(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073500
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】半透多孔性の人工かさぶたの形成
(51)【国際特許分類】
A61K 31/136 20060101AFI20170123BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/63 20060101ALI20170123BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20170123BHJP
A61L 27/00 20060101ALI20170123BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
A61K31/136
A61K31/164
A61K31/537
A61K31/63
A61K31/7036
A61L27/00 C
A61P17/10
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-550354(P2015-550354)
(86)(22)【出願日】2013年11月4日
(65)【公表番号】特表2016-504357(P2016-504357A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】PE2013000010
(87)【国際公開番号】WO2014104898
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年10月13日
(31)【優先権主張番号】20120105043
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】AR
(73)【特許権者】
【識別番号】515173161
【氏名又は名称】パルシバル・ベガ・ビラビセンシオ
(73)【特許権者】
【識別番号】515173172
【氏名又は名称】ミゲル・エドガルド・バッティスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】パルシバル・ベガ・ビラビセンシオ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・エドガルド・バッティスタ
【審査官】
小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0161936(US,A1)
【文献】
特開平06−057290(JP,A)
【文献】
化学大辞典4 縮刷版,共立出版,1987年,p.165
【文献】
Gentian violet and wound repair,Journal of the American academy of dermatology,1986年,Vol.15, No.6,p.1303
【文献】
Journal of the American academy of dermatolgy,1985年,Vol.13, No.6,p.919-941
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/136
A61K 31/164
A61K 31/537
A61K 31/63
A61K 31/7036
A61L 27/00
A61P 17/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜5重量%のアゾスルファミド、0.004〜0.007重量%のゲンチアナバイオレット、0.001〜0.003重量%のデキサメタゾン、0.5〜2重量%のパンテノール、及び0.03〜0.06重量%のゲンタマイシンを含む、水性組成物。
【請求項2】
局所用の瘢痕化剤としての請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
損傷、火傷又は創傷を治療するための請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は人工の瘢痕化手段に関し、これを用いて、壊死組織を除去して損傷した又は火傷した領域を消毒した後に、この損傷した表面、創傷、火傷A−ABに物質(sustancia)を適用する。
【背景技術】
【0002】
2.従来技術及び解決課題
この技術は、負傷した領域からの壊死組織の除去、及びそれに続く、発明の名称に記載した人工の被覆の適用からなる。この調剤薬により、負傷した表面に人工かさぶた(costra artisficia)が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする課題は、以下の通りである:
1.ガーゼの使用に取って代わることであり、というのも、ガーゼは、損傷した領域にくっつき、ガーゼを取り外そうとした際に、肉芽領域に損傷を引き起こし、その結果、不完全な瘢痕化を引き起こすためである。
2.外部生物学的因子(agentes biologicos externos)に対する保護を提供することにより、潜在的な感染を回避すること。
3.機械的バリアの完全性が損なわれたことから生じる、体液及び体温の損失を回避すること。
【課題を解決するための手段】
【0004】
多孔性(porosa)の人工かさぶたにより、新たな組織の形成が可能となり、これは組織の再生中の組織の自然呼吸を可能とし、また、壊死又は嫌気性菌の発生等の破壊プロセスを回避することにより、カバーを必要とすることなく、及び「かさぶた」が自然に剥がれるまで更なる治療を実施することなく、瘢痕化の迅速な発生をもたらす。
【0005】
3.発明の目的
本発明の目的は、人工かさぶたを用いて損傷部分を感染及び体液の損失から保護することであり、よって瘢痕化ははるかに速くなり、新たな組織は欠陥を有しない。
【0006】
かさぶたがひとたび形成されると、更なる治療が必要なく、このかさぶたの排除は、自然に起こるため、材料の通常コストが低下する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
4.発明の詳細な説明
容器内での反応により形成されるこの水性チキソトロピー液は、以下の5つの物質の組み合わせ:アゾスルファミド1〜5% + ゲンチアナバイオレット0.004〜0.007% + デキサメタゾン0.001〜0.003% + パンテノール0.5〜2% + ゲンタマイシン0.03〜0.06%によって製造され、赤色を有する。ねじ蓋で閉鎖された褐色ガラス容器又は加圧プラスチック容器内に12〜15℃の周囲温度で保管されるこの調剤薬は、その元の性質を2年間維持する。
【0008】
広範囲にわたる損傷の場合、この赤色の液体は尿を通して排出されるが、有害な影響を有さない赤みの帯びた着色を生成するため、この事実はユーザに通知するべきである。
【0009】
壊死組織を除去し、洗浄、脱脂、石油エーテルによる乾燥を実施する。
【0010】
まず、容器を振り、負傷した表面に調剤薬を清潔な金属ヘラを用いて又はスプレーによって適用する。
【0011】
洗浄溶剤を用いることなく、そしてリスクなしに、調剤薬を眼、耳、粘膜に適用できる。
【0012】
生体組織の表面に適用すると、酵素的触媒によって物理化学的反応が起こり、これは、その反応基間のイオン結合及び共有結合によって、セミコンパクトなウェブ(trama semiconpacta)を形成する。
【0013】
このウェブは、上記組織の露出した群を介して損傷した組織に付着する。
【0014】
以下の図は、最も可能性の高い構造を示すことを目的としている。
【0015】
d−パンテノールは、酵素的に酸化して、パントテン酸を形成する。
【0016】
この酸は、反応してコエンザイムAの一部を形成できるか、又は上述のスキームにおいて述べたウェブに結合することができる。
【0017】
前記スルホニル基、カルボキシル基、ヒドロキシルフェノール若しくは第1級又は第2級アルコール基は、タンパク質又はアミノ糖の露出した反応基と反応することができ、これにより、上記反応基が高濃度で存在する損傷した皮膚にかさぶたを貼り付けることができる。
【0018】
構造に強度を与える力は、分子内力又は分子間力であり、イオン又は共有タイプのものである。
【0019】
多数の交差を示すウェブの結合は、疎水性相互作用、恒久的な又は誘発された双極子間水素結合及び他の結合によって、様々な層の間で安定化される。
【0020】
これにより、構造に三次元性を与える一次、二次、三次、四次の立体配座(conformaciones)を生成する。
本発明の範囲、及び負傷した組織(図1)に本発明を適用する方法について説明及び特定し、独占的な権利及び所有物として請求するための宣誓を行う。
浸食された又は負傷した表面を保護するための、自己固定型の半透多孔性の人工のかさぶた。前記人工かさぶたはまた、保護性被覆の下での新たな組織の増殖を可能とする(図2参照)。
前記人工かさぶたは、組成物であり、前記組成物は、負傷部位に存在する酵素によって触媒される、適用部位における上述した化合物間の物理的反応によって生成されたウェブである、半透多孔性の人工かさぶたの生成を特徴とする。
前記人工かさぶたは、培養皮膚のように作用するが、化学的ポリマーであり、「化学的ウェブ」特性を有する半透多孔性の人工かさぶたは今のところ事実上存在していない。
前記人工のかさぶたはまた、分泌液、電界質血しょう、タンパク質の損失も防ぐ。
明細書中に記載した5つの物質は、前記5つの物質が損傷部分(A−AB型火傷又は創傷)に適用され、損傷した組織の触媒作用によって物理化学的に反応し、その結果感染並びに血しょう及びタンパク質の損失を防ぐ保護層を生成することを特徴とする。
前記新たな組織は、前記層によってもたらされる保護により、元の構造を失わない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
5.図の説明
【
図1】
図1は、皮膚の第1度の火傷を示すことを目的としている。
【
図2】この図は、その反応基間のイオン結合及び共有結合によって、セミコンパクトなウェブを生成する物理化学的反応の説明を示すことを目的としている。処方の異なる成分間で、様々な成分間でのペプチド結合、疎水性相互作用、極性相互作用、恒久的な又は誘発された双極子間結合、水素結合、アミド、エステル、酸塩基結合を見ることができる。これにより、構造に三次元性を与える一次、二次、三次、四次立体配座を生成する。
【
図3】半透多孔性の人工のかさぶたの最も可能性が高い化学式の図。
【
図4】ゲンチアナバイオレット:一般に、クリスタルバイオレット又はゲンチアナバイオレットとも呼ばれるメチルバイオレットは、pH指示薬及び染料として使用される化合物群に与えられた名称である。(クリスタルバイオレット、メチルバイオレット10B、ヘキサメチルパラローズアニリンクロリド)であるゲンチアナバイオレットは、抗真菌薬である。
【
図5】デキサメタゾン:長い作用期間、高い抗炎症性及び免疫抑制力、並びに低いミネラルコルチコイド活性を有するフッ化コルチコイドである。これは、プロスタグランジン及びロイコトリエンの合成、炎症の血管及び細胞プロセスにおける伝達物質、並びに免疫応答を阻害する。
【
図6】ゲンタマイシン:ゲンタマイシンは、殺菌作用を有する、薬効範囲が広いアミノグルコシド抗生物質である。作用機序:アミノグルコシドが、細菌膜を通して能動的に輸送され、アミノグルコシドは、細菌リボソームのサブユニット30Sの1つ又は複数の特定の受容タンパク質に不可逆的に結合し、mRNA(伝令RNA)とサブユニット30Sとの間の開始複合体を妨害する。DNAを正確に読むことができず、これにより非機能性タンパク質の生成をもたらす。ポリリボソームが分離し、タンパク質を合成することができない。これは、アミノグルコシドの加速された伝達をもたらし、その結果、細菌の細胞質膜の破壊及び結果として生じる細胞死が増加する。
【
図7】パンテノール:D−パントテニルアルコール又はパントテノールとも呼ばれるパンテノールは、粘性が高く、比較的粘り気のある液体である。これは、水及びアルコール(96度)に容易に溶ける。パンテノールは、毛髪用の溶液が水性、水アルコール又はヒドロプロピレン−アルコール溶液である場合は、上記毛髪用の溶液の配合において難なく溶解する。
【
図8】アゾ
スルファミド:このスルファミドは、基本的に、カルボキシル基がスルホニル基で置換される、PABAの構造類似体であるスルファニルアミドの誘導体である(SO
2NH
2)。したがって、このスルファニルアミド(sulfas)は、PABAの競合的拮抗薬として作用し、ジヒドロ葉酸塩の合成を防ぐ。代謝物質の不在により核酸の合成が不可能となり、結果として、細菌の増殖が阻害される(静菌効果)。