特許第6073617号(P6073617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073617液状化対策のための地盤改良体及びその形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073617
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】液状化対策のための地盤改良体及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20170123BHJP
   E02D 27/26 20060101ALI20170123BHJP
   E02D 27/28 20060101ALI20170123BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   E02D27/34 Z
   E02D27/26
   E02D27/28
   E02D3/12 102
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-207841(P2012-207841)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-62393(P2014-62393A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
(72)【発明者】
【氏名】手塚 広明
(72)【発明者】
【氏名】平田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直仁
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−226254(JP,A)
【文献】 特開昭61−005114(JP,A)
【文献】 特開2009−084972(JP,A)
【文献】 特開2010−216107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建造物が存在する区域を含む改良対象地盤中に噴射管を貫入し、当該噴射管の先端部から前記改良対象地盤中に地盤改良材を噴射する高圧噴射撹拌工法により、当該改良対象地盤中に形成した地盤改良体であって、略鉛直方向の第1の地盤改良体と、略鉛直方向もしくは略水平方向の第2の地盤改良体とからなり、
前記第1の地盤改良体は、前記改良対象地盤上に既存建造物が存在しない区域において、その下端部が基盤層まで達するように形成すると共に、既存建造物が存在する区域において、その下端部が基盤層まで達しないように形成し、
前記第2の地盤改良体は、前記既存建造物の直下付近の地盤中において、当該既存建造物の下部の一部分を支えるように、もしくは当該既存建造物の下部の一部分を覆うように形成する、
ことを特徴とする液状化対策のための地盤改良体。
【請求項2】
前記第2の地盤改良体は、前記第1の地盤改良体に直接連続して形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液状化対策のための地盤改良体。
【請求項3】
既存建造物が存在する区域を含む改良対象地盤中に噴射管を貫入し、当該噴射管の先端部から前記改良対象地盤中に地盤改良材を噴射する高圧噴射撹拌工法により、改良対象地盤の液状化強度を向上させるための地盤改良体の形成方法であって、
前記改良対象地盤中に略鉛直方向の第1の地盤改良体を形成する工程と、
前記改良対象地盤上に存在する既存建造物の直下付近において、当該既存建造物の下部の一部分を支える略鉛直方向、もしくは当該既存建造物の下部の一部分を覆う略水平方向の第2の地盤改良体を形成する工程と、を含み、
前記第1の地盤改良体は、前記既存建造物が存在しない区域において、その下端部が基盤層まで達するように形成すると共に、前記既存建造物が存在する区域において、その下端部が基盤層まで達しないように形成する、
ことを特徴とする液状化対策のための地盤改良体の形成方法。
【請求項4】
前記第2の地盤改良体を形成する工程において、前記第2の地盤改良体は、前記第1の地盤改良体を形成する際に、前記第1の地盤改良体に直接連続して形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の液状化対策のための地盤改良体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化対策のための地盤改良体及びその形成方法に関するものであり、詳しくは、深層混合処理工法による地盤の格子状改良を行うことにより、適切かつ確実に液状化強度を向上させることが可能な地盤改良体及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
埋め立て地をはじめとして、地下水位が高い砂質地盤では、地震の震動により液状化現象が発生し、マンホールや下水管が押し上げられて地表面から突出したり、建造物が傾いたりする被害が発生している。このような液状化現象を未然に防止するためには、液状化が懸念される地盤に対して改良工事を行わなければならない。
【0003】
従来から行われている液状化対策工法として、深層混合処理工法による地盤の格子状改良が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、地盤に貫入した噴射管の噴射口から、空気を含む高圧流体ジェットを噴射して地盤を切削しつつ攪拌する工程と、噴射管を上昇させる工程とを行うことにより地盤改良体を形成するものである。
【0004】
この特許文献1に記載された技術は、任意の形状(格子状、扇状等)の地盤改良体を形成することができる優れた技術である。特に、この深層混合処理工法(高圧噴射攪拌工法)を利用して既存建造物の地下部分に格子状の地盤改良体を形成することにより、地震時における地盤のせん断変形を抑制して、地盤内の過剰間隙水圧の上昇を抑制することができるので、液状化強度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−62616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
深層混合処理工法(高圧噴射攪拌工法)を利用した地盤改良工法により、設計上合理的かつ効果的な間隔にて格子状の改良が行える場合には、改良率が最適となるため、液状化対策工法の中でも比較的低コストなものとなる。また、既存構造物が存在しない新規造成地盤であり、かつ施工上の制約が少ない大規模な工事においては、このような最適な格子状改良が可能と言える。一方で、近年問題となっている既存宅地の液状化対策のように小規模な工事で施工上の制約も多い場合には、設計上合理的とされる格子間隔以上の改良を余儀なくされる結果、要求性能を満たさないか、もしくは、既存建造物の床面から削孔して改良ポイントを増設するなどコスト面での優位性が低減してしまい、宅地所有者の費用負担が大きくなってしまうおそれがある。
【0007】
また、深層混合処理工法(高圧噴射攪拌工法)を利用した地盤改良工法は、改良対象地盤(液状化が懸念される飽和土壌)中に地盤改良体を形成する工法であり、地盤改良体を基盤層にまで到達させると共に、地盤改良体を所定間隔で形成する必要がある。
【0008】
すなわち、地盤改良体を形成する間隔が広すぎる場合には、地盤改良体によるせん断変形抑制効果を発揮することができない。一方、地盤改良体を形成する間隔を狭くすれば、地盤改良体によるせん断変形抑制効果を発揮することはできるが、コストが上昇してしまう。特に、既に個人用住宅が建造されている地域において、従来適正と考えられている間隔で地盤改良体を形成するには、個人用住宅の所有者に対して多大な負担を課すことになる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、既に個人用住宅が建造されている地域において、深層混合処理工法を利用して地盤改良体を形成する際に、適切かつ確実で安価に液状化強度を向上させることが可能な液状化対策のための地盤改良体及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液状化対策のための地盤改良体及びその形成方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の液状化対策のための地盤改良体は、既存建造物が存在する区域を含む改良対象地盤中に噴射管を貫入し、当該噴射管の先端部から前記改良対象地盤中に地盤改良材を噴射する高圧噴射撹拌工法により、当該改良対象地盤中に形成した地盤改良体であって、略鉛直方向の第1の地盤改良体と、略鉛直方向もしくは略水平方向の第2の地盤改良体とからなることを特徴とするものである。
【0011】
第1の地盤改良体は、改良対象地盤上に既存建造物が存在しない区域において、その下端部が基盤層まで達するように形成すると共に、当該既存建造物が存在する区域において、その下端部が基盤層まで達しないように形成する。また、第2の地盤改良体は、既存建造物の直下付近の地盤中において、当該既存建造物の下部の一部分を支える略垂直方向、もしくは当該既存建造物の下部の一部分を覆う略水平方向に形成する。
【0012】
本発明の液状化対策のための地盤改良体の形成方法は、既存建造物が存在する区域を含む改良対象地盤中に噴射管を貫入し、当該噴射管の先端部から改良対象地盤中に地盤改良材を噴射する高圧噴射撹拌工法により、改良対象地盤の液状化強度を向上させるための地盤改良体の形成方法であって、改良対象地盤中に略鉛直方向の第1の地盤改良体を形成する工程と、改良対象地盤上に存在する既存建造物の直下付近において、当該既存建造物の下部の一部分を支える略鉛直方向、もしくは当該既存建造物の下部の一部分を覆う略水平方向の第2の地盤改良体を形成する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0013】
第1の地盤改良体は、既存建造物が存在しない区域において、その下端部が基盤層まで達するように形成すると共に、既存建造物が存在する区域において、その下端部が基盤層まで達しないように形成する。
【0014】
また、第2の地盤改良体は、第1の地盤改良体を形成する際に、第1の地盤改良体に直接連続して形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地盤の液状化対策のための地盤改良体の形成方法によれば、深層混合処理工法(高圧噴射攪拌工法)を利用して略鉛直方向の地盤改良体を形成するが、改良対象地盤上に既存建造物が存在する区域か、改良対象地盤上に既存建造物が存在しない区域かで、その下端部が基盤層まで達するか否か(地盤改良体の深度)を選択している。
【0016】
すなわち、例えば、公用地(公用道路)のように、改良対象地盤上に既存建造物が存在しない場所では、従来と同様に、下端部が基盤層まで達する地盤改良体を形成する一方、例えば、個人用住宅地のように、既存建造物が存在する場所では、従来よりも浅い深度の地盤改良体を形成する。さらに、従来よりも浅い深度の地盤改良体を形成した既存建造物の直下付近の地盤中には、当該既存建造物の下部を略支える略鉛直方向、もしくは当該既存建造物の下部を略覆う略水平方向の地盤改良体を形成する。
【0017】
したがって、公用地(公用道路)のように、改良対象地盤上に既存建造物が存在しない場所では、従来と同様な地盤改良体を形成するので、確実な液状化対策を行うことができる。また、個人用住宅地のように、既存建造物が存在する場所では、従来よりも浅い深度の地盤改良体を形成するので、コストを抑制することができる。さらに、既存建造物の下部を略支えるように略鉛直方向の地盤改良体を形成したり、既存建造物の下部を略覆うように略水平方向の地盤改良体を形成したりすることにより、従来よりも浅い深度の地盤改良体であっても、この略鉛直方向もしくは略水平方向の地盤改良体が地盤のせん断変形を抑制するので、適切かつ確実で安価に液状化強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(1)の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(1)の一部を断面として示す斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(1)の平面図。
図4】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(1)の正面図(図1おけるA矢視図)。
図5】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(1)の側面図(図1おけるB矢視図)。
図6】本発明の実態形態に係る液状化対策のための地盤改良体(2)の斜視図。
図7】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(2)の一部を断面として示す斜視図。
図8】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(2)の平面図。
図9】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(2)の正面図(図6おけるA矢視図)。
図10】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体(2)の側面図(図6おけるB矢視図)。
図11】本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体の形成方法で使用する高圧噴射攪拌工法の原理説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の液状化対策のための地盤改良体及びその形成方法の実施形態を説明する。図1図11は本発明の実施形態に係る液状化対策のための地盤改良体及びその形成方法を説明するもので、図1及び図6は地盤改良体の斜視図、図2及び図7は地盤改良体の一部を断面として示す斜視図、図3及び図8は地盤改良体の平面図、図4及び図9は地盤改良体の正面図、図5及び図10は地盤改良体の側面図、図11は高圧噴射攪拌工法の原理説明図である。
【0020】
<地盤改良体の形成方法の概要>
我が国では、プレート境界型巨大地震の発生により地盤の液状化現象が発生し、これによる大規模な被害が予想されている。実際、東日本大震災では、埋立地、堤防や盛り土、護岸等で液状化現象が発生して、様々な被害をもたらした。このため、近い将来発生すると予測されている大規模地震に備えて、早急に液状化対策を行うことが望まれている。本発明の実施形態に係る液状化対策工法は、深層混合処理工法を利用して地盤改良体を形成することを基本として、改良対象地盤上に既存建造物が存在する場所と、既存建造物が存在しない場所とで地盤改良体の深度を異ならせると共に、既存建造物の下部を略支えるように略鉛直方向の地盤改良体を形成し、あるいは既存建造物の下部を略覆うように略水平方向の地盤改良体を形成することを特徴としたものである。
【0021】
なお、略支えるとは、既存建造物の下部を全面的に支える場合だけではなく、一部分に既存建造物の下部を支えていない箇所が存在しても良いという意味である。同様に、略覆うとは、既存建造物の下部を全面的に覆う場合だけではなく、一部分に既存建造物の下部を覆っていない箇所が存在しても良いという意味である。また、略鉛直とは、鉛直方向を含んで若干の傾きを許容する意味であり、略水平とは、水平方向を含んで若干の傾きを許容する意味である。
【0022】
<深層混合処理工法>
本発明の実施形態に係る地盤改良体を形成するには、深層混合処理工法の一種である高圧噴射攪拌工法を用いる。図11を参照して、高圧噴射攪拌工法について説明する。高圧噴射攪拌工法は、図11に示すように、先端部に噴射口52を有する噴射管51を改良対象地盤の内部に貫入し、噴射口52から所定圧力及び所定噴射量で地盤改良材(硬化材)を噴射しながら噴射管51を回転させることより、土壌を攪拌しながら地盤改良材(硬化材)を混入して、改良対象地盤の内部に地盤改良体10a、10b、21、22を形成する工法である。
【0023】
このような高圧噴射攪拌工法は、噴射管51の回転範囲と、地盤改良材(硬化材)の噴射圧力及び噴射量を調整することにより、所望の範囲で土壌を改良することができる点に特徴があるため、特に本発明の実施形態に係る地盤改良体10a、10b、21、22を形成する際に好適に用いることができる。
【0024】
例えば、噴射口52の位置や噴射管51の回転範囲を調整して地盤改良材(硬化材)を噴射することにより、円柱状、半円柱状、壁状、扇状、格子状等、種々の形状の地盤改良体を形成することができる。なお、噴射口52の位置は、1箇所であってもよいし、2箇所以上であってもよい。また、噴射口52を2箇所以上設ける場合には、その位置を適宜設定することにより、効率よく所望範囲に地盤改良材(硬化材)を噴射して地盤改良体を形成することができる。
【0025】
本発明の実施形態に係る地盤改良体は、図1図10に示すように、高圧噴射攪拌工法を用いて形成されるもので、地上から地中に向かって略鉛直方向に形成される第1の地盤改良体10a、10bと、既存建造物40の直下付近において、略鉛直方向に形成される第2の改良体21もしくは略水平方向に形成される第2の地盤改良体22とからなる。なお、図1図5は、略鉛直方法に形成される第2の地盤改良体21を含む地盤改良体(1)を示し、図6図10は、略水平方向に形成される第2の地盤改良体22を含む地盤改良体(2)を示す。
【0026】
<第1の地盤改良体>
第1の地盤改良体10a、10bは、略鉛直方向の壁状となっており、改良対象地盤上に既存建造物40が存在する場所と、既存建造物40が存在しない場所とで、その深度が異なっている。例えば、図4及び図9に示すように、公用地(公用道路30)のように、改良対象地盤上に既存建造物40が存在しない場所では、従来と同様に、下端部が基盤層まで達する地盤改良体10aを形成する。一方、例えば、図4及び図9に示すように、個人用住宅地のように、既存建造物40が存在する場所では、従来よりも浅い深度の地盤改良体10bを形成する。すなわち、既存建造物40が存在する場所に形成される地盤改良体10bは、下端部が基盤層まで達していない。
【0027】
このように、公用地(公用道路30)のように、改良対象地盤上に既存建造物40が存在しない場所では、下端部が基盤層まで達する地盤改良体10aを形成するので、確実な液状化対策を行うことができる。一方、個人用住宅地のように、既存建造物40が存在する場所では、下端部が基盤層まで達しない地盤改良体10bを形成するので、コストを削減することができる。
【0028】
なお、下端部が基盤層まで達しない地盤改良体10bを形成した場合には、液状化強度を十分に向上させられないおそれがある。そこで、本発明では、下端部が基盤層まで達しない地盤改良体10bを形成した区域において、既存建造物40の下部を略支えるように第2の地盤改良体21を形成し、もしくは既存建造物40の下部を略覆うように第2の地盤改良体22を形成する。
【0029】
<第2の地盤改良体>
図1図5に示すように、第2の地盤改良体21は、既存建造物40の直下付近の地盤中において、当該既存建造物40の下部を略支えるように形成したものである。すなわち、既存建造物40の周囲の地盤中に、第1の地盤改良体10bを形成するのと同じ深さまで噴射管51を貫入し、格子状の地盤改良体10bの内側へ壁状の第2の地盤改良体21を形成する。
【0030】
また、図6図9に示すように、第2の地盤改良体22は、既存建造物40直下付近の地盤中において、当該既存建造物40の下部を略覆うように形成したものである。すなわち、既存建造物40の周囲の地盤中に、適宜な深さまで噴射管51を貫入し、高圧噴射攪拌工法の特徴を生かして、断面が略円形状(円柱状)又は略半円形状(半円柱状)の地盤改良体を形成する。この第2の地盤改良体21もしくは第2の地盤改良体22により、既存建造物40の下部を略支えて、改良対象地盤の内側に壁を形成し、もしくは既存建造物40の下部を略覆って、改良対象地盤の上部に蓋を形成することができる。
【0031】
なお、第2の地盤改良体21もしくは第2の地盤改良体22は、第1の地盤改良体10a,10bを形成する際に、第1の地盤改良体10a,10bに連続して形成することが好ましい。このように、第1の地盤改良体10a,10bと、第2の地盤改良体21もしくは第2の地盤改良体22を略同時に形成することにより、施工工数が少なくなるので、効率的な施工を行うことができると共に、施工コストを低減することができる。
【0032】
発明者による実験では、下端部が基盤層まで達しない第1の地盤改良体10bを形成した区域であっても、当該第1の地盤改良体10bで囲われた改良対象地盤の内側に壁状の第2の地盤改良体21を形成し、もしくは当該第1の地盤改良体10bで囲われた改良対象地盤の上部に蓋状の第2の地盤改良体22を形成することにより、地盤のせん断変形が抑制されて、液状化強度を向上させることができた。なお、第2の地盤改良体21もしくは第2の地盤改良体22は、既存建造物40の下部に完全な格子壁を形成する必要はなく、またこれを完全に覆う必要もなく、既存建造物40の下部を略支えており、もしくは略覆っていれば、若干の隙間部分が生じていたとしても、地盤のせん断変形を抑制することができる。
【0033】
<地盤改良体の形成>
本実施形態では、改良対象地盤中に噴射管51を貫入し、噴射口52から所定圧力及び所定噴射量で地盤改良材(硬化材)を噴射することにより、地盤改良体10a、10b、21、22を形成する。この際、改良対象地盤上に既存建造物40が存在しない場所(例えば公用道路30)では、下端部が基盤層まで達するように、略鉛直方向に壁状の第1の地盤改良体10aを形成する。一方、改良対象地盤上に既存建造物40が存在する場所(例えば個人用住宅地)では、改良対象地盤上に既存建造物40が存在しない場所と比較して、深度が浅い第1の地盤改良体10bを形成する。
【0034】
また、既存建造物40の周囲の地盤中に、適宜な深さまで噴射管51を貫入し、噴射口52から所定圧力及び所定噴射量で地盤改良材(硬化材)を噴射しながら噴射管51を回転させることにより、既存建造物40の下部を略支えるようにして、壁状の第2の地盤改良体21を形成し、もしくは既存建造物40の下部を略覆うようにして、円柱状又は半円柱状の第2の地盤改良体22を形成する。
【0035】
このように、地上部分に既存建造物40が存在する場所であるか否か、すなわち、例えば個人用住宅が建造されている宅地と、公用道路30等の公共用地とで、形成する地盤改良体10a、10b、21、22の深度及び形状を異ならせることにより、個人用住宅地の所有者に対して多大な負担を課すことなく、地域全体として適切かつ確実に液状化強度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
10 改良対象地盤
10a、10b 第1の地盤改良体
21 第2の地盤改良体(略鉛直方向)
22 第2の地盤改良体(略水平方向)
30 公用道路
40 既存建造物
51 噴射管
52 噴射口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11