特許第6073780号(P6073780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イ−エスアイ−パイロフォトニクス レーザーズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許6073780連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置
<>
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000002
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000003
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000004
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000005
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000006
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000007
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000008
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000009
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000010
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000011
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000012
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000013
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000014
  • 特許6073780-連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073780
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】連続レーザパルス列を用いて穿孔する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/382 20140101AFI20170123BHJP
   B23K 26/384 20140101ALI20170123BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170123BHJP
【FI】
   B23K26/382
   B23K26/384
   B23K26/00 N
   B23K26/00 H
【請求項の数】37
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-509220(P2013-509220)
(86)(22)【出願日】2011年5月4日
(65)【公表番号】特表2013-529137(P2013-529137A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】US2011035207
(87)【国際公開番号】WO2011140229
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/331,242
(32)【優先日】2010年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511300570
【氏名又は名称】イ−エスアイ−パイロフォトニクス レーザーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ムリソン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】リコウ,マシュー
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−331377(JP,A)
【文献】 特表2012−529757(JP,A)
【文献】 特表2010−505242(JP,A)
【文献】 特開平10−323781(JP,A)
【文献】 特開2010−075953(JP,A)
【文献】 特開2008−194709(JP,A)
【文献】 特表2007−508946(JP,A)
【文献】 特開2000−301372(JP,A)
【文献】 特開平08−187583(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/115484(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/091446(WO,A1)
【文献】 米国特許第08816246(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/382
B23K 26/384
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザパルスを使用して材料に孔を形成する方法であって、
それぞれのレーザパルスが、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、第1のパルス形状、第1の波長、及び第1のパルス間時間間隔により特徴付けられる第1組のレーザパルスを提供し、
それぞれのレーザパルスが、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、第2のパルス形状、第2の波長、及び第2のパルス間時間間隔により特徴付けられる第2組のレーザパルスを提供し、前記第2のパルスエネルギーが前記第1のパルスエネルギーと異なる、前記第2のパルス幅が前記第1のパルス幅と異なる、前記第2のパルス形状が前記第1のパルス形状と異なる、又は前記第2の波長が前記第1の波長とは異なる、のうち少なくとも1つに該当し、
前記第1組のレーザパルスをレーザスポットに当たるように方向付け、
前記第2組のレーザパルスを前記レーザスポットに当たるように方向付け、
前記材料に前記孔を形成し、
前記第1のパルスエネルギーが前記第2のパルスエネルギーと同一であり、前記第1のパルス形状が前記第2のパルス形状と同一である、
方法。
【請求項2】
複数のレーザパルスを使用して材料に孔を形成する方法であって、
それぞれのレーザパルスが、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、第1のパルス形状、第1の波長、及び第1のパルス間時間間隔により特徴付けられる最初の組のレーザパルスを提供し、
それぞれのレーザパルスが、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、第2のパルス形状、第2の波長、及び第2のパルス間時間間隔により特徴付けられる最後の組のレーザパルスを提供し、前記第2のパルスエネルギーが前記第1のパルスエネルギーと異なる、前記第2のパルス幅が前記第1のパルス幅と異なる、前記第2のパルス形状が前記第1のパルス形状と異なる、又は前記第2の波長が前記第1の波長とは異なる、のうち少なくとも1つに該当し、
前記最初の組のレーザパルスをレーザスポットに当たるように方向付け、
前記第2のパルスエネルギーを前記第1のパルスエネルギーよりも低くし、
前記最初の組のレーザパルスを方向付けた後に、前記最後の組のレーザパルスを前記レーザスポットに当たるように方向付けて前記材料に孔出口特徴部を形成する、
方法。
【請求項3】
前記複数のレーザパルスが、単一のレーザによって提供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の波長が前記第2の波長に等しい、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の波長及び前記第2の波長が1064nmである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1組のレーザパルスの最後のパルスと前記第2組のレーザパルスの最初のパルスとの間の時間が、前記第1のパルス間時間間隔又は前記第2のパルス間時間間隔のうち大きい方の5倍未満である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
前記最初の組のレーザパルスを提供する前に、前記第1のパルスエネルギー、前記第1のパルス幅、及び前記第1のパルス形状を決定し、
前記最後の組のレーザパルスを提供する前に、前記第2のパルスエネルギー、前記第2のパルス幅、及び前記第2のパルス形状を決定し、前記第2のパルス幅が前記第1のパルス幅に等しくない、又は前記第2のパルス形状が前記第1のパルス形状と同一ではない、のうち少なくとも1つに該当する、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、
前記最初の組のレーザパルスを提供する前に、前記第1の波長及び前記第1のパルス間時間間隔を決定し、
前記最後の組のレーザパルスを提供する前に、前記第2の波長及び前記第2のパルス間時間間隔を決定する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記材料が半導体又はシリコンのうちの少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の波長又は前記第2の波長の少なくとも1つが1064nm未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のパルス幅が前記第2のパルス幅に等しく、前記第1のパルス形状が前記第2のパルス形状と同一である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のパルス形状が前記第2のパルス形状と同一である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のパルスエネルギー及び前記第2のパルスエネルギーが、それぞれ0.05mJより高く2mJよりも低い、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅が、それぞれ20nsより大きく5000nsよりも小さい、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
さらに、
それぞれのレーザパルスが、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、第3のパルス形状、第3の波長、及び第3のパルス間時間間隔により特徴付けられる中間の組のレーザパルスを提供し、
前記最初の組のレーザパルスを方向付けた後であって、前記最後の組のレーザパルスを方向付ける前に、前記中間の組のレーザパルスを前記レーザスポットに当たるように方向付け、
前記中間の組のレーザパルスの最後のパルスと前記最後の組のレーザパルスの最初のパルスとの間の時間が、前記第1のパルス間時間間隔と実質的に同一である、請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1組のレーザパルスの最後のパルスと前記第2組のレーザパルスの最初のパルスとの間の時間が、前記第2のパルス間時間間隔と実質的に同一である、請求項に記載の方法。
【請求項17】
それぞれが波長により特徴付けられる連続光パルス列を用いて材料に孔を形成する方法であって、
第1組のパルスとして1以上の第1の光パルスを提供し、前記第1の光パルスのそれぞれは、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状により特徴付けられ、
比較的速い穿孔速度を実現する第2組のパルスとして1以上の第2の光パルスを提供し、前記第2の光パルスのそれぞれは、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状により特徴付けられ、
孔出口特徴部を形成する第3組のパルスとして1以上の第3の光パルスを提供し、前記第3の光パルスのそれぞれは、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、及び第3のパルス形状により特徴付けられ、
前記第1組のパルスをある位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記第2組のパルスを前記位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記第3のパルスエネルギーを前記第1のパルスエネルギー及び前記第2のパルスエネルギーよりも低くし、
前記第1組のパルスを方向付けた後に、前記第3組のパルスを前記位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記位置で前記材料に前記孔を形成する、
方法。
【請求項18】
さらに、
前記第1組のパルスを提供する前に、前記第1のパルスエネルギー、前記第1のパルス幅、及び前記第1のパルス形状を決定し、
前記第2組のパルスを提供する前に、前記第2のパルスエネルギー、前記第2のパルス幅、及び前記第2のパルス形状を決定し、
前記第3組のパルスを提供する前に、前記第3のパルスエネルギー、前記第3のパルス幅、及び前記第3のパルス形状を決定し、前記第2のパルスエネルギーが前記第1のパルスエネルギーに等しくない、前記第2のパルス幅が前記第1のパルス幅に等しくない、又は前記第2のパルス形状が前記第1のパルス形状と同一ではない、のうち少なくとも1つに該当する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のパルスエネルギーが前記第3のパルスエネルギーに等しくなく、前記第2のパルス幅が前記第3のパルス幅に等しくなく、又は前記第2のパルス形状が前記第3のパルス形状と同一ではない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記材料が少なくとも半導体又はシリコンである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のパルスエネルギーが0.05mJから2mJの間であり、
前記第2のパルスエネルギーが0.05mJから2mJの間であり、
前記第3のパルスエネルギーが0.05mJから2mJの間である、
請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のパルス幅が20nsから5μsの間であり、
前記第2のパルス幅が前記第1のパルス幅及び前記第3のパルス幅よりも長く、20nsから5μsの間であり、
前記第3のパルス幅が20nsから5μsの間である、
請求項17に記載の方法。
【請求項23】
連続レーザパルス列を用いて材料に複数の孔を形成する方法であって、
前記複数の孔のための複数の穿孔位置にわたる第1のパスにおける第1組のレーザパルスであって、第1の波長、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状により特徴付けられる第1組のレーザパルスと、前記複数の孔のための前記複数の穿孔位置にわたる第2のパスにおける第2組のレーザパルスであって、第2の波長、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状により特徴付けられる第2組のレーザパルスとを含む前記連続レーザパルス列を提供し、前記第1組のレーザパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて前記第2組のレーザパルスと異なっており、
前記第1組のレーザパルスの第1のパルスを第1の穿孔位置で前記材料に当たるように前記第1のパスで方向付け、
前記第1組のレーザパルスの後続のパルスを後続の穿孔位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記第2組のレーザパルスにおけるパルスのパルスエネルギーを前記第1組のレーザパルスにおけるパルスのパルスエネルギーよりも低くし、
前記第1のパスの後の前記第2のパスで前記第2組のレーザパルスの第1のパルスを前記第1の穿孔位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記第2組のレーザパルスの後続のパルスを前記後続の穿孔位置で前記材料に当たるように方向付ける、
方法。
【請求項24】
第3の波長、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、及び第3のパルス形状により特徴付けられる第3組のレーザパルスを提供し、前記第3組のレーザパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて少なくとも前記第1組のレーザパルス又は前記第2組のレーザパルスと異なっており、
前記第3組のレーザパルスの第1のパルスを前記第1の穿孔位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記第3組のレーザパルスの後続のパルスを前記後続の穿孔位置で前記材料に当たるように方向付ける、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第3組のレーザパルスは、パルス幅において少なくとも前記第1組のレーザパルス又は前記第2組のレーザパルスと異なっている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第3組のレーザパルスは、パルス形状において少なくとも前記第1組のレーザパルス又は前記第2組のレーザパルスと異なっている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第3組のレーザパルスは、パルスエネルギーにおいて少なくとも前記第1組のレーザパルス又は前記第2組のレーザパルスと異なっている、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第2組のレーザパルスは、パルス幅において前記第1組のレーザパルスと異なっている、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記第2組のレーザパルスは、パルス形状において前記第1組のレーザパルスと異なっている、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
連続レーザパルス列を用いて材料に孔を形成する方法であって、
第1の波長、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状により特徴付けられる第1のレーザパルスと、第2の波長、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状により特徴付けられる第2のレーザパルスと、第3の波長、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、及び第3のパルス形状により特徴付けられる第3のレーザパルスとを備える連続レーザパルス列を提供し、前記第1のレーザパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて前記第2のレーザパルスと異なっており、前記第3のレーザパルスは、前記材料に出口孔特徴部を形成するのに適合されるとともに、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて前記第1のレーザパルス又は前記第2のレーザパルスのうちの少なくとも1つと異なっており、
前記第1のレーザパルスをある穿孔位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記第2のレーザパルスを前記穿孔位置で前記材料に当たるように方向付け、
前記第3のレーザパルスのパルスエネルギーを前記第1のレーザパルス及び前記第2のレーザパルスのパルスエネルギーよりも低くし、
前記第1のレーザパルスを方向付けた後に、前記第3のレーザパルスを前記穿孔位置で前記材料に当たるように方向付ける、
方法。
【請求項31】
さらに、
前記連続レーザパルス列の後続の組を提供し、
後続の穿孔位置に前記連続レーザパルス列の前記後続の組を方向付ける、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第3のレーザパルスは、パルス幅において少なくとも前記第1のレーザパルス又は前記第2のレーザパルスと異なっている、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第3のレーザパルスは、パルス形状において少なくとも前記第1のレーザパルス又は前記第2のレーザパルスと異なっている、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記第3のレーザパルスは、パルスエネルギーにおいて前記第2のレーザパルスと異なる、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記第2のレーザパルスは、パルス幅において前記第1のレーザパルスと異なっている、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記第2のレーザパルスは、パルス形状において前記第1のレーザパルスと異なっている、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記第2のレーザパルスは、パルスエネルギーにおいて前記第1のレーザパルスと異なっている、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年5月4日に出願された米国仮特許出願第61/331,242号に基づく優先権を主張し、その開示は参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
Nd:YAGなどのパルスレーザ源は、マーキング、エングレービング、微細加工、及び切断のような用途のためのレーザをベースにした材料加工を行うために用いられてきた。1パルスあたり0.5mJより大きいパルスエネルギーによって特徴付けられる多くの既存の高パワーパルスレーザは、光パルスを生成するためにQ−スイッチングやモード同期などの手法に依存している。しかしながら、そのようなレーザは、空洞形状や鏡面反射率などにより予め決められた特性を有する光パルスを生成する。したがって、そのようなレーザパルスは、一般に、レーザの性能を損なわずに現場で変えることができない。そのようなレーザを用いると、一般に、可変パルス特性の有効範囲を得ることが難しい。
【0003】
したがって、当該技術分野においては、パルスレーザ源及びかかるパルスレーザ源のための用途に関連する、改良された方法及びシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一般に材料のレーザ加工に関する。さらに詳細には、本発明は、レーザ加工用途において加工品質を改善しスループットを高めるために特に属性が決定された連続レーザパルスを用いる方法及び装置に関するものである。また、本発明は、連続レーザパルスを用いて様々な材料に孔を形成することに関するものでもある。ただし、本発明は、より広い適用可能性を有しており、他の用途や材料にも適用できる。
【0005】
Nd:YAGなどのパルスレーザ源は、マーキング、エングレービング、微細加工、切断、及び穿孔などの用途のためのレーザをベースにした材料加工を行うために用いられてきた。レーザが一般に使用されるそのようなプロセスの1つは、材料に小孔を形成することである。これらの小孔は「ビア」と呼ばれることがある。これらの孔は、材料を完全に貫通する貫通孔であることもあれば、一方の側で開始するが、材料の内部のある点で終了する止まり孔であることもある。レーザは、例えばシリコンのような半導体、銅のような金属、シリカのようなセラミックス、ガラス、及び他の多様な材料を含む種々の材料に孔を形成するために使用することができる。また、レーザは、例えば誘電体と銅とが交互に層をなす電気回路基板などの異なる材料の複数の層からなる試料に孔を形成するためにも使用される。
【0006】
レーザを使用して試料に孔を形成するための1つの手法はパーカッションドリルである。パーカッションドリルでは、レーザからの1以上の光のパルスが、孔を形成しようとしている材料の位置にその焦点が合わされ、結像され、又は方向付けられる。その材料にその焦点を合わされ、結像され、又は方向付けられた光は、ここではレーザスポットと呼ばれるスポットを形成する。各パルスは、所望の深さに孔が達するまで、あるいは孔が材料を完全に貫通するまで、一部の材料を取り除く。パーカッションドリルに使用されるレーザは、典型的には、等しいエネルギー及び繰返し率の連続したレーザパルスを送る(連続パルス列内の各パルスは、先行するパルス及び後続のパルスから時間的に等しく離れている)。パーカッションドリルを用いて複数の孔を形成するとき、レーザパルスを材料に送ることができる3つの方式が名目上存在する。これらの方式には、(i)第1の孔が完成するまで第1の連続パルスを第1の孔に方向付け、次いで第2の孔が完成するまで第2の連続パルスを方向付け、以降すべての孔が完成するまで同様に行う方式と、(ii)第1の孔に第1のパルスを方向付け、次いで第2の孔に第2のパルスを方向付け、次いで第3の孔に第3のパルスを方向付け、以降それぞれの孔に1つのパルスが方向付けられるまで同様に行い、その後すべての孔が完成するまでこの連続パルス列を繰り返す方式と、(iii)第1の孔に第1の連続パルスを方向付け、次いで第2の孔に第2の連続パルスを方向付け、以降連続パルスがそれぞれの孔に方向付けられるまで同様に行い、その後すべての孔が完成するまでこれらの連続パルス列を繰り返す方式がある。方式(i)は、単一パス穿孔プロセスと呼ばれ、方式(ii)及び(iii)は複数パスプロセスと呼ばれる。レーザからの1つのパルスだけで非常に薄い材料を貫通する孔を形成することができる場合もあるが、典型的には、レーザ穿孔は2以上の連続レーザパルスを必要とする。
【0007】
レーザは穿孔に対して数多くの利点を有している。レーザビームの焦点を非常に小さいスポットに合わせて小孔を形成し、それぞれの孔を非常に早く形成することができる。レーザ穿孔は、レンズや鏡、その他の方向付け手段を含む光学系を使って離れたところからレーザビームを方向付けることができ、あるいは、試料自体を移動させることができる非接触プロセスである。そのような方向付け手段は、ビームの再位置決めを1秒に何回も行うことができるように、コンピュータ制御され得る。したがって、短い期間内にレーザを使用して多くの孔を形成することができる。パルスエネルギー、パルス幅(パルス長とも呼ばれる)、時間的パルス形状、ピークパワー、平均パワー、繰返し率などのレーザのパラメータは、典型的には、所望の用途に対して最も望ましい孔属性を得るのに最適な値となるように選択される。多くのレーザについては、通常、レーザのパラメータは広範囲にわたって調整することもできなければ、互いに独立して調整することもできないので、これは、用途ごとに異なるレーザを選択することを意味することが多い。
【0008】
レーザパラメータには、パルス間の時間間隔を決定するパルス繰返し率が含まれる。多くのレーザについては、繰返し率が変化すると、パルスエネルギーも変化することとなる。このパルスエネルギーの変化は、形成されている孔の質やスループット、その他の特性に影響を与えることがある。ただし、パルス間の間隔自体は、多くの場合、パルス間の間隔が変更してしまった場合に同時に生じるパルスエネルギーの変化ほど重要ではない。したがって、多くの場合、複数の孔を形成する際にはある程度の柔軟性があり、孔を形成するために連続パルスが必要とされる場合に、レーザパルスの他のパラメータを所望のものにできるのであれば、個々のパルス間の実際の時間間隔は関係ないことがあり得る。X個のパルスからなるN個の連続パルス列をN個の孔に送ることができる順列は膨大な数あり、任意の1つの特定の孔に方向付けられる連続パルス列の個々のパルス間の時間間隔は、それらの順列の一部において非常に不規則になることがあることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0009】
パルスレーザを用いて孔を形成する一例は、シリコンウェハにおけるスルービアの穿孔である。シリコンウェハにおけるビアホールの必要とされる直径は5μmと小さいことがあり、場合によっては(例えば太陽電池など)、毎秒数百個のスルービアを形成することが必要とされるため、レーザはこの特定の用途において好都合である。ほとんどの場合、シリコンウェハにおけるビアのレーザ穿孔は、電子機器を作るための製造プロセスにおける1つの工程である。このプロセスの他のステップは、多くの場合、ビアホールが筒形状又はテーパ形状など所定の形状を有し、側壁が平滑であり、切溝が孔入口で最大高さを有し、孔入口近傍でのデブリ及び残留物が最小限に抑えられるなどといった品質要件、及び他の特定の要件をビアホールに対して課す。これらの品質要件を満たすために、特定の用途に適するように、最適なパルスエネルギー、パルス幅、パルス繰返し率、ピークパワー又はピークエネルギー、及び時間的パルス形状をはじめとするレーザパルスの最適特性を予め決定し、選択することができることが望ましい。
【0010】
1パルスあたり0.1mJより大きいパルスエネルギーによって特徴付けられる多くの既存の高パワーパルスレーザは、光パルスを生成するためにQ−スイッチング及びモード同期などの手法に依存している。そのようなレーザは、空洞形状や鏡面反射率などによって予め決められた特徴を有する光パルスを生成する。そのようなレーザを用いると、一般には、手元の用途のために最適のパルス幅又はパルス形状を得ることが難しい。同様に、連続パルスの中間連続パルス列でパルスエネルギーや繰返し率などのレーザパルスの1以上の特性を変更すると、スーパーパルスと呼ばれるパルスエネルギーの突然の増加や連続パルス列内の数多くのパルスに対する間欠パルスエネルギー変動などの望ましくない摂動につながることがある。したがって、多くの場合、孔のレーザ穿孔は欠点を有している。
【0011】
本発明は、連続レーザパルスを用いて材料に孔を形成するための方法に関し、その孔に対する穿孔プロセスを最適化するために、1以上のレーザパルスの1以上の特性がその連続パルス列内で変更される。図1に模式的に示されている一実施形態においては、材料に孔を形成するために連続レーザパルスS1が提供され、ここで連続パルス列S1は、パルス間時間間隔がT1でエネルギーE1の多数のパルスを含み、その後にパルス間時間間隔L1が続き、その後にパルス間時間間隔T2でエネルギーE2のさらに多くのパルスが続く。値E1、E2、L1、T1、T2の選択は、孔を形成する速度だけではなく孔の所定の重要な特性を最適化するために予め決定しておいてもよい。本発明の他の実施形態では、材料に孔を形成するために連続レーザパルスが提供され、その連続レーザパルスは、穿孔プロセスを最適化するために予め決定された、異なるエネルギー又はパルス間時間間隔又はパルス幅又はパルス形状を有するパルスを含んでいてもよい。パルス幅は、光パルスの半値全幅FWHMとして定義される。孔を形成するための連続パルスにおける各パルスに対して選択される特徴は、連続パルス列内の各パルスの特性が連続パルス列内の他のすべてのパルスの特性と同一である連続パルスを用いて得られる結果と比較して、形成された孔及び孔の穿孔速度の改善された特性を提供するために予め決定される。
【0012】
ここに記載されている本発明の実施形態は、孔のレーザ穿孔において数多くの利点をもたらす。図2aは、レーザによりシリコンウェハに形成されたビアホールの概略断面図を示す。材料に形成された孔は、多くの属性により特徴付けることができる。例えば、ビアホールは、入口及び出口がほぼ等しい寸法を有する筒形状を有していてもよい。あるいは、ビアホールは、図2aに示されるように入口が出口よりも大きいテーパ形状を有していてもよい。本発明の実施形態においては、連続パルスを使用して孔を形成し、これにより、結果として生じる孔の形状が特定のテーパ状プロファイルを有するように、エネルギー及びパルス間時間間隔を含む1以上のパルス特性が連続パルス列内の1以上のパルスについて変更される。同様に、本発明のさらなる実施形態においては、連続パルスが提供され、これにより、結果として生じる孔の形状が特定の筒形状をしたプロファイルを有するように、エネルギー及びパルス幅を含む1以上のパルス特性が連続パルス列内の1以上のパルスについて変更される。本発明のさらなる実施形態においては、連続パルスが提供され、これにより、孔出口の形状が滑らかな端縁を有する円形となり、孔の側壁は滑らかになるように、エネルギー、パルス間時間間隔、パルス幅、及び時間的パルス形状を含む1以上のパルス特性が変更される。レーザ穿孔は、本来アブレーションを起こしやすいので、孔入口のすぐ近隣の表面は、切溝と呼ばれる基板に付着した盛り上がった材料の領域を有することがある。孔の入口の近くの表面上に飛散して、基板に付着するか、あるいは付着されないで残っているデブリや残留物が生じることがある。本発明の他の実施形態では、爆発的アブレーション効果を低減するように連続パルス列内の最初の所定数のパルスの特性を選択し、孔がシリコンウェハの内部で深くなるにつれて穿孔速度が上がるように連続パルス列内の後続のパルスを選択し、その結果として、孔のデブリや残留物、切溝は削減され、連続パルス列内の各パルスの特性が変更されないままであるときに得られる孔と比較して孔を形成する速度が速くなるように、連続パルスが提供され、材料に孔を形成する。シリコンウェハに孔を形成するプロセスにおいては、パルス特性が連続パルス列を通してすべて同一である連続パルスを使用するのではなく、各パルスの特性が穿孔プロセスを最適化するように予め決められている連続パルスを使用することによって、形成される孔の品質及び製造される装置の信頼性において大きな改善が得られ、また穿孔速度の大幅な改善が得られ、これにより製造の次の段階に送ってもよい装置の数である歩留まりにおいても大きな改善が得られる。
【0013】
本発明の他の実施形態においては、レーザシステムは、材料に孔を形成するために連続レーザパルスを生成し、材料における穿孔を最適化するために連続パルス列内の1以上のパルスの1以上の特性を変更する。パルスレーザ源は、シード信号を発生させるように適合されたシード源と、シード源に結合された第1のポートと第2のポートと第3のポートとを有する光サーキュレータを含んでいる。また、パルスレーザ源は、整形された電気波形を生成するように適合された変調器ドライバと、変調器ドライバに結合され、整形された電気波形を受け入れるように適合された振幅変調器とを含んでいる。振幅変調器は、光サーキュレータの第2のポートに結合された第1の側と第2の側により特徴付けられている。パルスレーザ源は、入力端及び反射端により特徴付けられる第1の光増幅器をさらに含んでいる。入力端は、振幅変調器の第2の側に結合される。さらに、パルスレーザ源は、光サーキュレータの第3のポートに結合される第2の光増幅器を含んでいる。
【0014】
N個の孔を形成するために、レーザシステムは、N個の所定の連続レーザパルス列1,S2,...SN提供し、それぞれの連続パルス列間の時間間隔を十分に長くして、孔が形成されている試料のある領域から次の孔が形成されることになる試料の隣接する領域にレーザビームを位置決めし直すことを可能にしている。シリコンウェハなどの均一な材料に同一の孔を形成するように設計された特定の実施形態においては、形成されるそれぞれの孔を他のそれぞれの孔とほぼ同一にすべく、各連続パルス列が他の連続パルス列と同一となるように、レーザシステムが連続レーザパルスを生成するように提供される。レーザシステムは、形成されるそれぞれの孔にレーザビームを照射し、穿孔プロセスを制御するための手段を含む加工システムに含まれる。シリコンウェハなどの均一な材料に同一の孔を形成するように設計された特定の実施形態においては、形成されるそれぞれの孔が、他のそれぞれの孔とほぼ同一であり、かつ所定の好ましい特性を有するべく、それぞれの連続パルス列内の所定のパルスが、同一の連続パルス列内の他のレーザパルスと著しくかつ意図的に異なるレーザパラメータを有するように、レーザシステムが連続レーザパルスを生成するように提供される。レーザシステムは、形成されるそれぞれの孔にレーザビームを照射し、穿孔プロセスを制御するための手段を含む加工システムに含まれる。シリコンウェハなどの均一な材料にN個の異なる孔を形成するように設計された特定の実施形態においては、形成されるN個の孔のうち所定のものが、ウェハ内の他の孔の特性とは異なる所定の好ましい特性を有するべく、1以上の連続パルス列内の所定のパルスが、同一の連続パルス列内の他のレーザパルスと著しくかつ意図的に異なるレーザパラメータを有し、かつ、所定の連続パルス列は他の連続パルス列内に含まれているものと異なるレーザパラメータを有するパルスを含むように、レーザシステムがN個の所定の連続レーザパルス1,S2,...SNを生成するように提供される。レーザシステムは、形成されるそれぞれの孔にレーザビームを照射し、穿孔プロセスを制御するための手段を含む加工システムに含まれる。
【0015】
他の実施形態においては、レーザシステムは、ビーム位置決めシステムを用いて連続レーザパルスを生成するために提供される。連続パルス1の第1のパルスが第1の孔に方向付けられ、次いで連続パルス列1の第2のパルスが第2の孔に方向付けられ、以降連続パルス1内の最後のパルスが最後の孔に方向付けられるまで同様に行われる。その後、連続パルス2の第1のパルスが第1の孔に方向付けられ、次いで連続パルス列2の第2のパルスが第2の孔に方向付けられ、以降連続パルス2の最後のパルスが最後の孔に方向付けられるまで同様に行われる。以下、孔のそれぞれにすべての連続パルスが照射されるまで同様に行われる。全体的なパルスシーケンスにおける任意の2つの連続パルス間の時間間隔は、ビーム位置決めシステムが1つの孔から次の孔へビームを方向付けるのに十分な期間であるが、レーザパルスパラメータを変更するための休止に対する追加の要件はない。同様に、第2のパスが孔ごとに連続パルス列2からの2個のパルスを含み得ることは言うまでもない。マルチパス穿孔プロセスは、典型的には、例えばそれぞれの孔の途中でまで結像光学系に対して調整が行われるとき、あるいは第2の層を貫通する孔を形成するために第2のパスで異なるレーザが使用される場合に、(それぞれの孔が連続的に形成される)単一パスプロセスの代わりに使用される。上記に概説された2つの簡単な構成以外に、X個のパルスからなるN個の連続パルス列をN個の孔に送ることができる数多くの順列があることは、当業者であれば理解できるであろう。本発明の他の実施形態においては、これらの順列のうち1以上のものに対応している。本発明のある実施形態によれば、1つの連続パルスから次の連続パルスにレーザパルスパラメータを変更するためにこのパルスシーケンス中に非常に長い休止は必要とされない。
【0016】
さらに他の実施形態においては、レーザシステムは、ビーム位置決めシステムを用いて連続レーザパルスを生成するために提供され、パルスシーケンスS1の第1のパルスは第1の孔に方向付けられ、次いでシーケンスS2の第1のパルスは第2の孔に方向付けられ、以降パルスシーケンスSN内の最初のパルスがN番目の孔に方向付けられるまで同様に行われる。その後、パルスシーケンスS1の第2のパルスは第1の孔に方向付けられ、次いでシーケンスS2の第2のパルスは第2の孔に方向付けられ、以降パルスシーケンスSNの第2のパルスがN番目の孔に方向付けられるまで同様に行われる。以下、孔のそれぞれに完全な連続パルスxが照射されるまで同様に行われる。全体的なパルスシーケンスにおける任意の2つの連続パルス間の時間間隔は、ビーム位置決めシステムが1つの孔から次の孔へビームを方向付けるのに十分な期間である。上記に概説された2つの簡単な構成以外に、X個のパルスのN個のシーケンスをN個の孔に送ることができる数多くの順列があることは、当業者であれば理解できるであろう。本発明の他の実施形態では、そのようなすべての順列に対応している。
【0017】
さらなる実施形態においては、レーザシステムは、N個の所定の連続パルス列1,S2,...SNを生成するために提供され、それぞれの連続パルス列間の時間間隔を十分に長くして、それぞれの孔に対して事前穿孔を行うために、ある孔から次の孔にレーザビームを方向付けし直すことを可能にしている。そして、レーザは、それぞれの孔の穿孔を完了するために、N個の所定の連続レーザパルス列1,R2,......RNを提供することとしてもよい。この実施形態においては、少なくとも1つの連続パルス列の少なくとも1個のパルスのレーザパルス特性は、その連続パルス列内の他のパルスのレーザパルス特性とは異なっている。レーザシステムは、形成されるそれぞれの孔にレーザビームを方向付け、穿孔プロセスを制御することができる加工システムに含まれる。レーザシステムは、形成されるそれぞれの孔にレーザビームを方向付け、穿孔プロセスを制御するための手段を含む加工システムに含まれる。したがって、これは、例えば異なる材料の2つの層からなる試料に貫通孔を形成するために使用される2ステップ穿孔プロセスである。この2ステップ穿孔プロセスのさらなる実施形態においては、2つの異なるレーザ、すなわち連続パルス列1,S2,...SNを生成する第1のレーザと、連続パルス列1,R2,......RNを生成する第2のレーザを使用してもよい。
【0018】
本発明の実施形態によれば、複数のレーザパルスを使用して材料(例えば半導体やシリコンなど)に孔を形成する方法が提供される。この方法は、それぞれのレーザパルスが、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、第1のパルス形状、第1の波長、及び第1のパルス間時間間隔により特徴付けられる第1組のレーザパルスを提供する。また、この方法は、それぞれのレーザパルスが、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、第2のパルス形状、第2の波長、及び第2のパルス間時間間隔により特徴付けられる第2組のレーザパルスを提供し、第2のパルスエネルギーが第1のパルスエネルギーと異なる、第2のパルス幅が第1のパルス幅と異なる、第2のパルス形状が第1のパルス形状と異なる、又は第2の波長が第1の波長とは異なる、のうち少なくとも1つに該当する。さらに、この方法は、第1組のレーザパルスをレーザスポットに当たるように方向付け、第2組のレーザパルスをレーザスポットに当たるように方向付け、材料に孔を形成する。例として、複数のレーザパルスを単一のレーザによって提供することができ、第1の波長が第2の波長と等しくてもよく、第1の波長及び第2の波長が1064nmであってもよい。他の実施形態においては、第1の波長又は第2の波長のうち少なくとも1つが1064nm未満である。
【0019】
一実施形態においては、第1組のレーザパルスの最後のパルスと第2組のレーザパルスの最初のパルスとの間の時間は、第1のパルス間時間間隔又は第2のパルス間時間間隔のうち大きい方の5倍未満である。また、この方法は、第1組のレーザパルスを提供する前に、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状を決定し、第2組のレーザパルスを提供する前に、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状を決定してもよく、第2のパルスエネルギーが第1のパルスエネルギーに等しくない、第2のパルス幅が第1のパルス幅に等しくない、又は第2のパルス形状が第1のパルス形状と同一ではない、のうち少なくとも1つに該当してもよい。
【0020】
一実施形態によれば、第1組のレーザパルスは単一のレーザパルスを含み、第2組のレーザパルスは単一のレーザパルスを含む。第1のパルス幅が第2のパルス幅と等しくてもよく、第1のパルス形状が第2のパルス形状と同一であってもよい。第1のパルスエネルギーが第2のパルスエネルギーと同一であってもよく、第1のパルス形状が第2のパルス形状と同一であってもよい。第1のパルスエネルギー及び第2のパルスエネルギーはそれぞれ0.05mJより高く2mJよりも低い。第1のパルス幅及び第2のパルス幅はそれぞれ20nsより大きく5000nsよりも小さい。第1組のレーザパルスの最後のパルスと第2組のレーザパルスの最初のパルスとの間の時間が、第1のパルス間時間間隔とほぼ同一であってもよい。第1組のレーザパルスの最後のパルスと第2組のレーザパルスの最初のパルスとの間の時間が、第2のパルス間時間間隔とほぼ同一であってもよい。
【0021】
他の実施形態によれば、この方法は、さらに、第1組のレーザパルスを提供する前に、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、第1のパルス形状、第1の波長、及び第1のパルス間時間間隔を決定し、第2組のレーザパルスを提供する前に、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、第2のパルス形状、第2の波長、及び第2のパルス間時間間隔を決定する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、それぞれが波長により特徴付けられる連続光パルスを用いて材料(例えば半導体やシリコンなど)に孔を形成する方法が提供される。この方法は、第1組のパルスとして1以上の第1の光パルスを提供し、第1の光パルスのそれぞれは、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状により特徴付けられ、第2組のパルスとして1以上の第2の光パルスを提供し、第2の光パルスのそれぞれは、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状により特徴付けられる。また、この方法は、第3組のパルスとして1以上の第3の光パルスを提供し、第3の光パルスのそれぞれは、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、及び第3のパルス形状により特徴付けられ、第1組のパルスをある位置で材料に当たるように方向付け、第2組のパルスを当該位置で材料に当たるように方向付け、第3組のパルスを当該位置で材料に当たるように方向付け、当該位置で材料に孔を形成する。
【0023】
他の実施形態によれば、この方法は、さらに、第1組のパルスを提供する前に、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状を決定し、第2組のパルスを提供する前に、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状を決定し、第3組のパルスを提供する前に、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、及び第3のパルス形状を決定する。第2のパルスエネルギーが第1のパルスエネルギーに等しくない、第2のパルス幅が第1のパルス幅に等しくない、又は第2のパルス形状が第1のパルス形状と同一ではない、のうち少なくとも1つに該当する。第2のパルスエネルギーが第3のパルスエネルギーに等しくなくてもよく、第2のパルス幅が第3のパルス幅に等しくなくてもよく、あるいは第2のパルス形状が第3のパルス形状と同一ではなくてもよい。
【0024】
第1のパルスエネルギーが0.05mJから2mJの間であってもよく、第2のパルスエネルギーが0.05mJから2mJの間であってもよく、第3のパルスエネルギーが0.05mJから2mJの間であってもよい。第1のパルス幅が20nsから5μsの間であってもよく、第2のパルス幅が20nsから5μsの間であってもよく、第3のパルス幅が20nsから5μsの間であってもよい。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、連続レーザパルスを用いて材料(例えば半導体やシリコンなど)に孔を形成する方法が提供される。この方法は、2以上のパルスを含む連続レーザパルスを提供する。連続レーザパルス内の少なくとも1個のパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいてこの連続パルス内の他のパルスと異なっている。また、この方法は、連続レーザパルスをある穿孔位置で材料に当たるように方向付け、この穿孔位置で孔を形成する。上記1個のパルスと他のパルスは、パルスエネルギーにおいて異なっていてもよい。上記1個のパルスと他のパルスは、パルス幅において異なっていてもよい。上記1個のパルスと他のパルスは、パルス形状において異なっていてもよい。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、それぞれが波長(例えば〜1064nm)、パルスエネルギー、パルス幅、及び時間的パルス形状により特徴付けられる連続レーザパルスを用いて材料を貫通する孔(例えば筒形状)を形成する方法が提供される。この方法は、連続パルス列内の連続するパルス間の時間間隔が0.01秒以下である連続パルス間の時間間隔により特徴付けられる連続レーザパルスを提供し、連続パルス列内の少なくとも1個のパルスのパルスエネルギーが、連続パルス列内の他のパルスのパルスエネルギーよりも低くなるようにし、レーザパルスの組をあるレーザスポットに当たるように方向付け、材料を貫通する孔を形成する。この材料は半導体材料又はシリコンを含んでいてもよい。
【0027】
一実施形態においては、連続パルス列内の最初のパルスのエネルギーは、連続パルス列内の他の少なくとも1つのパルスのエネルギーよりも低い。他の実施形態においては、連続パルス列内の最初のパルスのエネルギーは50μJよりも高く400μJよりも低い。ある実施形態においては、連続パルス列内の最後のパルスのエネルギーは、連続パルス列内の他の少なくとも1つのパルスのエネルギーより高い。例として、連続パルス列内の最後のパルスのエネルギーは400μJよりも高く1000μJよりも低い。連続パルス列内のすべてのパルスの時間的パルス形状がほぼ正方形であってもよい。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、それぞれが波長、パルスエネルギー、パルス幅、及び時間的パルス形状により特徴付けられる連続レーザパルスを提供する1つのレーザを用いて材料を貫通する孔を形成する方法が提供される。この方法は、連続パルス列内の連続するパルス間の時間間隔が0.01秒以下である連続パルス間の時間間隔により特徴付けられる連続レーザパルスを提供し、連続パルス列内の少なくとも1個のパルスのパルス幅が、連続パルス列内の他のパルスのパルス幅よりも短くなるようにし、レーザパルスの組をあるレーザスポットに当たるように方向付け、材料を貫通する孔を形成する。
【0029】
この材料は半導体材料又はシリコンを含んでいてもよい。波長は、約1064nmであってもよい。孔は、テーパ形状を有していてもよい。連続パルス列内の最初のパルスのパルス幅は、連続パルス列内の他のパルスのパルス幅よりも短くてもよい。連続パルス列内の最初のパルスのパルス幅は、20nsFWHMよりも大きく、200nsFWHMよりも小さくてもよい。連続パルス列内の最後のパルスのパルス幅は、連続パルス列内の他のパルスのパルス幅よりも長くてもよい。連続パルス列内の最後のパルスのパルス幅は、400nsFWHMよりも大きく、1000nsFWHMよりも小さくてもよい。連続パルス列内のすべてのパルスの時間的パルス形状がほぼ正方形であってもよい。
【0030】
本発明の他の特定の実施形態によれば、それぞれが波長(例えば1064nm)、パルスエネルギー、パルス幅、及び時間的パルス形状により特徴付けられる連続レーザパルスを提供する1つのレーザを用いて材料(例えば半導体又はシリコン)を貫通する孔を形成する方法が提供される。この方法は、連続パルス列内の連続パルス間の時間間隔が0.01秒以下である連続パルス間の時間間隔により特徴付けられる連続レーザパルスを提供し、連続パルス列内の少なくとも1個のパルスの時間的パルス形状が、連続パルス列内の他のパルスの時間的パルス形状と実質的に異なるようにし、レーザパルスの組をあるレーザスポットに当たるように方向付け、材料を貫通する孔を形成する。
【0031】
一実施形態においては、孔の出口側は明確に画定され、孔の側壁は滑らかである。他の実施形態においては、連続パルス列内の少なくとも1個のパルスの時間的パルス形状は正方形プロファイルを有している。連続パルス列内の少なくとも1個のパルスの時間的パルス形状は、パワースパイクとそれに続くパルス平坦部を有していてもよい。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、連続レーザパルスを用いて材料に複数の孔を形成する方法が提供される。この方法は、第1の波長、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状により特徴付けられる第1組のレーザパルスと、第2の波長、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状により特徴付けられる第2組のレーザパルスとを含む連続レーザパルスを提供する。第1の連続レーザパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて第2の連続レーザパルスと異なっている。また、この方法は、第1組のレーザパルスの第1のパルスを第1の穿孔位置で材料に当たるように方向付け、第1組のレーザパルスの後続のパルスを後続の穿孔位置で材料に当たるように方向付ける。さらに、この方法は、第2組のレーザパルスの第1のパルスを第1の位置で材料に当たるように方向付け、第2組のレーザパルスの後続のパルスを後続の穿孔位置で材料に当たるように方向付ける。
【0033】
ある実施形態によれば、この方法は、さらに、第3の波長、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、及び第3のパルス形状により特徴付けられる第3組のレーザパルスを提供し、第3の連続レーザパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて少なくとも第1の連続レーザパルス又は第2の連続レーザパルスと異なっており、第3組のレーザパルスの第1のパルスを第1の穿孔位置で材料に当たるように方向付け、第3組のレーザパルスの後続のパルスを後続の穿孔位置で材料に当たるように方向付ける。
【0034】
第3の連続レーザパルスは、パルス幅、パルス形状、又はパルスエネルギーにおいて少なくとも第1の連続レーザパルス又は第2の連続レーザパルスと異なっていてもよい。第2の連続レーザパルスは、パルス幅、パルス形状、又はパルスエネルギーにおいて第1の連続レーザパルスと異なっていてもよい。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、連続レーザパルスを用いて材料に孔を形成する方法が提供される。この方法は、第1の波長、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、及び第1のパルス形状により特徴付けられる第1のレーザパルスと、第2の波長、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、及び第2のパルス形状により特徴付けられる第2のレーザパルスと、第3の波長、第3のパルスエネルギー、第3のパルス幅、及び第3のパルス形状により特徴付けられる第3のレーザパルスとを備える連続レーザパルスを提供し、第1のレーザパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて第2のレーザパルスと異なっており、第3のレーザパルスは、波長、パルスエネルギー、パルス幅、又はパルス形状のうちの少なくとも1つにおいて第1のレーザパルス又は第2のレーザパルスのうちの少なくとも1つと異なっている。また、この方法は、第1のレーザパルスをある穿孔位置で材料に当たるように方向付け、第2のレーザパルスを当該穿孔位置で材料にあたるように方向付け、第3のレーザパルスを当該穿孔位置で材料に当たるように方向付ける。
【0036】
一実施形態においては、この方法は、上記連続レーザパルスの後続の組を提供し、後続の穿孔位置に連続レーザパルスの上記後続の組を方向付ける。第3のレーザパルスは、パルス幅、パルス形状、又はパルスエネルギーにおいて少なくとも第1のレーザパルス又は第2のレーザパルスと異なっていてもよい。第2のレーザパルスは、パルス幅、パルス形状、又はパルスエネルギーにおいて第1のレーザパルスと異なっていてもよい。
【0037】
従来の手法よりも優れた本発明を用いることにより数多くの利点が得られる。例えば、本発明に係る一実施形態においては、同様の性能特性を有するレーザと比較して安価であるコンパクトな構成を利用した、材料に孔を形成するのに好適な高パワーパルスレーザが提供される。さらに、本発明に係る一実施形態においては、材料における穿孔プロセスを最適化するために連続パルス内の1以上の光パルスの1以上の特性を変更できるようにレーザに対する調整を行うことができるような、材料に孔を形成するのに好適なパルスレーザが提供される。パルス特性には、パルスエネルギー、隣接するパルス間の時間間隔、パルス幅、パルスプロファイル及びピークパワーが含まれるが、これらに限定されるものではない。実施形態によっては、例えば形成される孔の品質や処理された物の歩留まりの改善をはじめとした数多くの利点が存在する。これらの利点及び他の利点は、本明細書を通して、そして以下により詳細に説明される。本発明の様々な付加的な目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、材料に孔を形成するのに好適な連続パルスを示す実施形態の模式図である。この図においては、時間が横軸であり、パワーが縦軸である。
図2a図2aは、レーザによりシリコンウェハに形成されたビア(貫通孔)の模式的断面図である。
図2b図2bは、レーザによりシリコンウェハに形成された複数のビアを示すシリコンウェハの模式図である。
図3図3は、材料に孔を形成するのに好適な連続パルスを示す実施形態の模式図である。この図においては、時間が横軸であり、パワーが縦軸である。
図4図4は、材料に孔を形成するのに好適な連続パルスを示す実施形態の模式図である。この図においては、時間が横軸であり、パワーが縦軸である。
図5図5は、本発明の実施形態における、材料に孔を形成するのに好適な出力連続レーザパルスを提供する、調整可能なパルス特性を有するパルスレーザの簡略化された模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態における、材料に孔を形成するのに好適な出力連続レーザパルスを提供する、調整可能なパルス特性を有するパルスレーザの簡略化された模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態における、材料に孔を形成するのに好適なレーザ加工システムの簡略化された模式図である。
図8図8は、本発明の実施形態における、材料に孔を形成するのに好適なレーザ加工システムの簡略化された模式図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係る連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。
図11図11は、本発明の実施形態に係る連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。
図12図12は、本発明の実施形態に係る連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。
図13図13は、材料に孔を形成するのに好適な連続パルスを示す実施形態の模式図である。この図においては、時間が横軸であり、パワーが縦軸である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
大型の多層銅誘電体回路基板から小型のシリコン集積回路に至るまで多層回路の技術は、エレクトロニクス業界で長年一般的となっている。集積回路は、電話、コンピュータ、自動車、及び他の数多くの装置などの電子機器で幅広く使用されている。多層設計が使用されるときは常に、孔を使用して層間の接続を行う必要がある。集積回路の製造で使用されるシリコンウェハの場合、これらの孔は通常ビアと呼ばれる。図2bに模式的に示されるように、シリコンウェハは、典型的には、数千のビアを含み、したがって、孔を形成するための方法は、高速でなければならず、製作されている機器にとって望ましい属性をもつ孔を形成しなければならない。典型的には、製造プロセスにおける後続のステップで決定される要件によりこれらの望ましい属性が規定される。
【0040】
シリコンウェハにおける単一のビアの模式的な図が図2aに示されている。ビアにとって重要な属性には、孔入口及び孔出口のサイズ、孔入口及び孔出口の楕円率、孔入口及び孔出口の端縁の粗さ、孔入口周りの切溝の高さ、孔入口及び孔出口の近傍で散乱するデブリの量及び程度、孔入口及び孔出口の近傍の表面上に堆積する残留物の厚さ及び程度、孔の側壁の粗さ、側壁の曲率、及び他の属性がある。シリコンウェハは数千のビアを含む得るので、それぞれのビアの属性がほぼ同一であることが重要である。したがって、穿孔プロセスの再現性も重要である。シリコンウェハにビアを形成することは、材料に形成される孔の一例にすぎず、特定の用途及び材料ごとに、それぞれの孔に対する望ましい属性の組があることは言うまでもない。
【0041】
材料に孔を形成するために使用されるパルスレーザの例には、ガラスに孔を形成するために使用されるパルスCO2レーザ、プラスチックに孔を形成するために使用されるエキシマレーザ、シリコンに孔を形成するために使用されるパルスNd:YAGレーザ、銅を貫通する孔を形成するために使用される、紫外線波長に3逓倍されたパルスNd:YLFレーザ、プリント基板の誘電絶縁体に孔を形成するために使用されるパルスCO2レーザ、重合体に孔を形成するために使用されるパルスNd:YAGレーザ、及び他の多くの例が含まれる。パルスレーザを用いて材料に孔を形成する際に、例えば心残し削りなどの他の手法もあるが、最も一般的な手法はパーカッションドリルと呼ばれている。パーカッションドリルでは、孔が形成される位置のレーザスポットにレーザビームの焦点を合わせる又はレーザビームを結像させ、必要とされる孔深さに達するまで(止まり孔)、あるいは孔が材料の他方の側を突き抜ける(貫通孔)までそれぞれの個別パルスにより材料の一部を取り除く。
【0042】
すべてのパルスレーザに対して、穿孔プロセスを最適化するために選択可能な1以上の動作特性が存在する。例えば、レーザのパルスエネルギーを選択することができる。大まかには、パルスエネルギーが高いほど、それぞれのパルスにより取り除かれる材料は多くなり、したがって孔を形成するために必要とされるパルス数は少なくなる。パルスエネルギーが高いと、デブリや残留物として放出される材料がより多くなり、孔入口及び孔出口の壁や端縁の粗さが増加するという悪影響を及ぼす場合がある。そのような影響が特定の用途に対して望ましくないと考えられる場合には、孔を形成するためにより多くのパルスが必要とされることになるものの、より低いパルスエネルギーを使用することが好都合である場合がある。穿孔プロセスを早くするために選択され得る他の動作特性としては、より短いパルス間時間間隔を意味する高いレーザ繰返し率を選択することがある。例えば、一定時間残存する熱によって引き起こされた影響が存在する場合などにおいては、パルス間時間間隔を短くすることは、バックグラウンド熱の余分な蓄積により、あるいは他の手段により孔の品質に悪影響を及ぼすことがある。材料に対する光の相互作用の物理的特性のため、材料を除去するためには、長いレーザパルスの方が短いレーザパルスよりもより効果的である場合がある。幅広い可能性がある。典型的な製造状況においては、オペレータは、一連の実験を行い、レーザ動作特性に対して値を選択し、選択された値を有するパルスを用いて試験孔が形成され、形成された孔を検査する。レーザ動作特性に対して様々な値を用いて孔を形成することによって、オペレータは、どの組の値が、所望の穿孔速度(1秒あたりの孔数)で許容できる品質を備えた孔を提供できるのかを決定する。その後、製造プロセスのために、レーザは、これらの実験により決定された、それぞれの動作特性に対して選択された最適値を有するパルスを提供するように設定される。
【0043】
本発明の実施形態によれば、パルスパラメータは、本明細書を通じて説明されるように予め決められる。ここで述べられる動作は、トリガレートの不連続に続く連続パルスに対して異なるパルスパラメータを有する、一部の従来のパルスレーザシステム(例えばQ−スイッチングレーザ)とは異なっている。Q−スイッチングレーザにおける挙動である、時間の関数としてのゲインプロファイルに単に応答するのではなく、本発明の実施形態は、パルスパラメータの能動制御を提供し、種々の穿孔動作に好適なパルス列を提供する。特定の予め決められたパルスパラメータを有するパルスを提供するレーザの動作は、所定のパルス特性を有する連続パルスを提供することと言うことができる。本発明の一実施形態においては、連続パルス内のパルスに対するパルス特性の選択は、その連続パルスを用いて形成される1以上の孔の所望の特性を提供するために予め決められている。本発明のある実施形態によれば、所定のパルス特性は、そのようなパラメータが独立して設定され得る多数の値のうちの1つにそれぞれレーザの1以上の特定のパラメータを設定することによって提供される。この方法は、1つの調整可能なパラメータが特定の値に設定され、レーザの調整できない他のパラメータがレーザ設計の結果により修正されて特定の所望の特性を得ることができる動作とは対照的なものである。
【0044】
多くの従来のレーザについては、一部の動作特性を変更することは不可能であるか、少なくとも非常に難しい。通常、パルスエネルギー及びパルス間時間間隔を選択することは可能であるが、レーザを停止せずにこれらの値を変更することができない場合がある。休止することなくパルス動作特性を変更しようとすると、結果的に、パルスが安定化するまでの多くのパルスの間パルスエネルギーが不安定な状態になる。例えば、パルス間時間間隔の変更を休止することなく行った場合、次の数パルスの間パルスエネルギーが急激に上昇することがある。残念なことに、一部のレーザについては、パルス幅、ピークパワー、又はパルス形状のようないくつかの重要な特性を変更することさえ全くできないことが多い。これは、これらのパラメータが、レーザのレーザ利得媒体自体や光共振器空洞のようなものによって決定されることがあるからである。
【0045】
ファイバレーザは、能動利得媒体が光ファイバであるレーザである。一部のファイバレーザについては、以前は他の種類のレーザではアクセス不可能であった動作特性の多くを変更又はプログラミングすることができる。ピークパワー、パルス幅、及び時間的パルス形状の値を選択できることにより、孔の穿孔を含む材料加工用途において改善が得られるようになった。プロセスは熱的なものではなくアブレーションを伴うものであるため、より短いパルス(ピークパワーが高いことが多い)は、より綺麗な材料の除去につながることが多い。一例として、短いレーザパルスでのエネルギーは、材料の溶解が発生しうる前の十分に短い期間に蓄積できる。これとは対照的に、材料とのより遅い熱相互作用においてより長いパルスによって溶解された材料は、孔入口近傍の表面上に飛散する傾向があり、これにより過剰な残留物やデブリを形成することがある。同様に、短いレーザパルスは、孔の中により滑らかな側壁を形成可能なことが多い。ただし、材料の除去は、多くの場合、(少なくとも特定のエネルギー範囲においては)送られるエネルギーに比例しており、したがって一般的には、パルスエネルギーが長いパルスより低い場合には、短いパルスによって除去される材料は少なくなる。このように、許容できる孔品質を得ることと高い穿孔速度との間にはトレードオフが生じることがある。したがって、パルスエネルギー、パルス間時間間隔、パルス幅、ピークパワー、及びパルス形状を含む、より多くの動作特性の値を設定できることは、穿孔を含む多くの材料加工用途にファイバレーザを使用することを促進してきた。
【0046】
休止することなくパルス間で動作特性を変更できる能力を備えた新しいファイバレーザ設計が現れてきている。これらの設計を用いると、パルスエネルギー又は他の特性を含む後続のパルスの特性を不安定な状態とすることなく瞬時に動作特性の値を変更することができる。連続パルス列内のすべてのレーザパルスのそれぞれの特性が同一である連続レーザパルスを提供して孔を形成するのではなく、連続パルスの途中で動作特性の値を変更できるということは、穿孔プロセスを最適化するために連続パルス列内の個々のパルス(又は連続パルス列内のパルスの組)に対する特性を別個に選択することができることを意味している。このため、例えば材料に孔を形成するためのレーザパルスについて、連続パルス列内の初期のパルスは、パルスエネルギーが低く、パルス間時間間隔が短くてもよく、連続パルス列内の残りのパルスは、パルスエネルギーがより高く、パルス間時間間隔がより長くてもよい。材料に孔を形成するために使用される連続パルスについて、穿孔プロセスを最適化するために、連続パルス列内のパルスごとに、パルスエネルギー、パルス間時間間隔、パルス幅、ピークパワー、及びパルス形状の値を選択することができる。
【0047】
本発明の実施形態によれば、図1は、材料に孔を形成するのに好適なパルス幅W1を有する単一の連続レーザパルスS1を示す模式図であり、最速の穿孔速度で所望の孔属性を得るために、パルスエネルギー及びパルス間時間間隔が、この連続パルス列の第1のサブ「S1a」のE1及びT1から、この連続パルス列の第2のサブ「S1b」のE1及びT2にそれぞれ変化する。このように、エネルギーE1及びパルス間時間間隔T1を有するパルスは、孔の最初の部分を穿孔するのに好都合であり、次いでエネルギーE2及びパルス間時間間隔T2を有するパルスは孔の最後の部分を穿孔するのに好都合であろう。第1のサブ「S1a」と第2のサブ「S1b」との間の時間間隔L1は、T1又はT2のいずれかよりも小さい値、T1又はT2に等しい値、もしくはT1又はT2よりも大きい値を有することができる。ある実施形態では、値L1は、例えばT1又はT2のうち大きい方の約2倍など、T1又はT2のうち大きい方の5倍未満である。1064nmの波長で動作するパルスファイバレーザを用いて厚さ0.15mmのシリコンウェハに直径50μmの孔を形成するときに、発明者等は、図1に示されるものに類似する連続パルスが、筒形状のビアを提供し、許容できる穿孔速度においてデブリ及び残留物の量を削減できることを発見した。特に、最初の8個のパルスとしてパルスエネルギーが210μJで100nsという比較的短いパルス幅を用いることで、孔入口近傍のデブリの量が削減される。しかしながら、穿孔が開始された後、穿孔速度を上げるために、残りの40パルスのパルスエネルギーを400μJに上げることができる。この連続パルス列内のすべての48パルスのパルス幅が100nsである場合、筒形状のスルービアが生じる。この例では、最大レーザパワーを提供するように時間間隔T1及びT2が選択される。したがって、この例では、平均20ワットパワーのレーザに対してT1=10.5μs、T2=20μsである。L1はT2と同じとなるように、すなわち20μsとなるように選択される。ウェハにそれぞれの孔を形成するためにこの連続パルスを用いることで、レーザの潜在的な穿孔速度能力は毎秒約1100ビアとなり、孔入口近傍のデブリの量が削減され、所望の筒形状のビアを提供することができる。
【0048】
パルスエネルギー及びパルス間時間間隔以外のパラメータも変更してもよい。本発明の他の実施形態によれば、図3は、材料に孔を形成するのに好適な単一の連続レーザパルスS2を示す模式図であり、最速の穿孔速度で所望の孔属性を得るために、パルスエネルギー、パルス幅、及びパルス間時間間隔が、この連続パルス列の第1のサブ「S2a」のE1、W1、及びT1から、この連続パルス列の第2のサブ「S2b」のE2、W2、及びT2にそれぞれ変化する。このように、エネルギーE1、パルス幅W1、及びパルス間時間間隔T1を有するパルスは、孔の最初の部分を穿孔するのに好都合であり、次いでエネルギーE2、パルス幅W2、及びパルス間時間間隔T2を有するパルスは孔の最後の部分を穿孔するのに好都合であろう。第1のサブ「S2a」と第2のサブ「S2b」との間の時間間隔L1は、T1又はT2のいずれかよりも小さい値、T1又はT2に等しい値、もしくはT1又はT2よりも大きい値を有することができる。ある実施形態では、値L1は、例えばT1又はT2のうち大きい方の約2倍など、T1又はT2のうち大きい方の5倍未満である。1064nmの波長で動作するパルスファイバレーザを用いて厚さ0.15mmのシリコンウェハに直径50μmの孔を形成するときに、発明者等は、図3に示されるものに類似する連続パルスが、テーパ形状のビアを提供し、許容できる穿孔速度でデブリ及び残留物の量を削減できることを発見した。特に、最初の4個のパルスとしてパルスエネルギーが400μJで100nsという比較的短いパルス幅を用いることで、孔入口近傍のデブリの量が削減される。しかしながら、穿孔が開始された後、穿孔速度を上げるために、その連続パルス列における残りの14パルスに対して、パルスエネルギーを600μJに上げることができ、パルス幅を500nsに増やすことができる。比較的長いパルスを使用することで、テーパ形状のビア形状が生じる。より低いエネルギー及びより短いパルス幅の4個の短いパルスを有する連続パルスを開始することにより、孔入口でのデブリの量が削減される。この例では、最大レーザパワーを提供するように時間間隔T1及びT2が選択される。したがって、この例では、平均20ワットパワーのレーザに対してT1=20μs、T2=30μsである。L1はT2と同じとなるように、すなわち30μsとなるように選択される。ウェハにそれぞれの孔を形成するためにこの連続パルスを用いることで、レーザの潜在的な穿孔速度能力は毎秒約2000ビアとなり、孔入口近傍のデブリの量が削減され、所望のテーパ形状のビアを提供することができる。
【0049】
材料に孔を形成するための連続パルスが、パルス特性が異なる2つのサブしか持っていないことは要求されていない。本発明の実施形態における材料に孔を形成するのに好適な連続パルス図4に示されており、連続パルスは3つのサブS3a,S3b,S3cを含んでいる。第1のサブS3aのパルスは、パルスエネルギーE1、パルス幅W1、パルス間時間間隔T1を有している。第2のサブS3bのパルスは、パルスエネルギーE2、パルス幅W2、パルス間時間間隔T2を有している。第3のサブS3cのパルスは、パルスエネルギーE3、パルス間時間間隔T3、及びスパイクと平坦部からなる特別なパルス形状を有している。このように、エネルギーE1、パルス幅W1、及びパルス間時間間隔T1を有するパルスは、孔の最初の部分を穿孔するのに好都合であり、次いでエネルギーE2、パルス幅W2、及びパルス間時間間隔T2を有するパルスは、孔の中間部分を穿孔するのに好都合であり、エネルギーE3、パルス間時間間隔T3、及び特別なパルス形状を有するパルスは、所望の孔出口属性を提供するために孔の最後の領域を穿孔するのに好適であろう。第1のサブ「S2a」と第2のサブ「S1b」との間の時間間隔L1は、T1又はT2又はT3のいずれかよりも小さい値、T1又はT2又はT3に等しい値、もしくはT1又はT2又はT3よりも大きい値を有することができる。ある実施形態では、値L1は、例えばT1又はT2又はT3のうち大きい方の約2倍など、T1又はT2又はT3のうち大きい方の5倍未満である。
【0050】
同様に、第2のサブ「S3b」と第3のサブ「S3c」との間の時間間隔L2は、T1又はT2又はT3のいずれかよりも小さい値、T1又はT2又はT3に等しい値、もしくはT1又はT2又はT3よりも大きい値を有することができる。ある実施形態では、値L2は、例えばT1又はT2又はT3のうち大きい方の約2倍など、T1又はT2又はT3のうち大きい方の5倍未満である。シリコンウェハに孔を形成するときに、発明者等は、孔出口を形成するための進展プロセスが予測不可能であり、特に非常に長いパルス幅のパルスを使用するときにギザギザの端縁の非円形の孔を形成することがあることを観察した。1064nmの波長で動作するパルスファイバレーザを用いて厚さ0.15mmのシリコンウェハに直径50μmの孔を形成するときに、発明者等は、図4に示されるものに類似する連続パルスが、テーパ形状を提供し、孔入口でデブリ及び残留物の量を削減し、孔出口を丸くし、穿孔速度を高くすることができることを発見した。特に、最初の4個のパルスとしてパルスエネルギーが400μJで100nsという比較的短いパルス幅を用いることで、孔入口近傍のデブリの量が削減される。しかしながら、続く11パルスの間の穿孔プロセスの中間段階において、穿孔速度を上げるために、パルスエネルギーを600μJに上げることができ、パルス幅を500nsに増やすことができる。最後に、円形の孔出口を形成するために、その連続パルス列の最後の12パルスを特別なパルス形状を持ったパルスとして、そのパルスエネルギーを200μJに下げる。特別なパルス形状は、約20nsFWHMの幅のスパイクと、その後に続く約80nsFWHMの平坦部とを含む。平坦部に対するピークパワースパイクの割合は約4:1である。実際には、いくつかの場合には、孔出口の有益な属性は、特別のパルス形状がなくても得ることができるが、その代わりにパルスエネルギー200μJ、パルス幅100nsの単純な方形パルス形状を使用することが必要である。より低いエネルギー及びより短いパルス幅の4個の短いパルスを有する連続パルスを開始すると、孔入口でのデブリの量が削減される。孔の中間部分を穿孔する際に高いパルスエネルギーを有するより長いパルスに変更すると、穿孔速度が高くなる。比較的長いパルスを使用すると、テーパ状ビアが形成される。その連続パルス列の最後の12パルスを短いパルスに変更すると、滑らかな円形の孔出口が形成される。この例では、最大レーザパワーを提供するように時間間隔T1、T2、及びT3が選択される。したがって、平均20ワットパワーのレーザに対してT1=20μ秒、T2=30μ秒、T3=10μ秒である。L1はT2と同じとなるように、すなわち30μ秒となるように選択される。L2はT3と同じとなるように、すなわち10μ秒となるように選択される。ウェハにそれぞれの孔を形成するためにこの連続パルスを用いることで、レーザの潜在的な穿孔速度能力は、毎秒約2100ビアとなり、孔入口近傍のデブリの量が削減され、円形の孔出口を形成し、所望のテーパ状ビアを提供することができる。
【0051】
パルス特性が変更され得る連続パルスにおけるサブの数は、2個又3個だけに限られるわけではない。4個、5個、10個、20個などのサブがあり得る。実際には、本発明の実施形態では、連続パルス列内のパルスごとに異なる値のパルス特性を選択して材料に孔を形成することができる。変更可能なパルス特性には、パルスエネルギー、パルス幅、時間的パルス形状、パルス間時間間隔、及びピークパワーが含まれるが、これらのパルス特性だけに限定されるものではない。
【0052】
本発明の実施形態における、材料に複数の孔を形成するのに好適な連続パルスS5が図13に示されており、連続パルスS5は2つのサブS4a及びS4bを含んでいる。後続の連続パルスも本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。第1のサブS4aは、パルスエネルギーE1、パルス幅W1、及びパルス間時間間隔T1を有する第1のパルスを含んでいる。また、第1のサブS4aは、パルスエネルギーE2、パルス幅W2、及びパルス間時間間隔T2を有する第2のパルスを含んでいる。さらに、第1のサブS4aは、パルスエネルギーE3、パルス間時間間隔T3、及びスパイクと平坦部からなる特別なパルス形状を有する第3のパルスを含んでいる。サブに追加のパルスを含めることができ、図示された3つのパルスは単に例示的な目的のために示されている。一実施形態では、第1のサブの3つ以上のパルスが、単一の孔を形成するために材料のある位置に方向付けられる。エネルギーE1、パルス幅W1、及びパルス間時間間隔T1を有する第1のパルスは、孔の最初の部分を穿孔するのに好都合であり、エネルギーE2、パルス幅W2、及びパルス間時間間隔T2を有する第2のパルスは、孔の中間部分を穿孔するのに好都合であり、エネルギーE3、パルス間時間間隔T3、及び特別なパルス形状を有する第3のパルスは、所望の孔出口属性を提供するために孔の最後の領域を穿孔するのに好適であろう。第1のサブ「S4a」と第2のサブ「S4b」との間の時間間隔T3は、T1又はT2のいずれかよりも小さい値、T1又はT2に等しい値、もしくはT1又はT2よりも大きい値を有することができる。ある実施形態では、値T3は、例えばT1又はT2のうち大きい方の約2倍など、T1又はT2のうち大きい方の5倍未満である。第2のサブS4bを用いて第2の孔を形成することができ、後続のサブを用いて後続の孔を形成することができる。当業者であれば数多くの変形、改良、及び代替を認識するであろう。
【0053】
ここで述べられる本発明の実施形態は、シリコンに孔を形成することに限定されない。本発明に係る方法は、他の材料に孔を形成するために用いることができる。同様に、本発明に係る方法は、材料の2以上の層からなる試料に孔を形成するために用いることができる。実際に、その場合、実質的に休止することなく層ごとにパルス特性を変更する能力は、それぞれの材料を貫通する孔を高速に形成することとともに最適な孔属性を得るために必須であろう。単一のレーザが使用される場合、プロセスは、典型的には、それぞれの孔が連続して完全に形成されるが、それぞれの連続パルスが、第1の層の材料を効果的に貫通して穿孔するために選択されたパルスと、次いで第2の層の材料を効果的に貫通して穿孔するために選択されたさらなるパルスと、以降同様のパルスを含む、1パスプロセスである。本発明の実施形態によれば、第1の層を貫通して穿孔するパルスのパラメータをパルスごとに変更して第1の層の穿孔プロセスを最適化してもよい。同様に、第2の層を貫通して穿孔するパルスのパラメータをパルスごとに変更して第2の層の穿孔プロセスを最適化してもよい。
【0054】
例えばそれぞれの層に対して1つのレーザを使用するなど、2以上のレーザが使用される場合、プロセスは、1つのレーザが第1のパス内の試料全体に対して1つの層を貫通するそれぞれの孔を形成し、次いで他のレーザが第2のパス内の第2の層を貫通するそれぞれの孔を形成し、以降、後続の層のそれぞれに対しても同様である、マルチパスプロセスであり得る。本発明の実施形態によれば、第1の層を貫通して穿孔するための第1のレーザからのパルスのパラメータをパルスごとに変更して第1の層の穿孔プロセスを最適化してもよい。同様に、第2の層を貫通して穿孔するための第2のレーザからのパルスのパラメータをパルスごとに変更して第2の層の穿孔プロセスを最適化してもよく、以降も同様である。
【0055】
図5を参照すると、本願に開示される種類の連続パルスを生成可能なレーザシステムが示されている。このレーザシステムは、電子ドライバ53によって動力を供給される発振器51を含み、増幅器52を含む。ダイオードレーザなどのパルスレーザ源は、パルス電子駆動信号を提供することにより簡単にパルス化できる。パルスエネルギー、パルス幅、パルス形状、ピークパワー、及びパルス間時間間隔をはじめとするパルスの属性は、電子ドライバ53によって発振器51に送られる電子駆動信号55の属性を制御又はプログラミングすることによって予め決めることができる。そして、そのようなパルスレーザ発振器からの信号は、ダイオード励起固体ロッドレーザ又はファイバレーザ増幅器などのレーザ増幅器で増幅され、出力連続パルス57内でそれぞれパルスの所望の属性を提供する。
【0056】
発振器レーザは、半導体レーザ、ファイバレーザ、ダイオードレーザ、又は分散型フィードバックダイオードレーザから構成されていてもよい。特定の実施形態では、パルス信号源は、1064nmの波長で動作し、1ワットのピークパルスパワー、200kHz(キロヘルツ)まで可変の繰返し率、サブナノ秒のパルス立ち上がり時間及び立ち下がり時間を有するパルス幅5ナノ秒の半導体ダイオードレーザである。他の実施形態では、パルス信号源のピーク光パワーは、1ワットよりも低くても高くてもよい。例えば、それは500mW、1ワット、2ワット、3ワット、4ワット、5ワット以上であってもよい。また、パルス幅は100ナノ秒よりも小さくても大きくてもよい。例えば、それは1ns(ナノ秒)、2ns、5ns、10ns、15ns、20ns、他の値であり得る。発振器レーザは、電子ドライバによって提供される電流パルスの形状が、発振器レーザ出力パルスの形状に影響を及ぼすように電子ドライバによって駆動される。
【0057】
発振器51からの出力は、例えばファイバレーザ増幅器又はダイオード励起固体ロッドレーザ増幅器からなるレーザ増幅器モジュール52で増幅される。本発明の一実施形態では、増幅器は光増幅器であり、光カプラを通して希土類添加ファイバループに結合されるポンプを含んでいる。一般に、半導体ポンプレーザがポンプとして使用されるが、光増幅器の励起は当業者にとって明らかな他の手段によっても実現できる。特定の実施形態では、光増幅器は、約4.8μmのコア直径を有する5mの長さの希土類添加ファイバを含み、この希土類添加ファイバは、約6×1024イオン/m3のドーピング密度までイッテルビウムでドープされる。また、増幅器は、976nmの波長で動作し、出力パワーが500mWのFBG安定化半導体レーザダイオードであるポンプも含んでいる。他の特定の実施形態では、光増幅器160は、約10μmのコア直径を有する2mの長さの希土類添加ファイバを含み、この希土類添加ファイバは、約1×1026イオン/m3のドーピング密度までイッテルビウムでドープされる。また、増幅器は、出力パワー5Wの半導体レーザダイオードであるポンプを含み得る。
【0058】
イッテルビウム添加ファイバ増幅器及び1064nmのレーザ波長について例が示されたが、本発明の他の実施形態では、ダイオードレーザ、固体レーザ、1064nm又は他の波長で動作する添加ファイバの他の例を使用することができる。例えば、これらには、1550nmの波長領域にあるエルビウム添加ファイバや2μmから3μmの波長領域にあるツリウム添加ファイバが含まれる。
【0059】
図6を参照すると、本発明の実施形態では、連続レーザパルスを生成して材料に孔を形成するパルスレーザ源が提供される。2008年9月27日に発行された「Method and System for Pulsed Laser Source with Shaped Optical Waveforms」と題する米国特許第7,428,253号は可変波長パルスレーザ源の例を説明しており、この米国特許は参照により全体として本明細書に組み込まれる。さらに、2008年9月12日に出願された「Method and system for a Pulsed Laser Source Emitting Shaped Optical Waveforms」と題する米国特許出願第12/210,028号も可変波長パルスレーザ源の例を説明しており、この米国特許出願は参照により全体として本明細書に組み込まれる。さらに、2009年6月11日に出願され、「Stable Tunable High Power Pulsed Laser Source」と題する米国仮特許出願第61/186,317号も、本発明の実施形態に係る使用に好適なレーザ源の例を説明しており、この米国仮特許出願は参照により全体として本明細書に組み込まれる。パルスレーザ源は、シード信号を生成するように適合されたシード源110と、シード源に結合された第1のポート114と第2のポート122と第3のポート116とを有する光サーキュレータ120とを含んでいる。また、パルスレーザ源は、光サーキュレータの第2のポート122に結合された第1の側132と第2の側134により特徴付けられる振幅変調器130を含んでいる。パルスレーザ源は、入力端136及び反射端146により特徴付けられる第1の光増幅器150をさらに含んでいる。入力端は、振幅変調器の第2の側134に結合される。さらに、パルスレーザ源は、光サーキュレータの第3のポート116に結合される第2の光増幅器160を含んでいる。図6は、光サーキュレータの第3のポートに結合される1つの光増幅器160を使用する場合を示しているが、これは本発明の実施形態によっては要求されない。別の実施形態では、特定の用途に応じて光サーキュレータの下流に複数の光増幅器が用いられる。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、図7は、本発明の実施形態における、1以上の連続パルスを生成するレーザを使用して、ワークピース304に1以上の孔を形成することができる例示的なレーザ加工システムを示している。このシステムは、レーザ源300と、光学系302と、コントローラ305と、ワークピースホルダ303の上部に配置されるワークピース304とを含んでいる。レーザ源300は、波長、パルスエネルギー、パルス間時間間隔、パルス幅、時間的パルス形状、及び他の特性などの所定の特性を有するレーザパルスを提供する。連続パルス列内のパルスのこれらの特性及び他の特性を本発明の実施形態により調整してワークピースに1以上の孔を形成してもよい。一実施形態においては、レーザは、高調波生成などの手法を用いて異なる波長を生成する手段を含んでいてもよい。
【0061】
光学系は、レーザビームの焦点をワークピース上のレーザスポットに合わせるためのレンズ及び鏡と、ワークピース上の様々な位置にレーザスポットを方向付けて複数の孔を形成するための構成部品を含んでいてもよい。特定の実施形態においては、ビームを方向付けるための構成部品が、検流計に取り付けられた鏡であってもよい。コントローラは、光学系とビームを方向付けるための構成部品の運動とを制御するために使用されてもよい。例えば、ワークピース304に孔を形成するとき、光学系302をコントローラによって制御してレーザスポットをワークピースの表面に沿って位置ごとに方向付けし直してもよい。他の実施形態においては、光学系が、ワークピースの表面上又は表面近傍のレーザスポットにレーザビームの焦点を合わせてもよく、ワークピースホルダをコントローラによって制御して後続の孔を形成するためにワークピースを移動してもよい。さらに他の実施形態においては、レーザビームの焦点を合わせるレンズ及び鏡は、例えばフラットトップの空間プロファイルなど所望の空間パラメータでスポットを生成してもよい。
【0062】
N個の孔を形成するために、レーザシステムは、N個の所定の連続レーザパルス列1,S2,...SN提供し、それぞれの連続パルス列間の時間間隔を十分に長くして、孔が形成されている試料のある領域から次の孔が形成されることになる試料の別の領域にレーザスポットを位置決めし直すことを可能にしている。特定の実施形態では、形成される孔のそれぞれを他のそれぞれの孔とほぼ同一にすべく、各連続パルス列は他のそれぞれの連続パルス列と同一とされる。シリコンウェハなどの均一な材料に同一の孔を形成するように設計された特定の実施形態においては、形成される孔のそれぞれを他のそれぞれの孔とほぼ同一にし、形成される孔のそれぞれに所定の好ましい特性を持たせるべく、各連続パルス列中の所定のパルスが、当該連続パルス列の他のレーザパルスと著しくかつ意図的に異なるレーザパラメータを有するように、レーザシステムが連続レーザパルスを生成するように提供される。レーザシステムは、形成されるそれぞれの孔にレーザビームを方向付け、穿孔プロセスを制御するための手段を含む加工システムに含まれる。シリコンウェハなどの均一な材料にN個の異なる孔を形成するように設計された特定の実施形態では、形成されるN個の孔のうち所定のものが、ウェハ内の他のホールのものとは異なる所定の好ましい特性を有するべく、1以上の連続パルス列内の所定のパルスが、同一の連続パルス列内の他のレーザパルスと著しくかつ意図的に異なるレーザパラメータを有し、かつ、所定の連続パルス列は他の連続パルス列内に含まれているものと異なるレーザパラメータを有するパルスを含むように、レーザシステムがN個の所定の連続レーザパルス1,S2,...SNを生成するように提供される。レーザシステムは、形成されるそれぞれの孔にレーザビームを照射し、穿孔プロセスを制御するための手段を含んだ加工システムに含まれる。他の実施形態では、1つの連続パルス列内のパルスに対して選択される特性が、別の連続パルス列に対して選択される特性と異なっていてもよい。
【0063】
本発明の他の実施形態によると、図8は、本発明の実施形態における、1以上の連続パルスを生成する第1のレーザ源300及び第2のレーザ源301を使用して、ワークピース304に1以上の孔を形成することができる例示的なレーザ加工システムを示している。このシステムは、第1のレーザ源300と、光学系302と、コントローラ305と、ワークピースホルダ303の上部に配置されるワークピース304とを含んでいる。第1のレーザ源300は、波長、パルスエネルギー、パルス間時間間隔、パルス幅、時間的パルス形状、及び他の特性などの所定の特性を有するレーザパルスを提供する。連続パルス列内のパルスのこれらの特性及び他の特性を本発明の実施形態により調整してもよい。システムは、第2のレーザ源301をさらに含んでいる。第2のレーザ源301は、波長、パルスエネルギー、パルス間時間間隔、パルス幅、時間的パルス形状、及び他の特性などの所定の特性を有するレーザパルスを提供する。連続パルス列内のパルスのこれらの特性及び他の特性を本発明の実施形態により調整してもよい。第1のレーザ源300及び第2のレーザ源301と関連付けられるパルス特性は異なり得る。例えば、第1のレーザ源が第1の波長で動作し、第2のレーザ源が第1の波長とは異なる第2の波長で動作してもよい。パルス特性における他の相違点には、レーザパワー、パルスエネルギー、パルス間時間間隔、パルス幅、時間的パルス形状などが含まれる。
【0064】
光学系は、レーザビームの焦点をワークピース上のレーザスポットに合わせるためのレンズ及び鏡と、複数の孔が形成されるワークピース上の様々な位置にレーザスポットを方向付けるための構成部品を含んでいてもよい。特定の実施形態においては、ビームを方向付けるための構成部品が、検流計に取り付けられた鏡であってもよい。コントローラは、光学系とビームを方向付けるための構成部品の運動とを制御するために使用されてもよい。例えば、ワークピース304に孔を形成するとき、光学系302をコントローラによって制御してビームをワークピースの表面に沿って位置ごとに移動してもよい。他の実施形態においては、光学系が、ワークピースの表面上又は表面近傍のレーザスポットにレーザビームの焦点を合わせてもよく、ワークピースホルダをコントローラによって制御して後続の孔を形成するためにワークピースを移動してもよい。
【0065】
加工システムは、単一パスを使用して、又は数多くのパスを使用してワークピースに一連の孔を形成してよい。ダブルパスプロセスを使用する2つのレーザを用いて2層の試料にN個の孔を形成するための本発明の実施形態では、第1のレーザシステムは、N個の所定の連続レーザパルス列1,S2,...SN提供し、それぞれの連続パルス列間の時間間隔を十分に長くして、それぞれの孔を再度穿孔するために、ある孔から次の孔にレーザビームを方向付けし直すことを可能にしてもよい。そして、第2のレーザは、それぞれの孔の穿孔を完了するためにN個の所定の連続レーザパルス列1,R2,......RN提供してもよい。したがって、これは、例えば誘電体の一層と銅の一層とからなるプリント基板など、異なる材料の2つの層からなる試料に貫通孔を形成するために使用され得る2パス穿孔プロセスである。
【0066】
図9は、本発明の実施形態における連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。連続パルスは、第1のパルスエネルギー、第1のパルス幅、第1のパルス形状、第1の波長、及び第1のパルス間時間間隔により特徴付けられる第1組のパルスからなる第1のサブを含んでいる。第1のサブの後には、第2のパルスエネルギー、第2のパルス幅、第2のパルス形状、第2の波長、及び第2のパルス間時間間隔により特徴付けられる第2組のパルスからなる第2のサブが続いている。本発明の実施形態によれば、第2のパルスエネルギーが第1のパルスエネルギーと異なる、第2のパルス幅が第1のパルス幅と異なる、第2のパルス形状が第1のパルス形状と異なる、又は第2の波長は第1の波長と異なるのうち少なくとも1つに該当し、その結果、連続パルス列内の各パルスが同一の特性を有する場合に形成される孔と比較して改善された孔が形成される。
【0067】
図10は、本発明の実施形態における連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。この連続パルスにおいては、直前又は直後のパルスから0.01秒よりも大きく時間的に離されたパルスは存在しない。本発明の実施形態によれば、連続パルス列内の少なくとも1個のパルスのパルスエネルギーは、連続パルス列内の他のパルスのパルスエネルギーよりも低く、その結果、連続パルス列内の各パルスがその連続パルス列内の他のパルスと同一のパルスエネルギーを有する場合に形成される孔と比較して改善された孔が形成される。
【0068】
図11は、本発明の実施形態における連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。この連続パルスにおいては、直前又は直後のパルスから0.01秒よりも大きく時間的に離されたパルスは存在しない。本発明の実施形態によれば、連続パルス列内の少なくとも1個のパルスのパルス幅は、その連続パルス列内の別のパルスのパルス幅よりも小さく、その結果、連続パルス列内の各パルスがその連続パルス列内の他のパルスと同一のパルス幅を有する場合に形成される孔と比較して改善された孔が形成される。
【0069】
図12は、本発明の実施形態における連続パルスを用いて材料に孔を形成するための方法を示すフローチャートである。この連続パルスにおいては、直前又は直後のパルスから0.01秒よりも大きく時間的に離されたパルスは存在しない。本発明の実施形態によれば、連続パルス列内の少なくとも1個のパルスの時間的パルス形状は、その連続パルス列内の別のパルスの時間的パルス形状とは実質的に異なり、その結果、連続パルス列内の各パルスがその連続パルス列内の他のパルスと同一の時間的パルス形状を有する場合に形成される孔と比較して改善された孔が形成される。
【0070】
本発明の特定の実施形態及びその具体例について説明したが、他の実施形態が本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得ることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、すべての範囲の均等物とともに添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13