(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷媒の凝縮時には、冷媒の状態変化に伴い気液混合冷媒における液冷媒と冷媒ガスとの密度変化率が著しく変化する。この状態において、液冷媒は冷媒ガスに比して重力の影響を受け易いため、チューブ内を流れる液冷媒中に気泡が発生し、冷媒流れに偏流が発生することがある。特に、冷媒が縦流れ方向となる場合には、液冷媒に対する重力の影響を受け易く、チューブ内で冷媒の偏流が発生し易くなる。従って、上記従来技術の場合のように、気液混合冷媒が流れるサブクールコア部を冷媒縦流れとしたときには、当該コア部における熱交換が円滑に行われず、熱交換器の熱交換効率が低下するおそれがある。
【0005】
また、上記従来技術の熱交換器はあくまでも凝縮器であり、凝縮器及び蒸発器の双方の機能を有する熱交換器を想定しておらず、また、車両空調ヒートポンプシステムのHVACユニット外に設ける室外熱交換器を想定していない。
本発明は上述の事情に基づいてなされ、その目的とするところは、熱交換効率を大幅に高め、且つ、凝縮器及び蒸発器の双方の機能を有し、更には車両空調ヒートポンプシステムのHVACユニット外に設けた室外熱交換器に好適な熱交換
器を用いたヒートポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の
ヒートポンプシステムは、
熱交換器を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用するヒートポンプシステムであって、熱交換器は、空気と冷媒との熱交換を行うメインコア部と、メインコア部を通過した冷媒が流入されるレシーバタンクと、レシーバタンクを通過した気液混合冷媒を空気との熱交換により過冷却して液化するサブクールコア部とを備え、サブクールコア部は、互いに平行を成した状態で左右方向に沿ってそれぞれ配置された左右のヘッダタンク間において左右方向に沿って配置されて該左右のヘッダタンクの双方と連通する複数のチューブと、隣接するチューブ間に配置されたフィンとからな
り、熱交換器を蒸発器として使用するとき、メインコア部を通過した冷媒をレシーバタンク及びサブクールコア部をバイパスして流通させるバイパス手段を備え、メインコア部は、互いに平行を成した状態で上下方向に沿ってそれぞれ配置された上下のヘッダタンク間において上下方向に沿って配置されて該上下のヘッダタンクの双方と連通する複数のチューブと、隣接するチューブ間に配置されたフィンと、上下のヘッダタンクの内部を仕切る複数の仕切り板とからなり、メインコア部に流入した冷媒は、仕切り板を境界としてダウンフロー又はアップフローの縦流れが繰り返し許容され、メインコア部における冷媒の流れ方向を変更することで熱交換器を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用し、上下のヘッダタンクの内部における各仕切り板の間隔は、冷房時のメインコア部における冷媒の流れ方向で見て、徐々に狭まっている(請求項1)。
【0008】
好ましくは
、バイパス手段は、
熱交換器が介挿され、冷媒が循環する冷媒回路と、冷媒回路を構成する暖房運転時流路と、メインコア部のヘッダタンクと暖房運転時流路とに連通する暖房時入口ポートと、暖房時入口ポートとレシーバタンクとに連通する連通部と、暖房運転時流路の
暖房時入口ポート側に設けられ、熱交換器を凝縮器として使用するときに
暖房運転時流路側への冷媒流れを阻止する弁とを有
し、連通部は、熱交換器を凝縮器として使用するときにメインコア部とレシーバタンクとを連通させる一方、熱交換器を蒸発器として使用するときにレシーバタンク及びサブクールコア部をバイパスする(請求項
2)。
【0009】
一方、本発明のヒートポンプシステムは、
熱交換器を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用するヒートポンプシステムであって、熱交換器は、空気と冷媒との熱交換を行うメインコア部と、メインコア部を通過した冷媒が流入されるレシーバタンクと、レシーバタンクを通過した気液混合冷媒を空気との熱交換により過冷却して液化するサブクールコア部とを備え、サブクールコア部は、互いに平行を成した状態で左右方向に沿ってそれぞれ配置された左右のヘッダタンク間において左右方向に沿って配置されて該左右のヘッダタンクの双方と連通する複数のチューブと、隣接するチューブ間に配置されたフィンとからなり、熱交換器を蒸発器として使用するとき、メインコア部を通過した冷媒をレシーバタンク及びサブクールコア部をバイパスして流通させるバイパス手段を備え、メインコア部は、互いに平行を成した状態で上下方向に沿ってそれぞれ配置された上下のヘッダタンク間において上下方向に沿って配置されて該上下のヘッダタンクの双方と連通する複数のチューブと、隣接するチューブ間に配置されたフィンと、上下のヘッダタンクの内部を仕切る複数の仕切り板とからなり、メインコア部に流入した冷媒は、仕切り板を境界としてダウンフロー又はアップフローの縦流れが繰り返し許容され、メインコア部における冷媒の流れ方向を変更しないで熱交換器を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用
し、上下のヘッダタンクの内部における各仕切り板の間隔は等間隔である(請求項
3)。
好ましくは
、バイパス手段は、
熱交換器が介挿され、冷媒が循環する冷媒回路と、冷媒回路を構成する暖房運転時流路と、メインコア部のヘッダタンクと暖房運転時流路とに連通する暖房時出口ポートと、暖房時出口ポートとレシーバタンクとに連通する連通部と、暖房運転時流路の
暖房時出口ポート側に設けられ、熱交換器を凝縮器として使用するときに
暖房運転時流路側への冷媒流れを阻止する弁とを有
し、連通部は、熱交換器を凝縮器として使用するときにメインコア部とレシーバタンクとを連通させる一方、熱交換器を蒸発器として使用するときにレシーバタンク及びサブクールコア部をバイパスする(請求項
4)。
【0010】
好ましくは、熱交換器を車両空調用のHVACユニット外に設けられた室外熱交換器として用いる(請求項
5)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の
ヒートポンプシステムによれば、サブクールコア部を流通する気液混合冷媒を横流れ方向の冷媒流れとすることができる。冷媒の凝縮時には、冷媒の状態変化に伴い気液混合冷媒における液冷媒と冷媒ガスとの密度変化率が著しく変化する。この状態において、液冷媒は冷媒ガスに比して重力の影響を受け易いため、縦配置のチューブ内を流れる液冷媒中に気泡が発生し、冷媒流れに偏流が発生することがある。しかし、サブクールコア部を流れる冷媒を横流れ方向とすることにより、縦流れ方向の場合に比して、液冷媒に対する重力の影響を受け難いため、チューブ内における冷媒の偏流を効果的に抑制することができる。従って、サブクールコア部における空気と冷媒との熱交換を長時間に亘って継続させることができ、熱交換器の熱交換効率の低下を抑制することができる
。
【0012】
また、本発明によれば、メインコア部を流通する冷媒を縦流れ方向の冷媒流れとすることができる。冷媒の蒸発時には、チューブの各表面に凝縮水が生じ、チューブの表面上に保水され、着霜現象が発生することが多く、この霜の層が成長することによって熱交換効率が低下するおそれがある。しかし、メインコア部を流れる冷媒を縦流れ方向とすることにより、上記着霜現象の発生を抑制することができるため、メインコア部における空気と冷媒との熱交換を長時間に亘って継続させることができ、熱交換器の熱交換効率の低下を更に効果的に抑制することができる
。
【0013】
また、本発
明によれば、熱交換器を蒸発器として使用するときは、レシーバタンクによる冷媒の気液分離、サブクールコア部における冷媒の過冷却は不要であるため、冷媒がサブクール
コア部を通過することによる冷媒の無用な圧力損失の増大、ひいては冷媒の無用な流動損失を防止することができ、熱交換器の熱交換効率の低下を更に効果的に抑制することができる(請求項
1)。
【0014】
また、本発明によれば、熱交換器を蒸発器として使用するときは、冷媒流路によってメインコア部を通過した冷媒をレシーバタンク及びサブクールコア部をバイパスして流通させ、一方、熱交換器を凝縮器として使用するときは、弁によって連通部から冷媒流路側への冷媒流れを阻止することができるため、ヒートポンプシステムにおける熱交換器の蒸発器と凝縮器との切り換えを簡単な構成で確実に行うことができる(請求項
2)。
【0015】
また、本発明
の別のヒートポンプシステムによれば、メインコア部における冷媒の流れ方向を変更しないで熱交換器を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用することにより、暖房時入口ポートを冷房時入口ポートとをメインコア部の同側において共用することができる。これにより、メインコア部における冷媒の流れ方向を変更することで熱交換器を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用する場合に比して、冷媒回路の回路構成を簡素化することができるため、ヒートポンプシステムにおける室外熱交換器の蒸発器と凝縮器との切り換えをより一層簡単な構成で行うことができる(請求項
3,4)。
【0016】
また、本発明によれば、具体的には、熱交換器を車両空調用のHVACユニット外に設けられた室外熱交換器として用いるのに好適である(請求項
5)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る熱交換器及びそれを用いたヒートポンプシステムについて図面を参照して説明する。
図1は第1実施例の室外熱交換器1の正面図、室外熱交換器1が組み込まれる車両空調ヒートポンプシステム2の概略構成、及びヒートポンプシステム2が接続されるHVACユニット4の概略構成を示している。
【0019】
室外熱交換器1は、空気と冷媒との熱交換を行うメインコア部6と、メインコア部6を通過した冷媒が流入されるレシーバタンク8と、レシーバタンク8を通過した気液混合冷媒を空気との熱交換により過冷却して液化するサブクールコア部10とを備えている。
メインコア部6は、互いに平行を成した状態で上下方向に沿ってそれぞれ配置された上下のヘッダタンク12,12間において上下方向に沿って配置されて該上下のヘッダタンク12,12の双方と連通する複数のチューブ14と、隣接するチューブ14間に配置されたフィン16とから構成されている。メインコア部6の左右端部に位置するフィン16はカバー部材18に接合されることで、メインコア部6の剛性が確保され、また、左側のカバー部材18が連結部材19でレシーバタンク8に連結されている。
【0020】
一方、本実施形態のサブクールコア部10は、互いに平行を成した状態で左右方向に沿ってそれぞれ配置された左右のヘッダタンク20,20間において左右方向に沿って配置されて該左右のヘッダタンク20,20の双方と連通する複数のチューブ22と、隣接するチューブ22間に配置されたフィン24とから構成されている。サブクールコア部10の上端部に位置するフィン24がカバー部材26に接合されることで、サブクールコア部10の剛性が確保され、また、カバー部材26が下側のヘッダタンク12に接合されることで、サブクールコア部10がメインコア部6に連結されている。
【0021】
HVACユニット4は、車両の車室内前方側に搭載され、車両のエンジンルームと車室内とを区画するダッシュパネルDBの車室内側に固定されている。HVACユニット2には、空気流の方向から順に送風ファン28、室内蒸発器30、室内凝縮器32が内設されている。室内凝縮器32における空気流の一次側には、室内凝縮器32の空気入口を開閉するダンパ34が設けられ、
図1中に破線で示すようにしてダンパ34を閉じることで室内凝縮器32をバイパスして空気を流すことができる。このようにして送風ファン28で取り込まれた空気を室内蒸発器30又は室内凝縮器32に選択的に通風させることで車室内の空気が所望の設定温度に制御される。
【0022】
ヒートポンプシステム2は、メインコア部6における冷媒の流れ方向を変更することで、室外熱交換器1を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用可能な構成となっており、室外熱交換器1は、ヒートポンプシステム2の暖房運転時には蒸発器として使用され、冷房運転時には凝縮器として使用される。
ヒートポンプシステム2は、冷媒が循環する冷媒回路36を備え、冷媒回路36のうちの暖房運転時流路(冷媒流路、バイパス手段)36aには、
図1中に実線で示す冷媒流れ方向の順に、室外熱交換器1、第1開閉弁38、アキュームレータ40、圧縮機42、室内凝縮器32、第1膨張弁44、逆止弁(弁、バイパス手段)46が介挿されている。
【0023】
一方、冷媒回路36のうちの冷房運転時流路36bには、
図1中に破線で示す冷媒流れ方向の順に、室外熱交換器1、第2開閉弁48、第2膨張弁50、室内蒸発器30、アキュームレータ40、圧縮機42、室内凝縮器32、第3開閉弁52が介挿されている。
冷房運転時流路36bは、アキュームレータ40から、圧縮機42、室内凝縮器32を経て、第3開閉弁52と第1膨張弁44との分岐路36cまでは暖房運転時流路36aと共用の共用路36dを有して形成されている。
【0024】
ダンパ34、及び第1〜第3開閉弁38,48,52の駆動部は、車両を総合的に制御する図示しないECU(電気制御ユニット)に電気的に接続されている。ECUは、冷房運転時流路36bを使用する冷房時には、送風ファン28から送風される空気をダンパ34を閉じることで室内凝縮器32をバイパスして流し、また、第1〜第3開閉弁38,48,52を適宜開閉制御することにより、室外熱交換器1における冷房時の冷媒流れ方向(
図1中に破線矢印で示す)が暖房運転時流路36aを使用する暖房時の冷媒流れ方向(
図1中に実線矢印で示す)の逆になるように制御される。
【0025】
ここで、本実施形態のヒートポンプシステム2は、室外熱交換器1を蒸発器として使用する暖房運転時には、メインコア部6を通過した冷媒をレシーバタンク8及びサブクールコア部10をバイパスして流通させる構成を採用している(バイパス手段)。
詳しくは、暖房運転時流路36aの室外熱交換器1に対する暖房時入口ポート54が下側のヘッダタンク12の左側端部に設けられ、当該下側のヘッダタンク12の右側端部には暖房運転時流路36aの室外熱交換器1に対する暖房時出口ポート56が設けられている。
【0026】
暖房時に暖房時入口ポート54からメインコア部6に流入した冷媒は、各ヘッダタンク12を内部で仕切る複数の仕切り板58を境界としてダウンフロー又はアップフローの縦流れを繰り返し、メインコア部6に対する通風によって空気Aと熱交換を行いながら、
図1の実線矢印で示すように全体として左側から右側に流通し、暖房時出口ポート56から暖房運転時流路36aに送出される。すなわち、暖房運転時における冷媒は室外熱交換器1においてはメインコア部6のみを流通する。
【0027】
一方、冷房運転時流路36bの室外熱交換器1に対する冷房時入口ポート60は暖房時出口ポート56と共用され、暖房時入口ポート54に一端が連通する入口連通管(連通部)62がレシーバタンク8の下側側部に接続され、他端がレシーバタンク8内に連通されている。
このように、入口連通管62は、室外熱交換器1を凝縮器として使用するときにはメインコア部6とレシーバタンク8とを連通させる。一方、室外熱交換器1を蒸発器として使用するときには、入口連通管62は、メインコア部6を通過した冷媒をレシーバタンク8及びサブクールコア部10をバイパスするための暖房運転時流路36aが接続された暖房時入口ポート54と連通されており、相反する連通路の機能を併せ持っている。
【0028】
しかし、暖房運転時流路36aのメインコア部6入口側に、入口連通管62から暖房運転時流路36a側への冷媒流れを阻止する逆止弁46を介挿したことにより、冷房時における暖房運転時流路36aへの冷媒流入を防止しながら入口連通管62への冷媒流入を可能としている。
一方、冷房運転時流路36bに第2開閉弁48を介挿したことにより、暖房時には第2開閉弁48を閉じることで、レシーバタンク8、サブクールコア部10、ひいては冷房運転時流路36bの第2開閉弁48までは冷媒が流入するものの、冷房運転時流路36bの第2開閉弁48の2次側への冷媒流入が阻止される。これより、レシーバタンク8及びサブクールコア部10では冷媒の流れが停滞し、レシーバタンク8及びサブクールコア部10に冷媒が滞留する状態となる。このように、逆止弁46の存在、及び第2開閉弁48の閉止によって、暖房時にレシーバタンク8及びサブクールコア部10を実質的にバイパス可能となり、メインコア部6における冷媒流れを暖房時において冷房時の逆流れにすることが可能となる。
【0029】
また、入口連通管62の下側におけるレシーバタンク8の側部には出口連通管64の一端が接続され、レシーバタンク8内に連通されると共に、出口連通管64の他端がサブクールコア部10の左側のヘッダタンク20内に連通されている。また、サブクールコア部10の右側のヘッダタンク20の下側側部には冷房運転時流路36bの室外熱交換器1に対する冷房時出口ポート66が設けられている。
【0030】
冷房時に冷房時入口ポート60からメインコア部6に流入した冷媒は、上述したようにダウンフロー又はアップフローを繰り返し、メインコア部6に対する通風によって空気Aと熱交換を行いながら、
図1の破線矢印で示すように全体として右側から左側に流通し、入口連通管62を介してレシーバタンク8に流入し気液混合冷媒にされた後、出口連通管64を介してサブクールコア部10に優先的に液冷媒が流入される。
【0031】
サブクールコア部10に流入した冷媒は、サブクールコア部10に対する通風によって空気Aと熱交換を行いながら、
図1の破線矢印で示すように全体として左側から右側に横流れで流通することで過冷却により完全に液化された後、冷房時出口ポート66から冷房運転時流路36bに送出される。すなわち、冷房運転時における冷媒は室外熱交換器1においてはメインコア部6及びサブクールコア部10の両方を流通する。
【0032】
以上のように本実施形態では、サブクールコア部10を流れる冷媒を横流れ方向とすることにより、縦流れ方向の場合に比して、液冷媒に対する重力の影響を受け難いため、チューブ10内における冷媒の偏流を効果的に抑制することができる。従って、サブクールコア部10における空気Aと冷媒との熱交換を長時間に亘って継続させることができ、室外熱交換器1の熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0033】
また、メインコア部6を流れる冷媒を縦流れ方向とすることにより、チューブ14表面における着霜現象の発生を抑制することができるため、メインコア部6における空気Aと冷媒との熱交換を長時間に亘って継続させることができ、室外熱交換器1の熱交換効率の低下を更に効果的に抑制することができる。
また、室外熱交換器1を蒸発器として使用するときは、レシーバタンク8による冷媒の気液分離、サブクールコア部10における冷媒の過冷却は不要であるため、冷媒がサブクール部10を通過することによる冷媒の無用な圧力損失の増大、ひいては冷媒の無用な流動損失を防止することができ、室外熱交換器1の熱交換効率の低下を更に効果的に抑制することができる。
【0034】
また、室外熱交換器を蒸発器として使用するときは、暖房運転時流路36aによってメインコア部6を通過した冷媒をレシーバタンク8及びサブクールコア部10をバイパスして流通させ、一方、室外熱交換器1を凝縮器として使用するときは、逆止弁46によって入口連通管62側への冷媒流れを阻止することができるため、ヒートポンプシステム2における室外熱交換器1の蒸発器と凝縮器との切り換えを簡単な構成で確実に行うことができる。
【0035】
図2は第2実施例の室外熱交換器1の正面図、室外熱交換器1が組み込まれる車両空調ヒートポンプシステム68の概略構成、及びヒートポンプシステム68が接続されるHVACユニット4の概略構成を示している。なお、第1実施例と共通する構成については同符号を付して説明を省略する。
本実施形態のヒートポンプシステム68は、メインコア部6における冷媒の流れ方向を変更しないで室外熱交換器1を凝縮器又は蒸発器に切り換えて使用可能な構成となっており、室外熱交換器1は、ヒートポンプシステム68の暖房運転時には蒸発器として使用され、冷房運転時には凝縮器として使用される。
【0036】
ヒートポンプシステム68は、冷媒回路36とは異なる冷媒回路70を備え、冷媒回路70のうちの暖房運転時流路(冷媒流路、バイパス手段)70aには、
図1中に実線で示す冷媒流れ方向の順に、室外熱交換器1、第4開閉弁(バイパス手段、弁)72、アキュームレータ40、圧縮機42、室内凝縮器32、第1膨張弁44が介挿されている。
一方、冷媒回路70のうちの冷房運転時流路70bには、
図1中に破線で示す冷媒流れ方向の順に、室外熱交換器1、第2開閉弁48、第2膨張弁50、室内蒸発器30、アキュームレータ40、圧縮機42、室内凝縮器32、第3開閉弁52が介挿されている。
【0037】
冷房運転時流路70bは、アキュームレータ40から、圧縮機42、室内凝縮器32を
経て、第3開閉弁52と第1膨張弁44との分岐路70cまでは暖房運転時流路70aと共用の共用路70dを有して形成されている。
ここで、本実施形態のヒートポンプシステム68は、メインコア部6における冷媒の流れ方向は暖房運転時及び冷媒運転時において同じであり、室外熱交換器1を蒸発器として使用する暖房運転時には、メインコア部6を通過した冷媒をレシーバタンク8及びサブクールコア部10をバイパスして流通させる構成を採用している(バイパス手段)。
【0038】
詳しくは、暖房運転時流路70aの室外熱交換器1に対する暖房時入口ポート54が下側のヘッダタンク12の右側端部に設けられ、当該下側のヘッダタンク12の左側端部には暖房運転時流路70aの室外熱交換器1に対する暖房時出口ポート56が設けられている。
暖房時に暖房時入口ポート54からメインコア部6に流入した冷媒は、各ヘッダタンク12を内部で仕切る複数の仕切り板58を境界としてダウンフロー又はアップフローの縦流れを繰り返し、メインコア部6に対する通風によって空気Aと熱交換を行いながら、
図2の実線矢印で示すように全体として右側から左側に流通し、暖房時出口ポート56から暖房運転時流路70aに送出される。すなわち、暖房運転時における冷媒は室外熱交換器1においてはメインコア部6のみを流通する。
【0039】
一方、冷房運転時流路70bの室外熱交換器1に対する冷房時入口ポート60は暖房時入口ポート54と共用され、暖房時出口ポート56に一端が連通する入口連通管62がレシーバタンク8の下側側部に接続され、他端がレシーバタンク8内に連通されている。
このように、入口連通管62は、室外熱交換器1を凝縮器として使用するときにはメインコア部6とレシーバタンク8とを連通させる。一方、室外熱交換器1を蒸発器として使用するときには、入口連通管62は、メインコア部6を通過した冷媒をレシーバタンク8及びサブクールコア部10をバイパスするための暖房運転時流路70aが接続された暖房時出口ポート56と連通される。
【0040】
しかし、暖房運転時流路70aのメインコア部6出口側に、入口連通管62から暖房運転時流路70a側への冷媒流れを阻止する第4開閉弁72を介挿したことにより、冷房時には第4開閉弁72を閉じることで、暖房運転時流路70aの第4開閉弁72の2次側への冷媒流入が阻止しながら、入口連通管62への冷媒流入を可能としている。
一方、暖房時には第2開閉弁48を閉じることで、レシーバタンク8、サブクールコア部10、ひいては冷房運転時流路70bの第2開閉弁48までは冷媒が流入するものの、冷房運転時流路36bの第2開閉弁48の2次側への冷媒流入が阻止される。これより、レシーバタンク8及びサブクールコア部10では冷媒の流れが停滞し、レシーバタンク8及びサブクールコア部10に冷媒が滞留する状態となる。このように、第4開閉弁72の閉止又は第2開閉弁48の閉止によって、メインコア部6における冷媒流れを暖房時及び冷房時で同じ流れ方向のままで、暖房時にレシーバタンク8及びサブクールコア部10をバイパスすることができる。
【0041】
以上のように本実施形態では、第1実施例の場合と同様に、サブクールコア部10を流れる冷媒を横流れ方向とし、また、メインコア部6を流れる冷媒を縦流れ方向とし、また、冷媒がサブクール部10を通過することによる冷媒の無用な圧力損失の増大、ひいては冷媒の無用な流動損失を防止することにより、室外熱交換器1の熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0042】
また、冷暖房時の切替においてメインコア部6における冷媒の流れ方向を変更せず、下側のヘッダタンク12の右側端部に設けられた暖房時入口ポート54を冷房時入口ポート60と共用することにより、第1実施例において下側のヘッダタンク12の左側端部に設けられた共用路36dから下側のヘッダタンク12の右側端部に設けられた暖房時入口ポート54まで冷媒配管の引き回しが不要となる。従って、冷媒回路70の回路構成を簡素化することができるため、ヒートポンプシステム68における室外熱交換器1の蒸発器と凝縮器との切り換えをより一層簡単な構成で行うことができる。
【0043】
以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、第1実施例に示される仕切り板58の数及び各仕切り板58の間隔はこれに限定されず、仕切り板58の数を更に多くし、冷房時のメインコア部6における冷媒の流れ方向で見て、各仕切り板58の間隔を徐々に狭めるようにしても良い。この場合には、暖房時におけるメインコア部6の冷媒流路の体積をパス割りによって段階的に大きくすることができ、一方、冷房時におけるメインコア部6の冷媒流路の体積をパス割りによって段階的に小さくすることができる。従って、暖房時には冷媒の密度が段階的に小さくなることにより冷媒がより蒸発し易く、冷房時には冷媒の密度が段階的に大きくなることにより冷媒がより凝縮し易くなるため、室外熱交換器1の熱交換効率を更に高めることができる。
【0044】
一方、第2実施例に示される各仕切り板58の間隔は、メインコア部6の冷媒の流れ方向が冷暖房時において同じであることから、
図2に示されるような等間隔であることが好ましい。
また、上記各実施例では、本発明を車両空調用のHVACユニット4外に設けた室外熱交換器1について用いる好適な場合について説明したが、他の用途の熱交換器及びヒートポンプシステムにも適用可能である。
【0045】
また、上記各実施例では、メインコア部6とサブクールコア部10とは通風方向に重なることなく上下に連結されているが、この構成に限らず、メインコア部6とサブクールコア部10とを左右に連結しても良いし、メインコア部6とサブクールコア部10とを通風方向に重なるようにして連結しても良い。メインコア部6とサブクールコア部10とを通風方向に重ねる場合には、サブクールコア部10が通風方向で見て前に配置することで、室外熱交換器1の熱交換効率の低下を効果的に抑制することができて好ましい。
【0046】
また、上記各実施例において説明したヒートポンプシステム2及びHVACユニット4の構成は種々の変更が可能であることは勿論である。