特許第6073551号(P6073551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073551少なくとも部分的に調整された環境内で植物を栽培するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073551
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】少なくとも部分的に調整された環境内で植物を栽培するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   A01G7/00 601C
   A01G7/00 601Z
   A01G7/00 602Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-532034(P2011-532034)
(86)(22)【出願日】2009年10月13日
(65)【公表番号】特表2012-504973(P2012-504973A)
(43)【公表日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】NL2009050617
(87)【国際公開番号】WO2010044662
(87)【国際公開日】20100422
【審査請求日】2012年10月10日
【審判番号】不服2015-21119(P2015-21119/J1)
【審判請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】2002091
(32)【優先日】2008年10月13日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】511093281
【氏名又は名称】プラントラボ グループ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】PLANTLAB GROEP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ジェマート、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カース、マルチヌス
(72)【発明者】
【氏名】ミューズ、ジェラルドゥス ヨハネス ヨゼフ マリア
【合議体】
【審判長】 前川 慎喜
【審判官】 中田 誠
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−231376(JP,A)
【文献】 特開2005−312444(JP,A)
【文献】 特開平10−178899(JP,A)
【文献】 特開平6−90614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 1/00
A01G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に調整された環境内で植物を栽培するためのシステムであって、
前記植物の根系を含む培養基質を受容し、日光の入らない環境に置かれた栽培ベースと、
前記植物の葉を光化学作用のある人工光で照らす照明手段と、
前記根系を所定の根温に調節することが可能な根温調節手段と、
前記植物の葉を外界温度とは異なる葉温に調節することが可能な葉加熱手段と
前記葉加熱手段と根温調節手段との間、前記葉温および根温を植物に応じた相関関係を持たせて制御することが可能な制御手段とが設けられ、
前記照明手段が、栽培すべき植物の光合成や成長モードに必要なスペクトルを持つ光を発する一セットの発光ダイオードを備え、
前記根温調節手段が、温度制御された液体流動を受け前記培養基質と熱交換可能に接触している暗渠システムからなり、
前記葉加熱手段が、前記植物の葉に赤外線を照射する手段からなることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記照明手段が一セットの発光ダイオードを備え、これらの発光ダイオードが異なる波長でを発することが可能に設けられており、個々に制御可能であることを特徴とする、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記照明手段が一セットの発光ダイオードを備え、これらの発光ダイオードが異なる波長で光を発することが可能に設けられており、グループで制御可能であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記照明手段および前記葉加熱手段が、相互に分離した器具内に収容されていることを特徴とする、請求項1,2または3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも部分的に調整された環境内で植物を栽培するための次のステップa〜dからなる方法であって、
a.日光の入らない環境で、前記植物の根系を含む培養基質を栽培ベースに受容し、栽培すべき前記植物の光合成や成長モードに必要なスペクトルを持つ光を発する一セットの発光ダイオードによって光化学作用のある人工光を前記植物に照射し、
b.前記植物の根系を、温度制御された液体流動を受け前記培養基質と熱交換可能に接触している暗渠システムによって目標値の根温に調節し、
c.前記植物の葉系を、赤外線照射によって外界温度とは異なる葉温に調節し、
d.前記葉温の調節および前記根温の調節前記植物に応じた相関関係を持たせて制御し、前記人工光の照射、根温の調節および葉温の調節による前記植物の光合成管理を、相互に関連して行うことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に調整された環境内で植物を栽培するためのシステムに関し、植物の根系を含む培養基質をその中に受容するための栽培ベース、根系を所定の根温に調節することが可能な根温調節手段、そして植物の葉を光化学作用のある人工光で照らすことが可能な照明手段、植物の葉温を調節可能な葉加熱手段、葉温および根温を制御することが可能な制御手段からなる。本発明は、さらに、少なくとも部分的に調整された方式で植物を栽培するための方法に関する。この場合、光化学作用のある人工光が植物に供給され、そして植物の葉温および根温が目標値に調節される。
【背景技術】
【0002】
このようなシステム、そしてこのような方法は、温室内のガラス園芸において、かなりの規模で利用されている。この場合、ガラスの奥には、少なくとも実質的に閉じられて調整された環境内にある人工気候が発生する。それは、可能な限り、栽培すべき植物の最適な増殖条件に適応される。これにより、植物が屋外では生き残らない、あるいは少なくとも完全な成長には到達しない地域および季節でも、植物を栽培することが可能である。したがって、植物の生産は所望の収穫期に正確に適合できる。また、どの植物がどれ位、そしていつ収穫可能かも、比較的に正確に前もって予想可能である。望むならば、さらに、同じ産物を年中栽培することができる。また、草花は、その成長のすべての段階において栽培できる。
【0003】
従来のガラス園芸においては、光化学作用光の主要な光源として日光、すなわち可視光の波長が、例えば、葉の光合成または成長の所定モード等の、植物反応を引き起こすよう、あるいは植物反応に影響を与えるよう利用されている。日光は、さらに赤外線の形態で熱を提供するため、温室内に、外気温度に比べより高い気温を維持できる。日光がない場合、例えば、とりわけ夜間には、そのような高い気温を維持するための加熱が可能であるが、日中は、部分的な遮蔽やフィルタリングによって、日光が過度に入ることを防止できる。また、気候は、通気によっても調整できる。全体的に言えることは、温室の気候は、そのように特定の限度内に制御可能であるため、栽培すべき植物の所望の発育・成長に適応させることができる。さらには、農薬に加え、湿気および栄養分の適用量を制御方式で管理できる。この場合における追加の構成要素が、根温である。植物の成長が、根温の制御によって影響を受けることが分かっている。この点に関して、気温とは異なる根温を維持するために根温調節手段を設けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、伝統的なガラス園芸には、また欠点もある。第一に、この場合、特に環境を考慮しなければならない。温室を暖かくして維持するのにエネルギーが、また、いくつかの植物に関しては日夜の照明が必要である。可能な限り効率的にエネルギー管理を規制することが重要である。人口密度の高い地域内に、またはその近くに温室を建設する場合、スペースが、より重要な要因となる。従来の温室は、結局、日光の差し込みが必要であるため、事務所、家屋またはインフラに対して利用できるであろう高価な土地を比較的広く占めることとなる。この課題に対処するために、同じ土地面積を数倍に利用することを可能とする低日光、特に日光の入らない地下における、そして多層による解決策が望まれている。そのような場合、熱だけではなく光化学作用光も人工的に供給することになるため、エネルギー管理が、より重要な課題となる。したがって、可能な限り効率的である植物の栽培が必要である。
【0005】
本発明の目的は、とりわけ、エネルギー管理における一層の効率改善を可能にする、少なくとも部分的に調整された環境内で植物を栽培するためのシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の栽培システムは、植物の葉を外界温度とは異なる葉温に保つことが可能葉加熱手段が設けられるとい特徴を持つ。したがって、本発明によるシステムは、青/赤、そして赤/近赤外比率などの、植物成長反応の目的で光量およびスペクトル比率に関して、また、色素形成などの特異反応に必要な光スペクトルに関して制御された照明に加えて、また、根圧作用(根温)の制御および最適化に加えて、葉への正しいエネルギー量を調節することによって、葉を介しての制御された蒸発および炭酸同化作用のオプションを提供する。これは、他の要因もあるが、植物のための水および栄養ならびに、空気湿気バランス、室温および二酸化炭素濃度に関して気候が狭い限度内で制御可能な、少なくとも部分的に調整された環境内で、すべて行われる。
【0007】
本発明は、この場合、植物の成長が成功するのに本質的に三つの因子、すなわち、光合成、優勢な根圧の影響下で上方へ押し上げられる植物内の活液流、そして植物の主に葉系を介した炭酸同化作用が関わっているという、そして実際に最適な植物成長を実現させるためには、これらの三つの因子が常に相互に適応されていなければならないという洞察に基づいている。根温と光化学作用光の入力に加えて、本発明によるシステム内に葉加熱手段を設けることによって、植物の炭酸同化作用管理も制御できる。追加の加熱によって、葉の気孔はさらに開くので、葉への二酸化炭素の入および葉からの湿気の蒸発が増進する。この後者の現象は、高くなった根温によって植物内の活液流が刺激されるなら、この流れが同じ気孔を介して出ることになるので、特に重要である。逆に言えば、望まない植物乾燥を防止するためには、低い活液流で葉温を下げることができる。したがって、植物の成長の原因となる最も重要な気候パラメータは、最小エネルギー消費においてこれらの要素の各々で最適な効率が実現できるよう制御できる。
【0008】
システムの特定な実施例は、照明手段が、栽培すべき植物に意図される光合成や成長モードに適応可能な照明スペクトルを発することが可能に設けられている、という本発明による特徴を持つ。したがって、植物の成長に必要な光化学作用光成分は、正確に十分な輝度でのみ供給できるので、システムの全体的なエネルギー消費を、および/または植物の成長への悪影響を制限するために、非光化学作用成分あるいは過剰な成分を可能な限り避けることができる。
【0009】
もう一つの特定な実施例においては、本発明によるシステムは、照明手段が一セットの発光ダイオードからなり、これらのダイオードが、異なる波長で放射線(照射光)を発することが可能に適応しており、個々にまたはグループで制御可能である、という特徴がある。このような、いわゆるLEDエレメントは、個々に実質的に単色光を発するので、異なる波長、特にスペクトルの近赤外、黄、緑、青に見える部分を得ることができる。したがって、植物の具体的な必要性に最も適合する光合成を促進する(PAR)スペクトルを構成でき、またオプションとして、個々のLEDの組み合わせおよび選択により修正できる。
【0010】
葉加熱手段は、本質的に種々の方式で形成できるが、好適実施例における本発明によるシステムには、葉加熱手段が、赤外線で葉に照射することが可能に適応した少なくとも一つの熱源からなる、という特徴がある。全体的または部分的な介在媒体の誘導によって、葉との熱交換接触が可能な加熱手段の他、そのような熱源は、主に直接照射を介して熱交換接触に入る。これは、葉系の非常に効果的で効率的な加熱を生じさせるだけでなく、これによって、気孔の所望の拡幅に貢献する環境を持つ意図された温度差も、特に効果的な方式で達成できる。もう一つの好適実施例における本発明によるシステムには、光化学作用光源の調整球(conditioning sphere)から、熱源自体の不可避の熱放散からの破壊的な影響を除外するために、照明手段および熱源が、相互に分離した器具内に収容される、という特徴がある。
【0011】
根温調節手段は、本質的に多様な方式で実現できるが、本発明によるシステムの好適実施例は、根温調節手段が、稼働中、温度制御された液体流動を受ける暗渠システムからなり、そして暗渠システムが、培養基質と熱交換接触することが可能に設けられている、という特徴を持つ。このような暗渠システムは、例えば、培養基質内に、あるいはその下に位置するチューブまたはフィンからなるシステムによって形成できる。そしてその中に、液体流動を交互に曲流させる。根温は、根系が受容された培養基質を加熱あるいは冷却することによって、一様に制御できる。本発明によるシステムは、この場合、葉加熱手段と根温調節手段との間に設けられ、葉温および根温を植物に応じた相関関係を持たせて制御することが可能な制御手段を備える、という特徴を持つ。例えば、正常な成長過程においては、葉温は、同化作用管理が根圧の変動に足並みをそろえるよう、正比例する方式で根温の変化に追従させる。
【0012】
前述の目的を達成するために、本発明の栽培方法は、植物に光化学作用のある人工光を照射し、また、植物の根系を目標値の根温に調節し、さらに、植物の葉系を外界温度とは異なる葉温に調節し、そして葉温および根温を植物に応じた相関関係を持たせて制御し、前記光化学作用光の照射、根温の調節および葉温の調節による炭酸同化作用管理を、相互に関連して行う、という本発明による特徴を持つ。この方法は、上記説明の洞察に一致しており、根温、供給光スペクトル、そして葉の炭酸同化作用管理は、別個に行うのではなく、相関関係を持たせた制御においてのみ最適な結果に至る。本発明による方法は、例えば、これらの成長因子の植物に依存する、および/または成長相に依存する修正という形式で、この相関関係を調整するオプションを提供する。
【0013】
特定な実施例における本発明による方法には、外界温度とは異なるよう葉系の葉温を調節することによって、炭酸同化作用管理に影響を与える、という特徴がある。本発明による上記説明のシステムは、他の明示成長因子のコントロールに加えて、必要に応じて環境とは異なるよう葉温が調節可能であるという点で、この方法の実施例に非常に適当である。もう一つの特定な実施例における本発明による方法には、照射、根温および葉温の調節が、相互に植物に応じて適応される、という特徴がある。
【0014】
植物の最適な光合成および成長モードの目的で、本発明による方法のもう一つの特定な実施例には、光化学作用人工光が、植物の光合成や成長モードに必要なスペクトルで照射される、という特徴がある。したがって、植物の光合成および成長・発達に役割を担う種々の光成分の相互比率および輝度を具体的に適応させることによって、比較的に低い総光輝度およびエネルギー消費にも拘わらず、高収率が実現できる。本発明の範囲内における本発明による方法のもう一つの特定な実施例には、人工光スペクトル、葉温および根温が、植物に応じて、個々に互いに相関関係を持たせて制御される、という特徴がある。
【0015】
さて、本発明を、模範的な実施例および添付図面に基づいてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によるシステムの模範的な実施例におけるデバイスを示す断面部分図である。
【0017】
図は、略図であり、一定の比率で描かれたものではない。明瞭に示すために、特にいくつかの寸法は多少誇張されている。図中、対応する部品は、可能な限り同じ参照番号で示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すシステムは、利用可能な土地面積を最も有効に利用するために、植物1の多層栽培を行う。この場合、植物は、植物の根系4を受容する目的で、土、ガラス・ウール、ロック・ウールまたは単純に水などの、適当な培養基質3を含む栽培トレイ2内に収容される。そして、ほぼ完全にステンレス鋼から構成されたフレームによるキャリッジ10のビーム11上に、複数の栽培トレイ2が上下に配置される。したがって、このようなキャリッジ10を所望数で組み合わせることによって、調整された環境内での完全な栽培システムを形成することができる。そこでは、完全に制御された方式で植物が成長する。植物に十分な水と必要な栄養分を提供するために、注水および施肥の設備(詳しくは図示せず)が、キャリッジ10に、あるいはキャリッジ内に設けられる。
【0019】
キャリッジのビーム11は、各々、一定のピッチで曲折するホースまたはチューブからなる暗渠システム12を含む。この点に関して、オプションとして、一連の中空フィンのシステムも暗渠システムとして適用できる。根系の温度をコントロールするために、制御された温度の水などの熱を運ぶ媒体を誘導できるこの暗渠システム12は、根温調節手段の一部を形成する。稼働中、加熱された媒体は熱を、例えばビームへ放出する。そして順に、ビームがその熱を、栽培トレイを介して、植物の根系を含む培養基質へ伝える。逆に、冷却された熱を運ぶ媒体によって根床(培養基質)から熱を排出することもできる。したがって稼働中、根系は、本文で説明する方法によって、ほぼ正確に所望の根温に維持される。この熱移送に、より特定な制御を与え、そのことによって、より効果的な熱交換能力を得るために、ビームは、例えばウレタン・フォームまたは発泡スチロール等の発泡プラスチックからなる絶縁ベース13、反射性最上層14例えば反射性金属被覆、または、このような被覆を備えた追加の中間層、それに続く暗渠システム12、そして、その上に良好な熱伝導率を持つ金属板15例えばステンレス鋼を持つ、多層構造をとる。
【0020】
栽培システムキャリッジ10は、他紫外線あるいは赤外線放射器などの第二のグループの光源22に加えて、発光ダイオード(LED)の第一のグループの光源21を内蔵する照明器具の形態にある人工光源20を備える。第一のグループの光源21内の発光ダイオードは、少なくとも主に、スペクトルの可視部分、特に赤、黄、緑あるいは青の光を発する。そして、第二のグループの光源22は、それに不可視部分、例えば赤外光および近紫外光などを加える。照明器具20は、制御手段(詳しくは図示せず)を備えており、それによって、稼働中、放出光の特定な分光組成を、栽培すべき植物1の必要条件および種類に適応させるよう、異なるグループ、そしてグループ内のエレメントを、選択的に、そして個々に制御可能である。相互から有意な程度でビームが光学的に分離されるため、必要に応じて、ビーム毎に異なるスペクトルを供給できるため、相互に組み合わせて異なる植物を栽培し、そして各々に最適なスペクトルをすることも可能である。システムは、低日光または日光のない環境、例えば地下環境での使用に非常に適している。
【0021】
栽培システムにさらに設けられているのが、赤外線放射器の形態にある葉加熱手段30であり、これは、キャリッジの棚の両側に多層に配置されている。赤外線放射器は、植物の葉の方向に、直接的に熱放射し、必要に応じて、外界温度に対して葉の葉温を増加させる。したがって、葉の炭酸同化作用の調節は、有意な程度に制御可能であり、特に、根系4によって生成される植物内の活液流の根圧へ適応される。これは、葉を加熱することによって、葉の気孔の拡幅を生じさせ、水が蒸発することを許容することによって、よりよく余剰根圧を軽減することが可能である一方、これらの同じ気孔を介しての、照明手段を用いて活性化および制御される光合成に必要な十分な炭酸同化作用が継続するからである。しかしながら、他方、植物の切り取りを行った場合、発を制限して切り取り面上に湿気を過剰に確保するよう、葉系は加熱しない、または少なくとも、弱く加熱する。本発明によるシステムにおいて、主要な成長因子、すなわち光合成、根圧および炭酸同化作用は、概して、個々に規制できる。また、これらの因子は、最適な成長および成長モードを増進するために、成長の各ステージで、そして各植物に対して相関関係において正確に適応される。
【0022】
上記に本発明を単一の模範的な実施例のみに基づいて詳細に説明したが、本発明が全くそれに限定されないことは明らかである。それどころか同業者には、より明白でない方式で本発明の範囲から逸れることなく、多くの他の変形例や実施例が可能である。したがって根温調節手段は、根系との幾分直接的な熱交換接触である培養基質内に直接的に設けられる暗渠システムからなることも可能である。水上での、またはガラス・ウールあるいはロック・ウール等の水を含む基質上での栽培のケースでは、根温は、供給される水の温度を制御するコントロールによっても制御可能である。
【0024】
上記の例では、移動可能なキャリッジ上での多層栽培を行っているが、本発明の範囲内においては、単一層での栽培および/または固定アレンジメントでの栽培も想定可能である。
【0025】
本発明の範囲内においては、葉系を介しての炭酸同化作用および湿気蒸発が、特に根圧に対して制御および適応可能である。直射的な赤外線ランプに替えて、葉系の近くに配置した螺旋フィラメント、加熱パネル等によって、これを達成することもできる。必要に応じて、さらに例えば、スペースの節約や設置の容易さを目的として、実施例における赤外線放射器などの葉加熱手段を、人工照明手段として同じ器具内に一体化することもできる。
【0026】
本発明において真に重要なことは、植物の成長・発達は、最も重要な成長因子、すなわち光合成、根圧、および炭酸同化作用のチェーンにおける最も弱いリンクによって決定されること、そして本発明によれば、すべてのこれらの因子が、相関関係において制御される、そして必要に応じて、最適なチェーンを実現するために人工的に修正されることである。
図1