(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建物の部屋の壁と天井と床とに各々使用される複数種類の仕上材及び該仕上材の吸音率、該部屋に設置される複数種類の家具及び該家具の吸音力、許容される残響時間の上限値、並びに許容される定在波周波数の出現頻度を記憶した記憶手段と、
前記部屋の寸法が入力されると共に、前記部屋の壁、天井及び床の各々について前記記憶手段が記憶した仕上材の種類並びに前記記憶手段が記憶した家具の種類が選択される入力手段と、
前記入力手段によって前記部屋の壁、天井及び床の各々について選択された前記仕上材の吸音率と前記入力手段によって選択された前記家具の吸音力とを前記記憶手段を参照して取得し、該取得した吸音率及び吸音力並びに前記入力手段によって入力された前記部屋の寸法に基づいて前記部屋の残響時間及び前記部屋の定在波周波数を算出する解析手段と、
前記解析手段が算出した残響時間が前記記憶手段に記憶された前記許容される残響時間の上限値未満か否かを判定すると共に、前記解析手段が算出した定在波周波数の出現頻度を算出し、該算出した出現頻度が前記記憶手段に記憶された許容される定在波周波数の出現頻度未満か否かを判定する判定手段と、
前記解析手段が算出した結果及び前記判定手段が判定した結果を表示する表示手段と、
を備えた音場シミュレーション装置。
前記判定手段は、前記定在波周波数の出現頻度が前記許容される定在波周波数の出現頻度以上の場合に、前記部屋でブーミング及びこもり音が生じ得るとさらに判定する請求項1に記載の音場シミュレーション装置。
前記入力手段は、前記表示手段に前記解析手段が算出した結果及び前記判定手段が判定した結果が表示された後に、先に入力された部屋の寸法と異なる寸法の再入力と、前記部屋の壁、天井及び床の各々について先に選択された仕上材と異なる種類の仕上材の再選択と、先に選択された家具と異なる種類の家具の再選択と、前記部屋の開口部の有無の再入力とが可能で、
前記解析手段は、前記入力手段によって各々再選択された前記仕上材の吸音率及び前記家具の吸音力を前記記憶手段を参照して取得し、該取得した吸音率及び吸音力並びに前記入力手段によって再入力された前記部屋の寸法及び前記部屋の開口部の有無に基づいて前記部屋の残響時間、前記部屋の定在波周波数及び前記部屋のフラッターエコーの発生の有無を算出する請求項3に記載の音場シミュレーション装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、シミュレーションによって音圧レベルを算出するものの、シミュレーションの結果が人にとって許容できる水準か否かを考慮していなかった。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、シミュレーションの結果が人にとって許容できる水準か否かを判定することにより騒音低減の対策が可能な音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、建物の部屋の壁と天井と床とに各々使用される複数種類の仕上材及び該仕上材の吸音率、該部屋に設置される複数種類の家具及び該家具の吸音力、許容される残響時間の上限値、並びに許容される定在波周波数の出現頻度を記憶した記憶手段と、前記部屋の寸法が入力されると共に、前記部屋の壁、天井及び床の各々について前記記憶手段が記憶した仕上材の種類並びに前記記憶手段が記憶した家具の種類が選択される入力手段と、前記入力手段によって前記部屋の壁、天井及び床の各々について選択された前記仕上材の吸音率と前記入力手段によって選択された前記家具の吸音力とを前記記憶手段を参照して取得し、該取得した吸音率及び吸音力並びに前記入力手段によって入力された前記部屋の寸法に基づいて前記部屋の残響時間及び前記部屋の定在波周波数を算出する解析手段と、前記解析手段が算出した残響時間が前記記憶手段に記憶された前記許容される残響時間の上限値未満か否かを判定すると共に、前記解析手段が算出した定在波周波数の出現頻度を算出し、該算出した出現頻度が前記記憶手段に記憶された許容される定在波周波数の出現頻度未満か否かを判定する判定手段と、前記解析手段が算出した結果及び前記判定手段が判定した結果を表示する表示手段と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、部屋の寸法と、部屋の壁、天井及び床の各々に使用される仕上材の吸音率と、部屋に設置される家具の吸音力とから部屋の残響時間と部屋の定在波周波数を算出し、算出した残響時間が許容され得る上限値未満か否か、算出した定在波周波数の出現頻度が許容され得る出現頻度未満か否かを判定することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記判定手段は、前記定在波周波数の出現頻度が前記許容される定在波周波数の出現頻度以上の場合に、前記部屋でブーミング及びこもり音が生じ得るとさらに判定する。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、定在波周波数の出現頻度が許容される出現頻度以上の場合に、部屋でブーミング及びこもり音が生じ得ると判定することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記入力手段は、前記部屋の開口部の有無をさらに選択する入力が可能で、前記解析手段は、前記部屋の開口部の有無に基づいて前記部屋のフラッターエコーの発生の有無を算出する。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、部屋の開口部の有無によって、当該部屋でフラッターエコーが発生する可能性があるか否かを判定することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3に記載の発明において、前記入力手段は、前記表示手段に前記解析手段が算出した結果及び前記判定手段が判定した結果が表示された後に、先に入力された部屋の寸法と異なる寸法の再入力と、前記部屋の壁、天井及び床の各々について先に選択された仕上材と異なる種類の仕上材の再選択と、先に選択された家具と異なる種類の家具の再選択と、前記部屋の開口部の有無の再入力とが可能で、前記解析手段は、前記入力手段によって各々再選択された前記仕上材の吸音率及び前記家具の吸音力を前記記憶手段を参照して取得し、該取得した吸音率及び吸音力並びに前記入力手段によって再入力された前記部屋の寸法及び前記部屋の開口部の有無に基づいて前記部屋の残響時間、前記部屋の定在波周波数及び前記部屋のフラッターエコーの発生の有無を算出する。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、先の判定の場合とは異なる部屋の寸法、仕上材、家具及び部屋の開口部に基づいて、部屋の残響時間、部屋の定在波周波数及び部屋のフラッターエコーの発生の有無を再度算出することができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記記憶手段は、前記仕上材のコストをさらに記憶し、前記入力手段は、前記仕上材の種類が選択されるときに前記仕上材をコストが低い順に表示する。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、仕上材をコストが低い順に表示することができる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記表示手段は、前記入力手段によって選択された前記仕上材と前記家具とをさらに表示する。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、選択した仕上材と家具とを確認することができる。
【0019】
上記課題を解決するための請求項7の発明は、コンピュータを、入力手段によって部屋の壁、天井及び床の各々について選択された仕上材の吸音率と前記入力手段によって選択された前記家具の吸音力とを、前記仕上材に対応した吸音率及び前記家具に対応した吸音力を記憶した記憶手段を参照して取得し、該取得した吸音率及び吸音力並びに前記入力手段によって入力された前記部屋の寸法に基づいて前記部屋の残響時間及び前記部屋の定在波周波数を算出する解析手段、並びに前記解析手段が算出した残響時間が記憶手段に記憶された許容される残響時間の上限値未満か否かを判定すると共に、前記解析手段が算出した定在波周波数の出現頻度を算出し、該算出した出現頻度が前記記憶手段に記憶された許容される定在波周波数の出現頻度未満か否かを判定する判定手段として機能させる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、部屋の寸法と、部屋の壁、天井及び床の各々に使用される仕上材の吸音率と、部屋に設置される家具の吸音力とから部屋の残響時間と部屋の定在波周波数を算出し、算出した残響時間が許容され得る上限値未満か否か、定在波周波数の出現頻度が許容され得る出現頻度未満か否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の発明は、残響時間が許容され得る上限値未満か否か、定在波周波数の出現頻度が許容され得る出現頻度未満か否かを判定することにより、騒音低減の対策が可能になるという効果を有する。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、定在波周波数の出現頻度が許容される出現頻度以上の場合に、部屋でブーミング及びこもり音が生じ得ると判定することにより、騒音低減の対策が可能になるという効果を有する。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、部屋の開口部の有無に基づいて部屋のフラッターエコーの発生の有無を算出するにより、騒音低減の対策が可能になるという効果を有する。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、先の判定の場合とは異なる部屋の寸法、仕上材、家具及び部屋の開口部に基づいて、部屋の残響時間、部屋の定在波周波数及び部屋のフラッターエコーの発生の有無を再度算出することにより、騒音低減の対策が可能になるという効果を有する。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、仕上材をコストが低い順に表示することができるという効果を有する。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、選択した仕上材と家具とを確認することができるという効果を有する。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、残響時間が許容され得る上限値未満か否か、定在波周波数の出現頻度が許容され得る出現頻度未満か否かを判定することにより、騒音低減の対策が可能になるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける遮音性能の解析に係るフローチャートの一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける間取り及び寸法指定の画面の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける入力画面の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける演算結果の表示の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける入力項目の変更画面の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける間取り及び寸法再指定の画面の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける定在波周波数の算出結果の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける定在波周波数の算出結果の一例を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける定在波周波数の算出結果の一例を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける定在波周波数の算出結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る音場シミュレーション装置の構成を示す概略図である。音場シミュレーション装置10は、CPU(Central Processing Unit)12と、HDD(Hard Disk Drive)14と、RAM(Random Access Memory)16と、ネットワークI/F部18と、ROM(Read Only Memory)20と、表示部22と、操作入力部24と、バス26とを含む。
【0030】
CPU12は、音場シミュレーション装置10の全体の動作を司るものであり、後述する遮音性能の解析に係るフローチャートの処理は、CPU12により実行される。HDD14は、音場シミュレーションのプログラム、OS(Operating System)、建物の間取り及び寸法のモデルプラン、仕上材の種類及び当該仕上材の吸音率、並びに家具の種類及び当該家具の吸音力などが記録される不揮発性の記憶装置である。RAM16は、OSやプログラムやデータが展開される揮発性の記憶装置である。ネットワークI/F部18は、ネットワークに接続するためのものであり、NIC(Network Interface Card)やそのドライバで構成される。ROM20は、音場シミュレーション装置10の起動時に動作するブートプログラムなどが記憶されている不揮発性の記憶装置である。表示部22は、音場シミュレーション装置10に関する情報を操作者に表示するものである。操作入力部24は、操作者が音場シミュレーション装置10の操作や情報を入力する際に用いられるものであり、一例としてキーボード等の入力装置及びマウス等のポインティングデバイスが含まれる。バス26は、情報のやりとりが行われる際に使用される。
【0031】
続いて、本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムの制御について説明する。
図2は、本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける遮音性能の解析に係るフローチャートの一例を示す図である。
【0032】
まず、ステップ200では、シミュレーションに必要な項目を入力するための入力画面を表示する。シミュレーションに必要な項目は、部屋の寸法、天井と壁と床の仕上材の種類とそれらの吸音率、部屋に設置される家具の種類、部屋の開口部の有無、及び部屋の形状である。
【0033】
図3は、本実施の形態における音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプリグラムにおける間取り及び寸法指定の画面の一例を示す図である。
図3は、シミュレーションの対象となっている建物の平面図であるが、当該建物のCAD(Computer Aided Design)のデータを読み込んで表示部22に表示するようにしてもよいし、表示部22の画面上で建物の間取り及び寸法を任意に入力できるようなものでもよい。例えば、「8畳洋室」、「6畳和室」等の間取りの構成要素をサンプルとして表示部22に一覧表示し、操作者がサンプルから任意に構成要素をマウス等のポインティングデバイスによって選択して並べることで建物30の間取り及び寸法を指定する。さらには、選択して並べた構成要素の各部の寸法を任意に変更することが可能であってもよい。または、建物の間取り及び寸法の複数のモデルプランから1のモデルプランを選択することにより、建物の部屋の間取り及び寸法を指定するようにしてもよい。
【0034】
上記いずれかの方法により、建物の部屋の間取り及び寸法を指定した後、音場シミュレーションの対象となる部屋を選択する。選択は、
図3に示された平面図の一室をマウス等のポインティングデバイスでクリックする等の操作によって可能であるとする。音場シミュレーションの対象となる部屋が選択された後は、
図4に示す入力画面が表示される。または、
図3のように建物の間取りを指定せずに、部屋の間口、奥行き及び高さだけを指定し、当該指定後に
図4の入力画面が表示されるようにしてもよい。
【0035】
図4は、本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける入力画面の一例を示す図である。
図4では、画面の右側に設けられている選択ボタン42をマウス等のポインティングデバイスでクリックすると、複数の項目が表示されるプルダウンメニュー44が表示される。操作者は、表示されたプルダウンメニューから任意の項目を選択することで部屋の仕上材を選択でき、選択した仕上材の吸音率を設定できる。本実施の形態では、部屋の開口部の有無がシミュレーションの結果に影響するので、ラジオボタン46等によって部屋の開口部の有無を選択できるようにしてもよい。
【0036】
本実施の形態では、部屋に設置される家具によってもシミュレーションの結果が変化するので、仕上材の場合と同様に、プルダウンメニューで項目を選択できるようにしてもよい。家具は、形状が複雑なので、仕上材のように単位面積当たりの吸音力を示す吸音率ではなく、家具全体でどの程度音を吸収するかを示す吸音力を予め設定し、プルダウンメニューから家具が選択された場合は、選択された家具の吸音力が入力されるものとする。
【0037】
図4のプルダウンメニューに表示される仕上材は吸音率が高い順又は低い順でもよいし、コストが高い順又は低い順でもよい。また、
図4のプルダウンメニューに表示される家具は吸音力が高い順又は低い順でもよいし、コストが高い順又は低い順でもよい。また、選択項目に吸音率又は吸音力を表示せず、仕上材又は家具の種類のみを表示させてもよい。
【0038】
ステップ202では、入力項目を操作者が確定したか否かが判定される。本実施の形態では、ステップ200での設定が完了した場合に操作者がいわゆる確認ボタン48等の画面上の所定の箇所をクリックすることにより、入力項目が確定される。操作者が設定を確定した肯定判定の場合は、ステップ204での演算処理に移行する。なお、ステップ204での演算処理では、ステップ200で選択された仕上材の吸音率又は家具の吸音力を記憶手段であるHDD14から取得し、取得した吸音率又は吸音力を用いて演算してもよい。
【0039】
ステップ206では、表示部22に演算結果を表示する。表示される項目は、残響時間、ブーミングの発生頻度、こもり音の有無及びフラッターエコーの有無である。
図5は、本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける演算結果の表示の一例を示す図である。算出された残響時間を表示すると共に、当該残響時間が許容される上限値未満であるか否かが表示される。本実施の形態では、上限値は一例として1.0秒とする。
【0040】
また、ブーミング及びフラッターエコーの有無は、部屋の寸法から算出される定在波周波数の出現頻度に基づいて判定される。本実施の形態では、許容される定常波周波数の出現頻度を3Hzの範囲内に輻輳して出現する定常波周波数の数が3つ未満の場合であるとし、定在波周波数が3Hzの範囲内に3つ以上輻輳して出現している箇所がある場合にブーミングが発生すると判定する。さらにブーミングが所定の周波数の範囲において所定の回数以上発生する場合に、こもり音等の不快な現象が生じ得ると判定する。本実施の形態では、一例として所定の周波数の範囲は20〜180Hz、所定の回数は3回とする。
【0041】
なお、許容される残響時間の上限値、許容される定常波周波数の出現頻度、所定の周波数及び所定の回数は、HDD14に予め記憶されているものとする。
【0042】
ステップ208では、
図5に示した画面上で操作者が「はい」をクリックする等により、操作者が表示した結果でよいと判断したか否かが判定され、肯定判定の場合は処理を終了する。
【0043】
ステップ208で否定判定の場合は、ステップ210で入力項目の変更画面を表示して、操作者に対して入力項目の変更を促す。
図6は、本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける入力項目の変更画面の一例を示す図である。
図6では、操作者がステップ200で選択した項目よりも吸音率等が高い項目を例示することで、前回の演算処理よりも残響時間、ブーミング、こもり音が改善され得るようにする。
【0044】
また、フラッターエコーは、部屋に開口部が設けられると軽減されるので、ステップ210では、開口部「あり」を選択した状態で画面を表示するようにしてもよい。
【0045】
図7は、本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける間取り及び寸法再指定の画面の一例を示す図である。ステップ208で否定判定された場合には、
図7に示したように、和室32に収納庫34を設け、ホール36に収納庫38を設ける等の騒音低減が可能になる表示を行うようにしてもよい。
【0046】
部屋の形状は一般に直方体を呈するが、家具又は収納庫等によって直方体の形状が乱されると、残響等の人にとって不快な音響が発生しにくくなる。本実施の形態では、ステップ200で間取り及び寸法が指定された時に、指定された間取りの四隅のいずれかに収納庫又は箪笥等の家具を設置した代案を自動的に創出し、当該代案をステップ210で表示する。
【0047】
続いて、本実施の形態における演算処理について詳述する。まず、残響時間Tの演算は、下記の式(1)を用いて行われる。
【数1】
【0048】
上記の式(1)において、Kは定数であり、気温20℃の時にK=0.161である。Vはシミュレーションの対象である部屋の室容積であり、Sは当該部屋の室内全表面積であり、αは仕上材に各々固有の吸音率である。
【0049】
一例として、間口3.5m、奥行き6.0m、高さ2.4mの直方体をした部屋において、床に吸音率α
1=0.10のラワン合板を、壁と天井に吸音率α
2=0.09の石膏ボードを用いた場合の残響時間Tを上記の式(1)によって算出する。
【0050】
この場合、室容積Vは、V=2.4×6.0×3.5より、V=50.4m
3となる。また、床面積をS
1とすると、S
1=3.5×6.0より、S
1=21.0m
2となり、壁の面積S
2は、S
2=(3.5×6.0)+2×2.4×(3.5+6.0)より、S
2=66.6m
2となる。
【0051】
上述のように、床に吸音率α
1=0.10のラワン合板を、壁と天井に吸音率α
2=0.09の石膏ボードを各々用いているので、上記の式(1)におけるSαは下記のように算出される。
Sα=S
1・α
1+S
2・α
2
S
1=21.0、S
2=66.6、α
1=0.10、α
2=0.09なので
Sα=8.094
【0052】
上述のように、K=0.161、V=50.4であるから、これらK、V、Sαを上記の式(1)に代入すると、残響時間Tは1.00秒となる。
【0053】
通常の残響時間は0.5〜1.0秒であり、許容される残響時間の上限値は本実施の形態では1.0秒であるから、上記の演算結果では残響時間が長すぎる。かかる場合は、吸音率がより大きな仕上材を使用することを検討する。
【0054】
例えば、床の仕上材をラワン合板から、吸音率α
3=0.20のパイルカーペットに変更した場合は、Sα=S
3・α
1+S
2・α
2=10.194となり、これを上記の式(1)に代入すると、T=0.8秒となり、許容されるレベルまで残響時間を低減できる。
【0055】
または、家具を設置することによっても残響時間を低減できる。家具は固有の吸音力を有するので、設置する家具の吸音力を式(1)の分母に加算することにより、残響時間Tを低減できる。
【0056】
本実施の形態では、
図2のステップ206で表示した残響時間の演算結果に満足しない操作者がステップ210で入力項目の変更をする場合に、画面には前回の演算に係る仕上材よりも吸音率が大きい仕上材を表示してもよい。
【0057】
続いて、ブーミングの演算について説明する。ブーミングの演算は、下記の式(2)を用いて行われる。
【数2】
【0058】
式(2)において、cは音速であり本実施の形態では340m/秒とする。l
x、l
y、l
zは、部屋の高さ、間口、奥行きであり、本実施の形態では一例として、l
x=2.4m、l
y=2.5m、l
z=2.5mとする。n
x、n
y、n
zは、定在波周波数fの算出時に用いられる次数であり、例えば、0、1、2、3、・・・の値をとり得る0を含む自然数である。
【0059】
これらの数値を上記の式(2)に代入して定在波周波数fを算出する。
図8は、本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける定在波周波数の算出結果の一例を示す図である。また、
図9は、
図8に示した定在波周波数の算出結果の横軸に周波数をとったグラフの一例である。
【0060】
図9では、低音領域である70Hz、99Hz及び155Hz付近において、3Hzの範囲内にfが3つ以上輻輳して出現しており、ブーミング及びこもり音が発生することが予想される。
【0061】
図10は、部屋の寸法を変更した場合の本実施の形態に係る音場シミュレーション装置及び音場シミュレーションプログラムにおける定在波周波数の算出結果の一例を示す図である。また、
図11は、
図10に示した定在波周波数の算出結果の横軸に周波数をとったグラフの一例である。
【0062】
図10、11の場合では、部屋の寸法をl
x=2.4m、l
y=2.8m、l
z=2.5mとし、
図8、9の場合よりも間口を0.3m大きくした。その結果、
図11に示したように、70Hz、99Hz及び155Hz付近におけるfが輻輳して発生する現象が改善された。
図11に3Hzの範囲内にfが3つ以上輻輳して出現する箇所はないため、
図10、11での場合では、ブーミング及びこもり音が発生するおそれはないと予想される。
【0063】
本実施の形態では、
図3のステップ210で表示する入力項目の変更画面において、部屋の寸法を変更することにより、
図10、11に示した結果の算出が可能となる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態によれば、シミュレーションの結果に基づいて騒音低減の対策が可能となる。