、ハフニウム、ニオブ又はジルコニウム製のシール部材、又はハフニウム、ニオブ又はジルコニウムをベースエレメントとして含有する合金製のシール部材を挿入することによって、又はプラチナ製又はプラチナ合金製のシール部材を挿入することによって、互いに当接させられた壁部分の間における接合部は、既に焼結の前において気密に閉鎖されるので、個別部分の焼結中及び当該部材の運転中に、汚れた又は湿ったガスの侵入が阻止される。
【0023】
従って本発明に係る部材は、石英ガラス用の坩堝引抜き法における高い作業温度での使用のために最適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1a】ワイヤとして挿入されたシール部材を接合部内に備えた、互いに当接させられた2つの壁部分の1つの実施形態を概略的に示す横断面図である。
図1b】ワイヤとして挿入されたシール部材を接合部内に備えた、互いに当接させられた2つの壁部分の別の実施形態を概略的に示す横断面図である。
図1c】シートとして挿入されたシール部材を接合部内に備えた、互いに当接させられた2つの壁部分の1つの実施形態を概略的に示す横断面図である。
図2】2成分系タングステン・ハフニウムの相線図の一部を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳説する。
【0026】
図1a及び図1bにはそれぞれ、タングステン製の溶融坩堝壁が概略的に横断面図で示されており、この溶融坩堝壁は、本発明に係る方法によって、ここではタングステンである高融点金属(Refraktaermetall)製の、少なくとも2つの個別の壁部分1から成っている。壁部分1の当接面2,22は互いに接触させられて、接合部3を形成する。図1aに示すように、両当接面2,22のうちの一方の当接面2は、真っ直ぐにかつ平滑に形成されており、他方の当接面22は、方形の溝4を備えた輪郭を有している。この溝4内には、シール部材5として、円形断面形状を有するハフニウムワイヤが挿入されていて、溝4によって固定されている。ハフニウムワイヤは、0.8mmの直径を有し、0.8mmよりも僅かな深さを有する溝4を幾分越えて突出している。壁部分1がその当接面2,22で互いに接合されると、これによってハフニウムワイヤは変形し、このとき溝4を満たして、タングステン壁部分1の当接部をシールする。石英ガラスの溶融作業中に、壁部分1が2000℃を超える範囲の温度に加熱されると、結合箇所において、タングステン・ハフニウム相が形成され、このタングステン・ハフニウム相は、壁部分1の焼結を促進し、ひいては、ガス、特に酸素が当接部をもはや貫流しないことを保証する。
【0027】
図1bに示した実施の形態では、壁部分1の両当接面2,22は、同じ箇所に各1つの溝4を有しており、この溝4は、両壁部分1の当接接合時に互いにオーバラップして、接合部3を形成し、このとき結合箇所の内部には中空室が形成され、この中空室内には、図示の実施の形態では、三角形断面形状のハフニウムワイヤがシール部材5として挿入されている。当接面2,22の圧着時にまず大きな力を加えることなしに、三角形のワイヤの頂点が変形され、次いでワイヤのベース部分が変形されて、溝4を満たす。これによって、変形されたワイヤは、高められた温度の作用なしでも接合部3におけるシールを形成する。
【0028】
図1a及び図1bに示した実施の形態とは択一的に、図1cには、当接面2,22の形状結合式の輪郭を備えた2つの壁部分1が示されている。両当接面2,22は、互いに係合して両壁部分1を互いにセンタリングする段部6もしくは突出部7を有している。当接面2,22の間に発生した接合部3には、壁部分1の外側面8から、0.05mm〜0.3mmの範囲のシート厚さを有する複数の薄いハフニウムシートから成るシート束が挿入されている。壁部分1相互の接合によって、シートもしくはシート束は、両壁部分1の間のシールを形成し、このシールは、次いで行われる加熱時に壁部分1の焼結を促進する。
【0029】
純粋なハフニウム製のワイヤ又はシートの代わりに、択一的に、78質量%のハフニウム成分を有するハフニウム・タングステン合金製のワイヤ又はシートを使用することができる。
【0030】
プラチナワイヤとして当接面2,22の間に挿入されるシール部材5も、同様に作用する。
【0031】
図2に示したタングステン・ハフニウムの2成分系の相線図は、「Phase Diagrams of Binary Tungsten Alloys, S.V. Nagender Naidu, Indian Institute of Metals, 1991, p 114-121, G. Shao, Thermodynamic Assessment of the Hf-Mo and Hf-W Systems, Intermetallics, Vol 10(No. 5), 2002, p 429-434」からのものである。両方の著者、Nagender(略してNag、破線)及びShao(略してSha、実線)は、別々の測定において、ほぼ合致する相線図を得た。下側のX軸には、タングステンもしくはハフニウム含有量が原子%(At.-%)で表され、上側のX軸には、質量%(Gew−%)で表されている。1900℃〜2500℃の温度範囲において、成分として78質量%のハフニウムを含有する溶融温度約1950℃のタングステン・ハフニウム合金は、熱学的に安定している。ハフニウム製のシール部材5を用いた、当接部において互いに接合されたタングステン製の壁部分1の焼結時に、接合箇所には、タングステン・ハフニウム相が発生する。シール部材5としてハフニウム・タングステン合金を使用すると、焼結時に、壁部分1からのタングステンが、シール部材5のハフニウム・タングステン混合相内に拡散する。これによって焼結のために必要な温度は、僅かしか上昇しない。同時にまた、このようにして製造された部材の耐熱性も高まる。
【符号の説明】
【0032】
1 壁部分、 2,22 当接面、 3 接合部、 4 溝、 5 シール部材、 6 段部、 7 突出部、 8 外側面
図1a
図1b
図1c
図2