特許第6073429号(P6073429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大林組の特許一覧 ▶ 株式会社みるくるの特許一覧

特許6073429構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム
<>
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000002
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000003
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000004
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000005
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000006
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000007
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000008
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000009
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000010
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000011
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000012
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000013
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000014
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000015
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000016
  • 特許6073429-構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073429
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】構造物状況把握支援装置、構造物状況把握支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/10 20060101AFI20170123BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G06T17/10
   G06T1/00 315
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-171282(P2015-171282)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2016-103263(P2016-103263A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2015年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】504275144
【氏名又は名称】株式会社みるくる
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 伸二
【審査官】 岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/003850(WO,A1)
【文献】 特開2014−035213(JP,A)
【文献】 特開2006−172099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 17/00−17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を点群により表現した第1の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第1の構造物ボクセルモデルに変換する第1変換手段と、
前記第1の構造物点群モデルとは異なる時点の前記構造物を点群により表現した第2の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第2の構造物ボクセルモデルに変換する第2変換手段と、
前記第1の構造物ボクセルモデルと前記第2の構造物ボクセルモデルとの差分をとることによって、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセルをそれぞれ分類抽出する分類抽出手段と、を備えることを特徴とする構造物状況把握支援装置。
【請求項2】
前記分類抽出手段によって分類抽出されたボクセルの総体積を算出する体積算出手段と、
前記体積算出手段によって算出された総体積を出力する出力手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の構造物状況把握支援装置。
【請求項3】
前記構造物点群モデルに関連づけられた前記構造物の構成要素のモデルごとに三次元形状情報と体積情報とを有した設計構造物モデルを記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記設計構造物モデルのうち、前記分類抽出手段により分類抽出されたボクセルに関連づけられた構成要素のモデルを検索し、その構成要素のモデルの体積情報を出力する第二出力手段と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物状況把握支援装置。
【請求項4】
前記構造物点群モデルに関連づけられた前記構造物の構成要素のモデルごとに三次元形状情報を有した設計構造物モデルを記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶した設計構造物モデルのうち、前記分類抽出手段によって分類抽出されたボクセルに関連づけられた構成要素のモデルを他の構成要素のモデルと異なる色となるように、前記三次元形状情報に基づいて前記設計構造物モデルの構成要素のモデルをレンダリングする手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物状況把握支援装置。
【請求項5】
前記構造物ボクセルモデルのうち、前記分類抽出手段によって分類抽出されたボクセルを他のボクセルと異なる色となるように、前記構造物ボクセルモデルをレンダリングする手段を更に備えることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の構造物把握支援装置。
【請求項6】
演算処理装置が、構造物を点群により表現した第1の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第1の構造物ボクセルモデルに変換する第1変換工程と、
前記演算処理装置が、前記第1の構造物点群モデルとは異なる時点の前記構造物を点群により表現した第2の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第2の構造物ボクセルモデルに変換する第2変換工程と、
前記演算処理装置が、前記第1の構造物ボクセルモデルと前記第2の構造物ボクセルモデルとの差分をとることによって、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセルをそれぞれ分類抽出する分類抽出工程と、
を備えることを特徴とする構造物状況把握支援方法。
【請求項7】
コンピュータに、
構造物を点群により表現した第1の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第1の構造物ボクセルモデルに変換する第1変換処理と、
前記第1の構造物点群モデルとは異なる時点の前記構造物を点群により表現した第2の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第2の構造物ボクセルモデルに変換する第2変換処理と、
前記第1の構造物ボクセルモデルと前記第2の構造物ボクセルモデルとの差分をとることによって、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセルをそれぞれ分類抽出する分類抽出処理と、を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の状況の把握を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の施工現場におけるその建物の部材の設置及び未設を判定するための装置が開示されている。
特許文献2には、予めボクセル化された2つの三次元イメージをボクセル単位で比較し、それらの差異を表す三次元差異イメージを生成する技術が開示されている。
特許文献3には、三次元点群データの時系列を三次元ボクセルデータの時系列に変換し、時間的に隣り合う三次元ボクセルデータの各ボクセル値の差分値を算出することによって三次元差分ボクセルデータの時系列を算出し、三次元差分ボクセルデータの時系列から特徴量を抽出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−153819号公報
【特許文献2】国際公開第2014/003850号
【特許文献3】国際公開第2014/006786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建設現場の進捗状況を簡単に管理することが要望されている。つまり、所定の期間の間に建物のどの部材が出来上がったか、つまりその期間内に新規に完了した出来形が建物のどの部分であるかを簡単に把握できるようにすることが要望されている。また、その期間で消失した仮設材を簡単に把握できるようにすることが要望されている。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、所定期間内に新規に完了した出来形や消失した仮設材を容易に把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の構造物状況把握支援装置は、構造物を点群により表現した第1の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第1の構造物ボクセルモデルに変換する第1変換手段と、前記第1の構造物点群モデルとは異なる時点の前記構造物を点群により表現した第2の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第2の構造物ボクセルモデルに変換する第2変換手段と、前記第1の構造物ボクセルモデルと前記第2の構造物ボクセルモデルとの差分をとることによって、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセルをそれぞれ分類抽出する分類抽出手段と、を備える。
【0006】
本発明の構造物状況把握支援方法は、演算処理装置が、構造物を点群により表現した第1の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第1の構造物ボクセルモデルに変換する第1変換工程と、前記演算処理装置が、前記第1の構造物点群モデルとは異なる時点の前記構造物を点群により表現した第2の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第2の構造物ボクセルモデルに変換する第2変換工程と、前記演算処理装置が、前記第1の構造物ボクセルモデルと前記第2の構造物ボクセルモデルとの差分をとることによって、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセルをそれぞれ分類抽出する分類抽出工程と、を備える。
【0007】
本発明のプログラムは、コンピュータに、構造物を点群により表現した第1の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第1の構造物ボクセルモデルに変換する第1変換処理と、前記第1の構造物点群モデルとは異なる時点の前記構造物を点群により表現した第2の構造物点群モデルを、前記構造物をボクセルにより表現する第2の構造物ボクセルモデルに変換する第2変換処理と、前記第1の構造物ボクセルモデルと前記第2の構造物ボクセルモデルとの差分をとることによって、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、前記第2の構造物ボクセルモデルになく且つ前記第1の構造物ボクセルモデルにないボクセルをそれぞれ分類抽出する分類抽出処理と、を実行させる。
【0008】
第2の構造物点群モデルは、第1の構造物点群モデルの場合とは時点の異なる構造物を点群により表現したものであるから、第2の構造物ボクセルモデルも、第1の構造物ボクセルモデルとは異なる時点の構造物をボクセルにより表現したものとなる。第1及び第2の構造物ボクセルモデルの差分をとって、第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ第1の構造物ボクセルモデルにないボクセル、あるいは、第2の構造物ボクセルモデルになく且つ第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、第2の構造物ボクセルモデルにあり且つ第1の構造物ボクセルモデルにあるボクセル、あるいは、第2の構造物ボクセルモデルになく且つ第1の構造物ボクセルモデルにないボクセルをそれぞれ分類抽出したので、構造物の変化をユーザや作業員に容易に把握させることができる。そのため、その変化分、つまり、新規出来形や消失した仮設材をユーザや作業員に容易に把握させることができる。
ところで、点群モデルのデータ数が過多である上、点群モデルにノイズも存在することから、点群モデル同士を比較してそれらの差分をとるには計算時間が膨大となってしまう。ところが、本発明では、第1及び第2の構造物点群モデルをボクセルモデルに変換することによってデータ数が減少するので、第1及び第2の構造物ボクセルモデルの差分をとる際の計算時間の短縮化を図ることができる。
【0009】
好ましくは、前記構造物状況把握支援装置が、前記分類抽出手段によって分類抽出されたボクセルの総体積を算出する体積算出手段と、前記体積算出手段によって算出された総体積を出力する出力手段と、を更に備える。
【0010】
以上によれば、新規出来形の体積、消失した仮設材の体積、2つの時点間で変化がない部分の体積をユーザや作業員等に把握させることができる。
【0011】
好ましくは、前記構造物状況把握支援装置が、前記構造物点群モデルに関連づけられた前記構造物の構成要素のモデルごとに三次元形状情報と体積情報とを有した設計構造物モデルを記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶された前記設計構造物モデルのうち、前記分類抽出手段により分類抽出されたボクセルに関連づけられた構成要素のモデルを検索し、その構成要素のモデルの体積情報を出力する第二出力手段と、を更に備える。
【0012】
以上によれば、新規出来形の体積、2つの時点間で変化がない部分の体積をユーザや作業員等に把握させることができる。
【0013】
好ましくは、前記構造物状況把握支援装置が、前記構造物点群モデルに関連づけられた前記構造物の構成要素のモデルごとに三次元形状情報を有した設計構造物モデルを記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶した設計構造物モデルのうち、前記分類抽出手段によって分類抽出されたボクセルに関連づけられた構成要素のモデルを他の構成要素のモデルと異なる色となるように、前記三次元形状情報に基づいて前記設計構造物モデルの構成要素のモデルをレンダリングする手段を更に備える。
【0014】
以上によれば、新規出来形の位置・部位、消失した仮設材の位置、2つの時点間で変化がない部分の位置・部位等をユーザや作業員に視覚的に把握させることができる。
【0015】
好ましくは、前記構造物状況把握支援装置が、前記構造物ボクセルモデルのうち、前記分類抽出手段によって分類抽出されたボクセルを他のボクセルと異なる色となるように、前記構造物ボクセルモデルをレンダリングする手段を更に備える。
【0016】
以上によれば、新規出来形の位置・部位、消失した仮設材の位置、2つの時点間で変化がない部分の位置・部位等をユーザや作業員に視覚的に把握させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、新規出来形や消失した仮設材をユーザや作業員に容易に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】構造物状況把握支援装置のブロック図である。
図2】設計建物モデルを構成する構成要素モデルのデータ構成を示した図面である。
図3】仮想三次元空間にモデリングされた設計建物モデルを示した図面である。
図4】建物点群モデルのデータ構成を示した図面である。
図5】仮想三次元空間にモデリングされた建物点群モデルを示した図面である。
図6】建物点群モデルを作成する際の実際の建物を示すとともに、その際に用いる測量装置を示した図面である。
図7】演算処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
図8】付加情報が付与された建物点群モデルのデータ構成を示した図面である。
図9】演算処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
図10】建設中又は改修工事中の建物を点群により表した旧建物点群モデルと、旧建物点群モデルの場合よりも建設した進行した時の建物を点群により表した新建物点群モデルとを示した図面である。
図11】建設中又は回収工事中の建物をボクセルにより表した旧建物ボクセルモデルと、旧建物ボクセルモデルの場合よりも建設又は改修が進行した時の建物をボクセルにより表した新建物ボクセルモデルとを示した図面である。
図12】演算処理装置の処理の流れを示したフローチャートである。
図13】仮想三次元空間に点群の各点を配置した状態を示した図面である。
図14】仮想三次元空間を立方格子によって分割した状態を示した図面である。
図15】仮想三次元空間にボクセルを配置した状態を示した図面である。
図16】旧建物ボクセルモデルにあって新建物ボクセルモデルにないボクセルを抽出した状態を示すとともに、旧建物ボクセルモデルになく新建物ボクセルモデルにあるボクセルを抽出した状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているので、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
図1に示すように、構造物状況把握支援装置10は、構造物としての建物の状況の把握を支援するための装置である。構造物状況把握支援装置10は、プログラム80がインストールされたデスクトップ型、ノートブック型又はタブレット型のパーソナルコンピュータである。図1に示すように、構造物状況把握支援装置10は演算処理装置11、入力部12、表示部13及び記憶部14等を備える。演算処理装置11は、CPU、GPU、ROM、RAM及びハードウェアインタフェース等を有するコンピュータである。入力部12は、スイッチ、キーボード、ポインティングデバイス等の入力装置である。表示部13は、画面表示を行うディスプレイ装置である。記憶部14は、半導体メモリ又はハードディスクドライブ等からなる記憶装置である。
【0021】
記憶部14には、BIM(Building Information Modeling:ビルディング インフォメーション モデリング)を実現する設計用ソフトウェアによって作成された設計建物モデル20が記憶されている。設計建物モデル20は複数の構成要素モデル21の集合体である。構成要素モデル21は、設計された建物の構成要素(基礎、柱、梁、壁、スラブなど)をモデリングしたものである。図2に示すように、構成要素モデル21は、構成要素モデル21を識別するために一意的な要素識別子(要素ID)21aと、構成要素モデル21の三次元形状を定義する三次元形状情報21bと、三次元形状情報21bによって定義された構成要素モデル21の三次元形状の仮想三次元空間内における位置を定義する位置情報21cと、位置情報21cに従って仮想三次元空間内に配された構成要素モデル21の三次元形状の外縁を定義する境界情報(bounding box)21dと、構成要素モデル21の属性を定義する属性情報21eと、を有する。
【0022】
三次元形状情報21b、位置情報21c、境界情報21d及び属性情報21eが要素識別子21aに対応付けられた状態で記憶部14に記録されている。三次元形状情報21bでは構成要素モデル21の三次元形状がローカル座標系で表されており、位置情報21cでは構成要素モデル21の位置及び向きがワールド座標系で表されている。属性情報21eは、建物の構成要素が有する属性(例えば名前、種類、体積、重量、仕様、素材、原材料、製造元、施工予定日等)を表すものである。
【0023】
演算処理装置11はプログラム80による機能によって設計建物モデル20を仮想三次元空間にモデリングすることができる。図3は、演算処理装置11によって仮想三次元空間にモデリングされた設計建物モデル20の模式図である。図3に示すように、構成要素モデル21の三次元形状が三次元形状情報21bに基づいて設定され、構成要素モデル21の三次元形状が位置情報21cに基づいて仮想三次元空間に配され、構成要素モデル21の三次元形状の外縁21mが境界情報21dに基づいて仮想三次元空間に設定される。これら構成要素モデル21の集合体が設計建物モデル20となる。なお、図3では、図面を見やすくするために、1つの構成要素モデル21の外縁21mを示すが、他の構成要素モデル21の三次元形状の外縁も境界情報21dに基づいて仮想三次元空間に設定される。
【0024】
図1に示すように、記憶部14には、建設中又は改修工事中の建物を点群(point cloud)でモデリングした複数の三次元の建物点群モデル30が記憶されている。
建物点群モデル30は、仮想三次元空間に配置される複数の点の集合体である。より具体的には、図4に示すように、建物点群モデル30の各点の情報は、点を識別するために一意的な識別子と、仮想三次元空間での点の位置を表す三次元座標値と、点の濃淡を表すデータ値(例えば、赤(R)の階調値、緑(G)の階調値、青(B)の階調値)とから構成されている。三次元座標値及びデータ値が識別子に対応付けられた状態で記憶部14に記憶されている。なお、図4では、建物点群モデル30がフルカラーのモデルを例にしているので、データ値が三原色(RGB)の階調値からなるが、建物点群モデル30が単色スケール(グレースケール)のモデルである場合、データ値が一色の階調値からなり、建物点群モデル30が二値(モノクロ)のモデルである場合、建物点群モデル30にはデータ値が含まれない。
【0025】
演算処理装置11はプログラム80による機能によって建物点群モデル30を仮想三次元空間にモデリングすることができる。図5は、演算処理装置11によって仮想三次元空間にモデリングされた1つの建物点群モデル30の模式図である。図5に示すように、三次元座標値に従った位置に各点が配置されることによって、建物点群モデル30が仮想三次元空間にモデリングされる。
【0026】
建物点群モデル30は、図6に示すように、建設中又は改修工事中の建物90を上空から測量装置95によって測量することによって作成されたものである。測量装置95は例えば建物90の表面をレーザースキャナ等を用いて走査することによって建物90の表面上の各点の位置を計測する走査型表面計測装置であったり、建物90を2箇所以上の撮影点で撮影して、それらの撮影画像を用いて建物90の表面上の各点の位置を計測する多視点画像解析型表面計測装置であったりする。
【0027】
建物90の建設又は改修の進行に伴って建物点群モデル30が逐次作成されて記憶部14に蓄積される。そのため、記憶部14に記憶された複数の建物点群モデル30は作成時刻が異なる。
【0028】
建物90の建設又は改修の進行状況に応じて、各種の仮設材(例えば、足場、養生シート、型枠)92が設置されたり、撤去されたりする。仮設材92が設置された状態で建物90を測量した場合には、図5に示すように仮設材92の点群モデル32が建物点群モデル30に含まれ、仮設材92が設置されない状態で建物90を測量した場合には、仮設材の点群モデルが建物点群モデル30に含まれない。つまり、記憶部14には、仮設材の点群モデルが含まれた建物点群モデル30と、仮設材の点群モデルが含まれない建物点群モデル30とが混在する。
【0029】
図1に示すように、記憶部14には、演算処理装置11によって実行可能なプログラム80が格納されている。なお、プログラム80は、演算処理装置11のROMに格納されていてもよい。
【0030】
続いて、図7を参照して、プログラム80が演算処理装置11に実行させる処理について説明する。
まず、演算処理装置11が、記憶部14に格納された複数の建物点群モデル30のうち何れか1つを読み込む(ステップS1)。
次に、演算処理装置11が、記憶部14に格納された設計建物モデル20を読み込む(ステップS2)。
【0031】
次に、演算処理装置11が、ステップS2で読み込んだ設計建物モデル20の全ての構成要素モデル21の境界情報21dと、ステップS1で読み込んだ建物点群モデル30の各点の三次元座標値とを照合することによって、建物点群モデル30の中から、設計建物モデル20の何れの構成要素モデル21の三次元形状の外縁の内側にも含まれない点を選別する(ステップS3)。
【0032】
次に、図8に示すように、演算処理装置11が、ステップS3で選別した点の識別子に対して、施工時設計変更である旨の付加情報を対応付ける(ステップS4)。
【0033】
次に、演算処理装置11が、ステップS2で読み込んだ設計建物モデル20の何れか1つの構成要素モデル21の境界情報21dと、ステップS1で読み込んだ建物点群モデル30の各点の三次元座標値とを照合することによって、建物点群モデル30の中から、その構成要素モデル21の三次元形状の外縁の内側に含まれる点(つまり、構成要素モデル21の三次元形状の外縁の内側に含まれる点)を選別する(ステップS5)。
【0034】
次に、演算処理装置11が、ステップS3で選別した点の数を所定の閾値と比較する(ステップS6)。比較の結果、ステップS5で選別した点の数が所定の閾値以上である場合には(ステップS6:YES)、演算処理装置11が、ステップS5で照合した構成要素モデル21の属性情報21eを、ステップS5で選別した点の識別子に対して対応付ける(ステップS7)。一方、ステップS5で選別した点の数が所定の閾値未満である場合には(ステップS6:NO)、演算処理装置11が、ステップS5で選別した点の識別子に対して、未施工である旨の付加情報を対応付ける(ステップS8)。
【0035】
以後、ステップS2で読み込んだ設計建物モデル20の構成要素モデル21について1つずつステップS5の照合・選別処理が行われるように、演算処理装置11がステップS5〜S8の処理を繰り返し実行する(ステップS9:NO)。そして、ステップS2で読み込んだ設計建物モデル20の全ての構成要素モデル21に対して、ステップS5の照合・選別処理をしたら(ステップS9:YES)、演算処理装置11がステップS2で読み込んだ建物点群モデル30のレンダリング処理を行うことによって建物点群モデル30を表示部13に表示させる(ステップS10)。このレンダリング処理に際して、建物点群モデル30の各点には、付加情報に基づいた色を付す。例えば、次の(1)〜(3)のようにする。
【0036】
(1) 施工時設計変更である旨の付加情報が対応付けられた点の色と、それ以外の点の色を異ならせるようにして、建物点群モデル30をレンダリングする。
【0037】
(2) 未施工である旨の付加情報が対応付けられた点の色と、それ以外の点の色を異ならせるようにして、建物点群モデル30をレンダリングする。
【0038】
(3) 属性情報21eが付加情報として対応付けられた点については、属性情報21eの内容ごとに色を異ならせるようにして、建物点群モデル30をレンダリングする。
【0039】
次に、演算処理装置11は、記憶部14に格納された建物点群モデル30を、付加情報が付与された建物点群モデル30に更新する(ステップS11)。
【0040】
記憶部14に格納された他の建物点群モデル30についても、ステップS1〜ステップS11と同様の処理が演算処理装置11によって行われる。
【0041】
演算処理装置11が図7に示す処理を、ステップS1で読み込む建物点群モデル30を変更して2回以上行うことによって2以上の建物点群モデル30に属性情報21eを付加した後、演算処理装置11がプログラム80に従って図9に示す処理を実行する。
【0042】
まず、演算処理装置11が、付加情報が付与された作成時刻の異なる2つの建物点群モデル30を記憶部14から読み込む(ステップS31)。以下、これら2つの建物点群モデル30のうち、より古く作成されたものを旧建物点群モデル30aといい、より新しく作成されたものを新建物点群モデル30bといい、これら建物点群モデル30a,30bの模式の一例を図10に示す。
【0043】
次に、演算処理装置11が、図11に示すように、旧建物点群モデル30a及び新建物点群モデル30bを、ボクセルの集合体であるボクセルモデルに変換する(ステップS32)。ボクセルモデルに変換する処理について図12図15を参照して具体的に説明する。
【0044】
まず、図13に示すように、演算処理装置11が、旧建物点群モデル30aの各点31aを仮想三次元空間に配置する(図12のステップS51)。
次に、図14に示すように、演算処理装置11が、仮想三次元空間を立方格子32aに分割する(図12のステップS52)。
次に、演算処理装置11が、閾値を設定する(図12に図示のステップS53)。
次に、演算処理装置11が、立方格子32aごとに立方格子32a内にある点31aの数を計数する(図12のステップS54)。
【0045】
次に、演算処理装置11が、立方格子32aごとに点31aの数と閾値を比較する。そして、図15に示すように、演算処理装置11が、点31aの数が閾値以上となる立方格子32aに、立方格子32aとサイズの等しいボクセル33aを設定する(図12のステップS55)。これにより、閾値に相当する数以上の点31a(1つの立方格子内に配置された点31a)が1つのボクセル33aに変換される。ボクセル33aの設定の際、演算処理装置11が、ボクセル33a(立方格子)内に配置された点31aに付与された付加情報(図8参照)をボクセル33aに関連づける。上述したように、付加情報としては、未施工である旨の情報と、施工時設計変更である旨の情報と、属性情報21eとがあり、この属性情報21eは設計建物モデル20の構成要素モデル21に関連づけられたものであるので、属性情報21eによってボクセル33aと構成要素モデル21が関連づけられる。
【0046】
次に、不要な点31aがボクセル33aに変換されたか否かを作業員又はユーザによってチェックし、作業員又はユーザがそのチェック結果を入力部12により入力すると、演算処理装置11がその入力内容をチェックする(図12に図示のステップS56)。そして、不要な点31aがボクセル33aに変換されたというチェック結果が入力された場合には(ステップS56:YES)、演算処理装置11がステップS55で設定したボクセル33aを削除した上で、閾値を別の値(この値は作業員又はユーザが入力部12により入力した値である)に再設定し(ステップS57)、演算処理装置11の処理がステップS55に戻る。一方、不要な点31aがボクセル33aに変換されていないというチェック結果が入力された場合には(ステップS56:NO)、ボクセル変換処理が終了する。
以上のように設定されたボクセル33aの集合体が旧建物ボクセルモデル30aである。新建物点群モデル30bも同様にして、ボクセルモデルに変換する。
【0047】
ボクセル変換処理が終了した後、演算処理装置11が、旧建物ボクセルモデル30aと新建物ボクセルモデル30bの差分を算出する。つまり、演算処理装置11が、旧建物ボクセルモデル30aと新建物ボクセルモデル30bを三次元座標系での同一座標同士で照合することによって、図16に示すように、旧建物ボクセルモデル30aになく、新建物ボクセルモデル30bにあるボクセル38を抽出する(図9のステップS33)。また、図16に示すように、新建物ボクセルモデル30bになく、旧建物ボクセルモデル30aにあるボクセル39も抽出する(図9のステップS33)。更に、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通したボクセルを抽出する(図9のステップS33)。更に、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無いボクセルを抽出する(図9のステップS33)。このように、四種類のボクセルが分類して抽出される。
ここで、旧建物ボクセルモデル30aになく且つ新建物ボクセルモデル30bにあるボクセル38は、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの期間に施工が完了した出来形を表したものある。新建物ボクセルモデル30bになく且つ旧建物ボクセルモデル30aにあるボクセル39は、旧建物点群モデル30aがモデル化された時に設置されていた仮設材(建物の構成要素ではないもの)を表したものである。新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通してあるボクセルは、旧建物点群モデル30aがモデル化された時点で施工が完了した出来形を表したものある。
【0048】
新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無いボクセルを抽出する際には、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aを拡張領域(この拡張領域は、新建物ボクセルモデル30bの全体及び旧建物ボクセルモデル30aよりも大きく、新建物ボクセルモデル30bの全体及び旧建物ボクセルモデル30aの全体が包含すると領域(具体的には、bounding box)である。)に拡張して、旧建物ボクセルモデル30aと新建物ボクセルモデル30bの差分を算出する。
具体的には、新建物ボクセルモデル30bの全体及び旧建物ボクセルモデル30aの全体が包含する拡張領域を設定する。次に、その拡張領域をボクセル(新建物ボクセルモデル30bの全体及び旧建物ボクセルモデル30aの各ボクセルと同じサイズ)に細分割し、拡張領域をボクセルで表す。そして、旧建物ボクセルモデル30aと新建物ボクセルモデル30bと拡張領域を三次元座標系での同一座標同士で照合することによって、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無く、拡張領域にあるボクセルを抽出する。これらボクセルが、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無いボクセルである。なお、新建物ボクセルモデル(新建物点群モデル)30bと旧建物ボクセルモデル(旧建物点群モデル)30aが重なっていない場合に、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無いボクセルを抽出することが好ましく、この場合、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通したボクセルは無い。
【0049】
四種類のボクセルの分類抽出の後、演算処理装置11が、抽出したボクセル38の総数を計数するとともに、それらボクセル38の総体積を算出する(ステップS34)。ここで、演算処理装置11は、計数したボクセル38の総数とボクセル38の1つ当たりの体積とを乗算することによって、ボクセル38の総体積を算出する。同様にして、演算処理装置11が、抽出したボクセル39の総体積を算出する(ステップS34)。同様にして、演算処理装置11が、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通してあるボクセルの総体積を算出する。同様にして、演算処理装置11が、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無いボクセルの総体積を算出する。
【0050】
次に、演算処理装置11が、記憶部14に格納された設計建物モデル20の中から、ボクセル38に関連付けられた属性情報21e(付加情報)と同一の属性情報21eを有する構成要素モデル21を検索する(ステップS35)。
次に、演算処理装置11が、検索した構成要素モデル21の属性情報21eに含まれる体積情報を読み込む(ステップS36)。
【0051】
次に、演算処理装置11が、ステップS34で算出した総体積及びステップS36で読み込んだ体積情報を表示部13に表示させる(ステップS37)。
また、演算処理装置11が、新建物ボクセルモデル30bのレンダリング処理を行うことによって新建物ボクセルモデル30bを表示部13に表示させる(ステップS37)。この際、ステップS33で抽出したボクセル38の色と他のボクセルの色を異ならせるようにして、新建物ボクセルモデル30bのレンダリング処理を行う。或いは、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通してあるボクセルの色と他のボクセルの色を異ならせるようにして、新建物ボクセルモデル30bのレンダリング処理を行う。或いは、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無いボクセルの色と、新建物ボクセルモデル30bにあるボクセルの色とを異ならせるようにして、新建物ボクセルモデル30bのレンダリング処理を行う。
また、演算処理装置11が、旧建物ボクセルモデル30aのレンダリング処理を行うことによって旧建物ボクセルモデル30aを表示部13に表示させる(ステップS37)。この際、ステップS33で抽出したボクセル39の色と他のボクセルの色を異ならせるようにして、旧建物ボクセルモデル30aのレンダリング処理を行う。或いは、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通してあるボクセルの色と他のボクセルの色を異ならせるようにして、旧建物ボクセルモデル30aのレンダリング処理を行う。或いは、新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通して無いボクセルの色と、旧建物ボクセルモデル30aにあるボクセルの色とを異ならせるようにして、旧建物ボクセルモデル30aのレンダリング処理を行う。
また、演算処理装置11が、記憶部14に格納された設計建物モデル20の各構成要素モデル21の三次元形状情報21bに従ってこれら構成要素モデル21のレンダリング処理を行って、設計建物モデル20を表示部13に表示させる(ステップS37)。この際、ステップS35で検索した構成要素モデル21の色と他の構成要素モデル21の色を異ならせるようにして、設計建物モデル20のレンダリング処理を行う。
【0052】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、構造物状況把握支援装置10を用いることにより、以下の効果が得られる。
【0053】
(1) 建物点群モデル30と設計建物モデル20を照合し(ステップS3)、何れの構成要素モデル21の三次元形状の外縁の内側にも含まれない点に施工時設計変更の付加情報が付与され(ステップS4)、その点がそれ以外の点の色と異なる色で表示されるので(ステップS10)、建設中又は改修工事中の建物うちどの部分が施工時に設計変更となったかをユーザや作業員に把握させることができる。
【0054】
(2) 建物点群モデル30と設計建物モデル20を照合し(ステップS5)、構成要素モデル21の三次元形状の外縁の内側に含まれる点が少なければ(ステップS6:NO)、それらの点に未施工の付加情報が付与されるので(ステップS8)、それらの点をそれ以外の点の色と異なる色で表示することができる(ステップS10)。そのため、建設中又は改修工事中の建物うちどの部分が未施工であるかをユーザや作業員に把握させることができる。
【0055】
(3) 建物点群モデル30と設計建物モデル20を照合し(ステップS5)、構成要素モデル21の三次元形状の外縁の内側に含まれる点が多い場合には(ステップS6:YES)、それらの点に属性情報21eが付加情報として付与されるので(ステップS7)、それらの点を属性情報21eの内容ごとに異なる色で表示することができる(ステップS10)。そのため、建設中又は改修工事中の建物うち完成した部位とそれらの属性をユーザや作業員に把握させることができる。
【0056】
(4) 建物点群モデル30a,30bをボクセルモデルに変換する(ステップS32)ことによってデータ数が減少するので、建物ボクセルモデル30a,30bを対比してこれら建物ボクセルモデル30a,30bの差分をとる際の計算時間を短縮することができる。
【0057】
(5) 旧建物ボクセルモデル30aになく且つ新建物ボクセルモデル30bにあるボクセル38の総体積が表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの期間に施工が完了した出来形の体積をユーザや作業員等に把握させることができる。また、旧建物ボクセルモデル30aにあり且つ新建物ボクセルモデル30bにないボクセル39の総体積が表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの間に消失した仮設材の体積をユーザや作業員等に把握させることができる。また、旧建物ボクセルモデル30aにあり且つ新建物ボクセルモデル30bにあるボクセル39の総体積が表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時点で施工が完了した出来形の体積をユーザや作業員に把握させることができる。
【0058】
(6) 旧建物ボクセルモデル30aになく且つ新建物ボクセルモデル30bにあるボクセル38の色が他の色のボクセルと異なるようにして、新建物ボクセルモデル30bが表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの期間に施工が完了した出来形をユーザや作業員等に把握させることができる。新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通してあるボクセルの色と他のボクセルの色を異ならせるようにして、新建物ボクセルモデル30bが表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの期間で変化の無い構成要素をユーザや作業員等に把握させることができる。
【0059】
(7) 旧新建物ボクセルモデル30bになく且つ旧建物ボクセルモデル30aにあるボクセル39の色が他の色のボクセルと異なるようにして、旧建物ボクセルモデル30aが表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの間に消失した仮設材をユーザや作業員等に把握させることができる。新建物ボクセルモデル30b及び旧建物ボクセルモデル30aに共通してあるボクセルの色と他のボクセルの色を異ならせるようにして、旧建物ボクセルモデル30aが表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの期間で変化の無い構成要素をユーザや作業員等に把握させることができる。
【0060】
(8) 旧建物ボクセルモデル30aになく且つ新建物ボクセルモデル30bにあるボクセル38に対応する構成要素モデル21が他の構成要素モデル21と異なる色で表示されるので(ステップS37)、旧建物点群モデル30aがモデル化された時から新建物点群モデル30bがモデル化された時までの期間に施工が完了した出来形をユーザや作業員等に把握させることができる。
【0061】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0062】
(1) 設計建物モデル20又は建物点群モデル30は予め記憶部14に記憶されているのではなく、インターネット等を介してダウンロードしたものでもよい。
【0063】
(2) 上記実施形態では、構造物として建物を挙げたが、他の構造物(例えば橋梁、ダム、護岸構造物、鉄道用高架構造物、道路用高架構造物、高架構造物)に適用してもよい。
【0064】
(3) 上記実施形態では、記憶部14に格納された全ての建物点群モデル30が、建設中又は改修工事中の建物90を上空から測量装置95によって測量することによって作成されたものであった。それに対して、記憶部14に格納された建物点群モデル30のうち少なくとも1つが、建設中又は改修中の所定の時点における設計建物モデルを点群モデルに変換したものでもよい。つまり、設計建物モデル20は建設完了又は改修完了時点におけるモデルであるので、記憶部14に格納された建物点群モデル30のうち少なくとも1つが、設計建物モデル20から一部の構成要素モデル21を省略した設計建物モデルを点群モデルに変換したものでもよいし、設計建物モデル20から一部の構成要素モデル21を省略した上で仮設材のモデルを追加した設計建物モデルを点群モデルに変換したものでもよい。そして、ステップS31によって読み込まれる新旧の建物点群モデル30a,30bが設計建物モデルを点群モデルに変換したものである場合、ステップS32の処理により建物点群モデル30a,30bがボクセルモデルに変換されるので、その新旧の建物ボクセルモデル30a,30bは設計建物モデルをボクセルモデルに変換したものである。
【符号の説明】
【0065】
10…構造物状況把握支援装置, 11…演算処理装置, 14…記憶部, 80…プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図16
図15