特許第6073732号(P6073732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073732
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/58 20060101AFI20170123BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170123BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B01J23/58 AZAB
   B01D53/86 222
   F01N3/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-77002(P2013-77002)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-200715(P2014-200715A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】猪田 悟
(72)【発明者】
【氏名】平井 章雅
(72)【発明者】
【氏名】滝 健一
(72)【発明者】
【氏名】松枝 悟司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/147163(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/137658(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/137657(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/030831(WO,A1)
【文献】 特開2010−046656(JP,A)
【文献】 特開2005−125151(JP,A)
【文献】 特開2002−336703(JP,A)
【文献】 特開2002−172325(JP,A)
【文献】 特開2010−029752(JP,A)
【文献】 特開平06−099069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム酸化物を少なくとも含んでいる第1酸化物粒子と、
前記第1酸化物粒子よりも粒子径が小さく、かつ、少なくともジルコニウム酸化物を含む第2酸化物粒子と、
前記第1酸化物粒子に担持されている貴金属と、
前記第1酸化物粒子よりも粒子径が小さいアルカリ土類金属酸化物と、を含み、
前記貴金属と前記第2酸化物粒子とが部分的に接触しており、かつ、
前記貴金属と前記アルカリ土類金属酸化物とが部分的に接触しており、
前記貴金属と前記第2酸化物粒子との相関係数は、0.70以上である
ことを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記貴金属と前記アルカリ土類金属酸化物との相関係数は、0.70以上であることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジンなどの内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンなどの内燃機関から排出される排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を浄化する種々の排ガス浄化用触媒が開発されている。この排ガス浄化用触媒として、例えば特許文献1〜6に開示されているように、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)などの貴金属を、セリウム複合酸化物、ジルコニウム複合酸化物、またはペロブスカイト複合酸化物に、担持または固溶しているものが知られている。
【0003】
また、上記したような貴金属を含む排ガス浄化用触媒に、アルカリ土類金属を混合し、貴金属(特にパラジウム)のHC被毒(排ガス中のHCが貴金属の表面を被覆すること)による触媒性能の低下を抑制する技術が知られている。
【0004】
さらに、上記したような貴金属を含む排ガス浄化用触媒に、ジルコニウム複合酸化物(Zr系酸化物)などの水蒸気改質反応を促進させる材料を混合することで、HC及びNOxの浄化率を向上させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−242149
【特許文献2】特公平6−75675
【特許文献3】特開平10−202101
【特許文献4】特開2004−41866
【特許文献5】特開2004−41867
【特許文献6】特開2004−41868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルカリ土類金属を添加した排ガス浄化用触媒では、粒子表面に貴金属を担持した酸化物と、アルカリ土類金属塩を単に混合して触媒として使用している。そのため、貴金属とアルカリ土類金属との接触度合いが低くなったり、触媒中での貴金属粒子の分散性が低くなったりして、HC被毒抑制効果が不十分となり得る。
【0007】
また、水蒸気改質反応の助触媒として作用するZr系酸化物に貴金属を担持させた排ガス浄化用触媒では、Zr系酸化物の耐熱性が低いことが問題となる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされてものであり、触媒のHC被毒を抑制しつつ、触媒性能を向上させた排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排ガス浄化用触媒は、第1酸化物粒子と、前記第1酸化物粒子よりも粒子径が小さく、かつ、少なくともジルコニウム酸化物を含む第2酸化物粒子と、前記第1酸化物粒子に担持されている貴金属と、前記第1酸化物粒子よりも粒子径が小さいアルカリ土類金属酸化物と、を含み、前記貴金属と前記第2酸化物粒子とが部分的に接触しており、かつ、前記貴金属と前記アルカリ土類金属酸化物とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0009】
本発明の排ガス浄化用触媒においては、貴金属とアルカリ土類金属酸化物とが部分的に接触した状態で含まれている。これにより、貴金属のHC被毒抑制が効率よく行われ、触媒の排ガス浄化性能を維持することができる。
【0010】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、貴金属とジルコニウム酸化物を含む第2酸化物粒子とが部分的に接触した状態で含まれている。これにより、水蒸気改質反応が効率よく行われ、触媒の排ガス浄化性能を向上させることができる。
【0011】
本発明の排ガス浄化用触媒において、前記貴金属と前記第2酸化物粒子との相関係数は、0.70以上であることが好ましい。
本発明の排ガス浄化用触媒において、前記貴金属と前記アルカリ土類金属酸化物との相関係数は、0.70以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の排ガス浄化用触媒において、前記第1酸化物粒子は、アルミニウム酸化物を少なくとも含んでいることが好ましい。これにより、Zr系酸化物を担体として使用する場合と比較して触媒の耐熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態にかかる排ガス浄化用触媒を示す模式図である。
図2】実施例の結果を示すものであり、排ガス浄化用触媒における貴金属とアルカリ土類金属酸化物との相関係数に対して、NOxの50%浄化温度の測定結果をプロットしたグラフである。
図3】実施例の結果を示すものであり、排ガス浄化用触媒における貴金属とZr系酸化物との相関係数に対して、NOxの50%浄化温度の測定結果をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「複合酸化物」とは、複数の酸化物が単に物理的に混合されたものではなく、複数の酸化物が固溶体を形成しているものを意味することとする。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態にかかる排ガス浄化用触媒10は、第1酸化物粒子11と、第2酸化物粒子12と、貴金属粒子(貴金属)13と、アルカリ土類金属酸化物粒子(アルカリ土類金属酸化物)14とを含んでいる。第2酸化物粒子12、貴金属粒子13、及び、アルカリ土類金属酸化物粒子14は何れも、第1酸化物粒子11と比較して粒子径が小さい。また、第2酸化物粒子12、貴金属粒子13、及び、アルカリ土類金属酸化物粒子14は何れも、第1酸化物粒子11の表面に配置されている。言い換えると、第1酸化物粒子11の表面は、第2酸化物粒子12、貴金属粒子13、及び、アルカリ土類金属酸化物粒子14によって部分的に被覆された構造となっている。
【0016】
図1に示すように、第2酸化物粒子12と貴金属粒子13とは、部分的に接触した状態で、第1酸化物粒子11に配置されている。また、貴金属粒子13とアルカリ土類金属酸化物粒子14とは、部分的に接触した状態で、第1酸化物粒子11に配置されている。
【0017】
(第1酸化物粒子について)
第1酸化物粒子11は、排ガス浄化用触媒10を構成している粒子であり、第2酸化物粒子12、貴金属粒子13、及び、アルカリ土類金属酸化物粒子14が、粒子同士で凝集することを抑制するために、各微細粒子を分散配置する担体としての役割を果たす。これにより、各微細粒子を分散した状態で触媒中に含有させることができる。
【0018】
第1酸化物粒子11は、アルミニウム酸化物(Al23)を少なくとも含んでいることが好ましい。第1酸化物粒子がアルミニウム酸化物を含むことにより、例えば、ジルコニウム酸化物などの他の金属酸化物と比較して耐熱性を向上させることができる。第1酸化物粒子は、金属酸化物としてアルミニウム酸化物のみを含むものであってもよいし、アルミニウム酸化物(Al23)に加えて、La23などの他の金属酸化物をさらに含む複合酸化物であってもよい。
【0019】
第1酸化物11の粒子径は、第2酸化物粒子12、貴金属粒子13、及び、アルカリ土類金属酸化物粒子14の各粒子径よりも大きければよい。第1酸化物粒子11の平均粒子径D50は、例えば、1〜95μmの範囲内とすることが好ましく、10〜30μmの範囲内とすることがより好ましい。この粒子径を過度に小さくすると、各微細粒子(すなわち、第2酸化物粒子12、貴金属粒子13、及び、アルカリ土類金属酸化物粒子14)の凝集が比較的生じ易くなり、排ガス浄化用触媒10の耐久性能が低下する可能性がある。この粒子径を過度に大きくすると、第1酸化物粒子11上に各微細粒子を均一に分散させることが比較的困難となり、排ガス浄化用触媒10の耐久性能が低下する可能性がある。
【0020】
なお、「平均粒子径D50」は、例えば、以下のようにして求めることができる。
平均粒子径D50の算出には、走査型電子顕微鏡(FE−SEM/EDX)を用いた定性分析によって得られた結果を利用することができる。まず、FE−SEM/EDXの試料台上に、試料(例えば、第1酸化物粒子11)を載せる。そして、例えば、2500倍〜50000倍の倍率で試料を観察し、FE−SEM画像を得る。このFE−SEM画像において、試料の各粒子のうち、他の粒子との重なり合いによってその一部が観察不可能となっていないものが占める面積Ak(k=1,2,…,n;nは、当該FE−SEM画像に含まれる試料の粒子のうち、他の粒子との重なり合いによってその一部が観察不可能となっていないものの数とする)を測定する。測定された各面積Akの各々に対応した円等価径dkを求める。即ち、次式(1)を満足する粒子径dkを求める。
【0021】
【数1】
【0022】
その後、これら粒子径dkを、粒子数nに亘って算術計算して、FE−SEM画像に対応した粒子径を求める。
以上のFE−SEM観察を、任意の100箇所について行い、各FE−SEM画像に対応した粒子径の平均値を得る。得られた平均値が、粒度D50となる。但し、この際、第1酸化物粒子11の粒子径(「FE−SEM観察により得られる平均粒子径D50」)の標準偏差は20μm以下とする。
【0023】
排ガス浄化用触媒10中に含まれる第1酸化物粒子11の量は、排ガス浄化用触媒10の質量を基準として、例えば、50〜95質量%(wt%)の範囲内とすることが好ましく、80〜90wt%の範囲内とすることがより好ましい。この第1酸化物粒子11の量を過度に小さくすると、貴金属、第2酸化物粒子、アルカリ土類金属酸化物の分散性が悪化し、触媒性能が低下する可能性がある。この第1酸化物粒子11の量を過度に大きくすると、貴金属、第2酸化物粒子、アルカリ土類金属酸化物の量が少なくなり、触媒性能が低下する可能性がある。なお、排ガス浄化用触媒10が、基材を含んでいる場合、上記の「排ガス浄化用触媒10の質量」は、排ガス浄化用触媒10のうち基材を除いた部分の質量を意味することとする。
【0024】
(第2酸化物粒子について)
第2酸化物粒子12は、ジルコニウム酸化物を少なくとも含んでいる。そのため、第2酸化物粒子12は、Zr系酸化物とも呼ばれる。ジルコニウム酸化物は、触媒中に含まれる貴金属の水蒸気改質反応の活性を向上させる助触媒としての機能を果たす。そのため、第2酸化物粒子12は貴金属粒子13の近傍に配置されることが望ましい。
【0025】
第2酸化物粒子12は、金属酸化物としてジルコニウム酸化物のみを含むものであってもよいし、ジルコニウム酸化物とそれ以外の金属酸化物とを混合して含むものであってもよい。第2酸化物粒子12が、ジルコニウム酸化物とそれ以外の金属酸化物とを含む場合には、例えば、第2酸化物粒子12として、ジルコニウムと希土類元素との複合酸化物(すなわち、Zr系複合酸化物)を使用することができる。この希土類元素としては、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)などを挙げることができる。また、これらの希土類元素の酸化物を2種類以上組合せて用いることもできる。
【0026】
第2酸化物粒子12の平均粒子径D50は、第1酸化物粒子11の平均粒子径D50と比較して小さい。第2酸化物粒子12のFE−SEM観察により得られる平均粒子径D50は、例えば、30〜100nmの範囲内とし、好ましくは30〜50nmの範囲内とする。この粒子径を過度に小さくすると、第2酸化物粒子12同士の凝集が比較的生じ易くなり、排ガス浄化用触媒10の耐久性能が低下する可能性がある。この粒子径を過度に大きくすると、貴金属との接触性が悪くなり、水蒸気改質反応の促進が弱まる可能性がある。第2酸化物粒子12の平均粒子径D50についても、第1酸化物粒子11の平均粒子径D50と同様の方法で求めることができる。但し、第2酸化物粒子12の平均粒子径D50を求める際には、粒子径の標準偏差は、40nm以下とする。
【0027】
なお、通常、第2酸化物粒子12の平均粒子径は、貴金属粒子13の平均粒子径と比較してより大きい。但し、本発明では必ずしもこれに限定はされない。
排ガス浄化用触媒10中に含まれる第2酸化物粒子12の量は、排ガス浄化用触媒10の質量を基準として、例えば、5〜20質量%(wt%)の範囲内とすることが好ましく、5〜10wt%の範囲内とすることがより好ましい。この第2酸化物粒子12の量を過度に小さくすると、貴金属と接触する第2酸化物粒子が少なくなり、水蒸気改質反応の促進が弱まる可能性がある。この第2酸化物粒子12の量を過度に大きくすると、貴金属と接触しない第2酸化物粒子が増え、第2酸化物量に見合った水蒸気改質性能が得られない可能性がある。なお、排ガス浄化用触媒10が、基材を含んでいる場合、上記の「排ガス浄化用触媒10の質量」は、排ガス浄化用触媒10のうち基材を除いた部分の質量を意味することとする。
【0028】
(貴金属粒子について)
貴金属粒子13は、HC及びCOの酸化反応並びにNOxの還元反応を触媒する役割を担っている。この貴金属粒子13としては、例えば、白金族元素を使用することができる。より具体的には、貴金属粒子13として、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、又は、これらの2つ以上の組合せを使用することができる。
【0029】
貴金属粒子13は、第2酸化物粒子12及びアルカリ土類金属酸化物粒子14のそれぞれと部分的に接触した状態で、第1酸化物粒子11に配置されている。ここで、貴金属粒子13と、第2酸化物粒子12またはアルカリ土類金属酸化物粒子14とが、部分的に接触するとは、粒子同士の表面が少なくとも一部において接触していることを意味する。各貴金属粒子13は、ほぼ均一に分布していることが好ましい。
【0030】
貴金属粒子13と第2酸化物粒子12との接触度合いは、例えば、「第2酸化物粒子と貴金属との相関係数」に基づいて評価することができる。この相関係数の値は、+1に近いほど各粒子同士の接触の度合いが高いこと意味する。排ガス浄化用触媒10においては、上記の相関係数は、0.70以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましい。なお、上記の相関係数は1未満とすることができる。
【0031】
なお、貴金属粒子13と第2酸化物粒子12との接触度合いの評価指標となる「第2酸化物粒子と貴金属との相関係数」は、例えば、以下のようにして求めることができる。
まず、排ガス浄化用触媒10の第1酸化物粒子11に含まれる元素(Al)、第2酸化物粒子に含まれる元素(Zr、Y、Nd、Pr、Laなど)、及び、貴金属元素(Pd、Pt、Rhなど)の特性X線強度を走査型電子顕微鏡(FE−SEM−EDX)により測定する。この測定では、200,000倍の倍率で観察する。また、1回の測定で測定対象とする領域の寸法を500nmとし、500nmの長さを20nm毎に25点分析する。
【0032】
続いて、得られた測定値を以下の各式に当てはめ、「CA,P/Z」、「σA」、及び、「σP/Z」の各数値を算出した後、以下の式(2)に基づいて、相関係数(ρA,P/Z)を算出する。ここで、第1酸化物粒子11に含まれる元素の測定値を「A」、第2酸化物粒子12に含まれる元素の測定値を「Z」、貴金属元素の測定値を「P」とする。また、各測定値Aの平均値を「Aav」、各測定値Zの平均値を「Zav」、各測定値Pの平均値を「Pav」とする。
【0033】
CA,P/Z=1/nΣ[(A−Aav)(P/Z−Pav/Zav)n=1
(A−Aav)(P/Z−Pav/Zav)n=2+… ]
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
相関係数(ρA,P/Z)=(CA,P/Z)/(σA・σP/Z) (2)
上記の式(2)で得られる相関係数の値が+1に近いほど、第2酸化物粒子と貴金属との接触度合いが高いことを意味する。
【0037】
排ガス浄化用触媒10中に含まれる貴金属の量は、排ガス浄化用触媒10の質量を基準として、例えば、0.1〜10wt%の範囲内とし、好ましくは0.3〜5wt%の範囲内とする。この貴金属の量を過度に小さくすると、排ガス浄化用触媒10に導入可能な単位質量当たりの貴金属量が少なくなり、その初期性能が低下する可能性がある。この貴金属の量を過度に大きくすると、貴金属粒子13の分散性が悪化して、貴金属粒子13の凝集が生じ易くなる可能性があり、貴金属量に見合った浄化性能が得られない可能性がある。なお、排ガス浄化用触媒10が、基材を含んでいる場合、上記の「排ガス浄化用触媒10の質量」は、排ガス浄化用触媒10のうち基材を除いた部分の質量を意味することとする。
【0038】
第2酸化物粒子12と貴金属粒子13とのモル比(第2酸化物粒子12/貴金属粒子13)は、例えば、3〜15の範囲内とし、好ましくは5〜10とする。この比率を過度に小さくすると、貴金属と第2酸化物粒子との接触度合いが低くなり、水蒸気改質反応の促進が弱まる可能性がある。この比率を過度に大きくすると、貴金属と接触しない第2酸化物粒子の量が増え、第2酸化物量に見合った水蒸気改質反応の促進が見られない可能性がある。
【0039】
(アルカリ土類金属酸化物粒子について)
本実施形態の排ガス浄化用触媒10においては、アルカリ土類金属を酸化物粒子の状態で、第1酸化物粒子11に配置させている。アルカリ土類金属酸化物粒子14は、触媒として機能する貴金属のHC被毒を抑制し、触媒の排ガス浄化性能を維持するという役割を担っている。より具体的には、アルカリ土類金属酸化物粒子14として、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、又は、これらの2つ以上の組合せを使用することができる。
【0040】
上記したように、アルカリ土類金属酸化物粒子14は、貴金属粒子13と部分的に接触した状態で、第1酸化物粒子11に配置されている。
貴金属粒子13とアルカリ土類金属酸化物粒子14との接触度合いは、例えば、「アルカリ土類金属酸化物と貴金属との相関係数」に基づいて評価することができる。この相関係数の値は、+1に近いほど各粒子同士の接触の度合いが高いこと意味する。排ガス浄化用触媒10においては、上記の相関係数は、0.70以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましい。なお、上記の相関係数は1未満とすることができる。
【0041】
なお、貴金属粒子13とアルカリ土類金属酸化物粒子14との接触度合いの評価指標となる「アルカリ土類金属酸化物と貴金属との相関係数」は、例えば、以下のようにして求めることができる。
【0042】
まず、排ガス浄化用触媒10の第1酸化物粒子11に含まれる元素(Al)、アルカリ土類金属酸化物粒子14に含まれるアルカリ土類金属元素(Ba、Sr、Caなど)、及び、貴金属元素(Pd、Pt、Rhなど)の特性X線強度を走査型電子顕微鏡(FE−SEM−EDX)により測定する。この測定では、200,000倍の倍率で観察する。また、1回の測定で測定対象とする領域の寸法を500nmとし、500nmの長さを20nm毎に25点分析する。
【0043】
続いて、得られた測定値を以下の各式に当てはめ、「CA,P/B」、「σA」、及び、「σB/P」の各数値を算出した後、以下の式(3)に基づいて、相関係数(ρA,B/P)を算出する。ここで、第1酸化物粒子11に含まれる元素の測定値を「A」、アルカリ土類金属元素の測定値を「B」、貴金属元素の測定値を「P」とする。また、各測定値Aの平均値を「Aav」、各測定値Bの平均値を「Bav」、各測定値Pの平均値を「Pav」とする。
【0044】
CA,P/B=1/nΣ[(A−Aav)(P/B−Pav/Bav)n=1
(A−Aav)(P/B−Pav/Bav)n=2+… ]
【0045】
【数4】
【0046】
【数5】
【0047】
相関係数(ρA,P/B)=(CA,P/B)/(σA・σP/B) (3)
上記の式(3)で得られる相関係数の値が+1に近いほど、アルカリ土類金属酸化物と貴金属との接触度合いが高いことを意味する。
【0048】
アルカリ土類金属酸化物粒子14の平均粒子径D50は、第1酸化物粒子11の平均粒子径D50と比較して小さい。アルカリ土類金属酸化物粒子14のFE−SEM観察により得られる平均粒子径D50は、例えば、5〜50nmの範囲内とし、好ましくは5〜30nmの範囲内とする。この粒子径を過度に小さくすると、アルカリ土類金属酸化物が凝集し易くなり、排ガス浄化用触媒10の耐久性能が低下する可能性がある。この粒子径を過度に大きくすると、貴金属との接触性が悪くなり、HC被毒抑制効果が得られない可能性がある。アルカリ土類金属酸化物粒子14の平均粒子径D50についても、第1酸化物粒子11の平均粒子径D50と同様の方法で求めることができる。但し、アルカリ土類金属酸化物粒子14の平均粒子径D50を求める際には、粒子径の標準偏差は、20nm以下とする。
【0049】
なお、通常、アルカリ土類金属酸化物粒子14の平均粒子径は、貴金属粒子13の平均粒子径と比較してより大きく、また、第2酸化物粒子12の平均粒子径と比較して小さい。但し、本発明では必ずしもこれに限定はされない。
【0050】
排ガス浄化用触媒10中に含まれるアルカリ土類金属酸化物の量は、排ガス浄化用触媒10の質量を基準として、例えば、1〜15wt%の範囲内とすることが好ましく、3〜10wt%の範囲内とすることがより好ましい。このアルカリ土類金属酸化物の量を過度に小さくすると、貴金属のHC被毒を抑制する効果が低減し、触媒の排ガス浄化性能が低下する可能性がある。このアルカリ土類金属酸化物の量を過度に大きくすると、貴金属粒子がアルカリ土類金属酸化物によってカバーリングされ、貴金属粒子の外界との接触面積が低下し、触媒の排ガス浄化性能が低下する可能性がある。なお、排ガス浄化用触媒10が、基材を含んでいる場合、上記の「排ガス浄化用触媒10の質量」は、排ガス浄化用触媒10のうち基材を除いた部分の質量を意味することとする。
【0051】
アルカリ土類金属酸化物粒子14と貴金属粒子13とのモル比(アルカリ土類金属酸化物粒子14/貴金属粒子13)は、例えば、1〜10の範囲内とし、好ましくは2〜5とする。この比率を過度に小さくすると、貴金属と第2酸化物粒子との接触度合いが低くなり、HC被毒抑制効果が低くなる可能性がある。この比率を過度に大きくすると、貴金属粒子がアルカリ土類金属酸化物によってカバーリングされ、貴金属粒子の外界との接触面積が低下し、触媒の排ガス浄化性能が低下する可能性がある。
【0052】
(排ガス浄化用触媒の製造方法)
続いて、排ガス浄化用触媒10の製造方法の一例について説明する。
先ず、水等の液体中に第1酸化物粒子11を分散させ、その液体に貴金属粒子13の塩を含む水溶液を投入することで、第1酸化物粒子11の表面に貴金属粒子13を吸着担持させる。その後、得られた固体を濾別し、貴金属粒子13が担持された第1酸化物粒子11の粉末を得る。
【0053】
続いて、得られた粉末を水等の液体中に分散させ、その液体にアルカリ土類金属酸化物を、ヘキサナトリウムベンゼンヘキサチオラート(以下、BHTともいう)とともに加える。これを濾過し、濾過後の固形物を加熱処理などによって水分除去した後、焼成処理を行い、第1酸化物粒子11上にアルカリ土類金属酸化物粒子14が配置された組成物の粉末を得る。
【0054】
次に、得られた粉末を水等の液体中に分散させ、その液体にZr系酸化物(第2酸化物粒子12)をBHTとともに加える。これを濾過し、濾過後の固形物を加熱処理などによって水分除去した後、焼成処理を行うことで、排ガス浄化用触媒10を得ることができる。
【0055】
なお、上記した製造方法では、第1酸化物粒子11に対して、貴金属粒子13、アルカリ土類金属酸化物粒子14、及び第2酸化物粒子12を、この順序で加えているが、添加の順序は必ずしもこれに限定はされず、適宜変更することができる。但し、貴金属粒子13と、アルカリ土類金属酸化物粒子14及び第2酸化物粒子12との接触度合いをより高めるためには、上記した順序で各微細粒子を加えることが好ましい。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は上述したような実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々な態様で実施し得る。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
以下の実施例1〜38に記載の方法にしたがって、本発明にかかる排ガス浄化用触媒を製造した。また、本発明の排ガス浄化用触媒と比較するために、以下の比較例1〜4に記載の方法にしたがって排ガス浄化用触媒を製造した。
【0058】
〔実施例1〕
アルミニウム酸化物(以下、Al23という)87.48gを1000mlのイオン交換水中で分散させ、ポリビニルアルコール(以下、PVAという、重合度約2000、Pdに対しモル比で0.01倍添加)、Pd硝酸塩水溶液(Pdとして1.00g)を投入し酸化物表面にPdを吸着担持させ、吸引濾過で水溶液を除去した。濾液をICP発光分光で分析したところ、Pd担持効率は100%であった。Pd担持量は最終製品に対し、1wt%とした。
【0059】
上記担持粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、ヘキサナトリウムベンゼンヘキサチオラート(BHT)3.78g(Pdと等モル)、粒度D50が20nmの酸化Ba(以下、BaOという)5.76gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成し、Pdの近傍にBaOを担持させた。BaO担持量は最終製品に対し、5.76wt%とした。
【0060】
得られた粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、BHT7.56g(Pdに対しモル比で2倍)、粒度D50が40nmのジルコニウム−イットリウム酸化物(ZrO2:Y23=8:2(質量比)、以下、Z8Y2という)6.75gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成し、Pdの近傍にZ8Y2を担持させた。Z8Y2担持量は最終製品に対し、6.75wt%とした。
【0061】
得られた粉末を圧粉成型、粉砕して粒度を0.5〜1.0mmのペレット状に整粒した触媒A10gを得た。
〔実施例2〕
実施例1に対して、Pd硝酸塩水溶液の代わりにジニトロジアンミンRh硝酸溶液を用いたこと、5.76gのBaOの代わりに5.96gのBaOを用いたこと、6.75gのZ8Y2の代わりに6.98gのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒B10gを得た。Rh担持量は1wt%、BaO担持量は5.96wt%、Z8Y2担持量は6.98wt%とした。
【0062】
〔実施例3〕
実施例1に対して、Pd硝酸塩水溶液の代わりにジニトロジアンミンPt硝酸溶液を用いたこと、5.76gのBaOの代わりに3.14gのBaOを用いたこと、6.75gのZ8Y2の代わりに3.68gのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒C10gを得た。Pt担持量は1wt%、BaO担持量は3.14wt%、Z8Y2担持量は3.68wt%とした。
【0063】
〔実施例4〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに酸化Ca(以下、CaOという)2.11gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒E10gを得た。Pd担持量は1wt%、CaO担持量は2.11wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0064】
〔実施例5〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに酸化Sr(以下、SrOという)3.89gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒F10gを得た。Pd担持量は1wt%、SrO担持量は3.89wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0065】
〔実施例6〕
実施例1に対して、粒度D50が20nmのBaOの代わりに、粒度D50が2nmのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒G10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0066】
〔実施例7〕
実施例1に対して、粒度D50が20nmのBaOの代わりに、粒度D50が5nmのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒H10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0067】
〔実施例8〕
実施例1に対して、粒度D50が20nmのBaOの代わりに、粒度D50が30nmのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒I10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0068】
〔実施例9〕
実施例1に対して、粒度D50が20nmのBaOの代わりに、粒度D50が50nmのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒J10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0069】
〔実施例10〕
実施例1に対して、粒度D50が20nmのBaOの代わりに、粒度D50が100nmのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒K10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0070】
〔実施例11〕
実施例1に対して、Z8Y2 6.75gの代わりに、ジルコニウム酸化物(ZrO2)(以下、Z10Y0という)5.79gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒L10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z10Y0担持量は5.79wt%とした。
【0071】
〔実施例12〕
実施例1に対して、Z8Y2 6.75gの代わりに、ジルコニウム−イットリウム酸化物(ZrO2:Y23=9:1(質量比)、以下、Z9Y1という)6.27gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒M10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z9Y1担持量は6.27wt%とした。
【0072】
〔実施例13〕
実施例1に対して、Z8Y2 6.75gの代わりに、ジルコニウム−イットリウム酸化物(ZrO2:Y23=7:3(質量比)、以下、Z7Y3という)7.24gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒N10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z7Y3担持量は7.24wt%とした。
【0073】
〔実施例14〕
実施例1に対して、Z8Y2 6.75gの代わりに、ジルコニウム−イットリウム酸化物(ZrO2:Y23=6:4(質量比)、以下、Z6Y4という)7.72gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒O10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z6Y4担持量は7.72wt%とした。
【0074】
〔実施例15〕
実施例1に対して、Z8Y2 6.75gの代わりに、ジルコニウム−ランタン酸化物(ZrO2:La23=8:2(質量比)、以下、Z8L2という)7.69gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒P10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8L2担持量は7.69wt%とした。
【0075】
〔実施例16〕
実施例1に対して、Z8Y2 6.75gの代わりに、ジルコニウム−プラセオジム酸化物(ZrO2:Pr611=8:2(質量比)、以下、Z8P2という)14.23gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒Q10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8P2担持量は14.23wt%とした。
【0076】
〔実施例17〕
実施例1に対して、Z8Y2 6.75gの代わりに、ジルコニウム−ネオジム酸化物(ZrO2:Nd23=8:2(質量比)、以下、Z8N2という)7.79gを用いたこと以外は同様の手順で、触媒R10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8N2担持量は7.79wt%とした。
【0077】
〔実施例18〕
実施例1に対して、粒度D50が40nmのZ8Y2の代わりに、粒度D50が10nmのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒S10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0078】
〔実施例19〕
実施例1に対して、粒度D50が40nmのZ8Y2の代わりに、粒度D50が30nmのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒T10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0079】
〔実施例20〕
実施例1に対して、粒度D50が40nmのZ8Y2の代わりに、粒度D50が50nmのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒U10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0080】
〔実施例21〕
実施例1に対して、粒度D50が40nmのZ8Y2の代わりに、粒度D50が100nmのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒V10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%%とした。
【0081】
〔実施例22〕
実施例1に対して、粒度D50が40nmのZ8Y2の代わりに、粒度D50が200nmのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒W10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0082】
〔実施例23〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに、0.72gのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒X10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は0.72wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0083】
〔実施例24〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに、1.44gのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒Y10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は1.44wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0084】
〔実施例25〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに、2.88gのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒Z10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は2.88wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0085】
〔実施例26〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに、7.20gのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒AA10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は7.20wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0086】
〔実施例27〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに、14.41gのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒AB10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は14.41wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0087】
〔実施例28〕
実施例1に対して、5.76gのBaOの代わりに、28.82gのBaOを用いたこと以外は同様の手順で、触媒AC10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は28.82wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0088】
〔実施例29〕
実施例1に対して、6.75gのZ8Y2の代わりに、1.35gのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒AD10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は1.35wt%とした。
【0089】
〔実施例30〕
実施例1に対して、6.75のZ8Y2の代わりに、4.05gのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒AE10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は4.05wt%とした。
【0090】
〔実施例31〕
実施例1に対して、6.75gのZ8Y2の代わりに、13.51gのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒AF10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は13.51wt%とした。
【0091】
〔実施例32〕
実施例1に対して、6.75gのZ8Y2の代わりに、20.26gのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒AG10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は20.26wt%とした。
【0092】
〔実施例33〕
実施例1に対して、6.75gのZ8Y2の代わりに、40.52gのZ8Y2を用いたこと以外は同様の手順で、触媒AH10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は40.52wt%とした。
【0093】
〔比較例1〕
実施例1に対して、BHTを添加しないこと以外は同様の手順で触媒AI10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0094】
〔比較例2〕
Al23 87.48gを1000mlのイオン交換水中で分散させ、PVA(重合度約2000、Pdに対しモル比で0.01倍添加)、Pd硝酸塩水溶液(Pdとして1.00g)、BHT11.34g(Pdに対しモル比で3倍)、粒度D50が20nmのBaO5.76g、粒度D50が40nmのZ8Y2 6.75gを投入し、酸化物表面にPd、BaO、Z8Y2を吸着担持させ、吸引濾過で水溶液を除去した。濾液をICP発光分光で分析したところ、Pd担持効率は100%であった。
【0095】
濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成した。Pd担持量、BaO担持量、Z8Y2担持量は最終製品に対し、それぞれ1wt%、5.76wt%、6.75wt%とした。
【0096】
得られた粉末を圧粉成型、粉砕して粒度を0.5〜1.0mmのペレット状に整粒した触媒AJ10gを得た。
〔実施例34〕
Al23 87.48gを1000mlのイオン交換水中で分散させ、PVA(重合度約2000、Pdに対しモル比で0.01倍添加)、Pd硝酸塩水溶液(Pdとして1.00g)を投入し、酸化物表面にPdを吸着担持させ、吸引濾過で水溶液を除去した。濾液をICP発光分光で分析したところ、Pd担持効率は100%であった。Pd担持量は最終製品に対し、1wt%とした。
【0097】
上記担持粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、BHT3.78g(Pdと等モル)、粒度D50が40nmのZ8Y2 6.75gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成し、Pdの近傍にZ8Y2を担持させた。Z8Y2担持量は最終製品に対し、6.75wt%とした。
【0098】
得られた粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、BHT7.56g(Pdに対しモル比で2倍)、粒度D50が20nmのBaO5.76gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成し、Pdの近傍にBaOを担持させた。BaO担持量は最終製品に対し、5.76wt%とした。
【0099】
得られた粉末を圧粉成型、粉砕して粒度を0.5〜1.0mmのペレット状に整粒した触媒AK10gを得た。
〔実施例35〕
Al23 87.48gを1000mlのイオン交換水中で分散させ、粒度D50が40nmのZ8Y2 6.75gを投入し、加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成して酸化物表面にZ8Y2を吸着担持させた。Z8Y2担持量は最終製品に対し、6.75wt%とした。
【0100】
上記担持粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、PVA(重合度約2000、Pdに対しモル比で0.01倍添加)、Pd硝酸塩水溶液(Pdとして1.00g)、BHT3.78g(Pdと等モル)を投入し、酸化物表面にPdを吸着担持させ、吸引濾過で水溶液を除去した。濾液をICP発光分光で分析したところ、Pd担持効率は100%であった。Pd担持量は最終製品に対し、1wt%とした。
【0101】
得られた粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、BHT7.56g(Pdに対しモル比で2倍)、粒度D50が20nmのBaO5.76gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成し、BaOを担持させた。BaO担持量は最終製品に対し、5.76wt%とした。
【0102】
得られた粉末を圧粉成型、粉砕して粒度を0.5〜1.0mmのペレット状に整粒した触媒AL10gを得た。
〔比較例3〕
Al23 87.48gを1000mlのイオン交換水中で分散させ、粒度D50が40nmのZ8Y2 6.75gを投入し、加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成して酸化物表面にZ8Y2を担持させた。Z8Y2担持量は最終製品に対し、6.75wt%とした。
【0103】
上記担持粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、BHT3.78g(Pdと等モル)、粒度D50が20nmのBaO5.76gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成してBaOを担持させた。BaO担持量は最終製品に対し、5.76wt%とした。
【0104】
得られた粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、PVA(重合度約2000、Pdに対しモル比で0.01倍添加)、Pd硝酸塩水溶液(Pdとして1.00g)、BHT7.56g(Pdに対しモル比で2倍)を投入し、Pdを吸着担持させ、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成してPdを担持させた。濾液をICP発光分光で分析したところ、Pd担持効率は100%であった。Pd担持量は最終製品に対し、1wt%とした。
【0105】
得られた粉末を圧粉成型、粉砕して粒度を0.5〜1.0mmのペレット状に整粒した触媒AM10gを得た。
〔実施例36〕
Al23 87.48gを1000mlのイオン交換水中で分散させ、粒度D50が20nmのBaO5.76gを投入し、加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成して酸化物表面にBaOを担持させた。BaO担持量は最終製品に対し、5.76wt%とした。
【0106】
上記担持粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、PVA(重合度約2000、Pdに対しモル比で0.01倍添加)、Pd硝酸塩水溶液(Pdとして1.00g)、BHT3.78g(Pdと等モル)を投入し、酸化物表面にPdを吸着担持させ、吸引濾過で水溶液を除去した。濾液をICP発光分光で分析したところ、Pd担持効率は100%であった。Pd担持量は最終製品に対し、1wt%とした。
【0107】
得られた粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、BHT7.56g(Pdに対しモル比で2倍)、粒度D50が40nmのZ8Y2 6.75gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成し、Z8Y2を担持させた。Z8Y2担持量は最終製品に対し、6.75wt%とした。
【0108】
得られた粉末を圧粉成型、粉砕して粒度を0.5〜1.0mmのペレット状に整粒した触媒AN10gを得た。
〔比較例4〕
Al23 87.48gを1000mlのイオン交換水中で分散させ、粒度D50が20nmのBaO5.76gを投入し、加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成して酸化物表面にBaOを担持させた。BaO担持量は最終製品に対し、5.76wt%とした。
【0109】
上記担持粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、BHT3.78g(Pdと等モル)、粒度D50が40nmのZ8Y2 6.75gを投入し、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成してZ8Y2を担持させた。Z8Y2担持量は最終製品に対し、6.75wt%とした。
【0110】
得られた粉末を1000mlのイオン交換水中で分散させ、PVA(重合度約2000、Pdに対しモル比で0.01倍添加)、Pd硝酸塩水溶液(Pdとして1.00g)、BHT7.56g(Pdに対しモル比で2倍)を投入し、Pdを吸着担持させ、濾過後の固形物を加熱水分除去した後、大気中500℃で1時間焼成してPdを担持させた。濾液をICP発光分光で分析したところ、Pd担持効率は100%であった。Pd担持量は最終製品に対し、1wt%とした。
【0111】
得られた粉末を圧粉成型、粉砕して粒度を0.5〜1.0mmのペレット状に整粒した触媒AO10gを得た。
〔実施例37〕
実施例1に対して、Z8Y2投入時にBHTを投入しないこと以外は同様の手順で、触媒AP10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0112】
〔実施例38〕
実施例34に対し、BaO投入時にBHTを投入しないこと以外は同様の手順で、触媒AQ10gを得た。Pd担持量は1wt%、BaO担持量は5.76wt%、Z8Y2担持量は6.75wt%とした。
【0113】
以上の実施例1〜38、及び、比較例1〜4で得られた排ガス浄化用触媒を用いて、以下の実験を行った。
(耐久試験)
各実施例及び各比較例において得られたペレット状の排ガス浄化用触媒を、流通式の耐久試験装置に配置した。この装置に、窒素に酸素(O2)を2%加えたリーンガスと、窒素に一酸化炭素(CO)を4%加えたリッチガスとを、触媒床温度950℃において500ml/minの流量で、5分周期で交互に20時間流通させる耐久試験を行った。
【0114】
(活性評価)
各実施例及び各比較例において得られた排ガス浄化用触媒を常圧固定床流通反応装置に配置し、ストイキ相当のモデルガスを流通させながら100℃から500℃まで12℃/分の速度で昇温し、その間のHC、CO、NOx浄化率を連続的に測定した。上記の耐久試験後の50%浄化温度を、表1,2に示す。
【0115】
(触媒中の第1酸化物粒子11、第2酸化物粒子12、及びアルカリ土類金属酸化物粒子14の粒子径D50評価)
各実施例及び各比較例において得られた排ガス浄化用触媒について、上述した「FE−SEM観察により得られる平均粒子径D50」の算出方法にしたがって、第1酸化物粒子11、第2酸化物粒子12、及びアルカリ土類金属酸化物粒子14の平均粒子径D50を求めた。その結果を表1,2に示す。
【0116】
(第2酸化物粒子と貴金属の接触度合い評価)
第2酸化物粒子と貴金属の接触度合いを評価するために、各実施例及び各比較例において得られた排ガス浄化用触媒について、上述した「第2酸化物粒子と貴金属との相関係数」の算出方法にしたがって、相関係数を求めた。その結果を表1,2に示す。
【0117】
(アルカリ土類金属酸化物と貴金属の接触度合い評価)
アルカリ土類金属酸化物と貴金属の接触度合いを評価するために、各実施例及び各比較例において得られた排ガス浄化用触媒について、上述した「アルカリ土類金属酸化物と貴金属との相関係数」の算出方法にしたがって、相関係数を求めた。その結果を表1,2に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
なお、表1及び表2において、比率Aは、アルカリ土類金属酸化物粒子14と貴金属粒子13とのモル比(アルカリ土類金属酸化物粒子14/貴金属粒子13)を表し、比率Bは、第2酸化物粒子12と貴金属粒子13とのモル比(第2酸化物粒子12/貴金属粒子13)を表す。
【0121】
また、表1及び表2において、貴−アルカリは、アルカリ土類金属酸化物と貴金属との相関係数を表し、貴−Zr系は、第2酸化物粒子と貴金属との相関係数を表す。
図2には、表1に示す結果のうち、実施例1,34,35、及び、比較例1,2,3,4の排ガス浄化用触媒について、貴金属とアルカリ土類金属酸化物との相関係数に対する、NOxの50%浄化温度の測定結果をプロットしたグラフを示す。
【0122】
図2に示すように、貴金属とアルカリ土類金属酸化物との相関係数が0.70以上である実施例1,34,35の排ガス浄化用触媒は、該相関係数が0.70未満である比較例1,2,3,4の排ガス浄化用触媒と比較して、NOxの50%浄化温度を低くすることができた。さらに、相関係数が0.80以上である実施例1,34の排ガス浄化用触媒は、相関係数が0.76である実施例35の排ガス浄化用触媒と比較して、NOxの50%浄化温度を低くすることができた。この結果より、排ガス浄化用触媒の浄化性能をより高めるためには、相関係数は、0.70以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましいことがわかった。
【0123】
以上より、貴金属とアルカリ土類金属酸化物との相関係数が0.70以上である本発明の排ガス浄化用触媒は、比較例の排ガス浄化用触媒と比較して、触媒の三元性能を向上させることができることがわかった。これは、貴金属とアルカリ土類金属酸化物との相関係数が高くなるほど、貴金属のHC被毒抑制が効率よく行われるためであると考えられる。
【0124】
また、図3には、表1に示す結果のうち、実施例1,34,35、及び、比較例1,2,3,4の排ガス浄化用触媒について、貴金属とZr系酸化物との相関係数に対する、NOxの50%浄化温度の測定結果をプロットしたグラフを示す。
【0125】
図3に示すように、貴金属とZr系酸化物との相関係数が0.70以上である実施例1,34,35の排ガス浄化用触媒は、該相関係数が0.70未満である比較例1,2,3,4の排ガス浄化用触媒と比較して、NOxの50%浄化温度を低くすることができた。さらに、実施例1,34,35の各排ガス浄化用触媒間で比較すると、相関係数がより高くなるほどNOxの50%浄化温度を低くすることができることがわかった。この結果より、排ガス浄化用触媒の浄化性能をより高めるためには、相関係数は、0.70以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましいことがわかった。
【0126】
以上の結果より、貴金属とZr系酸化物との相関係数が0.70以上である本発明の排ガス浄化用触媒は、比較例の排ガス浄化用触媒と比較して、触媒の三元性能を向上させることができることがわかった。これは、貴金属とアルカリ土類金属酸化物との相関係数が高くなるほど、水蒸気改質反応が効率よく行われるためであると考えられる。
【0127】
また、貴金属とアルカリ土類金属酸化物との相関係数、及び、貴金属とZr系酸化物との相関係数の両方が0.70以上である排ガス浄化用触媒は、上記の各相関係数の何れかが0.70未満である排ガス浄化用触媒と比べて、排ガス浄化性能を向上させることができると言える。
【符号の説明】
【0128】
10…排ガス浄化用触媒、11…第1酸化物粒子、12…第2酸化物粒子、13…貴金属粒子(貴金属)、14…アルカリ土類金属酸化物粒子(アルカリ土類金属酸化物)
図2
図3
図1