特許第6073587号(P6073587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073587
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20170123BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F25B47/02 530B
   B60H1/32 622Z
   F25B47/02 570W
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-158017(P2012-158017)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-20632(P2014-20632A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
(72)【発明者】
【氏名】武居 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
(72)【発明者】
【氏名】北村 智
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕平
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−071963(JP,A)
【文献】 特開平02−017370(JP,A)
【文献】 特開平04−332360(JP,A)
【文献】 特開平09−026214(JP,A)
【文献】 特開平10−082569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
冷媒を放熱させる放熱器と、
冷媒を吸熱させる吸熱器と、
冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、
室外熱交換器において放熱して流出した液体の冷媒を貯留可能な気液分離器と、
気液分離器から流出する液体の冷媒を過冷却の状態とする過冷却器と、
圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させて放熱させ、放熱器を流通した冷媒の少なくとも一部を膨張弁を介して室外熱交換器に流入させて吸熱させ、室外熱交換器を流通した冷媒を気液分離器及び過冷却器を流通させることなくアキュムレータに流入させ、アキュムレータから流出する冷媒を圧縮機に吸入させる暖房用冷媒回路と、
暖房用冷媒回路の圧縮機の冷媒吐出側と放熱器の冷媒流入側との間の冷媒流路を流通する冷媒の少なくとも一部を、放熱器を流通させることなく室外熱交換器に流入させるホットガスバイパス回路と、
ホットガスバイパス回路の冷媒流路を開閉する第1開閉弁と、
室外熱交換器の冷媒流出側とアキュムレータの冷媒流入側との間の冷媒流路を開閉する第2開閉弁と、
室外熱交換器に着霜が生じる条件を満たすか否かを判定する着霜判定手段と、
暖房用冷媒回路に冷媒を流通させる運転中に、着霜判定手段によって室外熱交換器の着霜が生じる条件であると判定した場合に、第1開閉弁を開放し、第1開閉弁の開放後に第2開閉弁を閉鎖するホットガス除霜手段と、
ホットガス除霜手段による第2開閉弁の閉鎖の際に、圧縮機の回転数を、第2開閉弁の閉鎖前の圧縮機の回転数よりも低下させる圧縮機回転数低下手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
ホットガス除霜手段における第2開閉弁の閉鎖時に、圧縮機から吐出された冷媒の一部をホットガスバイパス回路を介して室外熱交換器の冷媒流路の一端側から室外熱交換器に流入させるとともに、圧縮機から吐出されたその他の冷媒を室外熱交換器の冷媒流路の他端側から室外熱交換器に流入させる冷媒流入手段を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
ホットガス除霜手段による第1開閉弁の開放以降に、膨張弁を閉鎖する膨張弁閉鎖手段を備えた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
ホットガス除霜手段による第1開閉弁を開放してから第2開閉弁を閉鎖するまでの間、圧縮機の回転数を、所定回転数以上とする圧縮機回転数上昇手段を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
放熱器および吸熱器の一方または両方において冷媒と熱交換する空気を流通させる送風機と、
ホットガス除霜手段による第1開閉弁および第2開閉弁の開閉の切換えの際に、送風機の送風量を、暖房用冷媒回路に冷媒を流通させる運転時の送風機の送風量よりも低下させる送風機制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
圧縮機が吐出した冷媒を室外熱交換器に流入させて放熱させ、室外熱交換器を流通した冷媒を膨張手段を介して吸熱器に流入させて吸熱させ、吸熱器を流通した冷媒を圧縮機に吸入させる逆サイクル回路と、
暖房用冷媒回路に冷媒を流通させる運転中に、着霜判定手段によって室外熱交換器に着霜が生じる条件であると判定するとともに、所定の条件を満たす場合に、逆サイクル回路に冷媒を流通させる運転を行う逆サイクル除霜手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車に適用可能な車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置では、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内に設けられた室内熱交換器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、を備えたものが知られている。この車両用空気調和装置では、圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器に流入させて放熱させ、室内熱交換器を流通した冷媒を膨張手段を介して室外熱交換器に流入させて吸熱させ、室外熱交換器から流出した冷媒を圧縮機に吸入させることによって暖房運転を行っている。
【0003】
前記車両用空気調和装置では、車室外の温度が低い環境下(例えば、摂氏0度以下等)において暖房運転を行うと、室外熱交換器に着霜が生じることがある。暖房運転においては、室外熱交換器に着霜が生じると、室外熱交換器における吸熱量が不足して暖房能力が低下する。このため、暖房運転時には、室外熱交換器に付着した霜を取り除くために除霜運転を行う必要がある。
【0004】
除霜運転は、圧縮機から吐出された高温の冷媒を室外熱交換器に流入させることで、室外熱交換器に付着している霜を融解させるものである。しかし、車両の走行中に除霜運転を行う場合には、室外熱交換器に付着した霜に低温の空気が当たり続けるため、霜が融解し難くなり、室外熱交換器に付着した霜を除去することが困難である。
【0005】
そこで、前記車両用空気調和装置では、室外熱交換器の外側に可動ルーバを設け、除霜運転時に可動ルーバによって走行風が室外熱交換器に直接当たらないようにして、室外熱交換器に付着した霜を効率的に除去するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−55296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記可動ルーバを備えた車両用空気調和装置では、可動ルーバや可動ルーバを駆動させるための電動モータ等、部品点数が多くなるため製造コストが高くなり、さらに、エンジンルーム内を占有するスペースが大きくなるため小型の車両に対する前記空気調和装置の設置が困難である。
【0008】
本発明の目的とするところは、部品点数および占有スペースを増加させることなく確実に室外熱交換器に付着した霜を取り除くことのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、冷媒を放熱させる放熱器と、冷媒を吸熱させる吸熱器と、冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、室外熱交換器において放熱して流出した液体の冷媒を貯留可能な気液分離器と、気液分離器から流出する液体の冷媒を過冷却の状態とする過冷却器と、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器に流入させて放熱させ、放熱器を流通した冷媒の少なくとも一部を膨張弁を介して室外熱交換器に流入させて吸熱させ、室外熱交換器を流通した冷媒を気液分離器及び過冷却器を流通させることなくアキュムレータに流入させ、アキュムレータから流出する冷媒を圧縮機に吸入させる暖房用冷媒回路と、暖房用冷媒回路の圧縮機の冷媒吐出側と放熱器の冷媒流入側との間の冷媒流路を流通する冷媒の少なくとも一部を、放熱器を流通させることなく室外熱交換器に流入させるホットガスバイパス回路と、ホットガスバイパス回路の冷媒流路を開閉する第1開閉弁と、室外熱交換器の冷媒流出側とアキュムレータの冷媒流入側との間の冷媒流路を開閉する第2開閉弁と、室外熱交換器に着霜が生じる条件を満たすか否かを判定する着霜判定手段と、暖房用冷媒回路に冷媒を流通させる運転中に、着霜判定手段によって室外熱交換器の着霜が生じる条件であると判定した場合に、第1開閉弁を開放し、第1開閉弁の開放後に第2開閉弁を閉鎖するホットガス除霜手段と、ホットガス除霜手段による第2開閉弁の閉鎖の際に、圧縮機の回転数を、第2開閉弁の閉鎖前の圧縮機の回転数よりも低下させる圧縮機回転数低下手段と、を備えている。
【0010】
これにより、暖房運転中に第1開閉弁を開放することによってアキュムレータに冷媒が液体の状態で貯留され、第1開閉弁の開放後に第2開閉弁を閉鎖することによってアキュムレータに貯留された液体の冷媒が気化して室外熱交換器に流入することから、室外熱交換器内が高温高圧の状態となって室外熱交換器における放熱量を増加させることが可能となる。また、圧縮機の回転数を低下させることによって室外熱交換器に流入する冷媒の流量が減少することから、アキュムレータに貯留された冷媒が、長時間にわたって室外熱交換器に流入して、冷媒の熱エネルギーが室外熱交換器に付着した霜に確実に伝えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、室外熱交換器内を高温高圧の状態として室外熱交換器における放熱量を増加させることができるので、室外熱交換器に付着した霜を確実に除去することが可能となる。また、アキュムレータに貯留された冷媒は、長時間にわたって室外熱交換器に流入するため、冷媒の熱エネルギーが室外熱交換器に付着した霜に確実に伝えられるので、室外熱交換器に付着した霜をより確実に除去することが可能となる。このため、ホットガス除霜手段による第2開閉弁の閉鎖の際に、圧縮機の回転数を維持する場合や上昇させる場合のように、アキュムレータに貯留された冷媒が短時間で室外熱交換器に流入してしまうことによる、冷媒の熱エネルギーが霜の除去に有効に作用しないといった不具合の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図2】第1制御弁のステッピングモータの回転位置と弁開度との関係を示すグラフである。
図3】冷房運転および除湿冷房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図4】暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図5】第1除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図6】第2除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図7】ホットガス除霜運転のタイミングチャートである。
図8】ホットガス除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図9】逆サイクル除霜運転のタイミングチャートである。
図10】除霜運転制御処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2実施形態を示すホットガス除霜運転のタイミングチャートである。
図12】ホットガス除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図13】本発明の第3実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図14】ホットガス除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
図15】逆サイクル除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図10は、本発明の第1実施形態を示すものである。
【0014】
本発明の車両用空気調和装置は、図1に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20と、を備えている。
【0015】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0016】
空気流通路11内の一端側には、空気流通路11の一端側から他端側に向かって空気を流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。
【0017】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する内外気吸入モードとなる。
【0018】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成されている。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器は、バイレベルモードにおいて、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差を生じさせるような、互いの位置関係および構造となっている。
【0019】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14及び放熱器15は、それぞれ内部を流通する冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。
【0020】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15によって加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖する方向に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0021】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、放熱器15および室外熱交換器22の少なくとも放熱器15から流出する冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換させるための内部熱交換器23、暖房運転および第1除湿暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と除湿冷房運転時に放熱器15における冷媒の凝縮圧力を制御するための凝縮圧力調整手段とを有し、膨張手段側または凝縮圧力調整手段側に冷媒流路を切換え可能な第1制御弁24、吸熱器14における冷媒の蒸発圧力を調整するための第2制御弁25、第2開閉弁としての第1電磁弁26a、第2電磁弁26b、第3電磁弁26c、第1開閉弁としての第4電磁弁26d、第1〜第3逆止弁27a,27b,27c、膨張弁28、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液体の冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ29を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。
【0022】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第1制御弁24の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第1制御弁24の膨張手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の一端側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。冷媒流通路20cには、第1逆止弁27aが設けられている。また、第1制御弁24の凝縮圧力調整手段側の冷媒流出側には、室外熱交換器22の他端側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。室外熱交換器22の他端側には、冷媒流通路20dと並列に、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側が接続されることによって冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路27fには、第2電磁弁26bが設けられている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2制御弁25が設けられている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20eの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。室外熱交換器22の一端側には、冷媒流通路20cと並列に、冷媒流通路20fの第2電磁弁26bの冷媒流通方向の下流側が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20jには、冷媒流通方向の上流側から順に、第3電磁弁26c、第2逆止弁27bが設けられている。冷媒流通路20aには、冷媒流通路20cの第1逆止弁27aの冷媒流通方向の下流側が接続されることによってホットガスバイパス回路としての冷媒流通路20kが設けられている。冷媒流通路20kには、冷媒流通方向の上流側から順に、第4電磁弁26d、第3逆止弁27cが設けられている。
【0023】
圧縮機21及び室外熱交換器22は、車室外のエンジンルーム内に配置されている。圧縮機21は、電動モータによって駆動され、インバータ制御によって回転数の調整が可能である。
【0024】
室外熱交換器22は、内部を流通する冷媒と車室外の空気とを熱交換させるためのフィンとチューブ等からなる熱交換器である。室外熱交換器22は、吸熱器として機能する場合に冷媒流路の一端側から冷媒が流入し、放熱器として機能する場合に冷媒流路の他端側から冷媒が流入する。室外熱交換器22の冷媒流路の一端側には、放熱器として機能する場合に液体の冷媒を貯留可能な気液分離部22aと、気液分離部22aから流出する液体の冷媒を過冷却の状態とするための過冷却部22bと、が設けられている。また、室外熱交換器22には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機22cが設けられている。
【0025】
第1制御弁24は、冷媒流路を膨張手段側または凝縮圧力調整手段側に切換えるとともに、それぞれの冷媒流路の開度を調整するためのステッピングモータを有している。第1制御弁24は、ステッピングモータを駆動することにより、図2に示すように、冷媒流路および各冷媒流路の開度が切換えられる。
【0026】
膨張弁28は、吸熱器14から流出する冷媒の温度に応じて弁開度を調整可能な温度膨張弁である。温度膨張弁としては、例えば、吸熱器から流出する冷媒が流通する流出冷媒流路と、流出冷媒流路を流通する温度を検出する感温棒と、弁体を移動させるためのダイヤフラムと、を一体に形成したボックス型の温度膨張弁が用いられる。
【0027】
さらに、車両用空気調和装置は、図1に示すように、車室内の温度および湿度を設定された温度および設定された湿度とする制御を行うためのコントローラ30を備えている。
【0028】
コントローラ30は、CPU、ROM、RAMを有している。コントローラ30は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0029】
コントローラ30の出力側には、室内送風機12、圧縮機21、第1制御弁24、第1電磁弁26a、第3電磁弁26cおよび第4電磁弁26dが接続されている。また、コントローラ30の入力側には、圧縮機21の吸入圧力を検出するための圧力センサ31が接続されている。
【0030】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0031】
冷房運転及び除湿冷房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の冷媒流路を凝縮圧力調整手段側に設定し、第3電磁弁26cを開放するとともに、第1、第2、第4電磁弁26a,26b,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図3に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20d、室外熱交換器22、冷媒流通路20j,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、冷房運転において、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。除湿冷房運転として図3の一点鎖線に示すようにエアミックスダンパ16が開放されると、冷媒回路20を流通する冷媒は放熱器15においても放熱する。また、室外熱交換器22を流通する冷媒は、気液分離部22aおよび過冷却部22bを流通することで、過冷却の状態となって冷媒流通路20jに流入する。
【0032】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を目標設定温度Tsetとするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0033】
目標吹出温度TAOは、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、日射量Ts等の環境条件を検出し、検出された環境条件と目標設定温度Tsetに基づいて算出されるものである。
【0034】
また、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0035】
暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の冷媒流路を膨張手段側に設定し、第1電磁弁26aを開放するとともに、第2〜第4電磁弁26b,26c,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図4に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0036】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において冷媒と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0037】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の冷媒流路を膨張手段側に設定し、第1および第2電磁弁26a,26bを開放するとともに、第3および第4電磁弁26c,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図5に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20bを順に流通する。冷媒流通路20bを流通する冷媒の一部は、冷媒流通路20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20bを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20e、の順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器22において吸熱する。
【0038】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0039】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路20では、第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖し、第2電磁弁26bを開放するとともに、第1、第3、第4電磁弁26a,26c,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図6に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b,20f、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20g、吸熱器14、冷媒流通路20h、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20i,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0040】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、前記第1除湿暖房運転と同様に、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において冷媒と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0041】
オートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合には、コントローラ30は、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転を、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、車室外の湿度、車室内の湿度Th、日射量Ts等の環境条件に基づいて切換える。
【0042】
また、コントローラ30は、吹出口11c,11d,11eのモードを、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって切換える。コントローラ30は、エアミックスダンパ16の開度を、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度が目標吹出温度TAOとなるように調整する。
【0043】
また、コントローラ30は、各運転において、フットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えを、目標吹出温度TAOに応じて行う。具体的には、コントローラ30は、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にフットモードに設定する。また、コントローラ30は、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にベントモードに設定する。さらに、コントローラ30は、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合にバイレベルモードに設定する。
【0044】
また、暖房運転中において、車室外の空気の温度が低くなると(例えば摂氏0度以下等)、室外熱交換器22に着霜が生じる場合がある。この場合、車両用空気調和装置では、室外熱交換器22に付着した霜を除去するための除霜運転を行う。除霜運転は、圧縮機21から吐出された冷媒を冷媒流通路20kを介して室外熱交換器22に流入させることによって室外熱交換器22に付着した霜を融解させるホットガス除霜運転と、冷媒回路20を冷房運転に切換えることによって室外熱交換器22に付着した霜を融解させる逆サイクル除霜運転と、の2種類の方法の一方によって行う。
【0045】
ホットガス除霜運転は、暖房運転が行われている状態において、図7のタイミングチャートに示すように、室内送風機12、圧縮機21、第1制御弁24および第1電磁弁26a、第4電磁弁26dの運転を切換えることによって行われる。
【0046】
具体的には、まず、圧縮機21の回転数を第1所定回転数(例えば、7000rpm)に固定し、第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖し、室内送風機12を停止し、第4電磁弁26dを開放する。第4電磁弁26dを開放してから、所定時間経過後(例えば、20秒後)に、圧縮機21の回転数を第2所定回転数(例えば、1000rpm)まで低下させ、第1電磁弁26aを閉鎖する。第1電磁弁26aを閉鎖した後、圧力センサ31の検出圧力が所定圧力(例えば、0MPaG)以下となったときに、第1電磁弁26aを開放するとともに、第4電磁弁26dを閉鎖し、圧縮機21の回転数の固定状態、第1制御弁24の冷媒流路の閉鎖状態、を解除する。第1電磁弁26aを開放してから所定時間経過後(例えば、2秒後)に室内送風機12の運転を開始してホットガス除霜運転を終了する。
【0047】
前記ホットガス除霜運転において、圧縮機21から吐出された冷媒は、第4電磁弁26dを開放して第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖すると、図8に示すように、冷媒流路20a,20k,20c、室外熱交換器22を流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、室外熱交換器22において放熱することで液化し、液化した冷媒はアキュムレータ29に貯留される。これにより、冷媒回路20では、冷媒の流量が減少するため、室外熱交換器22における冷媒の圧力が低くなる。
【0048】
室外熱交換器22における冷媒の圧力が低く、アキュムレータ29に液体の冷媒が貯留されている状態において第1電磁弁26aを閉鎖すると、圧縮機21と第1電磁弁26aとの間の冷媒流通路20eが低圧となり、アキュムレータ29に貯留された液体の冷媒が気化して圧縮機21から吐出される。このとき、冷媒回路20では、第1電磁弁26aが閉鎖されているため冷媒が循環することはなく、圧縮機21から吐出された冷媒は、冷媒流通路20cから室外熱交換器22内に送り込まれて、室外熱交換器22内が高温高圧となる。これにより、室外熱交換器22に付着した霜は、室外熱交換器22から放出される熱によって融解される。
【0049】
ここで、第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖するタイミングは、圧縮機21の冷媒吐出側が完全に閉鎖されることを防止するために、第4電磁弁26dの開放と同時または開放後とすることが望ましい。また、第1電磁弁26aを閉鎖するタイミングは、圧縮機21の回転数を第2所定回転数まで低下させるのと同時または低下させた後とすることが望ましい。また、第1電磁弁26aを閉鎖した後の開放する基準となる圧縮機21の吸入圧力は、圧縮機21の故障等の不具合の発生を防止するために、少なくともアキュムレータ29内の冷媒が流出して圧縮機21の吸入側圧力が負圧とならないように0MPaG以上が所定圧力として設定される。圧縮機21の回転数である第1所定回転数は、アキュムレータ29に液化した冷媒を貯留する時間を短縮するために、可能な限り高回転とすることが望ましい。また、圧縮機21の回転数である第2所定回転数は、第1電磁弁26aを閉鎖してから圧縮機21の吸入圧力が負圧となるまでの時間が可能な限り長時間となるように、可能な限り低回転とすることが望ましい。このとき、アキュムレータ29に貯留された冷媒は、長時間にわたって室外熱交換器22に流入するため、冷媒の熱エネルギーが室外熱交換器22に付着した霜に確実に伝えられる。
【0050】
また、逆サイクル除霜運転は、暖房運転が行われている状態において、図9のタイミングチャートに示すように、室内送風機12、圧縮機21、第1制御弁24および第1電磁弁26a、第3電磁弁26cの運転を切換えることによって行われる。
【0051】
具体的には、まず、圧縮機21の運転を停止するとともに、第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖し、室内送風機12を停止する。次に、第1制御弁24の冷媒流路を凝縮圧力調整手段側を所定開度に固定するとともに、第1電磁弁26aを閉鎖して第3電磁弁26cを開放する。また、第1制御弁24、第1電磁弁26aおよび第3電磁弁26cの操作後、所定時間経過後(例えば、5秒後)に、圧縮機21を所定回転数(例えば、4000rpm)に固定して運転する。圧縮機21を所定回転数で運転開始した後、所定時間経過後(例えば、45秒後)に、圧縮機21を停止する。圧縮機21の停止後に、第1制御弁24の冷媒流路の固定状態、第1電磁弁26aの閉鎖状態、第3電磁弁26cの開放状態、を解除して、室内送風機12の運転を開始して逆サイクル除霜運転を終了する。
【0052】
前記逆サイクル除霜運転において、圧縮機21から吐出された冷媒は、図3の冷房運転および除湿冷房運転と同様に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。これにより、室外熱交換器22に付着した冷媒は、室外熱交換器22に流入して室外熱交換器22から放出される熱によって融解される。また、逆サイクル除霜運転においては、ホットガス除霜運転と反対側の冷媒流通路20dから冷媒が室外熱交換器22に流入することから、ホットガス除霜運転によって霜が残りやすい室外熱交換器22の冷媒流通路20d側の霜を積極的に融解させることが可能である。
【0053】
ここで、第1制御弁24の冷媒流路を切換える動作中には、圧縮機21の運転を停止する。また、逆サイクル除霜運転は、室外熱交換器22に付着した霜を全て融解させることが可能な時間を運転時間として設定する。
【0054】
コントローラ30は、室外熱交換器22に着霜が生じる環境条件であるか否かを判定し、着霜が生じる環境条件であると判定した場合にホットガス除霜運転と逆サイクル除霜運転のいずれかによる除霜運転を行う除霜運転制御処理を行う。このときのコントローラ30の動作を図10のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、室外熱交換器22に着霜が生じる環境条件であるか否かを判定する。着霜が生じる環境条件であると判定した場合にはステップS2に処理を移し、着霜が生じる環境条件であると判定しなかった場合には除霜運転制御処理を終了する。
室外熱交換器22に着霜が生じるか否かの判定は、車室外の空気の温度条件を検出することによって判定する。
【0056】
(ステップS2)
ステップS1において室外熱交換器22に着霜が生じる環境条件であると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、前回の除霜運転から所定時間(例えば、5分)経過したか否かを判定する。所定時間経過したと判定した場合にはステップS3に処理を移し、所定時間経過したと判定しなかった場合には除霜運転制御処理を終了する。
【0057】
(ステップS3)
ステップS2において前回の除霜運転から所定時間経過したと判定した場合に、ステップS3においてCPUは、前回の除霜運転までにホットガス除霜運転を4回連続で行ったか否かを判定する。4回連続で行っていると判定した場合にはステップS4に処理を移し、4回連続して行っていると判定しなかった場合にはステップS5に処理を移す。
【0058】
(ステップS4)
ステップS3においてホットガス除霜運転を4回連続で行ったと判定した場合に、ステップS4においてCPUは、逆サイクル除霜運転を実行して除霜運転制御処理を終了する。
逆サイクル除霜運転では、ホットガス除霜運転が圧縮機21の冷媒吸入側の圧力が負圧となる前に終了するように設定されているのに対して、室外熱交換器22に付着した霜を完全に融解させることが可能である。
【0059】
(ステップS5)
ステップS3においてホットガス除霜運転を4回連続で行ったと判定しなかった場合に、ステップS5においてCPUは、ホットガス除霜運転を実行して除霜運転制御処理を終了する。
ホットガス除霜運転では、逆サイクル除霜運転の運転時間が第1制御弁24の流路の切換えを含めて長時間必要となるのに対して、室外熱交換器22に付着した霜を短時間で効率的に融解させることが可能である。
【0060】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、暖房運転中に、室外熱交換器22の着霜が生じる環境条件であると判定した場合に、第4電磁弁26dを開放し、第4電磁弁26dの開放後に第1電磁弁26aを閉鎖するホットガス除霜運転を行い、ホットガス除霜運転による第1電磁弁26aの閉鎖の際に、圧縮機21の回転数を、第1電磁弁26aの閉鎖前の圧縮機21の回転数よりも低下させている。これにより、室外熱交換器22内を高温高圧の状態として室外熱交換器22における放熱量を増加させることができるので、室外熱交換器22に付着した霜を確実に除去することが可能となる。また、アキュムレータ29に貯留された冷媒は、長時間にわたって室外熱交換器22に流入するため、冷媒の熱エネルギーが室外熱交換器22に付着した霜に確実に伝えられるので、室外熱交換器22に付着した霜をより確実に除去することが可能となる。
【0061】
また、ホットガス除霜運転において第4電磁弁26dの開放以降に、第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖している。これにより、圧縮機21の冷媒吐出側が完全に閉鎖されることを防止することができ、圧縮機21の故障等の不具合の発生を防止することが可能となる。
【0062】
また、ホットガス除霜運転において第4電磁弁26dを開放してから第1電磁弁26aを閉鎖するまでの間、圧縮機21の回転数を所定回転数以上に設定している。これにより、第4電磁弁26dを開放した時にアキュムレータ29に効率的に液体の冷媒を貯留可能となり、第1電磁弁26aを閉鎖した時にアキュムレータ29に貯留された冷媒を確実に室外熱交換器22に流入させることが可能となる。
【0063】
また、ホットガス除霜運転において第4電磁弁26dおよび第1電磁弁26aの開閉の切換えの際に、室内送風機12の運転を停止している。これにより、ホットガス除霜運転中の放熱器15における冷媒の放熱を規制することができるので、高温の冷媒を室外熱交換器22に流入させることが可能となる。
【0064】
また、暖房運転中に、室外熱交換器22に着霜が生じる環境条件であると判定するとともに、前回までの過去の除霜運転が4回連続してホットガス除霜運転の場合に、逆サイクル除霜運転を行うようにしている。これにより、ホットガス除霜運転によって室外熱交換器22に付着した霜が完全に融解せずに残った場合でも、逆サイクル除霜運転によって室外熱交換器22に付着した霜を完全に融解させることが可能となる。
【0065】
図11および図12は本発明の第2実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0066】
この車両用空気調和装置は、ホットガス除霜運転が、暖房運転が行われている状態において、図11のタイミングチャートに示すように、室内送風機12、圧縮機21、第1制御弁24および第1電磁弁26a、第4電磁弁26dの運転を切換えることによって行われる。
【0067】
具体的には、まず、圧縮機21の回転数を第1所定回転数(例えば、7000rpm)に固定し、第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖し、室内送風機12を停止し、第4電磁弁26dを開放した後、第1制御弁24の冷媒流路を凝縮圧力調整手段側の所定開度に固定する。第4電磁弁26dを開放してから、所定時間経過後(例えば、20秒後)に、圧縮機21の回転数を第2所定回転数(例えば、1000rpm)まで低下させ、第1電磁弁26aを閉鎖する。第1電磁弁26aを閉鎖した後、圧力センサ31の検出圧力が所定圧力(例えば、0MPaG)以下となったときに、第1電磁弁26aを開放するとともに、第4電磁弁26dを閉鎖し、圧縮機21の回転数の固定状態、第1制御弁24の冷媒流路の固定状態、を解除する。第1電磁弁26aを開放してから所定時間経過後(例えば、2秒後)に室内送風機12の運転を開始してホットガス除霜運転を終了する。
【0068】
前記ホットガス除霜運転において、圧縮機21から吐出された冷媒は、第4電磁弁26dを開放した後に第1制御弁24の冷媒流路を凝縮圧力調整手段側の所定開度に固定すると、前記実施形態の図8と同様に、冷媒流路20a,20k,20c、室外熱交換器22を流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、室外熱交換器22において放熱することで液化し、液化した冷媒はアキュムレータ29に貯留される。これにより、冷媒回路20では、冷媒の流量が減少するため、室外熱交換器22における冷媒の圧力が低くなる。
【0069】
室外熱交換器22における冷媒の圧力が低く、アキュムレータ29に液体の冷媒が貯留されている状態において第1電磁弁26aを閉鎖すると、圧縮機21と第1電磁弁26aとの間の冷媒流通路20eが低圧となり、アキュムレータ29に貯留された液体の冷媒が気化して圧縮機21から吐出される。このとき、冷媒回路20では、第1電磁弁26aが閉鎖されているため冷媒が循環することはなく、圧縮機21から吐出された冷媒は、図12に示すように、一部が冷媒流通路20kを流通して冷媒流通路20cから室外熱交換器22内に送り込まれ、その他の冷媒が冷媒流通路20a,放熱器15、冷媒流通路20bを流通して冷媒流通路20dから室外熱交換器22に送り込まれて、室外熱交換器22内が高温高圧となる。これにより、室外熱交換器22に付着した霜は、室外熱交換器22から放出される熱によって融解される。また、本実施形態のホットガス除霜運転では、冷媒流通路20c側および冷媒流通路20d側の両側から冷媒が室外熱交換器22に流入することから、室外熱交換器22に付着した霜を均一に融解させることが可能である。
【0070】
ここで、第1制御弁24の冷媒流路を閉鎖してから、第1制御弁24の冷媒流路を凝縮圧力調整手段側の所定開度に固定するタイミングは、第1制御弁24の冷媒流路の切換えに用いられるステッピングモータの駆動能力に依存するものであり、第1制御弁24の冷媒流通方向上流側と下流側との差圧が所定圧力(例えば、2MPaG)以下となったときに冷媒流路が凝縮圧力調整手段側に設定される。
【0071】
また、本実施形態でも、前記実施形態と同様に、逆サイクル除霜運転が可能であり、コントローラ30は、除霜運転制御処理を行う。
【0072】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、前記実施形態と同様に、室外熱交換器22内を高温高圧の状態として室外熱交換器22における放熱量を増加させることができるので、室外熱交換器22に付着した霜を確実に除去することが可能となる。また、アキュムレータ29に貯留された冷媒は、長時間にわたって室外熱交換器22に流入するため、冷媒の熱エネルギーが室外熱交換器22に付着した霜に確実に伝えられるので、室外熱交換器22に付着した霜をより確実に除去することが可能となる。
【0073】
また、ホットガス除霜運転において、第1電磁弁26aを閉鎖するとともに、第1制御弁24の冷媒流路を凝縮圧力調整手段側に設定することによって、室外熱交換器22の冷媒流通路20cおよび冷媒流通路20dの両側から高温高圧の冷媒を流入させることができるので、室外熱交換器22に付着した霜を均一に除去することが可能となる。
【0074】
図13乃至図15は、本発明の第3実施形態を示すものである。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0075】
この車両用空気調和装置の冷媒回路20は、図13に示すように、第1実施形態における第1制御弁24の代わりに、冷媒流入口および冷媒流出口がそれぞれ1つずつ設けられ、減圧領域と凝縮圧力調整領域のそれぞれの範囲で弁開度を調整可能な第3制御弁32を備えている。
【0076】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に放熱器15の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、放熱器15の冷媒流出側には、第3制御弁34の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。第3制御弁34の冷媒流出側には、室外熱交換器22の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20cが設けられている。また、室外熱交換器22の冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側が接続されることによって、冷媒流通路20dが設けられている。冷媒流通路20dには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1電磁弁26a、アキュムレータ29が設けられている。冷媒流通路20bには、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20eが設けられている。冷媒流通路20eには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第1逆止弁27aが設けられている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20fが設けられている。冷媒流通路20fには、膨張弁28が設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、第2制御弁25が設けられている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20dの第1電磁弁26aとアキュムレータ29との間が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。室外熱交換器22の冷媒流出側には、冷媒流通路20dと並列に、気液分離部22aの冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。冷媒流通路20iには、第3電磁弁26cが設けられている。気液分離部22aの冷媒流出側には、過冷却部22bを介して冷媒流通路20eの第1逆止弁27aの冷媒流通方向下流側が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20jには、第2逆止弁27bが設けられている。また、冷媒流通路20aは、冷媒流通路20cと接続されることによってホットガスバイパス回路としての冷媒流通路20kが設けられている。冷媒流通路20kには、第4電磁弁26dが設けられている。
【0077】
以上のように構成された車両用空気調和装置の暖房運転において、冷媒回路20では、第3制御弁32の冷媒流路を膨張手段側に設定し、第1電磁弁26aを開放するとともに、第2〜第4電磁弁26b,26c,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図13に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、20c、室外熱交換器22、冷媒流通路20dの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0078】
除霜運転は、圧縮機21から吐出された冷媒を冷媒流通路20kを介して室外熱交換器22に流入させることによって室外熱交換器22に付着した霜を融解させるホットガス除霜運転と、冷媒回路20を冷房運転に切換えることによって室外熱交換器22に付着した霜を融解させる逆サイクル除霜運転と、の2種類の方法の一方によって行う。
【0079】
ホットガス除霜運転は、暖房運転が行われている状態において、前記第1実施形態と同様に、室内送風機12、圧縮機21、第3制御弁32および第1電磁弁26a、第4電磁弁26dの運転を切換えることによって行われる。
【0080】
具体的には、まず、圧縮機21の回転数を第1所定回転数(例えば、7000rpm)に固定し、第3制御弁32の冷媒流路を閉鎖し、室内送風機12を停止し、第4電磁弁26dを開放する。第4電磁弁26dを開放してから、所定時間経過後(例えば、20秒後)に、圧縮機21の回転数を第2所定回転数(例えば、1000rpm)まで低下させ、第1電磁弁26aを閉鎖する。第1電磁弁26aを閉鎖した後、圧力センサ31の検出圧力が所定圧力(例えば、0MPaG)以下となったときに、第1電磁弁26aを開放するとともに、第4電磁弁26dを閉鎖し、圧縮機21の回転数の固定状態、第3制御弁32の冷媒流路の閉鎖状態、を解除する。第1電磁弁26aを開放してから所定時間経過後(例えば、2秒後)に室内送風機12の運転を開始してホットガス除霜運転を終了する。
【0081】
前記ホットガス除霜運転において、圧縮機21から吐出された冷媒は、第4電磁弁26dを開放して第3制御弁32の冷媒流路を閉鎖すると、図14に示すように、冷媒流路20a,20k,20c、室外熱交換器22を流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、室外熱交換器22において放熱することで液化し、液化した冷媒はアキュムレータ29に貯留される。これにより、冷媒回路20では、冷媒の流量が減少するため、室外熱交換器22における冷媒の圧力が低くなる。
【0082】
室外熱交換器22における冷媒の圧力が低く、アキュムレータ29に液体の冷媒が貯留されている状態において第1電磁弁26aを閉鎖すると、圧縮機21と第1電磁弁26aとの間の冷媒流通路20eが低圧となり、アキュムレータ29に貯留された液体の冷媒が気化して圧縮機21から吐出される。このとき、冷媒回路20では、第1電磁弁26aが閉鎖されているため冷媒が循環することはなく、圧縮機21から吐出された冷媒は、冷媒流通路20cから室外熱交換器22内に送り込まれて、室外熱交換器22内が高温高圧となる。これにより、室外熱交換器22に付着した霜は、室外熱交換器22から放出される熱によって融解される。
【0083】
ここで、第3制御弁32の冷媒流路を閉鎖するタイミングは、圧縮機21の冷媒吐出側が完全に閉鎖されることを防止するために、第4電磁弁26dの開放と同時または開放後とすることが望ましい。また、第1電磁弁26aを閉鎖するタイミングは、圧縮機21の回転数を第2所定回転数まで低下させるのと同時または低下させた後とすることが望ましい。また、第1電磁弁26aを閉鎖した後の開放する基準となる圧縮機21の吸入圧力は、圧縮機21の故障等の不具合の発生を防止するために、少なくともアキュムレータ29内の冷媒が流出して圧縮機21の吸入側圧力が負圧とならないように0MPaG以上が所定圧力として設定される。圧縮機21の回転数である第1所定回転数は、アキュムレータ29に液化した冷媒を貯留する時間を短縮するために、可能な限り高回転とすることが望ましい。また、圧縮機21の回転数である第2所定回転数は、第1電磁弁26aを閉鎖してから圧縮機21の吸入圧力が負圧となるまでの時間が可能な限り長時間となるように、可能な限り低回転とすることが望ましい。このとき、アキュムレータ29に貯留された冷媒は、長時間にわたって室外熱交換器22に流入するため、冷媒の熱エネルギーが室外熱交換器22に付着した霜に確実に伝えられる。
【0084】
また、逆サイクル除霜運転は、暖房運転が行われている状態において、第1実施形態と同様に、室内送風機12、圧縮機21、第3制御弁32および第1電磁弁26a、第3電磁弁26cの運転を切換えることによって行われる。
【0085】
具体的には、まず、圧縮機21の運転を停止するとともに、第3制御弁32の冷媒流路を閉鎖し、室内送風機12を停止する。次に、第3制御弁32の冷媒流路を凝縮圧力調整手段側の所定開度に固定するとともに、第1電磁弁26aを閉鎖して第3電磁弁26cを開放する。また、第3制御弁32、第1電磁弁26aおよび第3電磁弁26cの操作後、所定時間経過後(例えば、5秒後)に、圧縮機21を所定回転数(例えば、4000rpm)に固定して運転する。圧縮機21を所定回転数で運転開始した後、所定時間経過後(例えば、45秒後)に、圧縮機21を停止する。圧縮機21の停止後に、第3制御弁32の冷媒流路の固定状態、第1電磁弁26aの閉鎖状態、第3電磁弁26cの開放状態、を解除して、室内送風機12の運転を開始して逆サイクル除霜運転を終了する。
【0086】
前記逆サイクル除霜運転において、圧縮機21から吐出された冷媒は、図15に示すように、冷房運転および除湿冷房運転と同様に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、室外熱交換器22において放熱して吸熱器14において吸熱する。これにより、室外熱交換器22に付着した冷媒は、室外熱交換器22に流入して室外熱交換器22から放出される熱によって融解される。
【0087】
ここで、第3制御弁32の冷媒流路を切換える動作中には、圧縮機21の運転を停止する。また、逆サイクル除霜運転は、室外熱交換器22に付着した霜を全て融解させることが可能な時間を運転時間として設定する。
【0088】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、前記実施形態と同様に、室外熱交換器22内を高温高圧の状態として室外熱交換器22における放熱量を増加させることができるので、室外熱交換器22に付着した霜を確実に除去することが可能となる。また、アキュムレータ29に貯留された冷媒は、長時間にわたって室外熱交換器22に流入するため、冷媒の熱エネルギーが室外熱交換器22に付着した霜に確実に伝えられるので、室外熱交換器22に付着した霜をより確実に除去することが可能となる。
【0089】
尚、前記実施形態では、室外熱交換器22に着霜が生じる環境条件として、車室外の空気の温度が所定温度以下となる場合を一例として示したがこれに限られるものではない。その他の例として、車室外の温度が所定温度以下で車室外の湿度が所定湿度以上の場合を検出して着霜が生じると判定するようにしてもよい。また、車室外の温度が所定温度以下で室外熱交換器22における冷媒の蒸発温度が所定温度以下の場合を検出して着霜が生じると判定するようにしてもよい。
【0090】
また、前記実施形態では、ホットガス除霜運転の際に、圧縮機21の回転数を所定回転数に固定するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、圧縮機21の運転を停止させなければ、圧縮機21の回転数が変化したとしてもホットガス除霜運転が可能である。
【0091】
また、前記実施形態では、暖房運転および第1除湿暖房運転時に室外熱交換器22に流入する冷媒を減圧するための膨張手段と除湿冷房運転時に放熱器15における冷媒の凝縮圧力を制御するための凝縮圧力調整手段とを有する第1制御弁24を示したが、これに限られるものではない。例えば、冷媒回路20に、第1制御弁24の代わりに膨張手段と凝縮圧力調整手段とを別々に構成するようにしてもよい。
【0092】
また、前記実施形態では、ホットガス除霜運転の際に、第1制御弁24の膨張手段側の流路を閉鎖するようにしたものを示したが、膨張手段側を閉鎖しない場合にもホットガス除霜運転が可能である。第1制御弁24の膨張手段側は、冷媒流通路20kと比較して流路断面積が小さく冷媒が流通し難いため、ホットガス除霜運転時に第1制御弁24の膨張手段側が閉鎖されない場合でも、冷媒回路20を流通する冷媒の大部分は冷媒流通路30kを流通する。
【0093】
また、前記実施形態では、ホットガス除霜運転の際に、室内送風機12を停止するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。ホットガス除霜運転の際に室内送風機12を運転した場合には、圧縮機21から吐出された冷媒が放熱器15において放熱するため、車室内に温風を供給することが可能となる。
【0094】
また、前記実施形態では、ホットガス除霜運転の際に、第1電磁弁26aを閉鎖する時間として、アキュムレータ29内の冷媒が流出して圧縮機21の冷媒吸入側の圧力が負圧とならない時間を設定するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。圧縮機21の冷媒吸入側の圧力が負圧となることを許容可能であれば、例えば、ホットガス除霜運転における第1電磁弁26aの閉鎖中に、圧縮機21の吸入側の圧力を検出し、検出圧力が所定圧力以下となった場合に第1電磁弁26aを開放するようにしてもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、過去の除霜運転が4回連続してホットガス除霜運転の場合に、逆サイクル除霜運転を行うようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、過去の除霜運転が3回以下や5回以上連続してホットガス除霜運転の場合に、逆サイクル除霜運転を行うようにしてもよい。また、ホットガス除霜運転と異なる環境条件で逆サイクル除霜運転を行うようにしてもよい。
【0096】
また、前記実施形態では、ホットガス除霜運転において、第1電磁弁26aおよび第4電磁弁26dの開閉の切換えの際に、室内送風機12を停止するようにしたものを示したがこれに限られるものではない。室内送風機12を停止させることなく、室内送風機12の送風量を、暖房運転時の送風量よりも低下させるようにしてもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、ホットガス除霜運転および逆サイクル除霜運転において、タイミングチャートに示すように、圧縮機21の回転数を急激に変化させるようにしたものを示したがこれに限られるものではなく、圧縮機21の回転数を漸次変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10…空調ユニット、14…吸熱器、15…放熱器、20…冷媒回路、21…圧縮機、22…室外熱交換器、24…第1制御弁、26a,26b,26c,26d…第1〜第4電磁弁、29…アキュムレータ、32…第3制御弁。
図1
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