【実施例1】
【0013】
本発明の第1実施例を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施例である沸騰水型原子炉(以下BWR)の初装荷炉心の1/4横断面の第2象限を示している。
【0015】
図1において、1つのマスが燃料集合体1体を表し、炉心全体では764体の燃料集合体が装荷されている。マスの中の数字は燃料集合体の種類を表しており、1,2は高濃縮燃料、3は低濃縮燃料、5は擬似燃料集合体である。擬似燃料集合体5は燃料集合体1層分の炉心外周領域である炉心最外周領域に装荷されている。
【0016】
また、
図1中、4は制御棒である。制御棒4は図中では外周領域のみを図示しているが、実際には内側領域にも同様に制御棒が配置されている。図中の太枠6はコントロールセルである。これらのコントロールセル6のうち所定割合のコントロールセルに対し、制御棒が所定の深さだけ挿入され、炉心の出力抑制が行われる。
【0017】
図2は燃料集合体1〜3を横から見た断面図(縦断面図)である。燃料集合体1〜3は、それぞれ、多数の燃料棒11と、2本のウォータロッド12と、燃料棒11およびウォータロッド12の上部と下部の間に位置し燃料棒11およびウォータロッド12を所定の間隔に保って束ねて燃料バンドルを形成するスペーサ13と、燃料棒11およびウォータロッド12の上部を支持する上部タイプレート14と、燃料棒11およびウォータロッド12の下部を支持する下部タイプレート15と、燃料棒11およびウォータロッド12の燃料バンドルと上部および下部タイプレート14,15の外周を覆うジルカロイ製のチャンネルボックス16とで構成されている。
【0018】
疑似燃料集合体5も、下記の点を除いて燃料集合体1〜3と同様に構成されている。
図2中、疑似燃料集合体5の構成要素にはかっこ書きで符号を示している。
【0019】
疑似燃料集合体5は、燃料集合体1〜3と同様、スペーサ23で束ねられた燃料棒21およびウォータロッド22の燃料バンドルと上部および下部タイプレート24,25の外周をジルカロイ製のチャンネルボックス26で覆って構成されており、疑似燃料集合体5の外径は燃料集合体1〜3と同じである。しかし、疑似燃料集合体5の燃料棒21は疑似燃料棒であり、燃料集合体1〜3の燃料棒11には二酸化ウランペレットが挿入されているのに対し、擬似燃料集合体5の燃料棒21には鉛による擬似ペレットが挿入されている。二酸化ウランペレットと鉛の密度は約11g/cm3で同等であり、その結果それらの比重も同等である。また、疑似燃料集合体5の下部タイプレート25は疑似燃料集合体5を流れる冷却材を減少させる装置を構成している(後述)。
【0020】
図3は、燃料集合体1〜3の下部タイプレート(通常の下部タイプレート)15を示す図であり、上側は上面図、下側は側面図である。
【0021】
図3に示すように、通常の下部タイプレート15は、下端に冷却材流入口15aを備え内部に流路15g(
図2参照)を形成した筒状部15bと、筒状部15bの上端に位置する上部支持板15cとを備え、上部支持板15cには燃料棒11の挿入孔15dとウォータロッド12の挿入孔15eに加えて、冷却材の流入孔15fが多数形成されている。
【0022】
図4は、疑似燃料集合体5の下部タイプレート25を示す図であり、
図3の上側に対応する上面図である。
【0023】
疑似燃料集合体5の下部タイプレート25も通常の下部タイプレート15と同様、冷却材流入口25aを備え内部に冷却材流路25gを形成した筒状部25d(
図2参照)と上部支持板25cを備え、上部支持板25cには燃料棒21の挿入孔25dとウォータロッド22の挿入孔25eが形成されている。しかし、下部タイプレート25には通常の下部タイプレート15と異なり冷却材の流入孔は形成されていない。このため下部タイプレート25とチャンネルボックス26の隙間を通して流れる冷却水の供給を除いて、チャンネルボックス26内は淀み水となる。このように下部タイプレート25は疑似燃料集合体5を流れる冷却材を減少させる装置を構成している。
【0024】
さらに、擬似燃料集合体5は、燃料集合体1〜3に比較して、燃料棒21の本数が少ないか、安価な材料であるか、スペーサ23に冷却材を攪拌する付属物がないか、スペーサ23の数が少ないか、燃料棒21に含まれる短尺燃料棒の本数が少ないか、ウォータロッド22の本数が少ないかのいずれかであってもよい。
【0025】
本実施例の効果を説明する。
【0026】
まず、比較例として、
図5に一般的な初装荷炉心(比較例1)の第2象限を示し、
図6に特許文献1に記載の初装荷炉心(比較例2)の第2象限を示す。
図5に示す初装荷炉心では、FCC(燃料サイクルコスト)を向上させるために、炉内滞在期間に応じてウラン濃縮度を変えた複数の燃料集合体が装荷され、初装荷炉心の炉心最外周領域には高濃縮燃料集合体2が装荷されている。
図6において、炉心最外周の×印は燃料集合体が装荷されていないことを意味する。このように
図6に示す特許文献1の初装荷炉心では、FCCをさらに向上させるために、炉心最外周に燃料集合体が装荷されていない。
【0027】
しかしながら、
図6に示す初装荷炉心では、炉心最外周に燃料集合体を装荷しないため、炉心最外周部分の流路抵抗が他の部分より低くなり、その部分は除熱を必要としないにも係わらず、多くの冷却材が流れてしまい、除熱を必要とするその他の燃料集合体の熱的特性が悪化することとなる。また、制御棒4は、通常、燃料集合体4体を組としたセルの中央に挿入され、燃料集合体に保持されるが、炉心最外周の燃料集合体を装荷しないセルの制御棒4は挿入することができなくなり、炉停止余裕が悪化するという課題があった。
【0028】
これに対し、本実施例の初装荷炉心では、
図1に示すように擬似燃料集合体5を炉心最外周に装荷しているため、炉心最外周に疑似燃料集合体5を装荷しない
図6の初装荷炉心で当該位置を流れる冷却水は、その他の燃料集合体1〜3を流れ、これら燃料集合体1〜3の除熱が促進される。本実施例の場合、
図6の炉心最外周に疑似燃料集合体5を装荷しない初装荷炉心に比べ3%程度限界出力を向上させることができる。
【0029】
また、炉心最外周に擬似燃料集合体5を装荷しない場合、当該箇所に位置する制御棒4は炉心最外周側で燃料集合体による支えがないことから全引き抜き状態とする必要があるが、擬似燃料集合体5を装荷することで、燃料集合体1,2とともに最外周位置の制御棒4を保持することができ、制御棒4の挿入・引抜を通常通りに行うことができる。これにより、炉停止余裕の悪化を回避することができる。
【0030】
また、本実施例では、擬似ペレットとして鉛を用いているが、前述したとおり二酸化ウランペレットと鉛擬似ペレットはほぼ比重が同じであり、燃料集合体としての地震時振動特性が通常の燃料集合体1〜3と同じになっている。これにより、地震時の制御棒緊急挿入性能は、通常燃料を最外周に装荷した場合に比べて、悪化することはない。
【実施例2】
【0031】
本発明の第2実施例を
図7を参照して説明する。
【0032】
図7において、本実施例の初装荷炉心は、炉心最外周位置に劣化ウランペレットを全ての燃料棒に充填した劣化ウラン燃料集合体(疑似燃料集合体)5Aを装荷している。
【0033】
劣化ウラン燃料集合体5Aに充填されている劣化ウランペレットは天然ウランよりも核分裂性物質量割合の少ないペレットである。劣化ウラン燃料集合体5Aは核分裂性物質量が少なく、それだけでは炉心を構成することができないため、通常の燃料集合体として使用することはできない。
【0034】
また、本実施例の特徴として、劣化ウラン燃料集合体5Aは第1サイクル終了後、炉内から優先的に取り出されるが、通常の燃料集合体と異なり、プルトニウムや余剰ウランを取り出すために再処理を行わない。
【0035】
図8は、
図7のように劣化ウラン燃料集合体5Aを初装荷炉心に装荷し、当該燃料集合体を取出し後、再処理しない場合のFCCを、通常の初装荷炉心と比較した結果を示す図である。
【0036】
図8より本発明の方がFCCが改善していることが分かる。特に第1サイクルにおいて、原子炉に装荷する燃料集合体が少ないことから、初期投資を小さくできるという利点がある。
【0037】
また、現在の初装荷炉心は燃料集合体濃縮度を高くして、2サイクル連続運転が可能となっている。そのため、第2サイクルの余剰反応度がかなり高くなり、炉心特性が悪化する傾向にある。一方、本実施例では、第1サイクル終了後に取り出した劣化ウラン燃料集合体5Aの代わりに新燃料集合体を装荷するが、新燃料集合体はガドリニアが未燃焼であるため、余剰反応度を容易に抑えることが可能である。
【0038】
また、本実施例の劣化ウラン燃料集合体5Aは反応度が低いため、熱的特性が厳しくなることはない。そのため、その他の燃料集合体1〜3に比べて、熱的特性を改善するための装置は不要であり、例えば、燃料格子は10行10列ではなく9行9列であったり、限界出力比を改善するためにスペーサに取り付けられる冷却材攪拌羽は具備していなくとも良い。このようにすることで、劣化ウラン燃料集合体5Aの製造費を低く抑えることが可能である。
【0039】
本実施例では疑似燃料集合体5Aに劣化ウランペレットだけを使用しているが、前述のとおり、炉心から取り出す際に核分裂性物質が初期重元素重量に対して1wt%程度より少ない場合に再処理をしないと考えると、天然ウランや、ある程度の濃縮ウランを用いることも可能である。
【実施例3】
【0040】
本発明の第3実施例を
図9を参照して説明する。
【0041】
図9において、本実施例の初装荷炉心は、炉心最外周位置とコントロールセル6の一部に劣化ウランペレットを全ての燃料棒に充填した劣化ウラン燃料集合体(疑似燃料集合体)5Aを装荷している。コントロールセルの一部に装荷される劣化ウラン燃料集合体5Aは、コントロールセルの中で、燃焼初期の運転中に制御棒が挿入されているセルに優先的に装荷されている。
【0042】
本実施例では、
図9のように劣化ウラン燃料集合体5Aを燃焼初期の運転中に制御棒が挿入されるコントロールセルに装荷している。
【0043】
第1サイクルにおいて制御棒の挿入されるセルに装荷されている燃料集合体のチャンネルボックス16(
図2参照)は、シャドー腐食と呼ばれる現象によりチャンネルボックス26の曲がりが発生する可能性があると言われているが、そのようなセルには劣化ウラン燃料集合体5Aを用いて、第1サイクル終了後には取り出すため、チャンネルボックス26に曲がりが発生しても、その後の運転に特に問題は発生しない。
【0044】
また、燃焼初期は燃料集合体の局所ピーキングが高いため、制御棒を挿入している高さ位置よりやや上部の軸方向ピーキングが大きい部分で、燃料棒の線出力密度が高くなる傾向があるが、本実施例の劣化ウラン燃料集合体5Aは十分に集合体出力が低いため、そのような問題も発生しない。