(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ランプの配光パターンを変化制御する配光パターン制御手段と、ランプ光軸を左右方向に偏向制御するスイブル制御手段と、前記ランプ光軸を上下方向に制御するレベリング制御手段と、前記配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段を駆動制御するためのADB制御装置を備えた車両用ランプであって、前記ADB制御装置は、前記スイブル制御手段、レベリング制御手段の各アクチュエータと、前記配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段を駆動するためのそれぞれの駆動回路部を個別に組み込むことができる構成であることを特徴とする車両用ランプ。
前記配光パターン制御手段のアクチュエータは、ランプの照射光の一部を遮光するシャッター式シェード又はロータリー式シェードと、このシェードを駆動する電気モータで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプ
前記ADB制御装置には、前記配光パターン制御手段の駆動回路部と、前記スイブル制御手段のアクチュエータおよび駆動回路部と、前記レベリング制御手段のアクチュエータおよび駆動回路部の少なくとも1つが組み込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ランプ
前記ADB制御装置には、前記配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段の各駆動回路部をそれぞれ制御するためのマイコン部が組み込まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ランプ。
前記マイコン部には、前記配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段の各駆動回路部をそれぞれ異なる形態で制御するための情報が記憶されており、この記憶された情報に基づいて各駆動回路部を制御することを特徴とする請求項4に記載の車両用ランプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における配光パターン制御手段はロービーム配光とハイビーム配光を切り替えるためにヘッドランプ内に配設しているシェード(遮光板)を異なる2つの位置に切替移動する構成であるので、配光パターン制御手段を電磁ソレノイドで構成することができる。そのため、この配光パターン制御手段を前記したようにスイブル制御手段やレベリング制御手段とユニット化することが可能とされている。しかしながら、ADB制御では、多様な配光パターンを構成するためにシェードの制御形態が複雑なものとなり、これを実現するためには配光パターン制御手段のアクチュエータを電気モータで構成する必要がある。また、当該電気モータを制御するための制御回路(回路基板を含む電子装置)も必要となる。そして、ADB制御での配光パターン制御を行う電気モータはシェードの近傍に配置することが要求されるため、この電気モータをスイブル制御手段やレベリング制御手段とともにユニット化することは困難であり、結果としてヘッドランプの構造の簡略化、小型化、軽量化を実現することは困難になる。
【0006】
また、ADB制御での配光パターン制御手段として構成されているシェードとして、従来からシャッター式シェードとロータリー式シェードが提案されているが、後述する説明から分かるようにシャッター式シェードの場合にはADB制御を行うためにはスイブル制御手段が必須であり、ロータリー式シェードではスイブル制御手段は必要とされないこともある。そのため、特許文献1のように、スイブル制御手段とレベリング制御手段をユニット化すると、ロータリー式シェードを採用したヘッドランプに適用したときには不要なスイブル制御手段を装備することになり、その分ヘッドランプの軽量化に不利になる。
【0007】
特許文献2の技術は、1つのケースにレベリング制御手段やスイブル制御手段を選択的に内装すればよいので、これらレベリング制御とスイブル制御の各アクチュエータの構成を簡略化する上では有効となる。しかし、これらのアクチュエータを駆動するためにはそれぞれ専用の駆動回路が必要であり、また配光パターンを制御するためにも専用の駆動回路が必要であるが、特許文献2ではこれらの駆動回路を備えることによってランプの構成が複雑になることについては解決されていない。特に、車両に装備されるランプの仕様の違いによって配光パターン、レベリング、スイブルの各制御形態が相違するとともに、右ランプと左ランプの違いによっても制御形態が相違するため、このような仕様の違いに対応したそれぞれ専用の駆動回路を備えることは駆動回路ないしこれを含む制御ユニットの構成が複雑になるとともに、経済的にも好ましいものではない。
【0008】
本発明の目的は、ADB制御を行うランプにおける配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段のアクチュエータや駆動回路を一体化したユニット構成のADB制御装置を構成することにより、ADB制御装置ないしはランプ全体の構造の簡略化、小型化、軽量化を可能にした車両用ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ランプの配光パターンを変化制御する配光パターン制御手段と、ランプ光軸を左右方向に偏向制御するスイブル制御手段と、ランプ光軸を上下方向に制御するレベリング制御手段と、これら配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段を駆動制御するためのADB制御装置を備えた車両用ランプであって、ADB制御装置は、スイブル制御手段、レベリング制御手段の各アクチュエータと、これら配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段を駆動するためのそれぞれの駆動回路部を個別に組み込むことができる構成であることを特徴とする。また、本発明においては、配光パターン制御手段のアクチュエータは、ランプの照射光の一部を遮光するシャッター式シェード又はロータリー式シェードと、このシェードを駆動する電気モータで構成されている。
【0010】
本発明にかかるADB制御装置は、配光パターン制御手段の駆動回路部と、スイブル制御手段のアクチュエータおよび駆動回路部と、レベリング制御手段のアクチュエータおよび駆動回路部の少なくとも1つが組み込まれる。
【0011】
また、本発明にかかるADB制御装置は、配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段の各駆動回路部をそれぞれ制御するための制御部が組み込まれている。この制御部には、配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段の各駆動回路部をそれぞれ異なる形態で制御するための情報が記憶されており、この記憶された情報に基づいて各駆動回路部を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ADB制御装置には配光パターン制御、スイブル制御、レベリング制御の各アクチュエータを選択して組み込み、さらには各アクチュエータを駆動するための駆動回路部を選択して組み込み、あるいはこれらを組み込まない構成とすることが可能であるので、ADB制御装置の構造を簡略化し、当該ADB制御装置およびこれを備えるランプの小型化、軽量化が実現できる。また、ADB制御装置に組み込む制御部を配光パターン制御、スイブル制御、レベリング制御に共用することにより、ADB制御装置のさらなる簡略化、小型化、軽量化が実現できる。さらに、制御部に記憶された情報に基づいて各制御手段を制御する構成とすることにより、ADB制御装置の汎用化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車のヘッドランプに適用した実施形態1の概念構成図である。この実施形態1では、ヘッドランプHLはランプボディ11と透明カバー12とで構成されるランプハウジング1内にプロジェクタ型のランプユニット2を内装した構成であり、このランプユニット2から照射される光の配光パターンと、当該ランプユニット2のランプ光軸Lxの方向を制御することによってADB制御を行うようになっている。なお、以下の説明において、ADB制御とはランプユニット2の配光パターンを制御することを含むとともに、配光パターンを制御したランプユニット2のランプ光軸Lxを左右、上下に偏向制御することを含む制御である。また、前記ランプハウジング1内にはランプユニット2の周囲が透明カバー12を透して外部に露見しないように疑似リフレクタ(エクステンション)13が内装されている。
【0015】
前記ランプユニット2は、ベース部材25に搭載されたLED等の半導体発光素子からなる光源21と、この光源21を発光させたときに出射される光を前方に向けて集光状態に反射するリフレクタ22と、集光された光の一部を遮光するためのシェード23と、このシェード23により遮光されない光を前方に向けて照射するための照射レンズ24を備えている。
【0016】
前記シェード23は、この実施形態1ではシャッター式シェードで構成されている。このシャッター式シェードは、
図2にランプユニット2の正面に向かって右斜め方向から見た外観斜視図に示すように、ランプ光軸Lxに対して左右方向に並んで配置された一対のシェード羽根231R,231Lで構成されている。なお、左右方向とはランプの後方から見た方向である。これらのシェード羽根231R,231Lはそれぞれ支軸232R,232Lによってランプ光軸Lxと直交する鉛直面上で傾動可能に支持されるとともに、それぞれに一体に設けられたセクター歯車233R,233Lはランプ光軸Lxの左右両側に配置された一対のシェードモータ234R,234Lのピニオン235R,235Lに歯合されている。これにより、各シェードモータ234R,234Lを回転駆動することにより、各シェード羽根231R,231Lは前記したランプ光軸Lxと直交する鉛直面上において所要角度範囲で回動するように構成される。各シェード羽根231R,231Lの回動角度位置を独立して変化させることによってランプユニット2の照射光束の遮光範囲を変化させ、ランプユニット2の配光パターンを変化制御する。したがって、前記一対のシェードモータ234R,234Lと前記一対のシェード羽根231R,231Lを含むシャッター式シェード23は配光パターンアクチュエータを構成することになる。
【0017】
この配光パターンアクチュエータ23における配光パターン制御によれば、例えば、左右のシェード羽根231R,231Lが下方に後退されたときには
図3(a)に示すように、遮光範囲は殆ど無く、自動車の前方領域にハイビーム配光の配光パターンが形成される。両方のシェード羽根231R,231Lが上方に移動されたこときには、
図3(b)のように、両シェード羽根231R,231Lによって上方領域が遮光され、自動車の前方領域にロービーム配光の配光パターンが形成される。このロービーム配光の状態から右側のシェード羽根231Rのみが下方に移動されると、
図3(c)のように、自動車(対向車)CARの前方領域の右側の対向車線側の領域を遮光し、左側の自車線側の領域を照射する、いわゆる左片側ハイビーム配光の配光パターンが形成される。
【0018】
図1に示したように、前記ランプユニット2はエイミングスクリュ31によって鉛直上下方向の傾動位置が調整できるように前記ランプハウジング1内に支持された枠状の傾動フレーム3内に配設されている。そして、前記ランプユニット2は上端部の軸部に設けたボール軸受け32において前記傾動フレーム3に対して上下方向および水平左右方向に傾動可能に連結されている。このランプユニット2の上下方向の傾動によってランプ光軸Lxが鉛直方向に偏向され、レベリング制御が可能とされている。また、ランプユニット2の左右方向の傾動によってランプ光軸Lxが水平方向に偏向され、スイブル制御が可能とされている。これらのレベリング制御とスイブル制御は必要に応じて前記した配光パターン制御と協働してADB制御を実行することになる。
【0019】
このADB制御を実現するために、前記傾動フレーム3の下側にADB制御装置4が配設されており、このADB制御装置4によって前記配光パターンアクチュエータ(シャッター式シェード)23の動作と、前記傾動フレーム3の上下方向の傾動と、前記ランプユニット2の左右方向の傾動を制御する。
図4はこのADB制御装置4の内部構造を概念的に示す平面図である。ADB制御装置4のケース41は後述するように傾動フレーム3に対してランプ光軸Lx方向にのみ相対移動できるように当該傾動フレーム3の下面に支持されている。このケース41にはコネクタ42が設けられており、このコネクタ42を介してADB制御装置4は自動車の各部を制御するために自動車の車体の一部に設けられている車両ECU(電子制御ユニット)100に電気接続されている。この車両ECU100は、図示は省略するが前方監視カメラやその他のセンサーが接続されており、これら前方監視カメラやセンサーから得られる情報に基づいてADB制御のための配光制御信号を生成し、この配光制御信号を前記ADB制御装置4にまで送出するようになっている。
【0020】
また、前記ケース41内には、前記車両ECU100との間で配光制御信号の通信を行うための通信回路部43と、この通信回路部43を通して入力される配光制御信号に基づいて所要の演算を行い、ランプユニット2における配光パターン制御、スイブル制御、レベリング制御のための制御信号を生成して出力する制御部、ここではマイコン部44が内装されている。さらに、この実施形態1では、前記ケース41内には、スイブルアクチュエータ5とレベリングアクチュエータ6が内装されるとともに、前記マイコン部44から出力される制御信号に基づいて前記した配光パターンアクチュエータ23と、これらスイブルアクチュエータ5とレベリングアクチュエータ6の駆動をそれぞれ制御する配光パターン駆回路部45、スイブル駆動回路部46、レベリング駆動回路部47が内装されている。なお、前記通信回路部43とマイコン部44は、これら配光パターン駆動回路部45、スイブル駆動回路部46、レベリング駆動回路部47と共に1つの回路基板上に組み立てられていても、あるいはそれぞれ個別の回路基板に組み立てられていてもよい。
【0021】
前記ケース41に内装されているスイブルアクチュエータ5とレベリングアクチュエータ6の構成は、基本的には特許文献2に記載のものと同じであるので詳細な説明は省略するが、
図4に示すように、スイブルアクチュエータ5は、前記ケース41内に内装されたスイブルモータ51と、このスイブルモータ51に連結されて減速機構を構成する複数の歯車52〜55と、これら歯車のうち最終歯車55に歯合されて所要角度で回動されるセクター歯車56と、このセクター歯車56と一体に設けられた回転駆動軸57とで構成されている。この回転駆動軸57は前記ケース41の上面から突出され、前記傾動フレーム3の下部に設けた穴を下から上に向けて挿通された上で前記ランプユニット2の下側一部、すなわち前記したボール軸受け32の直下部位に結合されている。そのため、スイブルモータ51を回転駆動することによって回転駆動軸57が回転駆動され、これに結合されたランプユニット2が左右方向に傾動されてスイブル制御が行われることになる。
【0022】
また、
図4に示しているように、レベリングアクチュエータ6は、前記ケース41に内装されたレベリングモータ61と、このレベリングモータ61に連結されて減速機構を構成する複数の歯車62〜64と、最終歯車64と一体に設けられたピニオン65とで構成されている。このピニオン65は、
図1に示したように、ランプ光軸Lxと平行な方向に向けて延長されて前記傾動フレーム3の下面に固定されているラック33に歯合されている。これにより、レベリングモータ61を回転駆動することによってピニオン65はラック33に歯合された状態で軸転されるため、相対的にピニオン65はラック33に対してランプ光軸Lx方向に沿って進退動作され、この進退動作によってピニオン65を支持しているケース41が
図1に矢印で示すようにランプ光軸Lx方向に進退移動され、これによりランプユニット2が上下方向に傾動されてレベリング制御が行われることになる。
【0023】
そして、このADB制御装置4の前記配光パターン駆動回路部45は前記コネクタ42を介して前記配光パターンアクチュエータ(シャッター式シェード)23の一対のシェードモータ234R,234Lに電気接続され、当該配光パターン駆動回路部45によって配光パターンアクチュエータ23を駆動制御する。また、前記スイブル駆動回路部46は前記スイブルモータ51に電気接続され、前記レベリング駆動回路部47は前記レベリングモータ61に電気接続されており、これらの駆動回路部46,47はスイブルアクチュエータ5とレベリングアクチュエータ6を駆動制御する。
【0024】
この実施形態1においては、自動車の走行状況に伴って車両ECU100から配光制御信号がADB制御装置4に送信されてくると、ADB制御装置4では通信部43において受信し、マイコン部44はランプユニット2における配光パターン制御と、ランプユニット2のランプ光軸Lxの偏向制御を行うための制御信号を出力する。配光パターン駆動回路部45は制御信号を受けて配光パターンを決定し、配光パターンアクチュエータ23を駆動制御する。すなわち、左右のシェードモータ234R,234Lをそれぞれ回転制御して左右のシェード羽根231R,231Lの回動角度位置を制御することにより、
図3(a)〜(c)に示した配光パターンに制御する。
【0025】
そして、自車両に対する対向車CARの相対位置変化に伴ってランプユニット2をスイブル制御及び/又はレベリング制御することにより、対向車CARを眩惑することなくADB制御を実現する。すなわち、スイブル駆動回路部46は制御信号を受けてランプ光軸Lxの左右方向の角度、すなわちスイブル角を決定し、スイブルモータ51を回転制御し、スイブルアクチュエータ5によってランプユニット2をスイブル制御する。レベリング駆動回路部47は制御信号を受けてランプ光軸Lxの上下方向の角度、すなわちレベリング角を決定し、レベリングモータ61を回転制御し、レベリングアクチュエータ6によってランプユニット2をレベリング制御する。これらの制御により、例えば
図3(d)に示すように、対向車CARが接近したときにランプ光軸Lxを右下方の角度位置Lxaに偏向制御し、ランプユニット2の照射配光は対向車を眩惑することなく自車線側の広い領域を光照射する適正な配光に設定され、ADB制御が実現できることになる。
【0026】
このように、この実施形態では、配光パターンアクチュエータ23の駆動源が電気モータで構成されている場合でも、当該配光パターンアクチュエータ23を駆動するための配光パターン駆動回路部45をケース41内に内装し、さらにスイブル駆動回路部46およびスイブルアクチュエータ5と、レベリング駆動回路部47およびレベリングアクチュエータ6を当該ケース41に内装し、これらで1つのユニット化されたADB制御装置4として構成されているので、各駆動回路部やアクチュエータをそれぞれ個別に配設した構成のADB制御装置に比較してADB制御装置4の構造が簡略化できるとともに、ランプユニット2を含むヘッドランプHLの構造が簡略化でき、かつ小型化、軽量化が実現できる。また、ADB制御装置4に組み込む通信回路部43やマイコン部44を配光パターン駆動回路部45、スイブル駆動回路部46、レベリング駆動回路部47で共用の回路部として構成しているので、ADB制御装置4のさらなる簡略化、小型化、軽量化が実現できる。
【0027】
(実施形態2)
実施形態1のADB制御装置4は、ケース41内に配光パターン駆動回路部45とスイブル駆動回路部46と共にレベリング駆動回路部47が内装されているので、レベリングアクチュエータ6がADB制御装置4とは別体に構成されたヘッドランプにおいても適用することが可能である。
図5はその一例のヘッドランプHLの断面図であり、
図1と等価な部分に同一符号を付して説明は省略する。この実施形態2はランプボディ1に既存のレベリングアクチュエータ6Aが配設された例を示しており、このレベリングアクチュエータ6Aによって傾動フレーム3を上下方向に傾動してランプユニット2のレベリング制御を行うように構成されている。このレベリングアクチュエータ6Aは、レベリングモータ61Aの回転駆動によってランプ光軸Lxと平行な方向に進退する駆動ロッド66を備えた構成であり、駆動ロッド66の先端を傾動フレーム3の下端部にボールナット34を介して連結することにより、駆動ロッド66の進退動作に伴って傾動フレーム3が上下方向に傾動される。この場合、傾動フレーム3には実施形態1のラック33は不要となるが、そのまま残しておいてもよい。なお、
図5ではランプユニット2のシェードをロータリー式シェードで構成しているが、この構成については実施形態3において説明する。
【0028】
このような既存のレベリングアクチュエータ6Aを備えるヘッドランプHLにおいては、
図6にADB制御装置4の内部構造の配置図に示すように、ADB制御装置4のケース41内にレベリングアクチュエータを組み込まない構成とする。すなわち、
図4に示したレベリングモータ61、歯車62〜64、ピニオン65をケース41内に組み込まない構成とする。また、既存のレベリングアクチュエータ6Aが専用のレベリング駆動回路を備えている場合には、レベリング駆動回路部47をケース41内に組み込まないようにする。なお、既存のレベリングアクチュエータ6Aが専用のレベリング駆動回路部を備えていない場合には、ADB制御装置4のケース41にレベリング駆動回路部47を内装し、これを利用してレベリング制御を行うことができる。
【0029】
この実施形態2では、ランプユニット2における配光パターン制御とスイブル制御は前記実施形態1と同様にADB制御装置4によって可能である。また、レベリング制御に際しては既存のレベリングアクチュエータ6Aに備えられたレベリング駆動回路部47を利用することで、ADB制御装置4に内装するレベリング駆動回路部を省略することができる。これにより、実施形態1と同様にヘッドランプHLの構造が簡略化でき、小型化および軽量化が実現できる。さらにこの実施形態2ではケース41内にレベリングアクチュエータ6やレベリング駆動回路部47を組み込む必要がないので、ADB制御装置4のさらなる軽量化と、低コスト化も実現できることになる。
【0030】
(実施形態3)
本発明は、
図5に示したように、ランプユニット2のシェードをロータリー式シェード23Aで構成したヘッドランプに適用することも可能である。
図7はこのように構成した実施形態3におけるランプユニット2のロータリー式シェード23Aをランプユニット2の正面に向かって斜め右上から見た外観斜視図である。このロータリー式シェード23Aは、軸線がランプ光軸Lxと直交する左右方向に向けられた円柱軸236を有しており、この円柱軸236の円周一部に切欠き236aを設け、さらには円周複数箇所にそれぞれ形状の異なるシェード羽根237を半径方向に向けて放射状に配設した構成である。円柱軸236の一端部は歯車列238を介してシェードモータ239に連結されており、このシェードモータ239の回転を制御して円柱軸236の回転位置を制御することによりランプ光軸Lx上に移動位置される切欠き236aやシェード羽根237が変化され、これによってランプユニット2の照射光を遮光する領域が変化され、ランプユニット2の配光パターンが変化される。
【0031】
このロータリー式シェード23Aは、シェード羽根237の枚数が多いことから、シャッター式シェードに比較して配光パターンを多様に変化制御することかできるという利点がある。そのため、ADB制御に必要な配光パターンを得る際にランプ光軸Lxのスイブル制御を不要にすることも可能である。このようにスイブル制御が不要とされる場合には、
図8にADB制御装置の内部配置の概念平面図を示すように、ADB制御装置4のケース41内にスイブルアクチュエータ5を組み込まない構成とする。すなわち、
図4に示したスイブルモータ51、歯車52〜55をケース41内に組み込まないADB制御装置4を構成する。また、スイブル駆動回路部46もケース41内に組み込まない。なお、この実施形態3では、セクター歯車56およびこれと一体の回転駆動軸57はそのままケース41に内装しておき、セクター歯車56に歯合する固定歯車58を設けることで回転駆動軸57を回転させない状態でランプユニット2の下側部位に連結させている。
【0032】
したがって、実施形態3においても実施形態1,2と同様に、ADB制御装置4によってランプユニット2における配光パターン制御とレベリング制御は可能である。配光パターン制御において、前記したように配光パターンアクチュエータはロータリー式シェード23Aで構成されているので、スイブル制御を行わなくても当該配光パターン制御のみで多様な配光パターンを得ることができる。したがって、配光パターン制御とレベリング制御とを組み合わせるだけでも所望のADB制御が実現できる。これにより、ヘッドランプHLの構造は前記実施形態1や2と同様に簡略化でき、小型化、軽量化が実現できる。また、実施形態3のADB制御装置4ではケース41内にスイブルアクチュエータやスイブル駆動回路部を組み込む必要がないので、配光アクチュエータの軽量化と低コスト化も実現できることになる。
【0033】
以上、実施形態1〜3について説明したように、本発明においてはヘッドランプの構成、すなわち既存のレベリングアクチュエータが存在するか否か、またランプユニットのシェードがシャッター式とロータリー式のいずれかであるか、に基づいてADB制御装置の構成を適宜に変更することにより、当該ADB制御装置の構造を簡略化して小型化、軽量化、さらには低コスト化が実現できる。特に、実施形態1〜3のように、同一のケース41に組み込む構成部品を選択するだけで要求されるADB制御装置が実現できるので、当該ケース41および各構成部品の共通化が可能であり、部品管理の面でも有利なものになる。
【0034】
ここで、実施形態1ではシェードがシャッター式シェードの例を説明したが、ロータリー式シェードの場合でもスイブル制御を行うこともあり得るので実施形態1のADB制御装置をロータリー式シェードにも適用することができる。すなわち、スイブルアクチュエータとレベリングアクチュエータを組み込んだADB制御装置を用いてロータリー式シェードを駆動してADB制御を行うように構成してもよい。また、レベリングアクチュエータが不要なADB制御も可能であるので、この場合にはスイブルアクチュエータのみを組み込んだADB制御装置を構成してもよい。さらに、配光パターン、スイブル、レベリングの各駆動回路部については、必要とされる駆動回路部のみをADB制御装置に組み込むようにすればよい。
【0035】
以上説明した本発明のADB制御装置では、
図9のバリエーションテーブルに示すような異なるバリエーションでの制御形態が可能である。
図9は番号1〜7で示す各バリエーションでのスイブル、レベリング、配光パターンの制御の組み合わせを示している。また、各バリエーションにおいては、さらに右ヘッドランプ(R)と左ヘッドランプ(L)の違いによって、ランプユニットのスイブル制御、レベリング制御、配光パターンの制御が相違することもある。このような異なるバリエーションに対応すべく、それぞれ専用のスイブル駆動回路部、レベリング駆動回路部、配光パターン駆動回路部を製造し、かつこれらを選択的に組み合わせてADB制御装置内に組み込むようにしてもよいが、これでは駆動回路部ないしこれらを組み込んだADB制御装置の種類が多様化してしまい、ADB制御装置の製造ならびに管理が煩雑なものになる。
【0036】
そこで、本発明にかかるADB制御装置4は、実施形態1〜3の説明から分かるようにADB制御装置の構成の違いにかかわらず通信回路部43とマイコン部44は共通の構成であるので、このマイコン部44を利用してスイブル駆動回路部46、レベリング駆動回路部47、配光パターン駆動回路部45の汎用化を図っている。すなわち、これらスイブル駆動回路部46、レベリング駆動回路部47、配光パターン駆動回路部45では、各駆動を制御するための基本となるプログラムは記憶されているが、バリエーションに対応して特徴つけられる制御をするためのプログラムは記憶されていない。一方、マイコン部44には、スイブル制御、レベリング制御、配光パターン制御について各バリエーションの制御を行うための種々のプログラムがROM等の読み出し専用記憶手段に記憶されている。また、マイコン部44には、前記各制御を行う際に用いるプログラムをROMから読み出して格納しておくためのRAMも備えられている。さらに、マイコン部44には、フラッシュメモリ等の読み書き可能なメモリ手段も備えられており、当該ADB制御装置が
図9に示したバリエーションテーブルのバリエーション番号1〜7のいずれの番号に該当するものであるか、ならびに左右R,Lのいずれのヘッドランプに該当するものであるかを示す情報が記憶されるようになっている。前者のプログラムはバリエーションの違いにかかわらず全てのマイコン部44のROMに共通プログラムとして記憶されることが可能であるが、後者のバリエーション情報はADB制御装置を組み立てたときに個別に記憶される。
【0037】
ADB制御装置のマイコン部44をこのように構成することにより、ヘッドランプに組み付けられたADB制御装置4では、車両ECU100から配光制御信号が入力されると、
図10のフローチャートに示す制御が実行される。すなわち、車両ECU100からの配光制御信号をADB制御装置4の通信回路部43が受信すると(S1)、マイコン部44でADB制御のための初期設定を実行する(S2)。この初期設定では、マイコン部44は、先ずフラッシュメモリから記憶されているバリエーション情報を読み出す(S3)。読み出したバリエーション番号を
図9に示したバリエーションテーブルで参照して実行する制御を認識する(S4)。すなわち、バリエーション番号が1のときには、スイブル制御とレベリング制御と配光パターン制御を実行するものと認識する。さらに、対象となるヘッドランプが右ヘッドランプまたは左ヘッドランプ、あるいは左右の両ヘッドランプであるかを認識する。バリエーション番号が2のときには、スイブル制御とレベリング制御を実行するものと認識する。さらに、対象となるヘッドランプが右ヘッドランプまたは左ヘッドランプ、あるいは左右の両ヘッドランプであるかを認識する(S5)。以下、同様にバリエーション番号3〜7についても認識を行う。
【0038】
しかる上で、マイコン部44はバリエーション番号1〜7に対応した認識結果に基づいて、左右のヘッドランプについてスイブル制御を実行する場合にはROMからスイブル制御のプログラムを選択して読み出してRAMに格納する(S6)。スイブル制御を実行しないときには当該スイブル制御のプログラムをRAMに格納しない。同様に、左右のヘッドランプについてレベリング制御を実行する場合にはROMからレベリング制御のプログラムを読み出してRAMに格納し(S7)、さらに左右のヘッドランプについて配光パターン制御を実行する場合にはROMから配光パターン制御のプログラムを読み出してRAMに格納する(S8)。この一連の作業により初期設定が完了する。
【0039】
このように、マイコン部44は初期設定によってADB制御装置4のレベリング、スイブル、配光パターンの各制御を行うためのプログラムを選択してRAMに格納しておけば、以降は車両ECU100からのADB制御に際してのタイミング信号を受けてマイコン部44はRAMに格納している各制御のプログラムに基づいて左右のヘッドランプについてスイブル、レベリング、配光パターンの各駆動回路部ないしアクチュエータを駆動制御して、所要のスイブル制御、レベリング制御、配光パターン制御を実行し、ADB制御を実行することが可能になる。また、このように各駆動回路部ないしADB制御装置4を汎用化した構成としているので、バリエーション番号1〜7に対応した7種類のADB制御、さらには左右のヘッドランプにそれぞれ対応したものを含めると14種類のADB制御が実現できるので、各ADB制御に対応した装置を個別に製造しなくても、1種類のADB制御装置を製造するだけで14種類の異なる形態でのADB制御に対応することが可能になる。これにより、ADB制御装置の製造や管理が簡略化されることになる。
【0040】
ここで、本発明における配光パターン制御手段のアクチュエータとしてのシャッター式シェードとロータリー式シェードは実施形態1〜3に記載の構成に限定されるものではなく、電気モータを駆動することによって往復動作あるいは回転動作されて照射光の一部を遮光する構成であればよい。また、本発明においてADB制御装置のケース内に内装されるスイブルアクチュエータとレベリングアクチュエータは、ランプ光軸を水平方向、鉛直方向に傾動可能な構成であれば実施形態の構成に限られるものではない。
【0041】
本発明における配光制御信号を受信し、かつ受信した配光制御信号に基づいて各制御手段を制御するための制御信号を出力する回路部は、実施形態に記載した通信部やマイコン部で構成されたものに限定されるものではなく、同等の機能を奏する回路部であれば、1つの回路基板に一体的に形成された構成であってもよい。また、前記したように配光パターン制御手段、スイブル制御手段、レベリング制御手段の各駆動回路部についても同様であり、1つの回路基板に一体的に形成された構成、あるいはそれぞれが個別の回路基板に独立に構成されたものであってもよい。
【0042】
本発明のランプユニットは実施形態に記載の構成に限られるものではなく、光源の種類、リフレクタの形状、ランプユニットの全体構成が適宜に変更されてもよいことは言うまでもない。