(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073488
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】サージ保護デバイス
(51)【国際特許分類】
H02H 3/20 20060101AFI20170123BHJP
H01C 7/12 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
H02H3/20 A
H01C7/12
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-538235(P2015-538235)
(86)(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公表番号】特表2016-502831(P2016-502831A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】CN2012083602
(87)【国際公開番号】WO2014063362
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514037697
【氏名又は名称】リテルヒューズ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138438
【弁理士】
【氏名又は名称】尾首 亘聰
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100131082
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 正信
(74)【代理人】
【識別番号】100185535
【弁理士】
【氏名又は名称】逢坂 敦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ウェン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ハイラン
(72)【発明者】
【氏名】イン、ファーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホイットニー、ステファン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ディーチェ、ジー・トッド
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3149085(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3155941(JP,U)
【文献】
特開2007−202392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/02−7/22
H02H 3/08−3/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路保護デバイスであり、
チャンバーを画定するハウジングと、
前記チャンバー内に配置された金属酸化物バリスタスタックと、
第1の導電性ばねであって、前記第1の導電性ばねは、第1の端部にて第1の熱切断部により前記金属酸化物バリスタスタックの第1の入力端子に電気的に接続され、第2の端部にて第1の入力ラインに電気的に接続され、前記金属酸化物バリスタスタックの前記第1の入力端子から離れるように付勢される前記第1の導電性ばねと、
第2の導電性ばねであって、前記第2の導電性ばねは、第1の端部にて第2の熱切断部により前記金属酸化物バリスタスタックの第2の入力端子に電気的に接続され、第2の端部にて第2の入力ラインに電気的に接続され、前記金属酸化物バリスタスタックの前記第2の入力端子から離れるように付勢される前記第2の導電性ばねとを備え、
過電圧状態が起きたときに、前記金属酸化物バリスタスタックにより生じる熱のために前記第1の熱切断部と前記第2の熱切断部のうちの少なくとも1つが溶融して、対応する前記第1の導電性ばね又は前記第2の導電性ばねが前記金属酸化物バリスタスタックの前記第1の入力端子又は前記第2の入力端子から離れるように動くことが可能となり開回路を形成すると共に、
前記第1の導電性ばねと前記第2の導電性ばねとを結合して両者の間の相対的な動きを制限する硬質電気絶縁部材をさらに備える、回路保護デバイス。
【請求項2】
回路保護デバイスであり、
チャンバーを画定するハウジングと、
前記チャンバー内に配置された金属酸化物バリスタスタックと、
第1の導電性ばねであって、前記第1の導電性ばねは、第1の端部にて第1の熱切断部により前記金属酸化物バリスタスタックの第1の入力端子に電気的に接続され、第2の端部にて第1の入力ラインに電気的に接続され、前記金属酸化物バリスタスタックの前記第1の入力端子から離れるように付勢される前記第1の導電性ばねと、
第2の導電性ばねであって、前記第2の導電性ばねは、第1の端部にて第2の熱切断部により前記金属酸化物バリスタスタックの第2の入力端子に電気的に接続され、第2の端部にて第2の入力ラインに電気的に接続され、前記金属酸化物バリスタスタックの前記第2の入力端子から離れるように付勢される前記第2の導電性ばねとを備え、
過電圧状態が起きたときに、前記金属酸化物バリスタスタックにより生じる熱のために前記第1の熱切断部と前記第2の熱切断部のうちの少なくとも1つが溶融して、対応する前記第1の導電性ばね又は前記第2の導電性ばねが前記金属酸化物バリスタスタックの前記第1の入力端子又は前記第2の入力端子から離れるように動くことが可能となり開回路を形成すると共に、
前記第1の導電性ばねと第2の導電性ばねとの間に、及び前記第1の入力端子と第2の入力端子との間に置かれた高熱伝導率電気絶縁部材をさらに備え、前記絶縁部材は、高温接合により前記第1の導電性ばねに電気的に接続され、低温接合により前記第1の入力端子に電気的に接続された第1の金属化された端部と、高温接合により前記第2の導電性ばねに電気的に接続され、低温接合により前記第2の入力端子に電気的に接続された第2の金属化された端部とを有する、回路保護デバイス。
【請求項3】
前記金属酸化物バリスタスタックは、電気的に並列接続された複数の金属酸化物バリスタを備える、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【請求項4】
前記金属酸化物バリスタスタックは、電気的に直列接続された複数の金属酸化物バリスタを備える、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【請求項5】
前記第1の熱切断部と第2の熱切断部のうちの少なくとも1つが低温はんだフィレットを備える、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記ハウジングの底部から延在し、前記第1の導電性ばねが前記金属酸化物バリスタスタックの前記第1の入力端子から離れるように付勢するように構成された第1の突起を含む、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記ハウジングの底部から延在し、前記第2の導電性ばねが前記金属酸化物バリスタスタックの前記第2の入力端子から離れるように付勢するように構成された第2の突起を含む、請求項6に記載の回路保護デバイス。
【請求項8】
前記ハウジングは、底部とカバーとを備える、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【請求項9】
前記底部は前記カバーにより覆われ、前記カバー内に嵌合される、請求項8に記載の回路保護デバイス。
【請求項10】
前記ハウジングの前記底部は前記第1と第2の入力ラインを受けるためにその低い側に空洞を画定する、請求項8に記載の回路保護デバイス。
【請求項11】
前記第1と第2の入力ラインは、前記空洞から前記ハウジングの前記底部の底面を通り前記チャンバーへ延在する、請求項10に記載の回路保護デバイス。
【請求項12】
前記ハウジングの前記底部における前記空洞にはポッティング材料が満たされる、請求項11に記載の回路保護デバイス。
【請求項13】
前記ポッティング材料はエポキシ樹脂を備える、請求項12に記載の回路保護デバイス。
【請求項14】
前記ポッティング材料は熱硬化性プラスチックを含む、請求項12に記載の回路保護デバイス。
【請求項15】
前記ポッティング材料は、シリコーンゴムゲルを含む、請求項12に記載の回路保護デバイス。
【請求項16】
前記金属酸化物バリスタスタックの第1の出力端子に電気的に接続された第1の出力ラインと、前記金属酸化物バリスタスタックの第2の出力端子に電気的に接続された第2の出力ラインとをさらに備える、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【請求項17】
前記金属酸化物バリスタスタックから延在しグランドラインに電気的に接続された少なくとも1つの導電突起をさらに備える、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【請求項18】
前記金属酸化物バリスタスタックはエポキシ樹脂で被膜される、請求項1又は2に記載の回路保護デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は回路保護デバイスの分野に関する。特に、本発明は、万一異常な過電圧状態による過熱が生じた場合に迅速な熱的応答をするように構成される一体化された熱切断部を有する金属酸化物バリスタスタックを含むサージ保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
過電圧保護デバイスは、過電圧障害状態に起因する損傷から電子回路及び部品を保護するのに使用される。これらの過電圧保護デバイスは、保護すべき回路とグランドラインとの間に接続された金属酸化物バリスタ(MOV)を含み得る。MOVは壊滅的な電圧サージからこのような回路を保護するのにMOVを使用することが可能となるような固有の電流−電圧特性を有する。これらのデバイスは、過電圧状態の間に開回路を形成するために溶融する熱リンクを利用し得る。特に、MOVの公称電圧又は閾値電圧よりも高い電圧がそのデバイスに印加されるときに、熱リンクが溶融する原因となる熱を発生するMOVを電流が通過して流れる。いったんこのリンクが溶融すると、保護すべき回路が過電圧状態により損傷することを防止する開回路が形成される。しかし、これらの既存の回路保護デバイスではMOVから熱リンクへの熱の効率的な伝達が可能でなかったため、応答時間が遅延していた。加えて、MOVデバイスは、高速の過渡過電圧の存在下で性能を劣化させる比較的高いインダクタンス特性を有する。さらに、既存の回路保護デバイスは、例えば、LED保護等における一定の応用分野においては組み立て及び接続作業が複雑であり、それゆえ製造コストが増加する。したがって、今日では金属酸化物バリスタを用いた回路保護デバイスにおける改善が望ましいと理解される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の例示的な実施形態は回路保護デバイスを指向している。例示的な実施形態では、この回路保護デバイスはチャンバーを画定するハウジング、金属酸化物バリスタスタック、第1の導電性ばね及び第2の導電性ばねを含む。金属酸化物バリスタスタックはハウジングのチャンバー内に配置される。第1の導電性ばねは第1の端部において第1のはんだ接続により金属酸化物バリスタスタックの第1の入力端子に電気的に接続され、第2の端部において第1の入力ラインに電気的に接続される。第1の導電性ばねは、金属酸化物バリスタスタックの第1の入力端子から離れるように付勢される。第2の導電性ばねは、第1の端部において第2のはんだ接続により金属酸化物バリスタスタックの第2の入力端子に電気的に接続され、第2の端部において第2の入力ラインに電気的に接続される。第2の導電性ばねは、金属酸化物バリスタスタックの第2の入力端子から離れるように付勢され、過電圧状態が生じたときに、金属酸化物バリスタスタックにより生じる熱により第1のはんだ接続と第2のはんだ接続のうち少なくとも1つが溶融し対応する第1の導電性ばね又は第2の導電性ばねが金属酸化物バリスタ回路の第1の入力端子又は第2の入力端子から離れるように移動することが可能となり開回路を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1a】
図1aは本開示の実施形態における回路保護デバイスの斜視図である。
【0005】
【
図1b】
図1bは本開示の実施形態における回路保護デバイスの概略図である。
【0006】
【
図2a】
図2aは本開示の実施形態における回路保護デバイスの斜視図である。
【0007】
【
図2b】
図2b本開示の実施形態における回路保護デバイスの概略図である。
【0008】
【
図3】
図3は本開示の実施形態における開いた状態で示される回路保護デバイスの切り欠き斜視図である。
【0009】
【
図4】
図4は本開示の実施形態における
図3に示されるばねアッセンブリとMOVスタックの一部分の分解斜視図である。
【0010】
【
図5a】
図5aはハウジングの底部の空洞に充填されていない状態の
図1aに示される回路保護デバイスの底面斜視図である。
【0011】
【
図5b】
図5bはハウジングの底部の空洞にポッティング材料が充填された状態の
図1aに示される回路保護デバイスの底面斜視図である。
【0012】
【
図6a】
図6aは本開示の回路保護デバイスの第1の代替実施形態の側面斜視図である。
【0013】
【
図6b】
図6bは
図6aに示される回路保護デバイスの第1の代替実施形態の背面斜視図である。
【0014】
【
図7a】
図7aは本開示の回路保護デバイスの第2の代替実施形態の側面斜視図である。
【0015】
【
図7b】
図7bは
図7aに示される回路保護デバイスの第2の代替実施形態の背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は添付の図面を参照してここにより詳しく説明され、本発明の好ましい実施形態が示される。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化されることができ、ここに記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全で完成されたものであり、本発明の範囲が当業者に充分に伝達されることを目的として提供される。図面において、同様の要素にたいしては同じ参照番号が振られる。
【0017】
次に続く実施形態及び/または特許請求範囲では、用語「上に」、「を覆う」,「に配置される」、「を超えて」が実施形態及び特許請求範囲で使用され得る。「上に」、「を覆う」,「に配置される」、「を超えて」は、2つ以上の要素が互いに他に対し直接物理的に接触していることを示すのに使用され得る。しかし、「上に」、「を覆う」,「に配置される」、「を超えて」は、2つ以上の要素が互いに他に対し直接接触していることをも意味し得る。例えば、「を越えて」(over)は、ある要素が他の要素の上方にあるが互いに接触はしておらずこの2つの要素の間にさらに別の1つ又は複数の要素があることを意味し得る。さらに、用語「及び/または」は「及び」をも意味し得て、これは「又は」をも意味し得て、これは「排他的論理和」をも意味し得て、これは「1つの」をも意味し得て、これは「いくつかの、しかし全てではない」をも意味し得て、これは「いずれもない(neither)」をも意味し得て、及び/またはこれは「両方」をも意味し得て、しかも請求項における発明の主題の範囲はこれらの点に限られない。
【0018】
図1A及び
図1Bは、それぞれ本開示における回路保護デバイス10の斜視図及び概略図を示す。この保護デバイス10は、ハウジング15と、入力ライン20a、20b、20cと、出力ライン25a、25bとを含み得る。この入力ライン20aはライン線であり得て、入力ライン20bはニュートラルラインであり得て、入力ライン20cはグランドラインであり得る。同様に、出力ライン25bは対応するライン線であり得て、出力ライン25bは対応するニュートラルラインであり得る。この入力ラインと出力ライン20a−c、25a、25bは、本開示の実施形態における保護デバイス10を電源(図示せず)と保護すべきデバイス又は回路(図示せず)との間に接続するために使用される。
【0019】
保護デバイス10のハウジング15は、内底部(internal bottom portion)15a(
図3参照)と、カバー15bにより定義され得る。ここで底部15aは、デバイス10を作動位置(底部15aは、スナップフィット又は摩擦嵌合(friction fit)等によりカバー15bにより覆われ又はカバー15b内に嵌合されるため、「内部(internal)」とも呼ばれる)に固定するために使用され得る、底部15aから延在する複数のフランジ17を含み得る。内底部15a及びカバー15bは、密閉チャンバー19を画定し、その中に金属酸化物バリスタ(MOV)35、45、48のスタックが、さらに以下に示すように入力ライン20a、20b、20cと出力ライン25a、25bと電気的に接続した状態で配置されている。あるいは、ハウジング15の底部15aは、保護すべきデバイスのプリント基板(PCB)の一体となったコンポーネント又は部分であり得て、MOV35、45、48は、保護デバイス10(さらに以下に説明する)の他の内部コンポーネントと同様、ハウジング15のカバー部分15bが嵌合する状態でPCBのこのようなコンポーネント又は部分に直接取り付けられ得ると考えられる。
【0020】
図5aを簡単に参照すると、ハウジング15の底部斜視図が示され、入力ライン20a−c及び出力ライン25a、25bが貫通できるようにするため複数の開口部21がハウジング15の底部15aの側壁に形成され得る。したがって、入力ライン20a−c及び出力ライン25a、25bは、低部15aの底面及び側壁により画定され得る空洞27に延在し得る。入力ライン20a−c及び出力ライン25a、25bは、下記のように保護デバイス10の内部部品との接続のため、底部15aの底面を通って、チャンバー19(上述の)に入り、空洞27から上方へ延在し得る。
図5bを参照すると、底部15の空洞には、従来のポッティングプロセスを用いて熱硬化性プラスチック又はシリコーンゴムゲル等のポッティングエポキシ29、又は他の固体の又はゼリー状の化合物を満たし得る。入力ライン20a−c及び出力ライン25a、25bは、これによりポッティング材料29の中に完全に包み込まれ得て、ポッティング材料29により衝撃や振動からの保護が得られ、これがない場合にはラインと保護デバイス10の間の電気的接続を損傷させ又は劣化させ得る湿気侵入や腐食剤を防止し得る。ハウジング15は、ここで説明した電気的接続を容易にし、本開示(以下に述べる)のMOVスタックに外部の周囲の状況からの適切な保護を提供する様々な代替的な構造及び構成により具体化され得ることは当業者により理解される。
【0021】
図1Bを参照すると、以下で説明するように低温半田フィレット等で形成され得る第1の熱切断部30が、入力ライン20に配置され、そして出力ライン25aを介して第1のMOV35の第1の端部に接続される。半田フィレット等で形成され得る第2の熱切断部40は、入力ライン20bに配置され、出力ライン25bを介してMOV35の第2の端部とMOV45の第1の端部に接続される。MOV48の第1の端部は、出力ライン25aを介して熱切断部30に接読される。MOV45の第2の端部とMOV48の第2の端部は、グランドライン20cに接続される。したがって、MOV48は、第1の端部においてMOV35の第1の端部と接続され、第2の端部においてグランドラインとMOV45の第2の端部に接続される。
【0022】
回路保護デバイス10の通常の動作の間(すなわち、過電圧状態でないとき)、MOV35、45、48のスタックは、熱切断部30、40の一方又は両方を溶融させるのに十分な量の熱を発生しない。しかし、MOV35、45、48のそれぞれがMOVの両端に印加された電圧がMOVの定格電圧を超える時に発熱する電圧に敏感なデバイスであるから、過電圧状態の発生によりMOV35、45、48のスタックは発熱する。過電圧状態が起こった場合、MOV35、45、48のスタックにより発生する熱は、熱切断部30、40のいずれか又は両方が溶融する原因となり、これにより過電圧状態に起因して出力ライン25a、25bに接続されるデバイス又は回路が損傷することを防止する開回路をもたらす。
【0023】
背景的情報として、MOV35、45、48のそれぞれは、主として共に焼結されて円形又は四角形のディスクを形成する酸化亜鉛の顆粒から成り得る。ここで他の酸化物で形成される粒間の境界は高い抵抗値をもつ一方、固体としての酸化亜鉛の顆粒は高い導電性を有する材料である。酸化亜鉛の顆粒が集まるこれらの場所においてのみ、焼成により対称ツェナーダイオードと比較し得るマイクロバリスタが生み出される。金属酸化物バリスタの電気的挙動は直列又は並列に接続された多数のマイクロバリスタの結果である。MOVの焼結体は、エネルギーの高い吸収能、したがって異常に高いサージ電流に対処する能力を可能とする高い電気負荷能力をも示している。
【0024】
図2A−2Bは、それぞれ本開示における回路保護デバイス200の代替実施形態の斜視図及び概略図を示す。保護デバイス200は、ハウジング215と入力接続ライン210a、210b、210cとを含み得る。例えば、この入力ライン210aはライン線であり得て、入力ライン210bはニュートラルラインであり得て、入力ライン210cはグランドラインであり得る。この接続ライン210a−cは、本開示の実施形態において電源(図示せず)と保護すべきデバイス又は回路(図示せず)の間に保護デバイス200を接続するのに使用される。
【0025】
図1a、1bで示して上述した回路保護デバイス10のハウジング15と同様に、デバイス200のハウジング215は、内底部215a及びカバー215bにより画定され得る。ここで底部215aは、デバイス210を作動位置(底部215aは、スナップフィット又は摩擦嵌合(friction fit)等によりカバー215bにより覆われ又はカバー215b内に嵌合されるため、「内部(internal)」とも呼ばれる)に固定するために使用され得る、底部215aから延在する複数のフランジ217を含み得る。底部215a及びカバー215bは、密閉チャンバー219を画定し、その中に金属酸化物バリスタ(MOV)235、245、248のスタックが、さらに以下に示すように入力ライン210a、210b、210cと電気的に接続した状態で配置されている。
【0026】
ハウジング215の底部215aには、入力ライン210a−cを受けるために、
図5aで示されるハウジング15の場合と同様に開口部221と空洞(図示せず)が具備され得る。底部215aの空洞は、
図5bおよび上に述べた、ハウジング15の底部15aの空洞27に対して行うのと同じやり方でポッティング材料を満たし得る。ここで、このようなポッティング材料は、熱硬化性プラスチック又はシリコーンゴムゲル等のエポキシ樹脂又はその他の固体もしくはゼリー状の化合物を含み得る。これらにより、入力ライン210a−cは、衝撃、振動、及び湿気から保護され得る。
【0027】
図2Bを参照すると、以下で説明するように低温はんだフィレット等で形成され得る第1の熱切断部230が接続ライン210に配置され得て、これによりMOV235、248の第1の端部に接続され得る。低温はんだフィレット等で形成され得る第2の熱切断部240が、接続ライン210bに配置され得て、これによりMOV235の第2の端部及びMOV245の第1の端部に接続され得る。MOV245の第2の端部及びMOV248の第2の端部は、グランド接続ライン210cに接続され得る。したがって、MOV248は、第1の端部においてMOV235の第1の端部に接続され、第2の端部においてグランドラインに接続され得る。
【0028】
デバイス200の通常の動作の間(すなわち、過電圧状態でないとき)、MOV235、245、248のスタックは、熱切断部230、240の一方又は両方を溶融させるのに十分な量の熱を発生しない。しかし、MOV235、245、248のそれぞれがMOVの両端に印加された電圧がMOVの定格電圧を超えるときに発熱する電圧に敏感なデバイスであるから、過電圧状態の発生によりMOV235、245、248のスタックは発熱する。過電圧状態が起こった場合、MOV235、245、248のスタックにより発生する熱は熱切断部230、240のいずれか又は両方が溶融する原因となり、これにより過電圧状態に起因してデバイス200により保護されるデバイス又は回路が損傷することを防止する開回路を作り出す。
【0029】
図3は、
図1に示される例示的な回路保護デバイス10のカバー15bをハウジング15から取り外した状態の一部切除斜視図である。MOVスタック310は、底部15aにより画定されるチャンバー19のある部分内に配置される。上述のように、MOVスタック310は、対応するサージ能力を有し低格温度で動作する複数のMOVから構成され得る。例えば、MOVスタック310は、上述のように入力ライン20a−20c及び出力ライン25a、25bへの接続に対応できる様々なピン構成を有する3つのMOV35、45、48を具備し得る。MOVスタック310は、エポキシ樹脂で被膜され、底部15aのチャンバー19内に配置され得る。
【0030】
入力ライン20a、20bは、片持ち梁構成でハウジング15の底部15aに取り付けられる導電性ばね330a、330bに接続され得る。この第1の導電性ばね330aの片持ち梁でない側の端部は入力ライン20aに接続され得て、第2の導電性ばね330bの片持ち梁でない側の端部は入力ライン20bに接続され得る。導電性ばね330a、330bは、溶接又は他の導電接続手段を介して入力ライン20a、20bに接続され得る。導電性ばね330a、330bは入力ライン20a、20bへの取り付け点から上方向へ延び得て、さらに底部15aの上面から上方向に延在する各突起305a、305bを越えてこれらに実質的に直角に延在し得る。突起305a、305bは、各導電性ばね330a、330bのそれぞれの片持ち梁の側の端部を第1のMOV接続端子311a(
図3では示されないが
図4では示される)及び第2のMOV接続端子311bから離れて上方に付勢する働きをする。導電突起340a、340bは、MOVスタック310と一体になっていてもよく、MOVスタック310から延在し得て、入力線20cと接続してMOVスタック310にグランドラインとの接続が可能となるようにし得る。出力ライン25a、25bは、MOVスタック310の第1の出力端子312a、第2の出力端子312bに接続され得る。
【0031】
図3に示されるように、保護デバイス10の導電性ばね330a、330bは開放位置にあり、ここでは導電性ばねs330a、330bの片持ち梁の側の端部は、MOV接続端子311a、311bのいずれにも接触しておらず、過電圧状態が起こった後の場合がこれに該当し得る。逆に通常の動作状態では、導電性ばね330a、330bのぞれぞれは閉じた位置にあり得て、導電性ばね330a、330bの片持ち梁の側の端部は、上述のように保護デバイス10の熱切断部30、40を規定する低温はんだフィレットによりそれぞれのMOV接続端子と電気的に接続される。
【0032】
図4は、
図3で示されるMOVスタック310及びばねアッセンブリの部分の分解斜視図を示す。
図3を参照して前に説明したように、MOVスタック310は第1の入力端子311a及び第2の入力端子311bを含み得る。上述のように、回路保護デバイス10が通常の動作状態にあるとき、入力端子311a、311bは、低温はんだフィレット(すなわち熱切断部30、40)により、第1の導電性ばね330aの片持ち梁の側の端部、第2の導電性ばね330bの片持ち梁の側の端部にそれぞれ電気的に接続される。入力ライン20aは、第1のばね330aの片持ち梁でない側の端部に電気的に接続され得る。入力ライン20bは、第2のばね330bの片持ち梁でない側の端部に電気的に接続される。入力ライン20cは、MOVスタック310の突起340a、340bに電気的に接続され得る。出力ライン25a、出力ライン25bは、MOVスタック310の出力端子312a、出力端子312bにそれぞれ電気的に接続され得る。
【0033】
特定の形状及び構成を有するものとして導電性ばね330a、330bの両方が示されるが、多数の他の代替的な形状及び構成が考えられ、本開示を逸脱することなく上に示され述べられた形状及び構成に置き換え得る。例えば、回路保護デバイス10の代替的実施形態として、導電性ばね330a、330bはチャンバー19内に配置され、入力ライン20a−c、出力ライン25a、25bとの間の接続をそれぞれ形成することが考えられる。
【0034】
回路保護デバイス10の他の考えられる実施形態として、
図6a、6bに示されるように、導電性ばね330a、330bは、硬質電気絶縁部材600により互いに他方と結合され得る。絶縁部材600は、導電性ばね330a、330bが互いに対して動くことを実質的に妨げる。したがって、過電圧状態が起こった場合等で導電性ばね330a、330bの片持ち梁の側の端部を入力端子311a、311bに接続する低温はんだフィレット(すなわち
図1bで示された熱切断部30、40)が溶融したとき、上向きに付勢した片持ち梁の側の端部は同時に入力端子311a、311bとの接触が外れ、したがって同時に導電性ばね330a、330bと入力端子311a、311bとの間の電気的接続が遮断される。
【0035】
回路保護デバイス10のさらに他の考えられる実施形態において、
図7a、7bに示されるように、導電性の金属端部700a、700bを有する高熱伝導率電気絶縁部材700を導電性ばね330a、330bの片持ち梁の側の端部と入力端子311a、311bの間に置いてもよい。絶縁部材700は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ベリリウム(BeO)、炭化ケイ素(SiC)、様々な金属−セラミック混合物、又は1つ又は複数の絶縁表面層を有する金属を含めて任意の高熱伝導率電気絶縁部材により形成されることができ、しかもこれらの材料に限られない。
【0036】
絶縁部材700の金属化された端部700aは、溶接等の高温での接合手段により導電性ばね330aに接合され得て、低温はんだフィレット等の低温での接合(すなわち
図1bで示された熱切断部30)により、入力端子311aに接合され得る。用語「高温接合」は、ここでは低温接合の溶融温度よりも比較的高い溶融温度を有する接合を意味するものと定義する。同様に、絶縁部材700の金属化された端部700bは、溶接等の高温接合により導電性ばね330bに接合され得て、低温はんだフィレット等の低温接合部分(すなわち
図1bで示される熱切断部40)により入力端子311bに接合され得る。これにより、導電性ばね330a及び導電性ばね330bのそれぞれと対応する入力端子311a、311bのうちの1つとの間の電気的接続が提供される。過電圧状態が起きた時に、電気絶縁部材700の熱伝導率により導電性ばね330a及び330bのそれぞれを対応する入力端子311a及び311bのうちの1つに接続させる2つの低温接合部分の間で熱が伝導することが可能となり、その結果接合部分が同時に溶融し、それに続いて絶縁部材700が入力端子311a、311bから分離する動きが起こる。導電性ばね330a、330bと対応する入力端子311a、311bの間の電気的接続が同時に遮断される。
【0037】
上記を鑑みると、本開示における回路保護デバイスは、異常な過電圧状態のために過熱が生じた場合に迅速な熱応答を提供し、これによりこのような過電圧状態からの生じ得る損傷から回路保護デバイスに接続されるデバイス又は回路を効果的に保護することが理解される。加えて、本開示における回路保護デバイスは、MOVを複数用いる従来の回路保護デバイスに比べて迅速に、容易に、比較的低い費用で実施し得ることが理解されるであろう。
【0038】
本発明はある実施形態を参照して開示されてきたが、添付された特許請求の範囲で定義された本発明の範囲と領域から逸脱することなく、記載された実施形態に対する多くの修正、変更、調整が可能である。したがって、本発明は説明された実施形態に限定されるものではなく、むしろ特許請求の範囲の文言により定義された全範囲が含まれることを意図している。