(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073676
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20170123BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20170123BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H01Q19/10
H01Q7/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-288769(P2012-288769)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-131232(P2014-131232A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石垣 智彦
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01054470(EP,A1)
【文献】
米国特許第02827628(US,A)
【文献】
米国特許第04038040(US,A)
【文献】
特開昭59−211303(JP,A)
【文献】
実開昭60−193704(JP,U)
【文献】
特開2012−010328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
H01Q 15/00− 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射器と反射器とを備え、前記反射器が、板面に複数の開口部を有する導電性の板状部材にて構成されたアンテナ装置であって、
前記板状部材の板面には、
前記放射器が送受信する電波の偏波面に平行な第1軸方向に、前記板状部材の寸法で決まる経路と、その経路に対し前記開口部を迂回する迂回路を加えた経路とが形成されて、各経路の長さに対応した波長の電波を反射するよう、前記放射器にて送受信される電波の偏波面に平行な第1軸に沿って複数の前記開口部を所定間隔で一列に配列してなる開口部群が、前記電波の偏波面に直交する第2軸方向に複数段形成されており、
しかも、前記複数段の開口部群は、それぞれ、前記第2軸方向から見て、当該開口部群を構成する開口部が、隣接する開口部群を構成する開口部の間に位置し、且つ、前記第1軸方向から見て、隣接する開口部群の開口部と相互に重なるように配置されており、
前記開口部は、前記第1軸方向に短く、前記第2軸方向に長い、菱形形状であることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射器と反射器とを備え、反射器が、板面に複数の開口部を有する導電性の板状部材にて構成されたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭で利用されるテレビ放送受信用のアンテナ装置として、放射器及び反射器を導電性の板状部材にて構成し、これらを対向させた状態でケース内に収納したものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
この種のアンテナ装置にて用いられる反射器は、導電性の板状部材の板面に、矩形の開口部を格子状に配置することにより構成される。
これは、反射器において、放射器が送受信する電波の偏波面に平行な第1軸方向に、板状部材の寸法で決まる経路と、その経路に対し開口部を迂回する迂回路を加えた経路とが形成されて、各経路の長さに対応した波長の電波を反射できるようにするためである。
【0004】
そして、この構成により、反射器にて反射可能な電波の周波数帯域幅を広げ、アンテナ装置を小型化しても、テレビ放送電波のような広帯域幅の電波を、一つのアンテナ装置に受信できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−48004号公報
【特許文献2】特開2012−10328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記反射器を用いて、アンテナ装置の動作利得を高めるには、上記第1軸方向に形成される経路の段数(換言すれば、第1軸方向と直交する第2軸方向に配置される開口部の段数)を増加するとよい。
【0007】
しかし、反射器を構成する板状部材の板面の大きさは、放射器の大きさに対応させる必要があるため、第2軸方向に開口部を増やして経路の段数を増加させるには限界がある。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、導電性の板状部材の板面に複数の開口部を形成することにより構成された反射器を有するアンテナ装置において、反射器を大型化することなく、開口部の配置を改良することで、アンテナ特性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされ
た本発明は、放射器と反射器とを備え、前記反射器が、板面に複数の開口部を有する導電性の板状部材にて構成されたアンテナ装置であって、
前記板状部材の板面には、
前記放射器が送受信する電波の偏波面に平行な第1軸方向に、前記板状部材の寸法で決まる経路と、その経路に対し前記開口部を迂回する迂回路を加えた経路とが形成されて、各経路の長さに対応した波長の電波を反射するよう、前記放射器にて送受信される電波の偏波面に平行な第1軸に沿って複数の前記開口部を所定間隔で一列に配列してなる開口部群が、前記電波の偏波面に直交する第2軸方向に複数段形成されており、
しかも、前記複数段の開口部群は、それぞれ、各開口部群を構成する開口部が、前記第2軸方向から見て、隣接する開口部群を構成する開口部の間に位置し、且つ、前記第1軸
方向から見て、隣接する開口部群の開口部と相互に重なるように配置され
ている。
【0009】
そして、前記開口部は、前記第1軸方向に短く、前記第2軸方向に長
い、菱形形状で
ある。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ装置によれば、反射器を構成する板状部材の板面には、放射器にて送受信される電波の偏波面に平行な第1軸に沿って複数の開口部を所定間隔で一列に配列してなる開口部群が、電波の偏波面に直交する第2軸方向に複数段形成されている。
【0011】
そして、その複数段の開口部群は、それぞれ、第2軸方向から見て、当該開口部群を構成する開口部が、隣接する開口部群を構成する開口部の間に位置し、且つ、第1軸方向から見て、隣接する開口部群の開口部と相互に重なるように配置されている。
【0012】
このため、本発明のアンテナ装置によれば、本発明の反射器と同じ大きさの板状部材に、矩形の開口部を格子状に配置した従来の反射器を用いた場合に比べ、板状部材に形成可能な開口部群の段数を増加させることができる。
【0013】
よって、本発明のアンテナ装置によれば、反射器において、第1軸方向に沿って隣接する開口部群間に形成される経路の数を増やし、動作利得等、アンテナ装置の特性を改善することができる。
【0014】
また、開口部は、第1軸方向に短く、第2軸方向に
長い、菱形形状である。
【0015】
つまり
、開口部を、第1軸方向に短く、第2軸方向に長い長尺形状にすれば、反射器を構成する板状部材の第1軸方向の長さに対し、各開口部群で第1軸方向に形成され且つ開口部を迂回する経路の長さをより長くすることができることから、反射器が反射可能な電波の帯域幅を広げ、より低周波領域まで所望の反射特性を実現できることになる。
【0016】
そして、その長尺形状の開口部を、菱形形状にすれば、開口部群を構成する開口部同士の間隔が狭くなっても、その間に、隣接する開口部群の開口部を配置できるようになる。
【0017】
このため、
本発明のアンテナ装置によれば、反射器を構成する板状部材に対し、第1軸方向に配列可能な開口部の数(つまり開口部群を構成する開口部の数)を増加させて、各開口部を迂回する経路の長さを長くすることができ、延いては、反射器が反射可能な電波の帯域幅を広げて、アンテナ装置の広帯域化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態のアンテナ装置の外観を表す説明図である。
【
図2】実施形態のアンテナ装置を構成する放射器及び反射器の構成を表す斜視図である。
【
図3】本発明の効果を確認するための実験に用いた反射器の構成を表す説明図である。
【
図4】
図3に示す反射器を用いた実験により得られたアンテナ特性を表す説明図である。
【
図5】反射器に設ける開口部の変形例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、本実施形態のアンテナ装置2は、合成樹脂性のケース10内に、一対の放射器20A、20Bを、間隔を開けて配置することにより、スタック型の放射器を構成し、更に、各放射器20A、20Bの後方に、反射器50A、50Bを配置することにより構成されている。
【0020】
ケース10は、ケース10の底部12から突出された支持片14を、取付対象となる壁面100に固定された固定片16に嵌合し、その嵌合部分をボルトとナットからなる固定具18を利用して、鉛直方向の中心軸回りに回動可能に固定することで、取付対象となる壁面100に固定される。
【0021】
このため、ケース10は、固定具18の中心軸回りに回動可能となり、各放射器20A、20Bの放射方向を水平方向に保持した状態で、所望方向に角度調整することができる。
【0022】
なお、
図1において、(a)は、取付対象となる壁面100に固定されたアンテナ装置2を横方向から見た側面図であり、(b)は、そのアンテナ装置2を上方から見た平面図である。
【0023】
次に、放射器20A、20B、反射器50A、50Bは、
図2に示すように構成されている。
すなわち、放射器20A、20Bは、それぞれ、導電性を有する矩形の金属板に、一対のループ22、24を構成するための開口孔26、28、及び、この開口孔26、28同士を接続する連結孔30からなる孔を形成することにより構成されている。
【0024】
また、放射器20A、20Bにおいて、連結孔30を挟む両側には、それぞれ、導電性の接続部材42、44を接続するための給電点32、34が形成されている。
接続部材42、44は、放射器20Aと20Bとを各開口孔26、28が一列に並ぶように所定の間隔を開けてケース10内に配置することでスタック型の放射器を構成した際に、各放射器20A、20Bの給電点32同士及び給電点34同士を互いに接続するためのものである。
【0025】
そして、接続部材42、44の中間点は、各放射器20A、20B共通の給電点46、48として、給電用のケーブル(図示せず)を接続するのに用いられる。
次に、反射器50A、50Bは、導電性を有する矩形の金属板をコの字状に折り曲げ加工することで、各放射器20A、20Bの板面に対向するように配置される反射器本体52と、その反射器本体52の左右端縁に配置される側壁部54、56とから構成されている。
【0026】
そして、反射器50A、50Bにおいて、反射器本体52は、放射器20A、20Bの板面全体に対向可能な大きさになっており、側壁部54、56は、反射器本体52に対し、板面が、放射器20A、20Bが送受信する電波の偏波面と直交するように設けられている。
【0027】
なお、以下の説明では、反射器50A、50Bにおいて、放射器20A、20Bが送受信する電波の偏波面に平行な第1軸をX軸、その偏波面に直交する第2軸をY軸、という(
図2参照)。
【0028】
次に、反射器本体52には、その板面を貫通するように、Y軸方向に長い菱形形状の開口部58が多数形成されている。
つまり、反射器本体52には、X軸に沿って複数の開口部58を所定間隔で一列に配列した開口部群が、Y軸方向に複数段形成されている。
【0029】
また、その複数段の開口部群は、それぞれ、各開口部群を構成する開口部が、Y軸方向から見て、隣接する開口部群を構成する開口部の間に位置し、且つ、X軸方向から見て、隣接する開口部群の開口部と相互に重なるように配置されている。
【0030】
従って、本実施形態のアンテナ装置2によれば、反射器本体52の板面に対し、従来のように矩形の開口部を格子状に配置した場合に比べ、反射器本体52の板面に形成可能な開口部群の段数を増加させることができる。
【0031】
また特に、本実施形態では、開口部58を、Y軸方向に長い菱形形状にしているので、各開口部群でX軸方向に形成され、且つ、各開口部58を迂回する経路を、X軸方向に真っ直ぐ伸びる経路に比べて、より長くすることができる。
【0032】
また、開口部58を矩形形状にした場合に比べて、X軸方向に配置される開口部58の間隔(延いては、X軸方向に配置可能な開口部58の数)を増加させることができ、この結果、各開口部群でX軸方向に形成され、且つ、各開口部58を迂回する経路を、より長くすることができる。
【0033】
従って、本実施形態のアンテナ装置2によれば、反射器50A、50Bが反射可能な電波の周波数帯域を広げ、特に、アンテナ装置の低域側の特性(具体的は動作利得)を改善することができる。
【0034】
次にこの効果を裏付けるために行った実験について説明する。
この実験では、本発明を適用した反射器として、
図3(a)に示すように、開口部58を菱形形状にして、開口部群同士がY軸方向で重なるように、開口部58が5列の開口部群を3段、開口部58が6列の開口部群を2段、交互に配置した評価用反射器を作製した。
【0035】
また、従来の反射器として、
図3(b)に示すように、矩形形状の開口部58を5列3段、格子状に配置した比較用反射器Aと、菱形形状の開口部58を5列3段、格子状に配置した比較用反射器Bとを作製した。
【0036】
なお、評価用反射器及び比較用反射器A,Bにおいて、各開口部58のX軸方向の長さは10mm、Y軸方向の長さは95mmであり、反射器本体52の大きさは、X軸方向の長さが120mm、Y軸方向の長さが325mmである。
【0037】
また、図示しないが、側壁部54、56の反射器本体52の板面からの高さは、30mmである。
そして、この実験では、上記各反射器の前に実験用の放射器を配置することで、各反射器を使ったテレビ放送(UHF帯、周波数:470MHz〜770MHz)受信用のアンテナ装置を構成し、そのアンテナ特性として、動作利得とVSWRとを測定した。
【0038】
その測定結果は、
図4に示すようになり、本発明を適用した評価用反射器を用いた場合、比較用反射器A、Bを用いた場合に比べて、受信周波数帯域内で低域側のアンテナ特性(動作利得、VSWR)を改善でき、受信周波数全体域で所望の動作利得、VSWRを実現できることがわかった。
【0039】
以上、本発明の実施形態及び実験例について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様をとることができる。
【0040】
例えば、反射器50A、50Bに設ける開口部58は、必ずしも菱形形状にする必要はなく、例えば、
図5(a)に示すように、矩形形状にしてもよく、或いは、
図5(b)に示すように、楕円形状にしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、放射器20A、20Bには、導電性の金属板に2つの開口孔26、28を形成することにより作製される双ループ型の放射器(所謂スケルトンスロット放射器)を用いるものとして説明したが、放射器としては、ダイポール型であっても、他の方式の平面アンテナであってもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、反射器50A、50Bは、導電性の金属板に開口部58を設けたものとして説明したが、例えば、合成樹脂等からなる非導電性の板状部材に開口部58を設け、その表面に導電性部材(導電性塗料、金属箔等)を設けることにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
2…アンテナ装置、10…ケース、12…底部、14…支持片、16…固定片、18…固定具、20A,20B…放射器、22,24…ループ、26,28…開口孔、30…連結孔、32,34…給電点、42,44…接続部材、46,48…給電点、50A,50B…反射器、52…反射器本体、54,56…側壁部、58…開口部、100…壁面。