特許第6073508号(P6073508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073508デンドリマー組成物、合成方法、及びそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073508
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】デンドリマー組成物、合成方法、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/00 20060101AFI20170123BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20170123BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20170123BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08G69/00
   A61K47/22
   A61K49/02 B
   A61K49/02 C
   A61K47/42
【請求項の数】34
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-563032(P2015-563032)
(86)(22)【出願日】2014年1月13日
(65)【公表番号】特表2016-525499(P2016-525499A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】IB2014058238
(87)【国際公開番号】WO2015104589
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年2月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516003355
【氏名又は名称】ハフィド ベルハジ−タハール
(73)【特許権者】
【識別番号】516003366
【氏名又は名称】グワーンホワ ヤーン
(73)【特許権者】
【識別番号】516003388
【氏名又は名称】ヌーレディン サデ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】ハフィド ベルハジ−タハール
(72)【発明者】
【氏名】ヌーレディン サデ
(72)【発明者】
【氏名】イボン クーレ
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0204443(US,A1)
【文献】 特表2008−539297(JP,A)
【文献】 Jurgen Grunberg,Simone Jeger,Dikran Sarko,Patrick Dennler,Kurt Zimmermann,Walter Mier,Roger Schibli,DOTA-Functionalized Polylysine:A High Number of DOTA Chelates Positively Influences the Biodistribution of Enzymatic Conjugated Anti-Tumor Antibody chCE7agl,PLos ONE,2013年 4月 2日,vol.8,no.4,e60350
【文献】 Lisa M.Kaminskas,Brian D.Kelly,Victoria M.McLeod,Ben J.Boyd,Guy Y.Krippner,Elizabeth D.Williams,and Christopher J.H.Porter,Pharmacokinetics and Tumor Disposition of REGylated,Methotrexate Conjugated Poly-L-lysine Dendrimers,MOLECULAR PHARMACEUTICS,2009年 5月19日,vol.6,no.4,p1190-1204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00−69/50
A61K 6/00−135/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有するニトロイミダゾール配位子/金属錯体と複合体を形成したG2〜G10のポリリジンデンドリマーから成るデンドリマー複合体:
【化1】
式中、
nは、0〜8の整数であり;
、R及びRは、独立して、H、NO又はメチルを表し;
R’及びR’は、独立して、H、OH、メチル、エチル又はプロピルを表し;
金属Mの価数によって許容される、X、X及びXは、独立して、φ、CO又はHOを表し;及び
Mは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Re、In、又はSnから選択される遷移金属の放射性又は非放射性(コールド)同位体を表す。
【請求項2】
前記複合体形成がイオン結合、金属結合、水素結合、又はファンデルワールス結合を含む、請求項1に記載のデンドリマー複合体。
【請求項3】
前記デンドリマーが以下の構造:
【化2】
を有する、請求項1又は請求項2に記載のデンドリマー複合体。
【請求項4】
前記ニトロイミダゾール配位子/金属錯体が以下の構造を有し、
【化3】
式中、Mは、99mTc又は186/188Re(2種の同位体を対象とする)を表す、請求項1又は請求項2に記載のデンドリマー複合体。
【請求項5】
前記複合体が、以下の構造を有し、
【化4】
式中、Mは、99mTc又は186/188Reを表す、請求項1又は2に記載のデンドリマー複合体。
【請求項6】
がんの置又は診断における薬剤として使用するための請求項1〜5のいずれか1項に記載のデンドリマー複合体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のデンドリマー複合体含む医薬又は診断用組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体を更に含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
Mが186/188Reであり、前記組成物が放射性医薬組成物である、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
Mが99mTcであり、前記組成物が診断用組成物である、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項11】
がんの処置又はその重症度の軽減のための薬剤として使用するための請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項12】
前記がんが、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレーム型マクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫及びがん腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、脳がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎生期がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫網膜芽細胞腫、及びすべての固形腫瘍からなる群から選択される、請求項11に記載の成物。
【請求項13】
前記デンドリマー複合体が、対象の体重1kg当たり5.4×10−12モル金属/kgに相当する37MBq/kgの188Reと、対象の体重1kg当たり9.96×10−12モル金属/kgに相当する68MBq/kgの188Reとの間の用量となるように投与される、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
対象の腫瘍増殖を変更するため薬剤として使用するための請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項15】
前記変更が、前記対象の腫瘍増殖を阻害することを含む、請求項14に記載の成物。
【請求項16】
前記腫瘍が、原発性腫瘍又は転移性腫瘍である、請求項13又は14に記載の成物。
【請求項17】
前記組成物が化学療法剤又は抗発がん剤と同時に投与される、請求項13〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記化学療法剤が、白金複合体、ベラパミル、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソ尿素、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、エトポシド、タモキシフェン、パクリタキセル、タキソール、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びメトトレキサートから成る群から選ばれる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
医薬又は診断用組成物の製造のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデンドリマー複合体の使用。
【請求項20】
Mが186/188Reであり、前記組成物が放射性医薬組成物である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
Mが99mTcであり、前記組成物が診断用組成物である、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物が、がんの処置又はその重症度の軽減のための薬剤として使用される、請求項19に記載の使用。
【請求項23】
前記がんが、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレーム型マクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫及びがん腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、脳がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎生期がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫網膜芽細胞腫、及びすべての固形腫瘍からなる群から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記デンドリマー複合体が、対象の体重1kg当たり5.4×10−12モル金属/kgに相当する37MBq/kgの188Reと、対象の体重1kg当たり9.96×10−12モル金属/kgに相当する68MBq/kgの188Reとの間の用量となるように投与される、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物が、対象の腫瘍増殖を変更するための薬剤として使用される、請求項19に記載の使用。
【請求項26】
前記変更が、前記対象の腫瘍増殖を阻害することを含む、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記腫瘍が、原発性腫瘍又は転移性腫瘍である、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
デンドリマー複合体を含む前記組成物が化学療法剤又は抗発がん剤と同時に投与される、請求項25〜27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記化学療法剤が、白金複合体、ベラパミル、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソ尿素、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、エトポシド、タモキシフェン、パクリタキセル、タキソール、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びメトトレキサートから成る群から選ばれる、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
リンパ系画像化使用するための請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物を対象に投与した後、少なくともリンパ系の一部の、転移性がん細胞の存在を示す画像信号強度の差を検出することを含むリンパ系画像化方法に使用される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記リンパ系の一部が、リンパ節を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
投与が、静脈内又はリンパ管内に前記組成物を注入することを含む、請求項31又は32に記載の組成物。
【請求項34】
前記デンドリマー複合体が、対象の体重1kg当たり0.6×10−12モル金属/kgに相当する10.5MBq/kgの99mTcと、対象の体重1kg当たり1.5×10−12モル金属/kgに相当する26.3MBq/kgの99mTcとの間の用量となるように投与される、請求項31〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
デンドリマーは、多官能性中核の周りに樹状構造形成方法に従って連結された単量体から成る巨大分子である。
【0002】
デンドリマーは、「カスケード分子」とも呼ばれ、規定された構造を有する高度に分岐した官能性重合体である。この巨大分子は、繰返し単位の連結に基づいているので確かに重合体である。しかしながら、デンドリマーは、樹状構造の構築に起因する特定の性質を有する点では通常の重合体とは基本的に異なる。デンドリマーの分子量及び形状は正確に制御でき、官能基は樹状構造の末端に位置して表面を形成するため、官能基を容易に利用できる。
【0003】
デンドリマーは、各繰返し単位と末端官能基を増殖させる一連の反応を繰り返すことによって段階的に構築される。各々の一連の反応が「新世代」と呼ばれるものを形成する。樹状構造の構築は一連の反応を繰り返すことによって行われ、各反応サイクルの終了時には新世代と多くの数の同一構造の分岐鎖が得られる。数世代後、デンドリマーは、高度に分岐し、周辺部に存在する多数の末端官能基による多官能性の球状形状をとる。
【0004】
これらの重合体は、特にLaunay et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1994, 33, 15/16, 1590-1592, [1]、或いは、更に、Launay et al., Journal of Organometallic Chemistry, 1997, 529, 51-58. [2]に記載されている。
【0005】
低酸素腫瘍の処置は臨床的に非常に困難である。つまり、放射線療法や化学療法の処置に抵抗性であり、多くの場合処置できない[3]。
【0006】
また一方で、低酸素腫瘍細胞は侵襲性が強く、全身に迅速に転移して広がることが知られている[4]。
【0007】
低酸素腫瘍細胞は、従来の処置(放射線療法及び化学療法)への応答が乏しいので、高圧酸素療法や生体還元作用による増感剤が別の治療法選択肢として浮上してきている[5]。
【0008】
この例では、ニトロイミダゾール系の生体還元剤は低酸素腫瘍細胞で細胞内代謝物によって還元され、陰イオンラジカルを形成して細胞内で反応する。
【0009】
この「ホームレス治療」より前には、細胞毒性剤の動脈内投与の新しい方法(放射線療法(イットリウム放射)、化学療法(ドキソルビシン及び化学同族体))により、大幅に予後が改善されていた[6]。
【0010】
その場での(in situ)がん治療は、抵抗性に関連した理由、或いは以前の治療に用いられる抗有糸分裂薬よりも許容用量が多いので全身治療よりも優れており、再発及び転移の点で選択すべき解決法である。
【0011】
動脈内造影剤投与によるその場での(in situ)放射線治療が、低酸素状態との関係で転移抵抗性が大きい処置法として提案されている。しかし、これまでのところ、この技術は一般にイットリウム−90が吸着した微小球からなる非拡散性物を用いる。
【0012】
使用するこの生成物は腫瘍内で拡散せず、非特異性がないため、この処置法は電離放射線の物理的進路にのみ依存し、大きな腫瘍が存在する場合は非常に限られた効果しか示せない。
【0013】
従って、がんの治療に有用な新しい化合物、特に、現在緩和治療を検討中の患者の予後の改善に役立つ化合物の開発が強く要望されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1に、3つの官能基を有する核を有する典型的なデンドリマー構造を示す。
【0015】
図2図2に、%注入用量/器官(%注入用量/器官=100%×(器官で決まる用量/最初に注入された全用量))の点から実施例5の生体内分布結果の統計的要約を集計した表を示す。
【0016】
図3図3に、%注射用量/g器官(%注射用量/g器官=100%×[(器官に沈着した用量/最初に注入した全用量)]/器官の重量)の点から実施例5の生体内分布結果の統計的要約を集計した表を示す。
【0017】
図4図4及び図5に、各々、図2及び図3の結果をグラフ形式で示す。
図5】同上。
【0018】
図6図6は、生成物の動脈内投与後のラットのシンチグラフィー画像であり、投与数時間後に屠殺した。注入は肝葉(写真において非常に強度が高い点)で行った。器官を回収し、分離してガンマカメラで分析した。この写真によって本発明のデンドリマー複合体の標的治療の概念が実証される。即ち、実際、投与されたその場での生成物は、主にその活性部位に残っている(組織生体内分布は数時間後には無視できる)。
【0019】
図7図7は、本発明によるデンドリマー複合体の製剤及び投与の方法の一般的なスキームを表す。定義
【0020】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句を以下に定義する。
【0021】
本明細書において使用される用語「対象」は、限定はされないが、特定の処置の受け手であるヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類等を含む任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、「対象」及び「患者」という用語は、ヒト対象に関して本明細書において互換的に使用される。本明細書において使用される用語「対象」は、がんを有する疑いのある対象、がんと診断された対象、及び/又はがん発生の可能性のある対象を包含してもよい。
【0022】
本明細書において使用される用語「がんを有する疑いのある対象」は、がんを示す1種又は複数の症状(例えば、認識可能なしこり又は塊)を呈する対象又はがんについてスクリーニング(例えば日常的健康診断時に)される対象を指す。がんを有する疑いのある対象は、1種又は複数の危険因子も有することがある。がんを有する疑いがある対象は一般に、がんについて試験されていない。しかし「がんを有する疑いのある対象」は、予備的診断(例えば、塊を示すCTスキャン)を受けたが、確認試験(例えば、生検及び/又は組織検査)はまだ行われていない、又はがんの病期が不明であるような個体を包含している。この用語は更に、かつてがんを有した個人を含む(例えば寛解期の個人)。「がんを有する疑いのある対象」は、ある場合はがんと診断され、ある場合はがんではないと診断される。
【0023】
本明細書において使用される用語「がんと診断された対象」は、検査されがん性細胞を有することが見出された対象を指す。がんは、生検、X線、血液検査、及び本発明の診断方法を含むがこれらに限定されない任意の適切な方法を用いて診断され得る。
【0024】
本明細書において使用される用語「がん発生の可能性のある対象」は、特定のがん発症の1種又は複数の危険因子を伴う対象を指す。危険因子は、性別、年齢、遺伝素因、環境曝露、がんの既往、がん以外の疾患の既往、及び生活様式を含むが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において使用される用語「がんの病期」は、がんの進行レベルの定性的又は定量的評価を指す。がんの病期決定に使用される判定基準は、腫瘍の大きさ、腫瘍が体の他の部位へ広がっているかどうか、及びがんがどこにひろがっているか(例えば、体の同じ器官もしくは領域内又は他の器官へ)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書で用いられる用語「予後を提供する」は、被験体の将来の健康(例えば予想される罹患率又は死亡率、がんに罹る可能性、及び転移の危険性)に及ぼすがんの存在の影響に関する情報(例えば本発明の診断方法により測定されるように)を提供することを指す。本明細書において使用される用語「非ヒト動物」は、全ての非ヒト動物を指し、これはげっ歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書で用いられる用語「処置する」は、一般に、本発明の化合物が、少なくとも疾患の仮診断を有するヒト又は動物に使用され得ることを指す。特定の態様において、本発明の化合物は、疾患の進行を遅延させるか又は緩徐にさせることで個体の寿命を延ばす。
【0028】
本明細書で用いられる用語「予防する」は、投与時には疾患を有する可能性があると診断されていないが通常ならこの疾患を発症すると予測されるか、又はこの疾患についての危険性の高い患者に投与される場合、本発明の化合物が有用であることを指す。本発明の化合物は、疾患症状の進行を緩徐にさせるか、疾患の発症を遅らせるか、又は個体が疾患を発症することを完全に防止する。予防はまた、家族歴、遺伝子異常又は染色体異常のために、及び/又は疾患の1種以上の生物学的マーカーが存在しているために、この疾患にかかりやすいと考えられる個体への本発明の化合物の投与を含む。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上記のように、がんの処置に有用な化合物、特に、現在、緩和治療を検討中の患者の予後の改善に役立つ新しい化合物の開発に対する関心が高まっている。
【0030】
これに関連して、本明細書において、低酸素細胞を標的とする超ベクトル(supravector)放射体としてデンドリマーの使用が提供される。例えば、レニウム−186のβ錯体における超ベクトル放射体が挙げられる。
【0031】
有利な一側面において、本発明では以下を組合せる、即ち、
【0032】
一つ目は、直径が腫瘍間質の血管新生を塞栓するように適応できる球状の超分子デンドリマーベクトルである。腫瘍の血管新生を塞栓する際には、放射性複合体は腫瘍の空間内を自由に拡散し、低酸素細胞に優先的に取り込まれる。また
【0033】
二つ目は、低酸素細胞に優先的に取り込まれる配位子ベクトルと複合体を形成したβ放射体遷移金属原子(例えば、レニウム−186)であり、その結果、求める放射毒性効果が得られた。
【0034】
本発明の有益なその他の側面としては、
【0035】
一次腫瘍及び/又は転移性腫瘍の処置に対する新規なその場での標的抗がん剤を提供すること;
【0036】
一次腫瘍及び/又は転移性腫瘍の診断のための新しい放射性医薬剤の提供すること;及び
【0037】
従来の抗がん療法に応答しない低酸素腫瘍のプロファイルを得るための新しい診断用薬を提供すること等が挙げられる。
【0038】
本明細書に記載された本発明の方法は、特に転移、或いは従来の処置に抵抗性の手術不能な腫瘍若しくは無応答の腫瘍に対する全身治療に適合しているという点で有益である。
【0039】
1)本発明のデンドリマー複合体の概要
【0040】
遷移金属/ニトロイミダゾール配位子複合体と結合したデンドリマー型の超ベクトルで形成された医薬化合物は、従来の処置に抵抗性である低酸素腫瘍を標的とするその場での抗がん治療に有用であることが発見された。
【0041】
有利には、本発明の化合物は、以下の構造を有するニトロイミダゾール配位子/金属錯体と複合体を形成したG2〜G10のポリリジンデンドリマーから成るデンドリマー複合体(A)を含む:
【化1】
式中、
nは、0〜8の整数であり;
、R及びRは、独立して、H、NO又はメチルを表し;
R′及びR′は、独立して、H、OH、メチル、エチル又はプロピルを表し;
金属Mの価数によって許容される、X、X及びXは、独立して、φ、CO又はHOを表し;及び
Mは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Re、In、又はSnから選択される遷移金属の放射性又は非放射性(コールド)同位体を表す。
【0042】
有利には、本発明の化合物は、イミダゾリル基に連結した四座2−アミノシクロペンテン−ジチオカルボキシラート配位子及び金属を結合した、以下の構造を有する配位子/金属錯体と複合体を形成したG2〜G10のシクロトリホスファゼン核フェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマーからなるデンドリマー複合体(B)を含む:
【化2】
式中、Mは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Re、In、又はSnから選択される遷移金属の放射性又は非放射性(コールド)同位体を表し;及び
Rは、直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル部又はC1〜C6ヘテロアルキル部、好ましくは、−Me、−CHPh又は−CH(CH)OEtを表す。
【0043】
当然であるが、以下の全ての態様は、上記で定義されるデンドリマー複合体(A)及び/又は(B)にあてはまる。有利には、本発明のデンドリマー複合体を投与する際に、対象中及び/又は細胞中の配位子/金属錯体の放出を確実にするように、デンドリマーと配位子/金属錯体との間の結合は非共有結合でもよい。
【0044】
有利には、その場での放出賦形剤としてその場に置かれる本発明のデンドリマー複合体は、遷移金属/イミダゾール配位子錯体(L−M錯体)を搭載したポリリジン又はシクロトリホスファゼン核フェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマー(D)を含んでもよい。L−M複合体は、2つの別個の部分、即ち、(i)イミダゾリル、ニトロイミダゾリル、又はメチルイミダゾリルの部分、及び(ii)遷移金属キレート化部位(例えば、ジ(2−ピコリル)−アミン又は四座2−アミノシクロペンテン−ジチオカルボキシラートを含む。このように、(i)の部分は、低酸素細胞(従来の処置に耐性を有する)を標的とし、(ii)の部分は、キレート化遷移金属によって薬理学的/治療的活性(放射活性又はアルキル化活性)を示す。有利には、デンドリマー複合体(A)は、(i)イミダゾリル、ニトロイミダゾリル又はメチルイミダゾリルの部分、及び(ii)ジ(2−ピコリル)−アミン遷移金属キレート化部位を含む遷移金属/イミダゾール配位子錯体(L−M錯体)を結合によって搭載したポリリジンデンドリマー(D)である。有利には、デンドリマー複合体(B)は、(i)イミダゾリル、ニトロイミダゾリル、又はメチルイミダゾリル(好ましくは、イミダゾリル)の部分、及び(ii)2−アミノシクロペンテン−ジチオカルボキシラート遷移金属キレート化部位を含む遷移金属/イミダゾール配位子錯体(L−M錯体)を結合によって搭載したシクロトリホスファゼン核フェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマー(D)である。
【0045】
有利には、Mは放射性同位体であってもよく、本発明のデンドリマー複合体は、画像化及び放射線治療の用途に用いてもよい。有利な典型的な態様では、Mは99mTc又は186/188Reであってもよい。
【0046】
有利には、Mが非放射性(コールド)同位体でもよい場合は、本発明のデンドリマー複合体は化学療法の用途に使用してもよい。
【0047】
本明細書に記載の通り、デンドリマーは、中核から発生する繰り返しの分岐鎖によって特徴付けられる合成重合体であって、フラクタル様の形態及び多数の鎖末端を生じる。デンドリマーは、核、一層以上の分岐単量体の層(即ち、世代)、及び各「世代」を2倍にし、種々の鎖の末端となる末端基の一層とから構成される。
【0048】
世代、即ちGは、デンドリマー中の層の数であり、Zは、デンドリマー外面の末端基数である。本明細書で使用される核は、0世代(G0)である。直接核に付いた単量体は、第1世代単量体(G1)と見なすことができ、G1単量体に直接付いた単量体は、第2世代単量体(G2)であり、その後も同様である。この番号付け法では、Z=2(G+1)となる。従って、核が2つの官能基を有するデンドリマーでは、G0では、Z=2(即ち、2(0+1))、G1では、Z=4(即ち、2(1+1))となり、その他も同様である。
【0049】
有利には、核に世代ゼロが割り当てられた場合、デンドリマーは少なくとも2の世代値を有する。例えば、デンドリマーは、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の世代値を有してもよい。有利には、デンドリマーは、2、3、4、5、6、7、好ましくは、3、4、5、最も好ましくは、5の世代値を有する。
【0050】
典型的なデンドリマーはデンドリマー形のポリ−L−リジン(PLL)が挙げられる。これらは、デンドリマー複合体(A)として有利に使用される。
【0051】
その他の典型的なデンドリマーとしては、シクロトリホスファゼン核フェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマーが挙げられる。これらは、デンドリマー複合体(B)に対して有利に使用できる。
【0052】
世代が増えるに伴い、デンドリマーは、開いて伸長した構造から楕円体、即ち閉じた球状の回転楕円体に渡る連続的な分子形状変化を経て成長する。末端の数は世代と共に指数関数的に増加し、表面積はその二乗に比例して増加するので、世代と共に分岐鎖の立体的な込み合いが進み、込み合った表面となり、ほぼG5(Z=64)後には、末端に接近しにくくなり、必然的に反応性が低下する。大きいデンドリマーの高い表面積と比較的低い内部密度によって、表面に続いているチャンネルに繋がった直径5〜15オングストロームの範囲の空洞が支えられる。
【0053】
例えば、本発明のデンドリマーは、以下のように表してもよい。
【化3】
式中、
(a)Aは、多価kのデンドリマーの核を表し、ここで、kは、デンドロン(樹)の数を表し、好ましくは3であり;
Aは、以下の構造を有する核シントンを表す。
【化4】
(b)Miは、世代iの単量体を表し、ここで、iは2〜gの整数であり、gはデンドリマーの世代数であり;
i=0の場合、Miはφを表し、末端分岐BTは核シントン(合成等価体)Aに直接繋がり;
i>0の場合、Miは以下を表す。
【化5】
式中、
記号*は、単量体Miと次の世代の単量体との結合点を示す
(c)BTは末端分岐鎖、tは末端部位の数を表し、ここで、
tは1〜3の整数、好ましくは、tは2又は3であり;
BTの各出現は、独立して、水素原子、カルボキシル部分(COOH)、カルボキシルエステル(COO−R)、ヒドロキシル基(OH)、チオール基(SH)又はチオールエステル部分を表し、ここでRの各出現は、独立して、C1〜C6アルキル基又はC6アリール基を表す。
【0054】
世代gは2〜10の範囲にあってもよい。有利な特定の態様において、gは、2、3、4又は5でもよく、好ましくは、gは2又は3であってもよく、最も好ましくは、gは2であってもよい。
【0055】
有利には、デンドリマー複合体において、前記複合体は、イオン結合、金属結合、水素結合、又はファンデルワールス結合を有する。
【0056】
有利には、デンドリマー複合体において、前記デンドリマーは、以下の構造を有してもよい。
【化6】
【0057】
有利には、デンドリマー複合体において、ニトロイミダゾール配位子/金属錯体は、以下の構造を有する。
【化7】
式中、Mは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Re、In、又はSnから選択される遷移金属の放射性又は非放射性(コールド)同位体を表す。
【0058】
有利には、デンドリマー複合体において、ニトロイミダゾール配位子/金属錯体は、以下の構造を有する。
【化8】
式中、Mは、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Re、In、又はSnから選択される遷移金属の放射性又は非放射性(コールド)同位体を表す。有利には、得られたデンドリマー複合体は化学療法の用途に使用してもよい。
【0059】
有利には、デンドリマー複合体において、ニトロイミダゾール配位子/金属錯体は、以下の構造を有する。
【化9】
式中、Mは99mTc又は186/188Reを表す。有利には、得られたデンドリマー複合体は化学療法の用途に使用してもよい。
【0060】
請求項1及び請求項2のデンドリマー複合体であって、前記複合体は、以下の構造を有する。
【化10】
式中、Mは99mTc又は186Reを表す。
【0061】
前述の化合物のいくつかは、1つ以上の不斉中心を含むことができ、従って、種々の異性体形態、例えば、立体異性体及び/又はジアステレオマーで存在することができる。従って、本発明の化合物及びその化合物の医薬組成物は、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー又は幾何異性体の形態であってもよく、或いは立体異性体の混合物の形態であってもよい。特定の態様では、本発明の化合物は、鏡像異性的に純粋な(enantiopure)化合物である。他の特定の態様では、立体異性体の混合物又はジアステレオマーが提供される。
【0062】
2)合成の概要
【0063】
実施者は、本発明のデンドリマー複合体の合成に有用である合成戦略、保護基及びその他の材料並びに方法に関する手引きとして、本明細書に含まれる情報と共に、確立されたデンドリマー化学の文献を持っている。
【0064】
<一般的な合成法>
【0065】
<配位子の合成>
【0066】
クロロ−アルキル−ニトロイミダゾール化合物(2)は、クロロアルキルイミダゾール(1)にアミン官能基を付加することで得ることができる。アジド−アルキル−ニトロイミダゾール化合物(3)は、塩素原子をアジド基によって置換することで得られる。最終化合物であるニトロ−イミダゾール−アルキル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン(5)は、下記のスキーム1Aに示すように、プロパルギルジ−(2−ピコリル)アミン(4)をアジド−アルキル−ニトロイミダゾール化合物(3)と共に、硫酸銅及びアスコルビン酸ナトリウムを含む100℃のジオキサン/水の混合溶媒に溶解することによって得られる。
【0067】
<スキーム1A>
【化11】
四座メチル2−アミノシクロペンテン−1−ジチオカルボキシラートイミダゾリル配位子の代表的な合成を下記スキーム1Bに示す。
【0068】
<スキーム1B>
【化12】
式中、Rは、直鎖状又は分岐状のC1〜C6アルキル又はC1〜C6ヘテロアルキル部分、好ましくは、−Me、−CHPh又は−CH(CH)OEtである。
【0069】
<デンドリマー>
【0070】
本発明の実施に適したポリリジンデンドリマーは市販されている(例えば、G10ポリリジンデンドリマーは、Colcom社(フランス、モンペリエ)或いはSigma-Aldrich社から購入できる)。
【0071】
本発明を実施するのに適したシクロトリホスファゼン核フェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマーも市販されている(例えば、シクロトリホスファゼンフェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマー(世代1.5)は、Sigma-Aldrich社から購入できる)。
【0072】
【0073】
更に、本明細書に引用した様々な特許文献及び他の参考文献には、本明細書に記載された本発明のデンドリマー複合体に類似した化合物或いは関連する中間体の調製に関する有用な背景情報が提供されている。引用された特定の特許文献には、デンドリマー複合体の処方、用途、及び投与に関する目的の情報が含まれる。
【0074】
多数の米国特許に、デンドリマーを製造するための方法及び組成物が開示されている。このように、下記の様々な特許文献から明らかなように、デンドリマー化学は広く知られている。それらの参考特許文献は、ポリリジンデンドリマーを調製するための合成戦略に応用されるか、或いは少なくとも指針を提供する。
【0075】
本発明に有用ないくつかのデンドリマー組成物を説明するためにこれらの特許の数件の例を示す。しかしながら、当然であるが、これらは単なる説明のための例であり、本発明では、他の類似のデンドリマー組成物を使用できる。
【0076】
米国特許第4,507,466号、同第4,558,120号、同第4,568、737号、及び同特許第4,587,329号のそれぞれには、従来のスターポリマーよりも高い末端密度を有する高密度スターポリマーを製造する方法が開示されている。これらの重合体は、従来のスターポリマー(即ち、三世代高密度スターポリマー)よりも高くて均一な反応性を有する。これらの特許では、更にアミドアミンデンドリマーの性質及びデンドリマーの三次元分子直径を開示されている。
【0077】
米国特許第4,631,337号には、加水分解に対して安定な重合体が開示されている。米国特許第4,694,064号には、棒状のデンドリマーが開示されている。米国特許第4,713,975号には、ウイルス、細菌、及び酵素等のタンパク質の表面を特徴付ける高密度スターポリマー及びその使用方法が開示されている。米国特許第4,737,550号には、架橋高密度スターポリマーが開示されている。米国特許第4,857,599号及び米国特許第4,871,779号は、イオン交換樹脂、キレート樹脂として有用な、不動化核表面の高密度スターポリマー及びそのような重合体を作製する方法を開示している。
【0078】
米国特許第5,338,532号は、運ばれる農業用、医薬用、或いはその他の物質の少なくとも1単位と連結したデンドリマーの星形複合体に関する。この特許には、単位重合体当たり高濃度の運ばれる物質の送達、制御された送達、標的への送達の方法を提供するため、及び/又は抗生物質剤、一般的及び特定の毒素、金属イオン、放射性核種、信号発生剤、抗体、インターロイキン、ホルモン、インターフェロン、ウイルス、ウイルス断片、殺虫剤、及び抗菌剤等の多種の種類のものを提供するためにデンドリマーを使用することが開示されている。
【0079】
米国特許第6,471,968号には、第1及び第2のデンドリマー複合体が共有結合で連結したデンドリマー複合体が開示されており、第1のデンドリマーは第1の薬剤を含み、第2のデンドリマーは第2の薬剤を含み、第1のデンドリマーは第2のデンドリマーと異なり、第1の薬剤は第2の薬剤と異なる。
【0080】
他の有用なデンドリマー型組成物は、米国特許第5,387,617号、同第5,393,797号、及び同第5,393,795号に開示され、それらの特許では疎水性外殻を提供することのできる疎水性基で覆うことによって高密度スターポリマーが修飾されている。米国特許第5,527,524号には、抗体複合体に末端アミノデンドリマーを使用することが開示されている。
【0081】
金属イオン担体としてのデンドリマーの使用が、米国特許第5,560,929号に開示されている。櫛形放射状(comb-burst)構造を有する非架橋多分岐重合体及びその重合体の調製法が米国特許第5,773,527号に開示されている。米国特許第5,631,329号には、分岐から保護された分岐重合体の第1セットを形成し、核にグラフトし、第1セット分岐重合体を脱保護し、次いで、分岐から保護された分岐重合体の第2セットを形成し、第1セットの分岐重合体を有する核にグラフトして、更に同様に続けて、高分子量多分岐重合体を製造する方法が開示されている。
【0082】
読者は、本発明のデンドリマー複合体の調製に合成方法を適合させるために上記に引用した特許文献を利用できる。
【0083】
一般に、デンドリマー化学では、様々な世代の層は、1つ又は数段階での発散型(核から始まる場合)又は収束型(1つ又は幾つかの世代分岐から始まる場合)の様々な方法によって、継続的な世代として得ることができる。各々のデンドリマー世代(例えば、所定の数の層を有する)は単離することができる。異なる世代層(内層又は外層)は、核と同様に、有機、無機或いは無機と有機の両方で構成されてもよい。
【0084】
これらのデンドリマーの構造は厳密に制御することができる。例えば、あるデンドリマーを構築するために、一連の世代分岐を核に結合し、少なくとも周辺部に同じ外部官能基を含む第1世代層(世代1)を形成し、第1世代の構築に用いた一連の反応を繰り返すことで、第2世代層を結合し(世代2)、次いで、第3世代、第4世代以降も同様に結合する。
【0085】
最後の世代層(世代g)は世代gの鎖から成り、周辺部に複数の同一の化学官能基を含み、各官能基は、最後の層の前記世代分岐の内の1つの自由端を形成、即ち延長する。世代gのこれらの鎖の末端では、デンドリマー複合体の薬物動態プロファイルを調節するために、次いで中間鎖を、例えばPEG鎖等でグラフトしてもよい。
【0086】
デンドリマーは、多くの技術、例えば、エレクトロスプレーイオン化質量分析法、13C核磁気共鳴分光法、H核磁気共鳴分光法、高速液体クロマトグラフィー、多角度レーザー光散乱を有するサイズ排除クロマトグラフィー、紫外線分光光度法、キャピラリー電気泳動、及びゲル電気泳動によって構造解析することができる。これらの試験は、重合体集団の均一性を保証し、応用や生体内用途のためのデンドリマー製造の品質管理を監視するために重要である。
【0087】
更に、実施者は、種々の代表的化合物及びそれらの中間体に関する文献で提供される具体的な指針及び具体例を利用する。
【0088】
<デンドリマー配位子化合物の遷移金属Mとの複合体形成>
【0089】
配位子複合体形成部位における金属錯体は、デンドリマー−配位子化合物を活性化することを目指している。例えば、スキーム3に示すように、水和金属カルボニル化合物M(CO)(HO)と共にデンドリマー−配位子化合物を温置することによって、この活性化を行うことができる。
【0090】
<スキーム3.配位子−金属錯体の形成による配位子活性化>
【化13】
M=遷移金属
Y(イットリウム);Zr(ジルコニウム);Nb(ニオブ);Mo(モリブデン);Tc(テクネチウム);Ru(ルテニウム);Rh(ロジウム);Pd(パラジウム);Ag(銀);Cd(カドミウム);Re(レニウム);In(インジウム);Sn(スズ)
【0091】
金属Mと四座メチル2−アミノシクロペンタン−1−ジチオカルボキシラートイミダゾリル配位子の錯体形成の代表的な合成を下記に示す。
【化14】
【0092】
同様に、過レニウム酸(ReO)若しくは過テクネチウム酸(TcO)の形態の発生剤の溶離後に得られるレニウム(治療用)若しくはテクネチウム(診断用)とデンドリマー配位子化合物を活性化するために、他の還元剤、特に、塩化スズ(SnCl)又はホスフィンを使用することができる(Technetium-99m and rhenium complexes with new polydentates ligands derived from dithiocarboxylic acid. Improvement of oxo and nitrido-technetium radiopharmaceuticals for regional blood flow evaluation(ジチオカルボン酸から誘導された新しい多座配位子とのテクネチウム−99m及びレニウム錯体。局部血流量評価のためのオキソ及びニトリド−テクネチウム放射線医療品の改良); H. BELHADJ-TAHAR, PhD Thesis, University Grenoble 1; 1996)。
【0093】
3)医薬組成物
【0094】
上述のように、本発明は、がんの処置又は診断における薬剤として有用なデンドリマー複合体を提供する。以下の全ての態様は、本明細書で定義されるデンドリマー複合体(A)及び/又は(B)にあてはまる。
【0095】
従って、本発明の別の側面では、薬学的に許容される複数の組成物が提供され、これらの組成物は本明細書に記載された任意のデンドリマー複合体を含み、必要に応じ、薬学的に許容される担体、補助剤又は賦形剤を含む。特定の態様において、これらの組成物は、所望により、更に1種以上の追加の治療剤を含む。
【0096】
有利には、本発明による組成物はデンドリマー複合体を含み、Mは、上記で定義された186/188Re等の放射性同位元素であり、この組成物は放射性医薬組成物である。
【0097】
有利には、本発明による組成物はデンドリマー複合体を含み、Mは、上記で定義された99mTc等の放射性同位元素であり、この組成物は診断用組成物である。
【0098】
有利な態様では、デンドリマー複合体を適切な塩及び緩衝剤と組み合わせて使用して組成物を安定に送達し、標的細胞に取り込まれるようにする。緩衝剤は、デンドリマー複合体を患者に導入する際にも用いてもよい。水性組成物は、薬学的に許容される担体又は水性媒体中に分散された細胞に対する有効量のデンドリマー複合体を含む。そのような組成物はまた接種物とも呼ばれる。語句「薬学的又は薬理学的に許容される」とは、動物又はヒトに投与した場合に、有害な反応、アレルギー反応、或いは他の都合が悪い反応を起こさない分子実体及び組成物を指す。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」は、あらゆる溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤等を含む。従来の媒体又は薬剤が本発明のベクトル又は細胞と不適合な場合以外は、治療用組成物にてこの担体を使用できる。補助的な活性成分も組成物に組み込んでもよい。
【0099】
有利には、本発明の組成物は、古典的な医薬製剤を含んでもよい。本発明によるこれらの組成物の投与は、標的組織に届く経路であれば、任意の一般的な経路を介して実施できる。これには、皮内注射、腹腔内注射、又は静脈内注射が含まれるが、それらに限定されない。デンドリマー複合体もまた、非経口的に、腹腔内に、或いは腫瘍内に投与することができる。
【0100】
デンドリマー複合体の遊離塩基或いは薬理学的に許容される塩の溶液は、水中でヒドロキシプロピルセルロース等の界面活性剤と適切に混合して調製することができる。分散物も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、並びに油中で調製することができる。通常の保存状態及び使用条件では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有してもよい。
【0101】
注射用途に適した医薬品形態としては、滅菌水溶液又は分散物、及び滅菌注射用溶液又は分散物の即席調製用の滅菌粉末が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、並びに植物油であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチン等の被覆剤の使用、分散物の場合は必要な粒子径の維持、及び界面活性剤の使用等によって維持することができる。微生物の作用は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等)によって防止できる。多くの場合、等張性剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収は、組成物中で、吸収を遅延する薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を使用することによって延長できる。
【0102】
滅菌された注射用溶液は、上記に列挙された種々の他の成分を有する適切な溶媒中に必要量のデンドリマー複合体を混和することによって調製され、必要であれば、続いて濾過滅菌してもよい。一般的に、分散物は、基本的な分散媒体及び上記に列挙した中の必要とされる他の成分を含む滅菌賦形剤に種々の滅菌された有効成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法としては、有効成分に追加の任意の所望の成分が足された粉末を、それらの予め濾過滅菌した溶液から得る減圧乾燥技術及び凍結乾燥技術が挙げられる。
【0103】
製剤化されると、デンドリマー複合体は、投薬製剤に適合するやり方で、治療的に有効な量を投与される。製剤は、注射用溶液等の多様な剤形で容易に投与できる。水溶液での非経口投与のために、例えば、必要に応じて、溶液を適切に緩衝化してもよく、液体希釈剤を最初に十分な塩類溶液又はグルコースで等張にしてもよい。これらの特定の水溶液は、特に、静脈内及び腹腔内投与に適切である。例えば、1回分を1mLの等張NaCl溶液に溶解し、皮下注入液1000mLに添加するか、または注入を提案された部位に注射することができる(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照せよ)。
【0104】
上述の通り、本発明の薬学的に許容される組成物は、更に、担体、補助剤又は賦形剤を含む。賦形剤としては、本明細書中で使用されるように、所望される具体的な投薬形態に適した、任意かつ全ての溶媒、希釈剤、又は他の液体賦形剤、分散又は懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、防腐剤等が挙げられる。Remington's Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)には、薬学的に許容される組成物を処方するのに使用される種々の担体及びそれらの調製のための公知の技術が開示されている。従来の担体媒体が、例えば、望ましくない生物学的効果を生じる、或いはそうでなければ薬学的に許容される組成物の他成分と有害な様式で相互作用等により本発明の化合物と適合しないということがなければ、従来の担体の使用は本発明の範囲内であるとされる。
【0105】
<デンドリマー複合体および薬学的に許容される組成物の使用>
【0106】
本発明のデンドリマー複合体は、様々ながんの検出及び治療に使用できる。すなわち、一側面では、本発明は、がんの処置又は診断における薬剤として使用する本明細書に記載のデンドリマー複合体を提供する。従って、がんの処置又は診断における薬剤として使用する本明細書に記載のデンドリマー複合体又はそれらの医薬組成物が提供される。従って、有効量の本発明によるデンドリマー複合体又はその医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むがんを処置又は診断する方法が提供される。
【0107】
更に別の態様では、有効量のデンドリマー複合体又はデンドリマー複合体を含む薬学的許容される組成物を、それを必要とする対象に投与することを含むがんの処置又はその重症度の軽減のための方法が提供される。従って、がんの処置又はその重症度の軽減のための医薬として使用する、本明細書に記載のデンドリマー複合体又はその医薬組成物が提供される。本発明の特定の態様において、デンドリマー複合体又は薬学的に許容される組成物の「有効量」は、がんの処置又はその重症度の軽減に対して有効な量である。本発明の方法によるデンドリマー複合体及び組成物の投与は、がんの処置又はその重症度の軽減に有効ないかなる量、いかなる経路によって行ってもよい。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢及び一般的な状態、感染の重症度、具体的な薬剤、投与の様式等に依存して、対象ごとに異なる。本発明の化合物は、好ましくは、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、投薬単位形態で処方される。本明細書で使用される「投薬単位形態」という表現は、処置される患者に適切な薬剤の物理的に別個の単位を指す。しかし、当然ながら本発明のデンドリマー複合体及び組成物の全体的な毎日の用法が健全な医学判断の範囲内で主治医により決定される。任意の特定の患者又は生物のための具体的な有効服用レベルは、種々の要因に依存する。これらの要因としては、処置されているがん及びそのがんの重症度;使用される具体的なデンドリマー複合体の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康、性別及び食事;使用される具体的なデンドリマー複合体の投与時期、投与経路及び排出速度;処置の期間;使用される具体的なデンドリマー複合体と併用されるか又は同時に使用される薬物、並びに医学分野で周知の類似の要因が挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトを指す。
【0108】
有利には、Mは、186/188Re等の放射性同位体でもよく、そのデンドリマー複合体組成物は放射性医薬組成物である。従って、治療有効量の本発明による放射性医薬組成物をがんに患う又はがんに対して感受性である対象に投与することを含むがんを処置する方法(Mは、186/188Re等の本明細書で定義される放射性同位体でもよい)も提供される。例えば、前記がんは、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレーム型マクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫及びがん腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、脳がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎生期がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫網膜芽細胞腫、及びすべての固形腫瘍からなる群から選択してもよい。
【0109】
有利には、投与の段階は、画像下治療による腫瘍内又は腫瘍周囲の動脈内への組成物の注入及び治療薬(デンドリマー複合体)をその場沈着させる全ての投与を含む。有利には、治療有効量の組成物を投与する段階は、対象の体重1kg当たりである5.4×10−12モル金属/kgに相当する約37MBq/kgの188Reと対象の体重1kg当たりである9.96×10−12モル金属/kgに相当する約68MBq/kgの188Reとの間の用量を投与することを含む。
【0110】
有利な態様において、a)本発明によるデンドリマー複合体を含む組成物を提供すること、及びb)腫瘍増殖が変更されるような条件で治療有効量の前記組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象の腫瘍増殖を変更する方法を提供する。例えば、前記変更は、前記対象の腫瘍増殖を阻害することを含む。更に別の例では、前記変更は、前記対象の腫瘍のサイズを縮小させることを含む。腫瘍は、原発性腫瘍でも転移性腫瘍でもよい。従って、対象の腫瘍増殖を変更するための薬剤として使用する本発明によるデンドリマー複合体又はそれらの医薬組成物が提供される。
【0111】
別の側面では、リンパ系画像化方法であって、画像を向上させる量の本発明のデンドリマー複合体(金属Mは99mTc)を対象に投与すること;及びデンドリマー複合体を投与した後、少なくともリンパ系の一部の、転移性がん細胞の存在を示す画像信号強度の差を検出することを含む画像化方法が提供される。有利には、リンパ系の一部はリンパ節を含んでもよい。有利には、投与段階は、静脈内又はリンパ管内に組成物を注入することを含む。有利には、画像を向上させる量のデンドリマー複合体を投与する段階は、対象の体重1kg当たりである0.6×10−12モル金属/kgに相当する約10.5MBq/kgの99mTcと対象の体重1kg当たりである1.5×10−12モル金属/kgに相当する約26.3MBq/kgの99mTcの間の用量を投与することを含む。従って、リンパ系画像化のための薬剤として使用する本発明によるデンドリマー複合体又はそれらの医薬組成物が提供される。
【0112】
放射性同位元素の投与量は広い範囲で変化し、同位体の半減期、放射される放射線の強度及び種類、及び新生物細胞による取り込みに依存する。当業者は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, chapter 33、特に624−652頁を参考にする。投与量のいくらかの変動は処置されている対象の状態に応じて、必ず起こることである。いずれにしても、投与責任者は、個々の対象に適切な投与量を決定する。更に、ヒトに投与するためには、調製物は規制機関(例えば、米国生物学的製剤基準のFDA)により必要とされる無菌性、発熱性、一般的安全性及び純度基準を満たさなければならない。
【0113】
本発明の有利な態様において、送達される薬剤の治療効果を最大にするために、デンドリマー複合体のがん患者へのその場送達(in situ delivery)を利用してもよい。同様に、化学療法又は放射線療法は、対象の身体の特定の部位、即ち罹患した部位を対象にしてもよい。或いは、特定の状況、例えば、広い範囲の転移が発生した場合は、デンドリマー複合体組成物及び/又は薬剤の全身送達が適切である可能性がある。
【0114】
本発明の利点は、治療用組成物を医療機器によって患者の局所部位に送達できるということである。本発明において使用するのに好適な医療機器には、治療薬の局所送達を目的とした機器が含まれる。このような機器としては、注射用カテーテル、バルーンカテーテル、二重バルーンカテーテル、微孔性バルーンカテーテル、チャネルバルーンカテーテル、注入カテーテル、潅流カテーテル等のカテーテル(例えば、これらは治療薬で被覆される、或いは、これらを通して治療薬が投与される);皮下注射針及び針型注入カテーテル等の針型注入装置;ジェット式注射器等の非針型注入装置;被覆したステント、分岐状ステント、人工血管、ステント移植皮弁等;及び被覆したワイヤーコイル等の血管閉塞性装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
代表的な機器に関しては、米国特許第5,935,114号、第5,908,413号、第5,792,105号、第5,693,014号、第5,674,192号、第5,876,445号;第5,913,894号、第5,868,719号、第5,851,228号、第5,843,089号、第5,800,519号、第5,800,508号、第5,800,391号、第5,354,308号、第5,755,722号、第5,733,303号、第5,866,561号、第5,857,998号、第5,843,003号および第5,933,145号に記載がある;これらのいずれの内容も参照として本明細書に組み入れられる。市販されており、本用途に利用可能なステントの例としては、RADIUS(SCIMED LIFE SYSTEMS, Inc.)、SYMPHONY(Boston Scientific Corporation)、Wallstent(Schneider Inc.)、PRECEDENT II(Boston Scientific Corporation)及びNIR(Medinol Inc.)が挙げられる。このようなデバイスは、既知の技術によって身体内の標的位置に送達される、及び/又は埋め込まれる。
【0116】
本発明のいくつかの態様において、臨床応用を意図する場合、デンドリマー複合体は、意図する用途に適切な形態で医薬組成物の一部として調製される。通常、これは、発熱物質、及びヒト又は動物に対して有害な可能性のある他の不純物を実質的に含まない組成物を調製することを必要とする。しかしながら、本発明のいくつかの態様では、直線状デンドリマー製剤は、本明細書に記載された1つ以上の経路を用いて投与してもよい。
【0117】
有利には、本発明の薬学的に許容される組成物は、画像下治療による動脈内、腫瘍内又は腫瘍周囲、静脈内又はリンパ内への組成物の注入及び治療薬のその場沈着をさせる全ての投与によってヒト及び他の動物に投与してもよい。
【0118】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用の水性又は油性懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用する既知の技術によって製剤化することができる。滅菌注射用製剤も、非経口的に許容される無毒性の希釈剤若しくは溶媒の滅菌注射用の溶液、懸濁液、又は乳化液であってもよく、例えば、1,3−ブタンジオールの溶液であってもよい。使用可能な許容される賦形剤及び溶媒としては、水、リンゲル液、U.S.P、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。更に、滅菌不揮発油は、従来から溶媒又は懸濁媒体として使用されている。この目的には、合成モノ−及びジグリセリド等の任意の滅菌固定油も使用できる。更に、オレイン酸等の脂肪酸も注射剤の調製に使用してもよい。
【0119】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、又は使用前に、滅菌水又は他の滅菌注射用媒体に溶解又は分散できる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌できる。
【0120】
<併用療法>
【0121】
これも当然ながら、本発明のデンドリマー複合体及び薬学的に許容される組成物は、併用療法で使用できる。即ち、デンドリマー複合体及び薬学的に許容される組成物は、1種以上の他の所望の治療薬投与又は医療処置と、同時に、その前に、又はその後に投与することができる。併用療法で用いる特定の併用療法(治療薬又は処置)は、所望の治療薬及び/又は処置並びに達成すべき所望の治療薬の効果との適合性が考慮される。またこれも当然ながら、用いられる療法が、同じ障害に対して所望の効果を達成することができること(例えば、発明のデンドリマー複合体を、同じ障害を処置するのに使用される別の化合物と同時に投与することができる)、或いは、異なる効果(例えば、有害作用の制御)を達成することができる。本明細書において使用される、特定の病気又は疾患を処置又は予防するために通常投与される追加の治療薬は、「処置中の病気、又は疾患にとって適切である」として知られているものである。
【0122】
例えば、他の治療薬、化学療法剤又は他の抗増殖剤は、増殖性疾患及びがんを処置するために、本発明のデンドリマー複合体と組み合わせてもよい。本発明の抗がん剤と組み合わせて使うことができる治療法又は抗がん剤の例としては、手術、放射線治療(少しであるがいくつか例を挙げれば、γ線、中性子ビーム放射線治療、電子線放射線治療、陽子線治療、近接照射治療及び全身放射性同位元素)、内分泌治療、生物学的応答調節剤(少し例を挙げれば、インターフェロン、インターロイキン及び腫瘍壊死因子(TNF))、温熱療法及び低温療法、任意の副作用を軽減する薬剤(例えば、制吐剤)、及び他の認可された化学療法剤が挙げられる。この化学療法剤としては、アルキル化薬(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、抗代謝物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニスト及びピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムスタビン)、紡錘体毒(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)及びホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド及びメゲステロール)、GleevecTM、アドリアマイシン、デキサメサゾン及びシクロホスファミドが挙げられるが、これらに限定されない。最新のがん治療のより総合的な議論については、The Merck Manual,2011(この内容の全体が、本明細書中に参照によって組み込まれる)を参照のこと。また、国立がん研究所(CNI)ウェブサイト(www.nci.nih.gov)、及び食品医薬品局(FDA)が認可した腫瘍薬物のリストについてはFDAのウェブサイト(www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe-付録を参照のこと)もまた参照のこと。
【0123】
有利な態様において、本発明によるデンドリマーは1つ以上の抗がん剤と複合体を形成してもよい。
【0124】
あるいは、又は、更に、デンドリマーを含む組成物が化学療法剤又は抗発がん剤と共投与されてもよい。例えば、化学療法剤は、白金複合体、ベラパミル、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソ尿素、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、エトポシド、タモキシフェン、パクリタキセル、タキソール、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びメトトレキサートから成る群から選択できる。

処置用キット
【0125】
他の態様において、本発明は、簡便かつ効果的に本発明による方法を実施するキットに関する。一般に、薬剤パック又はキットは、本発明の医薬組成物の1種以上の成分を充填した1つ以上の容器を含む。このようなキットは、特に注射可能な形態物の送達に適している。このような薬剤キットには、好ましくは、いくつかの単位剤形を含み、これらの使用目的の順に並べた投与量を有するカードを含んでもよい。所望により、例えば、記憶の助けとして、番号、文字若しくは他の目印が示されている、又は、薬剤投与の処置予定の日程が記載されたカレンダーを備えることができる。所望により、こういう容器には、薬剤製品の製造、使用又は販売を管轄する行政機関により規定された書式の注意書きを添付してもよく、この注意書き、その行政機関によりヒトへの投与のための製造、使用又は販売が承認されていることを示す。

等価物
【0126】
以下の代表例は、本発明を例示するものとし、本発明の範囲を限定するものではなく、またはそのように解釈するべきではない。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて、以下の実施例および本明細書に引用された科学文献及び特許文献の参照を含むこの文書のすべての内容から、当業者であれば本発明の様々な修正及びこれらの多くの他の態様が明らかになる。当然であるが、これらの引用された参考文献の内容は、現況技術を例示するのを援助するために参照により本明細書に組み込む。
【0127】
以下の実施例は、本発明の様々な態様及びこれらの等価物における本発明の実施に適応することが可能な重要な追加の情報、例示及び指針を含む。

例示
【0128】
本発明のデンドリマー複合体及びそれらの調製は、これらの化合物が調製され、或いは使用される段階のいくつかを説明する実施例により更に理解できる。しかし、当然ながら、これらの実施例は本発明を限定しない。現在知られている又は更に明らかになる本発明の変形は、本明細書に記載ように及び以下に特許請求されるように、本発明の範囲に含まれるものと考えられる。
【0129】
(実施例1)4−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミンの合成
【化15】
【0130】
<スキーム2>
【化16】
【0131】
典型的には、1−(クロロメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール(2)を、クロロホルム中、塩化チオニルの存在下で、4−ニトロ−1H−イミダゾール(1)とパラホルムアルデヒドとを反応させることによって得た。1−(アジドメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール(3)を、DMF中50℃で、1−(クロロメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール(2)とアジ化ナトリウムとを反応させることによって合成した。アセトニトリル中、炭酸カリウムの存在下で、ジ−(2−ピコリル)アミンと臭化プロパルギルの反応によってプロパルギルジ(2−ピコリル)アミン(4)を87%の収率で得た。この化合物と種々のアリールアジド(ベンジル−、アントラセニル−、又はアントラセニルメチルアジド)とのクリック反応によって、N、N′−ビス(2−ピリジルメチル)−N″−(4−トリアゾリルメチル)アミノ三脚型キレート系を26〜60%の収率で得た[“A Click procedure with heterogeneous copper to tether technetium-99m chelating agents and rhenium complexes. Evaluation of the chelating properties and biodistribution of the new radiolabelled glucose conjugates(不均質銅を用い、テクネチウム−99mとレニウム錯体を繋ぐクリック法。キレート化特性及び新規放射性標識グルコース複合体の生体内分布の評価)” Eric Benoist, Yvon Coulais, Mehdi Almant, Jose Kovensky, Vincent Moreau, David Lesur, Marine Artigau, Claude Picarda, Chantal Galaup, Sebastien G. Gouin. Carbohydrate Research , Volume 346, Issue 1, 2011, Pages 26-34, [7] and Eric Benoist et al., “A Click procedure with heterogeneous copper to tether technetium-99m chelating agents and rhenium complexes. Evaluation of the chelating properties and biodistribution of the new radiolabelled glucose conjugates(不均質銅を用い、テクネチウム−99mとレニウム錯体を繋ぐクリック法。キレート化特性及び新規放射性標識グルコース複合体の生体内分布の評価)”, Carbohydrate Research, Volume 346, Issue 1, 3 January 2011, Pages 26-34][8]。硫酸銅及びアスコルビン酸ナトリウムの存在下、100℃のジオキサン/水の混合溶媒に、プロパルギル−ジ(2−ピコリル)アミン(4)を1−(アジドメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール(3)と共に溶解することによって、4−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン(5)が得られた。
【0132】
配位子4−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン(5)もまた HOLIS Technologies SA(フランス、トゥールーズ)から購入してもよい。
【0133】
(実施例2)デンドリマー
【0134】
G10とG5ポリリジンデンドリマーは、Colcom社(フランス、クラピエール、キャップアルファ)から購入した。
【0135】
これらのデンドリマーは、ヒトにおける安全性で知られている(VivaGelTM (SPL7013 Gel): A candidate dendrimer-microbicide for the prevention of HIV and HSV infection(HIV及びHSV感染の予防のためのデンドリマー−殺菌剤複合体候補). Richard Rupp, Susan L Rosenthal, Lawrence R Stanberry and Richard Rupp, International Journal of Nanomedicine 2007:2(4) 561-566)[9]。
【0136】
特に、第5世代デンドリマーの特性は以下の通り:分子量172300g及び推定直径16nm。この第5世代デンドリマーは、100mg/Lの濃度まで血管内注射した後も安全であることが示された。[H. BELHADJ-TAHAR et al., “Etudes de Toxicocinetique et de biodistribution de dendrimeres de cinquieme generation(毒物動態学及び第5世代デンドリマーの生体内分布の研究)”, 8emes Journees Canceropole Grand Sud Ouest 10-12 octobre 2012, MontpellierLett., 9 (2007), pp. 4999-5002] [10]。
【0137】
(実施例3)デンドリマー−配位子の混合物
【0138】
配位子を1/1000の割合でデンドリマーと混合する。すなわち、配位子濃度は4.8ミリモル/リットル(4.8mM/L)であり、デンドリマー濃度は4.9マイクロモル/リットル(4.9μM/L)であった。
【0139】
試験物質は、光源から離れ、湿度の影響を受けないよう特別に設計した部屋で保存した。滅菌水に溶解した生成物を調製後2時間以内に使用した。
【0140】
(実施例4)遷移金属との複合体形成
【0141】
【0142】
1.725mMの1−ニトロ−1H−イミダゾールメチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン及び7.03μMのG5デンドリマーの生理的溶液330μLを放射性カルボニルテクネチウム(28.86mCi)と反応させ、0.087mCi/μL(3.34MBq/μL)で投与されるデンドリマー複合体溶液を調製し、60℃で1時間加熱した。
【0143】
【0144】
実施例5及び実施例6に共通する実験手順
【0145】
種:ウィスターラットRjHan:Wi(特定病原体を含まない)
【0146】
起源:Laboratoire JANVIER S.A.S(フランス):供給元により引き渡された動物には健康状態評価が添付されていた(順化させるため)。
【0147】
個体数、性別、体重:6匹の健常な成体ラット(雄性)、平均体重300g
【0148】
順化:試験開始前の24時間の期間
【0149】
体重:D0、即ち、試験に関連する段階の前日に動物の体重を測定した。
【0150】
平均体重を計算して許容限度を導く。個々の動物の体重の極値は平均体重の±20%以内であってはならない。
【0151】
識別:動物は毛の表面に消えない黒色フェルトペンで印をつけて識別をする(雄性ラットに1〜6の番号を付ける)。
【0152】
収容:動物はステンレスカバーを装着した31cm×46cm×19cmのポリプロピレンのカゴに、1つのカゴに最大3個体を入れて飼育した。カゴは、接近が制限された部屋に置かれ、周期的な洗浄時及び1時間10回周期で濾過した新鮮な空気(HEPAフィルター使用)を交換する時を除き、わずかな圧力(10mm最小水)、温度制御された雰囲気(T=22±2℃)及び制御された相対湿度(RH=50±20%)下に維持された。
【0153】
寝場所:塵のない、γ線で滅菌されたおが屑を用い、定期的に更新した。
【0154】
人工照明によって、12時間の明と12時間の暗を形成した。
【0155】
飼料:完全飼料をペレット状A04−10にて与えた。
【0156】
飲料:通常の濾過された水を、ステンレス製の吸い口を取り付けたポリプロピレン製ボトルに分注し、水試料を少なくとも半年ごとに採取し、物理化学的及び細菌学的分析に送った。
【0157】
(実施例5)ラットにおける静脈内及び腹腔内投与後の急性毒性試験と生体内分布:デンドリマーG5{1−ニトロ−1H−イミダゾールメチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}
【0158】
<試験物質>
【0159】
デンドリマーG5{1−ニトロ−1H−イミダゾールメチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}
【0160】
<試験の概要>
【0161】
試験の目的は、所定用量の、体重1kgに対して63.4316ピコモル(33.17mCi/kg又は1226MBq/kg)(ヒトの等価用量の8倍の危険因子に対応)の試験物質を蒸留水で希釈して、静脈内及び腹腔内投与で単回投与後の毒性効果及び外観の遅延を定性的かつ定量的に評価することである。
【0162】
実験は2段階で行った。
【0163】
第1段階
【0164】
雄性ラットからなる3つのグループ
【0165】
グループ1(「G5」):0.1mLのデンドリマー単独の標識溶液を投与された2匹のラット(1及び2)。一方は静脈内投与で、他方は腹腔内投与であった。
【0166】
グループ2(「G5−HLS」):0.1mLの試験物質「G5デンドリマー{1−ニトロ−1H−イミダゾールメチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}」の溶液を投与された2匹のラット(3及び4)。一方は静脈内投与で、他方は腹腔内投与であった。
【0167】
グループ3(「HLS」):0.1mLの1−ニトロ−1H−イミダゾールメチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}の溶液を投与された2匹のラット(4及び5)。一方は静脈内投与で、他方は腹腔内投与であった。
【0168】
第2段階
【0169】
ラットNo.7:0.1mLのデンドリマー単独の標識溶液を静脈内投与された。
【0170】
ラットNo.8:0.1mLの試験物質「G5デンドリマー{1−ニトロ−1H−イミダゾールメチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}」の溶液を静脈内投与された。
【0171】
ラットNo.9:0.1mLの1−ニトロ−1H−イミダゾールメチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}の溶液を静脈内投与される。動物を投与後1時間観察し、毒性(死亡)の徴候を認めた。
【0172】
この試験により、この試験物質の無毒性及び組織分布を即時に確認できた。
【0173】
<デンドリマー単独の標識試料>
【0174】
7.03μMのG5デンドリマーの生理的溶液330μLを放射性カルボニルテクネチウム(28.86mCi)と反応させ、0.087mCi/μL(3.34MBq/μL)で投与される標識デンドリマー溶液を調製し、60℃で1時間加熱した。
【0175】
<試験物質の標識試料>
【0176】
1.725mMの1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン及び7.03μMのG5デンドリマーの生理的溶液330μLを放射性カルボニルテクネチウム(28.86mCi)と反応させ、0.087mCi/μL(3.34MBq/μL)で投与される試験物質溶液を調製し、60℃で1時間加熱した。
【0177】
<1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン単独の標識試料>
【0178】
1.725mMの1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミンの生理的溶液330μLを放射性カルボニルテクネチウム(28.86mCi)と反応させ、0.087mCi/μL(3.34MBq/μL)と検定された標識1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン単独溶液を調製し、60℃で1時間加熱した。
【0179】
各サンプルをI型の15mLの滅菌ガラス製薬瓶(type Elumatic International CisBio)に保存した。
【0180】
結果
【0181】
63.4316ピコモル/kgの投与量で死亡率0%(33.17mCi/kg=1226MBq/kg)(ヒト等価用量の8倍の危険因子に相当)。
【0182】
結論
【0183】
蒸留水で希釈した試験物質は、63.4316ピコモル/kg(33.17mCi/kg=1226MBq/kg)の投与量に対して検証された(ヒト等価用量の8倍の危険因子に相当)。
【0184】
(実施例6)ラットの直接肝内注射による急性毒性試験及びその場投与(in situ administration)後の生体内分布:デンドリマーG5{1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}
【0185】
<試験物質>
【0186】
デンドリマーG5{1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}
【0187】
<試験の概要>
【0188】
試験の目的は、体重1kg当たりの所定用量である5.72mCi/kg(209.969MBq/kg)の、蒸留水で希釈した試験物質を単回のその場投与した後、毒性効果及び外観の遅延を定性的かつ定量的に評価することであった。
【0189】
次のような実験を行った。3匹の雄性ラット:
【0190】
・ラット1:0.1mLのデンドリマー単独標識溶液を、全身麻酔下で開腹後、直接肝内注射によって「右側」葉に投与した。
【0191】
・ラット2:0.1mLの試験物質G5デンドリマー{1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン}溶液を、全身麻酔下で開腹後、直接肝内注射によって「右側」葉に投与した。
【0192】
・ラット3:0.1mLの1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミン標識溶液を、全身麻酔下で開腹後、直接肝内注射によって「右側」葉に投与した。
【0193】
動物を投与後1時間観察し、毒性(死亡)の徴候を認めた。次いで、全ての動物を屠殺し、生体内分布研究を実施した。
【0194】
試験物質の性質を考慮して、33.17mCi/kg=1226MBq/kgの用量の試験物質を投与した一匹の動物(段階1)から始めた。この最初の段階の後、OECDの方法論と勧告に従って、段階1の動物と同じ条件で、他の動物についても、体重1kg当たりの用量である33.17mCi/kg(1226MBq/kg)の試験物質を投与して、この試験を続けた。
【0195】
試験物質の投与
【0196】
体重1kg当たりの投与量は、最初33.17mCi/kgに設定した。投与する試験物容積を各ラットについて計算した。試験物質の原液濃度は、0.087mCi/μL(3.34MBq/μL)であった。
【0197】
試験物質を、適切なサイズの針を装着した適切な容積の注射器を使用して、静脈内及び腹腔内の注射によって単回投与した。
【0198】
剖検
【0199】
60分間の観察の最後まで生存した全ての動物を、1.16mL/kgの用量で、Pentobarbital(登録商標)のナトリウム塩(6%)の腹腔内注射によって、T=60分で安楽死させ大腿動脈から採血した。それらの動物を解剖し、主要な臓器を顕微鏡で観察した。全ての病理学的変化は、この目的のために準備した文書に記録した。
【0200】
生体内分布
【0201】
除去された臓器(脳、腎臓、肝臓、心臓、腸、肺、生殖腺、血液、尿)を秤量し、それらの活動はNaIのガンマカメラで計数した。
【0202】
この試験により、この試験物質の無毒性及び組織分布を即時に確認できた。
【0203】
医薬品の品質は、PURPANの薬学屋内使用(Pharmacy Usage Indoor:PUI)によって保証されていた。内容は以下の通り:
【0204】
・pH管理
【0205】
・ガスクロマトグラフィーによる固体生成物の化学純度の管理(HOLIS Technologyによる)
【0206】
・滅菌管理(事後)
【0207】
・発熱物質管理(事後)
【0208】
結果
【0209】
5.72mCi/kg(209.969MBq/kg)の投与量での死亡率0%(ヒト等価用量の1.3倍の危険因子に相当)であった。試験物質を注入された肝臓塊による試験物質の肝結合率は、初期注入投与量の33.5%に相当する53.7%と見積もられ、その場投与/血管内投与から得られる肝結合率は、2190%(33.5%DIg/1.53%DIg)であると計算された。
【0210】
結果の解釈
【0211】
考慮された検査物質の毒性の評価項目は以下の通りである:
【0212】
・臨床的及び行動的徴候
【0213】
・部検の所見
【0214】
・試験物質によって死亡した動物数で表した死亡率
【0215】
・動物の体重の関数としての試験物質の活性
【0216】
・結論:
【0217】
蒸留水で希釈した試験物質は、5.72mCi/kg(209.969MBq/kg)の投与量に対して検証された(ヒト等価用量の1.3倍の危険因子に相当)。試験物質を注入された肝臓塊による試験物質の肝結合率は、初期注入投与量の33.5%に相当する53.7%と見積もられ、その場投与/血管内投与の比である肝結合率は、2190%であると計算された。
【0218】
薬理学的特性
【0219】
実施例5及び実施例6の結果を図2図6に示す。
【0220】
雄性ウィスターラットにおける研究によって、静脈内の血流中に63.4316ピコモル/kg(活性33.17mCi/kg又は1226MBq/kg)(ヒトに投与したこの生成物の等価用量の8倍の安全係数に相当)の濃度で直接注射した後でも、本発明によるデンドリマー複合体は急性毒性がないことが示されている。同様に、注射部位で、析出、或いは血栓形成は観察されなかった。
【0221】
治療効果は、レニウムのがん細胞に対する放射毒性作用に基づいている。この効果はがん細胞を標的とする。それが、標的治療の概念について議論する理由であり、本発明のデンドリマー複合体の以下の3つの効果も同様である。
【0222】
1.優先的にがん細胞に蓄積する配位子によって標的治療が可能である。
【0223】
2.デンドリマー複合体のその場投与。デンドリマー複合体のその場投与の形態の例:(i)直接導入による腫瘍表面へのデンドリマー複合体の直接沈着、(ii)画像下治療による動脈内投与。
【0224】
3.ホットな放射性元素を正確に沈着させる超ベクトル溶液としてのデンドリマーの使用
【0225】
更に、開腹と肝臓部位への直接注入を伴う、雄性ウィスターラットでのその場投与によって、デンドリマー複合体が導入部位でほぼ安定していることが示された。実際、試験物質のその場固定着(in situ fixation)率は血管内投与によって得られる肝臓定着に対して2190%と見積もられる。放射能の評価は、各種臓器及び屠体のみ、尿及び全血について実施した。
【0226】
図6は、注射後の生体内分布のシンチグラフィー画像である:肝臓、胃、及び腸のみが識別可能であることが分かる。注目すべきことに最大感度を得るために10分間で600回/分行った:デンドリマー複合体は沈着部位から大きくは移動せず、生体内分布は注射部位で最大に達した。
【0227】
従って、標的部位の外側の放射性元素の生体内分布は無視できるので、デンドリマー複合体は標的療法として適している。
【0228】
この治療法では、診断ガンマカメラによって治療薬(デンドリマー複合体)を追跡することができる。即ち、動脈内投与も含め、投与を監視するための放射線不透明性賦形剤を追加する必要がない。
【0229】
(実験7)典型的な医薬品形態
【0230】
<放射性核種>
【0231】
我々は、188レニウム、186レニウム及び痕跡程度の同位体を有しており、188レニウム、186レニウムは、高エネルギーかつ短半減期のβ放射体であり、高エネルギーは、それぞれEβ=777keV及びEβ=326.1keV、半減期は、それぞれ0.71日及び3.78日である。
【0232】
<注入される投与量>
【0233】
ヒトにおいて全身的には有意な毒性を誘発しない投与量である1.3GBq(35mCi)。
【0234】
[Dose escalation study with rhenium-188 hydroxyethylidene diphosphonate in prostate cancer patients with osseous metastases(骨転移を有する前立腺患者におけるレニウム−188ヒドロキシジホスホネートによる用量漸増試験). Palmedo H, Guhlke S, Bender H, Sartor J, Schoeneich G, Risse J, Grunwald F, Knapp FF Jr, Biersack HJ. Eur J Nucl Med. 2000 Feb; 27 (2):123-30. [11]
【0235】
<配位子ベクトル>
【0236】
我々は、イミダゾールと結合したジチオカルボン酸2−メチル−1−アミノシクロペンテン型を有する四座配位子。この追跡子は、低酸素細胞に対して高い親和性と特異性を示した。
【0237】
[Conceptualization and assessment of original probes for hypoxic cell exploration(低酸素細胞の探査のための独自プローブの概念化と評価). H. Belhadj-Tahar, Y. COULAIS and M. VIDAL. 2nd Symposium "Novel Targeting drugs and radiotherapy(新規な標的薬剤及び放射線治療), 14-15 June 2007, Toulouse (France)] [12]
【0238】
<複合体形成方法>
【0239】
放射性金属は、高親和性部位(配位子)で複合体を形成する。これらの部位での結合は、低酸素細胞を標的とする生体分子(イミダゾール)の部位―特異的認識よりも速度論的に有利である。
【0240】
<超ベクトル>
【0241】
デンドリマーとしては、シクロトリホスファゼン−フェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマー(世代1.5)を使用する。これは、分子量が、2855.51g/molの巨大分子であり、そのため、分布容積により拡散が制限され、腫瘍間質に局在化する。
【0242】
*CAS 89939-12-6:非危険物質として分類(Directive 67/548/EECによる)。
【0243】
<典型的な、市販最終工業製品>
【0244】
<密閉ボトル中のコールドキット前駆体>
【0245】
キットは、金属に対して低親和性のベクトル多座ジ−アミノチオールを含む凍結乾燥製品を含み、また、還元剤(塩化スズ)及びクエン酸(即座に、戻された製品の緩衝効果を担う)も含む。
【0246】
a)<ボトルAの説明>
【0247】
凍結乾燥配位子
【0248】
クエン酸(pH調節)
【0249】
塩化スズ
【0250】
b)<ボトルBの説明>
【0251】
滅菌凍結乾燥ポリリジン
【0252】
c)<ボトルAの即時調製>
【0253】
40℃に温度調節した振とう機中のフラスコ(フラスコA)に過レニウム酸ナトリウムを導入。
【0254】
d)<ボトルBの即時調製>
【0255】
ボトルAの中身をボトルBに移し、振とう機中、室温で1時間放置する。
【0256】
<投与前の調製、投与される生成物>
【0257】
調製は、以下から行った。
【0258】
・コールドキット前駆体
【0259】
・生理食塩水及び無菌の新たに溶出させたタングステン−レニウム発生剤からの放射性金属(溶出液の放射線制御を放射性医薬品取扱者が行う)。
【0260】
送達される生成物を密封されていた薬瓶に入れる。
【0261】
投与は調製後4時間以内で行う。
【0262】
投与は放射線科医が行う。
【0263】
本発明のデンドリマー複合体の製剤及び投与の方法の一般的スキームを図7に示す。
【0264】
<投与経路>
【0265】
投与経路は、動脈内経路である。即ち、生成物は放射線科医によって、その場沈着される。
【0266】
デンドリマーが存在することにより、微小球状で沈着するイットリウムと異なり、イミダゾールに関連したレニウムの組織分布が制限される。イミダゾールの存在により、がん細胞に結合した移送レニウムが増加する。実際に、がん化過程で低酸素状態を誘発され[13]、イミダゾール誘導体は、低酸素細胞及び/又はがんによって非常にうまく捕捉される。
【0267】
従って、投与経路及び動脈内薬物設計によって、放射性レニウムの組織分布が大幅に減少すると共に、正常細胞中の放射性レニウムの拡散が大幅に低減する[14]。
【0268】
<投与の頻度>
【0269】
数日であるレニウムの半減期及び当社の臨床医と共に放射線科医のイットリウムの経験を考慮し、処置は、放射性レニウムを含む薬剤調製の単回注射から成る。
【0270】
(実施例8)代表的医薬形態
シクロトリホスファゼン−フェノキシメチル(メチルヒドラゾノ)デンドリマー(世代1.5)の代わりにポリリジンデンドリマーG5、及び配位子としてイミダゾールと結合したジチオカルボン酸2−メチル−1−アミノシクロペンテン型を有する四座配位子の代わりに、1−ニトロ−1H−イミダゾール−メチル−1,2,3−トリアゾール−メチル−ジ−(2−ピコリル)アミンを用いて実施例7を繰り返した。
【0271】
本発明者らは、本発明の多くの態様を記載したが、本発明者らの基本的な態様は、本発明の化合物及び方法を利用する他の態様を提供するために変更され得ることは明白である。従って、本発明の範囲は、実施例として表した特定の態様ではなく、添付の請求の範囲により定義されるものと認められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図6