特許第6073647号(P6073647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧 ▶ 日鉄住金テックスエンジ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6073647-レーザ式酸素濃度計 図000002
  • 特許6073647-レーザ式酸素濃度計 図000003
  • 特許6073647-レーザ式酸素濃度計 図000004
  • 特許6073647-レーザ式酸素濃度計 図000005
  • 特許6073647-レーザ式酸素濃度計 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073647
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】レーザ式酸素濃度計
(51)【国際特許分類】
   F27B 21/14 20060101AFI20170123BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20170123BHJP
   C22B 1/20 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   F27B21/14 B
   G01N21/3504
   C22B1/20 S
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-241319(P2012-241319)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-92296(P2014-92296A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】篠原 貴司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】藤上 和利
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 永雅
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−275239(JP,A)
【文献】 特開2010−007904(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02306131(EP,A1)
【文献】 特開2011−038877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 21/08
F27B 21/14
C22B 1/00−61/00
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機のウィンドボックスの相対する壁の上部に、光軸が焼結機のライン長手方向に対して直角になるように、発光器および受光器が設置されており、前記発光器からレーザ光を出射し、前記受光器で受光して光路中の酸素濃度を測定するレーザ式酸素濃度計において、
前記発光器及び前記受光器のシールガラス窓からウィンドボックスの内部に通じるガイド配管にエアー吸引管及びエアー吸引管開閉バルブを設置することを特徴とするレーザ式酸素濃度計。
【請求項2】
前記エアー吸引管が、前記シールガラス窓からウィンドボックスの内部に通じるガイド配管に、複数の本数で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ式酸素濃度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ式酸素濃度計に関する。特に、レーザ光の光路に用いられるガイド配管のダストによる閉塞が無いレーザ式酸素濃度計に関する
【背景技術】
【0002】
製鉄所の高炉は、コークス及び石炭を燃焼し、発生したCOガスにより鉄鉱石を還元して銑鉄を製造する。鉄鉱石としては、主に、粉鉄鉱石を焼成した焼結鉱が用いられる。
焼結鉱の製造方法としては、一般に、下方吸引型焼結機を用いた焼成方法が用いられ、次のようにして行われる。
【0003】
焼結原料は、主原料である鉄鉱石と、製鉄プロセスで発生する製鉄ダストなどの鉄含有原料と、焼結反応に必要となる石灰石および蛇紋岩などの副原料と、熱源としての粉コークス等の固体燃料とを配合して形成される。
【0004】
焼結原料は、パレット1内に装入され、原料充填層を形成した後、点火炉4で、その表面のコークス粉に点火されるとともに、焼結機下部に空気吸引することにより、コークス粉の燃焼点を下方に移動させる。
【0005】
燃焼熱により原料充填層の上層から下層にかけての焼結反応は順次進行し、パレット1が移動し排鉱部に到達するまでに焼結は完了する。パレット内の焼結ケーキ(塊)は、排鉱部から排出された後、破砕され、所定粒度の高炉用の焼結鉱が製造される。
【0006】
ここで、下方吸引型焼結機において、焼結原料充填層の上方より充填層に吸引された空気は、一般に、粉鉄鉱石の焼成に必要な粉コークスを燃焼させるために必要な量であるが、それ以上の量となる場合がある。この原因は、焼結機の漏風である。
即ち、パレット底面に装備されたグレートバー7の破損、隣り合うパレット間のサイドウォール8の連接部の隙間、さらにパレットシールバー6の磨耗などにより、密閉構造に隙間が生じ、原料充填層を経由しない、即ち、焼結の焼成に寄与しない無駄な空気(漏風)が大量にウィンドボックス2内に流れ込む。この漏風が多いと焼結鉱の製造にそれだけ無駄な動力が消費されることになり、経済的に大きな損失となるばかりではなく、漏風が多いパレットでは、焼結充填層の粉コークスを燃焼させる空気量が不足し、焼成不十分のまま排鉱部に到達し、焼結が完了してしまうため、歩留が低下してしまう。
【0007】
従来から、漏風を検知する方法として、排ガス中の酸素濃度を測定する方法がある。漏風の多いパレットは、粉コークスの燃焼に寄与しない空気が多いことから、排ガス中の酸素濃度を測定することにより、漏風が検知できる。
【0008】
漏風の多いパレットは、焼結機の補修時に新たなパレットに交換すればよい。しかし、漏風の検知は、焼結機の連続運転中に行うので、数多くあるパレット1のうち、漏風を検知したパレット1がどのパレット1であるかを特定する必要がある。
本願出願人は、レーザ式酸素濃度計により、パレットの磨耗等に起因する漏風を検知し、検知したパレットの位置をパレットの位置認識方法で認知することにより、漏風するパレットを特定する発明を公開した(特許文献1乃至特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−275239号公報
【特許文献2】特開2012−36476号公報
【特許文献3】特開2012−36477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1乃至特許文献3に記載の発明は、レーザ式酸素濃度計により、パレットの磨耗等に起因する漏風を検知し、パレットの位置を認識することにより、漏風するパレットを特定することができる。漏風するパレットを定期補修時に取り替え、漏風の少ない焼結機の操業が可能となる効果を奏する。
しかし、発光器9からレーザ光を出射し、受光器で受光して光路中の酸素濃度を測定するレーザ式酸素濃度計において、前記発光器及び前記受光器のシールガラス窓15からウィンドボックス2の内部に通じるガイド配管13が、ダストで閉塞し、酸素濃度の測定が不可能となる問題がある。
本発明は、レーザ式酸素濃度計のシールガラス窓からウィンドボックスの内部に通じるガイド配管13が、ダストで閉塞することの無いレーザ式酸素濃度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、燒結工程に用いられる排風機の負圧を利用すれば、前記ガイド配管13のダストによる閉塞を防止することができるという知見を得た。
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0012】
(1)焼結機のウィンドボックスの相対する壁の上部に、光軸が焼結機のライン長手方向に対して直角になるように、発光器および受光器が設置されており、前記発光器からレーザ光を出射し、前記受光器で受光して光路中の酸素濃度を測定するレーザ式酸素濃度計において、
前記発光器及び前記受光器のシールガラス窓からウィンドボックスの内部に通じるガイド配管にエアー吸引管及びエアー吸引管開閉バルブを設置することを特徴とするレーザ式酸素濃度計。
(2)前記エアー吸引管が、前記シールガラス窓からウィンドボックスの内部に通じるガイド配管に、複数の本数で設けられていることを特徴とする(1)に記載のレーザ式酸素濃度計。
【発明の効果】
【0013】
レーザ式酸素濃度計のシールガラス窓15からウィンドボックス2の内部に通じるガイド配管13が、ダストで閉塞することが無いレーザ式酸素濃度計を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るレーザ式酸素濃度計が用いられる焼結機を示し、(A)は平面図。(B)は、側面図である。
図2図1のC−C線から見た断面図である。
図3】レーザ式酸素濃度計の概略図である。
図4】レーザ式酸素濃度計のエアー吸引管の配管図である。
図5】パレットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明に係るレーザ式酸素濃度計が用いられる焼結機を示し、(A)は平面図。(B)は、側面図である。焼結機5は、長手方向に多数個のパレット1が連結され、長手方向に移動可能な一連のパレットPと、一連のパレットPの下方に固定して設けられた複数個のウインドボックス2からなる吸気手段とを具備する。各パレット1は、図5に示すように、底面にグレートバー7を並べ、グレートバー7を挟んで両側面に配置されるサイドウォール8の外側に、車輪11を備えている。図1(B)に示すように、一連のパレットPは先端と後端とが連接されており、エンドレスに焼結機5の筐体19内を回転する。各ウインドボックス2は、吸気管16を介してブロア21で減圧される。PPの回転中に、各パレット1に、原料供給ホッパー3からコークス粉を含む焼結原料層20が供給され、積載される。その焼結原料層20の表面が点火炉4で着火され、ウインドボックス2を介して吸気される。
【0016】
図2に、図1のC−C線から見た断面図を示す。焼結機5のライン長手方向(パレット1の移動方向)の、パレット1の直下に位置するウインドボックス2の側壁の最上部に、パレット1の幅方向に対向して、レーザ式酸素濃度計17の、レーザ光を発射する発光器9とレーザ光を検知する受光器10とを設置する。ウインドボックス2の側壁の上部に設置する理由は、パレット1からウインドボックス2に流入した漏風は、吸気管16に向かって下方に引きこまれていくにつれて拡散していくので、漏風箇所を特定するためには、できるだけパレット1に近い方が好ましいためである。この際、パレット1の幅方向での漏風検知感度を揃えるため、発光器9と受光器10を結ぶ方向に平行なレーザ光の光軸が、地上に対し水平で且つパレット1の底面に平行になるようにする。また、漏風しているパレット1の特定を容易とするため、光軸が焼結機5のライン長手方向に対して直角になるように、発光器9および受光器10を設置する。
【0017】
酸素など各分子は、特有の振動、回転を持っており、光が当たると特定の波長域で光エネルギーを吸収する。赤外線レーザー式酸素濃度計は、この原理を利用して、吸収された光エネルギーから酸素濃度を算出する装置であり、レーザーを発信する発光器9、レーザーの光エネルギーを受光する受光器10、吸収された光エネルギーから濃度を演算する、例えばパーソナルコンピュータ等からなるデータ処理装置18が接続される(図1(A))。
【0018】
図3に、レーザ式酸素濃度計17の配置の概略を示す。パレット1の車輪11が転がる両側の軌条12の架台12aとウインドボックス2の側壁2aの対向位置に貫通穴を設け、当該貫通穴それぞれにガイド配管13を通し、一方のガイド配管13の端部に発光器9、他方のガイド配管13の端部に受光器10を、それぞれフランジ14を介して接続する。発光器9の出射口と受光器10の受光口には、それぞれの光路に、保護用のシールガラス窓15が設けられている。
【0019】
ウインドボックス2の内部は、パレット1の底面にあるグレートバー7から落下する微粉原料が多く浮遊しており、ガイド配管13はダストにより、閉塞されやすい。本発明は、排ガス中の粉塵などによるガイド配管13の詰まり防止を目的として、発光器9及び受光器のシールガラス窓15からウィンドボックス2の内部に通じるガイド配管13の内部にブロア21の負圧を利用して、エアー吸引管22から空気を吸引する。燒結面積700m級の大型燒結機では、ブロアー負圧は‐18.6kPaに達し、ガイド配管13内に、空気を吸引するには、十分である。
【0020】
ガイド配管13内に、発光器9と受光器10のシールガラス窓15からウインドボックス2内部に向けて、パージガスとして空気又は窒素ガスの吹き込むことも考えられる。これに対し、本発明は、ブロアー負圧を利用するので、新たな動力を必要とせず、経済的である。
【0021】
図4に、レーザ式酸素濃度計17のエアー吸引管22の一例を示す。この例では、レーザ式酸素濃度計17は、4本のエアー吸引管22を有している。エアー吸引管22はダストにより、閉塞されやすい。そこで、ガイド配管13は、複数のエアー吸引管22を設けることが望ましい。
【0022】
エアー吸引管は、エアー吸引管開閉バルブ23を有し、ガイド配管13の閉塞を防止するため定期的に開放し、エアーを吸引する。この場合、バルブの開閉は、手動でも良いが、タイマーにより、開閉を実施することが好ましい。尚、ガイド配管13内にエアーを吸引する場合は、吸引エアーによりウインドボックス2の内部の酸素濃度は増加するので、エアーを吸引中の酸素濃度値は採用しない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
レーザ式酸素濃度計のシールガラス窓からウィンドボックスの内部に通じるガイド配管が、ダストで閉塞することが無いレーザ式酸素濃度計を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 パレット
2 ウインドボックス
2a ウインドボックスの側壁
3 原料供給ホッパー
4 点火炉
5 焼結機
6 パレットシールバー
7 グレートバー
8 サイドウォール
9 発光器
10 受光器
11 車輪
12 軌条
12a 軌条の架台
13 ガイド配管
14 フランジ
15 シールガラス窓
16 吸気管
17 レーザ式酸素濃度計
18 データ処理装置
19 筐体
20 焼結原料層
21 ブロア
22 エアー吸引管
23 エアー吸引管開閉バルブ
P 一連のパレット


図1
図2
図3
図4
図5