(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の吸音性ボードは、籾殻燻炭粒がポリビニルアルコール系樹脂を介して結合されてなり、2000Hzから3500Hzのあいだに吸音率のピークを有し、該ピークにおける吸音率が0.9以上である吸音性ボードである。
【0012】
かかる吸音性ボードは、籾殻燻炭とポリビニルアルコール系樹脂の水溶液とを混合してなる素地体をプレス成形し、プレスされた状態で加熱乾燥して得ることができる。あるいは、籾殻燻炭とポリビニルアルコール系樹脂の水溶液とを混合してなる素地体を凍結し、次いで解凍したのちプレスし、プレスされた状態で加熱乾燥して得ることができる。いずれの場合においても、プレスされた状態で加熱乾燥したのち、無荷重状態でさらに加熱乾燥してもよい。
【0013】
本発明において用いる籾殻燻炭は、籾殻を燻焼したものである。燻焼における炭化温度は例えば400〜700℃である。籾殻燻炭のシリカ含有量は燻焼条件によって異なるが、約30〜約50重量%であり、炭素の含有量は約50〜約70重量%の範囲である。
【0014】
本発明において用いるポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と略記する。)は、一般的に酢酸ビニルを共重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して得られるもので、ビニルアルコール構造単位を主成分とし、そのケン化度に応じて未ケン化部分である酢酸ビニル構造単位を有する水溶性樹脂である。
【0015】
本発明で用いられるPVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は、通常500〜10000であり、特に800〜3000、殊に1500〜2600であるものが好ましく用いられる。
かかる平均重合度が小さすぎると、得られる吸音性ボードの機械的強度が不十分となる場合があり、大きすぎると、籾殻燻炭とPVA系樹脂の水溶液を混合してなる素地体の流動性が不足し、プレス成形時に過度な圧力が必要となる場合がある。
【0016】
また、本発明で用いられるPVA系樹脂としては、ケン化度(JIS K6726に準拠して測定)が50〜100モル%であるのものを用いることが可能である。本発明の吸音性ボードにおいて良好な吸音性を得るには、バインダーとして用いるPVA系樹脂の結晶化度が重要であり、かかる結晶化度は成形条件等とともに使用するPVA系樹脂によって制御することが可能である。ビニルアルコール構造単位と酢酸ビニル構造単位のみを有する未変性PVA系樹脂では、酢酸ビニル構造単位の含有量等によって結晶化度の制御が容易になり、ケン化度が80〜99.9モル%、特に86〜99.8モル%であるものが好ましく用いられる。
【0017】
また、本発明では、PVA系樹脂として側鎖に各種官能基を導入した変性PVA系樹脂を用いることができ、かかる変性PVA系樹脂に導入された官能基は、上述の未変性PVA系樹脂における酢酸ビニル構造単位よりも結晶化度に及ぼす影響が大きいことから、変性PVA系樹脂を用いることで結晶化度を制御をより容易に行うことが可能である。
【0018】
かかる変性PVA系樹脂としては、公知のものを用いることが可能であり、酢酸ビニルの重合時に各種単量体を共重合させ、これをケン化して得られた変性PVA系樹脂や、未変性PVAに後変性によって各種官能基を導入した変性PVA系樹脂などが挙げられる。
【0019】
前者の共重合による変性PVA系樹脂に用いられる単量体としては、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等を挙げることができる。
【0020】
これらの各種単量体を用いて得られた変性PVA系樹脂の中でも、本発明においては、下記一般式(1)で示される側鎖に1,2−ジオール構造を有する構造単位を有するPVA系樹脂が好ましく用いられる。かかるPVA系樹脂は、これに限定されるものではないが、例えば、特開2006−95825に説明されている方法によって製造することができる。
【0022】
本発明において、かかる一般式(1)で表される構造単位を有する変性PVA系樹脂を用いる場合、ケン化度が90〜99.9モル%のものが好適であり、特に98〜99.9モル%のものが好ましく用いられる。
また、かかるPVA系樹脂に含まれる式(1)で示される構造単位の含有量は、通常、0.5〜15モル%であり、特に2〜10モル%、殊に3〜8モル%のものが好ましく用いられる。
【0023】
また、後反応によって官能基が導入されたPVA系樹脂としては、ジケテンとの反応によるアセト酢酸エステル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基が有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVAと反応させて得られたものなどを挙げることができる。
中でも、本発明の用途に対しては、下記一般式(2)で表されるアセト酢酸エステル基を含む構造単位を有する変性PVA系樹脂が好適に用いられる。
【0025】
かかる変性PVA系樹脂中の変性種、すなわち共重合体中の各種単量体に由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、変性種によって特性が大きくことなるため一概には言えないが、通常1〜20モル%であり、特に2〜10モル%、殊に3〜9モル%の範囲であるものが好ましく用いられる。
【0026】
本発明において、かかる一般式(2)で表される構造単位を有する変性PVA系樹脂を用いる場合、ケン化度が70〜99.9モル%のものが好適であり、特に85〜99.9モル%のものが好ましく用いられる。
【0027】
本発明において用いるPVA系樹脂の水溶液におけるPVA系樹脂の濃度は5〜30重量%であることが好ましい。吸音性ボード中のPVA系樹脂の含有比率は5〜20重量%であることが好ましい。上記の加熱乾燥における加熱温度は150〜190℃であることが好ましい。
【0028】
本発明の吸音性ボードのかさ密度は0.75〜0.9g/cm
3である。このようなかさ密度は加熱乾燥時のプレス条件を調節して達成することができる。
【0029】
かさ密度が0.9g/cm
3を越えて大きくなると吸音率のピークが高音側にシフトし、2000Hzから3500Hzのあいだに吸音率のピークを有さなくなる。かさ密度が0.75g/cm
3未満であると吸音率のピークが低くなりかつ2000Hzから3500Hzのあいだに吸音率のピークを有さなくなる。また、ボードの強度やヤング率が低下する。
【0030】
本発明の吸音性ボードは、籾殻燻炭に含まれるシリカ成分がPVA系樹脂のビニルアルコール成分と強固に結合しているので高強度である。また、プレスされて加熱乾燥されているときにこの結合が生ずるので、プレス荷重を開放したときに成形体がキックバックして膨張することがほとんどなく、きわめて緻密な多孔構造が得られる。この緻密な多孔構造のため、2000Hzから3500Hzのあいだに吸音率のピークを有し、該ピークにおける吸音率が0.9以上である吸音特性が得られる。
【0031】
このような特性を有する本発明の吸音性ボードは、生活騒音を選択的に吸収する性能を有するので、壁材や玄関ドア用のパネルとして好適に使用される。
【0032】
また、本発明の吸音性ボードは、籾殻燻炭が吸着性能を発揮するので、臭いを吸収する機能を有する。
【0033】
なお、本発明においては、吸音性能を著しく損なわない程度に、例えば含有率30重量%以下で充填材を含有させたものも本発明の吸音性ボードの範囲に含まれる。このような充填材としては、籾殻、木材屑、籾殻以外の種子殻、石膏、炭酸カルシウムなどの無機塩類が例示される。
【0034】
本発明の吸音性ボードは、前述のように籾殻燻炭と上述のPVA系樹脂の水溶液とを混合してなる素地体をプレス成形し、プレスされた状態で加熱乾燥して得ることができる。しかし加圧面に溝や孔のない平坦な加圧面を有する加圧用盤体で素地体をプレスされた状態で加熱すると、実験例1に示すように、加圧用盤体の中央部分と辺の部分とでは得られたボードの吸音特性に差があることがわかった。
【0035】
製造例1
<PVA系樹脂(A1)の製造>
還流冷却器、滴下漏斗、攪拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル100部、メタノール4.5部、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン4モル%(対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.016モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、攪拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が65%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液とした。
【0036】
ついで、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムを2%メタノール溶液として共重合体中の酢酸ビニル構造単位および3,4−ジアセトキシ−1−ブテン構造単位の合計量1モルに対して10ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、一般式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂(A1)を作製した。
【0037】
得られたPVA系樹脂(A1)のケン化度は、残存酢酸ビニルおよび3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、98.9モル%であった。また、平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、1870であった。また、一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量は3.9モル%であった。
【0038】
製造例2
<PVA系樹脂(A2)の製造>
温度調節器付きリボンブレンダーに、未変性PVA(平均重合度1800、ケン化度96モル%)を、ニーダーに100部仕込み、これに酢酸3部加えて膨潤させ、回転数20rpmで攪拌しながら、60℃に昇温後、ジケテン17部を3時間かけて滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後、メタノールで洗浄した後、70℃で6時間乾燥して一般式(2)で示されるアセト酢酸エステル基を含む構造単位を有するPVA樹脂(A2)を得た。
【0039】
得られたPVA系樹脂(A2)の一般式(2)であらわされる構造単位の含有量は7.9モル%であり、ケン化度、重合度は、それぞれ95.8モル%、1800であった。
【0040】
実験例1
ボードの製造条件を以下に示す。
材料
炭化籾殻:100重量部
PVA系樹脂(A1)15重量%水溶液:50重量部
(籾殻燻炭は、シリカ含有量約40重量%、炭素含有量約60重量のものを使用)
加熱・加圧条件
加圧用盤体の加圧がわの面の形状とサイズ:上下盤体とも縦30cm×横30cmの正方形の平面
加圧力:2.5MPa
加熱温度:180℃
加圧時間:12分
ボードのサイズ
26cm×28cm×0.6cm
ボードのかさ密度
0.9g/cm
【0041】
図1に、ボードの辺を含めた部分から8cm角に切りだした試料(H)とボードの中央部から8cm角に切りだした試料(C)についての吸音特性を示す。グラフの縦軸は100%吸音したときを1とする数値である。吸音特性は後述の実験例3におけると同様にして測定した。
図1に示すように、ボードの辺の部分から切りだした試料(H)は3500Hzより小さくかつ3500Hzに近い周波数に吸音率のピークを有し、該ピークにおける吸音率が0.9であるのに対して、ボードの中央部から切り出した試料(C)は2000Hzから4000Hzのあいだに吸音率のピークがなく、かつ全体に試料(H)より吸音率が低い。
【0042】
この理由は加圧状態での加熱時に発生した水蒸気がボードの面方向に関する中央部では外部へ抜けにくく高温で比較的高圧の水蒸気がボードの内部に長時間滞留することにより、PVA系樹脂が変質し接着剤としての機能が低下し、ボードの辺の部分と中央部とではボードの内部構造が異なるためと推定される。これに対して、ボードの辺部では加圧状態での加熱時に発生した水蒸気がボードの側辺から外部へ抜けやすいため、PVA系樹脂の乾燥がボードの中央部に比べて短時間に進行するのでPVA系樹脂の接着剤としての機能が充分に発揮されて炭化籾殻同士が強固に固着することにより優れた吸音特性を有するボードが得られると推定される。
【0043】
この知見から、加圧加熱中に発生する水蒸気をボードの中央部からも短時間に外部に逃がすことが重要であることがわかった。このためには、
図2に示すように、加圧加熱対象の素地体2を一の加圧用盤体4と他の加圧用盤体6とで挟持して加圧し、加圧用盤体4に加圧面と直交方向に貫通する貫通孔8を複数個設けることが有効とわかった。
図2においては、素地体2を挟持した状態で加圧用盤体4と加圧用盤体6とが基盤10と加圧子12との間に設置されて、素地体2が基盤10と加圧子12とにより加圧されるとともに不図示の加熱手段により加熱される。
【0044】
加圧用盤体4は、加圧用盤体4の図面視上面部上方に加圧子12と加圧用盤体4との間に空間15を形成するような形状の加圧子12を介して加圧される。貫通孔8は加圧用盤体4の加圧がわの面19で一端が開口し、他端が空間15に面して開口している。また、空間15は外部に導通する導通路17を有する構造となっている。貫通孔8は加圧用盤体4の加圧がわの面19で一端が開口し、他端が加圧用盤体4の側面で開口する孔であってもよい。
【0045】
貫通孔8は格子状あるいはダイヤモンド格子状などの所定の間隔をおいた配置で設けられる。
【0046】
貫通孔8の径は、0.5〜5mmであることが好ましい。この径が0.5mm未満であると水蒸気の抜けが悪い。この径が5mmを越えるとボード面で加圧されない面の割合が過大になり、外観や性能が満足すべきものとならない。
【0047】
加圧用盤体6にも貫通孔が設けられてもよい。その場合は基盤10に空間15と同様な機能を有する空間が設けられることとなる。
【0048】
加圧子16に導通路17を設ける態様としては、
図2に示すような加圧子16の加圧側の面から複数本の短い柱20が突設されていて柱20柱を介して加圧用盤体4が押されるという構成でもよいが、例えば、加圧用盤体4と加圧子との間に複数個の互いに間隔をおいたスペーサーが配置されてもよい。
【0049】
このような構成により、加圧加熱中に素地体2から発生する水蒸気は、貫通孔8を通って外部に排出されるので、素地体2の面方向に関する中央部11においても、素地体2の辺部13とほぼ同様に水蒸気を外部に排出させることができる。
【0050】
加圧加熱中に発生する水蒸気をボードの中央部からも短時間に外部に逃がす他の態様の一例を
図3に示す。この態様においては、加圧加熱対象の素地体2を一の加圧用盤体4aと他の加圧用盤体6aとで挟持して加圧し不図示の加熱手段により加熱する。加圧用盤体4aは平板であり、加圧用盤体6aは加圧面に複数の溝14が平行に、あるいは
図3に示すごとく交差して、加圧用盤体6aを横切って形成されている。
図3においては、素地体2を挟持した状態で加圧用盤体4aと加圧用盤体6aとが基盤10と加圧子12aとの間に設置されて、基盤10と加圧子12aとにより加圧される。加圧加熱中に素地体2から発生する水蒸気は、溝14を通って加圧用盤体6aの側部15に露出する溝14の端部23から排出される。
図4は加圧用盤体6aの斜視図である。
【0051】
溝14の幅は、0.5〜5mmであることが好ましい。この幅が0.5mm未満であると水蒸気の抜けが悪い。この幅が5mmを越えるとボード面で加圧されない面の割合が過大になり、外観や性能が満足すべきものとならない。溝14の深さは3〜10mmであることが好ましい
【0052】
また、溝14のような溝や貫通孔8などの貫通孔が、一の加圧用盤体(4)と他の加圧用盤体(6)の両方にそれぞれ形成されていてもよい。
【0053】
このように、本発明においては、少なくとも片方の加圧用盤体の加圧面に溝または貫通孔または両方からなる凹みによる開口が形成され、この凹みの内部空間がこの加圧用盤体の側面または加圧面と反対側の面、あるいはこの加圧用盤体の素地体を加圧するがわの面19のうち加圧下の素地体を投影した領域21以外の個所で外気と導通していることにより、加圧加熱中に素地体2から発生する水蒸気が、この凹みを経由して外部に排出されるので、素地体の面方向に関する中央部においても、素地体の辺部とほぼ同様に水蒸気を外部に排出させることができる。なお、領域21は、
図2、
図3において加圧用盤体の素地体を加圧するがわの面19のうち太線で示される部分である。
【0054】
溝14や貫通孔8からなる凹みによる開口は、加圧用盤体の素地体を挟持するがわの面19に形成されているが、加圧下の素地体を投影した領域21の面積に対する、領域21内の溝14や貫通孔8からなる凹みによる開口の面積、の比率が0.1〜10%であることが好ましい。なお、本明細書においては、溝による開口は、ある平面に溝が形成されたときの、その平面におけるその溝の形成により面が失なわれた部分をいう。
【0055】
この比率が10%を越えて大きくなると、ボード面で加圧されない面の割合が過大になり、外観や強度、吸音特性などの性能が満足すべきものとならない。この比率が0.1%を越えて小さくなると、水蒸気の抜けが悪い。
【0056】
さらに、凹みによる開口は、その開口の少なくとも一部が領域21内に含まれる全ての直径15cmの仮想円それぞれについて、その仮想円の内側に存在するように配置されていることが好ましい。なお、領域21内に仮想円が含まれるとは、その領域21にその仮想円の全体が含まれることをいうものとする。
【0057】
ある直径15cmの仮想円の域に溝14や貫通孔8の開口が存在しない態様では、そのような域では加圧用盤体4や加圧用盤体4aの面が平面状であり、ボードの、その平面状の面で加圧された部分は被加圧加熱物から発生した水蒸気が外部に逃げにくいので、満足すべき吸音特性が得られない。
【0058】
実験例2
加圧面に溝が形成された加圧用盤体6a(
図4)を用い、
図3に示すような構成で試料を加圧した以外は実験例1と同様にしてボードを製造した。加圧用盤体4aの縦横のサイズは実験例1に用いた加圧用盤体と同じである。加圧用盤体6aの溝の幅wは3mm、深さdは5mm、互いに平行で隣り合う溝の間隔ピッチpは8cmである。
【0059】
実験例2で得られたボードは、ボードの辺を含めた部分から8cm角に切りだした試料(イ)とボードの中央部から8cm角に切りだした試料(ロ)とについて吸音特性を測定したが、試料(イ)と試料(ロ)とで吸音特性にはっきりした差はなく、また、吸音特性は両者とも実験例1における試料(H)の吸音特性と同様であった。
【0060】
実験例3(実施例1、2を含む)
実験例1に用いたと同様の籾殻燻炭と、下記2種類のポリビニルアルコール系バインダを用いてそれぞれ籾殻燻炭ボードを作成し、性能を評価した。
【0061】
ポリビニルアルコール系バインダの種類
L−1:PVA系樹脂(A1)を用いた。(実施例1)
L−2:PVA系樹脂(A2)を用いた。(実施例2)
【0062】
籾殻燻炭
焼成温度:500℃
籾殻燻炭中のシリカ含有量:約20重量%
【0063】
成形体製造条件
材料:炭化籾殻:100重量部、PVA系樹脂15重量%水溶液:48重量部
ボードサイズ:26cm×28cm×0.6cm
かさ密度:0.80/cm
加熱・加圧条件
実験例2と同様の加圧装置を用いた。
加圧力:2MPa
加熱温度:180℃
加圧時間:12分
籾殻燻炭にバインダ加え攪拌後プレス成形した。
プレス圧力:2MPa
成形温度:180℃
プレス時間:12分
【0064】
吸音特性の測定
測定装置・・・マイクロホンインピーダンス測定装置(MS−1020型 Breuel & Kjaer 製)
細管使用(500〜6500Hz)
試験片のサイズ:外径29mm、厚さ10mm
【0065】
測定結果
図5にL−1、L−2のバインダをそれぞれ用いた成形体試料の吸音特性を示す。
【0066】
図5に示すように、L−1のバインダを用いたボードは、3000Hz付近に吸音率のピークを有し、該ピークにおける吸音率が0.9以上である。L−2のバインダを用いたボードは、2000Hz付近に吸音率のピークを有し、該ピークにおける吸音率が0.9以上である。
【0067】
このような吸音特性は従来のボードでは得られず。新規なボードである。また、このボードは、籾殻燻炭のにおい物質を吸着する特性が活かされており、優れたにおい吸収性能を有していた。
【0068】
実施例3
加圧面に貫通孔が形成された加圧用盤体6(
図2)を用い、
図2に示すような構成で試料を加圧した以外は実施例1と同様にしてボードを製造した。加圧用盤体4の縦横のサイズは実験例1に用いた加圧用盤体と同じである。加圧用盤体6の貫通孔の径は4mmで互いに隣り合う貫通孔の間隔ピッチは5cmで、貫通孔は縦横の格子状に配された。
【0069】
得られたボードは、約3000Hzに吸音率のピークを有し、該ピークにおける吸音率が0.95であった。このボードは、籾殻燻炭のにおい物質を吸着する特性が活かされており、優れたにおい吸収性能を有していた。