【実施例1】
【0017】
図6は、アキシャルギャップ型永久磁石同期電動機の構成を断面図で示したものである。
図6において、31は固定子鉄心、32は固定子巻線であり、これらで構成される固定子が絶縁樹脂で充填されてケースハウジング40に固定されている。また、回転子ヨーク22と永久磁石24によって構成される2つの回転子がモータのシャフト(軸)19方向に固定子を挟む形で配置される。また、ケースハウジング40に結合されたエンドブラケット12に配置された軸受を構成するベアリング13で回転子が回転可能に保持されている。
【0018】
また、
図7に従来型のラジアルギャップ型永久磁石同期電動機の断面図を示す。
【0019】
永久磁石同期電動機は、 エネルギーの有効利用の観点から、ポンプ、送風機などのモータを用いるアプリケーションで需要に応じた最適なトルク、回転数をインバータによって制御しながら運転することが一般的となっている。インバータの基本概念図を
図8に示す。なお、モータ部分については、中性点を示しやすいために巻線をスター結線として記述している。なお、デルタ結線とスター結線は相互に変換可能であるため、スター結線を仮定しても一般性を失わない。
【0020】
インバータ装置は、商用電源を直流に変換するコンバータ部、コンバータの脈動電圧を平滑する平滑回路、そして高周波でのスイッチング動作により単位時間当たりの平均相電圧を任意に変化させる(狭義の)インバータ部分とから構成される。理想的な対称三相平衡電圧を仮定すると、モータの中性点の電圧は時間とともに変化せず一定である。インバータ装置により生成された交流電圧はモータの各相に対称三相平衡電圧として与えられるが、実際のインバータ装置においては、インバータ部分は、基本的にON/OFF動作しか行なわないため、巻線中性点電圧は一定値にはならず、常に変動する。この電圧のことはコモンモード電圧と呼ばれる。モータの軸電圧はこのコモンモード電圧に起因して発生する。
【0021】
図9に各スイッチング状態におけるコモンモード電圧を示す。なお、
図9において、簡単のためパワー半導体素子はスイッチとして記述した。ここで、平滑回路両端電圧をE、平滑回路中央を設置点とすると、各スイッチング状態におけるコモンモード電圧は図示するようにE/2、E/6、-E/6、-E/2を取り得る。
【0022】
巻線中性点電位からアースに至る経路は2つ存在する。一つは巻線→固定子鉄心→ケースハウジングであり、もう一方は巻線→固定子鉄心→回転子鉄心→シャフト→軸受→エンドブラケット→ケースハウジングである。これらの経路は電気的には静電容量や抵抗が結合したものとして表せる。抵抗は非常に小さいために無視し、最も単純にモデル化した等価回路を
図10に示す。ここで、Cwrは巻線と回転子(ロータ)間静電容量、Crfはロータとケースハウジング間静電容量、Cbはベアリング内外輪間の静電容量である。なお、ベアリングは複数個存在するが、簡単のため合成容量として記載している。
【0023】
全体電圧に対する軸電圧の比(Bearing Voltage Ratio 以降BVRと略す)は以下の式(1)のように表わす事ができる。
BVR= Cwr/(Cwr+Crf+Cb ) …(1)
コモンモード電圧をEcpと置くと、軸電圧のピーク電圧Vspは以下の式(2)のようになる。
Vsp=BVR × Ecp …(2)
コモンモード電圧Ecpは前述のとおりインバータの動作により決まるため、軸電圧はBVRに比例して発生することがわかる。このため、モータ各部が作る静電容量および軸受の静電容量が小さい方がBVRを小さくできることがわかる。
【0024】
モータ各部が作る静電容量は、2つの導電体が絶縁物を介して対向していれば、そこにコンデンサが形成される。コンデンサの容量は、コンデンサを形成する導体の形状や、2つの導体の配置関係などの幾何学的要素で決まる。すなわち、対抗する面積に比例し、その距離に反比例する式であらわすことができる。
【0025】
図6に示すアキシャルギャップ型永久磁石同期電動機の場合においては、固定子巻線と回転子の面、固定子巻線とケースハウジング間の対向面積が大きく、Cwrの静電容量が大きくなることがわかる。反面、
図7に示すラジアルギャップ型永久磁石同期電動機に関しては、固定子30はケースハウジング40に接続されてゼロ電位(接地)となっており、Cwrが小さくなることがわかる。このため、アキシャル型のBVRはラジアル型に比べ数倍から数十倍と大きくなる。このため、軸電圧は通常のインバータ駆動のラジアル型モータに比べて高くなり、数十ボルトの電圧が軸に現れることになる。そこで、高い電圧が現れることによって、ベアリング油膜での放電が発生し、電食を引き起こすことになる。
【0026】
そこで、その軸に発生した電位をゼロ電位(接地)側におとすための手段として、アースブラシによる接地を行う。通常のラジアル型では、軸電圧が高くても数V程度しか発生しないため、しっかりと軸とブラシを接触させて接触部の電気抵抗を小さくする必要があった。そのために、接触部の接触面積を大きく確保することや、ブラシの押付け圧力を高く設定する必要があり、機械摩擦によるモータ効率の低下や、ブラシの摩耗による寿命低下などに問題があり、実際の製品にはほとんど採用されていない。
【0027】
本実施例のアキシャルギャップ型永久磁石同期電動機においては、軸電圧が数十ボルト発生するため、接触抵抗が小さくてもブラシ接触部に確実に電流が流れることになるため、接触面積は小さくても良く、また、摩擦や摩耗は小さいが抵抗値の高いカーボンブラシでも構成することができる。また、接触圧力も低くすることができるので、摩耗量を小さく抑えることが出来、ブラシの交換を行うことなく産業用のモータに適用可能である。
【0028】
図1に、本実施例のアキシャルギャップ型永久磁石同期電動機の軸後端部に配置されるブラシとブラシホルダの位置関係を示す断面図を示す。
図1(a)が拡大図、
図1(b)が全体図である。
図1において、ケースハウジング40に取付ボルトによって接続されるファンカバー1の中央部には、円筒状のブラシホルダ2を取付けるための穴が配置されている。その穴は、皿ネジ6のネジ頭部が突出しないようにテーパ状となっており、皿ネジ6を締めることで、円筒状のブラシホルダ2を固定する構造となっている。ブラシホルダ2の中央部分には、図示の左側部にはネジで固定するためのネジ穴が構成されており、右側部には、ブラシ3を配置するための、ブラシ外形形状に合わせた溝形状で、ブラシを軸方向に摺動可能に保持する溝が構成されている。また、皿ネジの先端部と、ブラシ後端部の間には、圧縮バネ7を配置し、ブラシを軸方向モータ側へ(図面上は右側方向へ)加圧する加圧機構を有する。このブラシは、炭素を主材料として圧縮成形された素材で構成される。
【0029】
図2に、ブラシとブラシホルダ部分の構造の斜視図を示す。
図2(a)は、ブラシ3の構造を示している。ブラシ3は、略四角形断面を有し、その先端部はセレーション部15と呼ばれる溝が形成されている。これは、ブラシと摺動面の初期の接触性を向上させるために初期接触面積を少なくするための形状である。また、このブラシ3の一面には、 撚り線導体の接続線4(ここでは以降ピグテールと呼ぶ)が溶接によって固定されている。また、このピグテールの先端には丸型圧着端子5が接続される構造となっている。この丸型圧着端子5は、前述の皿ネジ6によって、ファンカバー1とブラシホルダ2の間に配置されてネジで締付固定される構造である。
【0030】
図2(b)に、ブラシホルダ2の概略構造を内部を透過して示した斜視図を示す。本実施例では、円筒状のブラシホルダ2の中央部分に、ブラシ3を配置するための略四角形断面を持つブラシ保持溝18と、その反対側には、圧縮バネ7を配置するための円筒部およびネジ部であるネジ穴17を有している。また、円筒の周方向の一部には、ピグテール4を通すための切り欠き溝16を設けた構造となっている。このブラシホルダ2にピグテール付きのブラシ3を挿入配置し、圧縮バネ7を挿入した状態で、金属などの導電体のファンカバー1と丸型圧着端子を皿ネジ6によってネジ固定する構造でブラシ3が保持される。ブラシ3自身は、圧縮バネ7によってモータ軸方向に飛び出す方向に加圧されるが、ピグテール4によって飛び出ていかないように保持される構造を持つ。
【0031】
なお、ブラシホルダ2は、皿ネジ6によってファンカバー1と固定することで、現状のファンカバーを流用できるという効果があるが、これに限定されず、例えば、ブラシホルダ2とファンカバー1が一体構造でも良い。一体構造とすることで、組み立てが簡単になるという効果がある。
【0032】
図1において、ブラシ先端部が接触するモータの軸端部には、モータのハウジングを冷却するためのファンとしてラジアルファン10を設けている。このラジアルファン10は、モータの軸19のエンドブラケット部から反出力側に突出する構造の軸部分に固定され、エンドブラケット12に配置された軸受を構成するベアリング13で回転可能に保持されている。ラジアルファン10の軸への固定は、軸の回転方向一部にキー溝を有し、このキー溝部分にキー11を挿入して回転方向にすべらないように軸に固定され、さらに、ラジアルファンを軸方向におさえる円筒状のカラー9を設け、そのカラー9を6角頭、または、2面を面取りした形状の頭を持つネジ8で締め付けて軸方向の軸への固定を行う構造となっている。
【0033】
図2(c)に、ラジアルファンを軸へ取り付ける取付部であるネジ8の構造を示す。ネジ8の頭部分の軸方向端面は、平坦な面を有し、その面粗さは鏡面状態とする。また、このネジ頭は、真鍮など銅を含む合金で構成されている。この平坦面に前述のブラシ先端部が圧縮バネによって加圧されながら押しつけられる構造とし、その接触部は、回転摩擦が低い状態で摺動する構造とする。モータの軸19は、回転子20とキー溝を配置して回転方向に固定され、回転子押さえナット21によって軸方向に固定配置される。この実施例での回転子20は、バックヨーク23と永久磁石24を有する構造としている。
【0034】
以上の構造により、軸電圧が発生した場合においても、軸からファン締結用ネジ、および、ブラシ、ピグテールを介して金属製ファンカバー、ファンカバーの取付ボルト、ケースハウジングと導電部材を介して電流が接地電位方向に流れるため、ベアリング油膜を破壊する軸受電食の発生を抑えることができる。
【0035】
図3に、本実施例のアキシャルギャップ型永久磁石同期電動機のモータ構造の斜視図を示す。アキシャルギャップ型永久磁石同期電動機は、軸方向中央部に配置される一つの固定子30と、その軸方向両端部に配置され、固定子と円形の面で対抗した磁石面を有する回転子20を有する構造となっている。
【0036】
回転子20は、磁性体で構成される回転子ヨーク22に円環状の永久磁石24を接着剤などの固定方法を用いて一体として構成される。永久磁石24は、円環状の一体リング磁石を用いても良いが、大きさの関係上などで製作が困難な場合は、複数に分割された磁石を組み合わせて円環状として使用しても良い。
【0037】
また、この永久磁石24は、周方向にN極とS極が互い違いに配置されるように着磁されて構成される。その極数は、
図3で示す本実施例では14極である場合を示している。一極あたりの形状は、周方向に等角度、同一断面積となるよう、扇形での形状となる。本実施例では、扇形の開き角度は、360/14度で約25.7度となっている。
【0038】
通常、3相の永久磁石同期電動機では、モータの回転子の極数と固定子極(スロット)の関係は、2:3となることが一般的である。磁石モータの1極対は磁石のN極とS極が一つの対となって構成される。3相モータの場合は、この1対の極対の中に、3相分の巻線が配置される構成となるため、2つの磁石極と3つの固定子極の関係となる。本実施例では、固定子極数が12と12スロットでありながら、磁石極が14極として構成しており、固定子へのアモルファス金属適用による鉄損低減が期待できるため、多極化が実現できる構成である。また、多極化することにより、誘起電圧定数(トルク定数)の増加が見込まれる。このような組合せは他にも複数あり、12スロットの場合に、2:3の関係では8極となるところを、10極も採用することができる。スロット数が9の場合には、本来6極であるところを、8極、10極の採用が可能である。
【0039】
本実施例の回転子磁石では、フェライト焼結磁石を表面に配置する構造としている。この理由は、固定子と対抗する面を全て磁石として構成する表面磁石型を構成する場合、固定子巻線からの磁束や、固定子コアのスロット配置による高調波等によって磁石表面に渦電流の発生が問題となるために導電性金属磁石を採用すると効率を著しく低下させてしまうことが理由である。このため、本実施例のアキシャルギャップ型永久磁石同期電動機の回転子磁石に採用できる磁石は、希土類ボンド磁石、フェライト焼結磁石、フェライトボンド磁石、フェライトゴム磁石などが適している。
【0040】
次に固定子の構造について
図3を用いて説明する。
図3の軸方向中央部に示す固定子は、周方向に扇形の断面を持つ固定子鉄心31を複数個、周方向に等間隔で配置する。その固定子鉄心31の周囲には、プラスチック、有機材料などの絶縁部材で構成される巻線ボビン33を配置し、その巻線ボビンの周囲を扇形鉄心の外周と相似の形状に導体を巻いた固定子巻線32が配置される形状となっている。巻線の導体の材質は通常は銅が使用されることが一般的であるが、アルミニウムなどの比重の軽い線材を使用することも可能である。その理由は、価格が安いことなどの効果があることに加え、固定子コアと巻線ボビン、巻線が周方向にばらばらになって配置されているため、これらを保持するのには、樹脂を含浸させて固定するモールドモータとする構造を採用するため、樹脂の接着強度で鉄心や巻線の自重を支えられるように軽量化することが必要となるからである。したがって、アルミニウムの導体にポリエステルやアミドイミド、ウレタンなどのエナメル被覆をコーティングしたアルミ導体エナメルマグネットワイヤなどの使用も効果的と考えられる。
【0041】
個々の固定子鉄心31の周囲に巻線された固定子巻線32は、巻き始めと巻き終わりの線があるため、
図1に示した固定子鉄心の数12個では、24本の端末線が引き出される。そのまま、24本引き出し線として処理しても良いのであるが、後の接続処理を考えるとなるべく少ない数が望ましい。本実施例では、巻線の巻線2個を連続で巻線することによって、隣り合う2個の巻線から引き出し線を2本としている例を図示している。このため、最終的に引き出される線は12本となっている。引き出された線は、通常は、細い導体をより線として構成されるビニル被覆電線36と接続してモータの端子箱に結線される。モータ巻線のマグネットワイヤとビニル被覆電線36の接続には、リングスリーブ35を採用し、カシメ、溶接などによりそれぞれの線をリングスリーブ35に接続する構造としている。接続後は、その接続箇所の被覆がむき出しになっている箇所に絶縁物を塗布し、空気や水分と導体部が触れない構造としている。
【0042】
次に固定子鉄心の構造とその製作方法について
図4を用いて説明する。固定子鉄心は、鉄基アモルファス金属箔帯を用いて構成するものである。これは、鉄基アモルファス金属の損失は、他の磁性材料に比べて大幅に低く、かつ、透磁率が高いためである。透磁率が高いことは、フェライト磁石のような比較的低い磁界強度しか得られない磁石を用いる場合であっても、他の磁性材料に比べると高い磁束密度を得られることを意味する。鉄基のアモルファス金属の他にこのような透磁率の高い材料として、パーメンジュール、鉄基のナノクリスタル金属のような材料も適用効果があると考えられる。このような材料は、比較的板厚が薄く、金属自体の硬度が高いために、加工が困難であり、従来のモータなどへの応用が困難である。
そこで、その鉄心を
図4(a)に示すような構造として比較的容易に作成できるようにした。
図3で示したような断面が扇形となる鉄心を得るために、幅方向を一定の幅とする鉄基アモルファス金属箔帯を
図4(a)の図面下部の方から徐々に幅が広くなっていき、最終部では少し切断幅を狭く戻してその形を形成する構造とする。この積み重ねたアモルファス箔帯は、このままではばらばらであるため、
図4(b)に示す形状の巻線を巻くための絶縁性の巻線ボビン33の中に挿入して保持することで固定子鉄心として構成する。
【0043】
次にモータの固定子、回転子とケースハウジングの関係を
図5を用いて説明する。ケースハウジング40は基本的に円筒の形状となる。その円筒内側に固定子30と回転子20を配置する構造となる。固定子30は、ケースハウジング40の軸方向中央部に配置され、ケースハウジング40と固定子鉄心31、固定子巻線32、巻線ボビン33の間の空間を埋めるように絶縁樹脂が充填されて一体のケース付き固定子となる。固定子30は樹脂の接着強度で保持されるのであるが、この樹脂が経年劣化などでわずかな重量減少を引き起こした場合にも、固定子がケースから外れることが無いように、ケースハウジング40の内側には段差を設けて固定子の軸方向に外れない、また、回転方向一部に切り欠きなどの溝、または突起を設け、回転方向にも回転しないような構造とする。
巻線からの発熱は樹脂を介してケースハウジング40に伝わり、伝熱してモータが冷却されるので、樹脂の厚みがあまり厚くならないようにすることが望ましい。また、冷却するためにケースハウジング40にフィン構造を追加して放熱面積を拡大し、外側空気との熱交換を向上させることも有効な手段となる。
【0044】
以上、説明したように、本実施例のアキシャルギャップ型永久磁石同期電動機は、固定子鉄心に低損失な鉄基アモルファス箔帯を使用することで、モータの効率を高くすることができる。現在、産業用の誘導モータは、2次電流による2次銅損などが発生するため、効率は国際電気標準会議(IEC)で決められた規格値のIEコードでIE3のレベルまでしか対応できない。本実施例のアキシャルギャップ型永久磁石同期電動機では、磁石の渦電流は発生せず、鉄損、銅損とも低く抑えたモータを設計できるため、IEコードのIE4以上のモータ効率を実現することが可能となる。
以下に、本実施例の構成をまとめて言い換える。アキシャルギャップ型永久磁石同期電動機の固定子鉄心を鉄基アモルファス金属で構成し、その固定子鉄心は、鉄基アモルファス金属箔帯を切断して積層するだけのシンプルな製造方法を用いて作成され、その固定子鉄心を保持する部材に保持される固定子鉄心構造を有する。
また、固定子巻線を構成する導体は、固定子鉄心の外周形状と相似形状の内周形状を有し、固定子鉄心と固定子巻線とケースハウジング内周部とを樹脂で一体化接着する構造とする。樹脂で接着する構造であるため、固定子巻線、固定子鉄心は、電気的に接合されない絶縁構造となる。
回転子は、固定子の軸方向二面が磁石と対抗する構造として配置し、ケースハウジングに結合された軸受保持エンドブラケットの軸受を介して回転可能に構成される。これらのモータとしての構造は、前述のケースハウジングと、軸方向両端部の軸受を保持するエンドブラケットで覆われる構造とし、固定子および回転子が全閉されて外部の雰囲気にさらされないような構成とする。これにより、ブラシの摺動による摩耗粉等の影響を避けることが出来る。
【0045】
さらに、回転子軸の出力側は、通常のモータのようにトルクに応じた既定の軸径の軸が出力軸として突出する構造とする。また、反出力側は、同様に回転子の軸から後端部軸受保持エンドブラケットの外に軸が突出する構成として、その突出軸には、送風用のファンを取り付ける構造とする。そのファン形状は、軸方向後ろ側から吸気した空気を径方向に流すラジアルファン形状を採用し、径方向に流れた空気を軸方向に送るために設けられたファンカバーで覆われる構造とする。
【0046】
ファンの取付部であるネジの軸後端部は、銅を含む合金で構成し、その軸方向端面を鏡面加工でできるだけ凹凸の無い状態とする。ファンカバーの中央部には、炭素を含む材料のブラシを保持するブラシホルダを配置し、その中にバネによって軸方向に移動可能でかつ、モータの軸端部に向かって押付け力を有するブラシが配置されて、その先端は軸端部の銅を含む合金部に接触する構造とする。
【0047】
以上のように、本実施例によれば、アキシャルギャップモータで、固定子巻線と回転子磁石、回転子鉄心の対向面積が大きく、また、そのギャップ距離が小さくて、固定子巻線と回転子間の静電容量が大きくなる場合において、コモンモード電圧に同期した軸電圧が高くなる状況下においても、その軸電圧が発生した瞬間に、ブラシからファンカバー、ケースハウジングを介して接地電位に電流を流して軸電圧を接地電位とすることができるため、軸受部での油膜部分の絶縁耐力が低くても、軸受電食を発生させないという効果が得られる。
この際、アキシャル型モータにおいては、軸電圧が数十ボルト発生するため、接触抵抗が小さくても、ブラシ接触部に確実に電流が流れることになるため、ブラシの接触面積は小さくてよく、また、接触圧力も低くすることができる。また、抵抗値は高いが摩耗量が少ないカーボンブラシでも構成することができる。このため、産業用のモータ寿命に関しても交換を行うことなく寿命を全うできる製品の構成が可能となる。
【0048】
また、ファンカバーの中央部に配置するブラシホルダによって、周速度の小さい部分でのブラシ摺動となるため、ブラシの摩耗を軽減でき、また、銅と炭素の摺動により安定した接触状態を長期間にわたり維持することが可能となるため、産業用途の製品寿命や、低コスト化を実現することが可能である。
【0049】
また、固定子に鉄基アモルファスを採用することでのモータ鉄心部分の低損失化が可能であり、低損失化によりモータの効率を高められることと、長寿命化が実現できる。
【0050】
以上のように、本実施例では、アキシャルギャップ型永久磁石同期電動機の軸電圧低減対策を実現でき、高効率、かつ、高信頼性(寿命向上)を実現するとともに、構造を複雑にせず低価格な構成とし、低コストで高効率な回転電機を提供することが出来る。