(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1種の貴金属と少なくとも1種の混合酸化物とを含み、前記混合酸化物が、二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素とを含む触媒組成物であって、前記貴金属は担持されており、かつ担体は前記混合酸化物からなるものではなく、かつ該混合酸化物における、二酸化ジルコニウム対二酸化ケイ素の質量比は、86:14〜99.9:0.1であることを特徴とする、少なくとも一つのエポキシ基を含む化合物からケトンを製造するための触媒組成物。
前記ジルコニウム化合物が、二酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項5から9までのいずれか1項に記載の方法。
少なくとも1種の貴金属と少なくとも1種の混合酸化物とを含有する触媒組成物であって、前記混合酸化物が、二酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素とを含み、前記貴金属が担体上に担持されており、かつ前記混合酸化物における、二酸化ジルコニウム対二酸化ケイ素の質量比が86:14〜99.9:0.1である触媒組成物の、少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物からケトンを製造するための使用において、前記担体が前記混合酸化物であるか、または前記担体が前記混合酸化物からなるものではないことを特徴とする使用。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、触媒量または反応時間を低減できるように、エポキシドからケトンへの転位を適合させるという課題が生じた。更に、前記ケトンは、少なくとも同じ高さの選択性および/または収率で得られるべきである。更に、反応温度を、従来技術の方法におけるよりも低く下げることができればプロセス工学的に好ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目下、前記課題を解決しうる冒頭に挙げた種類の触媒組成物が見出された。
【0007】
前記組成物は、少なくとも1種の貴金属および少なくとも1種の混合酸化物を含み、その際、前記混合酸化物は、二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含有する。前記混合酸化物における二酸化ジルコニウムの二酸化ケイ素に対する質量比は、86:14〜99.9:0.1、好ましくは90:10〜97:3である。上述の質量比によって、例えば二酸化ジルコニウムでドープされた二酸化ケイ素は排除されている。前記質量比は、該混合酸化物のために使用されたジルコニウム化合物またはケイ素化合物を基礎として計算される。
【0008】
第一の実施形態においては、前記貴金属は、担持されていない(系I)。
【0009】
第二の実施形態においては、前記貴金属は担持されており、その際、担体は、前記混合酸化物からなるものではない(系II)。前記用語の「…からなるものではない」は、そのため結局、担体の全質量に対して100質量%の混合酸化物を含む担体を排除している。好ましい一実施形態においては、前記担体は、前記混合酸化物を含有せず、または前記混合酸化物からなるものではない。従ってこの好ましい実施形態は、前記担体が混合酸化物からなるものではない場合も、前記担体が混合酸化物を含有しない場合も含んでいる。最後に挙げた事例は、前記担体が混合酸化物からなるものでないという境界例を含んでいる。技術的に必然的に生ずる不純物である、担体の全質量に対して1質量%までの混合酸化物は除外する。
【0010】
貴金属の担体は、好ましくは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、活性炭またはそれらからなる混合物から選択され、その際、二酸化ケイ素が好ましい。該混合酸化物の比表面積は、BET法により測定して、好ましくは5〜155m
2/gである。
【0011】
本発明の第三の実施形態(系III)においては、前記混合酸化物は、有機ケイ素化合物から製造できるものであってはならない。該混合酸化物の比表面積は、BET法により測定して、5〜155m
2/gであり、かつ前記貴金属は、混合酸化物上に担持されている(該混合酸化物が担体として機能する)。この場合に、前記混合酸化物は、単峰性の孔径分布を有する。この場合に、前記混合酸化物が、少なくとも100nmの粒度を有する二酸化ケイ素から製造できることが好ましい。
【0012】
前記孔径分布は、例えば細孔形成剤の添加によってもたらすことができる。この場合に、当業者は、相応の予備試験によって単峰性またはより高度の分布が得られるかどうかを決定できる。
【0013】
前記混合酸化物の孔径分布は、水銀多孔度測定法によって測定される。水銀多孔度測定法は、CE Instruments社製のPascal 440およびPascal 140の機器において最大圧力4000バールでDIN 66133に従って測定した。
【0014】
前記の系I、系IIおよび系IIIを含む本発明の3種の実施形態は、本発明による触媒系と呼ぶ。
【0015】
前記の系IIおよび系IIIは、好ましい触媒組成物であり、その際、系IIが特に好ましい。前記系IIの利点は、担体と貴金属が、特に連続法において、混合酸化物とは個別に存在しうることにある。これによって、個別の反応操作が可能となる。更に、貴金属と混合酸化物との隔離は、該貴金属の老化(その老化により選択性が低下する)を低減する。
【0016】
系Iおよび系IIの混合酸化物は、好ましくは、5〜155m
2/gの範囲にあるBET表面積を有する。
【0017】
本発明による触媒系の混合酸化物のBET表面積は、80〜150m
2/gの範囲にあることが好ましい。BET表面積は、DIN 66131およびDIN ISO 9277に従って測定される。155m
2/gを上回るBET表面積は、より低い選択性をもたらす。
【0018】
驚くべきことに、本発明による触媒組成物は、エポキシ化合物の転位に際してケトンの形成を触媒する。前記ケトンは、高い収率および純度で得ることができる。更に、従来技術に比べて、少ない触媒量を使用でき、および/または短い反応時間を実現できる。更に、該反応はより低い温度で触媒される。
【0019】
上述の質量比の範囲外の混合酸化物を有する触媒組成物は、明らかにより低い活性を示す。更に、エポキシドの転位に際してのケトン形成の選択性は低下する。
【0020】
混合酸化物とは、本発明の意味においては、少なくとも二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含む組成物を意味する。二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素は、該混合酸化物中に具体的な化合物として存在するのではなく、単に質量比の計算のための基礎として利用される。前記混合酸化物は、か焼によって得られる。従って前記混合酸化物は、二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素の物理混合物ではなく、少なくともケイ素カチオンおよびジルコニウムカチオンを固有の結晶構造で含む化学混合物である。少なくとも前記2種の酸化物を含む物理混合物であって、それがか焼されていない場合には、本発明の意味における混合酸化物ではない。同様に、二酸化ジルコニウムでドープされた、または二酸化ジルコニウムで被覆された二酸化ケイ素はほとんど含まれていない。
【0021】
前記混合酸化物は、二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含むか、またはこれらの両者の酸化物からなる。前記混合酸化物における二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素からなる合計の割合は、それぞれ該混合酸化物の全質量に対して、好ましくは少なくとも20質量%であり、有利には少なくとも30質量%であり、特に有利には50質量%であり、より特に有利には95質量%である。前記混合酸化物が二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素からなるのが特に好ましい。
【0022】
前記触媒系の混合酸化物は、0.5〜2g/cm
3の平均嵩密度を有してよい。嵩密度は、まず空の1000mLのメスシリンダーを秤量することで測定される。引き続き、該混合酸化物を500mLの印まで充填する。その充填されたシリンダーを再び秤量し、充填されたメスシリンダーと空のメスシリンダーの質量差から該材料の嵩密度がg/cm
3で示される。
【0023】
本発明による触媒組成物は、前記混合酸化物を含む。更に、該混合酸化物からなるものではない、貴金属用の担体が存在してよい(不活性担体、系II)。好ましくは、前記担体は、前記混合酸化物を含有せず、または前記混合酸化物からなるものではない。担体としての混合酸化物および前記不活性担体は、粉末としてまたは成形体として存在してよく、その際、該担体が成形体であることが好ましい。同様に、前記混合酸化物は、該混合酸化物が貴金属用担体として機能するものでない場合に成形体として存在することが好ましい。
【0024】
適切な成形体は、球体、押出成形体、タブレット、造粒物およびペレットである。粉末の成形体への変換は、例えば書籍「中実触媒の合成(Synthesis of Solid Catalysts)」, K. P. de Jong(編集), Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, Germany (2009)の第9章「中実触媒の成形(Shaping of Solid Catalysts)」に記載されている。
【0025】
混合酸化物と貴金属との質量に対する比率は、全ての触媒系において、99.9:0.1〜50:50、好ましくは99.5:0.5〜80:20、有利には99:1〜90:10であってよい。
【0026】
前記貴金属が担持されている場合に(触媒系IIおよびIII)、貴金属および担体からの全質量に対する貴金属の割合は、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2.5質量%、有利には0.3〜2.0質量%であってよい。貴金属は、担体上にまたは担体中に分布していてよい。
【0027】
触媒系の貴金属は、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金およびそれらの混合物から選択され、その際、ルテニウム、パラジウムおよび白金が好ましく、ルテニウムおよびパラジウムが特に好ましく、パラジウムがより特に好ましい。白金は、3種の貴金属のルテニウム、パラジウムおよび白金の系列において、CDONに対するそのより低い選択性のため、あまり適切でない。貴金属は粉末(非担持)としてまたは担持されて存在してよい。前記貴金属は、元素の金属として、またはその酸化物の形で存在してよく、その際、元素の金属が好ましい。
【0028】
本発明の更なる主題は、本発明による触媒組成物の製造方法である。前記組成物は、少なくとも1種の貴金属および少なくとも1種の混合酸化物を含む。前記混合酸化物の製造のためには、まず少なくとも1種のジルコニウム化合物、固体としての二酸化ケイ素および水を含む成形可能な材料が製造される。該成形可能な材料を引き続き300〜500℃、好ましくは400〜500℃の温度でか焼する。系IIIの製造のためには、該二酸化ケイ素は、少なくとも100nmの粒度d
50を有することが必要である。系IIIのためには、ポリアルキレンピロリドン、例えばポリビニルピロリドン、ポリアミン、ポリアクリレート、ポリアルコール、ポリシロキサンまたはそれらの混合物から選択されるポリマーを添加しないことが好ましい。それによって、二峰性の孔径分布の発生が防止される。
【0029】
固体としての二酸化ケイ素とは、水中で安定な分散液を形成しない粉末を表す。固体としての二酸化ケイ素は、好ましくは500μm未満の粒度d
50を有する。好ましくは、前記粒度は500μm未満であり、その際、これらの下限値は、ふるい分析によって測定される(500μmのメッシュ幅;これらの下限値は、ふるい分析によって測定して、従って最大値であり、平均値d
50ではない)。同様に、前記固体は、好ましくは100nmより大きい粒度d
50を有する(系IおよびIIの場合)。全ての系I、系IIおよび系IIIの場合に、前記粒度d
50は、好ましくは500nmを上回り、特に好ましくは1μmを上回る。粒度d
50は、レーザ回折によってISO 13320:2009に従って測定される。該測定過程にわたり、固体は(製造元の指示に従い)、Malvern Mastersizer 2000の分散装置Scirocco 2000中に存在する。圧力は1バールで選択されて該測定が実施される。
【0030】
SiO
2のコロイド状溶液、例えばLudox(Grace Davison)およびKoestrosol(CWK Bad Koestritz)は、好ましくはない。そのようなコロイド状の溶液は、一般的に、個々のSiO
2粒子を5〜30nmの間のサイズd
50で含む。SiO
2の粒度をコロイド状溶液中で測定するためには、Malvern社製のNano LinieのZetasizerが使用される。その測定は室温で行われる。
【0031】
好ましくは、前記二酸化ケイ素は熱分解法によって製造される。前記方法は当業者に公知であり、例えば文献シリーズ「微粒子(Fine Particles)」、第11号(2003年第7版)、Degussa AG社の社誌から知られている。
【0032】
前記ジルコニウム化合物は、好ましくは、二酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムまたはそれらの混合物から選択される。好ましくは、二酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物が使用される。
【0033】
水酸化ジルコニウムとは、水酸化ジルコニウム(IV)を表す。
【0034】
同様に、前記ジルコニウム化合物は、AおよびBを含む混合物から選択されることが好ましい。この場合に、Aは、二酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムおよびそれらの混合物を含む。Bは、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムおよびそれらの混合物から選択される。Aからのジルコニウムの割合は、AおよびBからのジルコニウムの合計に対して、好ましくは少なくとも85モル%、有利には少なくとも90モル%である。
【0035】
か焼によって、前記ジルコニウム化合物は、少なくとも部分的に二酸化ジルコニウムへと転化される。その限りでは、ジルコニウム化合物は、二酸化ジルコニウムそれ自身を除き、前駆体と呼ばれる。
【0036】
好ましくは、当業者は、それぞれ全てのジルコニウム化合物の合計に対して少なくとも50モル%の、好ましくは少なくとも90モル%の、特に好ましくは95モル%の、殊に好ましくは100モル%のジルコニウム化合物が二酸化ジルコニウムへと反応した時間的条件を選択する。
【0037】
系IIの製造のためには、前記貴金属は不活性担体上に含浸させることができ、その際、前記担体は前記混合酸化物からなるものではない。好ましくは、前記担体は、前記混合酸化物を含有せず、または前記混合酸化物からなるものではない。この目的のために、当業者に公知の、貴金属溶液の担体上への塗布などのあらゆる含浸法を使用することができる。
【0038】
系IIIの製造のためには、前記貴金属は担体としての混合酸化物上に含浸させることができる。この目的のために、当業者に公知の、貴金属溶液の担体上への塗布などのあらゆる含浸法を使用することができる。
【0039】
当業者は、該混合酸化物のBET表面積の大きさを、例えば155m
2/g未満の表面積を得るために公知の措置によって調整することができる。該混合酸化物中の二酸化ケイ素の割合が高いほど、該表面積は高くなる。従って、前記混合酸化物の全質量に対して最大14質量%の二酸化ケイ素が含まれている。更に、か焼温度が前記表面積に影響を及ぼす。その温度が低く調整されるほど、前記表面積は大きくなる。従って、か焼温度は、300℃を下回らず、好ましくは400℃を下回らない。更に、例えば欧州特許出願公開第2108631号明細書(米国特許出願公開第2009/0255402号明細書)に記載されているように、表面積の増大のためにポリマーは含まれていないことが好ましい。わずかな試験により、当業者は上述のパラメータによって表面積の調整を行うことができる。
【0040】
前記混合酸化物は、か焼の前またはか焼の後に成形体へと変形することができ、その際、か焼の前に成形体を形成することが好ましい。成形可能な材料は、有機バインダー(例えばポリマー、例えばセルロースエーテル、多糖、ポリエチレンオキシド)、細孔形成剤(例えばワックス、有機ポリマーであるが、有機ケイ素化合物は含まないことが好ましい)、無機酸、例えば硝酸、無機塩基、例えば苛性ソーダ液またはそれらの混合物を含有してよい。酸または塩基を用いて、前記混合酸化物の強度および成形可能性を調整することができる。系IIIのための細孔形成剤としては、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第1074301号明細書に記載されるように二峰性の細孔分布の形成を促す、ポリアルキレンピロリドン、例えばポリビニルピロリドン、ポリアミン、ポリアクリレート、ポリアルコール、ポリシロキサンまたはそれらの混合物は除外される。かかるポリマーの例は、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)である。
【0041】
触媒組成物Kの、少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物からケトンを製造するための使用が、本発明の更なる一つの主題を成す。前記触媒組成物Kは、少なくとも1種の貴金属および少なくとも1種の混合酸化物を含み、その際、前記混合酸化物は、二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含有し、かつ該混合酸化物における二酸化ジルコニウムの二酸化ケイ素に対する質量比は、86:14〜99.9:0.1である。貴金属は、前記混合酸化物上に担持されていてよい(系III)。
【0042】
好ましくは、本発明による触媒組成物または本発明による方法により製造される触媒組成物が使用され、その際、系IIが好ましい。
【0043】
ケトン、好ましくはシクロドデカノンの、少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物からの触媒組成物Kが使用される製造方法が、本発明の更なる一つの主題である。好ましくは、本発明による触媒組成物または本発明による方法により製造される触媒組成物が使用され、その際、系IIが好ましい。
【0044】
前記方法は、不均一系触媒反応である。
【0045】
少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物(化合物E)の物質量に対する貴金属の物質量割合は、0.00001〜0.1、好ましくは0.0001〜0.01であってよい。化合物Eの物質量に対する触媒系の混合酸化物の物質量割合は、0.001〜100、好ましくは0.005〜5であってよい。
【0046】
前記化合物Eは、脂肪族または脂環式であってよく、その際、脂環式化合物が好ましい。4〜20個の炭素原子を、好ましくは6〜16個の炭素原子を、特に好ましくは8〜14個の炭素原子を、殊に好ましくは10〜12個の炭素原子を、特に12個の炭素原子を含むことが好ましい。
【0047】
前記化合物Eは、1または複数のエポキシ基を含んでよく、その際、モノエポキシ化合物が好ましい。更に、前記化合物は飽和または不飽和であってよい。例えば、1もしくは2つの二重結合が含まれていてよい。
【0048】
好ましい化合物Eは、モノエポキシ−シクロアルカン、モノエポキシ−シクロアルカンジエンおよびモノエポキシ−シクロアルケンであり、その際、モノエポキシ−シクロアルカンが特に好ましい。殊に好ましい化合物Eは、モノエポキシ−シクロドデカンである。
【0049】
副生成物としての相応のアルコール誘導体の形成が水素の圧力に依存し、圧力が高まると、アルコールの割合が高まり、こうしてケトン選択性が低下することが判明した。
【0050】
本発明による方法は、0バールから100バールまでの水素圧で行うことができ、その際、水素圧は、好ましくは0〜5バールへと、有利には0〜2.5バールへと調整される。特に好ましくは、前記の水素圧は、0〜0.9バールであり、殊に好ましくは0〜0.5バールである。本発明による方法は、水素を用いずに実施することができる。しかしながら、不飽和の副生成物を抑えるためには、少なくとも低い水素含分を供することが好ましい。これは、0.05〜0.5バール、好ましくは0.1〜0.4バールを示しうる。その一方で、水素化ステップは転位の後に存在してよい。
【0051】
上述の圧力の記載は、前記系における水素の分圧に対するものである。通常は、溶剤、空気または不活性ガス、例えば窒素もしくはアルゴンを含む反応混合物の成分は、前記系の更なる気体状成分である。
【0052】
低い水素圧によって、先行技術に対して、水素を用いて作業しうるために、特に適切な装置において明らかにより少ない技術的な費用しか必要とされない。本発明の具体的な利点は、前記ケトンが水素の存在無くして高い収率で得られることにある。反応の間の温度は、好ましくは100〜350℃の範囲に、有利には150〜250℃の範囲に、特に好ましくは180〜230℃の範囲に調整される。前記反応は、液状の状態または気体状の状態で存在する化合物Eを用いて実施することができる。
【0053】
本発明による方法は、有機溶剤中で実施することができ、その際、溶剤を用いずに作業することが好ましいため、有機溶剤を使用しないことが好ましい。適切な溶剤は、例えばアルカン、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−テトラデカンおよびシクロヘキサン;エーテル、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン;アルカノール、例えばメタノール、エタノールおよびt−ブタノール;エステル、例えば酢酸エチルおよび酢酸ブチルである。前記溶剤は、それ自体で単独でまたは混合物で使用することができる。前記の溶剤は、好ましくは、化合物Eの質量の20倍以下、好ましくは10倍以下の量で使用される。
【0054】
前記方法は、連続的にまたは断続的に実施することができる。ケトンの後精製は、蒸留、結晶化または再結晶化によって行うことができる。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態においては、モノエポキシ−シクロドデカンは溶剤を用いずに170〜250℃の温度でシクロドデカノンへと転化され、その際、触媒系として、担体の全質量に対して0.5〜2質量%のパラジウム割合を有する不活性担体上のパラジウムと、少なくとも水酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含む混合物のか焼による混合酸化物との混合物が使用される(系II)。前記の反応において、最大で0.9バールの水素が、殊に好ましくは最大で0.1バールの水素が使用される。
【0056】
本発明の更なる一つの主題は、ラクタムの合成方法(本発明によるラクタム法)であって、上述の本発明によるケトンの製造方法が行われる合成方法である。前記化合物Eは、好ましくは、脂肪族のモノエポキシ−シクロアルカン、脂肪族のモノエポキシ−シクロアルカンジエンおよび脂肪族のモノエポキシ−シクロアルケンから選択され、その際、モノエポキシ−シクロアルカンが好ましい。
【0057】
ケトンが相応のアルコール誘導体との混合物で使用される限り、アルコールのケトンへの脱水が起こりうる。引き続き前記ケトンはオキシム化することができる。後続工程において、ラクタムへのベックマン転位が行われてよく、その際、前記転位は、硫酸または塩化シアヌルによって行うことができる。前記のラクタムは、重縮合によりポリアミドへと更に加工することができる。
【0058】
脱水素化、オキシム化、ベックマン転位ならびに縮合反応は当業者に公知である。
【0059】
本発明によるラクタム法の好ましい一実施形態においては、モノエポキシ−シクロドデカン(もしくはシクロドデカンエポキシドもしくは1,2−シクロドデカンエポキシド)からラウリンラクタムが製造される。
【0060】
好ましいラクタム法の範囲においては、モノエポキシ−シクロドデカンは、以下の反応ステップによって得ることができる(1,3−ブタジエンは、三量体環化によってシクロドデカトリエンへと転化される)。引き続き、シクロドデセンへの水素化が行われる。後続のエポキシ化によって、シクロドデカンエポキシドが得られる。有機化合物の合成の分野における当業者は、他の脂肪族のおよび脂環式の化合物Eを、モノエポキシ−シクロドデカンの合成と同様にして製造することができる。
【0061】
更なる説明をしなくても、当業者は、上述の記載内容を最も広い範囲で利用できることを前提とする。好ましい実施形態及び例は、それゆえ、単に説明的に解釈されるべきであって、決して何ら制限する開示として解されるべきではない。
【0062】
以下では、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明の代替的な実施形態は、同様にして得られる。
【実施例】
【0064】
触媒の百分率表示は、貴金属および担体を含む触媒の全質量に対する貴金属の質量割合を示す。略語「calc.」は、「か焼されている」ことを意味する。物質の略記は、以下の通りである:CDAN:シクロドデカン;CDEN:シクロドデセン;ECD:エポキシシクロドデカン;CDON:シクロドデカノン;CDENON:シクロドデセノン(異性体混合物);CDOL:シクロドデカノール;CDENOL:シクロドデセノール(異性体混合物)。
【0065】
貴金属の質量表記は、特に記載がない限り、貴金属の担体の全質量に対するものである。
【0066】
実施例で使用される二酸化ケイ素(Aerosil)は、熱分解法によって得られたものである。
【0067】
混合酸化物の製造
例A(本発明によるものではない): ZrO
2成形体の製造
酸化物1(100%ZrO2):2000gの水酸化ジルコニウム粉末(XZO 1501/09、MEL Chemicals社)を、マッフル炉において450℃で3時間にわたりか焼して二酸化ジルコニウムとした。冷却後に、1000gの二酸化ジルコニウム粉末を10gのセルロースエーテル(SE Tylose社のTylose MH1000 P2)と混合した。引き続き520gの水を添加し、そして該混合物を、押出可能な材料が得られるまでの間混練した。前記材料を、ローラーダイ押出機によって直径1.6mmを有するストランドに加工し、切断した。該成形体を110℃で4時間にわたり乾燥させ、引き続き450℃で2時間にわたりか焼させた。
【0068】
か焼された成形体のBET表面積は、64m
2/gであった。孔径分布は単峰性であった。
【0069】
前記酸化物1は、欧州特許出願公開第2772478号明細書の第3表の最終項目と第4表の四番目と五番目の項目で使用された二酸化ジルコニウムに相当する。
【0070】
例B: ZrO
2およびSiO
2(混合酸化物)からの成形体の製造
酸化物2(95%ZrO2、5%SiO2):773gの二酸化ジルコニウム粉末(例Aから)を、40gの二酸化ケイ素(Aerosil 200 V、Evonik社)および8gのTylose MH1000と混合した。引き続き450gの水を添加し、そして該混合物を、押出可能な材料が得られるまでの間混練した。前記材料を、ローラーダイ押出機によって直径1.6mmを有するストランドに加工し、切断した。該成形体を110℃で4時間にわたり乾燥させ、引き続き450℃で2時間にわたりか焼させた。
【0071】
孔径分布は単峰性であった。
【0072】
酸化物3(95%ZrO2、5%SiO2):1000gの水酸化ジルコニウム(XZO 1501/09、MEL Chemicals社)、40gのAerosil 200 V、20gのワックス(Clariant社のLicowax C Micro Powder PM)および2gのセルロースエーテル(SE Tylose社のTylose MH1000 P2)を、ミキサー中に装入し、乾式混合した。次いで、800gの水中の30%NaOH溶液8.3gを添加し、そして該混合物を、押出可能な材料が得られるまでの間混練した。前記材料を、ローラーダイ押出機によって直径1.8mmを有するストランドに加工し、切断した。該成形体を110℃で4時間にわたり乾燥させ、引き続き450℃で2時間にわたりか焼させた。
【0073】
か焼された成形体は、ZrO
2とSiO
2を質量比95:5で含有していた。か焼された成形体は、平均直径1.16mmを有し、かつ150m
2/gのBET表面積を有していた。
【0074】
他の酸化物(4〜9)は、類似の条件下で製造した。変更したのは、水酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素の量と、ジルコニウム化合物Bおよび無機酸もしくは無機塩基の種類と量であった。粉末状の成形助剤としては、常に20gのLicowaxおよび2gのTylose MH1000 P2を添加した。正確な条件は以下の表で理解される。
【0075】
酸化物10および11においては、ジルコニウム化合物Bとして、炭酸ジルコニウムアンモニウム(Bacote 20、酸化物10)または硝酸ジルコニル(酸化物11)を使用した。
【0076】
例C(本発明によるものではない): ZrO
2でドープされたSiO
2の製造
酸化物12(15%ZrO2、85%SiO2):85gのSiO
2担体(Aerolyst(登録商標)3041、Evonik社)を、5.5質量%NaOH溶液85mL中に含浸させ、そして110℃で4時間にわたり乾燥させた。並行して、40gのZrOCl
2・8H
2Oを水中に溶かし、その溶液を85mLにまで希釈した。乾燥された担体を、前記塩化ジルコニル溶液で含浸させ、110℃で一晩乾燥させ、引き続き450℃で2時間にわたりか焼させた。
【0077】
酸化物13(15%ZrO2、85%SiO2):50gの30%酢酸ジルコニウム溶液(Zr(OAc)
4)を85mLにまで希釈した。85gのSiO
2担体(Aerolyst(登録商標)3041、Evonik社)を、前記塩化ジルコニル溶液で含浸させ、110℃で一晩乾燥させ、引き続き450℃で2時間にわたりか焼させた。
【0078】
例A〜Cの全担体の孔径分布は単峰性であった。
【0079】
第1表: 製造された混合酸化物の概要
【表1】
【0080】
触媒組成物
例D: 混合酸化物およびPd含浸された二酸化ケイ素の組成(触媒系II)
2000gの二酸化ケイ素成形体(Aerolyst(登録商標)3041、Evonik社)を、回転しているガラスタンブラー(Glastrommel)中に充填し、110℃にまで加熱した。並行して、10%硝酸Pd(II)溶液100gを量り、水を添加することにより1910gに希釈した。該溶液を次いでSiO
2担体上に噴霧した。薄い貴金属の外被が生じた。含浸した成形体を、引き続き10時間にわたり還元雰囲気(窒素中水素0.4体積%)において200℃でか焼させた。PdのSiO
2担体に対する質量割合は、0.5%であった。これらのPd/SiO
2担体は、例A、B、Cからの種々の酸化物1〜13を用いて構成した。
【0081】
触媒組成物:
・ 組成物1*: 酸化物1(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%);この組成物は、欧州特許出願公開第2772478号明細書の第3表の最終項目と第4表の四番目と五番目の項目で使用された触媒組成物と同じ成分を含有する。
【0082】
・ 組成物2: 酸化物2(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0083】
・ 組成物3: 酸化物3(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0084】
・ 組成物4: 酸化物4(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0085】
・ 組成物5: 酸化物5(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0086】
・ 組成物6: 酸化物6(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0087】
・ 組成物7: 酸化物7(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0088】
・ 組成物8*: 酸化物8(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0089】
・ 組成物9*: 酸化物9(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0090】
・ 組成物10: 酸化物10(23質量%)およびPd/SiO
2(77質量%)。
【0091】
・ 組成物11: 酸化物11(23質量%)およびPd/SiO
2(77質量%)。
【0092】
・ 組成物12: 酸化物3(9質量%)およびPd/SiO
2(91質量%)。
【0093】
・ 組成物13: 酸化物3(23質量%)およびPd/SiO
2(77質量%)。
【0094】
・ 組成物14: 酸化物3(33質量%)およびPd/SiO
2(67質量%)。
【0095】
・ 組成物15: 酸化物6(20質量%)およびPd/SiO
2(80質量%)。
【0096】
・ 組成物16*: TiO
2−SiO
2混合物(か焼されている)、Evonik Industries社の熱分解法によるVP TiO2 545 S(9質量%)およびPd/SiO
2(91質量%)。
【0097】
・ 組成物17*: TiO
2−SiO
2混合物(か焼されている)、Evonik Industries社の熱分解法によるVP TiO2 590 S(9質量%)およびPd/SiO
2(91質量%)。
【0098】
・ 組成物18*: SiO
2、Aerosil(登録商標)200V(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0099】
・ 組成物19*: 酸化物12(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0100】
・ 組成物20*: 酸化物13(50質量%)およびPd/SiO
2(50質量%)。
【0101】
・ 組成物21*: 酸化物1(33.3質量%)およびPd/SiO
2(67.7質量%);この組成物は、欧州特許出願公開第772478号明細書の第3表の最終項目で使用された触媒組成物に相当する。
【0102】
・ 組成物22*: 酸化物1(9質量%)およびPd/SiO
2(91質量%);この組成物は、欧州特許出願公開第2772478号明細書の第3表の最終項目と第4表の四番目と五番目の項目で使用された触媒組成物と同じ成分を含有する。
【0103】
*は、本発明によるものではない。
【0104】
組成物1、21および22は、本発明の意味における混合酸化物を含まない。前記組成物は、二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素からなる物理混合物である(担体としてのSiO
2)。
【0105】
例E: 混合酸化物上に担持されたPd(触媒系III)
例Cによる酸化物成形体75gを、ポリ袋に秤量した。並行して、10%硝酸Pd(II)溶液3.75gを量り、水を添加することにより45mLに希釈した。希釈した溶液を、前記ポリ袋中の成形体に注ぎ、そしてその袋を繰り返し、液体が成形体上に均一に分布するまで振り動かした。含浸した成形体を、110℃で2.5時間にわたり乾燥させ、引き続き10時間にわたり還元雰囲気(窒素中水素0.4体積%)において200℃でか焼させた。混合酸化物の全質量に対する、前記触媒におけるPdの質量割合は、0.5%であった。
【0106】
触媒組成物:
・ 組成物23*: 0.5質量%のPdで担持した酸化物1。
【0107】
・ 組成物24*: 酸化物1を0.5質量%のPdで担持し(95質量%)、含浸とか焼の後にSiO
2、Aerosil(登録商標)200V(5質量%)と混合した。ここでは、ZrO
2およびSiO
2の物理混合物が存在して、混合酸化物は存在しない。
【0108】
・ 組成物25: 0.5質量%のPdを有する酸化物3。
【0109】
*は、本発明によるものではない。
【0110】
触媒試験
ガスクロマトグラフィー(GC): ガスクロマトグラフィー調査は、オートサンプラー、フレームイオン化検出器(FID)およびGCキャピラリーカラムSupelcowax(登録商標)(60m×0.32mm×0.25μm、Supelco)を備えたGC-2010(Shimadzu)クロマトグラフを用いて行った。測定は、スプリットモード(スプリット率1:66)でキャリヤーガスとしてヘリウムを用いて(流速0.89mL/分、線形キャリヤーガス速度17.9cm/秒)実施した。GCオーブン用の温度プログラム: 開始温度150℃;5℃/分で180℃まで加熱、10分間保持;5℃/分で200℃まで加熱、10分間保持。検出器温度および注入器温度は、340℃および220℃であった。
【0111】
例1: 種々の酸化物の比較(触媒系II)
反応は、機械的撹拌機を備えた500mLの丸底フラスコにおいて実施した。反応器の加熱は、電気式アルミニウム加熱ブロックで行い、内部温度は、温度センサで制御した。フラスコに、50mLの1,2−シクロドデカンエポキシドと、例Dからの触媒組成物20gを充填した。触媒床はフラスコの底にあり、液状の反応混合物は前記触媒床を通じて撹拌された。前記フラスコは引き続き窒素で不活性化し、215℃の内部温度にまで加熱した。温度は、1.5時間にわたり保持した。
【0112】
第2表: 反応混合物(1.5時間後)の組成(面積%、GC)
【表2】
【0113】
第2表において、CDONおよびCDENONについての選択性をまとめて表す。それというのもこれらは技術的に関連しているからである。CDENONが、通常は水素の添加によってCDONに転化されることがその背景である。その限りでは、CDENONは副生成物ではない。それでも、以下の第3表においては、完全性のためにCDONとCDENONは区別している。
【0114】
第3表: 第2表による反応混合物(1.5時間後)の組成(面積%、GC);混合物CDON+CDENONを分けて
【表3】
【0115】
同じ反応時間で、組成物1による転化率は、組成物2〜7による転化率よりも明らかに低い。混合酸化物ZrO
2−SiO
2はケトンに対する類似の選択性で、従来技術からの純粋なZrO
2よりもかなり高い触媒活性を有することが明らかになった。その活性は、混合酸化物中のSiO
2の割合に伴い上昇する。
【0116】
組成物8を用いると10%の副生成物CDENが得られたので、この触媒は、低い選択性のため経済的に使用することができない。該混合酸化物中の15質量%を上回るSiO
2割合と200m
2/gを上回るBET表面積は、そのため好ましくない。
【0117】
組成物9(有機ケイ素由来)ならびに組成物16および17(TiO
2およびSiO
2の化学混合物)は、CDONに対する非常に低い選択性を示している。
【0118】
組成物18は、触媒活性を有さない。この試験は、触媒系中のZrO
2が必須成分を成すことが有効であると認めている。
【0119】
組成物19(二酸化ジルコニウムでドープされたケイ素酸化物)は、比較的高い転化率および高い選択性を示す。しかし、第2表および第3表に表されるデータは、該反応で生ずる高沸点物(オリゴマーおよびポリマー)の形成を考慮していない。以下の第4表においては、高沸点物についての値が考慮される。
【0120】
第4表: 高沸点物を考慮に入れた5時間後の幾つかの反応混合物の組成(質量%、GCファクターで計算)
【表4】
【0121】
それぞれジルコニウムでドープされた二酸化ケイ素である組成物19および20を用いると、17%または85%の高沸点物の割合が得られる。それに対して、混合酸化物を含む本発明による組成物は、副生成物として2.6%の高沸点物しか有さない。二酸化ジルコニウムでドープされた、または二酸化ジルコニウムで被覆された二酸化ケイ素は、従って触媒系として適していない。
【0122】
例2: 種々の酸化物の比較(触媒系II) − 時間的推移
例1の上述の反応を、組成物1および3について、5時間の反応時間まで続けた。定期的にサンプルを取り出し、出発物質の1,2−シクロドデカンエポキシドの転化率を測定した。更に、30gの組成物21を用いた更なる試験を実施した。
【0123】
第5表: 5時間の期間にわたる出発物質の1,2−シクロドデカンエポキシドの転化率(面積%、GC)
【表5】
【0124】
本発明による組成物3は、既に1.5時間後に、使用された出発物質をほぼ完全な転化に導き、それは3時間後に100%に達した。前記混合物1は、5時間の反応後でさえもこの値に至らなかった。従来技術の混合物21(欧州特許出願公開第2772478号明細書、第3表の最終項目)は、確かに同様に完全な転化率を示すが、これは、明らかにより長い反応時間後に、かつより多量の触媒組成物を用いてはじめて達成される。
【0125】
該組成物の推移は、
図1に図示されている。その場合に、1,2−シクロドデカン−エポキシドの転化率U(%)を、反応時間t(時間)に対してプロットした。
【0126】
例3: 混合酸化物上に担持された貴金属(触媒系III)
反応は、機械的撹拌機を備えた500mLの丸底フラスコにおいて実施した。反応器の加熱は、電気式アルミニウム加熱ブロックで行い、内部温度は、温度センサで制御した。フラスコに、50mLの1,2−シクロドデカンエポキシドと、触媒組成物(例E)を充填した。触媒床はフラスコの底にあり、液状の反応混合物は前記触媒床を通じて撹拌された。前記フラスコは引き続き窒素で不活性化し、215℃の内部温度にまで加熱した。温度は、1.5時間にわたり保持した。
【0127】
第6表: 反応混合物(1.5時間後)の組成(面積%、GC)
【表6】
【0128】
例3は、触媒系IIIのZrO
2−SiO
2混合酸化物が触媒活性を有することを裏付けている。触媒活性は、結果として、混合酸化物(組成物25)については、SiO
2を含まない触媒(組成物23)またはZrO
2およびSiO
2からなる物理混合物を含む触媒(組成物24)についての活性より明らかに高くなった。
【0129】
例4: 最適化された反応条件(触媒系II)
反応は、機械的撹拌機を備えた500mLの丸底フラスコにおいて実施した。反応器の加熱は、電気式アルミニウム加熱ブロックで行い、内部温度は、温度センサで制御した。フラスコに、50mLの1,2−シクロドデカンエポキシドと、13gの触媒組成物を充填した。触媒床はフラスコの底にあり、液状の反応混合物は前記触媒床を通じて撹拌された。前記フラスコは引き続き窒素で不活性化し、215℃の内部温度にまで加熱した。温度は、6時間にわたり保持した。
【0130】
ZrO
2のSiO
2に対する質量比は、全ての3種の触媒組成物において95:5であった。同様に、酸化物の、不活性担体上のPdに対する質量比も同一であった(23:67)。前記酸化物は、水酸化ジルコニウムからと、水酸化ジルコニウムおよび化合物Bからのいずれかから製造された。
【0131】
第7表: 反応混合物(6時間後)の組成(面積%、GC)
【表7】
【0132】
水酸化ジルコニウムAに加えて、第二のジルコニウム化合物Bを、混合酸化物10および11の製造において添加した。前記組成物13は、唯一のZr源として水酸化ジルコニウムAを用いて製造した。従って、それらの触媒組成物は、ジルコニウム化合物の組成とは無関係に、エポキシドからケトンへの転位のために適している。
【0133】
第7表と同様に、第8表においてはCDONおよびCDENONの割合を個別に挙げている。
【0134】
第8表: 第7表による反応混合物(1.5時間後)の組成(面積%、GC);混合物CDON+CDENONを分けて
【表8】
【0135】
例5: 最適化された反応条件(触媒系II)
反応は、機械的撹拌機を備えた500mLの丸底フラスコにおいて実施した。反応器の加熱は、電気式アルミニウム加熱ブロックで行い、内部温度は、温度センサで制御した。フラスコに、50mLの1,2−シクロドデカンエポキシドと、成形体としての二酸化ケイ素上の0.5質量%パラジウム10gと、触媒系の混合酸化物(成形体)とを充填した。触媒床はフラスコの底にあり、液状の反応混合物は前記触媒床を通じて撹拌された。前記フラスコは引き続き窒素で不活性化し、180℃〜215℃の内部温度に加熱した。温度は、示される時間にわたり保持した。
【0136】
第9表:反応混合物の組成(面積%、GC)
【表9】
【0137】
第10表: 第9表による反応混合物の組成(面積%、GC);混合物CDON+CDENONを分けて
【表10】
【0138】
本発明による組成物12(ZrO
2−SiO
2混合酸化物)と本発明によるものではない組成物1および22(従来技術)との、215℃での5時間の反応時間の間での比較は、同じ触媒活性のためには、1/10未満のZrO
2が必要となることを裏付けている。同量の二酸化ジルコニウムを用いると、本発明による組成物12は、組成物22(従来技術)よりもかなり高い触媒活性を示す。
【0139】
前記の24時間の試験は、同様の高さの転化率を同時に同様に高い選択性で得るためには、組成物1に比べて、より少ない触媒(組成物12、13)またはより低い温度(組成物13、3)しか必要としないことを裏付けている。
【0140】
例6: エポキシドの転化
反応は、機械的撹拌機を備えた500mLの丸底フラスコにおいて実施した。反応器の加熱は、電気式アルミニウム加熱ブロックで行い、内部温度は、温度センサで制御した。フラスコに、50mLの1,2−シクロドデカンエポキシドと、成形体としての二酸化ケイ素上の0.5質量%パラジウム10gと、5gの酸化物3(15gの組成物14に相当する)とを充填した。触媒床はフラスコの底にあり、液状の反応混合物は前記触媒床を通じて撹拌された。反応の間に、水素と窒素からなる混合物を導通させた(90体積%のH
2および10体積%のN
2で1バール)。前記フラスコを引き続き215℃の内部温度にまで加熱した。温度は、5時間にわたり保持した。試験の終わりに、CDON(87.2%)、CDOL(8.4%)、CDAN(2%)およびCDENOL(1%)の混合物が得られた。
【0141】
例7: 固定床法
反応を固定床装置において実施した。前記装置は、直列の2つの固定床反応器(1反応器あたり約200mL)と鋼製装入容器(1L)とからなっていた。下方の固定床反応器に50gの酸化物6を充填し、かつ上方の固定床反応器に、例Dからの0.5%Pd/SiO
2を200g充填した。この組成物は、250gの触媒組成物15に相当する。前記容器に1500gの1,2−シクロドデカンエポキシドを充填した。液体は、装入物から下方から上方へと触媒床を通じて前記装入容器へ戻るような循環で循環ポンプ(10l/h)を用いてポンプ送りした。前記反応器は、電気式加熱器によって反応混合物中205℃になるまで加熱した。該反応混合物を、窒素と一緒に固定床反応器と前記容器に通した。30時間の反応後に、78%の転化率が約93%のCDONの選択性で達成された。
【0142】
第11表:反応混合物の組成(面積%、GC)
【表11】
【0143】
該反応は、本発明による触媒系を用いて固定床反応器中で行うことができる。この実験は、更に、触媒系IIの2つの成分(成形体としてのZrO
2−SiO
2混合酸化物およびPd/SiO
2成形体)は、空間的に隔離された反応器中で、活性および選択性に対して悪影響を及ぼすことなく使用できることを示している。
【0144】
[本発明の態様]
1. 少なくとも1種の貴金属および少なくとも1種の混合酸化物を含み、前記混合酸化物が二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含む触媒組成物であって、前記貴金属が担持されており、かつ担体は前記混合酸化物からなるものではなく、かつ該混合酸化物における二酸化ジルコニウムの二酸化ケイ素に対する質量比は、86:14〜99.9:0.1であることを特徴とする触媒組成物。
2. 前記担体が前記混合酸化物を含有しないことを特徴とする、1に記載の触媒組成物。
3. 前記貴金属の担体が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、1または2に記載の触媒組成物。
4. 前記貴金属が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金およびそれらの混合物、好ましくはパラジウムから選択されることを特徴とする、1から3までのいずれかに記載の触媒組成物。
5. 1から4までのいずれかに記載の触媒組成物の製造方法であって、前記混合酸化物の製造のために、
a)少なくとも
i. ジルコニウム化合物と、
ii. 固体としての二酸化ケイ素、好ましくは熱分解法によって製造された前記二酸化ケイ素と、
iii. 水と、
を含む成形可能な材料を製造し、そして
b)前記成形可能な材料を300〜500℃の温度でか焼させることを特徴とする製造方法。
6. 前記貴金属を、触媒系の製造のために不活性担体上に含浸させることを特徴とする、5に記載の方法。
7. 触媒組成物の製造方法であって、前記触媒組成物が、少なくとも1種の貴金属および少なくとも1種の混合酸化物を含み、前記混合酸化物が二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含有し、前記混合酸化物の比表面積が、BET法によって測定して、5〜155m
2/gであり、前記貴金属が前記混合酸化物上に担持されており、前記混合酸化物は、単峰性の孔径分布を有し、かつ前記混合酸化物における二酸化ジルコニウムの二酸化ケイ素に対する質量比が、86:14〜99.9:0.1である製造方法において、前記混合酸化物の製造のために、
a)少なくとも
i. ジルコニウム化合物と、
ii. 少なくとも100nmの粒度d
50(レーザ回折)を有する固体としての二酸化ケイ素、好ましくは熱分解法によって製造された前記二酸化ケイ素と、
iii. 水と、
を含む成形可能な材料を製造し、そして
b)前記成形可能な材料を300〜500℃の温度でか焼させることを特徴とする製造方法。
8. 前記貴金属を、担体としての混合酸化物上に含浸させることを特徴とする、7に記載の方法。
9. 前記二酸化ケイ素の粒度d
50(レーザ回折)が、100nm〜500μmであることを特徴とする、5から8までのいずれかに記載の方法。
10. 前記ジルコニウム化合物が、二酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムまたはそれらの混合物、好ましくは二酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、5から9までのいずれかに記載の方法。
11. 前記ジルコニウム化合物は、AおよびBからなる混合物であり、その際、
Aは、二酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウムおよびそれらの混合物から選択され、かつ
Bは、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムおよびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、10に記載の方法。
12. 前記成形可能な材料を、か焼の前に成形体へと変形させることを特徴とする、5から11までのいずれかに記載の方法。
13. 少なくとも1種の貴金属および少なくとも1種の混合酸化物を含有する触媒組成物であって、前記混合酸化物が二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含み、前記貴金属が担体上に担持されており、かつ前記混合酸化物における二酸化ジルコニウムの二酸化ケイ素に対する質量比が86:14〜99.9:0.1である触媒組成物の、少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物からのケトンの製造のための使用において、前記担体が前記混合酸化物であるか、または前記担体が前記混合酸化物からなるものではないことを特徴とする使用。
14. ケトン、好ましくはシクロドデカノンを、少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物から製造する方法であって、少なくとも1種の貴金属および少なくとも1種の混合酸化物を含有する触媒組成物が使用され、前記混合酸化物が二酸化ジルコニウムおよび二酸化ケイ素を含み、前記貴金属が担体上に担持されており、かつ前記混合酸化物における二酸化ジルコニウムの二酸化ケイ素に対する質量比が86:14〜99.9:0.1である製造方法において、前記担体が前記混合酸化物であるか、または前記担体が前記混合酸化物からなるものではないことを特徴とする製造方法。
15. 14に記載のケトンの製造方法が行われる、ラクタムの合成方法。