特許第6073491号(P6073491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073491
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】エアフローメータ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/692 20060101AFI20170123BHJP
   G01F 1/696 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G01F1/692 Z
   G01F1/696 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-540134(P2015-540134)
(86)(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公表番号】特表2015-533421(P2015-533421A)
(43)【公表日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2013072852
(87)【国際公開番号】WO2014068078
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】102012220019.3
(32)【優先日】2012年11月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トアステン クニッテル
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン セテシャック
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−292234(JP,A)
【文献】 特開2002−081983(JP,A)
【文献】 米国特許第06139758(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68−1/699
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフローメータ(2)であって、微小電気機械式の構造で形成されたセンサエレメント(15)を備え、該センサエレメント(15)が、加熱エレメント(12)と少なくとも1つの温度センサエレメント(7,8)とを有し、該温度センサエレメント(7,8)が、サーモエレメント(23)として形成されており、該サーモエレメント(23)が、電流(I)により順次に通電される、直列に接続された数の熱電対(29,31,32,33)から成り、該熱電対(29,31,32,33)が、それぞれ第1の金属製の導体(24)と、第2の金属製の導体(25)とから成り、両金属製の導体(24,25)が、それぞれ一方の端部で接続個所(28)によって互いに接続されており、前記第1の金属製の導体(24)と、前記第2の金属製の導体(25)とが、互いに異なる金属から形成されているエアフローメータ(2)において、
前記サーモエレメント(23)の一番目の熱電対(31)と最後の熱電対(32)の極性を、前記一番目の熱電対(31)と前記最後の熱電対(32)との間に配置されたその他の熱電対(33)の極性と反転させるように、前記複数の熱電対(29,31,32,33)が配置されている
ことを特徴とするエアフローメータ(2)。
【請求項2】
前記センサエレメント(15)が、第1の温度センサエレメント(7)と第2の温度センサエレメント(8)とを有する、請求項1記載のエアフローメータ(2)。
【請求項3】
前記第1の温度センサエレメント(7)は、前記加熱エレメント(12)に関して上流側に配置されており、前記第2の温度センサエレメント(8)は、前記加熱エレメント(12)に関して下流側に配置されている、請求項2記載のエアフローメータ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフローメータ(空気質量計)であって、微小電気機械式の構造で形成されたセンサエレメントを備え、該センサエレメントが、加熱エレメントと少なくとも1つの温度センサエレメントとを有し、該温度センサエレメントが、サーモエレメントとして形成されており、該サーモエレメントが、電流により順次に通電される、直列に接続された多数の熱電対から成り、該熱電対が、それぞれ第1の金属製の導体と、第2の金属製の導体とから成り、両金属製の導体が、それぞれ一方の端部で接続個所によって互いに接続されており、前記第1の金属製の導体と、前記第2の金属製の導体とが、互いに異なる金属から形成されているエアフローメータに関する。
【0002】
エアフローメータは、たとえば自動車において、内燃機関により吸い込まれた空気質量を検出するために使用される。吸い込まれた空気質量に関する、できるだけ信頼性の良い情報を基礎にして、内燃機関の電子制御装置によって燃焼が最適化され得るようになり、この場合、空気質量に合わせて正確に調整された燃料量が、各燃焼室に供給されるようになる。その結果、エネルギ利用の改善が得られると同時に、有害物質排出の低減が得られる。
【0003】
独国特許出願公開第4407209号明細書に基づき公知のエアフローメータは、空気質量を測定するために吸気通路内に差し込まれる。この場合、全体流のうちの規定された割合の流量がエアフローメータを流通する。このためには、このエアフローメータが、プラグイン式通路型のエアフローメータとして形成されている。このエアフローメータは、測定通路内に配置されたセンサエレメントと、このセンサエレメントの測定値の評価および/または検出のための、ハウジング内に配置された電子装置と、センサエレメントを挟んで反対の側の流出通路とを含む。スペース節約的な配置のためには、上記通路もしくは空気案内路が、U字形、S字形またはC字形に形成されているので、全体的にコンパクトな、プラグインエレメントとして形成された装置が構成される。
【0004】
米国特許出願公開第5393351号明細書に開示されているエアフローメータでは、サーモエレメントとして形成された温度センサエレメントが、センサエレメントの縁領域において付加的なサーモエレメントによって保護される。
【0005】
独国特許出願公開第10057403号明細書には、サーモパイル型の熱電センサが開示されている。サーモパイル型の熱電センサの出力信号は、感度調節のための熱電パターンが、1つのサーモパイルを形成する複数の熱電パターンと直列に接続されるように調節され得る。
【0006】
国際公開第03/089884号に記載の構成により構成された、ホットフィルム式流速計として構成されたエアフローメータが、原理的に有利であることが判っている。
【0007】
微小電気機械式のシステム(MEMS)として構成されているセンサエレメントを基礎として作動する最新のエアフローメータの開発においては、特に汚染によってセンサエレメントの測定結果に不都合な影響が与えられる恐れがあることが判った。たとえば空気質量流中の油滴により生ぜしめられる恐れのある汚染により、センサエレメントには、時間との関係において信号ドリフトが発生し、このような信号ドリフトは空気質量流についての誤った測定値を招く恐れがある。しかし、微小電気機械式のシステムとして構成されたセンサエレメントには、放棄されるべきでない多くの利点がある。したがって、本発明の課題は、センサエレメントの汚染による測定結果の誤変動を取り除くか、または少なくとも狭い範囲内に保持することである。
【0008】
この課題は、独立項形式の各請求項の特徴により解決される。有利な実施態様は、従属項形式の各請求項の対象である。
【0009】
本発明によれば、上記課題は、前記サーモエレメントの1つまたは複数の一番目の熱電対と、1つまたは複数の最後の熱電対とは、それぞれまず前記第2の金属製の導体が、次いで前記第1の金属製の導体が、電流により通電されるように極性付けられており、前記サーモエレメントの、前記1つまたは複数の一番目の熱電対と、前記1つまたは複数の最後の熱電対との間に配置されたその他の熱電対は、それぞれまず前記第1の金属製の導体が、次いで前記第2の金属製の導体が、電流により通電されるように極性付けられていることにより解決される。それぞれまず第2の金属製の導体が、次いで第1の金属製の導体が、電流により通電されるようにサーモエレメントの1つまたは複数の一番目の熱電対と、1つまたは複数の最後の熱電対とが極性付けられていると、サーモエレメントの縁領域における汚染効果による測定結果の誤変動が十分に補償される。なぜならば、極性反転された熱電対が温度センサエレメントの縁領域に設けられているからである。一番目の熱電対と最後の熱電対とを極性反転させることにより、たしかにサーモエレメントの信号強度は少しだけ低減される。この場合、1つのサーモエレメントは1000個以上の熱電対から成っていてよいので、サーモエレメントの始端部と終端部とに設けられた、極性反転された幾つかの熱電対は信号強度に対して極めて小さな影響しか及ぼさない。それに対して、サーモエレメントのこのような構成により、信号の長時間安定性は大幅に改善される。なぜならば、この場合、汚染効果が測定結果にほとんど影響を与えないからである。
【0010】
本発明の改良形では、センサエレメントが、第1の温度センサエレメントと第2の温度センサエレメントとを有する。第1の温度センサエレメントと第2の温度センサエレメントとを用いて、質量流中の温度差が測定され得る。これによって、質量流自体が測定可能となる。この場合、第1の温度センサエレメントが、加熱エレメントに関して上流側に配置されており、第2の温度センサエレメントが、加熱エレメントに関して下流側に配置されていると有利である。
【0011】
本発明のさらに別の特徴および利点は、以下に図面につき行う1実施形態の説明により明らかとなる。以下において、種々の図面にわたって、同一の構成要素に対しては同じ用語および同じ符号を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エアフローメータの概略図である。
図2】微小電気機械式のシステム(MEMS)として構成されたセンサエレメントを示す概略図である。
図3】微小電気機械式のシステム(MEMS)として構成された、エアフローメータの補助管内に配置されたセンサエレメントを示す概略図である。
図4】空気質量流が流入開口を通じてエアフローメータの補助管内に流入する状況を示す概略図である。
図5】プラグイン式フィンガとして吸気管内に組み込まれているエアフローメータに設けられた、微小電気機械式のシステム(MEMS)として構成されたセンサエレメントを示す概略図である。
図6】第1の温度センサエレメントと第2の温度センサエレメントとを備えたセンサエレメントを示す概略図である。
図7】サーモパイルを備えたエアフローメータのセンサエレメントを示す概略図である。
図8】サーモエレメントとして構成された温度センサエレメントを示す概略図である。
【0013】
図1には、質量流量センサが図示されている。質量流量センサはこの場合、空気質量計、すなわちエアフローメータ2として構成されている。エアフローメータ2は本実施形態では、プラグイン式フィンガとして図示されている。プラグイン式フィンガは吸気管1内に差し込まれて、この吸気管1に固く結合されている。吸気管1は質量流、すなわちこの場合には空気質量流10を、内燃機関のシリンダに向かって案内する。内燃機関のシリンダ内で燃料を効率良く燃焼させるためには、提供されている空気質量に関する正確な情報を得ることが必要となる。提供されている空気質量につき、シリンダ内に噴射された燃料を燃焼させるために必要となる、利用可能な酸素を推量することができる。さらに、エアフローメータ2は図1では、第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8とを示している。第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8とは、互いに異なる個所に配置されている。第1第2の両温度センサエレメント7,8は一般に抵抗またはサーモパイルから形成される。抵抗またはサーモパイルは、各温度センサエレメントに生ぜしめられる温度に相応して種々異なる抵抗値を取る。第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8との間には、加熱エレメント(ヒータ)12が形成されている。空気質量流10の、流入開口4を通じてエアフローメータ2のハウジング3内に流入した部分は、まず最初に第1の温度センサエレメント7を流過し、次いで加熱エレメント12を通過し、その後に空気質量流10は第2の温度センサエレメント8に到達し、次いで補助管5に沿ってエアフローメータ2の流出開口6へ導かれる。空気質量流10は特定の温度を持って第1の温度センサエレメント7に到達する。この温度は、第1の温度センサエレメント7によって絶対温度として検出される。その後に、空気質量流10は加熱エレメント12を流過し、この場合、空気質量流10は、加熱エレメント12の傍らを流れる質量に応じて多かれ少なかれ加熱される。加熱された空気質量流10が、第2の温度センサエレメント8に到達すると、空気質量流10の、このときに存在する温度が第2の温度センサエレメント8によって絶対温度として測定される。第1の温度センサエレメント7により測定された絶対温度と、第2の温度センサエレメント8により測定された絶対温度との差から、傍らを流過された空気質量を測定することができる。このためには、エアフローメータ2自体が電子評価装置13を内蔵していてよい。電子評価装置13は第1の温度センサエレメント7の測定信号と、第2の温度センサエレメント8の測定信号とを評価する。こうして取得された、空気質量流10に関する情報は、エンジン制御部(図示しない)へ伝送される。
【0014】
念のため付言しておくと、本実施形態では本発明をエアフローメータを例にとって説明しているが、このことは、本発明を空気質量流の測定に限定することを意味するものではない。本発明による装置を用いて、別の質量流を有利に検出しかつ測定することもできる。たとえば、本発明による装置を用いて、炭化水素タンクのパージ管路内の炭化水素化合物の質量流を測定することも考えられる。
【0015】
図2には、エアフローメータのためのセンサエレメント15が図示されている。このセンサエレメント15は、微小電気機械式のシステム(MEMS)として唯一つのシリコンチップ上に形成されている。センサエレメント15は、差温度法により作動し、これによって、傍らを流れる空気質量流10の質量が測定される。このためには、薄いダイヤフラム17に第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8とが形成されている。第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8とは、ダイヤフラム17の表面16において互いに異なる個所に位置している。第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8との間には、加熱エレメント12が配置されている。微小電気機械式のシステム(MEMS)として構成されたセンサエレメント15には、さらに、電子評価装置13が組み込まれている。この電子評価装置13は両温度センサエレメント7,8の測定信号を直ちに評価して、空気質量流10に対して比例する信号に変換することができる。しかし、電子評価装置13は、後置された電子器具内に組み込まれていてもよい。空気質量流10に関する情報は、接続パッド19と接続線材18とを介して、後続の電子式のエンジン制御部(図示しない)に伝送される。
【0016】
図3には、微小電気機械式のシステム(MEMS)として構成された、エアフローメータ2用のセンサエレメント15が示されている。このセンサエレメント15は、唯一つの基板に形成されており、この場合、この基板はエアフローメータ2の補助管5内に配置されている。図3の状態では、流入開口4を通じて空気質量流10が流れていない。このことは、たとえば内燃機関が遮断された状態のときに該当する。この状態は、ゼロ質量流とも呼ばれる。センサエレメント15に設けられた加熱エレメント12に電気的なエネルギが供給されると、加熱エレメント12の周囲には、図示の対称的な温度分布20が生じる。これによって、第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8とは、互いに等しい絶対温度を測定し、そして両温度センサエレメント7,8の温度測定信号の差形成の後に、電子評価装置13により、エアフローメータ2の補助管5内に空気質量流10が存在しないことが検知される。しかし、ゼロ質量流の場合の温度測定信号のこのような理想的な一致は、たとえばセンサエレメント15における汚染物によって妨げられる恐れがある。
【0017】
図4には、流入開口4を通じてエアフローメータ2の補助管5内に空気質量流10流入している状況が示されている。この場合、加熱エレメント12の周囲の温度分布20は、明らかに第2の温度センサエレメント8の方向にずらされる。これによって、第2の温度センサエレメント8は、第1の温度センサエレメント7よりも明らかに高い温度を測定する。電子評価装置13において両温度センサエレメント7,8の差温度を求めることにより、空気質量流10を測定することができる。しかし、センサエレメント15に存在する汚染物9の影響は相変わらず有効であり、この影響は測定結果に重畳される恐れがある。温度の総和は、やはり空気質量流10に反応する。しかし、さらに温度の総和は、空気質量の熱的な特性、たとえば傍らを流れる空気質量流10の熱容量および/または熱伝導率にも反応する。たとえば空気質量流10は同じままで空気質量の熱伝導率が高くなると、システムは冷却され、温度の総和は著しく低くなる。しかし、第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8との差温度は、第1近似において不変のままとなる。したがって、第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8との総和信号によって、熱的な特性の変化、たとえば空気質量の熱容量の変化または熱伝導率の変化が測定され得る。差温度信号が総和温度信号と差引計算されると、傍らを流れる空気質量の変化させられた熱伝導率および/または変化させられた熱容量を推量することができる。
【0018】
図5には、エアフローメータ2のセンサエレメント15が示されている。このセンサエレメント15は、微小電気機械式のシステム(MEMS)として構成されている。エアフローメータ2は、プラグイン式フィンガとして吸気管1内に組み込まれている。空気質量流10はこの場合にも、流入開口4に到達して、補助管5に流入する。ダイヤフラム17の表面16には、第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8とが設けられている。第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8との間には、加熱エレメント12が配置されている。空気質量流10はまず第1の温度センサエレメント7に到達し、次いで加熱エレメント12を流過し、その後に第2の温度センサエレメント8に到達する。第1の温度センサエレメント7は加熱エレメント12を基準に見て上流側に配置されており、第2の温度センサエレメント8は加熱エレメント12を基準に見て下流側に配置されている。
【0019】
図5から判るように、空気質量流10は汚染物9をも含んでいる。空気質量流10と共に、たとえば水滴26、油滴11および/またはダスト粒子14がエアフローメータ2へ向かって運ばれる。汚染物9はエアフローメータ2の流入開口4を通じてセンサエレメント15にまで達する。汚染物9が第1の温度センサエレメント7の領域と第2の温度センサエレメント8の領域とに堆積すると、時間と共に、空気質量流10のための測定値の著しい誤変動が生じる恐れがある。この誤変動はセンサエレメント15における汚染物の蓄積によって、長い時間にわたって徐々に大きく形成されていくので、これに関連してエアフローメータ2の「信号ドリフト」とも呼ばれる。この信号ドリフトは望ましくない。信号ドリフトは抑制され、かつ/または補償されることが望ましい。
【0020】
図6には、第1の温度センサエレメント7と、第2の温度センサエレメント8と、両温度センサエレメント7,8の間に配置された加熱エレメント12とを備えたセンサエレメント15が示されている。矢印を用いて、空気質量流10の方向が示されている。これによって、空気質量流10の流れ方向で見て、第1の温度センサエレメント7は加熱エレメント12の手前(上流側)に位置し、第2の温度センサエレメント8は加熱エレメント12の背後(下流側)に位置する。第1の温度センサエレメント7も第2の温度センサエレメント8も、本実施形態では、1つの測定抵抗22と少なくとも2つの比較抵抗21とから成る電気的な直列接続回路として構成されている。図面から判るように、測定抵抗22は薄いダイヤフラム17の内側の領域に配置されており、比較抵抗21はダイヤフラム17の縁領域に配置されている。
【0021】
さらに、図6から判るように、汚染物9、つまりこの場合には油滴11が、空気質量流10と共にセンサエレメント15に向かって運ばれる。特に油滴11はセンサエレメント15に堆積する。図面から良く判るように、センサエレメント15における油滴11の堆積は、空気質量流10の流れ方向で見て加熱エレメント12の下流側に配置されている第2の温度センサエレメント8の領域で特に著しく行われる。センサエレメント15における油滴11のこのような非対称的な堆積は、信号ドリフトを招き、この信号ドリフトは最後には、センサエレメント15により検出された絶対温度の誤変動を招き、ひいては空気質量流10のための測定値の誤変動を招く。さらに、汚染物の堆積は、特にダイヤフラム17の縁領域でも行われる。油滴11のこの非対称的な堆積には、特に第2の温度センサエレメント8の領域における、より高い温度およびダイヤフラム17の縁領域における温度勾配を起源とした物理的な理由がある。
【0022】
図7には、エアフローメータ2のセンサエレメント15が図示されている。このセンサエレメント15の第1の温度センサエレメント7と第2の温度センサエレメント8とは、サーモエレメント23として形成されている。サーモパイル23とも呼ばれるサーモエレメント23は、熱を電気的なエネルギに変換する。サーモエレメント23は複数の熱電対29から成り、これらの熱電対29は、互いに異なる2種の金属から成る線材を有しており、両金属は一端で互いに結合されている。温度差が生じると、金属内での熱流に基づき、電圧が発生させられる。
【0023】
1つの導体の互いに異なる温度の2つの個所の間で電位差が発生することは「ゼーベック効果」と呼ばれる。電位差は温度差に対してほぼ比例しており、電位差は導体材料に依存している。唯一つの導体の両端が測定時に互いに等しい温度にあると、電位差は常に互いに相殺し合う。しかし、互いに異なる2種の導体材料が互いに結合されると、1つの熱電対29が形成される。ゼーベック効果を基礎とした測定システムでは、一般に極めて多数の個々の熱電対29が電気的に直列に接続される。
【0024】
測定目的で材料対を選ぶ場合、発生させられる熱起電力ができるだけ高くなることが望ましく、ひいては温度変化と電圧変化との間の高い線形性が達成されることが望ましい。図7に示したサーモエレメント23は、連続するそれぞれ第1の金属24と、この第1の金属24に接続個所28で結合された第2の金属25とから成っている。
【0025】
図7から良く判るように、1つのサーモエレメント23から形成されている第2の温度センサエレメント8の領域には、汚染物9、すなわちこの場合には油滴11が堆積されている。これらの汚染物9は、両温度センサエレメント7,8により測定された絶対温度を誤らせてしまう。これにより生ぜしめられる信号ドリフトについては、既に前に挙げた図面の説明中に述べた通りである。
【0026】
図8には、たとえばセンサエレメント15において第1の温度センサエレメント7および第2の温度センサエレメント8として形成されているような、サーモエレメント23として形成された温度センサエレメントが図示されている。サーモエレメント23は多数の熱電対29を示している。熱電対29の個数は、サーモエレメント1個当たり熱電対29が1000個以上であってよい。1つの熱電対29は、第1の金属製の導体24と、第2の金属製の導体25とから構成されている。第1の金属製の導体24と、第2の金属製の導体25とは、互いに異なる金属から成っている。第1の金属製の導体24は、たとえば鉄から成っていてよく、第2の金属製の導体25は、銅線材から形成される。第1の金属製の導体24と第2の金属製の導体25とは、接続個所28で互いに電気的に接続されている。1つのサーモエレメント23は、互いに電気的に直列に接続された多数の熱電対29によって形成される。図8から判るように、一番目の熱電対31は、まず第2の金属製の導体25が電流Iにより通電され、その後に第1の金属製の導体24が電流Iにより通電されるように極性付けられている。最後の熱電対32においても、金属製の導体の順序は、まず第2の金属製の導体25が、次いで第1の金属製の導体24が、それぞれ電流Iにより通電されるように選択されている。その他の熱電対33はその場合、まず第1の金属製の導体24が電流Iにより通電され、その後に第2の金属製の導体25が電流Iにより通電されるように極性付けられている。極性を反転させること、すなわちサーモエレメントの1つまたは複数の一番目の熱電対31および1つまたは複数の最後の熱電対32の金属製の導体の順序を、サーモエレメントのその他の熱電対33に対して変えることは、サーモエレメント23全体の、極めて長い時間にわたって安定した信号特性をもたらす。特に第2の温度センサエレメント8の縁領域、すなわち極性反転された熱電対の領域に堆積している汚染物は、サーモエレメント23の本発明における構成により、信号品質や温度センサエレメントの測定結果の長時間安定性にほとんど影響を与えなくなる。したがって、図8に示したように構成されたサーモエレメント23は、極めて長い時間にわたって高い信号安定性を有し、そして正確でかつ高価値の測定結果を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8