特許第6073609号(P6073609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073609
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ポジトロン放出核位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   G01T1/161 A
   G01T1/161 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-197915(P2012-197915)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-52318(P2014-52318A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】512190789
【氏名又は名称】株式会社Keenメディカルフィジックス
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(72)【発明者】
【氏名】西尾 禎治
(72)【発明者】
【氏名】宮武 彩
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06171243(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0111081(US,A1)
【文献】 特開2010−032451(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線の照射対象を挟んで配される一対の面を有し、それぞれ当該面内でγ線の検出位置を表す像を生成する一対の第1検出器と、
前記照射対象に対し、前記第1検出器とは異なる方向に配され、γ線の入射方向を示す像を生成する第2検出器と、
前記第1検出器がγ線を検出し、第2検出器がγ線を検出しないときに、当該第1検出器の生成した像に基づく第1の三次元像を再構成する手段と、
前記第1検出器と第2検出器とが実質的に同時期にγ線を検出しているときに、第1検出器及び第2検出器がそれぞれ生成した像に基づく第2の三次元像を再構成する手段と、
前記第1の三次元像と第2の三次元像とを超解像合成して出力する手段と、
を備えるポジトロン放出核位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線治療を受ける患者等、粒子線の照射対象内におけるγ線の放出位置を推定するポジトロン放出核位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線の照射は、照射するべき部位に正確に照射を行う必要がある。例えば粒子線治療では、正常な組織には粒子線を影響させないようにしながら、対象となる部位には粒子線の照射を行う必要がある。しかしながら粒子線は目に見えないため、照射対象内での粒子の到達位置を推定することが行われている。
【0003】
一例として、粒子線照射によって生成される陽電子崩壊(陽電子を放出するβ崩壊の一種)をする核種を用いる方法がある(非特許文献1)。この方法では、照射対象への照射終了後に、PET装置にて照射対象からの陽電子の放射を測定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Enghardt, W. etal., The spatial distribution of positron-emitting nulei generated byrelativistic light ion beams, Med. Phys. Biol., 37, pp.2127-2131, 1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法ではPET装置を用いるため、照射中の測定ができない。そこで粒子線照射中にも陽電子崩壊核の位置を測定するべく、例えば粒子線の照射方向をZ軸方向とし、このZ軸を含む面(例えばYZ面;Y軸はZ軸に直交するものとする)を有し、照射対象を挟んでこの面を対向させて配した一対のPET検出器を用いる方法が考えられる。
【0006】
この方法では、例えば14Oの崩壊によって生じる陽電子が、近隣の電子と対消滅を起こすときに生じる一対のγ線(エネルギ511keV)をこれらの検出器で捉える。この対消滅による一対のγ線は、図5に例示するように、互いに反対方向へ飛び出すので、これらのγ線が検出された一対の位置の延長線上に陽電子崩壊核が存在することとなる。従って、YZ面内では比較的高精度(2mm程の精度)で陽電子崩壊核の位置が測定できる。しかしながら、このYZ面に直交する方向(X軸方向)にはその精度は1cm程度まで劣化する。このため3次元的に、陽電子崩壊核の存在位置や範囲を推定することができないのが現状である。なお、このことは粒子線照射の場合に限らず、例えば14Oを含んだ薬剤の投与時に、その核がポジトロンを放出した位置を検出することで、薬剤の到達範囲を推定する際にも問題となる。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、3次元的な陽電子崩壊核の存在位置や範囲の推定精度を向上可能なポジトロン放出核位置検出装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決する本発明は、ポジトロン放出核位置検出装置であって、粒子線の照射対象を挟んで配される一対の面を有し、それぞれ当該面内でγ線を検出する一対の第1検出器と、前記照射対象に対し、前記第1検出器とは異なる方向に配され、γ線の入射方向を検出する第2検出器と、前記第2検出器が検出したγ線の入射方向と、当該第2検出器がγ線の入射方向を検出した時点と実質的に同時期に前記第1検出器が検出したγ線の検出位置の情報とを用い、照射対象内における前記第2検出器が検出したγ線の放出位置を推定する推定手段と、前記推定手段による推定の結果を出力する出力手段と、を備えることとしたものである。
【0009】
また本発明の一態様に係るポジトロン放出核位置検出装置は、粒子線の照射対象を挟んで配される一対の面を有し、それぞれ当該面内でγ線の検出位置を表す像を生成する一対の第1検出器と、前記照射対象に対し、前記第1検出器とは異なる方向に配され、γ線の入射方向を検出する第2検出器と、前記第1検出器が生成したγ線の検出位置の像、及び、前記第2検出器が検出したγ線の入射方向と、当該第2検出器がγ線の入射方向を検出した時点と実質的に同時期に前記第1検出器が検出したγ線の検出位置の情報とを用いて推定された、前記第2検出器が検出した照射対象内におけるγ線の放出位置を表す位置情報、に基づいて、照射対象内におけるγ線の放出範囲を推定する推定手段と、前記推定手段による推定の結果を出力する出力手段と、を備えることとしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、3次元的な陽電子崩壊核の存在位置や範囲の推定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るポジトロン放出核位置検出装置の例を表す構成ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係るポジトロン放出核位置検出装置の制御装置の例を表す構成ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係るポジトロン放出核位置検出装置の検出器からの出力信号を取り出す構成例を表す概要図である。
図4】本発明の実施の形態に係るポジトロン放出核位置検出装置の検出器からの出力信号を取り出すもう一つの構成例を表す概要図である。
図5】対消滅時のγ線の放出態様の例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係るポジトロン放出核位置検出装置1は、図1に例示するように、X軸方向に間隔をおいて配される一対の第1検出器11a,bと、第2検出器12と、制御装置13とを含んで構成される。ここで制御装置13は、図2に例示するように、制御部31と、記憶部32と、インタフェース部33と、出力部34とを含んでなる。なお、以下の説明では理解の容易のため、第1検出器11a,bは平面型(プラナー)検出器であるとし、当該面がYZ面内にあり、Y軸は図面の紙面の裏面から表面向きの法線方向であるとする。またこれらYZ面の法線方向(図面で左方向から右方向への向き)がX軸方向とする。Z軸は図面の上方から下方へ下ろした線分の方向とし、これらX,Y,Z軸はそれぞれ互いに直交するものとする。もっとも本実施の形態においては第1検出器11a,bは平面型の検出器に限られるものではなく、曲面をなすものであってもよい。
【0013】
第1検出器11a,bは、本実施の形態のある例では平面型(プラナー)のPET検出器である。本実施の形態では、この第1検出器11a,b間に照射対象が配される。PET検出器は平面に、γ線を検出するシンチレータを複数配列したものであり、γ線が到来すると、当該γ線が当たった位置にあるシンチレータが当該γ線を検出する。つまり、これら第1検出器11a,bでは、この面内においてγ線が到来した位置が検出できる。本実施の形態の第1検出器11a,bの出力信号は、平面状の画像情報であって、γ線が到来した位置とそうでない位置との画素がそれぞれ互いに異なる画素値に設定されたものとなる。
【0014】
第2検出器12は、例えばコンプトンカメラであり、γ線の到来を検出するとともに、当該γ線の到来方向を検出する。具体的にこの第2検出器12は、第1検出器11a,bとは異なる面(例えばXY面)内に複数のγ線検出器を配列したγ線検出アレイを複数枚備える。これらγ線検出アレイは互いに上記γ線検出器を配列した面(XY面)に平行に配される。そしてこのうちγ線の到来方向に近い側のγ線検出アレイにて、到来したγ線を散乱するとともに、当該散乱されたγ線を他のγ線検出アレイにて吸収する。このとき散乱時のγ線のエネルギを測定すると、到来したγ線のエネルギが既知であれば、コンプトン散乱の方程式により、散乱角が演算でき、従ってγ線の到来方向を含む円錐(コンプトン・コーン)を得ることができる。γ線検出アレイに含まれる複数の検出器の検出結果から得たコンプトン・コーンの交差範囲からγ線の到来方向が検出できることになる。このコンプトンカメラについては広く知られているので、ここでのこれ以上の詳しい説明を省略する。本実施の形態の第2検出器12の出力信号は、γ線検出アレイに平行な平面に投影した画像情報であって、γ線源のある位置とそうでない位置との画素がそれぞれ互いに異なる画素値に設定されたものとなる。
【0015】
制御装置13の制御部31は、例えばCPUなどのプログラム制御デバイスであり、記憶部32に格納されたプログラムに従って動作する。この制御部31は、本実施の形態のある例では、第2検出器12が検出したγ線の入射方向の情報を受け入れる。また、この第2検出器12がγ線の入射方向を検出した時点と実質的に同時期に第1検出器11a,bが検出したγ線の検出位置の情報を受け入れる。そしてこれらの受け入れた情報を用い、照射対象内におけるγ線の放出位置を推定する。この制御部31の詳しい動作の内容については、後に述べる。
【0016】
記憶部32は、制御部31が実行するプログラムを保持する。このプログラムは、DVD−ROM等のコンピュータ可読な記録媒体に格納されて提供され、この記憶部32に格納されたものであってよい。また本実施の形態では記憶部32は、制御部31のワークメモリとしても動作する。
【0017】
インタフェース部33は、第1検出器11a,bと、第2検出器12が出力する情報を受け入れて制御部31に出力する。具体的にこのインタフェース部33は、図3に例示するように、第1検出器11a,bの各々に対応して設けられた背景除去部21a,bと、ウィンドウ設定部22と、出力制御部23とを備える。
【0018】
ここで背景除去部21は、対応する第1検出器11が出力する信号を受けて、第1検出器11が検出したγ線のエネルギが予め定められたエネルギ閾値を超えた(あるいは二つのエネルギ閾値の範囲にある)場合に、第1検出器11の出力信号を出力する。また対応する第1検出器11が検出したγ線のエネルギが予め定められたエネルギ閾値を超えない(あるいは二つのエネルギ閾値の範囲にない)場合には、この背景除去部21は、第1検出器11の出力信号を出力しないよう制御する。
【0019】
ウィンドウ設定部22は、背景除去部21a,bのいずれか(図3においては背景除去部21aとしている)に接続され、接続されている背景除去部21が第1検出器11の出力する信号を出力したときに、予め定めた時間幅のパルス状信号を出力する。
【0020】
出力制御部23は、背景除去部21a,b及び第2検出器12が出力する信号を受け入れる。この出力制御部23は、ウィンドウ設定部22がパルス状信号を出力しているときに、これら受け入れた信号をそれぞれそのまま、制御部31に出力する。
【0021】
出力部34は、例えばディスプレイモニタ等であり、制御部31から入力される指示に従って情報を表示出力する。
【0022】
次に制御部31の動作について説明する。本実施の形態では、制御部31が入力を受ける信号は次のようなものになる。
【0023】
粒子線が酸素(16O)を含む照射対象に照射されると、この酸素16Oは、14Oに転換される。この14Oは、β崩壊して陽電子を放出するが、この陽電子は近傍の電子と直ちに対消滅を起こし、一対の約511keV(電子質量meを用いて、E=mec2で演算される値、なお、ここでcは真空中の光速)のエネルギを持つγ線を放出する。またこのβ崩壊により14Oは、一定のエネルギ準位の14Nとなるが、ほとんどの14Nは直ちに(511keVのγ線が放出されると実質的に同時に)2.3MeVのγ線を放出する。
【0024】
本実施の形態では従って、この反応が生じるときには、2.3MeVのγ線が第2検出器12で検出されると実質的に同時期に、511keVの一対のγ線のそれぞれが第1検出器11a,bで検出される。このため例えば背景除去部21にエネルギ閾値として500keVを設定しておくと、第1検出器11a,bがそれぞれ実質的に同時期に511keVのγ線を検出したときに、背景除去部21a,bはそれぞれ第1検出器11a,bの出力信号をそのまま出力する。ウィンドウ設定部22は、背景除去部21aの出力を受けてパルス状信号を出力するが、上記の反応が生じているときには、このパルス状信号が出力されている時間幅の間に、第2検出器12が2.3MeVのγ線を検出したことを表す出力信号を出力するので、出力制御部23は、第1検出器11a,b及び第2検出器12の出力信号を制御部31に出力する。
【0025】
本実施の形態では、第1検出器11a,b及び第2検出器12の出力信号は、既に述べたようにいずれも二次元の画像であり、第1検出器11a,bの画像では、各第1検出器11a,bのX軸上の位置(Xa,Xbとする)におけるYZ面内でのγ線の検出位置が示される。第1検出器11aの出力信号によるYZ面内でのγ線の検出位置を(Ya,Za)とし、第1検出器11bの出力信号によるYZ面内でのγ線の検出位置を(Yb,Zb)とすると、陽電子放出核は次の(1)式で表される直線上にある。
【0026】
【数1】
(ここでtは実数パラメータ)。
【0027】
また第2検出器12の出力信号からは、XY面内でのγ線源の位置が示される。そこで第2検出器12の出力信号によるXY面内でのγ線源の検出位置を(Xd,Yd)とすると(なお、第1検出器11と第2検出器12との座標は既知の位置に配した線源からのγ線を検出することで予め一致させておくものとする)、制御部31は、(1)式のX,Yのいずれかにこの検出位置(Xd,Yd)を代入した式、例えば次の(2)式を解いてパラメータtの値を得る。
【0028】
【数2】
制御部31は、ここで得たパラメータtの値を(1)式に代入することで得たX,Y,Zの値を、X,Y,Z軸で張られる三次元空間内での陽電子放出核の位置の推定結果として出力する。
【0029】
なお、ここでは粒子線が酸素(16O)を14Oに転換する場合に放出されるγ線を検出する例について述べたが、本実施の形態はこれに限られない。例えば粒子線が炭素(12C)の核と相互作用すると、この核を陽電子を放出する能力を有した核10Cに転換する。この10Cが陽電子を放出してβ崩壊すると、10Bが形成され、この形成された10Bは718keVのγ線を放出する。そこで、10Cから放出された陽電子が、近接する電子と対消滅して生成される一対のγ線(511keVのγ線)を第1検出器11a,bが検出し、これと実質的に同時期に、第2検出器12が718keVのγ線を検出したときに、第1検出器11a,b及び第2検出器12がそれぞれ検出したγ線の検出位置及びγ線源の位置を用いて、制御部31が、陽電子放出核の位置を推定することとしてもよい。
【0030】
またここまでの説明では、線分の式を解く例について述べたが、本実施の形態はこれに限らず、第1検出器11a,b及び第2検出器12がそれぞれ出力する画像情報を投影像として、バック・プロジェクション等の方法で三次元画像を再構成するようにしても構わない。ここで再構成される三次元画像は、陽電子放出核の存在する範囲を表すものとなる。
【0031】
さらに陽電子の対消滅に伴う、一対のγ線放出は上記酸素(16O)や炭素(12C)のβ崩壊に限られない。つまり14Nや10Bが生成される反応は全体の一部に過ぎない。従って実際に第1検出器11が検出する511keVのγ線は、第2検出器12が検出するγ線よりも数が多い。そこで本実施の形態では、第2検出器12がγ線を検出していないときであっても、第1検出器11が検出する511keVのγ線の像を得ておき、この像と、第2検出器12がγ線を検出しているときの像とを用いて三次元画像を再構成し、陽電子放出核の位置を推定してもよい。
【0032】
この例では、制御装置13のインタフェース部33は、図4に例示するように、第1検出器11a,bの各々に対応して設けられた背景除去部21a,bと、第1のウィンドウ設定部22′と、第2のウィンドウ設定部24と、出力制御部23′とを備える。
【0033】
ここで背景除去部21は、対応する第1検出器11が出力する信号を受けて、第1検出器11が検出したγ線のエネルギが予め定められたエネルギ閾値を超えた(あるいは二つのエネルギ閾値の範囲にある)場合に、第1検出器11の出力信号を出力する。また対応する第1検出器11が検出したγ線のエネルギが予め定められたエネルギ閾値を超えない(あるいは二つのエネルギ閾値の範囲にない)場合には、この背景除去部21は、第1検出器11の出力信号を出力しないよう制御する。
【0034】
第1のウィンドウ設定部22′は、背景除去部21a,bのいずれか(図4においては背景除去部21aとしている)に接続され、接続されている背景除去部21が第1検出器11の出力する信号を出力したときに、予め定めた時間幅Δt1のパルス状信号を出力する。
【0035】
第2のウィンドウ設定部24は、第2検出器12がγ線を検出したことを表す信号を出力したときに、予め定めた時間幅Δt2のパルス状信号を出力する。ここで時間幅Δt1とΔt2とは実験的に定めればよく、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0036】
出力制御部23′は、背景除去部21a,b及び第2検出器12が出力する信号と、第1、第2のウィンドウ設定部22′,24の出力するパルス信号とを受け入れる。そしてこの出力制御部23′は、次のように動作する。すなわち第1のウィンドウ設定部22′がパルス状信号を出力していないときには、何も出力しない。また、第1のウィンドウ設定部22′がパルス状信号を出力しており、第2のウィンドウ設定部24がパルス信号を出力していないときには、出力制御部23′は、背景除去部21a,bから受け入れた第1検出器11a,bの出力信号をそれぞれそのまま、制御部31に出力する。
【0037】
さらに出力制御部23′は、第1のウィンドウ設定部22′と第2のウィンドウ設定部24とがいずれもパルス信号を出力しているときには、背景除去部21a,bから受け入れた第1検出器11a,bの出力信号と、第2検出器12から受け入れた信号とをそれぞれそのまま、制御部31に出力する。
【0038】
制御部31では、インタフェース部33の出力制御部23′が、第1検出器11a,bの出力信号のみを出力しているときには、従来の方法を用いて、これら第1検出器11a,bの出力信号に基づいて陽電子放出核の位置を表す三次元像(第1の三次元像)を再構成する。
【0039】
また制御部31は、インタフェース部33の出力制御部23′が、第1検出器11a,b及び第2検出器12の出力信号を出力しているときには、先に説明した方法を用いて、これら第1検出器11a,bの出力信号と第2検出器12の出力信号とに基づいて陽電子放出核の位置を表す三次元像(第2の三次元像)を再構成する。
【0040】
ここで第1の三次元像は既に述べたように、陽電子放出核の推定位置のX軸方向の精度が、他の軸(Y軸,Z軸)方向の精度に比べて低いものとなっている。一方、第2の三次元像は、陽電子放出核の推定位置の各軸の精度は第1の三次元像におけるY軸やZ軸の精度に劣らないが、検出数が第1の三次元像の再構成に用いたγ線の検出結果に比べて少ない。
【0041】
制御部31は、これら第1の三次元像と第2の三次元像とを超解像合成して、陽電子放出核の推定位置を表す三次元像を生成して出力する。このような複数画像を合成して超解像処理を行う方法については広く知られたものが利用できるので、その詳しい説明は省略する。
【0042】
なお、三次元像の出力は、利用者から任意の断面の指定を受けて、当該任意の断面における断面像を生成して表示することで行えばよい。
【0043】
本実施の形態のポジトロン放出核位置検出装置1は、例えば粒子線治療を行う現場において、次のように利用される。このポジトロン放出核位置検出装置1の第1検出器11a,bを、患者の粒子線照射部位を挟んで対向させて配する(このときの第1検出器11の面がYZ面にあるものとする)。また第2検出器12を、患者の粒子線照射部位の背面側(患者を挟んで粒子線照射装置に対向する位置、XY面)に配する。
【0044】
ここで粒子線を照射すると、患者の体内において粒子線が照射された(粒子が停止した)位置において陽電子放出核が生成され、ここから陽電子が放出される。そして当該放出された陽電子が、陽電子放出核の近隣にある電子と対消滅することにより放射される一対のγ線を第1検出器11にて捉える。
【0045】
また陽電子放出核が陽電子を放出してβ崩壊した後の核を有する原子がエネルギ状態を変えるときに放出するγ線を、γ線の到来方向を検出可能な第2検出器12にて捉える。
【0046】
そして制御装置13が、これら第1検出器11により得られたYZ面内でのγ線の検出位置を表す投影像を得るとともに、第2検出器12により得られたXY面内でのγ線源の位置を表す仮想的な投影像を得る。そしてこれらの投影像からバック・プロジェクション等の方法により、γ線が生成されたと推定される位置を表す3次元像を再構成する。そしてこの再構成した3次元像を出力する。
【0047】
利用者は、この3次元像を参考に、患者の体内(照射対象)において粒子線が照射された位置を判断し、粒子線の強度や照射方向等を調整することに使用する。
【0048】
このように本実施の形態では、放出したポジトロンが一対の消滅γ線を生成するとともに、励起準位から所定の準位に遷移する際に1つ以上の遷移γ線を放出するポジトロン放出核のイメージングを、これら一対の消滅γ線及び1つ以上の遷移γ線の検出位置や到来方向を測定することで実現する。これにより、粒子線照射時の照射位置の判断や、14O等を含んだ薬剤の到達範囲の推定等をより高い精度で実現できることとなる。
【符号の説明】
【0049】
1 ポジトロン放出核位置検出装置、11 第1検出器、12 第2検出器、13 制御装置、21 背景除去部、22 ウィンドウ設定部、22′ 第1のウィンドウ設定部、23,23′ 出力制御部、24 第2のウィンドウ設定部、31 制御部、32 記憶部、33 インタフェース部、34 出力部。
図1
図2
図3
図4
図5