(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱成型において1500℃以上における昇温速度を1℃/分以上10℃/分以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成石英ガラスの成型方法。
前記加熱成型の前に、前記合成石英ガラス母材に対し15%以上のフッ酸による5μm以上のエッチング及び比抵抗値が10MΩ・cm以上の純水による洗浄を行って、前記合成石英ガラス母材の表層部の汚れを除去し、ISO14644−1に基づくクリーン度クラス7以下の室内で乾燥させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の合成石英ガラスの成型方法。
前記加熱成型を、該加熱成型を行う加熱炉を構成するヒーター、炉材及び成型用型として灰分10ppm以下の高純度カーボンを使用すること、並びに、前記加熱炉がISO14644−1に基づくクリーン度クラス7以下の室内に設置されていること、の少なくともいずれかを満たす環境下で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の合成石英ガラスの成型方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が実験及び調査した結果、異なるOH基濃度(含有量)を有する合成石英ガラス母材を1700℃以上の保持温度で加熱成型する場合に、同一サイズ、同一条件で成型しても、充分に溶けずに成型が不十分なものがある一方で、その反対に、溶けすぎて型との接触による汚染起因の蛍光が強くなったり、また表面近傍の不純物濃度が高くなったりするものがあるという問題があった。
【0006】
本発明はこの問題に鑑みてなされたもので、表面汚染が抑制された短時間の加熱であっても十分に成型を行うことができる保持時間を予め求めた上で加熱成型を行う合成石英ガラスの成型方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、
合成石英ガラス母材を、1700℃以上で、自重又は加重により加熱成型する合成石英ガラスの成型方法において、
前記合成石英ガラス母材のOH基濃度を測定する工程と、
該測定したOH基濃度に基づいて前記加熱成型における保持時間を、
前記加熱成型において設定する保持温度が1700℃以上1900℃未満の場合は下記の数式(1)〜(3)
T≦24.0×ln(OH)−7.0 …(1)
T≧12.5×ln(OH)−23.5 …(2)
10≦T≦120 …(3)
の全てを満たすように(各数式中、Tは保持温度における保持時間[分]を表し、OHは、OH基濃度[ppm]を表す。)、
前記加熱成型において設定する保持温度が1900℃以上の場合は下記の数式(4)〜(6)
T≦6.0×ln(OH)+10.0 …(4)
T≧4.0×ln(OH)−5.0 …(5)
5≦T≦40 …(6)
の全てを満たすように(各数式中、T及びOHは上記と同様である。)、
決定する工程と、
前記決定した保持時間に従って、前記保持温度において前記加熱成型を行う工程と
を含むことを特徴とする合成石英ガラスの成型方法
を提供する。
【0008】
このような工程を含む合成石英ガラスの成型方法により、成型を行う保持温度に応じて、その合成石英ガラスの粘度物性に合わせた適切な保持時間の条件で成型を行うことができる。そのため、短時間で加熱を終えることができ、不要な加熱を行うことなく充分に所定の形状に成型することができるとともに、成型後の合成石英ガラスの表面汚染を少なくすることができる。
【0009】
この場合、
前記保持時間を決定する工程において、
前記加熱成型において設定する保持温度が1700℃以上1900℃未満の場合は下記の数式(7)〜(9)
T≦24.6×ln(OH)−12.1 …(7)
T≧12.6×ln(OH)−18.4 …(8)
10≦T≦120 …(9)
の全てを満たすように(各数式中、T及びOHは上記と同様である。)、
前記加熱成型において設定する保持温度が1900℃以上の場合は下記の数式(10)〜(12)
T≦6.1×ln(OH)+6.8 …(10)
T≧4.1×ln(OH)−3.4 …(11)
5≦T≦40 …(12)
の全てを満たすように(各数式中、T及びOHは上記と同様である。)、
前記保持時間を決定すること
が好ましい。
【0010】
このような条件を満たすように保持時間を決定することにより、より適切な保持時間の条件を得ることができる。
【0011】
また、前記加熱成型において1500℃以上における昇温速度を1℃/分以上10℃/分以下とすることが好ましい。
【0012】
1500℃以上における昇温速度をこのようにすることによって、昇温工程における汚染を抑制して保持温度に到達することができる。
【0013】
また、外径100mm以上400mm以下であり、重量が60kg以下の前記合成石英ガラス母材を、前記加熱成型により、外径150mm以上500mm以下の前記合成石英ガラスに成型することが好ましい。
【0014】
本発明は、上記寸法及び重量を有する合成石英ガラス母材を上記寸法の合成石英ガラスに加熱成型する場合に好適に用いることができる。
【0015】
また、前記加熱成型を100Pa以下、又はヘリウム、アルゴン、窒素のいずれかの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0016】
このような雰囲気下で加熱成型を行うことにより、合成石英ガラスの不要の反応を抑制することができる。
【0017】
また、前記加熱成型の前に、前記合成石英ガラス母材に対し15%以上のフッ酸による5μm以上のエッチング及び比抵抗値が10MΩ・cm以上の純水による洗浄を行って、前記合成石英ガラス母材の表層部の汚れを除去し、ISO14644−1に基づくクリーン度クラス7以下の室内で乾燥させることが好ましい。
【0018】
このような処理を加熱成型の前に行うことにより、加熱成型による合成石英ガラスの汚染を低減することができる。
【0019】
また、前記加熱成型を、該加熱成型を行う加熱炉を構成するヒーター、炉材及び成型用型として灰分10ppm以下の高純度カーボンを使用すること、並びに、前記加熱炉がISO14644−1に基づくクリーン度クラス7以下の室内に設置されていること、の少なくともいずれかを満たす環境下で行うことが好ましい。
【0020】
このような環境下で加熱成型を行うことにより、加熱成型による合成石英ガラスの汚染を低減することができる。
【0021】
また、本発明は、上記のいずれかの合成石英ガラスの成型方法により成型した合成石英ガラスであって、表面から5mm以上の深さにおいてLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの各濃度が1ppb未満であり、かつ、波長193.4nmの光に対する厚さ10mm当たりの内部透過率が99.75%以上であることを特徴とする合成石英ガラスを提供する。
【0022】
本発明の成型方法により合成石英ガラスを成型することにより、成型を行うために充分な保持時間でありつつも短時間で熱処理することができるので、表面汚染の少ない合成石英ガラスとすることができる。そのため、上記のような優れた特性を有する合成石英ガラスとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る合成石英ガラスの成型方法により、成型を行う保持温度に応じて、その合成石英ガラスの粘度物性に合わせた適切な保持時間の条件で成型を行うことができる。そのため、短時間で加熱を終えることができ、余計な加熱を行うこともなく充分に所定の形状に成型することができるとともに、合成石英ガラスの表面汚染を少なくすることができる。また、加熱成型を短時間で効率良く行えるため、電力の節約及びコストの低減を計ることができる。
【0024】
本発明に係る合成石英ガラスの成型方法により成型された合成石英ガラスは、表面汚染の少ない合成石英ガラスとすることができる。表面汚染が少ないため、加熱成型後の表面の除去加工(切断や研削)の取り代が少なくてすむ。そのため、加工の簡素化やコストの低減を計ることができる。また、内部透過率が高く、蛍光、脈理がない等の優れた特性を有する合成石英ガラスとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
前述のように、本発明者の実験及び調査により、1700℃以上の保持温度で加熱成型する場合でも、異なるOH基濃度を有する合成石英ガラス母材について、同一の条件による加熱成型で必ずしも同一の結果が得られないことがわかった。これは、1700℃以上で加熱成型する場合であっても、含有するOH基の濃度による粘性の差があることを示している。本発明者の実験により、含有するOH基濃度の違いにより成型性が変化すること、具体的には、含有するOH基の濃度が低いガラスよりも、含有するOH基の濃度が高いガラスの方が高温域では耐熱性が高く溶けにくいことがわかった。
【0028】
この知見によると、OH基の濃度が異なる合成石英ガラス母材を加熱成型する場合は、
図5に例示したような傾向を示す。
図5には、絶対温度の逆数と、粘度ηの常用対数logηの関係を、OH基濃度が20、100、1000ppmである合成石英ガラス(それぞれ、直線(a)、(b)、(c)に対応)について示した。ある温度までの低温の領域では、OH基濃度が高い方が粘度が低いが、それ以上の温度の高温の領域では、OH基濃度が高い方が粘度が高くなる傾向を示す。
【0029】
本発明者は、以上の知見に基づき、本発明を完成させた。
【0030】
本発明は、合成石英ガラス母材を、1700℃以上で、自重又は加重により加熱成型する合成石英ガラスの成型方法において、適切な保持時間を、合成石英ガラス母材のOH基の濃度及び加熱成型を行おうとする保持温度から決定し、該決定した保持時間の間、加熱成型を行う。
【0031】
具体的には、保持時間の決定は、
図6の工程S1〜S3に示したように、以下のようにして行う。
【0032】
まず、合成石英ガラス母材のOH基濃度を測定する(
図6の工程S1)。OH基濃度の測定は、非特許文献 D. M. DODD AND D.B. FRASER, Optical determination of OH in fused silica, Journal of Applied Physics, Vol.37 (1966) P.3911に記載の赤外分光光度計による測定法を用いることができる。このとき、加熱成型を行おうとする合成石英ガラス母材そのもののOH基濃度を測定しなくてもよく、例えば、母材を作製する際に切断した部分のOH基濃度や、加熱成型を行おうとする合成石英ガラス母材と同時に作製された合成石英ガラス(すなわち、同一ロットの合成石英ガラス)のOH基濃度を測定することにより、合成石英ガラス母材のOH基濃度を測定することもできる。
【0033】
次に、工程S1において測定したOH基濃度に基づいて加熱成型における保持時間を決定する(
図6の工程S2)。この保持時間の決定は、加熱成型において設定する保持温度に応じて異なる数式により行う。
【0034】
加熱成型において設定する保持温度が1700℃以上1900℃未満の場合は下記の数式(1)〜(3)の全てを満たすように保持温度を決定する。
T≦24.0×ln(OH)−7.0 …(1)
T≧12.5×ln(OH)−23.5 …(2)
10≦T≦120 …(3)
ここで、各数式中、Tは保持温度における保持時間[分]を表し、OHは、OH基濃度[ppm]を表す。また、ln(OH)はppmで表示したOH基濃度の数値部分の自然対数である。例えばOH基濃度が200ppmであるとき、ln(OH)はln(200)であり、約5.3となる。
【0035】
加熱成型において設定する保持温度が1900℃以上の場合は下記の数式(4)〜(6)の全てを満たすように保持温度を決定する。
T≦6.0×ln(OH)+10.0 …(4)
T≧4.0×ln(OH)−5.0 …(5)
5≦T≦40 …(6)
ここで、各数式中、上記と同様に、Tは保持温度における保持時間[分]を表し、OHは、OH基濃度[ppm]を表す。
【0036】
保持時間がこれらの式を満たすようにする理由は後述する。
【0037】
次に、工程S2において決定した保持時間に従って、所定の保持温度において加熱成型を行う(
図6の工程S3)。
【0038】
本発明の合成石英ガラスの成型方法では、以上の工程S1〜S3のように、予め保持時間を決定して加熱成型を行う。合成石英ガラスを製品とする際のその他の工程は、合成石英ガラスの表面汚染を低減することを考慮して適宜公知のものを組み合わせて行うことができる。例えば、
図7に示した段階S11〜S18により合成石英ガラスを製造することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0039】
まず、
図7の段階S11に示したように、加熱成型を行おうとする合成石英ガラス母材を準備する。準備する合成石英ガラス母材自体は特に限定されない。次に、合成石英ガラス母材の端部の切断(段階S12)及び研削加工(段階S13)を行う。次に、合成石英ガラス母材をフッ酸により洗浄し(段階S14)、クリーンな環境下で乾燥させる(段階S15)。これらの段階S12〜S15は、それぞれ必ずしも必須の工程ではなく、任意の工程とすることができる。次に加熱成型を行う(段階S16)のであるが、この際の保持時間は上記工程S1〜S3に従って決定される。加熱成型終了後は、製品加工(段階S17)を行い、製品とする(段階S18)。製品加工段階では、成型された合成石英ガラスの端部の切断や研削加工、洗浄等が行われる。
【0040】
加熱成型工程においては、成型中の表面汚染をできるだけ抑制するための手段を講じることが好ましい。その一つが、加熱成型の前に合成石英ガラス母材の表層部の汚れを除去することである。
図7に示した段階S12〜S15がこれに該当する。例えば、加熱成型の前に、合成石英ガラス母材に対し、15%以上の濃度のフッ酸により、5μm以上のエッチングを行い、比抵抗値が10MΩ・cm以上の純水による洗浄を行う。これらの処理により合成石英ガラス母材の表層部の汚れを除去した後は、ISO14644−1に基づくクリーン度クラス7以下の室内で乾燥させることが好ましい。このような処理を加熱成型の前に行うことにより、高温の熱処理である加熱成型による合成石英ガラスの汚染を低減することができる。なお、本発明の説明におけるクリーン度(清浄度)の規定は、ISO規格(ISO 14644−1)に基づく。
【0041】
加熱成型は、
図10に示したような加熱炉100を用いて行う。加熱炉100は、加熱炉100を構成する炉材101、ヒーター102、成型用型103等から構成される。
図10中には加重により成型を行う例として錘104がある場合を示したが、自重による場合は錘は必要ない。成型中の表面汚染をできるだけ抑制するため、加熱成型を行う加熱炉100を構成するヒーター102、炉材101及び成型用型103として灰分10ppm以下の高純度カーボンを使用して加熱成型を行うことが好ましい。加重による成型を行う場合は、錘104の材質も同様の高純度カーボンとすることが好ましい。また、ISO14644−1に基づくクリーン度クラス7以下の室内に設置した加熱炉を用いて加熱成型を行うことが好ましい。これらの条件は、いずれかを満たしていても加熱成型工程における合成石英ガラスの汚染を低減することができるが、ともに満たしていることがさらに好ましい。
【0042】
加熱炉100内の成型用型103に設置された合成石英ガラス母材111は、加熱成型が進行するにつれ、一点鎖線で示した加熱成型中の合成石英ガラスの形状112のようになり、加熱成型後、破線で示した合成石英ガラスの形状113のように形状変化する。
【0043】
また、加熱成型を100Pa以下、又はヘリウム、アルゴン、窒素のいずれかの雰囲気下で行うことが好ましい。このような減圧雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で加熱成型を行うことにより、雰囲気や型と、合成石英ガラスとが不要に反応することを抑制することができる。
【0044】
本発明に係る成型方法は、外径100mm以上400mm以下であり、重量が60kg以下の前記合成石英ガラス母材を成型する場合に特に好適に用いることができる。母材の長さ(高さ)は特に限定されず、通常用いられる長さの母材を用いることができる。また、本発明に係る成型方法は、成型後の合成石英ガラスの寸法が外径150mm以上500mm以下の場合に好適に用いることができる。
【0045】
加熱成型工程における昇温速度は、合成石英ガラスの成型において通常用いられる範囲でよいが、1500℃以上における昇温速度については、1℃/分以上10℃/分以下とすることが好ましい。1500℃以上における昇温速度をこのようにすることによって、昇温工程における汚染を抑制して保持温度に到達することができる。1500℃以上における昇温速度を1℃/分未満としてもよいが、その場合の利点として昇温速度を遅くすることで成形時の変形を容易に制御できること等があり、短所として生産性の低下や合成石英ガラスへの汚染、合成石英ガラス自体の昇華等があるので、これらの利点及び短所を考慮して、適宜設定すればよい。常温から1500℃までにおける昇温速度も、汚染抑制等の観点から適宜設定することができ、例えば、5℃/分以上15℃/分以下とすることができる。
【0046】
本発明において、加熱成型の保持時間が満たすべき上記の式は、以下の実験によって求められたものである。
【0047】
(実験例1)
加熱成型における保持温度(最高保持温度)1800℃下で、直径200mm長さ(高さ)500mmの円柱形(重量約34.5kg)の合成石英ガラス母材を、直径300mm長さ220mmの円柱形に成型する実験を行った。
【0048】
まず、寸法、重量が同じ(直径200mm長さ500mmの円柱形であり、重量約34.5kg)でOH基濃度が異なる合成石英ガラス母材として、以下の5種類のものをそれぞれ複数用意した。
(1) OH基濃度9ppm
(2) OH基濃度20ppm
(3) OH基濃度100ppm
(4) OH基濃度250ppm
(5) OH基濃度1000ppm
【0049】
次に、最高保持温度1800℃下で、直径300mm、長さ220mmの円柱形に成型するのに、汚染を最小限に抑えることのできる保持時間を決めるため、
図8に概略を示したようなプログラムを使用し、常温から1500℃までは10℃/分の昇温速度で、1500℃以上では5℃/分の昇温速度で加熱した。同じOH基濃度を有する合成石英ガラス母材に対して保持時間を10分から10分刻みにて変化させ、実験を行った。
【0050】
合成石英ガラス母材は、
図7に示した工程で、外径320mm、内径300mmであり、灰分20ppm以下の高純度カーボン製成型用型の中央に仕込み、成型を行った。型に仕込む前に、20%のフッ酸による5μmのエッチング及び比抵抗値が10MΩ・cm以上の純水による洗浄を行って、合成石英ガラス母材の表層部の汚れを除去し、ISO14644−1に基づくクリーン度クラス5のクリーンブース内で乾燥させた。
【0051】
また成型用加熱炉のヒーター、炉材及び成型用型も、灰分5ppmの高純度のカーボンを使用した。ISO14644−1に基づくクリーン度クラス7以下のクリーンな室内に設置された成型用加熱炉に、合成石英ガラス母材を成型用型に納め、成型条件を1800℃の窒素雰囲気下として加熱成型を行った。
【0053】
・加熱成型後の形状分析
加熱成型後の合成石英ガラスを、目視により形状観察した。
【0054】
・目視による蛍光検査
加熱成型後の合成石英ガラスに蛍光が生じるか否か、目視により検査した。
【0055】
・純度分析
加熱成型後の合成石英ガラスから
図9に示したようにサンプルを採取し、表面側より5mm間隔の深さで純度分析を行った。純度分析は、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの不純物金属について、ICP−MS装置(誘導結合プラズマ質量分析装置)を用いて行った。
【0056】
・内部透過率の評価
図9に示した位置、すなわち、表面から5〜15mmに当たる部分から直径50mm長さ10mmのサンプルを採取し、紫外分光光度計を用いて波長193.4nmの光に対する10mm当たりの内部透過率の評価を行った。
【0057】
<結果>
表1に、合成石英ガラス母材のOH基濃度(ppm)と、加熱成型の際の保持時間(最高温度保持時間)との関係を示した。
【0058】
表1における記号の意味は以下の通りである。
○: 成型完了、各金属不純物1ppb未満、内部透過率99.75%以上
×: 成型完了、各金属不純物≧1ppb又は内部透過率99.75%未満
××:成型不十分
表1において、空欄は、その条件で実験を行っていないことを示している。
【0060】
表1において「成型不十分」として示した実験(記号「××」)では、合成石英ガラスの上部側の一部が完全には溶け切れず、所望の形状に成型されなかった。それ以外の条件(表1中に記号「○」又は「×」で示した実験)では、完全に所望の形状に成型された(成型完了)。ただし、合成石英ガラス母材それぞれのOH基の濃度の違いによって、純度、蛍光、不純物濃度に保持時間の差が確認された。
【0061】
表2に、各OH基濃度を有する合成石英ガラス母材から加熱成型した例について、純度分析(表面から5〜10mm部)を行った結果を示す。
【0063】
表3に、各OH基濃度を有する合成石英ガラス母材から加熱成型した例について、波長193.4nmの光に対する厚さ10mm当たりの内部透過率(表面から5〜15mm部)を測定する試験を行った結果を示す。
【0065】
<純度、蛍光>
合成石英ガラス母材のそれぞれのOH基の濃度の違いによって、表1、表2の通り記号「○」の場合と記号「×」の場合とで違いが確認された。
【0066】
記号「○」の場合では、目視上は形状の違いは認められず、蛍光も確認されなかった。得られた合成石英ガラスから表面側より5〜10mmの深さの純度分析では、全ての元素で1ppb未満であった。
【0067】
記号「×」の場合は、目視上、(4)250
ppmと(5)1000ppmで不純物起因と思われる蛍光が確認された。また得られたガラスから表面側より5〜10mmの深さの純度分析では、Na、Ca、Feが1ppbを超えて確認され、(5)1000ppmでは、130分で、Na、Ca、Feが1ppbを超えてしまった。さらに15〜20mm部分の分析を行い、ようやく純度は1ppb未満となった。
【0068】
<内部透過率>
表1の記号「○」の場合では、表面から5〜15mmに当たる部分より直径50mm長さ10mmのサンプルの193.4nmでの内部透過率の評価では、表3に示す通り、内部透過率は、99.75%以上が確認され、99.75〜99.82%の範囲であった。
【0069】
表1の記号「×」の場合では、内部透過率は、99.75%に届かず、99.70〜99.74%の測定結果であった。
【0070】
<加工後サイズ>
上記結果を元に直径300mm長さ220mm、34.5kgの合成石英ガラスを、それぞれ5mmずつ切断及び研削加工を行い、表1の記号「○」で示した場合では、研削後の重量、寸法直径290mm長さ210mm、重量30.5kgのガラスが得られた。その一方で、表1の記号「×」で示した部分では、15mmずつ切断及び研削加工を行わなければならず、直径270mm長さ190mm、重量23.9kgの合成石英ガラスが得られ、加工ロスが多くなった。
【0071】
上記結果の他、1700℃、1850℃でも行い同様な確認を行った。
【0072】
その結果、1700℃以上1900℃未満の保持温度では、OH基濃度に応じて、下記の数式(1)〜(3)の全てを満たすように保持時間を決定すればよい(T、OHは上記の通りである。)ことがわかった。
T≦24.0×ln(OH)−7.0 …(1)
T≧12.5×ln(OH)−23.5 …(2)
10≦T≦120 …(3)
【0073】
この範囲を
図1にグラフで示した。
図1は、合成石英ガラス母材のOH基濃度を横軸に対数で示し、保持時間(最高温度保持時間)を縦軸に示したものである。グラフ中の直線(1)は、数式(1)におけるTの上限、すなわち、T=24.0×ln(OH)−7.0を示す。グラフ中の直線(2)は、数式(2)におけるTの下限、T=12.5×ln(OH)−23.5を示す。グラフ中の直線(3)−1、(3)−2は、それぞれ数式(3)のTの下限及び上限、すなわち、T=10、T=120を示す。上記数式(1)〜(3)を全て満たすためには、
図1中の点線範囲にあるように保持時間を決定すればよい。
【0074】
また、下記の数式(7)〜(9)を満たすように保持時間Tを決定すれば、より適切な条件を得ることができる。
T≦24.6×ln(OH)−12.1 …(7)
T≧12.6×ln(OH)−18.4 …(8)
10≦T≦120 …(9)
【0075】
この範囲を、
図1と同様の手法により、
図3にグラフで示した。グラフ中の直線(7)、直線(8)、直線(9)−1及び(9)−2は、それぞれ、数式(7)におけるTの上限、数式(8)におけるTの下限、数式(9)のTの下限及び上限を示す。
【0076】
(実験例2)
加熱成型における保持温度(最高保持温度)2000℃下で、直径200mm長さ(高さ)500mmの円柱形(重量約34.5kg)の合成石英ガラス母材を、直径300mm長さ220mmの円柱形に成型する実験を行った。
【0077】
まず、実験例1と同様に、寸法、重量が同じ(直径200mm長さ500mmの円柱形であり、重量約34.5kg)でOH基濃度が異なる合成石英ガラス母材として、以下の5種類のものをそれぞれ複数用意した。
(1) OH基濃度9ppm
(2) OH基濃度20ppm
(3) OH基濃度100ppm
(4) OH基濃度250ppm
(5) OH基濃度1000ppm
【0078】
その後、最高保持温度を2000℃としたこと以外は実験例1と同様に合成石英ガラスの加熱成型を行った。
【0079】
加熱成型終了後、実験例1と同様の評価を行った。
【0080】
<結果>
表4に、合成石英ガラス母材のOH基濃度(ppm)と、加熱成型の際の保持時間(最高温度保持時間)との関係を示した。
【0081】
表4における記号の意味は以下の通りである。
○: 成型完了、各金属不純物1ppb未満、内部透過率99.75%以上
×: 成型完了、各金属不純物≧1ppb又は内部透過率99.75%未満
××:成型不十分
表4において、空欄は、その条件で実験を行っていないことを示している。
【0083】
表4において「成型不十分」として示した実験(記号「××」)では、合成石英ガラスの上部側の一部が完全には溶け切れず、所望の形状に成型されなかった。それ以外の条件(表4中に記号「○」又は「×」で示した実験)では、完全に所望の形状に成型された(成型完了)。ただし、合成石英ガラス母材それぞれのOH基の濃度の違いによって、純度、蛍光、不純物濃度に保持時間の差が確認された。
【0084】
表5に、各OH基濃度を有する合成石英ガラス母材から加熱成型した例について、純度分析(表面から5〜10mm部)を行った結果を示す。
【0086】
表6に、各OH基濃度を有する合成石英ガラス母材から加熱成型した例について、波長193.4nmの光に対する厚さ10mm当たりの内部透過率(表面から5〜15mm部)を測定する試験を行った結果を示す。
【0088】
<純度、蛍光>
合成石英ガラス母材のそれぞれのOH基の濃度の違いによって、表4、表5の通り記号「○」の場合と記号「×」の場合とで違いが確認された。
【0089】
記号「○」の場合では、目視上は形状の違いは認められず、蛍光も確認されなかった。得られた合成石英ガラスから表面側より5〜10mmの深さの純度分析では、全ての元素で1ppb未満であった。
【0090】
記号「×」の場合は、目視上、(3)100ppm、(4)250
ppmと(5)1000ppmで不純物起因と思われる蛍光が確認された。また得られたガラスから表面側より5〜10mmの深さの純度分析では、Na、Ca、Feが1ppbを超えて確認され、(5)1000ppmでは、45分で、Na、Ca、Feが1ppbを超えてしまった。さらに15〜20mm部分の分析を行い、ようやく純度は1ppb未満となった。
【0091】
<内部透過率>
表4の記号「○」の場合では、表面から5〜15mmに当たる部分より直径50mm長さ10mmのサンプルの193.4nmでの内部透過率の評価では、表6に示す通り、内部透過率は、99.75%以上が確認され、99.75〜99.82%の範囲であった。
【0092】
表4の記号「×」の場合では、内部透過率は、99.75%に届かず、99.68〜99.73%の測定結果であった。
【0093】
<加工後サイズ>
上記結果を元に直径300mm長さ220mm、34.5kgの合成石英ガラスを、それぞれ5mmずつ切断及び研削加工を行い、表4の記号「○」で示した場合では、研削後の重量、寸法直径290mm長さ210mm、重量30.5kgのガラスが得られた。その一方で、表4の記号「×」で示した部分では、15mmずつ切断及び研削加工を行わなければならず、直径270mm長さ190mm、重量23.9kgの合成石英ガラスが得られ、加工ロスが多くなった。
【0094】
上記結果の他、1900℃、2100℃でも行い同様な確認を行った。
【0095】
その結果、1900℃以上の保持温度では、OH基濃度に応じて、下記の数式(4)〜(6)の全てを満たすように保持時間を決定すればよい(T、OHは上記の通りである。)ことがわかった。
T≦6.0×ln(OH)+10.0 …(4)
T≧4.0×ln(OH)−5.0 …(5)
5≦T≦40 …(6)
【0096】
この範囲を、
図1と同様の手法により、
図2にグラフで示した。
図2のグラフ中の直線(4)、直線(5)、直線(6)−1及び(6)−2は、それぞれ、数式(4)におけるTの上限、数式(5)におけるTの下限、数式(6)のTの下限及び上限を示す。上記数式(4)〜(6)を全て満たすためには、
図2中の点線範囲にあるように保持時間を決定すればよい。
【0097】
また、下記の数式(10)〜(12)を満たすように保持時間Tを決定すれば、より適切な条件を得ることができる。
T≦6.1×ln(OH)+6.8 …(10)
T≧4.1×ln(OH)−3.4 …(11)
5≦T≦40 …(12)
【0098】
この範囲を、
図1と同様の手法により、
図4にグラフで示した。グラフ中の直線(10)、直線(11)、直線(12)−1及び(12)−2は、それぞれ、数式(10)におけるTの上限、数式(11)におけるTの下限、数式(12)のTの下限及び上限を示す。
【0099】
なお、本発明を適用することができる合成石英ガラス母材のOH基濃度の上限及び下限は特に限定されるものではない。ただし、OH基濃度は実用上2000ppm程度が上限である。また、OH基濃度が5ppm以上であれば、本発明による効果を問題なく得ることができる。
【0100】
本発明の成型方法により合成石英ガラスを成型することにより、成型を行うために充分な保持時間でありつつも短時間で熱処理することができるので、表面汚染の少ない合成石英ガラスとすることができる。
【0101】
本発明に係る成型方法により成型した合成石英ガラスは、表面汚染の少ない合成石英ガラスとすることができる。具体的には、合成石英ガラスの表面から5mm以上の深さにおいてLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの各濃度が1ppb未満とすることができる。表面汚染が少ないため、加熱成型後の表面の除去加工(切断や研削)の取り代が少なくてすむ。そのため、加工の簡素化やコストの低減を計ることができる。
【0102】
また、本発明に係る成型方法により、内部透過率が高く、例えば波長193.4nmの光に対する厚さ10mm当たりの内部透過率が99.75%以上である合成石英ガラスを得ることができる。その他、蛍光、脈理がない等の優れた特性を有する合成石英ガラスとすることができる。
【0103】
本発明に係る成型方法により、高純度の合成石英ガラスを従来よりも極めて高い確度で得ることができる。
【0104】
本発明に係る成型方法により成型された合成石英ガラスは、純度(その他、透過率、蛍光、脈理等)において優れた特性が要求される用途に特に好ましい。例えば、ステッパ用マスク、液晶用マスク、液晶用基板、ステッパ用等特殊光学レンズ、一般光学用レンズ、高温炉用大型窓材、半導体用治具、光ファイバー用等の合成石英ガラスの成型に特に好適に用いることができる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。