特許第6073449号(P6073449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6073449-導電性アンダーコート剤組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073449
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】導電性アンダーコート剤組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20170123BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20170123BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20170123BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20170123BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01G11/70
   H01G11/68
   H01G11/28
   C09D133/26
   C09D5/00 D
   C09D5/24
   C09D7/12
   C09D129/04
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-218129(P2015-218129)
(22)【出願日】2015年11月6日
(62)【分割の表示】特願2012-540826(P2012-540826)の分割
【原出願日】2011年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-122646(P2016-122646A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-240710(P2010-240710)
(32)【優先日】2010年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】上村 太一
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−339771(JP,A)
【文献】 特開2010−146726(JP,A)
【文献】 特開2000−123823(JP,A)
【文献】 米国特許第06544688(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01G 11/28
H01G 11/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基と結合する置換基を有する高分子と、活性水素基を有する無機粒子と、導電助剤を含む電池又は電気二重層キャパシタの集電体用導電性アンダーコート剤組成物であって、前記高分子がポリアクリルアミドである、アンダーコート剤組成物。
【請求項2】
前記無機粒子の等電点のpHが4.5〜14の範囲である事を特徴とする請求項1記載のアンダーコート剤組成物。
【請求項3】
更に、チタンカップリング剤及び/又はシランカップリング剤を含む事を特徴とする請求項1又は2記載のアンダーコート剤組成物。
【請求項4】
前記チタンカップリング剤及び/又はシランカップリング剤の添加量が、前記無機粒子が有する活性水素基全てと反応する量未満である事を特徴とする請求項記載のアンダーコート剤組成物。
【請求項5】
前記無機粒子の含有量が、前記活性水素基と結合する置換基を有する高分子100重量部に対して、5〜100重量部である、請求項1〜の何れか1項記載のアンダーコート剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜の何れか1項記載のアンダーコート剤組成物でコートした電池又は電気二重層キャパシタの集電体。
【請求項7】
請求項記載の電池又は電気二重層キャパシタの集電体を含む電池又は電気二重層キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池集電体用導電性アンダーコート剤組成物、これでコートした電池集電体及びこの電池集電体を含む電池に関する。この電池は、内部抵抗が低く、充放電サイクル特性に優れ、充放電容量が大きく、長期間多サイクル充放電した後の電極活物質の電池集電体からの脱落が起き難く、長寿命である。
【背景技術】
【0002】
軽量で電圧が高く容量も大きいリチウムイオン二次電池や、充放電レート特性の良い電気二重層キャパシタは、携帯電話やノートパソコンなどのモバイル機器の電源として実用化されている。しかし、発車及び停車時に短時間で大電流を出し入れする必要がある車載用などのパワー用途向けには、従来の電池では内部抵抗が高く、ハイレートにおける充放電サイクル特性が実用上十分ではない。また、従来の電池は、航続距離の観点から、充放電容量も十分ではなく、更に安全性の観点から見て、電極活物質層と金属集電体間の密着性も十分ではない。
【0003】
上記のように、電池として十分な特性を発揮できない一つの理由として、電池集電体と活物質層間の抵抗値が高く、また、電池集電体と活物質層間の密着力が不十分だったことを挙げることができる。この問題の改善策として、電池集電体に導電性のコート層を設け、該導電性コート層の表面に活物質層を形成することにより、電池集電体と活物質層間の界面の抵抗を低減させ、密着力を向上させる方法が考案されている(特許文献1)。
【0004】
中でも、結着剤として配合した高分子化合物を架橋したタイプは耐溶媒性や密着性に優れる(特許文献2、3、4)。
【0005】
しかし、これらの方法では、車載用などのパワー用途向けの電池に対して、実用上十分なハイレートにおける充放電サイクル特性を達成できず、特に長期間充放電サイクル試験や高温放置試験を行った際の電池特性の劣化防止に対して不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−121265公報
【特許文献2】特開平7−201362公報
【特許文献3】WO2009/147989パンフレット
【特許文献4】特開2010−146726公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、電池集電体と活物質層との密着性を高め電池特性を向上させるために用いられている集電体の導電性コート剤が、長期間充放電して使った場合や充電した状態で高温放置された場合、電気化学的に分解することで剥離し、電池の特性が大幅に落ちるという従来技術の問題点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の上記問題点を解決すべく検討したところ、電池特性の劣化が起きるのは、従来の結着剤と電池集電体との間の結合が電気化学的に分解しやすい事が充放電時にアンダーコート層が電池集電体から容易に剥離する原因であることを見出した。
【0009】
本発明は、活性水素基と結合する置換基を有する高分子と、活性水素基を有する無機粒子と、導電助剤とを含む電池又は電気二重層キャパシタの集電体用導電性アンダーコート剤組成物であり、これを電池又は電気二重層キャパシタの集電体にコートすることにより、長期間多サイクル充放電した後や、充電した状態で高温放置されたときの電池特性の劣化を防ぐことができる。
【0010】
本発明は、さらに、上記の電池又は電気二重層キャパシタの集電体用導電性アンダーコート剤組成物でコートした電池又は電気二重層キャパシタの集電体及びこの電池又は電気二重層キャパシタの集電体を含む電池である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、該無機微粒子表面の活性水素基と電池又は電気二重層キャパシタの集電体表面に存在する活性水素基と、活性水素基と結合する置換基を有する高分子とが結合するため、電池又は電気二重層キャパシタの集電体に対する密着力が高く、該無機微粒子表面の活性水素基と集電体表面の活性水素基との無機−無機の結合が電気化学的に切れにくいため、電気化学的にも安定なコート層を形成できる利点がある。
【0012】
本発明は、更に、従来の導電性コート層よりも密着力が強いため電極をスリットする際に導電性のチッピングが発生しにくく、使用時のショートに由来する事故を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、電池集電体用導電性アンダーコート剤組成物でコートした電池集電体と活物質層を含む電池用電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電池集電体用導電性アンダーコート剤組成物は、活性水素基と結合する置換基を有する高分子と、活性水素基を有する無機粒子と、導電性助剤とを含む。
【0015】
[活性水素基と結合する置換基を有する高分子化合物]
本発明における活性水素基と結合する置換基を有する高分子は、分子内に活性水素基と結合する置換基を有する高分子化合物である。活性水素基と結合する置換基とは、前記無機粒子が有する活性水素基と双極子相互作用や水素結合を形成したり、化学反応を起こして共有結合を形成したり出来る置換基である。活性水素基と双極子相互作用や水素結合を形成する置換基として、具体的には、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH、−NHR)、ヒドラジド基(RNN(R)C(=O)R)、ヒドロキシルアミノ基(−NHOH)、スルホ基(−SOH)、チオール基(−SH)、シラノール基(−SiOHR)(前記式中、R〜Rは、水素原子、C〜Cのアルキル基、ヒドロキシル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、アリル基、アリール基、ハロゲン、金属、などである。)などを例示することが出来、活性水素基同士は双極子相互作用や水素結合を形成できる。また、無機粒子が有する活性水素基と反応することで共有結合を形成できる置換基として、エポキシ基やオキセタニル基のようなオキシラン環、エピスルフィド基、エチレンイミン、エステル基(エステル交換反応によって架橋する)、アルコキシシランや金属アルコキシド、金属キレート等を例示する事が出来るが、これらに限定されない。
【0016】
活性水素基と結合する置換基を有する高分子の具体例として、完全ケン化ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA−124、日本酢ビ・ポバール株式会社製;JC−25、等)、部分ケン化ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA−235、日本酢ビ・ポバール株式会社製;JP−33、等)、変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレKポリマーKL−118、クラレCポリマーCM−318、クラレRポリマーR−1130、クラレLMポリマーLM−10HD、日本酢ビ・ポバール株式会社製;DポリマーDF−20、アニオン変性PVA AF−17、信越化学工業株式会社製;シアノレジンCR−S、等)、カルボキシメチルセルロース(ダイセル工業株式会社製;H−CMC、DN−100L、1120、2200、日本製紙ケミカル株式会社製;MAC200HC、等)、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル工業株式会社製;SP−400、等)、ポリアクリルアミド(MTアクアポリマー株式会社製;アコフロックA−102)、エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製;EX−614、ジャパンケムテック株式会社製;エピコート5003−W55、等)、エピスルフィド(ジャパンエポキシレジン株式会社製;YL7000、等)、ポリエチレンイミン(日本触媒株式会社製;エポミンP−1000)、ポリアクリル酸エステル(MTアクアポリマー株式会社製;アコフロックC−502、等)、糖類及びその誘導体(和光純薬工業株式会社;キトサン5、日澱化学株式会社製;エステル化澱粉乳華)、ポリスチレンスルホン酸(東ソー有機化学株式会社製;ボリナスPS−100)、メチルジメトキシシリル基末端ポリプロピレンオキシド(株式会社カネカ製;カネカサイリルSAT200)等、を例示する事が出来る。
【0017】
本発明における活性水素基と結合する置換基として、さらに、シリル基(−SiR111213)(式中、R11〜R13は、独立して、C〜Cアルキル基、及びハロゲン基からなる群から選択される基を表すが、ただし、R1〜R3の少なくとも1つは、−OR14(式中、R14はH、C〜Cアルキル基及び電池又は電気二重層キャパシタの電解質を構成し得るカチオンに由来する基からなる群から選択される基である)を挙げることができる。本発明におけるシリル基を有する高分子として、前記水溶性高分子にシリル基を置換させた化合物(例えば、シリル基変性ポリビニルアルコール)、及び前記水溶性高分子における活性水素基と反応する置換基(エポキシ基(信越化学工業株式会社製KBM-403)、無水カルボン酸(3−(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸)、イソシアネート基(信越化学工業 KBE9007))と前記シリル基を有する化合物との反応生成物を例示することが出来る。
【0018】
[活性水素基を有する無機粒子]
本発明における活性水素基を有する無機粒子は各種公知の無機粒子を使用する事が出来、例えば、シリカ、カオリン、ムライト、チタニア、酸化スズ、ベーマイト、γ−アルミナ、α−アルミナ、ベリリア、水酸化鉄;Fe(OH)、水酸化マンガン、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミ、ジルコニア、ハイドロキシアパタイト、チタン酸バリウム、炭酸ストロンチウム、蛍石、フェライト、酸化亜鉛、などを挙げることができる。これら無機粒子は、その等電点が適用する電池集電体表面に存在する活性水素基の等電点に近いほうが好ましく、例えばリチウムイオン二次電池の集電体や電気二重層型キャパシタの集電体に一般的に用いられているアルミニウムに対しては、対応する酸化物であるアルミナや水酸化物であるベーマイトの等電点のpHである7.7〜9.1の近くに等電点のpHがある無機粒子の使用が好ましい。無機粒子の等電点のpHは1.8〜14の間が好ましく、更に好ましくは4.5〜14の間であり、更に好ましくは6〜11の範囲であり、7〜10の範囲であるものが特に好ましい。各種無機粒子の等電点のpHとして、シリカ(pH約1.8)、カオリン(pH約5.1)、ムライト(pH約6.3)、チタニア;アナターゼ(pH約6.2)、酸化スズ(pH約6.9)、ベーマイト(pH約7.7)、γ−アルミナ(pH約7.9)、α−アルミナ(pH約9.1)、ベリリア(pH約10.1)、水酸化鉄;Fe(OH)(pH約12.0)、水酸化マンガン(pH約12.0)、水酸化マグネシウム(pH約12.4)、等を例示する事が出来る。等電点はJIS R1638 「ファインセラミック粉末の等電点測定方法」で規定した方法で測定した数値を用いることが出来る。このような無機粒子は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができ、表面の活性水素基を活性化させるために200℃程の高温で1時間ほど乾燥させたものが好ましい。これらは粉で使用しても良いし、シリカゾルやアルミゾルのような水分散コロイドの形で使用しても良い。粒子の大きさは比表面積が表面の活性水素基の量に比例するため小さい方が好ましく、0.001〜1μmの範囲が好ましく、更に好ましくは0.005〜0.5μmの範囲である。また、導電助剤の接触による導通の妨げにならないように、導電助剤の粒子の大きさや導電助剤同士の2次凝集による凝集粒子の大きさよりも無機粒子の大きさは小さい方が良い。
【0019】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、活性水素基を有する無機粒子を、高分子化合物100重量部に対して、0.1〜1000重量部含むのが好ましく、1〜200重量部含むのがより好ましく、5〜100重量部含むのが特に好ましい。
【0020】
[導電性助剤]
本発明における導電性助剤は、導電性の粒子若しくはフィラー、又はイオン性を有する液体であり得る。
【0021】
導電性粒子又は導電性フィラーとしては、Ag、Cu、Au、Al、Mg、Rh、W、Mo、Co、Ni、Pt、Pd、Cr、Ta、Pb、V、Zr、Ti、In、Fe、Zn等の金属粉末やフレーク、あるいはコロイド;Sn−Pb系、Sn−In系、Sn−Bi系、Sn−Ag系、Sn−Zn系の合金粉末やフレーク;アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックやグラファイト、グラファイト繊維、グラファイトフィブリル、カーボンファイバー、活性炭、木炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等の導電性炭素系材料;酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタン等)等のうち格子欠陥の存在により余剰電子が生成し導電性を示す金属酸化物系導電性フィラーが挙げられる。このような導電性粒子又はフィラーは、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができ、さらに表面をカップリング剤等で処理したものを利用することも好ましい。粒子の大きさは導電性や液性の観点から0.001〜100μmの範囲が好ましく、更に好ましくは0.01〜10μmの範囲である。ただし、導電性コート層に凹凸を付けアンカー効果で活物質層との密着性を上げる為に、上述の範囲よりも大きい導電性の粒子を用いることもできる。その場合は、上記範囲の導電助剤に対し、1〜50重量%、より好ましくは5〜10重量%の量で大きい導電性の粒子を複合する事が出来る。このような導電性粒子として、例えば炭素繊維(帝人株式会社製;ラヒーマR−A101=繊維径8μm、繊維長30μm)等を用いる事が出来る。
【0022】
イオン性を有する液体は、イオンが溶解した液体又はイオン性液体であり得る。イオンが溶解した液体のイオンとして、溶媒が水の場合、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等が例示でき、溶媒がジメチルカーボネート等の有機物の場合、六フッ化リン酸リチウム等が例示できる。イオン性液体の例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド等のイミダゾリウム塩誘導体;3−メチル−1−プロピルピリジミウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド等のピリジニウム塩誘導体;テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルフォネート、テトラフェニルアンモニウムメタンスルフォネート等のアルキルアンモニウム誘導体;テトラブチルフォスフォニウムメタンスルフォネート等のホスホニウム塩誘導体等を示すことができる。これらのイオン性を有する液体は導電性粒子と組み合わせて使用することが出来る。
【0023】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、導電性助剤を、高分子化合物100重量部に対して、1〜10000重量部含むのが好ましく、10〜9000重量部含むのがより好ましく、20〜8000重量部含むのが特に好ましい。
【0024】
本発明の電池集電体用導電性アンダーコート剤組成物は、集電体金属の表面に存在する活性水素基と結合する置換基を有する高分子や活性水素基を有する無機粒子を含む配合物を結着剤として使用しているため密着力が高く、また高分子が無機粒子を介して集電体金属と結合しているため電気化学的にも分解しにくい。
【0025】
(カップリング剤)
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、さらに、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等のカップリング剤を含むことができる。このようなカップリング剤としては、具体的にはフッ素系のシランカップリング剤として、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、エポキシ変性シランカップリング剤として信越化学工業株式会社製カップリング剤(商品名:KBM−403)、オキセタン変性シランカップリング剤として東亞合成株式会社製カップリング剤(商品名:TESOX)、あるいは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、チタニウムラクテートアンモニウム塩、テトラステアリルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、イソプロピルトリオクタイノルチタネート、イソプロピルジメタクリイソステアロイルチタネート、チタニウムラクテートエチルエステル、オクチレングリコールチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、トリイソステアリルイソプロピルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタン系カップリング剤を挙げることができる。これらの化合物は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。カップリング剤としては、チタン系カップリング剤又はシランカップリング剤が好ましい。チタン系のカップリング剤は等電点のpHが7以上の無機粒子に対してより好ましく適応でき、シランカプリング剤には等電点のpHが7未満の無機粒子に対してより好ましく適応できる。カップリング剤を電池集電体用導電性アンダーコート剤組成物に配合したり活性水素基を有する粒子の表面処理に使用したりすることにより、導電性アンダーコート剤組成物中に含まれる活性水素結合性の置換基と反応させ更に架橋密度を向上させる事ができ、活物質を構成する元素と集電体を構成する元素の相互置換反応を更に抑制できる。特に、チタン系カップリング剤やシランカップリング剤による活性水素基に対する架橋反応が起きることで、架橋速度を向上させたり電池集電体に対する密着力や強度電気化学的な耐性を向上させたりできる。
【0026】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、カップリング剤を、無機粒子100重量部に対して、0.001〜10重量部含むのが好ましく、0.01〜5重量部含むのが特に好ましい。これらカップリング剤は、無機粒子表面の活性水素基と反応を起こすが、全ての活性水素基を消費すると高分子化合物や電池集電体表面の活性水素基との結合が出来なくなるため、これを超えない量で添加する必要がある。最適な添加量は、90%メタノール10%水混合液に各種無機粒子を分散させ、そこに任意の量のカップリング剤を添加して反応させ、その後粒子を取り除いた混合液をガスクロマトグラフィーで分析し、検出したフリーのカップリング剤の量から、各種無機粒子に対して100%反応するカップリング剤の量を求め、この量から求める事が出来る。
【0027】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、好ましくは各種の溶媒や安定剤を含む。
【0028】
(溶媒)
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、液性を調整するために、各種溶媒を含むことができる。溶媒としては、炭化水素(プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、テレビン油、ピネン等)、ハロゲン系炭化水素(塩化メチル、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、臭化メチル、臭化エチル、クロロベンゼン、クロロブロモメタン、ブロモベンゼン、フルオロジクロロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジフルオロクロロエタン等)、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−オクタノール、n−ドデカノール、ノナノール、シクロヘキサノール、グリシドール等)、エーテル、アセタール(エチルエーテル、ジクロロエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、シネオール、メチラール)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−アミルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等)、エステル(ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸−n−アミル、酢酸メチルシクロヘキシル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、ステアリン酸ブチル等)、多価アルコールとその誘導体(エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル等)、脂肪酸及びフェノール(ギ酸、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、フェノール、クレゾール、o−クレゾール、キシレノール等)、窒素化合物(ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジアミルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、o−トルイジン、o−クロロアニリン、ジクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル、ピリジン、α−ピコリン、2,4−ルチジン、キノリン、モルホリン等)、硫黄、リン、その他化合物(二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、4,4−ジエチル−1,2−ジチオラン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メタンチオール、プロパンスルトン、リン酸トリエチル、リン酸トフェニル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、ホウ酸アミル等)、無機溶剤(液体アンモニア、シリコーンオイル等)、水等の液体を例示することができる。
【0029】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、塗工装置に合わせて溶媒を粘度調製のために任意の比率で添加することが可能で、塗工性の観点から1〜10000mPa・sの粘度が好ましく、10〜1000mPa・sの粘度がより好ましく、100〜500mPa・sの粘度が特に好ましい。
【0030】
(安定剤)
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、さらに必要に応じて、安定剤を適宜選択して含むことができる。このような安定剤としては、具体的には2,6−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチル−フェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−アニリノ)−1,3,5−トリアジン等によって例示されるフェノール系酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン等によって例示される芳香族アミン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ビス[2−メチル−4−{3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ}−5−tert−ブチル−フェニル]スルフィド、2−メルカプト−5−メチル−ベンゾイミダゾール等によって例示されるサルファイド系ヒドロペルオキシド分解剤、トリス(イソデシル)ホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスファートジエチルエステル、ナトリウムビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファート等によって例示されるリン系ヒドロペルオキシド分解剤、フェニルサリチラート、4−tert−オクチルフェニルサリチラート等によって例示されるサリチレート系光安定剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等によって例示されるベンゾフェノン系光安定剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等によって例示されるベンゾトリアゾール系光安定剤、フェニル−4−ピペリジニルカルボナート、セバシン酸ビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]等によって例示されるヒンダードアミン系光安定剤、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル−(II)によって例示されるNi系光安定剤、シアノアクリレート系光安定剤、シュウ酸アニリド系光安定剤等を挙げることができる。これらの化合物は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、安定剤を、活性水素基と結合する置換基を有する高分子100重量部に対して、0.01〜10重量部含むのが好ましく、0.05〜5重量部含むのがより好ましく、0.1〜1重量部含むのが特に好ましい。
【0032】
(界面活性剤)
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、ぬれを調節するために、各種界面活性剤を含有することができる。このような界面活性剤としては、アニオン界面活性剤として、石ケン、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、メチルタウリン酸塩等が挙げられ、カウンターカチオンとしてはナトリウムイオンやリチウムイオンを用いる事が出来る。リチウムイオン二次電池に於いてはリチウムイオンタイプがより好ましい。両性界面活性剤としては、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸アルキルベタイン、スルホベタイン、アミオキサイド等が挙げられ、非イオン(ノニオン)型界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキルエーテル型化合物、ポリオキシソルビタンエステル等のエステル型化合物、アルキルフェノール型化合物、フッ素型化合物、シリコーン型化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0033】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、界面活性剤を、活性水素基と結合する置換基を有する高分子100重量部に対して、0.01〜50重量部含むのが好ましく、0.1〜20重量部含むのがより好ましく、1〜10重量部含むのが特に好ましい。
【0034】
(有機物粒子)
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、さらに、有機物粒子を含むことができる。本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、皮膜の柔軟性を付与したり電解液を該有機物粒子に含侵させたりすることでイオン伝導性を上げることができる。このような有機物粒子としては、スチレンブタジエンやニトリルゴムのようなゴム微粒子、アクリル粒子、ウレタン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリエチレン粒子、テフロン(登録商標)粒子、等が挙げられる。これらの粒子は、1種類、又は2種類以上を適宜組み合わせて使用することができるし、エマルジョンの形で添加することも出来る。
【0035】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、有機物粒子を、活性水素基と結合する置換基を有する高分子100重量部に対して、0.01〜100重量部含むのが好ましく、0.5〜80重量部含むのがより好ましく、1〜50重量部含むのが特に好ましい。
【0036】
(硬化剤)
本発明の導電性アンダーコート剤組成物には、更に、硬化剤を配合することが出来、皮膜の強度を上げたり皮膜や界面の耐電気分解性を向上させたりできる。このような硬化剤としては、ポリカルボン酸やポリスルホン酸等の酸を用いる事ができ、具体的にはクエン酸、ブタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン(酸無水物)、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート(酸無水物)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート(酸無水物)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、アスパラギン酸、ピロメリット酸、メリト酸、含リンエステル基テトラカルボン酸、フェニルエチニルフタル酸、オキシジフタル酸などを例示できる。中でも芳香族カルボン酸が反応性の観点で好ましく、カルボン酸が1分子中に3以上置換されているものが反応性や架橋密度の観点で好ましい。また、例示したポリカルボン酸の内、酸無水物に相当するものを使用することも出来る。
【0037】
本発明の導電性アンダーコート剤は、硬化剤を、活性水素基と結合する置換基を有する高分子100重量部に対して、1〜300重量部含むのが好ましく、10〜200重量部含むのがより好ましく、20〜100重量部含むのが特に好ましい。
【0038】
[導電性アンダーコート剤組成物の製造]
本発明の導電性アンダーコート剤組成物は、上記成分を混合し撹拌することによって溶液又は懸濁液等として得ることができる。撹拌は、プロペラ式ミキサー、プラネタリーミキサー、ハイブリッドミキサー、ニーダー、乳化用ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等の各種撹拌装置を適宜選択して行うことができる。また、必要に応じて加熱又は冷却しながら撹拌することもできる。
【0039】
[集電体]
本発明は、上記電池又は電気二重層キャパシタの集電体用導電性アンダーコート剤組成物でコートした電池又は電気二重層キャパシタの集電体である。
【0040】
本発明の導電性アンダーコート剤組成物でコートされた集電体は、上記材料を用いて配合した導電性アンダーコート剤組成物を電池又は電気二重層キャパシタの集電体にコートすることで製造できる。電池又は電気二重層キャパシタの集電体としては、金、銀、銅、アルミ、ニッケル、鉄、コバルト、などの金属やカーボン繊維不織布、金属複合材料などの導電性を有する複合材料を例示でき、リチウムイオン二次電池においては正極用にアルミ箔、負極用に銅箔、電気二重層キャパシタにおいてはアルミ箔やアルミのエッチング箔が用いられている。コーティングはグラビアコーターやスリットダイコーター、スプレーコーター、ディッピングなどを利用することが出来る。コート層の厚さは0.01〜100μmの範囲が好ましく、電気特性及び密着性の観点から0.05〜5μmの範囲が更に好ましい。コート層があまり薄いと導電助剤と電池集電体とが接触する機会や面積が減り抵抗値が下がらない。逆に厚すぎると抵抗が厚みに比例して上がるためやはり抵抗値が下がらなくなる。
【0041】
[電池又は電気二重層キャパシタ]
本発明は、上記電池又は電気二重層キャパシタの集電体用導電性アンダーコート剤組成物でコートした電池又は電気二重層キャパシタの集電体を含む電池又は電気二重層キャパシタに関する。電池の製造は、公知の方法によって行うことができる。
【0042】
本発明によれば、電池集電体と活物質層間の密着力が向上するため使用時の剥離による電池特性の劣化を防ぐことができる。
【0043】
本発明によれば、集電体と活物質層間の抵抗を低減させることができるため、ハイレートで充放電ができる。
【0044】
本発明によれば、電気化学的に安定な界面結合状態を形成できるため、長期多サイクル充放電を繰り返すか、あるいは、充電した状態で高温放置された場合の電気分解に伴う電池特性の劣化を防ぐことができる。
【0045】
本発明の電池は、内部抵抗が低く、また集電体と活物質層間の剥離が起き難いため、大電流を流すことが可能で、急速充放電が可能になる。また、電池集電体表面に強固に結合するため、界面の劣化に伴う抵抗値の増大を抑えることが出来、充放電試験や保存試験など長期信頼性試験後の電池特性の低下が小さい。特に、本発明の活性水素基を有する無機粒子は、電池集電体表面に存在する極性置換基(例えば金属の場合は水酸基など)と水素結合や共有結合を形成するため、密着力とその密着力の電気化学的な耐久性に優れる。従来の導電性アンダーコート剤組成物では、有機物が結合に寄与していたため電気化学的に切れやすく、長期信頼性に十分優れる電池を製造できないが、本発明によれば、無機粒子表面の活性水素基と集電体金属表面の極性置換基との結合が電気化学的に安定であり、長期安定性に優れる。また、コート剤中の導電性助剤が集電体表面と相互作用することで界面の抵抗値も下げる。例えば、金属集電体の場合、表面には絶縁性の酸化膜や水酸化膜が存在するが、導電性粒子を使った場合はそれら絶縁性の膜を突き破ることで抵抗値を低減させることができるし、イオン性液体を用いた場合、それら絶縁性の膜の欠損に染み込むことで抵抗値を低減させることができる。
【0046】
また本発明の導電性アンダーコート剤組成物でコートした電池集電体は、抵抗値が相対的に高いオリビン鉄系(LiFePO)のリチウムイオン電池に対して、内部抵抗を下げる効果が高く特に好ましく適用することが出来る。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。添加量の表示は、断りが無い場合は重量部である。
【0048】
[試験例1]
後述する実施例及び比較例で製造したリチウムイオン二次電池について、下記の特性を測定した。
【0049】
(初期容量測定)
初期容量を出すために0.01mAの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、次いで4.2Vの定電圧で2時間充電した。その後、0.01mAの定電流で電圧が3Vになるまで放電した。これを3回繰り返し、3回目の放電容量を初期容量とした。
【0050】
(初期内部抵抗)
初期容量を測定したセルを4.2Vの電位にし、その電位をセンターに±20mVの電圧変化で1kHzのインピーダンスを測定した。
【0051】
(レート特性)
初期容量から放電レートを求めて、放電レート別の放電容量を測定した。充電は毎回10時間かけて定電流で4.2Vまで電圧を上げた後、4.2V定電圧で2時間充電した。その後、10時間かけて定電流で3Vになるまで放電し、このときの放電容量を0.1Cの放電容量とした。次に同様に充電した後0.1Cで求めた放電容量から1時間で放電が完了する電流値で放電しそのときの放電容量を求め1Cのときの放電容量とした。同様に、3C、10C、30Cのときの放電用量を求め、0.1Cの時の放電容量を100%としたときの容量維持率を算出した。
【0052】
(サイクル寿命)
1Cで4.2Vまで充電し、4.2Vの定電圧で2時間充電したあと1Cで放電する充放電試験を実施した。このとき、放電容量が最初の1回目の放電に対して何%になるかを計算し容量が80%をきったときの充放電回数を寿命とした。
【0053】
(フロート試験)
45℃で0.1Cで4.2Vまで充電し、4.2Vの定電圧でのインピーダンス変化をおよそ1日おきに測定した。抵抗値が2倍になった時間を寿命とした。
【0054】
(耐久試験後の電極の剥離試験)
電池を上記サイクル寿命条件で1000サイクル耐久充放電試験を行い、耐久試験後の正極及び負極から活物質層の脱離がないかを電池を分解して確認した。
【0055】
評価基準は以下の通りであった。
◎:全く脱離は見られない
○:一部脱離は見られるが、集電体は剥き出しになっていない
△:脱離が進行し、集電体の一部が剥き出しになっている
×:活物質層が完全に脱離している
【0056】
[試験例2]
後述する実施例及び比較例で製造した電気二重層型キャパシタについて、下記の特性を測定した。
【0057】
(初期容量測定)
初期容量を出すために0.01mAの定電流で電圧が2.1Vになるまで充電した。その後、0.01mAの定電流で電圧が0Vになるまで放電した。これを3回繰り返し、3回目の放電容量を初期容量とした。
【0058】
(初期内部抵抗)
初期容量を測定したセルを2.1Vの電位にし、その電位をセンターに±10mVの電圧変化で1kHzのインピーダンスを測定した。
【0059】
(レート特性)
初期容量から放電レートを求めて、放電レート別の放電容量を測定した。充電は毎回1時間かけて定電流で2.1Vまで電圧を上げ充電した。その後、1時間かけて定電流で0Vになるまで放電し、このときの放電容量を1Cの放電容量とした。次に同様に充電した後1Cで求めた放電容量から0.1時間で放電が完了する電流値で放電しそのときの放電容量を求め10Cのときの放電容量とした。同様に、30C、100C、300Cのときの放電用量を求め、1Cの時の放電容量を100%としたときの容量維持率を算出した。
【0060】
(サイクル寿命)
1Cで2.1Vまで充電したあと1Cで0Vまで放電する充放電試験を実施した。このとき、放電容量が最初の1回目の放電に対して何%になるかを計算し容量が80%を切ったときの充放電回数を寿命とした。
【0061】
(フロート試験)
60℃、1Cで2.9Vまで充電し、2.9Vの定電圧でのインピーダンス変化をおよそ1日おきに測定した。抵抗値が2倍になった時間を寿命とした。
【0062】
(耐久試験後の電極の剥離試験)
電池を上記フロート寿命条件で3000時間耐久フロート試験を行い、耐久試験後の電極集電体からの活物質層の脱離がないかを電気二重層型キャパシタを分解して確認した。
【0063】
評価基準は以下の通りであった。
◎:全く脱離は見られない
○:一部脱離は見られるが、集電体は剥き出しになっていない
△:脱離が進行し、集電体の一部が剥き出しになっている
×:活物質層が完全に脱離している
【0064】
[実施例1〜28]リチウムイオン二次電池への適応
実施例1〜28では活性水素基と結合する置換基を有する高分子と、活性水素基を有する無機粒子と、導電助剤から成る導電性アンダーコート剤組成物を正極にコートした集電体を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法を説明する。
【0065】
(導電性アンダーコート剤組成物の製造)
10Lのビーカーに水1000部を加え、25℃で攪拌しながら活性水素基と結合する置換基を有する高分子を20部加え、3時間かけて80℃まで加熱し、更に80℃で5時間均一になるまで攪拌した。25℃まで冷却した後、そこへ活性水素基を有する無機粒子を10部加え4時間かけて概ね均一になるまで攪拌した。
【0066】
上記分散液を冷却ジャケットつきのビーズミルを用いて分散した。分散を、0.3mmのジルコニアボールを充填率80%で入れ、周速15mで液温が40℃以上にならないように冷却しながら48時間連続して循環して行い、分散液を得た。
【0067】
そこへ、導電助剤としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製;デンカブラックHS−100)を25部加え概ね均一になるまで攪拌し分散液を得た。
【0068】
上記分散液を冷却ジャケットつきのビーズミルを用いて更に分散した。分散を、0.5mmのジルコニアボールを充填率80%で入れ、周速7mで液温が30℃以上にならないように冷却しながら2回循環攪拌して行い、導電性アンダーコート剤組成物である塗工液を得た。各実施例に対応する各材料は表1に記載した通りである。
【0069】
【表1】
【0070】
※実施例で使用した表1中の材料は以下の通りである。
・シリカ(シーアイ化成株式会社製;NanoTek SiO=等電点のpH 1.8)
・ベーマイト(大明化学工業株式会社製;C01=等電点のpH 7.5)
・合成スメクタイト(コープケミカル株式会社製;ルーセンタイトSWN=等電点pH 10.5)
・ムライト(共立マテリアル株式会社製;KM101、等電点のpH 5.8)
・チタニア(日揮触媒化成株式会社製;PW−1010、等電点のpH 6.1 10%)
・酸化スズ(シーアイ化成株式会社製;NanoTek SnO、等電点のpH 6.9)
・γ−アルミナ(大明化学工業株式会社製;タイミクロンTM−300、等電点のpH 7.9)
・α−アルミナ(大明化学工業株式会社製;タイミクロンTM−D、等電点のpH 9.1)
・水酸化マグネシウム(タテホ化学工業株式会社製;エコーマグPZ−1、等電点のpH12.4)
・部分ケン化ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA−235)
・変性ポリビニルアルコール1(株式会社クラレ製;クラレポバールR1130=シリル基変性ポリビニルアルコール)
・変性ポリビニルアルコール2(信越化学工業株式会社製;シアノレジンCR−S)
・カルボキシメチルセルロース(ダイセル工業株式会社製;H−CMC)
・ポリアクリルアミド(MTアクアポリマー株式会社製;アコフロックA−102)
・エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製;EX−614)
・ポリエチレンイミン(日本触媒株式会社製;エポミンP−1000 樹脂分30%)
・ポリアクリル酸エステル(MTアクアポリマー株式会社;アコフロックC−502)
・キトサン(和光純薬工業株式会社製;キトサン5)
・澱粉(日澱化学株式会社製;エステル化澱粉 乳華)
・ポリスチレンスルホン酸(東ソー有機化学株式会社製;ボリナスPS−100)
・チタンカップリング剤(株式会社マツモト交商製;オルガチックスTC−400)
・シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製;KBM−403)
【0071】
※実施例12に於いては、水1000部の代りに、水1000部とN−メチルピロリドンを500部の混合物を使用した。
※実施例16に於いては、高分子の添加量は、20部の代りに、66部とした。
※実施例21〜22に於いては、チタンカップリング剤0.5部を活性水素基を有する無機粒子を加える前に添加しプロペラ式ミキサーで25℃で均一に攪拌し、次いで無機粒子を加えた。この量は、添加したベーマイト表面に存在する活性水素基の25%と反応する量である。チタンカップリング剤添加後の等電点におけるpHは7.2であった。
※実施例23に於いては、チタンカップリング剤1部を活性水素基を有する無機粒子を加える前に添加しプロペラ式ミキサーで25℃で均一に攪拌し、次いで無機粒子を加えた。この量は、添加したベーマイト表面に存在する活性水素基の50%と反応する量である。チタンカップリング剤添加後の等電点におけるpHは7.1であった。
※実施例24に於いては、チタンカップリング剤2部を活性水素基を有する無機粒子を加える前に添加しプロペラ式ミキサーで25℃で均一に攪拌し、次いで無機粒子を加えた。この量は、添加したベーマイト表面に存在する活性水酸基の全てと反応する量である。チタンカップリング剤添加後の等電点におけるpHは7.1であった。
※実施例25に於いては、ピロメリット酸は高分子と同時に2部加えた。
※実施例26に於いては、シランカップリング剤0.8部を活性水素基を有する無機粒子を加える前に添加しプロペラ式ミキサーで25℃で均一に攪拌し、次いで無機粒子を加えた。この量は、添加したベーマイト表面に存在する活性水酸基の25%と反応する量である。シランカップリング剤添加後の等電点におけるpHは6.0であった。
※実施例27に於いては、チタンカップリング剤0.3部を活性水素基を有する無機粒子を加える前に添加しプロペラ式ミキサーで25℃で均一に攪拌し、次いで無機粒子を加えた。この量は、添加したシリカ表面に存在する活性水酸基の25%と反応する量である。チタンカップリング剤添加後の等電点におけるpHは5.9であった。
※実施例28に於いては、シランカップリング剤0.8部を活性水素基を有する無機粒子を加える前に添加しプロペラ式ミキサーで25℃で均一に攪拌し、次いで無機粒子を加えた。この量は、添加したシリカ表面に存在する活性水酸基の25%と反応する量である。シランカップリング剤添加後の等電点におけるpHは5.5であった。
【0072】
(導電コート層を形成した集電体の製造)
幅300mm、厚さ20μmの圧延アルミ箔及び幅300mm、厚さ15μmの圧延銅箔に幅200mm(銅箔への導電性アンダーコート剤組成物の塗工は実施例3のみ)、厚さ10μmで上記塗工液を塗布し、180℃温風炉で30秒乾燥させた。乾燥後の塗工膜厚はそれぞれ1μmであった。
【0073】
※実施例3に於いては、正極集電体に導電性アンダーコート剤組成物をコートする代りに、正極集電体と負極集電体の両方に導電性アンダーコート剤組成物をコートした。
【0074】
(正極の製造)
冷却ジャケット付きの10Lプラネタリーミキサーに、PVdFの15%NMP溶液(株式会社クレハ製;クレハKFポリマー#1120)600部、コバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製;C−5H)1100部、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製;デンカブラックHS−100)100部、NMP5000部を加え液温が30℃を超えないように冷却しながら均一になるまで攪拌した。これを、前記導電コート層を形成した集電体に幅180mm、厚さ200μmで塗工し、160℃温風炉で20秒乾燥させた。これを線圧400kgf/cmでロールプレスした。プレス後の正極活物質層の厚みは22μmであった。
【0075】
(負極の製造)
冷却ジャケットつきの10Lプラネタリーミキサーに、PVdFの15%NMP溶液(株式会社クレハ製;クレハKFポリマー#9130)600部、グラファイト(日本黒鉛株式会社製;GR−15)1150部、NMP4000部を加え液温が30℃を超えないように冷却しながら均一になるまで攪拌した。これを、前記導電コート層を形成した集電体(実施例3以外は未塗工の銅箔)に幅180mm、厚さ200μmで塗工し、120℃温風炉で2分間乾燥させた。これを線圧300kgf/cmでロールプレスした。プレス後の負極活物質層の厚みは28μmであった。
【0076】
(リチウムイオン二次電池の製造)
正極及び負極を短辺に10mmの幅で両端に活物質層が塗工されていない領域が含まれるように40mm×50mmでカットし、金属がむき出しになっている部分に正極はアルミのタブを、負極にニッケルのタブを抵抗溶接で接合した。セパレーター(セルガード株式会社製;#2400)を幅45mm、長さ120mmにカットし、3つに折り返してその間に正極及び負極が対向するように挟み込み、これを幅50mm長さ100mmのアルミラミネートセルを二つ折りにしたもので挟み、タブが当たる部分にシーラントを挟み込んだ上でシーラント部分とそれに直行する辺を熱ラミネートして袋状にした。これを100℃の真空オーブンに12時間入れて真空乾燥させ、次いでドライブローブボックス中で6フッ化リン酸リチウム/EC:DEC=1:1 1M電解液(キシダ化学株式会社製;LBG−96533)を注入し、真空含侵した後、余った電解液を扱き出し、真空シーラーで接合密封して、リチウムイオン電池を製造した。
【0077】
[実施例29〜56]電気二重層キャパシタへの適応
実施例29〜56では導電性アンダーコート剤組成物をコートした集電体を用いて電気二重層型キャパシタを製造する方法を説明する。
【0078】
(導電性アンダーコート剤組成物)
導電性アンダーコート剤組成物は実施例1〜28と同じ方法で作製し、対応する配合と製造条件を実施例29〜56とし電気二重層キャパシタを製造し、これらを用いて性能を評価した。
【0079】
(導電コート層を形成した集電体の製造)
幅300mm、厚さ20μmの圧延アルミ箔に幅200mm、厚さ10μmで実施例1〜28で作製した各種塗工液をそれぞれ塗布し、180℃温風炉で30秒乾燥させた。乾燥後の塗工膜厚は1μmであった。ただし、導電性アンダーコート剤組成物の塗工は正負極両方に対して実施したが、実施例31だけは正極にのみ塗工した。
【0080】
(電極の製造)
冷却ジャケット付きの10Lプラネタリーミキサーに、PVdFの15%NMP溶液(株式会社クレハ製;クレハKFポリマー#1120)3000部、活性炭(クラレケミカル株式会社製;クラレコールRP−20)1500部、NMP2500部を加え液温が30℃を超えないように冷却しながら均一になるまで攪拌した。これを、前記導電コート層を形成した集電体に幅180mm、厚さ200μmで塗工し、160℃温風炉で20秒乾燥させた。これを線圧400kgf/cmでロールプレスした。プレス後の電極活物質層の厚みは22μmであった。実施例31の負極に付いては、導電性アンダーコート剤組成物未塗工のアルミ箔を用いて、上記手順で電極を作製した。
【0081】
(電気二重層型キャパシタの製造)
電極を短辺に10mm活物質層が無い領域が含まれるように40mm×50mmでカットし、金属がむき出しになっている部分にアルミのタブを抵抗溶接で接合した。セパレーター(セルガード株式会社製;#2400)を幅45mm、長さ120mmにカットし、3つに折り返してその間に2枚の電極が対向するように挟み込み、これを幅50mm長さ100mmのアルミラミネートセルを二つ折りにしたもので挟み、タブが当たる部分にシーラントを挟み込んだ上でシーラント部分とそれに直行する辺を熱ラミネートして袋状にした。これを100℃の真空オーブンに12時間入れて真空乾燥させ、次いでドライブローブボックス中でホウフッ化テトラエチルアンモニウム/PC 1M電解液(キシダ化学株式会社製;CPG−00005)を注入し、真空含侵した後、余った電解液を扱き出し、真空シーラーで接合密封して、電気二重層型キャパシタを製造した。
【0082】
[比較例1]
導電性アンダーコート剤組成物をコートしていない電池集電体を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0083】
[比較例2]
比較例2では、部分ケン化型のポリビニルアルコールと導電性助剤から成る導電性アンダーコート剤組成物を正極と負極の両方にコートした集電体を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法を説明する。
【0084】
(導電性アンダーコート剤組成物の製造)
10Lのビーカーに水1100部と部分ケン化型のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA235)を30部加え80℃で6時間均一になるまで攪拌した。そこへアセチレンブラック(電気化学工業社製;デンカブラックHS−100)を25部加え概ね均一になるまで攪拌し分散液を得た。上記分散液を冷却ジャケットつきのビーズミルを用いて分散した。分散には0.5mmのジルコニアボールを充填率80%で入れ、周速7mで液温が30℃以上にならないように冷却しながら攪拌し、導電性アンダーコート剤組成物である塗工液を得た。
【0085】
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
上記導電性アンダーコート剤組成物を正極と負極の両方の集電体にコートしたこと以外は、実施例1と同じ方法でリチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
[比較例3]
比較例3では、部分ケン化型のポリビニルアルコールとポリカルボン酸と導電性助剤から成る導電性アンダーコート剤組成物を正極にコートした集電体を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法を説明する。
【0087】
(導電性アンダーコート剤組成物の製造)
10Lのビーカーに水1000部と部分ケン化型のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA235)を20部加え80℃で6時間均一になるまで攪拌した。そこへ、ピロメリット酸を10部加え60℃で4時間均一になるまで攪拌した。そこへアセチレンブラック(電気化学工業社製;デンカブラックHS−100)を25部加え概ね均一になるまで攪拌し分散液を得た。上記分散液を冷却ジャケットつきのビーズミルを用いて分散した。分散には0.5mmのジルコニアボールを充填率80%で入れ、周速7mで液温が30℃以上にならないように冷却しながら攪拌し、導電性アンダーコート剤組成物である塗工液を得た。
【0088】
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
上記導電性アンダーコート剤組成物を正極の集電体にコートしたこと以外は、実施例1と同じ方法でリチウムイオン二次電池を作製した。
【0089】
[比較例4]
比較例4では、部分ケン化型のポリビニルアルコールとポリカルボン酸と導電性助剤とチタンカップリング剤から成る導電性アンダーコート剤組成物を正極と負極の両方にコートした集電体を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法を説明する。
【0090】
(導電性アンダーコート剤組成物の製造)
10Lのビーカーに水1000部と部分ケン化型のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;クラレポバールPVA235)を20部加え80℃で6時間均一になるまで攪拌した。そこへ、ピロメリット酸を10部加え60℃で4時間均一になるまで攪拌した。そこへアセチレンブラック(電気化学工業社製;デンカブラックHS−100)を25部加え概ね均一になるまで攪拌し分散液を得た。上記分散液を冷却ジャケットつきのビーズミルを用いて分散した。分散には0.5mmのジルコニアボールを充填率80%で入れ、周速7mで液温が30℃以上にならないように冷却しながら攪拌した。分散液にチタンカップリング剤(株式会社マツモト交商製;オルガチックスTC−400)1部を加え、室温で均一になるまで攪拌し導電性アンダーコート剤組成物である塗工液を得た。
【0091】
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
上記導電性アンダーコート剤組成物を正極と負極の両方の集電体にコートしたこと以外は、実施例1と同じ方法でリチウムイオン二次電池を作製した。
【0092】
[比較例5]
比較例5では、導電性アンダーコート剤組成物をコートしていない集電体を用いて電気二重層型キャパシタを製造する方法を説明する。
【0093】
(電気二重層型キャパシタの製造方法)
導電性アンダーコート剤組成物をコートしていない集電体を用いたこと以外は、実施例29と同じ方法で電気二重層型キャパシタを作製した。
【0094】
[比較例6]
比較例6では、比較例2で作製した導電性コート剤を正極と負極の両方にコートした集電体を用いて電気二重層キャパシタを製造する方法を説明する。
【0095】
(電気二重層型キャパシタの製造方法)
比較例2で作製した導電性アンダーコート剤組成物を正極と負極の両方にコートした集電体を用いたこと以外は、実施例29と同じ方法で電気二重層型キャパシタを作製した。
【0096】
[比較例7]
比較例7では、比較例3で作製した導電性コート剤を正極と負極の両方にコートした集電体を用いて電気二重層キャパシタを製造する方法を説明する。
【0097】
(電気二重層型キャパシタの製造方法)
比較例3で作製した導電性アンダーコート剤組成物を正極と負極の両方にコートした集電体を用いたこと以外は、実施例29と同じ方法で電気二重層型キャパシタを作製した。
【0098】
[比較例8]
比較例8では、比較例4で作製した導電性コート剤を正極と負極の両方にコートした集電体を用いて電気二重層キャパシタを製造する方法を説明する。
【0099】
(電気二重層型キャパシタの製造方法)
比較例4で作製した導電性アンダーコート剤組成物を正極と負極の両方にコートした集電体を用いたこと以外は、実施例29と同じ方法で電気二重層型キャパシタを作製した。
【0100】
[比較例9]
比較例9ではエッチング箔を用いて電気二重層型キャパシタを製造する方法を説明する。
【0101】
(電気二重層型キャパシタの製造方法)
集電体として電気二重層型キャパシタ用のアルミエッチング箔(幅300mm、厚さ20μm)を未コートで用いたこと以外は、実施例29と同じ方法で電気二重層型キャパシタを作製した。
【0102】
[リチウムイオン二次電池の特性評価]
実施例1〜28及び比較例1〜4のリチウムイオン二次電池の特性を試験例1の方法に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
[電気二重層キャパシタの特性評価]
実施例29〜56及び比較例5〜9の電気二重層キャパシタの特性を試験例2の方法に基づいて評価した。その結果を表3に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の電池又は電気二重層キャパシタの集電体用導電性アンダーコート剤組成物によれば、電池又は電気二重層キャパシタの集電体に対する密着力が高く、電気化学的な耐久性が従来のものよりも良いため、長期信頼性に優れた電池又は電気二重層キャパシタを提供できる。
【符号の説明】
【0106】
1:活物質層
2:電池電極用導電性アンダーコート剤組成物のコート層
3.電池集電体
図1