特許第6073805号(P6073805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073805硫酸バリウムを備える熱的に安定した触媒担体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073805
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】硫酸バリウムを備える熱的に安定した触媒担体
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/053 20060101AFI20170123BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20170123BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20170123BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20170123BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170123BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   B01J27/053 A
   B01J32/00ZAB
   B01J35/10 301F
   B01J37/02 101E
   B01D53/94 280
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01J37/08
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-547514(P2013-547514)
(86)(22)【出願日】2011年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-505587(P2014-505587A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2011064537
(87)【国際公開番号】WO2012091913
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月8日
(31)【優先権主張番号】12/978,712
(32)【優先日】2010年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】グラミチオニ,グレイ,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ケネス,アール.
(72)【発明者】
【氏名】デーバ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コトレル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァサーマン,クヌート
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−237390(JP,A)
【文献】 特開平10−156184(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/147163(WO,A1)
【文献】 特開2010−274162(JP,A)
【文献】 特開平09−276702(JP,A)
【文献】 特開2007−117916(JP,A)
【文献】 特表2009−523607(JP,A)
【文献】 特開2006−341221(JP,A)
【文献】 特開2003−190818(JP,A)
【文献】 特開2005−052779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質アルミナ支持体と、前記多孔質アルミナ支持体の外面および内面上に分散され、それに化学的に結合する硫酸バリウム層と、を含む触媒担体であって、BET表面積が少なくとも100m/gであり、平均細孔半径が80オングストローム〜150オングストロームであり、
前記硫酸バリウムは、0.5重量%〜10重量%であり、
白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される貴金属が堆積した焼成済みの排気ガス浄化触媒担体。
【請求項2】
前記アルミナは、ベーマイト、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、シータアルミナ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒担体。
【請求項3】
硫酸バリウム層を欠く多孔質アルミナ支持体に対して40%より多い貴金属活性部位を含有する、請求項1に記載の触媒担体。
【請求項4】
請求項1に記載の触媒担体を含む、排気ガス流のための排出処理システム。
【請求項5】
前記触媒担体は、セラミックまたは金属性のハニカムフロースルー基材上に配置される、請求項4に記載の排出処理システム。
【請求項6】
排気ガス浄化触媒担体を調製するためのプロセスであって、
a)アルミナにバリウム塩溶液を含浸させた後、焼成することにより得た酸化バリウムおよび/または炭酸バリウム多孔質支持体を提供するステップと、
b)酸化バリウムおよび/または炭酸バリウムに対して少なくとも1モル当量の硫酸で前記多孔質支持体を処理し、前記多孔質支持体の外面および内面上に分散された硫酸バリウム層を有する多孔質支持体を生成するステップと、
c)任意に、前記硫酸バリウム層を有する前記多孔質支持体を乾燥させ、それによって、前記触媒担体を形成するステップと、
d)前記触媒担体に貴金属塩水溶液を含浸させて、含浸させた触媒担体を形成するステップと、
e)前記含浸させた触媒担体を焼成して、触媒担体に熱的に固定された貴金属を提供するステップと
を含み、
前記貴金属塩水溶液は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される貴金属を含み、
前記触媒担体は、BET表面積が少なくとも100m/gであり、平均細孔半径が80オングストローム〜150オングストロームである、プロセス。
【請求項7】
ステップb)において、硫酸は、酸化バリウムおよび/または炭酸バリウムに対して1モル当量〜2モル当量である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップa)は、500℃〜750℃の温度で実行される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロセスは、ステップd)の前に前記硫酸バリウム層を有する前記多孔質支持体を乾燥させる前記ステップを省く、請求項6に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の材料および方法は、排気ガス浄化触媒を支持するために有用な硫酸バリウム層を含む触媒担体に関する。さらに、バリウムをドープしたアルミナを硫酸で処理し、任意にその後、貴金属を含浸させることにより、多孔質支持体内の原位置で硫酸バリウムを形成することを含む、触媒担体を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
3元転換(TWC)触媒等の高温触媒は、産業界において有用である。TWC触媒は、自動車等の内部燃焼エンジンおよび他のガソリン燃料エンジンから排出する窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、および非メタン炭化水素(NMHC)等の炭化水素(HC)の低減を含む、いくつかの分野において有用性を有する。TWC転換触媒は、炭化水素の酸化および一酸化炭素を実質的かつ同時に触媒し、窒素酸化物を低減する能力を有するため多機能である。様々な政府機関が窒素酸化物、一酸化炭素、および未燃焼炭化水素汚染物質に関する排出基準を設定し、新しい自動車はその基準を満たされなければならない。
【0003】
そのような基準に合致するために、TWC触媒を含有する触媒変換器は、内部燃焼エンジンの排気ガス流内に位置する。触媒変換器は、一種の排気排出制御システムであり、基材上に配置される1つ以上の触媒材料を含む。触媒材料の組成物、基材の組成物、および触媒材料が基材上に配置される方法は、触媒変換器が相互に区別され得る基盤である。触媒材料を基材上に堆積させる方法は、ウォッシュコート、吸収、含浸、物理吸着、化学吸着、沈着、および前述の堆積法のうちの少なくとも1つを含む組み合わせを含む。
【0004】
良好な活性および長寿命を呈するTWC触媒は、1つ以上の白金族金属、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、およびイリジウムを含む。これらの触媒は、高表面積耐火性酸化物支持体と共に利用される。耐火性金属酸化物は、アルミニウム、チタン、シリコン、ジルコニウム、およびセリウム化合物に由来し得、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、およびセリアのうちの少なくとも1つを含む例示的な耐火性酸化物を含む酸化物をもたらす。TWC触媒支持体は、耐火性セラミックもしくは金属性のハニカム構造、または適切な耐火性材料の球体もしくは短い押出しセグメント等の耐火性粒子を含むモノリシック担体等の適切な担体または基材上に坦持される。
【0005】
アルミナ(Al)は、多くの触媒システムの支持体として知られる。アルミナは、アルファアルミナ(多くの場合、αアルミナまたはαAlとして知られる)、ガンマアルミナ(多くの場合、γアルミナまたはγΑlとして知られる)ならびに無数のアルミナ多形体等のいくつかの結晶相を有する。ガンマアルミナは、遷移アルミナである。遷移アルミナは、異なる多形体への遷移を受けることができる一連のアルミナである。Santosら(Materials Research,2000;3(4):104−114)は、電子顕微鏡研究を使用して異なる標準的な遷移アルミナを開示し、一方、Zhouら(Acta Cryst.,1991,B47:617−630)およびCaiら(Phys.Rev.Lett.,2002,89:235501)は、ガンマアルミナからシータアルミナへの変換のメカニズムを説明した。
【0006】
欠陥スピネル結晶格子は、開いており、かつ高表面積が可能である両方の構造をガンマアルミナに付与するため、ガンマアルミナは、触媒用途において好ましい選択であり得る。ガンマアルミナは、典型的に150〜300m/gの高表面積、30〜120オングストロームの直径を有する多量の細孔、および0.5〜>1cm/gの細孔容積を有する面心立方の最密充填酸素副格子構造を有する。さらに、欠陥スピネル構造は、ガンマアルミナにいくつかの独特な特性を与える空のカチオン部位を有する。
【0007】
「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも呼ばれる、TWC触媒と共に使用される高表面積アルミナ材料は、典型的に、60m/gを超え、多くの場合最大約200m/gのBET表面積を呈する。そのような活性アルミナは、アルミナのガンマ相およびデルタ相の混合物であるが、かなりの量のエータ、カッパ、およびシータアルミナ相も含有する。活性アルミナ以外の耐火性金属酸化物は、所与の触媒における触媒成分のうちの少なくともいくつかにおいて支持体として利用され得る。例えば、バルクセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、および他の材料が、そのような使用に関して公知である。これらの材料の多くは活性アルミナよりBET(Brunauer、Emmett、およびTeller)表面積が少ないが、その欠点は得られる触媒の優れた耐久性により相殺される傾向がある。
【0008】
支持触媒システムの効率は、多くの場合、支持体上の表面積に関連することが知られている。これは、活性部位の数が触媒効率に関与する貴金属触媒または他の高価な触媒を使用したシステムに当てはまる場合がある。表面積が大きいほど、より多くの触媒材料が反応体に曝露され、よって、高い生産率を維持するために必要な時間および触媒材料が少なくなる。
【0009】
ガンマアルミナの加熱は、ゆっくりだが連続した表面積の損失、および非常に少ない表面積を有する他のアルミナの多形体へのゆっくりとした転換をもたらすことができる。よって、ガンマアルミナが高温に加熱されるとき、原子の構造が崩壊するため、表面積が実質的に減少する。1100℃を超える高温処理は、最終的に、研磨および耐火性物質に使用される場合が多い稠密で硬質なアルミニウムの酸化物であるアルファアルミナをもたらす。アルファアルミナは高温で最も安定したアルミナであるが、表面積も最も少ない。
【0010】
排気ガス温度は、作動中の車両において1000℃に達し得る。活性アルミナまたは他の支持体材料を1000℃等の高温に長期曝露することにより、酸素、時には酸素流と組み合わされて、支持体焼結による触媒の非活性化をもたらし得る。触媒金属は、曝露された触媒表面積が損失し、対応して触媒活性が減少することにより縮んだ支持体媒体上に焼結される。アルミナの焼結は、文献に広く報告されてきた(例えば、Thevenin et al.,Applied Catalysis A:General,2001,212;189−197を参照)。実用温度の増加によるアルミナの相変換は、通常、表面積の鋭い減少により達成される。
【0011】
この非活性化現象を防止するために、熱的非活性化に対してアルミナ支持体を安定させるための様々な試みが行われてきた(Beguin et al.,Journal of Catalysis,1991,127:595−604、Chen et al.,Applied Catalysis A:General,2001,205:159−172を参照)。金属ドーピングとしても知られるプロセスであるランタン等の安定化金属をアルミナに添加することにより、アルミナ構造を安定させることができる。例えば、米国特許第4,171,288号、第5,837,634号、および第6,255,358号を参照。一般に、先行技術は、少量のランタニア(La)、典型的には10%より少ない、多くの実践では1〜6重量%を使用することによる、アルミナ、主にガンマアルミナの安定化に焦点を置いてきた。例えば、Subramanian et al.(1991)”Characterization of lanthana/alumina composite oxides,”Journal of Molecular Catalysis,69:235−245を参照。大半のランタナをドープしたアルミナ組成物に関して、ランタンは、酸化ランタンの形態である。例えば、Bettman et al,(1989)”Dispersion Studies on the System La/Y−Al,”Journal of Catalysis,117:447−454を参照。
【0012】
上述のように、以前のアルミナ支持触媒は、有効な触媒としての機能を果たす熱的安定性も十分な活性部位も提供しない場合が多い。安定化剤材料でのドーピングは熱的安定性を改善することができるが、これらの添加材料との単なる混合または機械的ブレンドでは最適な結果が得られない場合が多い。加えて、貴金属を含有する触媒において使用される公知の支持体は、高温による熟成後、利用可能な活性部位の減少に悩まされる場合が多い。
【0013】
本開示は、熱的に安定した触媒支持体の技術分野における問題に対処する。
【発明の概要】
【0014】
以下の実施形態は、これらの必要性を満たし、それに対処する。以下の概要は、広範な概説ではない。様々な実施形態の主要な要素または重要な要素を同定することも、それらの範囲を示すことも意図されない。
【0015】
多孔質支持体と、多孔質支持体の外面および内面上に分散され、それに化学的に結合する硫酸バリウム層とを備える触媒担体であって、BET表面積が少なくとも約100m/gであり、平均細孔半径が約80オングストローム〜約150オングストロームである、触媒担体を提供する。ある実施形態では、多孔質支持体はアルミナである。アルミナは、ベーマイト、ガンマアルミナ、デルタアルミナ、シータアルミナ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0016】
ある実施形態では、硫酸バリウム層は、約0.5重量%〜約10重量%の量の硫酸バリウムを含む。ある実施形態では、硫酸バリウム層は、約3.5重量%〜約5重量%の量の硫酸バリウムを含む。
【0017】
触媒担体は、任意に、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される貴金属をさらに含む。ある実施形態では、貴金属を含む触媒担体は、硫酸バリウム層を含まない同じ多孔質支持体に対して約40%多い貴金属活性部位を含有する。
【0018】
多孔質支持体と、多孔質支持体の外面および内面上に分散され、それに化学的に結合する硫酸バリウム層とを備える触媒担体を含む排気ガス流用の排出処理システムであって、触媒担体は、BET表面積が少なくとも約100m/gであり、平均細孔半径が約80オングストローム〜約150オングストロームである、システムを提供する。触媒担体は、排出処理システムにおいて、セラミックまたは金属性のハニカムフロースルー基材上に配置される。
【0019】
触媒担体を調製するための方法も提供する。本方法は、a)酸化バリウムおよび/または炭酸バリウムを含浸させたアルミナ(Al)を含む多孔質支持体を提供するステップと、b)酸化バリウムおよび/または炭酸バリウムに基づき、少なくとも1モル量の硫酸で多孔質支持体を処理し、多孔質支持体の外面および内面上に分散された硫酸バリウム層を有する多孔質支持体を生成するステップと、c)任意に、硫酸バリウム層を有する多孔質支持体を乾燥させ、それによって、触媒担体を形成するステップとを含む。ある実施形態では、調製された触媒担体は、BET表面積が少なくとも約100m/gであり、平均細孔半径が約80オングストローム〜約150オングストロームである。
【0020】
プロセスのある実施形態では、硫酸は、ステップb)において、酸化バリウムおよび/または炭酸バリウムに基づき、約1モル当量〜約2モル当量である。ある実施形態では、ステップa)は、約500℃〜約750℃の温度で実行される。
【0021】
任意に、触媒担体を調製するためのプロセスは、d)触媒担体に貴金属塩水溶液を含浸させて、含浸させた触媒担体を形成するステップと、e)含浸させた触媒担体を乾燥させて、貴金属含有触媒担体を提供するステップとをさらに含む。ある実施形態では、プロセスは、ステップd)の前に硫酸バリウム層を有する多孔質支持体を乾燥させるステップを省く。貴金属塩水溶液は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される貴金属を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ガンマおよびデルタアルミナ相の存在を図示する、実施例1に使用された大きな細孔のガンマアルミナ開始材料のXRDパターンを示す。
図2】デルタおよびシータアルミナ相ならびにアルファアルミナの形成も図示する、1100℃で3時間空気中で焼成された、実施例1に使用された大きな細孔のガンマアルミナ開始材料のXRDパターンを示す。矢印は、熟成させた開始材料に存在する、ある例示的なアルファアルミナのピークを指し示す。
図3】Pd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナの組成物を有する、実施例1に記載されるように調製された貴金属を含む、BaSOを含む触媒担体のXRDパターンを示す。
図4】Pd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナの組成物を有し、1100℃で3時間空気中で焼成された、実施例1に記載されるように調製された貴金属を含む、BaSOを含む触媒担体のXRDパターンを示す。
図5】実施例2に記載されるように機械的融合(MF)により調製された、調製されたままのPd4%/BaSO5%/アルミナMFの組成物を有する貴金属を含む、BaSOを含む触媒担体のXRDパターンを示す。
図6】実施例2に記載されるように機械的融合(MF)により調製され、Pd4%/BaSO5%/アルミナMFの組成物を有し、1100℃で3時間空気中で焼成された貴金属を含むBaSOを含む触媒担体のXRDパターンを示す。
図7】多層対照(対照触媒1)と比較した、実施例1Aの触媒担体(触媒1)または実施例2Aの触媒担体(触媒2)を用いて調製された多層触媒を使用する標準的な方法により得たエンジンデータを示す。3つ全ての多層触媒には30g/ftの貴金属が装填され、貴金属比は0/9/1(Pt/Pd/Rh)=27g/ft(Pd)および3g/ft(Rh)であった。
図8】触媒1(実施例1のPd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナを使用して実施例1Aの通りに作製された多層触媒;実線)を対照触媒1(硫酸バリウムを欠く標準的なパラジウムおよびロジウム含有触媒(点線))と比較した、赤外分光法により測定されたCO化学吸着を示す。
図9】対照触媒2、触媒3、触媒4、および触媒5のHC排出量データを示す。触媒は、1070℃で80時間エンジン熟成された。対照触媒2は、アルミナ上に支持されたPdを含む。触媒3は、基材上にウォッシュコートされる前にBaO/アルミナ上に含浸させ、熱的に固定されたPdを含む。触媒4および触媒5は、BaSO5%/熱的に安定したアルミナ触媒担体上に支持されたPdを含む。Pd触媒担体は、触媒5に関しては、基材上にウォッシュコートされる前に熱的に固定されたが、触媒4は固定されなかった。
図10】BaSO重量パーセントの関数として、触媒のHC排出量データを示す。触媒は、1070℃で80時間エンジン熟成された。対照触媒3は、BaSO/熱的に安定したアルミナ触媒担体を含まない。触媒6、7、および8は、それぞれ、BaSO5%/熱的に安定したアルミナ触媒担体、BaSO7.5%/熱的に安定したアルミナ触媒担体、およびBaSO10%/熱的に安定したアルミナ触媒担体を含む。
図11】熟成前(「調製されたまま」)、および1100℃で3時間空気中で焼成することによって熟成した後(「熟成後」)のサンプル3(Pd4%/BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ)のXRDパターンを示す。
図12】排出処理システムの例示的な実施形態の概略図を示す。図12Aは、単一キャニスター4を備える排出システム1を示す。最密結合触媒基材5および下流の触媒基材7は、キャニスター3内に収容される。エンジン9は、排出システム1の上流に位置する。図12Bは、最密結合触媒基材15を備える第1のキャニスター13と、下流の触媒基材19を備える第2のキャニスター17とを備える排出システム11を示す。エンジン21は、排出システム11の上流に位置する。矢印は、エンジンから排出システム、そして環境または任意の追加の処理システムへの排気の流れを示す。
図13】FTP75およびUS06の2つの異なる試験プロトコルによる触媒10に対する触媒9のエンジン排出性能を示す棒グラフである。正のパーセントは、触媒10に対して触媒9の改善された排出量減少を示す。THC=総炭化水素量。NMHC=非メタン炭化水素。CO=一酸化炭素。NOx=窒素酸化物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
アルミナ等の触媒支持体材料を水性バリウム塩で処理することは周知である。例えば、ガンマアルミナに水性酢酸バリウムを含浸させ、続いて乾燥させ、焼成して、BaO/アルミナ支持体材料を得る。しかしながら、本明細書に示されるように、支持体上で酸化バリウムまたはバリウムを含有する複合体混合酸化物を硫酸でさらに処理することにより、予想外に熱的に安定し、排出触媒形成用の触媒担体として有利な特徴を提供するBaSO/アルミナ材料が得られる。
【0024】
したがって、改善した熱的安定性を有する触媒担体ならびに触媒担体の作製方法およびその使用方法を提供する。本明細書で使用されるように、「改善された熱的安定性」とは、本明細書の別の箇所に記載される熟成プロトコル後、硫酸バリウムを含まず、同じプロトコルによって熟成に供された多孔質支持体に対して、例えばXRDによって検出されるアルファアルミナ形成の実質的な減少または実質的な排除を指す。BaSO触媒担体は、BaOおよびBaCO含有アルミナに対して、pH2〜10の水性スラリー中での安定性の増加をさらに示す。BaOおよびBaCO含有アルミナは、Baを可溶性にさせる酸性条件下で反応性である。バリウムは、安定化剤およびPGM促進剤の両方であるため、バリウムの損失は、PGMを坦持する触媒担体の有効性を減少させる。理論に束縛されるものではないが、BaSO中のバリウムは、酸性条件下で可溶化に耐性があり、それによって、酸性条件下でのバリウムの損失を最小にする、または妨げ、排出量の低減における安定化剤およびPGM促進剤としての機能のためにバリウムを保存すると考えられる。
【0025】
触媒担体は、多孔質支持体と、硫酸バリウムの層とを備える。硫酸バリウムの層は、多孔質支持体の外面および内面上に分散される。任意に、触媒担体は貴金属をさらに含む。有利に、触媒担体は、硫酸バリウムを含まない同じ多孔質支持体に対して、約40%多い貴金属活性部位を含有することができる。
【0026】
多孔質支持体材料上に堆積する硫酸バリウムの量は、0重量%超〜約20重量%の範囲である。一実施形態では、硫酸バリウムは、0.5重量%〜10重量%、1重量%〜10重量%未満、2.5重量%〜7.5重量%、3%〜7重量%、または3重量%〜5重量%の範囲の量で存在する。ある実施形態では、硫酸バリウムは約3.5重量%で存在する。別の実施形態では、硫酸バリウムは約5重量%で存在する。ある実施形態では、触媒担体は、大きい細孔のアルミナ上に硫酸バリウム層を備え、硫酸バリウムは3.5重量%〜約5重量%の範囲である。ある実施形態では、触媒担体は、大きい細孔のアルミナ上に硫酸バリウム層を備え、硫酸バリウムは約3.5重量%を含む。
【0027】
硫酸バリウムは、多孔質支持体を熱的に安定させる硫酸バリウム層をもたらすあらゆる既知の方法によって多孔質支持体上に調製され得る。本明細書に記載される触媒担体の硫酸バリウム層は、一般に、多孔質支持体の外面および内面上に均一かつ十分に分散される。触媒担体の硫酸バリウム層は、一般に、多孔質支持体の細孔を含むことができる多孔質支持体の外面上および内面内に結合される。理論に束縛されるものではないが、結合の性質は共有結合性またはイオン性であり得る。結合の種類は変動するが、結合および化学結合強度は分子フレームワーク内のイオン性から供給結合性の範囲であり得ると一般に理解される。そのようなものとして、本明細書に記載される触媒担体は、多孔質支持体に化学的または機械的に結合する硫酸バリウムを含み、単に別個または異なる材料の混合物ではない。例示的な多孔質支持体材料は、例えば約80オングストロームより大きい平均細孔半径、例えば約80〜約150オングストロームおよび約0.75cm/gより大きい総細孔容積を有する大きい細孔のアルミナを含む。例えば、市販のガンマアルミナは、約0.5〜>1cm/gの細孔容積を有し得る。アルミナの細孔は、内面(即ち細孔の内面)ならびに総細孔容積を画定すると一般に理解される。したがって、ある実施形態では、硫酸バリウムは、新規触媒担体を提供するために、アルミナ材料の外面上および内面内に堆積および/または分散され得る。他の例示的な多孔質支持体材料は、酸化ジルコニウム、固溶体のCe/Zr、Ce/Zrアルミン酸塩、および沸石支持体を含むが、これらに限定されない。
【0028】
例示的なアルミナは、大きい細孔のベーマイト、ガンマアルミナ、およびデルタ/シータアルミナを含む。例示的なプロセスにおいて開始材料として使用される有用な市販のアルミナは、BASF Catalysts LLC(Port Allen,Louisiana,USA)およびSasol Germany GmbH(Hamburg,Germany)から入手可能な、かさ密度が高いガンマアルミナ、かさ密度が低いまたは中程度の大きい細孔のガンマアルミナ、およびかさ密度が低い大きい細孔のベーマイト等の活性アルミナを含む。BaOがドープされたアルミナも、BASF Catalysts LLC(Port Allen,Louisiana,USA)およびSasol Germany GmbH(Hamburg,Germany)から得ることができる。
【0029】
ある実施形態では、硫酸バリウムは、酸化バリウム(BaO)および/または炭酸バリウム(BaCO)を硫酸(HSO)で処理することにより、アルミナ等の多孔質支持体上の原位置で化学的に調製される。酸化バリウムおよび/または炭酸バリウムを硫酸で処理することにより、原位置で形成された硫酸バリウム層は、アルミナ等の多孔質支持体に化学的に結合される。原位置で形成された硫酸バリウムは、一般に、多孔質支持体の外面上および内面内に均一に分散される。よって、化学的に形成された硫酸バリウム層を含む触媒担体は、細孔構造を保持し、硫酸バリウム層は、表面全体を通して必ずしも連続していなくてもよいが、一般的に、十分に分散される。本明細書に示されるように、原位置での化学的な硫酸バリウムの形成により調製された触媒担体は、改善された熱的安定性を示す。
【0030】
原位置形成のための例示的なプロセスにおいて、BaOおよび/またはBaCO多孔質支持体を調製するために、最低約80%の初期湿潤度まで、開始多孔質支持体材料に酢酸バリウムもしくは炭酸バリウム等のバリウム塩溶液、またはバリウム塩溶液を含む混合物を含浸させることができる。開始材料の含浸は、ドラムまたは袋から乾燥した粉末材料と、塩溶液として湿った材料とを供給し、Littleford Day,Inc.,Florence,Kentuckyから入手可能なLittleford Mixerにより供給されるもの等のミキサーを充填することにより行われ得る。混合は、非常に均一な混合をもたらすように十分な時間の間行われ得る。湿った材料(即ち、バリウム塩溶液)は、多孔質支持体材料上に溶液を含浸/分散させるために、例えば、円錐状の霧化噴霧を生成するノズルを介した約2L/分の最大容積流量のぜん動ポンプを介して、ミキサーに供給され得る。最低約80%の初期湿潤度を達成するように攪拌した後、含浸させた支持体材料を、任意に乾燥させ、焼成し、BaOおよび/またはBaCO多孔質支持体を生成する。任意に、乾燥/焼成する前に、含浸させた支持体材料をほぐし(de−lumped)、ふるいにかけ、かつ/または区分することができる。焼成は、フラッシュか焼炉、トレーおよびバッチ式炉、ボックスオーブン、または回転窯を使用して行うことができる。ある実施形態では、焼成は、回転窯またはフラッシュか焼炉を使用して行うことができる。例示的な焼成温度としては、約400℃〜750℃および400℃〜600℃が挙げられる。例示的な焼成時間としては、約1秒〜2時間が挙げられる。一般に、米国特許第5,883,037号に記載されるような液滴のフラッシュ乾燥において、高温のガスがらせん軌跡に下向きに降下し、渦に向かうフラッシュ槽を使用する等の、噴霧乾燥法は除外される。
【0031】
本明細書に示されるように、熱的に安定したBaSO/アルミナは、硫酸で処理する前に酢酸バリウム含浸材料の焼成ステップを必要とせずに調製され得る。したがって、ある実施形態では、原位置プロセスを介したBaOおよび/またはBaCO多孔質支持体の調製は、硫酸で処理して、BaSOを形成する前の乾燥および焼成ステップを排除する。
【0032】
次いで、BaOおよび/またはBaCO多孔質支持体は、少なくとも1モル当量の硫酸で原位置で処理され、硫酸は、バリウム塩に基づき、最大約2.0当量の範囲で提供され得る。ある実施形態では、硫酸は、バリウム塩に基づき、約1.5〜1.9当量の範囲の量で添加される。ある実施形態では、硫酸は、バリウム塩に基づき、約1.7当量の量で添加される。あるいは、BaOからのBaSOの完全な化学量論的形成を確実にするために、過剰の硫酸が使用され得る。この様にして、生成物のpHが制御される一方で、試薬の有効使用が利用される。硫酸で処理した後、硫酸および酢酸バリウムの反応中に形成された実質的に全ての自由水分/水およびあらゆる揮発物を除去するのに十分な温度および時間で、任意に材料を乾燥させる、および/または焼成することができる。理論に束縛されるものではないが、焼成は、残った未反応酢酸バリウムまたは炭酸バリウムを分解することもできると考えられる。
【0033】
ある実施形態では、多孔質支持体は大きい細孔のアルミナである。よって、BaSOは、ガンマアルミナ等の大きい細孔のアルミナ上に分散されたBaOおよび/またはBaCOの直接的な酸/塩基反応を介して作製される。
【0034】
ある実施形態では、過剰の硫酸がアルミナとの反応を介して使用され、消費されて、硫酸アルミニウム(Al(SO)を形成し、過剰物は、BaSOの100%形成を確実にするために利用される。副産物の硫酸アルミニウムは、酸性の低pH支持体を生成する交換部位(酸性部位)として機能する可能性があり、その場合、BaO/BaCOアルミナは塩基性で高pHであることを記述しておく。この表面化学は、1つ以上白金族金属(PGM)、例えば硝酸パラジウムと結合し、焼成により貴金属を熱的に固定するために加工されるときに重要であり得る。
【0035】
原位置での化学形成により触媒担体を調製するのに使用される塩溶液は、硝酸塩または酢酸塩溶液であり得る。塩は、一般に、均質な塩溶液がプロセスで利用されるように可溶性である。他の適切な酸性塩水溶液が使用され得る。酸性溶液のpHは、約1〜約5の範囲であり得る。
【0036】
別の実施形態では、硫酸バリウムは、機械的融合により調製される。譲受人共通の米国公開第20100189615号は、機械的に融合された成分を説明している。機械的融合は、ホストおよびゲスト粒子を伴う、即ち、BaSOは、機械的力を介してアルミナ等の多孔質支持体に融合されるゲスト粒子である。メカノフュージョンに基づく触媒担体は、コア−シェル配置であり、多孔質支持体がコアであり、BaSOがシェルである。この配置は、最適な促進剤作用のために、BaSOがPGMにごく近接することを可能にするのに十分である。機械的融合により調製された触媒担体の熱的安定性は、原位置での化学形成により調製された触媒担体ほど明確ではない。しかしながら、本明細書に示されるように、両方の生成方法は、TWC触媒等の触媒において、改善された排出量の低減を有する触媒担体をもたらす。
【0037】
白金族金属(PGM)等の貴金属は、任意に、BaSO/多孔質支持体触媒担体を含む触媒組成物を作製するために使用され得る。白金族金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、およびイリジウムを含む。白金族金属の組み合わせも可能である。適切な濃度は当該技術分野において周知である。例えば、約0.1重量%〜約15重量%の範囲の貴金属は、排出量の低減用途に有用である。本明細書に示されるように、ウォッシュコートを介してモノリス等の基材上に材料を分散する前にPGMが触媒担体に熱的に固定される場合、炭化水素の排出量の減少が改善される。ある実施形態では、触媒担体は、大きい細孔のアルミナ上に硫酸バリウム層を備え、硫酸バリウムは、3.5重量%〜約5重量%の範囲であり、パラジウム等のPGMをさらに含む。ある実施形態では、触媒担体は、大きい細孔のアルミナ上に硫酸バリウム層を備え、硫酸バリウムは、約3.5重量%であり、担体はパラジウムをさらに含む。ある実施形態では、3.5重量%のBaSO/熱的に安定したアルミナ触媒担体は、本明細書の別の箇所に記載される原位置プロセスにより調製される。
【0038】
したがって、本明細書に記載されるBaSO/多孔質支持体触媒担体は、任意に、乾燥/焼成した支持体材料上に貴金属を堆積させるために、貴金属塩でさらに処理され得る。例示的なプロセスでは、触媒担体に貴金属塩溶液を含浸させた後、得られた含浸させた触媒担体を焼成することができる。例えば、硫酸バリウムの原位置での化学形成により調製された焼成した触媒担体または機械的融合により調製された触媒担体に、貴金属塩溶液を含浸させた後、焼成することができる。原位置での化学形成プロセスの代替えプロセスでは、貴金属塩は、乾燥/焼成ステップの前に添加され得る。よって、1つの含浸ステップにおける酢酸バリウムまたは炭酸バリウム等の塩基性金属塩と1つ以上の貴金属塩との組み合わせ、それに続く焼成ステップも想定される。有用な貴金属塩は、硝酸パラジウム(II)等を含む。
【0039】
表1および2は、本開示による例示的な触媒担体と比較した、例示的な市販の開始材料の材料特性を要約する。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
開始材料1および2は、2つとも市販の大きい細孔のアルミナである。表1および2に示されるように、熟成前後の開始材料1および2におけるマイクロ細孔容積は小さいままである。低マイクロ細孔容積を有するアルミナの使用は、マイクロ細孔が崩壊したときの封止により白金族金属(PGM)の損失を最小にする一因となる。
【0043】
表1に示されるように、実施例1(硫酸バリウムの原位置での化学形成により調製され、PGMを含む例示的な担体触媒)は、表面積および平均細孔半径において、開始材料と比較可能である。実施例2(機械的融合による調製)も、開始材料と比較して、比較可能な平均細孔半径および表面積を有する。表2に示されるように、実施例3(硫酸バリウムの原位置での化学形成により調製され、PGMを含み、BaSO/アルミナ触媒担体の調製において単一焼成ステップを使用する例示的な担体触媒)も、表面積および平均細孔半径において、開始材料と比較可能である。
【0044】
使用方法
【0045】
本明細書に記載されるように調製された触媒担体は、排出処理または制御システムに有用な排気ガス浄化触媒の調製に使用され得る。排気ガス浄化触媒組成物は触媒担体を含み、任意に、界面活性剤、酸素貯蔵成分等の他の任意の材料との混合でPGMを支持する。触媒組成物は、当該技術分野において公知のいずれかの方法を使用して、1つ以上の基材上に堆積され得る。例示的な基材は、セラミックもしくは金属性のハニカムフロースルー基材またはモノリスを含むが、これらに限定されない。触媒組成物を基材上に堆積させるための例示的な方法としては、ウォッシュコート、吸収、含浸、物理吸着、化学吸着、沈着、および前述の堆積法のうちの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される用語「ウォッシュコート」は、例えば、基材上に堆積された触媒的に活性な混合組成物の層、または複数の層を説明する。基材は、異なる材料で順次ウォッシュコートされ、それによって多層触媒基材を形成することができる。
【0046】
触媒担体および他の触媒組成物の成分を含む得られた基材は、例えば、内部燃焼エンジンから放出されたガス生成物を処理および/または浄化するために使用される排出処理システムの一部であり得る。例えば、本明細書に示されるように、本開示の触媒担体を含むTWC多層触媒は、一酸化炭素、炭化水素、およびNOxの排出量低減に関して、改善された排出量制御を示す。理論に束縛されるものではないが、改善は、少なくとも一部、BaSO/多孔質支持体触媒担体の改善された熱的安定性をもたらすと考えられる。
【0047】
内部燃焼エンジンから等の排気ガス流を処理するための例示的な排出処理システムは、最密結合触媒基材(即ち、エンジンにごく近接して位置付けられる)と、最密結合触媒基材よりエンジンからさらに下流に位置付けられる第2の触媒基材(例えば、床下触媒基材)とを含むことができる。例示的な実施形態は、図12Aおよび12Bに示される。図12Aは、単一キャニスター3を備える排出システム1を示す。最密結合触媒基材5および下流の触媒基材7は、キャニスター4内に収容される。エンジン9は、排出システム1の上流に位置する。図12Bは、最密結合触媒基材15を備える第1のキャニスター13と、下流の触媒基材19を備える第2のキャニスター17とを備える排出システム11を示す。エンジン21は、排出システム11の上流に位置する。本開示の触媒担体の使用は、最密結合触媒において特に有益であると想定される。他の排出処理システムの構成および他の触媒担体の使用は、当業者に容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0048】
図示される実施形態は単に例示的であることを理解するべきであり、論じられる材料、組成物、および方法の範囲を制限するものと見なされるべきではない。
【0049】
実施例1:硫酸を使用したPd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナの調製
【0050】
以下の実施例は、乾燥/焼成の2つのステップを使用して調製された触媒担体材料の調製を説明する。
【0051】
ステップ1.BaO 3.35%/アルミナの調製
【0052】
大きい細孔のガンマアルミナ(98%、平衡水)(223.87kg)を次の水性プレミックスで処理した(塩は水中の重量%で表される):約90%の初期湿潤度点を達成するために水で希釈された24%の酢酸バリウム(31.68kg)およびDI水(120.78kg)。ミキサーに移動するために洗浄脱イオン(DI)水(2kg)を使用した。大きい細孔のガンマアルミナの含浸は、所望のBaO 3.35%/アルミナ生成物を生成するために、含浸させた材料をか焼炉(600℃、実質的に全ての水を除去するのに十分な時間)に供給するプラスチック製ドラム(60%固形湿潤調製物)に移動する前に、20分間混合することにより達成された。
【0053】
ステップ2、BaSO5%/熱的に安定したアルミナの調製
【0054】
BaO3.35%/アルミナ(98%、平衡水)(231.63kg)を、約90%の初期湿潤度点まで、約5.8%の硫酸水溶液(8.40kg、BaO+70%過剰に対して化学量論的)およびDI水(136.29kg)で処理した。ミキサーに移動するために、洗浄DI水(2kg)を使用した。BaSOを形成するために、20分間混合することにより、含浸および酸/塩基反応を達成し、60%の固形湿潤調製物を得た。次いで、所望のBaSO5%/熱的に安定したアルミナ生成物を生成するために、含浸させた材料をか焼炉(600℃、実質的に全ての水および揮発物を除去するのに十分な時間)に供給した。生成物の形態:粉末から微細な褐黒色の顆粒;25℃の水中スラリーのpH値:4;バルク密度:600〜1,200kg/m
【0055】
ステップ3.Pd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナ
【0056】
以下のように貴金属をステップ2の触媒担体材料上に堆積させた。BaSO5%/熱的に安定したアルミナ(98%、平衡水)(66.71kg)を、次の水性プレミックスで処理した(塩は水中の重量%として表される):約90%の初期湿潤度点まで、20.63%の硝酸パラジウム(13.20kg)およびDI水(24.49kg)。ミキサーに移動するために、洗浄DI水(2kg)を使用した。所望のPd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナ生成物(サンプル1)を生成するために、含浸させた材料をか焼炉(600℃、実質的に全ての水を除去するのに十分な時間)に供給するプラスチック製ドラム(64%固形湿潤調製物)に移動する前に、20分間混合することにより含浸を達成した。
【0057】
図1は、大きい細孔のガンマアルミナ開始材料のXRDパターンを提供する。図2は、1100℃で3時間、空気中で焼成させることより熟成させた同じ材料のXRDパターンを示す。比較は、望ましくないアルファアルミナ相の形成を示す。表3を参照。
【0058】
図3は、調製されたままのPd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナ(サンプル1)のXRDパターンを提供する。図4は、1100℃で3時間、空気中で焼成させることより熟成させた同じ材料のXRDパターンを示す。生成物の改善された熱的安定性を表3に示し、これは、熟成後にデルタおよびシータアルミナ相が形成され、アルファアルミナが形成されなかったことを示す。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例2:機械的に融合された(MF)市販のBaSOによるPd4%/BaSO5%/アルミナの調製
【0061】
2.0(KW−Hr)/Kgの比エネルギーを達成するために、5.79Kgの大きい細孔のガンマアルミナと0.305Kgのバルク硫酸バリウム(d50=2ミクロン)を、Hosokawa Micron Powder Systems(Summit,New Jersey)のNobilta300(商標)反応装置を使用して、81分間機械的に融合させて、BaSO5%/アルミナを得る。この後、一般に実施例1のステップ3を繰り返し、所望の生成物であるPd4%/BaSO5%/アルミナMF(サンプル2)を得る。
【0062】
図5は、調製されたPd4%/BaSO5%/アルミナMF(サンプル2)XRDパターンを提供する。図6は、1100℃で3時間、空気中で焼成させることより熟成させた同じ材料のXRDパターンを示す。デルタおよびシータアルミナ相の形成が検出された。しかしながら、この材料は、アルファアルミナも観察されたため、サンプル1と同等に熱的に安定ではない。表4を参照。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例3 実施例1および実施例2の触媒担体を使用した多層触媒
1A;実施例1を使用した触媒コーティングの形成
【0065】
触媒スラリー1Aは、以下のように調製された。分散タンク中のDI水(5.54kg)に低HLB界面活性剤(5g)、水中24%の酢酸バリウム(1.45kg)、水中45%のサンプル1の懸濁液(2.58kg)、および酸素貯蔵成分(3.56kg)を添加し、続いてスラリー上に貴金属(即ちPGM)分散液として水中20%の硝酸パラジウム(20.2g)を後添加した。このパラジウムは、触媒担体上に前に分散された4%のパラジウムの追加であり、酸素貯蔵成分を活性化することを目的としている。得られたスラリーを10分間混合し、次いで湿式粉砕装置でd90=8ミクロンの粒径に粉砕された。粉砕機からホモジナイザー/せん断ミキサーに移動するために、洗浄DI水(356g)を使用した。37%の固形湿潤調製物中に成分を完全に分散させるために、得られたスラリーを10分間混合した。
【0066】
2A:実施例2を使用した触媒コーティングの形成
【0067】
触媒スラリー2Aは、サンプル1の代わりにサンプル2を使用して、実施例1Aのように調製された。
【0068】
多層触媒は、基材をウォッシュコートすることにより調製され、中間コートは、触媒スラリー1A(触媒1)または触媒スラリー2A(触媒2)のいずれかから調製された。中間コートが硫酸バリウムアルミナ触媒担体の代わりにアルミナを含む対照多層触媒(対照触媒1)を調製した。他の層は、3つの触媒間で同じであった。そのように調製された全ての多層触媒は、30g/ftの貴金属が装填され、貴金属比は0/9/1(Pt/Pd/Rh)(=0g/ftPt;27g/ftPdおよび3g/ftRh)であった。
【0069】
標準的な高温熟成サイクルであるV265欧州サイクル(European cycle)に従い、触媒を1050℃で80時間熟成させた後、EU2000欧州試験プロトコルを使用して、3つの多層触媒のエンジン排出量を試験した。
【0070】
図7は、得られたエンジン排出量データを示す。ベースラインの触媒(対照触媒1)に対してHC、NOx、およびCOレベルの減少が、触媒1および触媒2の両方において観察され、性能特徴の改善を示す。具体的に、1050℃での熟成後のHC排出量は、対照に対して、触媒2(サンプル2を含む)に関しては14%、そして触媒1(サンプル1を含む)に関しては20%減少した。熟成後のHC排出量は、BaSOの原位置での化学形成により調製されたサンプル1においてより大きく改善する。触媒1および触媒2の両方も、対照と比較して、NOx排出量の減少を示す。NOx排出量は、触媒2においてより大きく改善された。一酸化炭素の排出量の減少も、触媒1および触媒2において改善された。
【0071】
これらのデータは、サンプル1および2に例示される触媒担体は、アルミナ単独と比較して、熱的安定性を改善し、対照触媒1と比較して、熟成後のPd−触媒担体の触媒活性の改善をもたらすことを示す。
【0072】
実施例4:CO化学吸着/IRデータの比較
【0073】
CO後のNOの赤外分析を使用して、Pd表面(活性部位)に関して1050℃で熟成した後の触媒1を測定した。図8は、触媒1を対照触媒1と比較した、赤外分光法により測定された化学吸着データを示す。図8に示されるように、触媒1のパラジウム(Pd)吸着は、BaSOを含まない触媒支持体上に同じパラジウム濃度を有する対照触媒1より約40%多いPd吸着で測定された。この結果は、サンプル1等の原位置での硫酸バリウム形成を使用して作製された触媒を使用することにより、40%多い活性部位が利用可能であることを示す。
【0074】
実施例5:硫酸バリウムおよびPGMの熱的固定
【0075】
エンジン排出量に対する支持体の種類およびPGMの焼成の作用を評価するために、4つの多層触媒基材を調製した(表5を参照)。多層触媒は、基材をウォッシュコートすることにより調製され、中間コートは、表5の触媒担体を使用して調製された。他の層は触媒の間で同じであった。そのように調製された全ての多層触媒は、30g/ftの貴金属が装填され、貴金属比は0/9/1(Pt/Pd/Rh)(=0g/ftPt;27g/ftPdおよび3g/ftRh)であった。対照触媒2の参照触媒基材の中間層は、以下のように調製された。Pdは、アルミナ支持体に4%まで含浸させた。次いで、支持された触媒を、界面活性剤、酢酸バリウム、および酸素貯蔵成分でスラリー化し、次いで、実施例3に記載されるようにスラリー上に分散液として20%の硝酸パラジウムを後添加し、後に焼成される第1層を備えたモノリス上にウォッシュコートした。次いで、第3層が適用され、コートされたモノリスを焼成した。
【0076】
触媒3の中間層は、以下のように調製された。BaO/アルミナ触媒担体上にPdを4%まで含浸させ、Pdを熱的に固定するために焼成した。次いで、熱的に固定したPd−BaO/アルミナ材料を、界面活性剤、酢酸バリウム、および酸素貯蔵成分でスラリー化し、次いで、実施例3に記載されるようにスラリー上に分散液として20%の硝酸パラジウムを後添加し、後に焼成される第1層を備えたモノリス上にウォッシュコートした。次いで、第3層が適用され、コートされたモノリスを焼成した。
【0077】
BaSO5%/熱的に安定したアルミナ触媒担体上に含浸させた4%のPdがBaSOの原位置での化学形成により調製されたことを除き、触媒4は参照触媒と同じように調製された。参照触媒(対照触媒2)と同様、次いで、Pd触媒担体材料を、界面活性剤、酢酸バリウム、および酸素貯蔵成分でスラリー化し、次いで、実施例3に記載されるようにスラリー上に分散液として20%の硝酸パラジウムを後添加し、後に焼成される第1層を備えたモノリス上にウォッシュコートした。次いで、第3層が適用され、コートされたモノリスを焼成した。
【0078】
触媒5の中間層は、4%のPdがBaSO5%/熱的に安定したアルミナ触媒担体上に含浸されたことを除き、触媒3について記載されるように調製された。次いで、焼成によりPd含浸触媒担体を熱的に固定した後、材料を、界面活性剤、酢酸バリウム、および酸素貯蔵成分でスラリー化し、次いで、実施例3に記載されるようにスラリー上に分散液として20%の硝酸パラジウムを後添加し、第1層を備えたモノリス上にウォッシュコートした。次いで、モノリスを焼成した。次いで、第3層が適用され、コートされたモノリスを焼成した。
【0079】
【表5】
【0080】
HC排出量は、V265欧州サイクルを使用して、1050℃で80時間、エンジン熟成後に評価された。データを図9に示す。触媒4および5の対照触媒2および触媒3に対する比較は、HC排出量の改善が、貴金属がBaSO/熱的に安定したアルミナ触媒担体上で支持されるときに得られることを示す。触媒4の触媒5に対する比較は、スラリー化および基材上へのウォッシュコート前に貴金属をBaSO/熱的に安定したアルミナ触媒担体に熱的に固定することによってもHC排出量の改善に寄与することを示す。したがって、これらのデータは、触媒担体としてBaSO/熱的に安定したアルミナを使用すること、およびPGMを触媒担体に熱的に固定することのそれぞれがHC排出量の改善に寄与することを示す。
【0081】
実施例6:硫酸バリウムの装填
【0082】
調製された4つの多層触媒基材において、硫酸バリウム量のHC排出量に対する作用を検査した(表6を参照)。触媒は3層であり、第1および第3の層は同じであった。中間層は、表6に示されるように、使用された触媒担体に関して異なった。4重量%にパラジウムを触媒担体上に分散し、焼成した。次いで、得られたPd触媒担体を、界面活性剤、酢酸バリウム、および酸素貯蔵成分でスラリー化し、次いで、実施例3に記載されるようにスラリー上に分散液として20%の硝酸パラジウムを後添加し、第1層を備えたモノリス上にウォッシュコートした。次いで、モノリスを焼成した。次いで、第3層が適用され、コートされたモノリスを焼成した。
【0083】
調製された全ての多層触媒は、30g/ftの貴金属が装填され、貴金属比は0/9/1(Pt/Pd/Rh)(=0g/ftPt;27g/ftPdおよび3g/ftRh)であった。これらの触媒は、一般に、実施例3および5の多層触媒のように調製された。
【0084】
【表6】
【0085】
HC排出量は、V265欧州サイクルを使用して、1050℃で80時間、エンジン熟成した後に評価された。データを図10に示す。データは、約10%未満のBaSOを有するアルミナの触媒担体を備える触媒基材が、触媒担体としてアルミナのみ(BaSOなし)を含む対照触媒3の触媒基材と比較して、熟成後のHC排出量を改善することを図示する。
【0086】
実施例7 硫酸を使用したPd4%/BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナの調製
【0087】
アルミナに酢酸バリウムを含浸させた後の焼成ステップの必要性を検査するために、以下の材料を調製した。
【0088】
ステップ1.BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ(単一焼成ステップ)
【0089】
大きい細孔のガンマアルミナ(98%、平衡水)(228.0kg)を次の水性プレミックスで処理した(塩は水中の重量%で表される):DI水(62kg)で希釈した24%の酢酸バリウム(37.0kg)。ミキサーに移動するために、洗浄脱イオン(DI)水(2kg)を使用した。次のステップに進むために、移動前に20分間混合することにより含浸を達成した。次いで、焼成されなかった酢酸バリウムを含浸させた大きい細孔のアルミナを、約90%の初期湿潤度点まで、約8.5%の硫酸水溶液(5.8kg、BaO+70%過剰に対して化学量論的)およびDI水(62.0kg)で処理した。ミキサーに移動するために、洗浄DI水(2kg)を使用した。BaSOを形成するために、20分間混合することにより、含浸および酸/塩反応を達成し、58%の固形湿潤調製物を得た。次いで、含浸させた材料を焼成(600℃、酢酸バリウムおよび酸の反応中に形成された実質的に全ての水およびあらゆる揮発物を除去するのに十分な時間)し、所望のBaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ生成物を得た。生成物の形態:粉末から微細な白色の顆粒;25℃の水中スラリーのpH値:3;バルク密度:600〜1,200kg/m
【0090】
ステップ2.Pd4%/BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ
【0091】
BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ(98%、平衡水)(66.71kg)を、次の水性プレミックスで処理した(塩は水中の重量%として表される):約90%の初期湿潤度点まで、20.63%の硝酸パラジウム(13.20kg)およびDI水(24.49kg)。ミキサーに移動するために洗浄DI水(2kg)を使用した。所望のPd4%/BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ生成物(サンプル3)を生成するために、含浸させた材料を600℃(実質的に全ての水を除去するのに十分な時間)に焼成したプラスチック製ドラム(64%固形湿潤調製物)に移動する前に、20分間混合することにより含浸を達成した。生成物の形態:粉末から微細な褐黒色の顆粒;25℃の水中スラリーのpH値:4;バルク密度:600〜1,200kg/m
【0092】
図11は2つのXRDパターンを提供する。上の線は、調製されたままのサンプル3(Pd4%/BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ)のXRDパターンである。下の線は、空気中で、1100℃で3時間焼成することによって熟成後のサンプル3のXRDパターンを示す。生成物の熱的安定性を下の表7に示し、これは、デルタおよびシータアルミナ相が形成され、熟成後アルファアルミナが形成されなかったことを示す。これらのデータは、BaSO/熱的に安定したアルミナ触媒担体が硫酸で処理する前に酢酸バリウムを含浸させた材料の焼成ステップを必要とすることなく調製され得ることを示す。
【0093】
【表7】
【0094】
実施例8:サンプル3またはサンプル1を含む触媒のエンジンデータ
【0095】
多層触媒である触媒9および10は、基材をウォッシュコートすることにより調製され、中間コートは、サンプル3(Pd4%/BaSO3.5%/熱的に安定したアルミナ;ステップ1で単一焼成ステップ;触媒9)またはサンプル1(Pd4%/BaSO5%/熱的に安定したアルミナ;ステップ1で2回の焼成ステップ;触媒10)のいずれかを含む触媒スラリーを使用して調製された。2つの触媒間の他の層は同じである。触媒9および触媒10は、最密結合触媒、続く下流触媒(対照触媒4)からなる排出システムにおいて、最密結合触媒として配置された。例えば、図12Aを参照。触媒9および触媒10の両方は、40g/ftの貴金属が装填され、貴金属比は0/19/1(Pt/Pd/Rh)=38g/ftPd、および2g/ftRhであった。対照触媒4は、3g/ftの貴金属が装填され、貴金属比は0/2/1(Pt/Pd/Rh)(=0g/ftPt、2g/ftPd、および2g/ftRhであった。
【0096】
排出システムを、70秒サイクル中、温度および空燃比の4モードサイクルを使用して熟成させた(Ford FNA再サイクル;2.3L融合エンジン)。サイクルを連続して100時間行い、その後、連邦試験プロトコル(Federal Test Protocol)75(FTP75)およびUS06(US06は、触媒システムに対してより高い空間速度を利用し、これはより厳密な排出低減試験である)の2つの異なるプロトコルを使用して、排出量を試験した。
【0097】
相対的な排出量データを図13に示す。触媒9の排出量は、FTP75プロトコルでは、総炭化水素、非メタン炭化水素、一酸化炭素、および窒素酸化物において、触媒10に対して良好である。高い空間速度を有するUS06プロトコルでは、触媒10に対する触媒9の排出量の改善は、より顕著である。具体的には、触媒9の排出量は、US06プロトコルでは、総炭化水素、非メタン炭化水素、および一酸化炭素において、触媒10に対してより良く、US06プロトコルでは、窒素酸化物排出量は、触媒10に対して、触媒9においてほぼ同じかわずかに減少した。これらのデータは、3.5%の硫酸バリウムを有し、実施例7に記載されるように調製された触媒担体が炭化水素点火触媒活性の改善を示すことを示す。
【0098】
本明細書に論じられる材料および方法を記載する文脈における用語「a」および「an」ならびに「the」および類似する指示対象の使用は、本明細書に特に記載がない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、単数および複数の両方を網羅すると解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の記述は、特に記載のない限り、単に、その範囲内に入るそれぞれの別個の値を個別に指す簡単な方法としての機能を果たし、それぞれの別個の値は、本明細書に個別に記述されるかのように本明細書に組み込まれ得る。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特に記載のない限り、または明らかに文脈と矛盾しない限り、あらゆる適切な順序で行うことができる。本明細書に提供されるいずれかもしくは全ての実施例または例示的な用語(例えば「等」)は、単に材料および方法をより良く明らかにすることが意図され、特に主張されない限り、本範囲を限定するものではない。本明細書において、いかなる用語も、主張されない要素が本開示の材料および方法の実践に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0099】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照により個別にかつ具体的に組み込まれるものとして示されるのと同じ程度に、全ての目的において、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
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図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13