特許第6073639号(P6073639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073639
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】薄ガラス長尺体
(51)【国際特許分類】
   B65H 21/00 20060101AFI20170123BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20170123BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20170123BHJP
   B65D 85/48 20060101ALI20170123BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B65H21/00
   B65G49/06 Z
   H01L21/68 A
   B65D85/48
   C03C17/32 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-231999(P2012-231999)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-84181(P2014-84181A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】柳 成鎮
(72)【発明者】
【氏名】武本 博之
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/038761(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/008529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
C03C 17/00−17/44
B65D 85/48
B65D 85/66−85/677
B65G 49/06
B65H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の薄ガラスから構成される本体部と、該薄ガラスの長さ方向両端に連結された靱性フィルムから構成されるハンドリング部とを備える薄ガラス長尺体であって、
該薄ガラスの長さ方向端部と該靭性フィルムの長さ方向の薄ガラス側の端部とが積層して連結部を形成し、
該薄ガラス長尺体の薄ガラス側の面において、該薄ガラスの連結部側の最端部が保護フィルムにより覆われ
該保護フィルムにおけるヤング率と厚みとの積が、該薄ガラスにおけるヤング率と厚みとの積よりも、小さい、
薄ガラス長尺体。
【請求項2】
前記保護フィルムが、前記薄ガラスの連結部側の最端部から前記薄ガラス長尺体の長さ方向の外側に向けて延出する延出部を有し、該延出部の長さが、該薄ガラスの幅に対して、300%以下である、請求項1に記載の薄ガラス長尺体。
【請求項3】
前記保護フィルムの幅が、前記薄ガラスの幅に対して、100%〜120%である、請求項1または2に記載の薄ガラス長尺体。
【請求項4】
別の保護フィルムをさらに備え、前記薄ガラス長尺体の靭性フィルム側の面において、該別の保護フィルムが前記靱性フィルムの連結部側の最端部を覆うように積層されている、請求項1から3のいずれかに記載の薄ガラス長尺体。
【請求項5】
前記薄ガラスの厚みが、10μm〜150μmである、請求項1から4のいずれかに記載の薄ガラス長尺体。
【請求項6】
前記薄ガラスの幅が、300mm以上である、請求項1から5のいずれかに記載の薄ガラス長尺体。
【請求項7】
前記連結部の長さaと前記薄ガラスの幅bとの関係が、0.01b≦a≦bである、請求項1から6のいずれかに記載の薄ガラス長尺体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄ガラス長尺体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、搬送性、収納性およびデザイン性等の観点から、表示装置、照明装置および太陽電池の軽量、薄型化が進んでいる。また、これらの装置に用いられるフィルム状の部材を、ロール・ツー・ロールプロセスにより、連続生産することも行われている。例えば、ロール・ツー・ロールプロセスにより加工または処理することが可能な可撓性材料として、薄ガラスの使用が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
薄ガラスは非常に脆く、ハンドリング性に劣る。上記装置に用いられる部材としては、例えば、薄ガラス表面に樹脂フィルムを貼り付けて補強し、ハンドリング性を向上させた可撓性基板が提案されている(例えば、特許文献3)。しかし、このような部材を製造するまでの工程において、材料としての薄ガラスを単体で破損させずに取り扱うことは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平1−500990号公報
【特許文献2】特開平8−283041号公報
【特許文献3】特開2007−010834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ロール・ツー・ロールプロセスによる加工または処理の際に、薄ガラスの破損を防止し得る薄ガラス長尺体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の薄ガラス長尺体は、長尺状の薄ガラスから構成される本体部と、該薄ガラスの長さ方向両端に連結された靱性フィルムから構成されるハンドリング部とを備える薄ガラス長尺体であって、該薄ガラスの長さ方向端部と該靭性フィルムの長さ方向の薄ガラス側の端部とが積層して連結部を形成し、該薄ガラス長尺体の薄ガラス側の面において、該薄ガラスの連結部側の最端部が保護フィルムにより覆われている。
好ましい実施形態においては、上記保護フィルムが、上記薄ガラスの連結部側の最端部から上記薄ガラス長尺体の長さ方向の外側に向けて延出する延出部を有し、該延出部の長さが、該薄ガラスの幅に対して、300%以下である。
好ましい実施形態においては、上記保護フィルムの幅が、上記薄ガラスの幅に対して、100%〜120%である。
好ましい実施形態においては、本発明の薄ガラス長尺体は、別の保護フィルムをさらに備え、上記薄ガラス長尺体の靭性フィルム側の面において、該別の保護フィルムが該靱性フィルムの連結部側の最端部を覆うように積層されている。
好ましい実施形態においては、上記薄ガラスの厚みが、10μm〜150μmである。
好ましい実施形態においては、上記薄ガラスの幅が、300mm以上である。
好ましい実施形態においては、上記連結部の長さaと上記薄ガラスの幅bとの関係が、0.01b≦a≦bである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長尺状の薄ガラスの長さ方向両端に靱性フィルムを備えることにより、連続的に加工または処理する際に薄ガラスが破損しがたい薄ガラス長尺体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は本発明の好ましい実施形態による薄ガラス長尺体の概略平面図である。(b)は(a)のIb−Ib線による概略拡大断面図である。
図2】本発明の薄ガラス長尺体の使用形態の一例を説明する図である。
図3】本発明の別の好ましい実施形態による薄ガラス長尺体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による薄ガラス長尺体の概略平面図であり、図1(b)は、図1(a)の薄ガラス長尺体のIb−Ib線による概略拡大断面図である。この薄ガラス長尺体100は、長尺状の薄ガラス10から構成される本体部と、該薄ガラスの長さ方向両端に連結された靱性フィルム20、20’から構成されるハンドリング部とを備える。薄ガラス10の長さ方向端部と靭性フィルム20、20’の長さ方向の薄ガラス側の端部とが積層して連結部A、A’を形成している。さらに、薄ガラス長尺体100は、薄ガラス10側の面において、薄ガラス10の連結部側の最端部1、1’が保護フィルム30、30’により覆われている。なお、図1(b)においては、連結部Aを拡大して図示している。
【0010】
実用的には、薄ガラス長尺体はロール状に巻き取られた状態で提供され得る。ロール状の薄ガラス長尺体は、ロール・ツー・ロールプロセスによる加工または処理に供される。本発明の薄ガラス長尺体は、薄ガラスの連結部側の最端部が保護フィルムで覆われているため、ロール状に巻き取った際に、連結部の上に巻かれる薄ガラスが、連結部の段差による負荷を受け難く、該薄ガラスの破損が防止される。なお、本明細書において、巻回された薄ガラス長尺体を、加工・処理装置に備えられる加工ロール(例えば、搬送ロール、加熱ロール)と区別して、単にロールと称する。
【0011】
図2は、本発明の薄ガラス長尺体の使用形態の一例を説明する図であり、薄ガラス長尺体の薄ガラスをロール・ツー・ロールプロセスの処理装置に供する工程を示す。図2(a)は、薄ガラス10の処理(例えば、塗工、スパッタリング、熱処理)が定常状態になる前の段階(開始段階)を示す。開始段階においては、繰り出し側1のロールから薄ガラス長尺体100を繰り出す作業、繰り出した該長尺体を処理装置に通紙する作業、巻き取り側2で該長尺体を巻き付ける作業等の作業を経て、薄ガラス長尺体100が処理装置にセッティングされる。本発明の薄ガラス長尺体100を用いれば、処理の開始段階において、作業者が薄ガラス10ではなくハンドリング部(靱性フィルム20)を持って作業し得るため、薄ガラス10の破損を防止することができる。また、靱性フィルム20によりアライメントを調整し得るので、該調整による薄ガラス10の破損を防止することもできる。さらに、加工・処理が定常状態に移る際に加工条件(例えば、加工速度)が変化する場合においては、薄ガラス10に変化による負荷がかかることを防止することができる。
【0012】
その後、薄ガラス10の処理を行う(図2(b))。本発明の薄ガラス長尺体は、薄ガラスの連結部側の最端部が保護フィルムで覆われているため、加工ロールを通過する際に、薄ガラスと靭性フィルムとの連結が外れることが防止される。薄ガラス10の処理が終了した後、巻き取り側2で長尺体を切断してロールを取り外す(図2(c))。本発明の薄ガラス長尺体を用いれば、この際、薄ガラスではなく靱性フィルムを切断することができるので、切断による薄ガラスの破損を防止することができる。また、本発明の薄ガラス長尺体は、薄ガラスの連結部側の最端部が保護フィルムで覆われているため、ロール状に巻き取った際に、連結部の下に巻かれる薄ガラスが、連結部の段差による負荷を受け難く、該薄ガラスの破損が防止される。切断後、装置上に残った靱性フィルム20’は次に処理するロールに連結してもよい。このようにすれば、通紙の作業性がよい。また、靭性フィルムを切断せずに、薄ガラス長尺体100のすべてを処理装置に通過させてもよい(図2(c)’、(d))。本発明の薄ガラス長尺体は、最後方にも靱性フィルムを備えるため、該長尺体のすべてを処理装置に通過させることができ、作業性に優れ、かつ、製造ロスが低減される。
【0013】
本発明の薄ガラス長尺体は、長さ方向の両端に靱性フィルムから構成されるハンドリング部を備えるため、上記のとおり、加工または処理の開始段階および終了段階の両方において、薄ガラスの破損が防止され得る。さらに、本発明の薄ガラス長尺体は、長さ方向の両端に靱性フィルムを備えるため、1つの工程が終了した後、該工程終了後のロールをそのまま次工程に供することができ、作業性に優れる。次工程においても、加工または処理の開始段階および終了段階の両方において、薄ガラスの破損が防止され得る。
【0014】
本発明の薄ガラス長尺体は、長さ方向両端に上記薄ガラスが連結された靭性フィルムを備えていてもよい。すなわち、本発明の薄ガラス長尺体は、ハンドリング部(靭性フィルム)/本体部(薄ガラス)/ハンドリング部(靭性フィルム)/本体部(薄ガラス)/ハンドリング部(靭性フィルム)というように、ハンドリング部(靭性フィルム)/本体部(薄ガラス)を繰り返し単位として長さ方向に連続する連続部分を含み得る。このように連続部分を含む場合も、薄ガラス長尺体の長さ方向両端部は、ハンドリング部(靭性フィルム)から構成される。また、薄ガラスと靭性フィルムとの連結部は、各々、保護フィルムで保護され得る。上記のように連続部分を含んでいれば、複数あるハンドリング部(靭性フィルム)を切断して、薄ガラス長尺体を分割することができる。上記繰り返し単位の数は、所望の分割数に応じて設定することができる。上記繰り返し単位の数は、例えば、2〜30に設定され得る。
【0015】
<連結部の構成および保護フィルム>
図1に示すように、薄ガラス長尺体100は、薄ガラス10と靭性フィルム20、20’とが積層して形成される連結部A、A’を有し、薄ガラス10の連結部側の最端部1、1’は保護フィルム30、30’により覆われている。薄ガラスと靭性フィルムとは、任意の適切な粘着剤または接着剤を介して連結されていてもよく、薄ガラスおよび靭性フィルムのそれぞれの端部を任意の適切な粘着テープまたは両面テープにより固定して連結されていてもよい。保護フィルムは、任意の適切な粘着剤または接着剤を介して薄ガラスおよび靭性フィルムに貼着されていてもよく、任意の適切な粘着テープまたは両面テープにより貼着されていてもよい。また、任意の適切な粘着剤層または接着剤層を有する保護フィルムにより、薄ガラスと靭性フィルムとを連結してもよい。粘着剤層または接着剤層を有する保護フィルムを用いれば、段差の少ない薄ガラス長尺体を得ることができる。
【0016】
上記のように、薄ガラスの連結部側の最端部が保護フィルムにより覆われていること、すなわち、連結部に生じる段差が保護フィルムにより覆われていることにより、薄ガラス長尺体を巻き取った際の薄ガラスにかかる負荷を低減することができ、薄ガラスの破損を防止することができる。また、仮に、連結部において薄ガラスが割れた場合にも、該薄ガラスの飛散が防止され、製品へのカレットの付着が防止される。さらに、加工・処理装置において加工ロールを通過する際に、薄ガラスと靭性フィルムとの連結が外れることを防止し得る。
【0017】
連結部A、A’の長さa、a’は、好ましくは20mm〜2000mmであり、より好ましくは100mm〜2000mmであり、より好ましくは150mm〜2000mmであり、さらに好ましくは150mm〜1000mmであり、特に好ましくは300mm〜1000mmである。1つの実施形態においては、連結部の長さは、薄ガラス10の幅bに応じて設定され得る。連結部の長さaと薄ガラスの幅bとは、0.01b≦a≦bの関係を満足することが好ましく、0.05b≦a≦bの関係を満足することがより好ましく、0.1b≦a≦bの関係を満足することがさらに好ましく、0.3b≦a≦bの関係を満足することが特に好ましい。連結部Aと連結部A’とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。
【0018】
薄ガラス10の長さ方向の中心軸xと靱性フィルム20、20’の長さ方向の中心軸y、y’との交差角は、好ましくは5°以下であり、より好ましくは3°以下であり、さらに好ましくは1°以下であり、特に好ましくは図示例のように0°である。該交差角が5°より大きい場合、薄ガラスをロール・ツー・ロールプロセスにより処理または加工する際に、薄ガラスの走行が直進性を欠き、加工精度が低下するおそれがある。また、巻き取りにズレおよびシワが発生しやすく、ズレまたはシワを起因として薄ガラスが破損するおそれがある。
【0019】
保護フィルム30、30’の長さc、c’は、好ましくは30mm〜5000mmであり、より好ましくは100mm〜5000mmであり、さらに好ましくは180mm〜4000mmであり、さらに好ましくは300mm〜3000mmである。1つの実施形態においては、保護フィルムの長さは、薄ガラス10の幅bに応じて設定され得る。保護フィルムの長さは、薄ガラスの幅に対して、好ましくは3%以上であり、より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは30%〜500%であり、さらに好ましくは50%〜300%であり、特に好ましくは90%〜300%であり、最も好ましくは100%〜300%である。保護フィルム30と保護フィルム30’とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。
【0020】
好ましくは、保護フィルム30、30’は、少なくとも連結部A、A’の全体を覆う。保護フィルムが連結部全体を覆っていれば、薄ガラスを保護する効果がより顕著となる。
【0021】
好ましくは、保護フィルム30、30’は、薄ガラス10の連結部側の最端部1、1’から薄ガラス長尺体100の長さ方向の外側に向けて延出する延出部B、B’を有する。延出部B、B’は、靭性フィルム20、20’を覆う。保護フィルムの延出部の長さd、d’は、好ましくは10mm〜4500mmであり、より好ましくは100mm〜4500mmであり、さらに好ましくは150mm〜4500mmであり、さらに好ましくは200mm〜3000mmであり、特に好ましくは200mm〜1000mmである。1つの実施形態においては、保護フィルムの延出部の長さは、薄ガラス10の幅bに応じて設定され得る。保護フィルムの延出部の長さは、薄ガラスの幅に対して、好ましくは300%以下であり、より好ましくは3%〜300%であり、さらに好ましくは10%〜300%であり、特に好ましくは30%〜200%であり、最も好ましくは30%〜100%である。延出部Bと延出部B’とは、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。
【0022】
上記範囲の長さc、c’を有する保護フィルム30、30’を、上記範囲の長さd、d’で延出させることにより、薄ガラス長尺体100を加工または処理する際、連結部における薄ガラスと靭性フィルムとの物性変化の影響を緩和することができる。その結果、連結部が加工ロールをスムーズに通過することができ、薄ガラスの破損を防止することができる。
【0023】
図3は、本発明の別の好ましい実施形態による薄ガラス長尺体の概略断面図である。この薄ガラス長尺体200は、別の保護フィルム40をさらに備える。別の保護フィルム40は、薄ガラス長尺体200の靭性フィルム側の面において、靱性フィルム20の連結部側の最端部2を覆う。図3では、薄ガラスの一方の端部側を代表的に示しているが、別の保護フィルムは薄ガラスの長さ方向両端部に備えられ得る。すなわち、連結部は、長さ方向両端で同じ構成であってもよく、異なる構成であってもよい。別の保護フィルム40をさらに備えることにより、連結部において薄ガラスを保護する効果がより顕著となる。別の保護フィルム40は、保護フィルム30と同様に、任意の適切な粘着剤または接着剤を介して薄ガラス10および靭性フィルム20に貼着されていてもよく、任意の適切な粘着テープまたは両面テープにより貼着されていてもよい。また、別の保護フィルム40は、任意の適切な粘着剤層または接着剤層を有する保護フィルムであってもよい。好ましくは、別の保護フィルム40は、靭性フィルム20の連結部側の最端部2から薄ガラス長尺体200の長さ方向の内側に向けて延出する延出部Cを有する。該延出部Cは、薄ガラス10を覆う。別の保護フィルム40の長さc’’および別の保護フィルム40の延出部の長さd’’の好ましい範囲は、保護フィルム30の長さおよび保護フィルム30の延出部の長さと同様である。好ましくは、図示例のように、保護フィルム30と別の保護フィルム40とは、その長さおよび延出部の長さが同じ値に設定される。
【0024】
上記保護フィルムおよび別の保護フィルムを構成する材料としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な材料が選択され得る。保護フィルムおよび別の保護フィルムを構成する材料としては、例えば、樹脂、金属等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。金属としては、アルミニウム、ステンレス、銅、鉄、鉛等が挙げられる。なかでも、アルミニウムまたはステンレスが好ましく用いられる。保護フィルムと別の保護フィルムとは同じ材料から構成されていてもよく、異なる材料から構成されていてもよい。好ましくは、保護フィルムと別の保護フィルムとは同じ材料から構成され、かつ、同じ厚みを有する。このようにすれば、連結部における反りが低減され、薄ガラスの破損を防止することができる。
【0025】
上記保護フィルムの厚みは、薄ガラスおよび靭性フィルムの厚みより薄いことが好ましい。保護フィルムの厚みは、好ましくは1μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜40μmであり、さらに好ましくは10μm〜25μmである。保護フィルムの厚みがこのような範囲であれば、連結部において薄ガラスを保護する効果が高く、かつ、段差の小さい薄ガラス長尺体を得ることができる。なお、別の保護フィルムの厚みも、上記範囲であることが好ましい。
【0026】
上記保護フィルムは、ヤング率と厚みとの積が、好ましくは50GPa・μm〜1000GPa・μmであり、より好ましくは50GPa・μm〜500GPa・μmである。すなわち、厚い保護フィルムを用いる場合は、薄い保護フィルムを用いる場合よりも、ヤング率の低い材料を選択することが好ましい。このようにすれば、薄ガラスを保護する効果が高い薄ガラス長尺体を得ることができる。なお、別の保護フィルムのヤング率と厚みとの積も上記範囲であることが好ましい。本明細書において、ヤング率とは、幅方向10mmの短冊状の試料を23℃においてチャック間50mm、速度300mm/minで引張り、得られる応力−ひずみ(S−S)曲線において最大接線の傾きより算出される値をいう。
【0027】
上記保護フィルムは、ヤング率と厚みとの積が、薄ガラスにおけるヤング率と厚みとの積よりも、小さいことが好ましい。保護フィルムにおけるヤング率と厚みとの積(GPa・μm)は、薄ガラスにおけるヤング率と厚みとの積(GPa・μm)に対して、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは70%以下であり、特に好ましくは60%以下であり、最も好ましくは50%以下である。このような保護フィルムは、薄ガラスよりも曲げによる負荷がかかりにくいので好ましい。また、このように薄ガラスよりも曲がりやすい保護フィルムを用いれば、薄ガラスと靱性フィルムとの連結部において十分な可撓性が発現され、該連結部における薄ガラスの破損を防止することができる。なお、別の保護フィルムのヤング率と厚みとの積も上記範囲であることが好ましい。
【0028】
上記保護フィルムおよび別の保護フィルムの幅は、薄ガラスの幅に対して、好ましくは100%〜120%であり、より好ましくは100%〜110%であり、さらに好ましくは100%である。このような範囲であれば、薄ガラスを効果的に保護することができ、かつ、加工または処理の際にアライメントの調整がしやすくなる。
【0029】
<薄ガラス>
上記薄ガラスは、板状のものであれば、任意の適切なものが採用され得る。上記薄ガラスは、組成による分類によれば、例えば、ソーダライムガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。好ましくは、無アルカリガラスが用いられる。強度および化学的耐久性に優れるからである。上記薄ガラス長尺体が複数の薄ガラスを備える場合、複数の薄ガラスは同分類の薄ガラスであってもよく、異なる分類の薄ガラスであってもよい。
【0030】
上記薄ガラスの成形方法は、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記薄ガラスは、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃〜1600℃の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製される。上記薄ガラスの薄板成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形された薄ガラスは、薄板化したり、表面と端部との平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学研磨されてもよい。
【0031】
上記薄ガラスの厚みは、好ましくは10μm〜150μmであり、より好ましくは20μm〜120μmであり、さらに好ましくは30μm〜100μmである。薄ガラスの厚みが150μmより厚い場合、十分な可撓性を有さずロール状に巻き取ることが困難となるおそれがある。また、薄ガラスの厚みが10μm未満の場合、ハンドリングが困難となるおそれがある。上記薄ガラス長尺体が複数の薄ガラスを備える場合、複数の薄ガラスのサイズ(厚み、長さ)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
上記薄ガラスの幅は、好ましくは300mm以上であり、より好ましくは400mm以上である。一般に、広幅の薄ガラスは、ひねられた場合の負荷および自重たわみによる負荷が大きく、ハンドリングが難しい。本発明は、通常ではハンドリングが難しい広幅の薄ガラスの加工または処理において、その効果が顕著に発現される。上記薄ガラスの幅の上限は、好ましくは2000mm以下であり、より好ましくは1500mm以下であり、さらに好ましくは1200mm以下である。
【0033】
上記薄ガラスの長さは、所望の処理量または加工量に応じて、任意の適切な長さに設定され得る。例えば、長さ30m〜1000mの薄ガラスが用いられ得る。
【0034】
上記薄ガラスは、樹脂フィルム等で表面が保護されていてもよい。表面が保護されていることにより、搬送時に薄ガラスが破断した場合にも薄ガラス長尺体の搬送を止めることなく装置の運転を継続することができる。
【0035】
<靱性フィルム>
上記靱性フィルムを構成する材料としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な材料が選択され得る。靱性フィルムを構成する材料としては、薄ガラスよりも高靱性の材料が用いられ、例えば、樹脂、金属等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。金属としては、アルミニウム、ステンレス、銅、鉄、鉛等が挙げられる。なかでも、アルミニウムまたはステンレスが好ましく用いられる。本発明の薄ガラス長尺体は複数の靱性フィルムを備えるが、複数の靱性フィルムは同じ材料から構成されていてもよく、異なる材料から構成されていてもよい。
【0036】
上記靱性フィルムの破壊靭性値は、好ましくは2MPa・m1/2〜20MPa・m1/2であり、さらに好ましくは5MPa・m1/2〜20MPa・m1/2であり、特に好ましくは10MPa・m1/2〜20MPa・m1/2である。
【0037】
上記靱性フィルムの厚みは、好ましくは5μm〜500μmである。上記靱性フィルムが樹脂から構成される場合、該靱性フィルムの厚みは、より好ましくは10μm〜200μmであり、さらに好ましくは30μm〜100μmである。上記靱性フィルムが金属から構成される場合、該靱性フィルムの厚みは、より好ましくは5μm〜200μmであり、さらに好ましくは10μm〜100μmであり、特に好ましく30μm〜50μmである。厚みがこのような範囲の靱性フィルムは、重量の面から取り扱い性に優れ、切断しやすく、かつ、しわの発生および破断を防止できるので、本発明の薄ガラス長尺体の靱性フィルムとして好適である。複数の靭性フィルムのサイズ(厚み、長さ)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
上記靱性フィルムの材料および厚みは、薄ガラス長尺体を巻き取った際に発生する靱性フィルムの表面(凸側)の曲げ応力が、薄ガラスの表面(凸側)の曲げ応力よりも小さくなるように選択することが好ましい。より具体的には、靱性フィルムにおけるヤング率と厚みとの積が、薄ガラスにおけるヤング率と厚みとの積よりも、小さいことが好ましい。靱性フィルムにおけるヤング率と厚みとの積(GPa・μm)は、薄ガラスにおけるヤング率と厚みとの積(GPa・μm)に対して、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは70%以下であり、特に好ましくは60%以下であり、最も好ましくは50%以下である。このような靱性フィルムは、薄ガラスよりも曲げによる負荷がかかりにくいので好ましい。また、このように薄ガラスよりも曲がりやすい靱性フィルムを用いれば、薄ガラスと靱性フィルムとの連結部においても十分な可撓性が発現され、該連結部における薄ガラスの破損を防止することができる。
【0039】
上記靱性フィルムの幅は、好ましくは300mm〜2000mmであり、より好ましくは300mm〜1500mmであり、より好ましくは400mm〜1200mmである。上記薄ガラスの幅と、靱性フィルムの幅との差の絶対値は、好ましくは20mm以下であり、より好ましくは10mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下であり、特に好ましくは1mm以下であり、最も好ましくは0mmである。上記薄ガラスの幅と靱性フィルムの幅との差の絶対値が小さいほど、加工または処理の際にアライメントの調整がしやすくなる。
【0040】
上記靱性フィルムの幅方向の線膨張係数は、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm〜30ppmである。また、靱性フィルムの幅方向の線膨張係数は、薄ガラスの線膨張係数に対して、好ましくは1倍〜10倍であり、より好ましくは2倍〜10倍である。靱性フィルムの幅方向の線膨張係数がこのような範囲であれば、薄ガラス長尺体を熱処理工程に供した場合でも、上記薄ガラスの幅と靱性フィルムの幅との差の絶対値を小さく保つことができ、カールの発生および薄ガラスの破損を防止することができる。
【0041】
上記靱性フィルムの長さ方向の線膨張係数は、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm〜30ppmである。また、靱性フィルムの長さ方向の線膨張係数は、薄ガラスの線膨張係数に対して、好ましくは1倍〜10倍であり、より好ましくは2倍〜10倍である。靱性フィルムの長さ方向の線膨張係数がこのような範囲であれば、薄ガラス長尺体を熱処理工程に供した場合でも、薄ガラスの破損を防止することができる。
【0042】
上記靱性フィルムは、150℃で30分間加熱した際の幅方向の熱収縮率は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。靱性フィルムの熱収縮率がこのような範囲であれば、薄ガラス長尺体を熱処理工程に供した場合でも、上記薄ガラスの幅と靱性フィルムの幅との差の絶対値を小さく保つことができ、カールの発生および薄ガラスの破損を防止することができる。
【0043】
上記靱性フィルムは、150℃で30分間加熱した際の長さ方向の熱収縮率は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。靱性フィルムの熱収縮率がこのような範囲であれば、薄ガラス長尺体を熱処理工程に供した場合でも、薄ガラスの破損を防止することができる。
【0044】
上記のように線膨張係数および/または熱収縮率の小さい靱性フィルムは、例えば、延伸処理を施した樹脂を構成材料とすることにより得ることができる。例えば、靱性フィルムとしてPETフィルムを用いる場合、該PETフィルムとしては、横(TD)方向に2倍〜20倍、縦(MD)方向に2倍〜20倍の延伸がされたフィルムが好ましい。
【0045】
上記靱性フィルムの長さは、薄ガラス長尺体が供される装置の長さ(繰り出しから巻き取りまでの長さ)以上であることが好ましい。靱性フィルムの長さが装置の長さ以上であれば、加工または処理の開始段階および終了段階における作業性に優れる薄ガラス長尺体を得ることができる。靱性フィルムの長さは、例えば、5m〜200mである。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
長さ20m、幅300mmの薄ガラス(厚み:50μm)の両端に、靭性フィルムとして長さ20m、幅300mmのPETフィルム(厚み:100μm)を連結した。薄ガラスとPETフィルムとの連結部分においては、重なりが長さ100mmとなるようにして薄ガラスとPETフィルムとを粘着テープを介して貼り合わせた。さらに、保護フィルムおよび別の保護フィルムとして、長さ300mm、幅300mmの粘着剤層を備えるPETフィルム(総厚み:25μm)を用い、該保護フィルムおよび別の保護フィルムにより連結部の両面を覆った。該保護フィルムは、薄ガラスの連結部側の最端部から100mm延出するようにした。また、該別の保護フィルムは、靭性フィルムの連結部側の最端部から100mm延出するようにした。以上のようにして、保護フィルムおよび別の保護フィルムが、連結部および連結部近傍の薄ガラスおよび靭性フィルムを覆う薄ガラス長尺体を得た。
得られた薄ガラス長尺体を外径6インチの巻き芯に巻いて、繰り出しロールを得た。その後、該繰り出しロールから繰り出した薄ガラス長尺体を、3インチの径を有する加工ロールを備える処理装置に通紙し、再度、外径6インチの巻き芯に巻き取った。
このような処理工程の開始段階および終了段階において、薄ガラス長尺体はハンドリング性に優れていた。また、薄ガラスを破損させることなく、工程を完了することができた。
【0048】
[比較例1]
連結部を保護フィルムで覆わなかった以外は、実施例1と同様にして、薄ガラス長尺体を得た。得られた薄ガラス長尺体は、繰り出しロールを作製する際、外径6インチの巻き芯に巻き取る時点で、連結部において薄ガラスが割れた。
【0049】
[比較例2]
連結部を保護フィルムで覆わなかった以外は、実施例1と同様にして、薄ガラス長尺体を得た。得られた薄ガラス長尺体を外径6インチの巻き芯に巻いて、繰り出しロールを得た。このとき、連結部と連結部上部に巻かれる薄ガラスとの間にPETフィルム(厚み:25μm)を差し込んで薄ガラス長尺体を巻き取った。その後、該繰り出しロールから繰り出した薄ガラス長尺体を、3インチの径を有する加工ロールを備える処理装置に通紙した。該薄ガラス長尺体は、連結部が加工ロールを通過する際に薄ガラスが割れ、その後に通過する薄ガラスはカレットにより汚染された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の薄ガラス長尺体は、例えば、ディスプレイ用基板、センサカバー、素子カバー等のロール・ツー・ロールプロセスに供される薄ガラス材料として好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0051】
10 薄ガラス
20、20’ 靭性フィルム
30、30’ 保護フィルム
40 別の保護フィルム
100、200 薄ガラス長尺体
図1
図2
図3