(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073642
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】車軸塗装剥離装置
(51)【国際特許分類】
B08B 5/02 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
B08B5/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-234846(P2012-234846)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-83503(P2014-83503A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橋間 秀麿
(72)【発明者】
【氏名】藤本 真
(72)【発明者】
【氏名】黒田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】島田 篤司
(72)【発明者】
【氏名】朽木 太郎
(72)【発明者】
【氏名】保田 健治
【審査官】
横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−186230(JP,A)
【文献】
特開2006−316248(JP,A)
【文献】
特開2011−047124(JP,A)
【文献】
特開平10−156299(JP,A)
【文献】
特開2000−233162(JP,A)
【文献】
実開平07−031264(JP,U)
【文献】
特開平09−290187(JP,A)
【文献】
特開平01−109074(JP,A)
【文献】
実開昭62−087771(JP,U)
【文献】
特開2006−061791(JP,A)
【文献】
特開平05−068954(JP,A)
【文献】
特開2000−167496(JP,A)
【文献】
特開平04−122484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00− 1/04
B08B 5/00−13/00
B05D 3/12
B24C 3/10
B24C 3/32
B24C 9/00
B60S 3/00
B60S 5/00
B60B 17/00
B61F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の駆動輪軸が備える車軸の表面に施された塗装を剥離させる車軸塗装剥離装置であって、
前記車軸表面に施された塗装を剥離させるための剥離媒体を前記車軸表面のうち塗装が施された部分に向けて噴射する剥離媒体噴射手段と、
前記剥離媒体噴射手段によって剥離媒体が噴射されて前記車軸表面から塗装が剥離される際に飛散する飛散物を遮蔽する飛散物遮蔽手段と、
を備え、
前記飛散物遮蔽手段には、前記塗装部分を囲むことで前記飛散物を遮蔽する箱形状の飛散物遮蔽手段が含まれ、
前記箱形状の飛散物遮蔽手段は、上方が開口した箱形状の下部と、前記下部における開口した部分を開閉可能な蓋状の上部と、を備え、
前記箱形状の飛散物遮蔽手段は、対向する両側面のそれぞれに、前記車軸を挿通可能な円形の開口部を備え、
前記円形の開口部は、前記下部の側面における上端に形成された半円形状の下部側開口部と、前記上部の側面における下端に形成された半円形状の上部側開口部とにより構成され、
前記箱形状の飛散物遮蔽手段を昇降させる昇降手段を備えることを特徴とする車軸塗装剥離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車軸塗装剥離装置において、
前記飛散物遮蔽手段には、前記塗装部分と前記車軸に取り付けられた構造物との間に配置されて前記飛散物を遮蔽する構成が含まれることを特徴とする車軸塗装剥離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車軸塗装剥離装置において、
前記剥離媒体噴射手段は、前記剥離媒体として重曹を前記塗装部分に向けて噴射することを特徴とする車軸塗装剥離装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車軸塗装剥離装置において、
さらに、前記車軸表面を洗浄するための洗浄媒体を前記塗装部分に向けて噴射する洗浄媒体噴射手段を備え、
前記飛散物遮蔽手段は、前記洗浄媒体噴射手段によって噴射されて前記車軸表面を洗浄した後に飛散した前記洗浄媒体を前記飛散物として遮蔽すること
を特徴とする車軸塗装剥離装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車軸塗装剥離装置において、
前記飛散物遮蔽手段によって遮蔽された飛散物を集めて一時貯留する飛散物貯留手段を備えることを特徴とする車軸塗装剥離装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車軸塗装剥離装置において、
前記飛散物貯留手段によって貯留された飛散物を移送することで飛散物の流れを発生させる飛散物移送手段を備えることを特徴とする車軸塗装剥離装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の車軸塗装剥離装置において、
前記飛散物貯留手段によって貯留された飛散物に前記飛散物中の剥離媒体を溶解するための溶媒を注入することで飛散物の流れを発生させる溶媒注入手段を備えることを特徴とする車軸塗装剥離装置。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか1項に記載の車軸塗装剥離装置において、
前記飛散物から塗装成分を分離する塗装成分分離手段を備えることを特徴とする車軸塗装剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の駆動輪軸が備える車軸の表面に施された塗装を剥離媒体の噴射によって剥離させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の検査において、駆動輪軸の車軸表面を目視確認するために、車軸表面に施された塗装を剥離させる工程がある。
そのための技術として、例えば特許文献1には、鉄道車両の台車を処理室内に搬送して、処理室内においてノズルから噴射される研掃材を含んだ噴射流によって清浄処理を施す技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、線路上を走行する車両に洗浄粒子を噴射する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−144327号公報
【特許文献2】特開2006−61791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記技術では、駆動輪軸の車軸に取り付けられた減速機などの構造物の内部に、車軸表面から剥離した塗装や剥離媒体などが入り込むおそれがある。検査時に駆動輪軸から上記構造物を取り外す場合には解体後に構造物の内部に入り込んだ塗装や剥離媒体などを洗い流せばよいが、駆動輪軸から構造物を取り外さずに検査を行う場合には構造物の内部に入り込んだ塗装や剥離媒体などが残ったままとなって好ましくない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、鉄道車両の駆動輪軸が備える車軸の表面に施された塗装を剥離媒体の噴射によって剥離させた際に、剥離した塗装や剥離媒体などから車軸に取り付けられた減速機などの構造物を保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る車軸塗装剥離装置は、鉄道車両の駆動輪軸が備える車軸の表面に施された塗装を剥離させる車軸塗装剥離装置であって、前記車軸表面に施された塗装を剥離させるための剥離媒体を前記車軸表面のうち塗装が施された部分に向けて噴射する剥離媒体噴射手段と、前記剥離媒体噴射手段によって剥離媒体が噴射されて前記車軸表面から塗装が剥離される際に飛散する飛散物を遮蔽する飛散物遮蔽手段と、を備え
、前記飛散物遮蔽手段には、前記塗装部分を囲むことで前記飛散物を遮蔽する箱形状の飛散物遮蔽手段が含まれ、前記箱形状の飛散物遮蔽手段は、上方が開口した箱形状の下部と、前記下部における開口した部分を開閉可能な蓋状の上部と、を備え、前記箱形状の飛散物遮蔽手段は、対向する両側面のそれぞれに、前記車軸を挿通可能な円形の開口部を備え、前記円形の開口部は、前記下部の側面における上端に形成された半円形状の下部側開口部と、前記上部の側面における下端に形成された半円形状の上部側開口部とにより構成され、前記箱形状の飛散物遮蔽手段を昇降させる昇降手段を備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、飛散物遮蔽手段が、剥離媒体噴射手段によって剥離媒体が噴射されて車軸表面から塗装が剥離される際に飛散する飛散物を遮蔽するので、車軸に取り付けられている減速機などの構造物の内部に飛散物が入り込まない。
【0009】
このことにより、鉄道車両の駆動輪軸が備える車軸の表面に施された塗装を剥離媒体の噴射によって剥離させた際に、剥離した塗装や剥離媒体などから車軸に取り付けられた減速機などの構造物を保護することができる。
【0010】
また、本発明の車軸塗装剥離装置によれば、駆動輪軸から構造物を取り外さずに検査を行う場合にも、車軸表面の塗装を剥離させることが可能となる。
また、本発明の車軸塗装剥離装置によれば、車軸表面の塗装を施した部分のみに対して剥離媒体を噴射させればよいので、作業時間が短縮されるなど作業効率が向上するとともに、剥離媒体の使用量およびそのコストを低減することができる。また、装置を小型化するとともに、剥離媒体噴射手段としての噴射ノズルを作業員が手に取って作業するように構成することも可能となる。
【0011】
請求項
1に係る車軸塗装剥離装置
において、前記飛散物遮蔽手段には、前記塗装部分を囲むことで前記飛散物を遮蔽する構成が含まれることを特徴とする。
【0012】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、飛散物を効果的に遮蔽することができる。
請求項
2に係る車軸塗装剥離装置は、請求項1
に記載の車軸塗装剥離装置において、前記飛散物遮蔽手段には、前記塗装部分と前記車軸に取り付けられた構造物との間に配置されて前記飛散物を遮蔽する構成が含まれることを特徴とする。
【0013】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、飛散物を効果的に遮蔽することができる。
請求項
3に係る車軸塗装剥離装置は、請求項1
または請求項
2に記載の車軸塗装剥離装置において、前記剥離媒体噴射手段は、前記剥離媒体として重曹を前記塗装部分に向けて噴射することを特徴とする。
【0014】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、車軸表面から塗装をより有効に剥離することができる。また、重曹は液体に溶解しやすく、分別廃棄に有利である。
請求項
4に係る車軸塗装剥離装置は、請求項1〜請求項
3の何れか1項に記載の車軸塗装剥離装置において、さらに、前記車軸表面を洗浄するための洗浄媒体を前記塗装部分に向けて噴射する洗浄媒体噴射手段を備え、前記飛散物遮蔽手段は、前記洗浄媒体噴射手段によって噴射されて前記車軸表面を洗浄した後に飛散した前記洗浄媒体を前記飛散物として遮蔽することを特徴とする。
【0015】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、塗装を剥離した後の車軸表面を洗浄することができる。
請求項
5に係る車軸塗装剥離装置は、請求項1〜請求項
4の何れか1項に記載の車軸塗装剥離装置において、前記飛散物遮蔽手段によって遮蔽された飛散物を集めて一時貯留する飛散物貯留手段を備えることを特徴とする。
【0016】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、飛散物の再利用や廃棄が容易となる。
請求項
6に係る車軸塗装剥離装置は、請求項
5に記載の車軸塗装剥離装置において、前記飛散物貯留手段によって貯留された飛散物を移送することで飛散物の流れを発生させる飛散物移送手段を備えることを特徴とする。
【0017】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、飛散物の流れを発生させることで、飛散物中の剥離媒体が飛散物中の液体成分に溶解しやすくなる。特に、剥離媒体が重曹である場合には重曹が飛散物中の液体成分に効果的に溶解し、雑排水として処理することができる。
【0018】
請求項
7に係る車軸塗装剥離装置は、請求項
5または請求項
6に記載の車軸塗装剥離装置において、前記飛散物貯留手段によって貯留された飛散物に前記飛散物中の剥離媒体を溶解するための溶媒を注入することで飛散物の流れを発生させる溶媒注入手段を備えることを特徴とする。
【0019】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、飛散物中の剥離媒体が溶媒に溶解するとともに、飛散物の流れを発生させることで、飛散物中の剥離媒体が飛散物中の液体成分に溶解しやすくなる。特に、剥離媒体が重曹である場合には重曹が飛散物中の液体成分および溶媒に効果的に溶解し、雑排水として処理することができる。
【0020】
請求項
8に係る車軸塗装剥離装置は、請求項
5〜請求項
7の何れか1項に記載の車軸塗装剥離装置において、前記飛散物から塗装成分を分離する塗装成分分離手段を備えることを特徴とする。
【0021】
このように構成された本発明の車軸塗装剥離装置によれば、飛散物から塗装成分を分離することにより、分別廃棄が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の車軸塗装剥離装置1の全体構成図
【
図2】本実施形態のブラストカバー21の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。なお、本発明は下記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
[1.車軸塗装剥離装置1の構成の説明]
図1に示す車軸塗装剥離装置1は、例えば台検庫2内に設置され、鉄道車両の駆動輪軸3が備える車軸4の表面に施された塗装を剥離させる装置である。
【0024】
この車軸塗装剥離装置1は、重曹ブラストブース10と、ブラスト装置20と、排水機構30と、を備える。以下、順に説明する。
[1.1.重曹ブラストブース10の構成の説明]
重曹ブラストブース10は、台検庫2内のピット11の周囲を壁面で囲うとともに上方を天井面で覆った構造体である。また、重曹ブラストブース10の壁面には、重曹ブラストブース10内に駆動輪軸3を搬入するための開閉可能な搬入口(図示省略)および重曹ブラストブース10内に搬入された駆動輪軸3を搬出するための開閉可能な搬出口(図示省略)が設けられている。
【0025】
また、重曹ブラストブース10内には、長尺状の一対の搬送レール12が、搬入口を経由して外部から導入されるとともにピット11上方を経由して搬出口から外部に導出される経路で設置されている。したがって、本実施形態では、駆動輪軸3を搬送レール12上を自走させながら、搬入口から重曹ブラストブース10内に入った後にピット11を経由して搬出口から重曹ブラストブース10の外部に出ることになる。
【0026】
また、重曹ブラストブース10の壁面には排気装置13が設置されており、この排気装置13が、重曹ブラストブース10内の空気を重曹ブラストブース10の外部(本実施形態では屋外)に排出するようになっている。
【0027】
また、重曹ブラストブース10の内部(ピット11の内部)には、搬送レール12上の駆動輪軸3の車輪4をその場で回転させるための車軸回転装置14が設置されている。
また、重曹ブラストブース10の内部には、後述する重曹噴射ノズル24に重曹の粉末(剥離媒体)を工場エアー(空気)とともに供給する重曹タンク15が設置されている。
【0028】
[1.2.ブラスト装置20の構成の説明]
ブラスト装置20は、飛散物遮蔽手段としてのブラストカバー21と、昇降装置22と、飛散物遮蔽手段としてのGK遮蔽板23と、剥離媒体噴射手段としての重曹噴射ノズル24と、洗浄媒体噴射手段としての工水噴射ノズル25と、から構成される。
【0029】
ブラストカバー21は、
図2に示すように、箱形状に形成されており、上部21aが蝶番にて下部21bに軸支されて蓋状に開閉可能になっている。また、ブラストカバー21の左右の壁面には、車軸4を挿通可能な円形の開口部21c,21cがそれぞれ形成されている。この開口部21c,21cは、上部21a側の半円形状の開口部21d,21dと下部21b側の半円形状の開口部21e,21eとによって構成される。また、ブラストカバー21の前の壁面には、横長の開口部21fが形成されており、この開口部21fから重曹噴射ノズル24および工水噴射ノズル25を差し入れることができるようになっている。また、ブラストカバー21の天井面21gはアクリル板が嵌め込まれて半透明になっており、この天井面21gから内部を視認可能となっている。また、ブラストカバー21の背面下部には横長の排出口21hが形成されており、この排出口21hから飛散物が排出される。排出口21hには筒状のフード(図示省略)が取り付けられており、排出口21hから排出された飛散物は、このフードを経由して排水パン31に誘導される。
【0030】
以上のように構成されたブラストカバー21は、ピット11内に設置されており、同じくピット11内に設置された昇降装置22によって昇降可能になっている。
そして、ブラストカバー21は、開口部21c,21cに車軸4を挿通させることで、車軸4の塗装が施された部分(塗装部分)を内包して、飛散物を遮断する機能を有する。
【0031】
図1に戻り、GK遮蔽板23は、円盤状に形成されている。また、GK遮蔽板23には、車軸4を挿通可能な円形の開口部(図示省略)が形成されている。この開口部は、上部側の半円形状の開口部と下部側の半円形状の開口部とによって構成される。そして、GK遮蔽板23は、開口部に車軸4を挿通させることで車軸4に取り付けられて、飛散物を遮断する機能を有する。
【0032】
重曹噴射ノズル24は、重曹タンク15から供給される重曹の粉末および工場エアーを噴射可能に構成されている。そして、重曹噴射ノズル24は、ブラストカバー21の開口部21fから、重曹の粉末および工場エアーを車軸4に向けて噴射するのに用いられる。
【0033】
工水噴射ノズル25は、工水ラインから供給される工水(工業用水)を噴射可能に構成されている。そして、工水噴射ノズル25は、ブラストカバー21の開口部21fから、工水を車軸4に向けて噴射するのに用いられる。
【0034】
[1.3.排水機構30の構成の説明]
排水機構30は、飛散物貯留手段としての排水パン31と、溶媒注入手段としての水流ノズル32と、飛散物移送手段としての排水路34と、塗装成分分離手段としての排水升35と、排水ポンプ36と、塗装成分分離手段としての濾過槽37と、排水タンク38と、排水ポンプ39と、雑排水溝40と、から構成される。
【0035】
まず、排水パン31は、ブラストカバー21の下方に配置されて、落下する飛散物を回収して貯留するのに用いられる。また、水流ノズル32は、排水パン31内に純水(溶媒)を供給して水流を作るとともに、複数のノズルを配置し、重曹の堆積を防止する。複数のノズルを配置することで、水流を分散して発生させて重曹の溶解を促進し、効果的に重曹の堆積を防止することができる。また、排水路34は、排水パン31と排水タンク38とを接続する通路であり、排水パン31中の液体を排水タンク38へ誘導する。また、排水升35は、排水路34の途中に設置されて、排水パン31から排水タンク38へ誘導される液体を一時貯留する。また、排水ポンプ36は、工水を排水升35に汲み上げる。また、濾過槽37は、排水路34の途中に設置されて、排水パン31から排水タンク38へ誘導される液体を濾過する。また、排水ポンプ39は、排水タンク38中の液体を雑排水溝40に汲み上げる。
【0036】
[2.車軸塗装剥離装置1の動作の説明]
次に、車軸塗装剥離装置1の動作を説明する。
まず、上部21aが開放した状態のブラストカバー21をピット11内に下降させておき、駆動輪軸3を車軸回転装置14まで搬送レール12上を自走させる。
【0037】
続いて、昇降装置22を作動させてブラストカバー21を上昇させ、上部21aを閉じる。このとき、上部21a側の半円形状の開口部21d,21dと下部21b側の半円形状の開口部21e,21eとが合わさって円形の開口部21c,21cとなり、開口部21c,21cには車軸4が内挿され、車軸4の塗装が施された部分(塗装部分)を覆う状態となる。
【0038】
また、車軸4にはGK遮蔽板23を取り付ける。具体的には、上部側の半円形状の開口部と下部側の半円形状の開口部とを合わせて、円形の開口部に車軸4が内挿された状態とする。
【0039】
続いて、車軸回転装置14を作動させ、駆動輪軸3の車輪4をその場で回転させる。
続いて、重曹噴射ノズル24および工水噴射ノズル25を、ブラストカバー21の開口部21fから差し入れ、重曹噴射ノズル24からは、重曹の粉末および工場エアーを車軸4に向けて噴射させるとともに、工水噴射ノズル25からは、工水を車軸4に向けて噴射させる。このとき、重曹噴射ノズル24から噴射された重曹粉末および工場エアーによって車軸4の表面に施された塗装が剥離されるとともに、工水噴射ノズル25から噴射された工水によって車軸4の表面が洗浄される。このとき飛散する飛散物には、車軸4の表面から剥離した塗装および汚れや、重曹粉末、工水などが含まれるが、飛散物は、ブラストカバー21によって遮蔽される。ブラストカバー21の開口部21cと車軸4との隙間から外部に漏れた飛散物については、GK遮蔽板23によって遮断されて、車軸4に取り付けられた減速機6などの構造物には到達しない。
【0040】
作業が終了したら、重曹噴射ノズル24による重曹および工場エアーの噴射を停止させるとともに工水噴射ノズル25による工水の噴射を停止させ、車軸回転装置14を停止させる。
【0041】
さらに、車軸4からGK遮蔽板23を取り外し、ブラストカバー21の上部21aを開放させるとともにブラストカバー21をピット11内に下降させる。そして、駆動輪軸3を搬送レール12上を自走させて車軸回転装置14から取り外す。
【0042】
一方、ブラストカバー21およびGK遮蔽板23によって遮蔽された飛散物は、下方の排水パン31に落下して一時貯留される。この排水パン31には水流ノズル32から純水が供給されて水流が作られており、排水パン31に貯留する液体中の重曹が溶解していく。
【0043】
続いて、排水パン31に貯留する飛散物を含む液体は、排水路34によって排水パン31から排水タンク38へ誘導される。その途中、排水升35では、排水ポンプ36によって工水が追加されるとともに、濾過槽37では濾過が行われる。このとき、排水升35では比重の重い塗料や汚れが沈殿して分離され、濾過槽37では塗料や汚れが濾過されて分離される。
【0044】
そして、排水タンク38に誘導された液体は、排水ポンプ39によって排水タンク38から雑排水溝40へ汲み上げられる。なお、雑排水溝40に入った液体は雑排水として処理される。
【0045】
[3.実施形態の効果]
(1)このように本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、ブラストカバー21およびGK遮蔽板23が、重曹噴射ノズル24によって重曹の粉末および工場エアーが噴射されて車軸4の表面から塗装が剥離される際に飛散する飛散物を遮蔽するので、車軸4に取り付けられている減速機6などの構造物の内部に飛散物が入り込まない。
【0046】
このことにより、鉄道車両の駆動輪軸3が備える車軸4の表面に施された塗装を重曹の粉末および工場エアーの噴射によって剥離させた際に、剥離した塗装や重曹の粉末などから車軸4に取り付けられた減速機6などの構造物を保護することができる。
【0047】
また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、駆動輪軸3から構造物を取り外さずに検査を行う場合にも、車軸4の表面の塗装を剥離させることが可能となる。
また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、車軸4の表面の塗装を施した部分のみに対して剥離媒体としての重曹の粉末を噴射させればよいので、作業時間が短縮されるなど作業効率が向上するとともに、重曹の粉末の使用量およびそのコストを低減することができる。また、装置を小型化するとともに、重曹噴射ノズル24を作業員が手に取って作業するように構成することも可能となる。
【0048】
(2)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、ブラストカバー21が、車軸4の表面の塗装が施された部分を囲むことで飛散物を遮蔽するので、飛散物を効果的に遮蔽することができる。
【0049】
(3)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、GK遮蔽板23が、車軸4の表面の塗装が施された部分と車軸4に取り付けられた構造物との間に配置されて飛散物を遮蔽するので、飛散物を効果的に遮蔽することができる。
【0050】
(4)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、剥離媒体として重曹の粉末を用いるので、車軸4の表面から塗装をより有効に剥離することができる。また、重曹は液体に溶解しやすく、分別廃棄に有利である。
【0051】
(5)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、工水噴射ノズル25が、ブラストカバー21の開口部21fから、工水を車軸4に向けて噴射するので、塗装を剥離した後の車軸4の表面を洗浄することができる。
【0052】
(6)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、排水パン31がブラストカバー21の下方に配置されて、落下する飛散物を回収して貯留するようになっているので、飛散物の再利用や廃棄が容易となる。
【0053】
(7)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、排水パン31と排水タンク38とを接続する通路である排水路34が、排水パン31中の液体を排水タンク38へ誘導し、排水パン31の飛散物を移送することで飛散物の流れを発生させるので、飛散物中の剥離媒体が飛散物中の液体成分に溶解しやすくなる。特に、剥離媒体が重曹である本実施形態のような場合には重曹が飛散物中の液体成分に効果的に溶解し、雑排水として処理することができる。
【0054】
(8)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、水流ノズル32が、排水パン31内に純水(溶媒)を供給して水流を作るので、飛散物中の剥離媒体が溶媒に溶解するとともに、飛散物の流れを発生させることで、飛散物中の剥離媒体が飛散物中の液体成分に溶解しやすくなる。本実施形態では、複数の水流ノズル32を配置することで、水流を分散して発生させて重曹の溶解を促進し、効果的に重曹の堆積を防止することができる。特に、剥離媒体が重曹である本実施形態のような場合には重曹が飛散物中の液体成分および溶媒に効果的に溶解し、雑排水として処理することができる。
【0055】
(9)また、本実施形態の車軸塗装剥離装置1によれば、排水升35が排水路34の途中に設置されて排水パン31から排水タンク38へ誘導される液体を一時貯留し、濾過槽37が排水路34の途中に設置されて排水パン31から排水タンク38へ誘導される液体を濾過するので、飛散物から塗装成分を分離することによって分別廃棄が容易となる。
【符号の説明】
【0056】
1…車軸塗装剥離装置、2…台検庫、3…駆動輪軸、4…車軸、5…車輪、6…減速機、10…重曹ブラストブース、11…ピット、12…搬送レール、13…排気装置、14…車軸回転装置、15…重曹タンク、20…ブラスト装置、21…ブラストカバー、21a…ブラストカバー上部、21b…ブラストカバー下部、21c,21d,21e,21f…開口部、21g…天井面、21h…排出口、22…昇降装置、23…GK遮蔽板、24…重曹噴射ノズル、25…工水噴射ノズル、30…排水機構、31…排水パン、32…水流ノズル、34…排水路、35…排水升、36,39…排水ポンプ、37…濾過槽、38…排水タンク、40…雑排水溝