(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073729
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】脱臭装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/38 20060101AFI20170123BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20170123BHJP
B01D 46/00 20060101ALI20170123BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20170123BHJP
B05B 5/057 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
B01D53/38 120
B01D53/18 150
B01D46/00 E
B01D46/42 C
B05B5/057
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-69785(P2013-69785)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-188512(P2014-188512A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】立本 豪
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−034593(JP,A)
【文献】
特開2009−178710(JP,A)
【文献】
特開平02−071821(JP,A)
【文献】
特開平03−217211(JP,A)
【文献】
特開昭62−027027(JP,A)
【文献】
特開昭63−107727(JP,A)
【文献】
実開昭63−020937(JP,U)
【文献】
特開平08−173737(JP,A)
【文献】
特開2006−081980(JP,A)
【文献】
特開2010−234335(JP,A)
【文献】
特開2010−064001(JP,A)
【文献】
特開昭60−232229(JP,A)
【文献】
米国特許第05312594(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02062637(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/73
B01D 53/74−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/14−53/18
A61L 9/00− 9/22
B01D 45/00−45/18
B01D 46/00−46/54
B05B 5/00− 5/16
B05B 17/00−17/08
C02F 1/46− 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気ガスを装置内へ導入する臭気ガス導入部と、
水を霧化してナノミストを生成する霧化部と、
前記霧化部で生成されたナノミストを脱臭対象の臭気ガスと接触させる接触部と、
少なくとも1つの疎水性フィルタを備え、該疎水性フィルタにより前記接触部を経たナノミストを回収するナノミスト回収部と、
前記疎水性フィルタを経たガスを排気する排気管と、
前記疎水性フィルタに対して振動を与える振動機構と
を備えることを特徴とする、脱臭装置。
【請求項2】
前記疎水性フィルタは、マイクロポーラス構造を有することを特徴とする、請求項1に
記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記疎水性フィルタは、粒径が500nm以上の粒子を捕集可能な疎水性フィルタであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記排気管は、該排気管内のガスを前記疎水性フィルタの方向に逆流させる駆動機構を備えることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭装置、特にナノミストを用いた脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設や、工場の排水処理施設、ゴミ処理場や産業廃棄物処理施設等では、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、及び二硫化メチルを含む硫黄化合物や、アンモニアやトリメチルアミンを含む窒素化合物のような、臭気成分(悪臭物質)が発生する。これらの臭気成分が施設の近隣に漏れ出ると、臭気公害の原因となる。
【0003】
そこで、各施設は臭気成分を排気ガスから除去するために、種々の対策を講じている。そのような対策には、例えば、活性炭吸着法、生物脱臭法、及び薬液洗浄法による脱臭処理がある。しかしながら、これらの方法による脱臭処理は、ランニングコスト面とメンテナンス面で改善の余地があった。
【0004】
近年、ガス中の臭気成分をミストに吸着させて脱臭する技術が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の脱臭装置は、界面活性剤を含む水をミストに霧化して臭気成分を吸着させ、静電気、冷却及びサイクロンを用いてミストを回収することによって脱臭する。このような脱臭装置によれば、臭気ガスに含まれる臭気成分を効率よく速やかにミストに吸収して脱臭することができる。
【0005】
また、ガス中に含まれるミスト成分を回収するためにスクラバーを用いた空気浄化システムも提案されてきた(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の空気浄化システムによれば、スクラバーを用いて不要なミスト成分を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−234335号公報
【特許文献2】特開2005−205094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載のような、静電気を用いたミストの回収方法では、ミストの回収に電力が必要であり、ミスト回収における消費エネルギーの点で改善の余地があった。
また、冷却によりミストを回収するには、装置規模が大きい上に、回収に時間を要し、回収効率にも改善の余地があった。さらに、特許文献2に記載のような、スクラバーを用いるシステムは規模が大きく、小型化の余地があった。
【0008】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、ミスト回収時の消費エネルギーを低減すると共に、効率的にナノミストを回収することができる、コンパクトな脱臭装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を行い、ナノミストを用いて臭気成分を吸着し、臭気成分を吸着したナノミストを回収することで脱臭効果を奏するための装置構成において、フィルタを利用してナノミストを回収し得ることに着目し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の脱臭装置は、臭気ガスを装置内へ導入する臭気ガス導入部と、水を霧化してナノミストを生成する霧化部と、前記霧化部で生成されたナノミストを脱臭対象の臭気ガスと接触させる接触部と、少なくとも1つの
疎水性フィルタを備え、該
疎水性フィルタにより前記接触部を経たナノミストを回収するナノミスト回収部と、前記
疎水性フィルタを経たガスを排気する排気管と、
前記疎水性フィルタに対して振動を与える振動機構と、を備えることを特徴とするものである。このように、臭気成分を吸着したナノミストを、フィルタを用いて回収することで、ミスト回収時の消費エネルギーを低減すると共に、コンパクトな装置構成で、効率的にナノミストを回収することができる。
疎水性のフィルタを用いてナノミストを回収することで、フィルタの目詰まりを低減することができる。なお、ここでいう「疎水性」とは、フィルタを構成する素材自体が疎水性の素材であるか、又はフィルタ素材に対して疎水処理が施されることにより、フィルタ素材表面が疎水性となっていることを意味する。また、フィルタが振動可能に構成されることにより、疎水性のフィルタの表面に付着した水滴を、振動によりフィルタから脱落させることができる。
【0012】
また、本発明に係る脱臭装置においては、前記
疎水性フィルタは、マイクロポーラス構造を有することが好ましい。このように、マイクロポーラス構造を有する
疎水性フィルタによりナノミストを回収することで、脱臭効果を一層向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る脱臭装置においては、前記
疎水性フィルタは、粒径が500nm以上の粒子を捕集可能な
疎水性フィルタであることが好ましい。このような
疎水性フィルタを用いてナノミストを回収することで、
疎水性フィルタの目詰まりを低減すると共に脱臭効果を確保することができる。
【0014】
また、本発明に係る脱臭装置においては、前記排気管は、該排気管内のガスを前記
疎水性フィルタ
の方向に逆流させる駆動機構を備えることが好ましい。このように、脱臭装置が
疎水性フィルタを経たガスを
疎水性フィルタ
の方向に逆流させる駆動機構を有することにより、
疎水性フィルタに生じる目詰まりを逆洗により解消することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の脱臭装置によれば、ミスト回収時の消費エネルギーを低減すると共に、コンパクトな装置構成で、効率的にナノミストを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に従う代表的な脱臭装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による脱臭装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここで、本発明の脱臭装置は、特に制限されることなく、あらゆる臭気発生源、例えば、下水処理場、ゴミ処理場、石油精製プラント、及び飲食店等で生じる臭気ガスに含まれる臭気成分をナノミストに吸着し、かかるナノミストをフィルタで回収して、臭気ガスから悪臭成分を除去するものである。
【0019】
<脱臭装置>
図1は、本発明に従う代表的な脱臭装置の概略構成を示す。
脱臭装置1は、臭気ガス導入部2と、霧化部3と、接触部4と、ナノミスト回収部5と、排気管6とを備える。脱臭装置1は臭気ガス導入部2から装置内へ導入された臭気ガスを、接触部4において霧化部3により生成されたナノミストと接触させてナノミストに臭気成分を吸着させて、ナノミスト回収部5において臭気成分を吸着したナノミストを回収して、排気管6を介して脱臭空気を排気する。
【0020】
ここで、臭気ガス導入部2は、臭気ガスを装置内へ導入する。上述の通り、臭気ガスの発生源は特に限定されない。ただし、臭気ガスに粉塵が含まれる場合には、臭気ガス導入部2又はその前段に粉塵を除去するための構成を備えても良い。後述するフィルタ14が粉塵により容易に目詰まりすることを予防するためである。粉塵を除去するための構成とは、例えばダストフィルタである。さらに、臭気ガス導入部2は、臭気ガスを装置内に供給するための原臭ブロワー(B)7を備える。
【0021】
霧化部3は、静電霧化又は超音波霧化により水を霧化してナノミストを生成する。本例では、霧化部3は静電霧化を実施することとして説明する。この場合、霧化部3は、プラス電極8及びマイナス電極9を備え、第1霧化用液供給ポンプ(P)10により第1霧化用水供給管20を介して霧化液貯留槽11に送出され、霧化液貯留槽11から第2霧化用液供給ポンプ12により第2霧化用水供給管21を介して霧化用水供給部22に送りこまれた霧化用水である水を静電霧化する。霧化部3は、プラス電極8及びマイナス電極9の間に高電圧を印加して放電させるための、
図1に示さない電源を備える。霧化部3は、プラス電極8側から供給される霧化用水にレイリー分裂を生じさせて霧化させることでナノオーダーのミスト(ナノミスト)を生成する。なお、本明細書において、ナノオーダーとは1μm未満、特に、100nm以下の粒子径をいう。一般に、静電霧化により生成されるナノミストの粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、好ましくは30nm以下である。また、超音波霧化により生成されるナノミストの粒子径は100nm以下であり、且つ100nm付近の粒子径のミストが超音波霧化により生成されるナノミストの大部分を占める。なお、霧化部3が超音波霧化を実施する場合には、霧化部3はプラス電極8及びマイナス電極9を備えず、超音波振動子を霧化用水の入った水槽(図示しない)内に配置して構成される。このとき、超音波振動子面から水面までの距離を30mm〜40mmとすることで、良好な霧化効率を達成することができる。ナノミストは、表面張力により臭気成分を吸着させる作用がある。さらに、ナノミストはラジカル(OH
−)のような活性種により臭気成分を酸化分解することができると推定される。
【0022】
なお、霧化部3により霧化する水としては、特に限定は無いが、中性水が好ましい。本明細書において、「中性」とは、20℃でのpHがpH5.8以上pH8.6以下の水を指す。好ましくは、霧化用水はpH6.5以上pH8.6以下である。仮に、酸性又はアルカリ性の水を使用した場合、排水前に回収水のpHを中性に戻す必要があり、このときにpHの変動により悪臭成分の溶解度が変更され、回収水中に溶解していた悪臭成分が放出されてしまう虞がある。また、霧化用水が中性水であれば、フィルタ14をろ布により構成した場合に、フィルタ14の劣化を抑えることができる。
【0023】
接触部4は、霧化部3により生成されたナノミストと、外部、例えば脱臭装置1の外部から導入した脱臭対象の臭気ガス(原臭)とを接触させる。霧化部3から供給されるナノミストと、臭気ガス導入部2から供給される臭気ガスとは、前述の原臭ブロワー7により生成される空気の流れに従って、接触部4内を移動する。この移動時間が、ナノミストと臭気ガスとの接触時間となる。接触部4において臭気成分を吸着したナノミスト同士が接触してより粒径の大きなミストを生成し、または、臭気成分を吸着したナノミストが接触部4の壁部に付着して霧化液貯留槽11に流入することもある。よって、霧化液貯留槽11には、臭気成分が若干混入する可能性があるが、このような臭気成分は非常に微量であるため、霧化部3において霧化されても、本発明による脱臭装置の脱臭効果には影響はない。
【0024】
ナノミスト回収部5は、少なくとも1つのフィルタ14を備える。さらに、ナノミスト回収部5は、回収水貯留槽15を備え、ナノミストを回収する。具体的には、ナノミスト回収部5は、フィルタ14の表面に付着して水滴となりフィルタ14から脱落したナノミストや、ナノミスト回収部5の壁面に付着して水滴となり脱落したナノミストを回収水貯留槽15にて回収する。さらに、ナノミスト回収部5では、フィルタ14の表面やナノミスト回収部5の壁面に付着したナノミストに対して、臭気ガス中の臭気成分が吸着される。当然、ナノミストは、ナノミスト回収部5内を移動する間も、臭気ガス中の臭気成分を吸着することができる。したがって、接触部4におけるナノミストと臭気ガスとの接触時間に加えて、ナノミスト回収部5においても、ナノミストは臭気ガス中の臭気成分を吸着し、脱臭効果を奏することができる。
【0025】
ここで、フィルタ14は、疎水性であることが好ましい。ここでいう「疎水性」とは、フィルタ14が疎水性の素材で構成されているか、又は、フィルタ14に対して、疎水性を付与することが可能なコーティングが施されることにより、フィルタ14の表面が疎水性となっていることを意味する。さらに、フィルタ14は、疎水性のろ布により構成されることが好ましい。この場合、ろ布の素材は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含むフッ化炭素ポリマー系素材、ポリエステルを含むポリエステル系素材、アクリルを含むアクリル系素材、及びポリ塩化ビニルを含む塩化ビニル系素材であり、例えば、フッ素樹脂及びシリコン樹脂のような疎水性の樹脂を用いて、コーティングされることによって疎水性が付与される。なお、フィルタ14は、上述のような疎水性の樹脂による疎水性コーティングが施されたセラミックフィルタにより構成されても良い。
【0026】
疎水性のフィルタ14を用いれば、悪臭成分の吸着効率を向上させることができる。そのメカニズムは以下の通りに推察される。疎水性のフィルタ14の表面にナノミストが継続的に付着すると、ナノミストを構成する水の表面張力により水滴が生じて、自重で落下する。このような、フィルタ14に付着したナノミストが水滴となって落下するまでの間、フィルタ14上に水が付着した状態となっている。フィルタ14上の水は、更にナノミストを付着させるだけでなく、臭気成分も付着させることができる。このようにして、ナノミスト回収部5は、接触部4内でナノミストに吸着されなかった臭気成分も回収することができる。さらに、フィルタ14の表面に付着したナノミストは、フィルタ14の孔に入り込み、孔中で水滴状に点在し、その水滴が更に他のナノミストを吸着させることにより大きくなり、フィルタ14の孔が水滴により一部塞がれたような状態となる。これにより、臭気成分がフィルタ14上の水に接触することができる面積がより大きくなり、ナノミスト回収部5内における悪臭成分の吸着効率を一層向上させることができる。ここで、フィルタ14の孔中の水は、フィルタ14が疎水性であれば、表面張力により球形となっている。したがって、フィルタ14の孔中の水は一定以上の重さに成長すれば、自重で落下するので、フィルタ14に目詰まりが生じにくくなる。これにより、フィルタ14は、差圧を低く維持できるため、脱臭対象の臭気ガスを脱臭装置1内で移動させるための推進力が低くても脱臭処理が可能となる。これにより、脱臭装置1は、原臭ブロワー7において必要とされるエネルギーを低減することができる。
【0027】
疎水性のフィルタ14は、さらに、フィルタ14に対して振動を与える機械式の振動機構(図示しない)を備えることが好ましい。振動機構によりフィルタ14を振動させることで、疎水性のフィルタ14の表面に付着した水滴を脱落させることができる。これにより、簡易な装置構成で、脱臭装置1の脱臭効率を向上させることができる。
【0028】
さらに、フィルタ14は、マイクロポーラス構造を有することが好ましい。脱臭効果を一層向上させることができるからである。ここで、マイクロポーラス構造とは、微小な孔が折り重なって構成される構造であり、かかる構造を有することで、フィルタ14は、ガスを通過させやすく、ナノミストを通過させにくくなる。このような、マイクロポーラス構造を有するフィルタには、例えば、粒径が500nm以上の粒子を捕集可能なフィルタがある。粒径が500nm以上の粒子を捕集可能なフィルタとは、JISZ 8901の試験粉体を用いて、ろ過速度を3m/分として時間制御(270秒)にてパルスを1回作動して1サイクルとし、これを100サイクル繰り返す試験を実施し、レーザー走査粒径分布分析装置(例えば、堀場製作所製LA−950)を用いて測定した粒径分布によって、粒径が500nm以上の粒子を捕集することが確認されたフィルタを意味する。フィルタ14として、マイクロポーラス構造を有する粒径が500nm以上の粒子を捕集可能なフィルタを使用することで、フィルタの目詰まりを低減すると共に脱臭効果を確保することができる。粒径が500nm以上の粒子を捕集可能なフィルタとしては、例えば、BWF社(ドイツ)製のフィルタneedlonaPTFE/PTFE704MPS CS18(通気度:10±3cm
3/cm
2・s)がある。
【0029】
また、マイクロポーラス構造を有するフィルタは、通気度の値が所定範囲内である、フィルタであり得る。ここで、通気度の低いろ布は、ろ布を構成する繊維が密に絡み合っており、ろ布の表面に水滴が付着した場合に、毛細管現象によりろ布内部まで水が入り込みやすいことが推定される。よって、通気度の低いろ布をフィルタ14に採用した場合には、フィルタ14に目詰まりが生じ易くなる。
【0030】
フィルタ14がろ布により構成される場合、フィルタ14は、例えば、一端面側が閉じている袋状の布フィルタであって、内部に配置された支柱により円柱状に支持されている。支柱により内側から布フィルタを支持することで、フィルタの差圧が上がった場合であっても、フィルタの形状を保持することができる。フィルタ14がセラミックフィルタにより構成される場合にも、フィルタ14の形状は円柱状でありうる。フィルタ14の形状を円柱状とすることで、ナノミストと接触可能なフィルタ表面積を大きくし、脱臭効率を向上させることができる。
【0031】
このように、脱臭装置1は、フィルタ14を用いて悪臭成分を吸着したナノミストを回収するため、ミストの回収に電力等のエネルギーが不要であり、臭気ガスの脱臭に必要なエネルギーを低減することができる。さらに、脱臭装置1は、サイクロンやスクラバーのような規模の大きい構成を必要としないため、小型化が可能である。さらに、脱臭装置1は、ナノミストの回収時にナノミスト回収用の水(回収水)を使用することもないため、水の使用量を低減すると共に、回収水の供給のための配管やポンプの動力が不要であり、装置構成を簡略化すると共に、装置のランニングコストを低減することができる。
【0032】
排気管6はフィルタ14を経たガスを脱臭装置1の外部へ放出する。好ましくは、排気管6は逆流ブロワー13を有する。逆流ブロワー13は、排気管6内のガスをフィルタ14に向かって逆流させる駆動機構を構成する。更に詳細には、逆流ブロワー13は、排気管6内における空気の流れる方向について、脱臭装置1の外部へ出て行く方向を順方向とした場合に、逆方向の空気の流れを作り出す機能を有する。排気管6内を逆流した空気流は、フィルタ14に至り、フィルタに目詰まりしている水をナノミスト回収部5に向けて染み出させる。これにより、フィルタ14の目詰まりを解消することができる。
【0033】
好ましくは、脱臭装置1は、回収水貯留槽15に隣接して、排水管17に近い側に、排水を無害化するための構成を有する。排水を無害化するための構成とは、例えば、回収水中の悪臭成分を酸化分解するための構成であり、具体的にはオゾン分解装置を有するオゾン分解槽16である。好ましくは、オゾン分解槽16は、回収水貯留槽15より小さい。オゾン分解槽16を小さくすることで、悪臭成分の酸化分解に使用するオゾンの量を少なくし、オゾン臭の発生を回避することができるからである。
排水管17は、排水ポンプ18を備え、オゾン分解槽16において無害化された排水を排出する。
【0034】
好ましくは、脱臭装置1は臭気センサ19を備える。臭気センサ19は、排気管6から排気される脱臭空気の臭気強度と、臭気ガス導入部2から導入される臭気ガスの臭気強度とを検出する。
以下、脱臭装置1における脱臭処理のための一連の動作は各構成部の説明と共に上述したとおりである。以下、脱臭装置1における、他の動作の一例について説明する。
【0035】
<脱臭装置の動作>
[逆流ブロワー13の駆動による逆洗]
脱臭装置1は、図示しない制御部により逆流ブロワー13の駆動を制御する。制御部は、フィルタ14の差圧を測定可能に脱臭装置1に取り付けられた差圧計(図示しない)により、所定値以上の差圧(例えば、4kPa以上)が検出された場合に、逆流ブロワー13を駆動して、排気管6内のガスをフィルタ14に向かって逆流させる。或いは、制御部は、所定の時間間隔で逆流ブロワー13を駆動することもできる。さらに、制御部は、臭気センサ19により測定された排気管6から排気される脱臭空気の臭気強度の値が所定値以上となった場合に、逆流ブロワー13を駆動することもできる。逆流ブロワー13を駆動するにあたり、制御部は、逆流ブロワー13をパルス駆動して、短時間に高圧力のガスをフィルタ14に向けて逆流させる。これにより、脱臭装置1は、フィルタ14の目詰まりを適時解消し、良好な脱臭効率を維持することができる。
【0036】
[振動機構の駆動によるフィルタ14の振動]
脱臭装置1は、制御部により振動機構の駆動を制御する。制御部は、上述の差圧計(図示しない)により、所定値以上の差圧(例えば、4kPa以上)が検出された場合に、又は、所定の時間間隔で、振動機構の駆動を制御して疎水性のフィルタ14を振動させる。これにより、脱臭装置1は、フィルタ14の目詰まりを予防し、良好な脱臭効率を維持することができる。なお、制御部は、臭気センサ19により測定された排気管6から排気される脱臭空気の臭気強度が所定値以上となった場合に振動機構を駆動させてもよい。これにより、脱臭装置1から排出される臭気強度が常に所定値以下になるように制御することができる。
【0037】
[臭気センサ19の測定値に基づくフィードバック制御]
脱臭装置1は、制御部により臭気センサ19の測定値に基づいて霧化部3での霧化量を制御する。具体的には、制御部は、臭気センサ19が検出した排気管6から排気される脱臭空気の臭気強度が所定値以上になった場合に、霧化部3を制御して、霧化量を増やす。ここでいう、所定値とは、脱臭装置1が脱臭対象とする臭気発生源に関して法令等に規定された基準値等に基づいて、適宜決定することができる値である。或いは、制御部は、臭気センサ19が検出した臭気ガス導入部2から導入される臭気ガスの臭気強度が一定以上変動した場合に、霧化部3を制御して、霧化量を増減させる。このようにして、脱臭装置1は、脱臭対象の臭気ガスの臭気強度の変動及び脱臭処理した脱臭空気の臭気強度の変動に適応して脱臭処理を実施することができる。
【0038】
以上、一例を用いて本発明の脱臭装置について説明したが、本発明の脱臭装置は、上記一例に限定されることはなく、本発明の脱臭装置には、適宜変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の脱臭装置によれば、ミスト回収時の消費エネルギーを低減すると共に、コンパクトな装置構成で、効率的にナノミストを回収することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 脱臭装置
2 臭気ガス導入部
3 霧化部
4 接触部
5 ナノミスト回収部
6 排気管
7 原臭ブロワー
8 プラス電極
9 マイナス電極
10 第1霧化用液供給ポンプ
11 霧化液貯留槽
12 第2霧化用液供給ポンプ
13 逆流ブロワー
14 フィルタ
15 回収水貯留槽
16 オゾン分解槽
17 排水管
18 排水ポンプ
19 臭気センサ
20 第1霧化用水供給管
21 第2霧化用水供給管