(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電トレースは、少なくとも1つの前記マニュピュレーターの位置を誘導的に感知するよう構成された前記センサーに電気的に接続された少なくとも1つの導電トレースを備える請求項8に記載のシステム。
前記システムは、第2の回路基板をさらに含み、前記信号は、前記第1の回路基板から前記第2の回路基板に、少なくとも1つの前記マニュピュレーターを移動させるよう構成されている請求項1に記載のシステム。
前記システムは、前記回路基板の前記表面上に位置する研磨された表面をさらに含み、前記マニュピュレーターは、前記研磨された表面上を移動するよう配置されている請求項1に記載のシステム。
前記マニュピュレーターは、前記マニュピュレーターの磁気モーメントをゼロとし、他のマニュピュレーターと反発するように構成された、外側の極が打ち消されている中央の磁石を含む請求項1に記載のシステム。
前記導電トレースに前記駆動信号を供給する工程は、離散ステップで、前記駆動信号を供給する工程を含み、前記離散ステップは、正の電流または負の電流のいずれか一方を前記導電トレースのそれぞれに対し、独立に供給した結果生じる請求項17に記載の方法。
前記駆動信号を供給する工程は、前記離散ステップの間の中間位置を実現するため、前記導電トレースの1つにおける電流がゼロに設定されるマイクロステッピングを含む請求項18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、磁気浮上マニュピュレーターシステムの側面図である。
【0005】
図2は、磁石アレイを有するマニュピュレーターの実施例を示す図である。
【0006】
図3は、磁気浮上マニュピュレーターシステム回路基板の側面図である。
【0007】
図4〜6は、磁場を発生させるために用いられるトレースパターンの実施例を示す図である。
【0008】
図7および8は、磁場を発生させるために用いられるトレースパターンの別の実施例を示す図である。
【0009】
図9〜12は、磁場を発生させるために用いられるトレースパターンの別の実施例を示す図である。
【0010】
図13および14は、磁場を発生させるために用いられる回転トレースパターンの実施例を示す図である。
【0011】
図15A〜Dは、制御パターンを有する回路基板を示す図である。
【0012】
図16は、浮上マイクロファクトリーの実施例を示す図である。
【0013】
図17は、ジグザクパターン内のゾーンを横断するマニュピュレーターを示す図である。
【0014】
図18および19は、格子パターン内のゾーン内の境界および電流の流れの実施例を示す図である。
【0015】
図20は、浮上マニュピュレーターシステムにおけるトレース用の駆動回路を示す図である。
【0016】
図21〜28は、マイクロファクトリーシステムの構成の実施例を示す図である。
【0017】
図29および30は、エンドエフェクターの実施例を示す図である。
【0018】
図31は、重力補助傾斜に適したエンドエフェクターの実施例を示す図である。
【0019】
図32は、多重基板磁気浮上マニュピュレーターシステムの実施例を示す図である。
【0020】
図33は、フレキシブル回路基板を有する磁気浮上マニュピュレーターシステムの実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、磁気浮上マニュピュレーターシステム10の側面図である。このシステムは、電流通過用の回路トレース16、22を内部に有する回路基板12を備えている。本実施例では、回路トレース22は電流通過に用いられ、励磁(energized)される。電流は、トレース22内をページ奥側に向かって流れている。その結果として生じる磁場は、磁石18(以下、マニュピュレーターとも称される)に作用する。マニュピュレーター18は、マニュピュレーターの磁気双極子モーメント(magnetic dipole moment)または磁化(magnetization)と、励磁されたトレース22によって発生した場とが平行に(直線状に)並ぶように、位置20に移動する。
図2では、磁石18は、水平方向かつ右方向への磁化を有する。この磁化は、垂直上方向または垂直下方向等の異なる方向に配向していてもよい。この場合、マニュピュレーターは、励磁されたトレース22に応答するが、励磁されたトレース22に対して、異なる平衡場所(equilibrium location)に移動する(水平方向の場というよりむしろ、トレース22からの垂直方向の場に対して平行に並ぶように移動する)。回路基板12は、磁石を所望の位置に機械的に停止させる15のような機械的な止め具(stopper)を備えていてもよい。これにより、単純に磁石を制御することができる。また、回路基板12は、光学センシング等の誘導性フィードバック(inductive feedback)を用いてマニュピュレーターの位置を感知する17のようなセンサーをさらに備えていてもよい。例えば、光学センシングは、センサー19として図示されているように、センサーに光を導く孔(hole)を有する基板の層内の光学センサーによって遂行されることができる。磁石またはマニュピュレーター構造の一部が孔の上方を通過する際、光が遮られるので、光学センサーは、その通過を感知することができる。
【0022】
反磁性層14は、マニュピュレーター18を浮上させる揚力(lift force)を提供する領域を規定している。該領域上では、マニュピュレーターが浮上可能となっている。回路基板12内の個々のトレース内の電流を制御することにより、マニュピュレーターを移動させ、タスクを実行させることができる。したがって、マニュピュレーター、回路基板および電流の供給を制御するコントローラーを組み合わせることによって、有用なタスクを実行するようマニュピュレーターの移動をコーディネート(調整)することができる。これにより、物体(固体および液体の双方を含む)の輸送、接着剤の付与やその他の工程を通じた物体の組み立て、物体の仕分け、材料特性の品質管理評価等の幅広い様々な物理的タスクを実行することができる。これらおよび類似の独立したタスクは、以下、ユニット操作(unit operation)と称される。
【0023】
さらに、システムレベルにおける、より高度なコーディネートと制御によって、複雑な部品の製造やその他複数の有用な工業的工程を実行することができる。このコーディネートは、フルスケールファクトリーの自動化と同様であり、ここで議論する実施例のマイクロスケールファクトリーにも適用可能である。このコーディネートされたマニュピュレーターのフルシステムは、浮上マニュピュレーターのマイクロファクトリーまたは浮上マイクロファクトリーとして適用可能である。浮上マイクロファクトリーの例は、
図16を参照して、後に詳述する。
【0024】
マニュピュレーターは、一般的に、1つまたは接触して配置された複数の磁石によって構成される。実施例の1つでは、マニュピュレーターは、1つの中央の磁石と、4つの外側の磁石とから構成されている。これら磁石の極(pole)および配置は、多くの効果を奏することができる。マニュピュレーターは、同一の動作平面内の他のマニュピュレーターを反発するよう構成されていてもよい。例えば、外側の極が打ち消されている中央の磁石は、マニュピュレーターの磁気モーメントをゼロとし、同様に構成された他のマニュピュレーターに対して反発するよう構成されている。または、もしくはそれに加えて、マニュピュレーターは、地球の磁場等の大きなスケールの外部磁場による相互作用を低減するため、ゼロネット(zero net;正味ゼロ、すなわち、正と負の電荷の和がゼロ)磁気双極子モーメントを有していてもよい。浮上の際、マニュピュレーターは、6つの自由度、すなわち、x、y、z軸に沿った3並進方向、およびピッチ(pitch)回転、ヨー(yaw)回転およびロール(roll)回転の3回転の自由度を有して、動くことができる。
【0025】
図2に示す実施例では、マニュピュレーターは、磁石アレイで構成されている。
図2の実施例では、N極を有する中央の磁石が1×1mmであり、S極を有する打ち消し磁石が1×0.25mmである。本実施例では、1×1mmの磁石および1×0.25mmの磁石は、0.4mmの厚さを有している。これらの磁石は、エポキシ等を用いて互いに接着されたグレード50ネオジム鉄磁石(grade 50 neodymium-iron magnets)であってもよい。この具体的な構成は、単に、例として挙げているにすぎない。別の構成では、例えば、中央の磁石は同様に1×1mmであり、4つの打ち消し磁石は0.75×0.33mmである。実施例の1つでは、1×1mmの磁石および0.75×0.33mmの4つの磁石は、0.4mmの厚さを有する。また、ノーネット磁気モーメントのチェッカーボード(格子縞)配列等の多くの種類のアレイが構成可能であり、また使用可能である。9つの磁石のチェッカーボードアレイは、ネット磁気モーメントを有し、同様に配向された9つの磁石アレイを反発する。また、磁気シールドは、マニュピュレーター間(manipulator-manipulator)の磁気相互作用を最小化し、マニュピュレーターの最密パッキング(close packing)を可能とする。
【0026】
また、磁石アレイは、ロッドやワイヤー等の剛体かつ軽量の部材に、接着剤によって、接合されていてもよい。接合されたマニュピュレーターの磁気的な挙動は、接合の性質(剛性や柔軟性)およびアレイ同士の位置関係に依存する。実施例の1つにおいては、例えば、
図2に示す磁気構成の第1のアレイは、シアノアクリレート接着剤を有する0.3mmグラファイトロッドによって、第2のアレイに、2つのアレイの底部が平行になるよう剛接合(rigidly connected)されている。本実施例におけるアレイの双方は、同じように配向しており、さらに、剛接合のオフセット距離は、アレイの双方が、以下に詳述するような繰り返しトレースパターンから、同一の磁力を受けるよう選択されている。
【0027】
マニュピュレーターは、回路基板上のトレースに流れる電流によって発生した磁場に応答することにより移動する。なお、回路基板は、プリント配線基板、セラミック基板、半導体ウエハー等の数多くの代替手段のいずれか1つで構成することができる。回路基板は、特に限定されるものではなく、回路基板の如何なる具体的な構成および材料に限定されるものではない。
図3は、そのような基板の実施例を示す図である。本実施例では、回路基板12は、典型的には銅である4つの導電トレースの層32、30、28、26を有している。各層32、30、28、26の間は、36のような絶縁層によって分離されている。絶縁層36は、典型的には、最小限度の厚さを有している。同様に、層32から26までの層全体は、最小限度の厚さを有している。一般的に、下側の層ほど低いゲインを有している。ここでいうゲインとは、導電層24の上面での電流単位当たりの磁場勾配(magnetic field gradient)によって定義される。永久磁石ひいてはマニュピュレーターは、磁場勾配によって移動する。下側のトレースにおける低いゲインは、トレース内に流れる電流を必要なだけ増加させることによって、補われてもよい。
【0028】
実施例の1つでは、例えば、絶縁層36は、0.002”(インチ)の厚さを有し、導電層32、30、28、26は、厚さ0.0028”(インチ)の銅を用いている(プリント配線基板の産業では、2オンス銅と呼ばれることが多い)。本実施例では、トレース幅は、典型的には0.010”(インチ)幅であり、層26、28、30、32用の電流は、それぞれ、0.25A、0.33A、0.48A、0.70Aである。以下に詳述するように、同じ大きさの負の電流は、ロボットを動かすための直交駆動(quadrature drive)に用いることができる。当然、その他の値の電流も用いることができ、より低い電流は発熱を減らすことができる一方、より高い電流は、より大きな力を発生するために用いることができ、ロボットを表面に沿ってスライドさせるというよりも、上方に浮上させ易くすることができる。
【0029】
回路の底部の層32と接続層34との間には、比較的大きな絶縁層38が配置されている。ある実験では、内部の絶縁層38は、1mm以上の厚さを有している。接続層34は、基板の上側の各トレースと各絶縁層との間と同様に、ビアによって内部の絶縁層38を介して、導電トレース層に接続されている。実施例の1つでは、このビア接続は、基板の端部を経ている。
【0030】
反磁性層14は、回路基板12の第1の面上に位置している。上述のように、反磁性層は、マニュピュレーターを浮上させる揚力を提供するものである。場を用いたより正確な制御を実現するための渦電流ダンピング(eddy current damping)を提供する導電層24が、反磁性層の上側に位置していてもよい。電流ダンピング層は、トレースパターンを有する内部の導電層と異なり、典型的には、反磁性層の全面を覆う導電層である。反磁性層14と導電層24の厚さは、マニュピュレーターおよび磁石の大きさに依存し、一般的に、より大きなマニュピュレーターおよび磁石は、より厚い層を必要とする。
【0031】
図2に示す1×1×0.4mmの中央の磁石と、0.75×0.33×0.4mmの外側の磁石とを有する磁石アレイを用いた実施例の1つでは、反磁性層14は、0.5mm厚の研磨された熱分解グラファイト(pyrolytic graphite)のシートを用いて形成されている。導電層は、約0.012mm厚の研磨された銅で形成されている。いくつかの実施例においては、マニュピュレーターは、反磁性層および導電層上で完全に浮上しているわけではなく、その表面上をスライドする。スライドモーションを用いるその他の実施例では、反磁性層は、省略可能である。しかしながら、マニュピュレーターが浮上しない場合であっても、反磁性層14は、マニュピュレーターを表面から遠ざける反磁性力を提供する。これにより、スライドモーションを用いる場合であっても、垂直抗力を減らすことができ、実質的な摩擦力を低減することができる。実施例の1つにおいては、摩擦力をさらに低減するため、非常に薄い反磁性グラファイトの第2の層(0.025mm厚)が導電層24の上面に設けられている(図示せず)。
【0032】
図1〜3は、比較的平坦な回路基板12を図示しているが、回路基板12は、従来技術において既知の回路製造手段を用いて、凹凸またはその他複雑な形状に湾曲していてもよい。例えば、回路基板12は、従来技術において既知のフレックス回路製造プロセスを用いて製造されてもよいし、インジェクトプリント回路のようなプロセスを用いて、湾曲物体上に直接製造されてもよい。いくつかの実施例においては、絶縁層38は、回路の機械的な柔軟性を向上させるため、非常に薄いかまたは全体が省略されていてもよい。また、いくつかの実施例においては、従来技術において既知のビアおよび導体パッドを用いて、磁気的に活性な領域側と接続しないようにすることにより、接続層34も同様に省略することができる。
【0033】
マニュピュレーターが移動可能な制御ゾーンを利用するマニュピュレーターを制御するために、回路基板の各層は、ビアにより互いに接続された、または互いに直接接続された繰り返しのトレースパターンを有している。
図4〜6は、ビア配列の実施例を示す図である。実施例の1つでは、
図3の層26、すなわち第1の導電層は、2つの平行配線パターン40、41を有しており、平行配線パターン41は、平行配線パターン40に対し、
図4に示すように、各パターンのトレース間距離(trace-to-trace distance)の半分の距離、オフセットしている。例えば、第1の平行配線パターンは、パターン中のトレース間距離が1mmであり、第2の平行配線パターンは、第1のパターンから0.5mmオフセットしている。このパターンは、各配線の末端において、次の配線またはパターン中の配線と接続されているので、パターン中のトレースの長さの大部分は、平行配線を構成している。
【0034】
43のようなビアは、層26内で2つのパターンが接触するであろう領域において、
図3の第2の層28内へ交差(cross over)を行うために用いられる。これらのビアは、トレース41をパターン内に保持しつつ、トレース40に接触しないようにする一種の“地下道(underpass)”を形成する。
図4に示すトレースは、典型的に、マニュピュレーターを図示のx方向または水平方向に移動させるために用いられることから、xトレースと呼ばれる。
【0035】
図5は、図示のy方向または垂直方向への移動に用いられる同様のパターンおよびトレースを示す図である。
図3の第2の導電層28は、互いにトレース間距離の半分、オフセットしている2つの平行配線パターン44、46を有している。48のようなビアは、平行配線パターン44用の層1を用いた交差接続(crossover connections)を提供するために、第1の導電層26へ繋がっている。
図6は、第1の層および第2の層のビアパターンの組み合わせを示す図である。用語“ピクセル(pixel)”は、主として、“画素(picture element)”または画像の最小部を意味し、これら組み合わせパターンは、以下ピクセル(pixels)と称される。これらピクセルは、一般的には、ピクセルパターン(pixilated pattern)で配列されており、ディスプレイ素子のピクセルと非常によく似た状態となっている。このピクセルそれぞれは、1つのマニュピュレーターを駆動させることができる。また、もしピクセルが十分に大きければ、複数のマニュピュレーターを同時に駆動させることができる。そのような場合、ピクセル上の全てのマニュピュレーターは、一致して同時に動く。
【0036】
図7および8は、磁場を発生させるために用いられるトレースパターンの別の実施例を示す図である。
図7は、
図4〜6に示したピクセルと同様のオフセットパターンを用いるXピクセル50を示す図である。しかしながら、この実施例において、Xピクセル用の2つのオフセットパターンは、互いに分離している層内に配置されている。これにより、交差用のビアを省略できるものの、より多くの層が必要となる。Yピクセルも同様に、オフセットパターン用の2つの層を必要とするので、結果として4つの導電層を使用する必要がある。
【0037】
ピクセルの境界におけるいくつかの場を打ち消す必要があることから、XおよびYパターンの“フリップ(反転)”バージョンが必要となる。例えば、
図7は、
図4と同様のXピクセル50と、垂直方向のフリップバージョンXf52との組み合わせを示す図である。これらピクセル50と52との境界において、各ピクセルの平行配線パターンは、次の垂直トレースを形成するために短いセグメントを水平方向にターンさせるので、これら2つのピクセルのトレースは、互いに近接近(close proximity)している。これら短い水平方向のセグメントは、不要な磁場が発生した場合、垂直方向の動きを妨げてしまう。しかしながら、ピクセル50用の水平方向のセグメントを、反対方向の電流が流れているピクセル52の水平方向のセグメントに近接させて並べることによって、X方向パターン内の水平方向のセグメントからの不要な磁場を、2つのピクセル間において効率的に打ち消すことができる。図の拡大部分において、矢印は、異なるトレース内に流れる電流が互いに異なる方向に流れていることを示している。なお、図ではトレースの最上部(トップ)層のみを示している。図示のとおり、垂直方向のトレース内に流れる電流は直線状に並べられており、水平方向のトレース内に流れる電流は互いに反対方向に流れている。この結果、両ピクセル間での打消し(cancellation)を実現することができる。
【0038】
同様に、
図5に示したものと同様のYピクセル54には、そのフリップバージョンYf56が存在する。x方向およびy方向の双方にマニュピュレーターを移動可能なピクセル集合体(aggregate pixel)と考えられるユニットを形成するため、X+Y、X+Yf、Xf+Y、Xf+Yfの組み合わせのバリエーションが用いられる。ビアは、回路基板を通して、
図3の接続層34上への外部接続に用いることができる。このユニットは、マニュピュレーター制御の必要に応じて、回路基板の全面にタイル状に配置することができる。電流源との適切な接続によって、最下部(ボトム)の層34上の外部接続を介し、ピクセル内のトレースを駆動するために電流を供給することができる。また、外部接続は、共通の制御下に置かれたピクセル群を提供するため、ピクセルを直列または並列に接続するようにジャンパー接続(jumpered)されていてもよい。その際、それぞれのトレース内を流れる電流は、同一であってもよいし、もし必要であれば、接続に応じた逆極性(reversed polarity)であってもよい。
【0039】
図9〜12は、トレースパターンの別の実施例を示す図である。
図9は、駆動トレース用に第1の導電層内に設けられた対称なジグザク配線パターン70の一例を示す図である。ジグザクトレースによって構成されたジグザク配線パターンは、パターン内の各矩形部の高さおよび幅が全て等しくLであり、対称である。矩形部の角部は、パターン内の他の矩形部との隙間(clearance)を確保するため、曲げられている。第1の層は、72のようなコネクターを有している。オフセットされた同じジグザグ配線パターンが層2および層3に用いられている。
【0040】
例えば、
図10では、
図9に示したジグザク配線パターン70がトレース層26(
図3参照)上で繰り返されている。トレース層28(
図3参照)上に設けられた
図10のパターン74は、ジグザク配線パターン70に対して、矩形部の長さL(
図9参照)の半分の距離、水平方向にオフセットされている。これらの図に示されたジグザグパターンを用いることにより、マニュピュレーターを、トレースがオフセットされた方向のいずれの方向にも移動させることができる。実際に、トレースは、
図10に示すx方向およびy方向に対して45度に、ジグザグパターンで延伸(run)している。
図4〜8に示した平行配線パターンでは、マニュピュレーターは、以下に詳述するような連続的に動作するトレースに対して垂直に移動することとなる。一方、パターン70と協働して動作する
図10のパターン74は、図示のX軸方向にマニュピュレーターを移動させることができる。
図11は、パターン78のように、垂直方向にオフセットしているジグザグパターンを示す図である。パターン70と協働して動作するパターン78は、図示のY軸方向にマニュピュレーターを移動させることができる。
【0041】
図12は、結果として得られるパターンを示す図である。
図9のジグザクパターン70は、第2および第3の導電層内において繰り返され、各繰り返しは、ジグザクトレースによって形成される略矩形部の一辺の長さの半分の距離、オフセットされている。第2の導電層用のパターン74は、例えば、矩形部の長さの半分の距離、水平方向にオフセットされている。第3の導電層用のパターン78は、矩形部の長さの半分の距離、垂直方向にオフセットされている。第2および第3の導電層は、それぞれ独自の接続部76、80を有しており、各接続部と電流源とを接続することにより、パターン内のトレースを励磁させることができる。
【0042】
図9の基本パターンは、さらに適用を拡げることができる。
図9の基本パターンを45度回転させることにより、浮上するマニュピュレーターを回転させる機能を実現することができる。
図13は、回転パターン82の一例を示す図である。このパターンは層4内に設けることができる。
図14は、複数の層を組み合わせた図であり、第1の層のパターン70と、第2の層のパターン74と、第3の層のパターン78と、第4の層の回転パターン82とを組み合わせて得られる配線パターンを示す図である。
【0043】
実施例の1つでは、回転パターン82は、対称ジグザク配線パターン70内の矩形部のサイズに対して、回転パターン82内の矩形部が2
0.5=1.414倍となるよう形成され、対称ジグザグパターン70と共に配置されている。本実施例の回転パターン82は、回転パターン82の矩形部の角部と、対称ジグザク配線パターン70内の矩形部の角部の対角の1つおきとが直線状になるよう配列されている。直線状に配列された回転アレイ82の角部および対称ジグザク配線パターン70の角部は、適切に設計された本実施例の磁石アレイマニュピュレーターを回転させるために用いることができる。具体的には、極性を打ち消す4つの等しいサイズの矩形磁石のアレイを用いたマニュピュレーターは、上方から見たときに、チェッカーボード状となるN極およびS極を有しており、回転させることができる。実施例の1つでは、4つのマグネットのそれぞれは、1mm×1mm×0.4mmの寸法を有し、L=1mmサイズの矩形を有するパターンと共に用いられる(
図9参照)。本実施例における回転は、層1および層4上の回転パターンを用いて、以下に詳述する電流の4つのパターンを駆動することにより達成される。別の実施例においては、回転パターンは、上述のXYビアパターンの下側に設けられており、回転を実行する。典型的には、上述のパターンと組み合わせた回転パターンは、適切に設計されたマニュピュレーターを特定の位置において回転させることができる。
【0044】
また、別の選択肢として、多様な異なったトレースパターンを使用することができる。例えば、以下にさらに詳述するような円形および湾曲したトレースが使用可能である。
図15A〜15Dは、プリント回線基板のような、結果として得られる回路基板であって、矩形状のx−yパターンと円形パターンを有する回路基板を示す図である。
【0045】
図15Aのx−yパターン90では、
図15Aに示す第1の層は、接続部92と、既知のトレース間距離とを有する平行配線パターン91とを含んでいる。
図15Bに示す第2の層は、接続部94と、層1から第1の層のトレース間距離の半分の距離、垂直方向にオフセットしている平行配線パターン93を含んでいる。これら2つのパターンを互いに重ね合わせた場合、パターン93は、パターン91の下側であって、ちょうどパターン91の隙間に位置する。
【0046】
図15Cに示す第3の層は、接続部96と、第1の層のパターン91に対して90度回転している平行配線パターン95とを含む。第4の層は、接続部98と、第1の層に対して90度回転し、第3の層パターンからトレース間距離の半分の距離、水平方向にオフセットしている平行配線パターン97とを有する。第3および第4の層のパターンを互いに重ね合わせた場合、第1および第2の層の場合と同じようであるが、90度回転した状態で、パターン97がパターン95の隙間に位置する。
【0047】
また、トレースパターンは湾曲していてもよい。
図15A〜15Dの回路基板は、円形パターン100を有している。第1の層のパターン101は、接続部102を有し、平行配線パターンのトレース間距離と同じトレース間距離を有して、円形パターンに延伸している。第2の層のパターン103は、第1の層のパターンの円の90度分と一致(overlap)している。この実施例では、層1と一致する1/4円形パターンが、第2の層の接続部104の近傍に、ページ上に左上4分円として配置されている。これら2つの図(drawings)を互い重ね合わせた場合、第2の層のパターン103を、第1の層のパターン101から区別して(separated from)、視認することはできない。
【0048】
図15Cの第3の層のパターン105は、第1および第2の層のパターンの円形パターンとは異なり、配線が第1の層に形成された円形パターンを内外に横切るようにして形成された、接続部106を有する放射状パターンである。この内外のトレース間距離は、1つの実施例の磁石のサイズとほぼ同じであるが、パターンの湾曲部の特徴として、内側部のトレース間距離は、外側部のトレース間距離と比較してわずかに狭い。
図15Dの接続部108を有する第4の層のパターン107は、第3の層のパターンと同じであるが、本実施例では、1.5度回転しており、第4の層の放射状の各配線は、第3の層の2つの放射状の配線の中間を通過する。別の実施例では、第4の層のパターンは、そのトレースが、対応する第3の層のトレースに対して、円に沿って、磁石のサイズの約1/2移動するよう回転されている。同様に、内外のトレース間距離は、ほぼ同じであり、実際には、内側部と外側部でトレース間距離がわずかに変化している。この円形パターンは、マニュピュレーターをレーストラック(競技場のトラック)のような円状に移動させることができる。層3を層4上に配置した場合、層4の配線は、層3のトレースの隙間から視認できる。
【0049】
上述の議論は、単に、多重層上に形成された湾曲パターンを用いることができるということを示しているにすぎない。トレースパターンは、格子パターン、平行配線パターン、矩形パターン、湾曲パターンもしくはこれらの組み合わせ等の如何なる所望のタイプのパターンであってもよい。
【0050】
回路基板内の構造を参照して、このような構造がマニュピュレーターを移動させるためにどのように用いられるのかについて議論する。マイクロファクトリーに対する如何なる特定の構成を限定するものではないが、議論用の情報(context)を提供するために、
図16は、液相堆積(liquid deposition)およびクリーニングステーション112、入力ステーション114、複数の出力ステーション116、再循環バッファーゾーン118、ステージゾーン120の8つのゾーンを含むワーク面を示している。このワーク面は、協調して動く複数のマニュピュレーターを有していてもよく、別々(alternate)のゾーン内にはマニュピュレーターセットを有していてもよい。マニュピュレーターの駆動は、コーディネートされる必要がある。また、従来技術において既知の様々なエンドエフェクター(ツール)を、マニュピュレーターに取り付けることによって、使用方法を拡張することができる。いくつかの例では、エンドエフェクターは、シンプルな、シャープな先端またはシャープでない先端(tips)である。
【0051】
ジグザグおよび平行配線パターンでは、マニュピュレーターを推進させる磁力を発生させるために、直交駆動信号が用いられる。2つのトレースは、直交する時間依存の電流によって駆動される。進行波(traveling wave)は、マニュピュレーターを、平行配線パターンの直交駆動されているトレースに対して垂直な方向に、移動させることができる。例えば、上述した
図4のトレース40、41のような、y方向に対し空間的に変化する2つの交互配置(interleaved)された平行配線パターンは、マニュピュレーターをx方向に移動させることができる。以下、各トレースが正の電流で駆動されているという位相を意味する(+,+)、第1の層および第2の層を意味する(L1,L2)、L1が負で駆動され、L2が正で駆動されているという位相を意味する(−,+)等の表記法を用いる。平行配線トレースに対して垂直な方向に移動させるための直交駆動は、次の電流のタイムシーケンスによって得られる。すなわち、(+,−)、(−,+)、(−,−)および(+,−)である。このシーケンスを反転させることによって、移動の方向を反転させることができる。さらに、個々のステップ間の中間位置(状態)を実現するため、マイクロステッピング(microstepping)を用いてもよい。マイクロステッピングは、中間値を用いることによって実現してもよい。例えば、(+,+)と(−,+)の間の位置を実現するため、(0,+)で駆動してもよい。(0,+)という表記における“0”は、トレース1中の平均電流がゼロであり、2つの状態の間であることを意味する。また、マイクロステッピングは、例えば、状態(+,+)と(−,+)の間を高速で変動させる場合のように、平均して所望の状態となるような高速タイムシーケンスを用いて実現することができる。
【0052】
この制御方法においては、マニュピュレーターの慣性(inertia)が高速シーケンスを実質的に平均化できるようにするため、電流を、マニュピュレーターの各々の電流状態(セット)に対する応答速度よりも素早く切り替える必要がある。さらに、マニュピュレーターは、第3の層(L3)および第4の層(L4)の内部の別のトレースセット等によって、垂直方向に移動することができる。x方向への移動の際、典型的には、x方向への移動中におけるy移動への不要な移動を防止するため、yトレース内の電流(値)は固定されたまま保持される。同様に、y方向への移動の際、xトレース内の電流(値)は、典型的には、固定されたまま保持される。しかしながら、
図6に示すようなトレースパターンを用いて、xトレース内およびyトレース内の双方の直交電流を適切に駆動させることによって、マニュピュレーターを任意の対角方向に移動させることも可能である。ここでの記述は、直交駆動を用いたx方向およびy方向への移動について議論したが、トレース電流の大きさも制御に利用することができる。例えば、より高い電流およびその結果得られるより強い磁力を用いて、反磁性層14の表面近傍に浮上しているマニュピュレーターの全部または一部を引き寄せる等の制御である。
【0053】
図17は、トレースの平行配線パターン内の直交駆動信号を用いることにより、マニュピュレーター18を、ゾーン境界122を横切るように推進させる磁力を発生させるタイミングの一例を示す図である。この図では、図の簡略化のため、ページの垂直方向またはY方向に移動させるための1つのトレースセットのみが図示されている。別のトレースセット、すなわちXトレースは、X移動が所望される際に、同様に駆動される。ゾーン124の直交トレースA、Bおよびゾーン126の対応トレースA’、B’は、それぞれ独立して制御される。マニュピュレーター18をゾーン124からゾーン126に移動させるように、ゾーン124内のトレースAおよびゾーン126内のトレースA’は、互いに逆方向の電流で駆動される。2つのBトレース(トレースBおよびトレースB’)も同様である。この方法では、ゾーン124内のトレースAによって形成される磁場内の磁気パターンのピークおよびトラフ(谷)は、局地的に、電流が逆方向に流れているトレースA’を有するゾーン126内へ広がっている。トレースBおよびトレースB’によって形成される磁気パターンも同様である。
【0054】
図18は、複数または全てのワーク面130が、132のようなより小さいゾーンに分割されている別の例を示す図である。各ゾーンは、134のような垂直方向に配向している水平駆動トレースと、136のような水平方向に配向している垂直駆動トレースを有している。これらのそれぞれ異なるゾーンは、駆動トレースのセグメントを制御しており、例えば、回路基板の底面との接続を行うビアによって、制御電子機器および電力源と接続可能である。議論を簡単にするため、これらのゾーンは、水平方向および垂直方向に1〜7に番号付けされている。例えば、本実施例のマニュピュレーター18は、位置(4,4)に保持されている。一般的に、電流によって発生した場内の所望の磁気位置に、マニュピュレーター18の磁気エネルギー極小値(local magnetic energy minimum)を配置(設定)するよう、水平および垂直トレースに電流を流すことによって、マニュピュレーターを定常位置(steady state position)に保持することができる。例えば、
図18に示すマニュピュレーター18を用いた場合、マニュピュレーター18の中心部のx位置およびy位置を(x,y)と表記し、位置(a,b)のゾーンをZ(a,b)と表記したとき、ゾーンZ(x−1,y)=Z(x−1,y−1)=Z(x−1,y+1)=Z(x−1,y−2)=Z(x−1,y+2)を通過する矢印138に示すような電流を下側から上側に流すと、格子の右方向への力が発生する。マニュピュレーターを(4,4)に保持している例では、正の電流が(3,2)、(3,3)、(3,4)、(3,5)、(3,6)を通過している。負の電流は、格子の左方向への等しい力を発生させるため、ゾーンZ(x+1,y)=Z(x+1,y−1)=Z(x+1,y+1)、Z(x+1,y−2)=Z(x+1,y+2)を通過する矢印140に示すように上側から下側に流れている。または、負の電流は、保持点の左側の水平トレースを通過するように、保持点の上側の2つのゾーンからスタートし、保持点の下側の2つのゾーンで終わるように上側から下側に流れている。
【0055】
同様に、電流は、水平方向に配向している垂直方向の制御トレース142、144を通過する。正の電流は、左側から右側への矢印144のように流れ、保持点から垂直方向への電圧上昇(step up)がなされる。これにより、格子の下方向への力が発生する。負の電流は、トレース142に沿って右側から左側に流れ、保持点から垂直方向への電圧降下(step down)がなされる。これにより、格子の上方向への力が発生する。このように、適切なゾーン内の電流を設定することによって、所望の磁気的位置を定めることができる。また、他の磁気配位(magnetic geometries)を有するマニュピュレーターは、所望の位置を設定するため、上述とは異なった電流セットを用いることとなる。
【0056】
これらの原理を用いて、
図19に示すような隣接したトレース内の電流を制御することによって、マニュピュレーターを隣接するゾーンに移動させることができる。垂直方向に配向しており、(4,6)から(4,2)を通過する水平トレース146内の電流をいくつかの正のレベルに設定し、(3,6)から(3,2)を通過するトレース138内の電流をゼロに設定し、(5,2)から(5,6)を通過するトレース140内の電流をゼロに設定し、(6,2)から(6,6)を通過するトレース148内の電流をトレース146内の電流と同じ負の電流とすることによって、マニュピュレーターを
図18の位置から隣接するゾーンへ移動することができる。トレース148内の電流は、マニュピュレーターがさらに前進することを防いでいる。トレース142、144は、
図18の例と同じ電流を維持していてもよい。トレース142、144は、本実施例では、マニュピュレーターを動かさないものの、マニュピュレーターをページ内の所望のY位置または垂直位置に維持し続けるための磁気ガイドとして機能している。
【0057】
マニュピュレーターを、水平方向または垂直方向の他の隣接するゾーンに移動させることと同様、マニュピュレーターを水平方向および垂直方向に同時に動かし、対角方向に移動させることも可能である。また、マニュピュレーターの異なる部分に対してトルクを与えるように、ゾーンと電流のセグメントを選択的に駆動することによって、回転させることも可能である。
【0058】
格子状トレースでは、各ゾーン内の各トレースは、トレース下側の電子機器の2次元アレイによって、独立して駆動される。各トレース用に、トレース内の電流を双方向に駆動する4つのトランジスタが用いられてもよい。例えば、電流の状態を保持するフリップ−フロップ(flip-flops)のような他の回路と共に用いられ、従来技術において既知のトランジスタの配置によって構成される “H−ブリッジ(H-bridge)”を構成する4つのトランジスタである。ゾーンの格子用に設定された電流値の挙動は、2次元発光ダイオード(light-emitting diode)ディスプレイ内で設定されたピクセル値の挙動と同様である。コントローラーは、各タイムサイクルの間、電子機器に電流値を送る。もしくは、コントローラーは、サイクルを次のサイクルに変化させるための値のみを送り、電子機器は適切なゾーンの電流値を変更してもよい。
【0059】
ここで示すデザインは、ジグザグ状の交互のトレース、もしくは水平および垂直トレースを有し、平行配線パターンとして説明した格子パターンを有する。いずれのデザインも、それぞれ長所と短所を有する。ジグザグパターンは、より少ない接続を必要し、制御もより単純である。また、ジグザクパターンは、平行配線パターンと同じような方法で、モザイク状に繋げていくこと(tesselate)ができる。これにより、ジグザグパターンは、格子レイアウトと同じ数のマニュピュレーターを制御することができる。また、格子または平行配線パターンは、マニュピュレーターを固定位置に保持するための電流を流す2つのトレース(一方はx、他方はy)を必要とするのに対して、ジグザグパターンは、マニュピュレーターを固定位置に保持するための電流を流す1つのトレースのみ必要とする。一方、格子レイアウトは、はるかに多くの自由度を有し、さらにより正確な制御を実行できるものの、より多くの信号とより多くの接続を必要とする。
【0061】
トレースへの電流の供給は、多くの異なる方法で実現することができる。
図20は、トレース用のスイッチと駆動回路の一例を示す図である。上述したコントローラー160は、上述のように、トレースへの電流の供給とタイミングを制御する。ソリッドステートリレー(solid state relay)のようなリレー(relay)162は、正の電流を特定のトレースに流し、リレー164は、負の電流を流す。本実施例では、各リレーは、コントローラー160からの5〜10ミリアンペア(milliamps)の入力電流によって、切り替えられる。リレーの出力の一方の端子は、正または負の電圧源に接続されている。本実施例では、12ボルト(volts)の電圧供給であるが、システムの構成、材料、応用分野に応じてその他の電圧(値)を供給してもよい。
【0062】
抵抗166は、可変抵抗器(potentiometer)168が不正確に設定された場合に、安全装置として電流を制限する。
図20の具体例では、電圧と電流が供給されると、駆動している回路のトレースが有する抵抗にもよるが、合計抵抗は、約10〜40オーム(ohms)となる。インダクタ170は、回路基板上のトレースそのものを表し、電源供給用のグランド172に接地されている。回路の制御用の他の要素と同様に、抵抗も回路基板内に備えられていてもよい。
【0063】
動作において、システムは、最適な制御のために、アナログ電流を用いてもよい。ここまでは、トレースによって規定される領域上での制御を中心に議論した。しかしながら、マニュピュレーターは、制御されていない領域を横切って、分割された制御領域から他の制御領域へ移動してもよい。これは、弾道(ballistic)モーションと称される。1つのゾーン内でのマニュピュレーターの動作が実行された(構成された)後、制御されていない領域を横切って、別の制御領域へ“飛ばされる(flown)”。この動作は、同じ回路基板上の異なるゾーン間においても実行可能であるし、隙間(gaps)を横切って、1つの回路基板から他の回路基板に移動するような場合にも実行可能である。
【0064】
異なるタイプの動作においては、1つの領域上に浮上している磁石があり、別の領域上に表面と接している磁石があってもよい。しかしながら、一般的には、浮上しているマニュピュレーターを用いる場合のほうが、摩耗が少なく、さらに、動作の自由度を多く確保できる。
図3に示す反磁性層もしくは電流ダンピング層は、マニュピュレーターの移動を容易にするために研磨されていてもよい。層の表面は、マニュピュレーターの浮上距離よりも小さい粗さ(roughness)を有している。非浮上領域は、電源OFF状態時の非制御位置に、マニュピュレーターを浮上移動または浮動(floating)させることなく、システムの電源を安全にOFFにするために用いられる。別の実施例では、浮上領域表面は、電源OFF時に、マニュピュレーターを特定の位置に保持するための浅い窪みを有することができる。マニュピュレーターは、このシステムを通じて自由に移動するので、電源シャットダウン手続きは、トレースへのシステム電源がOFFにされる前に、安全にパワーをOFFできる位置に、マニュピュレーターを移動させる。
【0065】
ここまで、移動され、制御されるマニュピュレーター用のシステム全体を説明してきたが、次に、これらマニュピュレーターの様々なファクトリータイプのセッティングの応用について説明する。
図21〜28は、ファクトリー系のシステムにおける様々なプロセスを実行するための様々な構成を示す図である。
図21では、回路基板12は、トレース内の電流を制御するために接続されたコントローラー160を有している。マニュピュレーター18は、基本的なマニュピュレーターのワーク部品であるエンドエフェクター182を有している。この具体的なエンドエフェクターは、プローブまたは傾斜先端部(dip tip)184と、その表面上に付着している液体186とを有している。液体186は、ワーク対象物190上へ付着(deposited)される液体であってもよく、部品のピックアップまたはワーク対象物190上への部品配置を可能とするために、先端部184の表面粘着力(エネルギー)を変化させる液体であってもよい。液体は、収容部180からピックアップされ、エッチング液(etchant)、付着可能材料(depositable material)等として機能してもよい。トレース内の電流を制御することにより、マニュピュレーターを収容部180に移動させ、液体をピックアップさせ、さらに、ワーク対象物190上で作業させることができる。
【0066】
図22は、マニュピュレーターの別の構成を示す図である。本実施例では、ワーク対象物190は、非常に大きな高さを有するので、マニュピュレーターをワーク対象物190上方まで浮上させることができない。その代わり、本実施例のエンドエフェクター182は、延伸された長さを有しており、それにより、マニュピュレーターがワーク対象物の末端を超えてワークを実行することができる。このエンドエフェクターは、延伸された長さと同じ距離だけ、ワーク対象物の内側に到達する(エンドエフェクターの手を伸ばす)ことができる。
【0067】
図23に示すような、ワーク対象物190がシステムの作業場(floor)の向こう側に配置されている構成においても、同じような制限が存在する。回路基板12は、ワーク対象物190と隣接して配置されており、マニュピュレーターは、延伸アーム182を有しており、ワーク対象物190の隣でホバリング(hover)している。ここでも同様に、このエンドエフェクターは、延伸アームの長さと同じ距離だけ、ワーク対象物の内側に到達することができる。
【0068】
上述のように、複数のマニュピュレーターは、同時に動作することができる。
図24の構成では、複数のマニュピュレーター18、200は、ワーク対象物190上でワークを実行する。回路基板12は、194のような孔(hole)を有しており、マニュピュレーターは、孔194を介して動作することができる。マニュピュレーターは、作業場の深さ方向へ下回転(下方向へのピボット運動)をする。本実施例または他の実施例において、複数のマニュピュレーターは、ワーク対象物190の異なる部分に到達するため、それぞれ異なる延伸された長さを有するエンドエフェクターを有していてもよい。
【0069】
図25では、ワーク対象物は、回路基板12の上方に位置している。ワーク対象物は、重力に抗するように固定されているか、その他の物体の底面に取り付けられている。エンドエフェクターは、マニュピュレーターが上方のワーク対象物に対して、タスクを実行できるように配向されている。同様に、
図26では、ワーク対象物が回路基板12の側面側に位置しており、回路基板12上のエンドエフェクターが、ワーク対象物190上で、ピックアンドプレース(pick and place)を実行することができる。この場合、ワーク対象物190は、全ての領域を作業可能とするよう、回路基板に対して上下方向に平行移動可能としてもよい。
【0070】
図27に示す別の配置では、ワーク対象物190は、マニュピュレーター18に対する揚力を提供する回路基板12の下側に位置している。マニュピュレーター18は、回路基板によって、ワーク対象物190上方の天井(ceiling)となるように、浮上されている。
【0071】
図28は、ある表面から別の表面へマニュピュレーターが移動する一例を示す図である。回路基板12は、マニュピュレーター18を浮上させ、第2の表面210へ向けてマニュピュレーター18を移動させる。マニュピュレーターが第2の回路基板210に近づくにつれ、マニュピュレーターの制御は、回路基板210へ移行する。マニュピュレーター18を制御している回路基板12内のトレースは、回路基板210への制御の移行を促進(facilitate)するため、OFFされてもよい。実施例の1つでは、0.8〜1.0Aの高電流パルスが回路基板210のトレース内で用いられ、制御の移行を促進する。垂直方向への移動に関し、マニュピュレーターは、典型的には、重力に抗するために、回路基板210の表面上に配置されている。この説明は、単に、タスクの実行に合わせて、マニュピュレーターを移動させるシステムの自由度および能力を実例として説明したにすぎない。
【0072】
図28に示されているように、システムは、様々な方向に配向された複数の回路基板12から構成されてもよい。例えば、回路基板12は、マニュピュレーターがワーク対象物190上の複数の点においてワーク実行可能とするように、
図26に示した回路基板を並列に複数個、複製(duplicated)されていてもよい。別のケースでは、例えば、マニュピュレーター18の下側に回路基板12を、マニュピュレーター18の上側近傍に第2の回路基板を設置するように、複数の回路基板が、性能向上のために用いられてもよい。これは、
図27に示したマニュピュレーター18の上側の回路基板12に類似しているが、マニュピュレーター18の下側の回路基板というより、ワーク対象物190の下側の回路基板と類似している。1つの回路基板よりむしろ2つの回路基板でマニュピュレーター18を駆動することにより、マニュピュレーター18の最大力(peak force)および最大速度(peak speed)を増加させることができる。また、
図28に示したような方法を用いて、回路基板間で自由に動く複数のマニュピュレーター18を用いる
図32に示すような回路基板の3次元アレイを構成することができる。また、このシステムは、回路基板12用のフレキシブル回路を用いて、
図33に示すような、曲がっている(bent)または湾曲している(curved)経路を構成することができる。
【0073】
複数の回路基板12を用いるシステムでは、複数のボードが固定されている。もしくは、いくつかの実施例では、ボードは、異なった方法を用いて、異なる所望の機能を実現するシステムを構成するために、交換可能であってもよい。例えば、システムは、各回路基板12を交換可能な方法でマザーボードに差し込む、従来技術において既知の“マザーボード(mother board)”アプローチを用いてもよい。
【0074】
上述の記載から、マニュピュレーター18は、回路12上で様々な姿勢(向き)で動作可能であることは十分に理解される。すなわち、回路12のトレース内に十分な電流が供給されれば、マニュピュレーター18は、例えば、回路基板12が携帯型ハンドヘルド機器内にある場合、または回路基板12が姿勢の変化が可能なロボットの手首(wrist)に取り付けられている場合のように、姿勢(向き)が動的に変化している間であっても、動作することができる。実施例の1つでは、
図26、28に示したようなビアパターンは、0.8Aのトレース電流と共に導電層26、28内で用いられている。それは、手によってその姿勢が変化する間にも動作可能なデバイスに用いられる。
【0075】
マニュピュレーターによって実行されるタスクは、エンドエフェクターおよびその構成に部分的に依存してもよい。例えば、
図21〜28のエンドエフェクター182は、付着液、エッチング液、もしくは、物体または他の部品をエンドエフェクターに接着するための接着剤のいずれかの液体を用いている。
図29は、物体を複数の方向に動き回らせ、ワーク面を横切って物を運ぶのに有用な“フォーク(fork)”または“シャベル(shovel)”タイプのエンドエフェクターを示す図である。
図30は、物体を一方の方向に押す出すための“押し込み(pusher)”タイプのエンドエフェクターを示す図である。実施例の1つでは、あるマニュピュレーターの端部上のシャベルエンドエフェクターは、別のマニュピュレーターのホウキ(broom)エンドエフェクターの前に物体を設置してもよく、ホウキエンドタイプのエフェクターは、物体をワーク対象物に対してプッシュすることができる。
【0076】
上述のように、適切なプログラミングによって、マニュピュレーターは、平行移動および回転され、様々な所望のタスクを実行するよう、取り付けられたエンドエフェクターを平行移動および回転させることができる。また、反磁性層14の面に平行な軸に対して傾斜させるために、例えば、マニュピュレーター18の他の部分の磁石を引き寄せつつ、マニュピュレーター18の一部の磁石を押しるように(反発させるように)、トレース電流を駆動させてもよい。これにより、マニュピュレーター18を、反磁性層14に平行な軸に対して、回転また傾斜させることができる。ここで、“ヨー(yaw)”を回路基板12のローカル面に垂直な軸に対する回転と定義し、“ロール(roll)”および”ピッチ(pitch)”を回転方向に対する傾斜とする。また、重力に加えて、エンドエフェクターの付加質量が加わる多くの場合において、同等の単純な制御方法(simpler control strategies)を、傾斜のために用いてもよい。
【0077】
図31は、
図23に示した構成と似た単純な例を示す図である。回路基板12上を移動し、エンドエフェクター182を有するマニュピュレーター18は、ワーク対象物190に対し、
図31aに示すようなパワーON状態で近づいていく。エンドエフェクター182を、ワーク対象物190に接触するよう、下方向に傾斜させるため、パワーがOFFされる。本実施例では、エンドエフェクター182は、マニュピュレーター18に対して十分な質量を有している。重力は、マニュピュレーター18と、マニュピュレーター18に堅固に取り付けられているエンドエフェクター182を、
図31bに示されているページ奥側に延伸している傾斜軸230周りに回転させることで、それらを“下側傾斜(tilt-down)”状態で傾斜させる。傾斜軸230は、一般的には、回転軸を定めるマニュピュレーター18上の少なくとも2つの点と一致する。また、質量分布によっては、マニュピュレーター18上の単一の点を用いてもよく、単一の点は、反磁性層14に平行というよりは垂直な軸に対するいくつかの回転を発生させる。
【0078】
上側に傾斜させるために、回路基板12にパワーが供給され、マニュピュレーター18およびエンドエフェクター182が再度元の位置に戻るために十分な磁力が発生し、“上側傾斜(tilt-up)”状態に戻る。また、回路基板12からの利用可能な磁力によって、下側傾斜状態および上側傾斜状態を確実に実現するために、エンドエフェクター182の構成に質量を追加またはエンドエフェクター182の構成から質量を除去(subtract)してもよい。また、反磁性層14の低い摩擦力とバランスを取るように質量を適切に調整することによって、低電流モードでは、マニュピュレーター18が回路基板の面に対して平行に移動し、高電流モードでは、マニュピュレーター18が上側傾斜動作を実行するように構成することができる。実施例の1つでは、回路基板12内の導電層26、28、30、32用(
図3参照)の低電流モード用の低電流は、それぞれ、0.25A、0.33A、0.5A、0.7Aである。回路基板12内の導電層26、28、30、32用の高電流モード用の高電流は、それぞれ、0.8A、0.8A、0.5A、0.7Aである。
【0079】
このように、マイクロファクトリーシステムは、複数のマニュピュレーター18を回路基板の表面上で制御するよう構成されている。この回路基板は、通常の製造技術を用いて製造することができる。コントローラーは、ワーク対象物上に対するタスクを実行するため、マニュピュレーターの正確な制御を提供する。
【0080】
上記開示された他の特徴および機能、もしくは、それらの代替手段が、多くの異なるシステムや応用において、適切に組み合わせることができることは十分に理解されるであろう。また、現在予測していないまたは予期せぬ様々な代替手段、変更、バリエーション、またはこれらの改良が、以降、当該技術分野において知識を有するものによって為されるであろうが、それらも同様に、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内である。