(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のステルスダイシング用フィルム基材、並びにこれを用いたステルスダイシング用フィルム及び電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0026】
[ステルスダイシング用フィルム基材及びステルスダイシング用フィルム]
図1〜
図4を参照して、ステルスダイシング用フィルム1について説明し、該説明を通じて本発明のステルスダイシング用フィルム基材について詳述する。
図1は、ステルスダイシング用フィルムの構成例を示す概略断面図である。
【0027】
ステルスダイシングは、シリコンウエハの内部にレーザを集光することでウエハ内に改質層(クラック等)を形成し、テープエキスパンド等で外部応力を与えてチップ分割を行なうダイシング方法である。
【0028】
図1に示すように、ステルスダイシング用フィルム1は、ステルスダイシング用フィルム基材11(以下、基材11という。)と、基材11上に設けられた粘着層12とを備えている。
基材11は、単層又は多層のいずれに構成されてもよい。基材11が多層に構成される場合、基材11は、例えば
図2に示すように、ステルスダイシング用フィルムを構成する粘着層12と接する層11Xと中間層11Y(又は11Z)と内層11Z(又は11Y)とを重層した3層構造を含む構造に構成することができる。
【0029】
ステルスダイシング法では、ダイシング用フィルムの伸長力を利用し、ウエハをチップ化する。近年注目されているステルスダイシング法では、微小サイズの半導体チップを生産する場合、従来から広く利用されているブレードダイシングやレーザダイシングに使用されているダイシングシートがそのまま用いられてきた。しかしながら、このような従来のダイシングシートを使用すると、拡張初期の強度(初期応力)が低過ぎる場合がある。フィルムの初期応力があまり低すぎると、ウエハ内部に形成された改質部に伸長力が充分に伝達しないため、ウエハをチップ化することが困難となる。すなわち、初期応力が充分に得られないフィルムでは、各チップをダイシングラインで分割することができず、チップが複数個繋がった状態となり、半導体チップの生産歩留まりが低下するおそれがある。そのため、本発明においては、ステルスダイシング用フィルム基材のウエハ分断性(すなわち初期強度(初期応力ともいう))及び拡張性を改善するため、前記基材の厚みを所定の厚みに保持し、前記基材の初期応力及び拡張率を所定の範囲に調節することで、分断性と拡張性とのバランスが図られている。
特に基材が多層に構成される場合、前記同様にウエハ分断性(初期強度)及び拡張性を改善するため、粘着層に接する層Xに対して層11Y(第1の層Y)と層11Z(第2の層Z)とを重層するようにし、基材の初期応力を9MPa以上19MPa以下の範囲に調整することで、分断性と拡張性とのバランスが図られる。また、本発明のフィルム基材は、重層構造としながら、層の透明性は維持されており、レーザの拡散や吸収が少なく、ステルスダイシングによる加工適性に優れている。
【0030】
ステルスダイシング用フィルム1は、一方面が粘着面に構成され、レーザ光の照射によりウエハに形成されたクラックを起点に非接触でウエハを分断(分離)する、いわゆるステルスダイシングに用いられる。具体的には、
図3Aに示すように、ステルスダイシング用フィルム1をダイシングテーブル6上に置いてウエハWの裏面に貼り付け、ステルスダイシング用フィルム1を介してレーザを照射する。レーザ照射によりウエハWの内部にレーザ光Lを導光し、
図3Bに示すように、レーザ光によりウエハWの内部に改質領域W1を複数形成する。その後、
図4に示すように、ステルスダイシング用フィルム1に外部応力を与えて矢印方向に拡張することにより、前記改質領域W1を起点にウエハWを個々のチップに分離する。
【0031】
なお、ステルスダイシング用フィルム1は、上記のステルスダイシングのみならず、ダイシングブレードによるダイシング方法やレーザ光を利用した他のダイシング方法にも適用可能である。
【0032】
(基材)
基材は、単層又は2層以上の多層のいずれに構成されてもよい。
〜A.単層構成〜
まず、基材が単層構造に構成されている場合を説明する。
図1は、基材11が単層構造に構成された例を示す。
図1では、基材11は、エチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体のマグネシウムアイオノマー及び/又はエチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体の亜鉛アイオノマーを用いて形成されたアイオノマー樹脂基材である。
【0033】
マグネシウムアイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の少なくとも一部がマグネシウムで中和されたマグネシウムアイオノマーが好ましい。共重合体においては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、透明性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体を使用するのが好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体又は3元ランダム共重合体である。
【0034】
前記アイオノマー樹脂のうち、好適なマグネシウムアイオノマーは、高圧ラジカル重合法で合成されたエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体をベースとし、前記(メタ)アクリル酸の共重合比を10質量%を超えて30質量%以下の範囲としたものを、マグネシウムイオンで中和したものである。マグネシウムイオンによる中和度は0%を超えて60%の範囲であり、この範囲では拡張性と分断性とに優れる。好ましい中和度は10%以上60%以下の範囲であり、この範囲内であると透明性に優れる。更に好ましい中和度は10%以上40%以下の範囲であり、この範囲内であると拡張性、分断性及び透明性のバランスに優れる。
中でも、マグネシウムアイオノマー中における(メタ)アクリル酸の共重合比は、拡張性、成形加工性、分断性、及び透明性のバランスが優れ、工業的に入手しやすい点で、10質量%を超えて20質量%以下がより好ましい。
【0035】
亜鉛アイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の少なくとも一部が亜鉛で中和された亜鉛アイオノマーが好ましい。共重合体は、前記マグネシウムアイオノマーと同様、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよいが、透明性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体が好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体又は3元ランダム共重合体である。
【0036】
好適な亜鉛アイオノマーは、高圧ラジカル重合法で合成されたエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体をベースとし、前記(メタ)アクリル酸の共重合比を10質量%を超えて30質量%以下の範囲としたものを、亜鉛イオンで中和したものである。亜鉛イオンによる中和度は0%を超えて60%の範囲であり、この範囲では拡張性と分断性とに優れる。好ましい中和度は10%以上60%以下の範囲であり、この範囲内であると透明性に優れる。更に好ましい中和度は10%以上40%以下の範囲あり、この範囲内であると拡張性、分断性及び透明性のバランスに優れる。
中でも、亜鉛アイオノマー中における(メタ)アクリル酸の共重合比は、拡張性、成形加工性、分断性、及び透明性のバランスが優れ、工業的に入手しやすい点で、10質量%を超えて20質量%以下がより好ましい。
【0037】
アイオノマーを構成するエチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体は、少なくともエチレンとアクリル酸又はメタクリル酸とが共重合した共重合体であり、さらに第3の共重合成分が共重合した3元以上の多元共重合体であってもよい。
【0038】
多元共重合体を形成するモノマーとしては、エチレン及び該エチレンと共重合可能な前記(メタ)アクリル酸のほかに、第3の共重合成分として、不飽和カルボン酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3−ブタジエン、ペンテン、1,3−ペンタジエン、1−ヘキセン等)、ビニル硫酸やビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有1,2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が共重合されていてもよい。
中でも、前記第3の共重合成分としては、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部位の好ましい炭素数は1〜4)がより好ましい。
【0039】
前記第3の共重合成分に由来の構成単位のエチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体中における含有比率は、7質量%未満の範囲が好ましい。
本発明におけるアイオノマー樹脂は、不飽和カルボン酸エステルを含んでもよいが、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の共重合体中に占める含有比率を7質量%未満とすることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有比率が7質量%未満であると、ダイシング用フィルムの応力を保つのでより優れた分断性が得られる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位の含有比率としては、5質量%以下とすることが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有しない(含有比率:ゼロ%[質量比])ことがより好ましい。
【0040】
〜B.多層構成〜
次に、基材が多層構造に構成されている場合を説明する。
基材11は、
図2に示すように、粘着層12と接する層11Xと層11Y(第1の層Y)と層11Z(第2の層Z)とが少なくともこの順に重層された重層構造、及び前記粘着層12と接する層Xと層11Z(第2の層Z)と層11Y(第1の層Y)とが少なくともこの順に重層された重層構造から選ばれる3層以上からなる多層構造を設けて構成することができる。
【0041】
基材11は、
図2に示すように、その一方の側においてウエハを固定化するための粘着層12と接触させることで、ステルスダイシング用フィルムを構成することができる。ステルスダイシング用フィルムとした場合、粘着層12は、
図2に示すように、基材11の重層構造における「粘着層と接する層11X」と密着される。そのため、粘着層と接する層11Xは、重層構造の表層(最外層)に位置するように設けられている。
【0042】
基材11が、粘着層と接する層Xと第1の層Yと第2の層Zとがこの順に配された重層構造を有している場合、第1の層Yが3層構造を形成する中間層をなす。また、この重層構造は、粘着層と接する層Xと第1の層Yと第2の層Zとの3層に加え、粘着層と接する層Xと第1の層Yの間又は第1の層Yと第2の層Zの間、あるいは粘着層と接する層X/第1の層Y/第2の層Zの3層構造の一端である第2の層Z上に、さらに他の層が設けられて4層以上の重層構造に構成されてもよい。
【0043】
また、基材11は、粘着層と接する層Xと第1の層Yと第2の層Zとを有する重層構造の他の態様として、第1の層Yと第2の層Zとが逆に配置され、粘着層と接する層Xと第2の層Zと第1の層Yとがこの順に配された重層構造に構成されてもよい。この場合、第2の層Zが3層構造を形成する中間層をなす。この重層構造の場合も上記構造の場合と同様に、粘着層と接する層Xと第2の層Zの間又は第2の層Zと第1の層Yの間、あるいは粘着層と接する層X/第2の層Z/第1の層Yの3層構造の一端である第1の層Y上に、さらに他の層が設けられて4層以上の重層構造に構成されてもよい。
【0044】
[粘着層と接する層X]
粘着層と接する層Xは、
図2に示すようにウエハを固定化するための、例えば粘着剤からなる粘着層12と密着される層であり、少なくとも樹脂(本明細書中において「樹脂A」ともいう)を含有する。密着の方法としては、層X面に粘着剤を公知の方法、例えばグラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いて直接塗布する方法、あるいは剥離シート上に粘着剤を上記公知の方法で塗布して粘着層を設けた後、これを層Xに貼着し、粘着層を転写する方法等を用いることができる。層Xの樹脂Aとしては、極性を有し、紫外線硬化性に好適に構成される粘着層12の粘着剤と相性のよい樹脂が好ましく用いられる。粘着層12は、後述するように紫外線硬化性に構成された層が好適であり、このような場合は紫外線硬化性の組成と良好な密着が保てる樹脂を用いて好適に構成することができる。
【0045】
粘着層と接する層Xは、樹脂Aを含む。前記樹脂Aの曲げ剛性率としては、100MPa以上350MPa以下の範囲であることが好ましい。樹脂Aの曲げ剛性率が前記範囲内にあることは、ステルスダイシングによる加工(分断加工、特に初期応力の維持)に適していることを示す。中でも、樹脂Aの曲げ剛性率は、ウエハ分断性の点で、150MPa以上350MPa以下がより好ましく、180MPa以上350MPa以下が更に好ましい。
【0046】
粘着層と接する層Xに含まれる樹脂Aとしては、熱可塑性樹脂が好ましく、より好ましくはオレフィン系重合体であり、例えばエチレン及び不飽和カルボン酸を共重合成分として含むエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体である。この中でもエチレンと不飽和カルボン酸とが共重合した2元共重合体(エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体)のアイオノマーが好適に用いられる。エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体のアイオノマーを用いることで、透明性(ヘイズ及び全光線透過率)及び分断性に優れる。
【0047】
アイオノマーのベースポリマーとなる前記エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体において、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合は、1質量%以上35質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上25質量%以下の範囲がより好ましく、特に好ましくは10質量%以上20質量%以下の範囲である。不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が1質量%以上であることは、この構成単位を積極的に含むことを意味し、不飽和カルボン酸の含有により透明性や接着性が良好になる。不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が35質量%以下であることで、実用的な耐熱性が維持される。
また、エチレンから導かれる構成単位の含有割合としては、99質量%以上65質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは90質量%以上80質量%以下の範囲である。
【0048】
エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル等が挙げられ、特に、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0049】
アイオノマーのベースポリマーとなる2元共重合体中のカルボキシル基を中和する金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン等の多価金属のイオン等が挙げられる。
これらの中でも、マグネシウムイオン又は亜鉛イオンがより好ましい。これら金属イオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アイオノマーは、2元共重合体中のカルボキシル基の100%以下の範囲で前記金属イオンにより中和され、その中和度は90%以下が好ましく、より好ましくは20%以上85%以下の範囲である。
【0050】
マグネシウムアイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の少なくとも一部がマグネシウムで中和されたマグネシウムアイオノマーが好ましい。共重合体においては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよいが、透明性を考慮すると2元ランダム共重合体が好ましい。
【0051】
前記アイオノマー樹脂のうち、好適なマグネシウムアイオノマーは、高圧ラジカル重合法で合成されたエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体をベースとし、前記(メタ)アクリル酸の共重合比を10質量%を超えて30質量%以下の範囲としたものを、マグネシウムイオンで中和したものである。マグネシウムイオンによる中和度は0%を超えて60%の範囲であり、この範囲では拡張性と分断性とに優れる。好ましい中和度は10%以上60%以下の範囲であり、この範囲内であると透明性に優れる。更に好ましい中和度は10%以上40%以下の範囲あり、この範囲内であると拡張性、分断性、及び透明性のバランスに優れる。
中でも、マグネシウムアイオノマー中における(メタ)アクリル酸の共重合比は、拡張性、成形加工性、分断性、及び透明性のバランスが優れ、工業的に入手しやすい点で、10質量%を超えて20質量%以下がより好ましい。
【0052】
亜鉛アイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の少なくとも一部が亜鉛で中和された亜鉛アイオノマーが好ましい。共重合体は、前記マグネシウムアイオノマーと同様、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよいが、透明性を考慮すると2元ランダム共重合体が好ましい。
【0053】
好適な亜鉛アイオノマーは、高圧ラジカル重合法で合成されたエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体をベースとし、前記(メタ)アクリル酸の共重合比を10質量%を超えて30質量%以下の範囲としたものを、亜鉛イオンで中和したものである。亜鉛イオンによる中和度は0%を超えて90%の範囲であり、この範囲では拡張性と分断性とに優れる。好ましい中和度は10%以上90%以下の範囲であり、この範囲内であると透明性に優れる。
中でも、亜鉛アイオノマー中における(メタ)アクリル酸の共重合比は、拡張性、成形加工性、分断性、及び透明性のバランスが優れ、工業的に入手しやすい点で、10質量%を超えて20質量%以下がより好ましい。
【0054】
粘着層と接する層Xを形成するアイオノマーとしては、入手のしやすさの点で、エチレン・アクリル酸共重合体のマグネシウム(Mg)アイオノマー又は亜鉛(Zn)アイオノマー、及びエチレン・メタクリル酸共重合体のマグネシウム(Mg)アイオノマー又は亜鉛(Zn)アイオノマーが好ましい。
【0055】
前記粘着層と接する層Xの厚みとしては、10μm以上100μm以下の範囲が好ましい。この厚みが前記範囲内にあることは、ステルスダイシングによる加工(分断加工、特に初期応力の維持)に適していることを示す。粘着層と接する層Xの好ましい厚みは、15μm以上80μm以下である。
【0056】
粘着層と接する層Xのステルスダイシング用フィルム基材における厚みの比率としては、フィルム基材としての安定生産の観点からは、フィルム基材全体の厚みの10%以上であることが好ましい。第1の層Yの厚みの比率は、分断性と拡張性とのバランスを図る観点からは、フィルム基材全体の厚みの20%以上であることが好ましい。
【0057】
[第1の層Y]
基材11の重層構造を構成する層11Y(第1の層Y)は、前記粘着層と接する層Xと後述する層11Z(第2の層Z)との間に設けられる中間層(
図2の符号11Y)として、あるいは前記粘着層と接する層Xに対して層11Z(第2の層Z)を介して設けられる内層(
図2の符号11Y)として、配設されていることが好ましい。
【0058】
第1の層Yは、樹脂Bを含む。前記樹脂Bの曲げ剛性率としては、5MPa以上350MPa以下の範囲であることが好ましい。樹脂Bの曲げ剛性率が前記範囲内にあることは、ステルスダイシングによる加工(分断加工、特に初期応力の維持)に適していることを示す。中でも、樹脂Bの曲げ剛性率は、拡張性の点で、5MPa以上330MPa以下がより好ましく、10MPa以上270MPa以下がより好ましい。
【0059】
第1の層Yに含まれる樹脂Bとしては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、低密度ポリエチレン(low-density polyethylene;LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear
low-density polyethylene;LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体及びそのアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体及びそのアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸エステル2元共重合体等が好適に用いられる。
【0060】
前記樹脂Bの例のうち、エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体及びそのアイオノマー、並びにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体及びそのアイオノマーは、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が1質量%以上35質量%以下の範囲であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下の範囲がより好ましく、特に好ましくは10質量%以上20質量%以下の範囲である。不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が1質量%以上であることは、この構成単位を積極的に含むことを意味し、不飽和カルボン酸の含有により透明性や金属接着性が良好になる。不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が35質量%以下であることで、実用的な耐熱性が維持される。
また、エチレンから導かれる構成単位の含有割合としては、99質量%以上65質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは90質量%以上80質量%以下の範囲である。
【0061】
前記2元共重合体又は前記3元共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル等が挙げられ、特に、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0062】
前記3元共重合体を構成する不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部位の好ましい炭素数は1〜4)がより好ましい。
【0063】
アイオノマーのベースポリマーとなる2元共重合体又は3元共重合体中のカルボキシル基を中和する金属イオンとしては、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム等が好ましく、中でもマグネシウム、及び亜鉛がより好ましい。アイオノマーは、2元共重合体中のカルボキシル基の100%以下の範囲で前記金属イオンにより中和され、その中和度は90%以下が好ましく、より好ましくは20%以上85%以下の範囲である。
【0064】
マグネシウムアイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の少なくとも一部がマグネシウムで中和されたマグネシウムアイオノマーが好ましい。共重合体においては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよいが、透明性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体を使用するのが好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体又は3元ランダム共重合体である。
【0065】
前記アイオノマー樹脂のうち、好適なマグネシウムアイオノマーは、高圧ラジカル重合法で合成されたエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体をベースとし、前記(メタ)アクリル酸の共重合比を10質量%を超えて30質量%以下の範囲としたものを、マグネシウムイオンで中和したものである。マグネシウムイオンによる中和度は0%を超えて60%の範囲であり、この範囲では拡張性と分断性とに優れる。好ましい中和度は10%以上60%以下の範囲であり、この範囲内であると透明性に優れる。更に好ましい中和度は10%以上40%以下の範囲あり、この範囲内であると拡張性、分断性及び透明性のバランスに優れる。
中でも、マグネシウムアイオノマー中における(メタ)アクリル酸の共重合比は、拡張性、成形加工性、分断性、及び透明性のバランスが優れ、工業的に入手しやすい点で、10質量%を超えて20質量%以下がより好ましい。
【0066】
亜鉛アイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の少なくとも一部が亜鉛で中和された亜鉛アイオノマーが好ましい。共重合体は、前記マグネシウムアイオノマーと同様、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよいが、透明性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体が好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体又は3元ランダム共重合体である。
【0067】
好適な亜鉛アイオノマーは、高圧ラジカル重合法で合成されたエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体をベースとし、前記(メタ)アクリル酸の共重合比を10質量%を超えて30質量%以下の範囲としたものを、亜鉛イオンで中和したものである。亜鉛イオンによる中和度は0%を超えて90%の範囲であり、この範囲では拡張性と分断性に優れる。好ましい中和度は10%以上90%以下の範囲であり、この範囲内であると透明性に優れる。
中でも、亜鉛アイオノマー中における(メタ)アクリル酸の共重合比は、拡張性、成形加工性、分断性、及び透明性のバランスが優れ、工業的に入手しやすい点で、10質量%を超えて20質量%以下がより好ましい。
【0068】
前記樹脂Bの例のうち、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が好ましい。
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等が好適に挙げられる。
【0069】
本発明においては、好ましい態様の一つは、第1の層Yが、粘着層と接する層Xと第2の層Zとの間に配される中間層として設けられた態様である。別の好ましい様態の一つは第2の層Zが、粘着層と接する層Xと第1の層Yとの間に配される中間層として設けられた態様である。
第1の層Yが、重層構造を構成する粘着層と接する層Xと第2の層Zとの間に配される中間層として設けられる場合、粘着層と接する層X及び第2の層Zに対して比較的柔らかい層に構成し、フィルム基材としての応力(特に初期応力)を緩和し、拡張機能を持たせる観点から、第1の層Yに含まれる樹脂Bとしては、例えば、低密度ポリエチレン(low-density polyethylene;LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体及びそのアイオノマー、並びにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体及びそのアイオノマーが好ましい。
また、第2の層Zが、粘着層と接する層Xと第1の層Yとの間に配される中間層として設けられる場合、フィルム基材としての応力(特に初期応力)を緩和し、拡張機能を持たせ、拡張時に層Yと接する拡張ステージとのすべり性や、耐ブロッキング性を持たせる観点から、第2の層Zに含まれる樹脂Cとしては、例えば、低密度ポリエチレン(low-density polyethylene;LDPE)、直鎖状低密度ポリチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)、エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体及びそのアイオノマー、並びにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体及びそのアイオノマーが好ましい。
【0070】
前記第1の層Yの厚みとしては、10μm以上100μm以下の範囲が好ましい。この厚みが前記範囲内にあることは、ステルスダイシングによる加工(分断加工、特に初期応力の維持)に適していることを示す。第1の層Yの好ましい厚みは、15μm以上80μm以下である。
【0071】
第1の層Yのステルスダイシング用フィルム基材における厚みの比率としては、フィルム基材としての安定生産の観点からは、フィルム基材全体の厚みの10%以上であることが好ましい。第1の層Yの厚みの比率は、分断性と拡張性とのバランスを図る観点からは、フィルム基材全体の厚みの20%以上であることが好ましい。
【0072】
[第2の層Z]
基材11の重層構造を構成する層11Z(第2の層Z)は、前記粘着層と接する層Xに対して層11Y(第1の層Y)を介して設けられる内層(
図2の符号11Z)として、あるいは前記粘着層と接する層Xと前記層11Y(第1の層Y)との間に設けられる中間層(
図2の符号11Z)として、配設される。
【0073】
第2の層Zは、樹脂Cを含む。前記樹脂Cの曲げ剛性率としては、50MPa以上350MPa以下の範囲であることが好ましい。樹脂Cの曲げ剛性率が前記範囲内にあることは、ステルスダイシングによる加工(分断加工、特に初期応力の維持)に適していることを示す。中でも、樹脂Cの曲げ剛性率は、ウエハ分断性の点で、50MPa以上330MPa以下がより好ましく、70MPa以上330MPa以下が更に好ましい。
【0074】
第2の層Zに含まれる樹脂Cとしては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えばエチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体及びそのアイオノマー、並びにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体及びそのアイオノマーが好適に用いられる。
【0075】
前記樹脂Cの例のうち、エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体及びそのアイオノマー、並びにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体及びそのアイオノマーは、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が1質量%以上35質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下の範囲である。不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が1質量%以上であることは、この構成単位を積極的に含むことを意味し、不飽和カルボン酸の含有により透明性や金属接着性が良好になる。不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が35質量%以下であることで、実用的な耐熱性が維持される。
また、エチレンから導かれる構成単位の含有割合としては、99質量%以上65質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは95質量%以上80質量%以下の範囲である。
【0076】
前記2元共重合体又は前記3元共重合体を構成する不飽和カルボン酸、並びに前記3元共重合体を構成する不飽和カルボン酸エステルの詳細については、既述の第1の層Yにおける2元共重合体又は3元共重合体を構成する不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸エステルと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0077】
アイオノマーのベースポリマーとなる2元共重合体中のカルボキシル基を中和する金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン等の多価金属のイオン等が挙げられる。
これらの中でも、マグネシウムイオン又は亜鉛イオンがより好ましい。これら金属イオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アイオノマーは、2元共重合体中のカルボキシル基の100%以下の範囲で前記金属イオンにより中和され、その中和度は90%以下が好ましく、より好ましくは20%以上85%以下の範囲である。
【0078】
上記のうち、マグネシウムアイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の少なくとも一部がマグネシウムで中和されたマグネシウムアイオノマーが好ましい。
亜鉛アイオノマーとしては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の少なくとも一部が亜鉛で中和された亜鉛アイオノマーが好ましい。
これらマグネシウムアイオノマー、亜鉛アイオノマーの詳細については、既述の第1の層Yの項で説明したマグネシウムアイオノマー、及び亜鉛アイオノマーと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0079】
前記第2の層Zの厚みとしては、10μm以上100μm以下の範囲が好ましい。この厚みが前記範囲内にあることは、ステルスダイシングによる加工(分断加工、特に初期応力の維持)に適していることを示す。第2の層Zの好ましい厚みは、15μm以上80μm以下である。
【0080】
第2の層Zのステルスダイシング用フィルム基材における厚みの比率としては、フィルム基材としての安定生産の観点からは、フィルム基材全体の厚みの10%以上であることが好ましい。第2の層Zの厚みの比率は、分断性と拡張性とのバランスを図る観点からは、フィルム基材全体の厚みの20%以上であることが好ましい。
【0081】
本発明においては、前記粘着層と接する層Xに含まれる樹脂Aの曲げ剛性率又は前記層Zに含まれる樹脂Cの曲げ剛性率のそれぞれから層Yに含まれる樹脂Bの曲げ剛性率を差し引いた差の絶対値(|樹脂Aの曲げ剛性率−樹脂Bの曲げ剛性率|、又は|樹脂Cの曲げ剛性率−樹脂Bの曲げ剛性率|)の大きい方の値が、50MPa以上345MPa以下の範囲内であることが好ましい。なお、「||」の記号は、絶対値を表す。
前記値が50MPa以上であると、Xの強度が低い場合でもウエハ分断性により優れ、またXの強度が高い場合でも拡張性により優れる。また、前記値が345MPa以下であると、粘着層と接する層Xの強度(曲げ剛性率)を分断性に良好な程度に緩和することができる点で有利である。
中でも、前記同様の理由から、前記差の絶対値の大きい方の値は、50MPa以上330MPa以下の範囲であることがより好ましい。
【0082】
本発明のステルスダイシング用フィルム基材は、ステルスダイシングによるウエハの分断性により優れる点で、粘着層と接する層Xの厚みが15μm以上80μm以下であり、前記層Yの厚みが15μm以上80μm以下であり、前記層Zの厚みが15μm以上80μm以下である態様が好ましい。
【0083】
本発明のステルスダイシング用フィルム基材は、粘着層と接する層Xと第1の層Yと第2の層Zとが順に重層された重層構造、又は粘着層と接する層Xと第2の層Zと第1の層Yとが順に重層された重層構造を含み、前記粘着層と接する層Xが樹脂Aを含み、前記樹脂Aの曲げ剛性率が180MPa以上350MPa以下であり、前記第1の層Yが樹脂Bを含み、前記樹脂Bの曲げ剛性率が10MPa以上270MPa以下であり、前記第2の層Zが樹脂Cを含み、前記樹脂Cの曲げ剛性率が70MPa以上330MPa以下である態様が好ましい。
さらに、本発明のステルスダイシング用フィルム基材は、粘着層と接する層Xと第1の層Yと第2の層Zとが順に重層された重層構造を含み、前記粘着層と接する層Xに含まれる樹脂Aがエチレン・アクリル酸共重合体のZnアイオノマー又はMgアイオノマー、エチレン・メタクリル酸共重合体のZnアイオノマー又はMgアイオノマーであり、前記第1の層Yに含まれる樹脂Bが低密度ポリエチレン(low-density polyethylene;LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low-density polyethylene;LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2元共重合体及びそのZnアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸(好ましくは炭素数1〜4の)アルキルエステル3元共重合体及びそのZnアイオノマーであり、前記第2の層Zに含まれる樹脂Cがエチレン・(メタ)アクリル酸2元共重合体及びそのZnアイオノマー及びMgアイオノマー、並びにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体及びそのアイオノマーである態様が好ましい。
【0084】
ステルスダイシング用フィルム基材を構成する粘着層と接する層Xと第2の層Z(又は層Y)と第1の層Y(又は層Z)との層厚(μm)の比率(X/Z/Y(又はX/Y/Z))としては、層Xの比率が10%以上80%以下であり、層Yの比率が10%以上70%以下であり、層Zの比率が10%以上80%以下であることが好ましい。各層厚の比率は、合計が100%になるように選択する。比率[%]は、「各層の厚み/総厚×100」より求められる。
【0085】
〜物性〜
本発明のステルスダイシング用フィルム基材のヘイズは、分断性を高める点で、レーザ光の透過を阻害しないよう小さいほど好ましい。具体的には、ヘイズは、10以下とする。ヘイズが10以下であることは、レーザ光を利用したステルスダイシングによる加工に適した透明性を有していることを示す。中でも、ヘイズは、9.0以下が好ましく、より好ましくは8.0以下である。
ヘイズは、ヘイズメーターを用いて、JIS K 7136にしたがって測定される値である。
【0086】
また、本発明のステルスダイシング用フィルム基材の全光線透過率は、ステルスダイシング工程におけるカメラを使った照射位置精度を高める点で、90%以上とする。全光線透過率が90%以上であることは、レーザ光を利用したステルスダイシングによる加工に適した光透過性をそなえていることを示す。全光線透過率は、HM−150型((株)村上色彩研究所製)を用い、23℃、50%相対湿度雰囲気下で、JIS K 7361に準拠して測定される値である。
【0087】
本発明のステルスダイシング用フィルム基材の初期応力は、9MPa以上19MPa以下の範囲とし、好ましい下限値は10MPaを超える範囲である。更に、初期応力は、10MPa以上17MPa未満であることがより好ましい。初期応力が9MPa未満であると、ウエハを分断する際の外部応力を保てず、ウエハの分割が良好に行なえない。また、初期応力が19MPaを超えると、拡張率が悪化し、均一に分断できない等、分断性に劣る。
本発明における初期応力は、JIS K 7127に準拠し、ステルスダイシング用フィルム基材のMD方向、及びTD方向について、試験速度:500mm/s、試験片:幅10mm×長200mm、チャック間:100mmの条件下で、試験片が6%伸長したときに測定される応力として得られ、MD及びTDの測定値の平均で評価する。
【0088】
本発明のステルスダイシング用フィルム基材の拡張率は、102%以上120%以下とし、好ましくは104%以上120%以下であり、より好ましくは104%以上110%以下である。拡張率が前記範囲の下限値(102%)未満であると、ウエハを分断する際の外部応力が保てず、ウエハの分断が良好に行なえない。拡張率が前記範囲の上限値(120%)を超えるステルスダイシング用フィルム基材は、初期応力9MPa以上19MPa以下の範囲で、現実的に存在しえない。
拡張率は、以下の方法により測定される値である。
すなわち、作製したステルスダイシング用フィルム基材から縦(MD)方向300mm以上×横(TD)方向300mm以上の4角形の試料片を切り出す。この試料片に141mm角の正方形を油性ペン等の筆記用具で描いた測定対象1を作成し、この測定対象1を、ステージ中心と測定対象1に描いた正方形の中心とが合うように、8インチウエハ用のウエハ拡張装置(テクノビジョン社製のウエハ拡張装置TEX−218G GR−8)にセットする。次いで、ステージを15mm引き上げ、ステルスダイシング用フィルムを拡張した後60秒間静置し、測定対象1の正方形の各辺の長さ(辺長)を測定する。得られる辺長4点について、それぞれ伸び率(%;=拡張後の辺長/拡張前の辺長×100)を計算し、その平均値を求める。
【0089】
基材11の厚みとしては、50μm以上200μm以下の範囲である。基材の総厚が前記範囲内にあることは、ステルスダイシングに適した基材の厚みであることを示す。また、基材の厚みは、拡張性と透明性との観点から、150μm以下が好適であり、また分断性の観点から、80μm以上であることが好ましい。
【0090】
また、基材11は、レーザ光Lを散乱させないものであることが好ましく、表面及び裏面が平滑であることが好ましい。基材11の表面及び裏面は、その表面粗さRa(算出平均粗さ)が1.0μm以下であることが好ましい。
表面粗さ(Ra)は、光干渉式の非接触型表面形状粗さ測定器を使用し、JIS B 0601−2001に準拠して測定される値である。
【0091】
本発明のステルスダイシング用フィルム基材の表面抵抗率は、帯電防止性能の観点より、1.0×10
9Ω/sq以上1.0×10
12Ω/sq以下であることが好ましい。表面抵抗率の調整は、例えば、特許第4606029号に開示されているように、ポリエーテルエステル成分を含む帯電防止剤を添加する方法や、イオン伝導性化合物をステルスダイシング用フィルム基材に前もって添加する方法等の公知の方法を用いて行なうことができる。
表面抵抗率は、Hiresta−UP(三菱化学(株)製)を用い、試験温度23℃、相対湿度50%の条件で、印加電圧500Vとして測定される値である。
【0092】
本発明のステルスダイシング用フィルム基材は、ポリエーテルエステル成分を含む帯電防止剤を含むことが好ましい。帯電防止剤の融点は、155℃以上185℃以下であることが好ましく、160℃以上185℃以下であることがより好ましく、160℃以上180℃以下であることが特に好ましい。このような帯電防止剤を含むことで、フィルム基材の透明性を損なうことなく、帯電防止性を高めることができる。帯電防止剤の融点が前記範囲内であることで、帯電防止剤を含有した場合のアイオノマー樹脂(特に、亜鉛アイオノマー又はマグネシウムアイオノマー)の透明性を高く維持することができる。
【0093】
融点は、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry;DSC)により、測定試料と基準物質との間の熱量の差を計測し、現れるピーク波形から求められる。
【0094】
前記帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤や高分子型帯電防止剤が挙げられるが、高分子型帯電防止剤が好ましく、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリエーテル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドの無機プロトン酸の塩等を挙げることができる。無機プロトン酸の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属、亜鉛塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0095】
ポリエーテルエステルアミドとしては、ポリアミドブロックとポリオキシアルキレングリコールブロックとから構成され、これらブロックがエステル結合されたブロック共重合体が挙げられる。
ポリエーテルエステルアミドにおけるポリアミドブロックは、例えば、ジカルボン酸(例:蓚酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等)と、ジアミン(例:エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メチレンビス(4−アミノシクロヘキサン)、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等)との重縮合、ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタム等のラクタムの開環重合、6−アミノカプロン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重縮合、あるいは前記ラクタムとジカルボン酸とジアミンとの共重合等により得られるものである。このようなポリアミドセグメントは、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/610、ナイロン66/12、ナイロン6/66/610などであり、特にナイロン11、ナイロン12などが好ましい。ポリアミドブロックの分子量は、例えば400〜5000程度である。
また、ポリエーテルブロックとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールあるいはこれらの混合物などが例示される。これらの分子量は、例えば400〜6000程度、更には600〜5000程度がよい。
【0096】
帯電防止剤としては、上市されている市販品を用いてもよく、具体例として、BASFジャパン社製のイルガスタットP−16、同P−18、同P−20、同P−22等、三洋化成工業社製のペレスタット230、ペレスタットHC250、ペレスタット300、ペレスタット2450、ペレクトロンPVH、三井・デュポン ポリケミカル社製のエンティラMK400、MK440、SD100等が挙げられる。
【0097】
前記帯電防止剤は、熱可塑性樹脂中に所定量を溶融混合する、又は帯電防止剤をドライブレンドし、これを溶融混合することができる。
【0098】
前記帯電防止剤は、フィルム基材を構成する層X、層Y、及び層Zのいずれに含有されてもよいし、層X、層Y、及び層Zの全層に含有させてもよい。紫外線吸収剤を含有させる場合、紫外線吸収剤を練り込む方法など前記方法により行なえる。
前記帯電防止剤を含有する場合、前記帯電防止剤のフィルム基材中における含有量としては、アイオノマー樹脂に対して、10質量%を超えて30質量%が好ましく、10質量%を超えて20質量%がより好ましい。帯電防止剤の含有量が10質量%を超えることで、フィルム基材の帯電防止効果に優れる。帯電防止剤の含有量が30質量%以下であることで、フィルム基材の透明性が保たれる。帯電防止剤の含有量を上記範囲とすることによって、フィルム基材の表面抵抗率を1.0×10
9Ω/sq以上1.0×10
12Ω/sq以下の範囲に好適に調整することができる。
【0099】
本発明のステルスダイシング用フィルム基材には、上記成分のほか、更に、任意の各種添加剤を配合することができる。このような添加剤の一例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防錆剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、架橋材、架橋助剤等を挙げることができる。また、必要に応じて、ステルスダイシング用フィルム基材に電子線照射を行なってもよい。
【0100】
ステルスダイシング用フィルム基材の製造方法としては、従来公知のTダイキャスト成形法、Tダイニップ成形法、インフレーション成形法、押出ラミネート法、カレンダー成形法等の方法を用いることができる。
【0101】
(粘着層)
粘着層12は、特に限定されないが、紫外線硬化性に構成された層が好ましく、例えば紫外線硬化タイプのアクリル系粘着剤等を用いて形成することができる。
【0102】
紫外線硬化タイプのアクリル系粘着剤の具体例としては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系単量体の(メタ)アクリル系重合体、前記(メタ)アクリル系単量体と官能性単量体(例えば、ポリアクリル酸ブチルやポリアクリル酸2−エチルヘキシル等のポリアクリル酸エステル)との共重合体、ウレタンアクリレート系オリゴマー、及びこれら重合体の混合物と、光重合開始剤とを少なくとも含む紫外線硬化性粘着剤が挙げられる。
前記重合体の平均分子量は、50万〜100万程度の高分子量が好ましい。平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0103】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0104】
前記ウレタンアクリレート系オリゴマーは、少なくとも2つの炭素−炭素不飽和二重結合を有する紫外線重合性化合物であり、例えば、ポリエステル型又はポリエーテル型等のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフエニルメタン4,4−ジイソシアナート等)とを反応させて得られる端末イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等)を反応させて得られるものが挙げられる。
【0105】
前記光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンジンエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、α‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等が挙げられる。光重合開始剤は、単独でもしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。光重合開始剤を粘着層に添加することで、硬化反応時間又は放射線照射量を抑えて効率よく硬化反応を進行させることができる。
【0106】
また、粘着層も、既述の基材と同様に透明性が高いことが好ましい。
粘着層における可視光の光線透過率としては、可視光線の400nm〜800nmの全波長領域において、粘着層における光線透過率が90%以上であることが好ましい。
さらに、基材の光線透過率が90%以上となる波長の可視光線を用いた場合に、ステルスダイシング用フィルム全体での光線透過率が90%以上であることが好ましく、更には400nm〜800nmの全波長領域の光を用いた場合に、ステルスダイシング用フィルム全体の光線透過率が90%以上であることが好ましい。
なお、光線透過率は、分光光度計を用いて測定される値である。
【0107】
粘着層12の厚みは、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。
【0108】
本発明のステルスダイシング用フィルムのヘイズは、分断率を高める点で、レーザ光の透過を阻害しないよう小さいほど好ましい。具体的には、ヘイズは、10.0以下が好ましく、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.0以下である。ヘイズの測定方法は、既述の通りである。
また、フィルム拡張後に、フィルムの全体又は一部分に白化現象が確認されないことが望ましい。
【0109】
本発明のステルスダイシング用フィルムの初期応力は、9MPaを超えることが好ましく、10MPa以上19MPa以下であることがより好ましく、10MPa以上17MPa未満であることが更に好ましい。初期応力が9MPaを超える範囲であると、ウエハを分断する際の外部応力が保たれ、ウエハの分断が良好に行なえる。また、初期応力が19MPa以下であると、拡張性の点で有利である。初期応力の測定方法は、既述の通り(JIS K 7127に準拠)である。
【0110】
本発明のステルスダイシング用フィルムの拡張率は、102%以上120%以下が好ましく、より好ましくは104%以上120%以下である。拡張率が前記範囲の下限値以上であると、ウエハを分断する際の外部応力が保たれ、ウエハの分断が良好に行なえる。拡張率が前記範囲の上限値以下であると、均一にフィルムが伸張し、拡張のムラやフィルム歪みの発生を抑えることができる。拡張率の測定方法は、既述の通りである。
【0111】
[電子部品の製造方法]
本発明のステルスダイシング用フィルムを用いた電子部品の製造方法について詳述する。
本発明の電子部品の製造方法は、ウエハの裏面に、既述の本発明のステルスダイシング用フィルムを貼り付ける工程(フィルム貼付工程)と、ステルスダイシング用フィルムが貼り付けられたウエハに対し、ステルスダイシング用フィルム側からレーザ光を照射し、ステルスダイシング用フィルムを介してレーザ光によりウエハをステルスダイシングする工程(ダイシング工程)とを設けて構成されている。本発明の電子部品の製造方法は、必要に応じて、更に他の工程を設けて構成されていてもよい。
【0112】
図3Aに示すように、ステルスダイシング用フィルム1の粘着層12をウエハWの裏面(素子形成面と反対側の面)に固定するとともに、ステルスダイシング用フィルム1を、その粘着層12の端部がダイシングテーブル6と接するように置き、粘着層12にてダイシングテーブルに固定する(フィルム貼付工程)。
次に、ダイシングテープ1の基材11側からレーザ光を照射し、ステルスダイシング用フィルム1を介してウエハWの内部にレーザ光Lを導光することにより、ウエハWの内部のダイシングラインに沿って、
図3Bに示すように改質部(改質領域)W1を形成する。その後、
図4に示すように、ステルスダイシング用フィルム1の端部を矢印方向に引っ張ることで、フィルムを拡張させる(ダイシング工程)。これにより、前記改質部W1を起点に、ウエハWが改質部W1に沿って複数に分割されることとなる。
次いで、ステルスダイシング用フィルム1の粘着層12に紫外線を照射すると、粘着層12が固化し、該層の粘着力は低下する。これにより、ステルスダイシング用フィルム1から複数のウエハ、すなわち個々のチップ(電子部品)を取り外すことができ、所望とする電子部品が得られる。
【0113】
レーザとしては、例えば、パルスレーザ光を発生するNd:YAGレーザ、Nd:YVOレーザ、Nd:YLFレーザ、チタンサファイヤレーザ、CO
2レーザ、アルゴンイオンレーザ等の公知のレーザを、場合に応じて選択することができる。
【0114】
本発明の電子部品の製造方法は、シリコンウエハを対象とするが、例えば、ガラスウエハ、炭化ケイ素ウエハ、サファイアウエハ、リン化ガリウムウエハ、ヒ化ガリウムウエハ等の化合物半導体ウエハ等を用いてもよい。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、エチレン単位含有量はエチレン由来の構成単位の含有比率を、メタクリル酸単位含有量はメタクリル酸由来の構成単位の含有比率を、アクリル酸イソブチル単位含有量はアクリル酸イソブチル由来の構成単位の含有比率を、それぞれ示す。
【0116】
〔A〕実施例1〜27及び
実施例A〜D
以下に示す実施例1〜27及び
実施例A〜Dに用いる原料の組成及び物性、並びに得られたフィルム及びシートの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0117】
−1.原材料−
(1)アイオノマー(IO−1)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%)
金属カチオン源:マグネシウム
中和度:35%
MFR(190℃、2160g荷重):5.9g/10分
(2)アイオノマー(IO−2)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%)
金属カチオン源:マグネシウム
中和度:54%
MFR(190℃、2160g荷重):0.7g/10分
(3)アイオノマー(IO−3)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体(エチレン単位含有量:80質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%、アクリル酸イソブチル単位含有量:10質量%)
金属カチオン源:亜鉛
中和度:70%
MFR(190℃、2160g荷重):1.0g/10分
(4)アイオノマー(IO−4)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:89質量%、メタクリル酸単位含有量:11質量%)
金属カチオン源:亜鉛
中和度:65%
MFR(190℃、2160g荷重):5.0g/10分
(5)アイオノマー(IO−5)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体(エチレン単位含有量:81量%、メタクリル酸単位含有量:11.5質量%、アクリル酸イソブチル単位含有量:7.5質量%)
金属カチオン源:マグネシウム
中和度:14%
MFR(190℃、2160g荷重):5.9g/10分
(6)アイオノマー(IO−6)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体(エチレン単位含有量:82質量%、メタクリル酸単位含有量:13質量%、アクリル酸イソブチル単位含有量:5質量%)
金属カチオン源:マグネシウム
中和度:27%
MFR(190℃、2160g荷重):5.9g/10分
(7)アイオノマー(IO−7)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%)
金属カチオン源:亜鉛
中和度:59%
MFR(190℃、2160g荷重):0.9g/10分
【0118】
(8)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)
エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:91質量%、メタクリル酸単位含有量:9質量%)
MFR(190℃、2160g荷重):3.0g/10分
【0119】
(9)ポリエーテルエステル成分(B−1)
商品名:イルガスタットP−16(融点(DSC測定):158℃、BASFジャパン(株)製、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体)
(10)ポリエーテルエステル成分(B−2)
商品名:イルガスタットP−18(融点(DSC測定):173℃、BASFジャパン(株)製、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体)
(11)ポリエーテルエステル成分(B−3)
商品名:イルガスタットP−20(融点(DSC測定):195℃、BASFジャパン(株)製、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体)
【0120】
−2.物性測定方法−
ステルスダイシング用フィルム基材の物性については、後述する実施例及び比較例で製造したアイオノマーフィルム基材等を用いて測定を行なった。測定結果は、下記表1〜表2に示す。
【0121】
(1)初期応力
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材の縦(MD)方向、及び横(TD)方向について、JIS K 7127に準拠し、下記の条件下で6%伸長したときの応力を測定した。下記表1〜表2に示す値は、MD及びTDの平均値である。
<条件>
・試験速度:500mm/秒
・試験片:幅10mm×長200mm
・チャック間:100mm
【0122】
(2)ヘイズ
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材について、(株)村上色彩研究所製のHM−150型を用い、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、JIS K 7136に準拠して測定した。
【0123】
(3)拡張性(拡張率)
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材から、縦(フィルムのMD方向)300mm以上×横(フィルムのTD方向)300mm以上の4角形のフィルム基材片を切り取り、この切り取ったフィルム基材片に、141mm角の正方形を油性ペン等の筆記用具を用いて描いた(以下、測定対象1)。8インチウエハ用のウエハ拡張装置(テクノビジョン社製のウエハ拡張装置TEX−218G GR−8)に、測定対象1をセットした。この際、ウエハ拡張装置のステージ中心と、測定対象1に描いた正方形の中心とが合うようにセットした。次に、ステージを15mm引き上げ、ステルスダイシング用フィルムを拡張した後、60秒間静置し、測定対象1の正方形の各辺の長さ(辺長)を測定した。得られた辺長4点について、それぞれ伸び率(%;=拡張後の辺長/拡張前の辺長×100)を計算し、その平均値を拡張率[%]とした。
【0124】
(4)分断性
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材の分断性能を、下記の評価基準にしたがって評価した。なお、分断率[%]とは、「(実際に分断できた数)/(総分割数)×100」により求められる値である。
<評価基準>
A:分断率が80%以上100%以下であった。
B:分断率が60%以上80%未満であった。
C:分断率が60%未満であった。
D:分断が容易に行なえなかった。
【0125】
(5)表面抵抗率
三菱化学(株)製のHiresta−UPを用い、23℃、50%相対湿度雰囲気下で、印加電圧500Vとして測定した。
【0126】
(6)全光線透過率
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材について、(株)村上色彩研究所製のHM−150型を用い、23℃、50%相対湿度雰囲気下で、JIS K 7361に準拠して測定した。
【0127】
まず、帯電防止剤を含有しない場合の例
を示す。
[実施例1]
50mmφ単軸押出機インフレーション成形機を使用し、この成形機の樹脂投入口に前記アイオノマー(IO−1)を投入して、ダイス温度190℃として、80μm厚のアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0128】
[実施例2]
実施例1において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−6)に、また、ダイス温度を200℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0129】
[実施例3]
実施例1において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−2)に代えると共に、ダイス温度を230℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0130】
[実施例4]
実施例1において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−4)に代えると共に、ダイス温度を180℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0131】
[
実施例A]
実施例1において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−3)に代えると共に、ダイス温度を210℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0132】
[
実施例B]
実施例1において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−5)に代えると共に、ダイス温度を180℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0133】
[
実施例C]
実施例1において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−7)に代えると共に、ダイス温度を210℃に、厚みを220μmに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0134】
[
実施例D]
実施例1において、アイオノマー(IO−1)をEMAAに代えると共に、ダイス温度を180℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表1に示す。
【0135】
次に、帯電防止剤を含有する場合の例を実施例5〜実施例9に示す。
[実施例5]
実施例1において、使用したアイオノマー(IO−1)を、アイオノマー(IO−1)85質量部、イルガスタットP−16(ポリエーテルエステル成分(B−1))7.5質量部、及びイルガスタットP−18(ポリエーテルエステル成分(B−2))7.5質量部に代え、これら成分をドライブレンドした。このドライブレンドした原料を、フルフライトタイプのスクリュー(40mmφ)を備えた単軸押出機の樹脂投入口に投入した後、溶融混練してペレット化した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、表面抵抗率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表2に示す。
【0136】
[実施例6]
実施例1において、使用したアイオノマー(IO−1)を、アイオノマー(IO−1)85質量部及びイルガスタットP−18(ポリエーテルエステル成分(B−2))15質量部に代え、これら成分をドライブレンドした。このドライブレンドした原料を、フルフライトタイプのスクリュー(40mmφ)を備えた単軸押出機の樹脂投入口に投入した後、溶融混練してペレット化した。得られたペレットを用い、実施例1と同様にしてアイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、表面抵抗率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表2に示す。
【0137】
[実施例7]
実施例5において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−2)に代えたこと以外は、実施例5と同様にして、アイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、表面抵抗率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表2に示す。
【0138】
[実施例8]
実施例6において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−2)に代えたこと以外は、実施例6と同様にして、アイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、表面抵抗率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表2に示す。
【0139】
[実施例9]
実施例6において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−2)に代えると共に、イルガスタットP−18(15質量部)をイルガスタットP−16(ポリエーテルエステル成分(B−1))15質量部に代えたこと以外は、実施例6と同様にして、アイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、表面抵抗率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表2に示す。
【0140】
[
実施例E]
実施例6において、アイオノマー(IO−1)をアイオノマー(IO−2)に代えると共に、イルガスタットP−18(15質量部)をイルガスタットP−20(ポリエーテルエステル成分(B−3))15質量部に代えたこと以外は、実施例6と同様にして、アイオノマーフィルム基材(ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製したフィルム基材について、初期応力、ヘイズ、拡張率、表面抵抗率、及び全光線透過率の測定を行なった。結果を、下記表2に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
[実施例10〜18]
基材として、実施例1〜9で作製したアイオノマーフィルム基材を用意し、粘着層形成用の粘着材として、紫外線硬化型アクリル系粘着剤(荒川化学工業社製のビームセット575(ウレタンアクリレート系オリゴマー))を用意した。
上記の基材及び粘着剤を用いて、基材の上に、紫外線硬化型アクリル系粘着材を酢酸エチルに溶かしたものをバーコート塗布することで、
図1に示すようなアイオノマーフィルム基材11/乾燥厚み20μmの粘着層12の重層構造よりなる9種のステルスダイシング用フィルムを作製した。
【0144】
[実施例19〜27]
実施例10〜18で作製したステルスダイシング用フィルムを用いて、
図3Aに示すように、各ステルスダイシング用フィルム1の粘着層12をウエハWの裏面に固定し、さらにステルスダイシング用フィルム1をその粘着層12の端部をダイシングテーブル6と接触させてダイシングテーブルに固定する。次に、ダイシングテープ1の基材11側からレーザ光を照射し、ステルスダイシング用フィルム1を介して導光することで、
図3Bに示すようにウエハWの内部のダイシングラインに沿って改質部W1を形成する。その後、
図4に示すように、ステルスダイシング用フィルム1の端部を矢印方向に引っ張ってフィルムを拡張し、改質部W1を起点として複数に分割する。その後、粘着層12に紫外線照射し、複数のチップを取り出すことで、所望とする電子部品が得られる。
【0145】
〔B〕実施例28〜
49、実施例F〜G、及び比較例1
以下に示す実施例28〜49
、実施例F〜G、及び比較例1に用いる原料の組成及び物性、並びに得られたフィルム及びシートの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0146】
−1.原材料−
(1)アイオノマー(IO−11)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%)
金属カチオン源:マグネシウム
中和度:35%
MFR(190℃、2160g荷重):5.9g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):330MPa
(2)アイオノマー(IO−12)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%)
金属カチオン源:マグネシウム
中和度:54%
MFR(190℃、2160g荷重):0.7g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):320MPa
(3)アイオノマー(IO−13)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体(エチレン単位含有量:80質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%、アクリル酸イソブチル単位含有量:10質量%)
金属カチオン源:亜鉛
中和度:70%
MFR(190℃、2160g荷重):1.0g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):90MPa
(4)アイオノマー(IO−14)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:89質量%、メタクリル酸単位含有量:11質量%)
金属カチオン源:亜鉛
中和度:65%
MFR(190℃、2160g荷重):5.0g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):260MPa
(5)アイオノマー(IO−15)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%)
金属カチオン源:亜鉛
中和度:23%
MFR(190℃、2160g荷重):5.0g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):200MPa
(6)アイオノマー(IO−16)
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%)
金属カチオン源:亜鉛
中和度:59%
MFR(190℃、2160g荷重):0.9g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):310MPa
【0147】
(7)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)
エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン単位含有量:91質量%、メタクリル酸単位含有量:9質量%)
MFR(190℃、2160g荷重):3.0g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):140MPa
(8)エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)
エチレン・酢酸ビニル共重合体(エチレン単位含有量:81質量%、酢酸ビニル単位含有量:19質量%)
MFR(190℃、2160g荷重):2.5g/10分
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):40MPa
【0148】
(9)ポリオレフィン(C1)
線状低密度ポリエチレン(LLDPE:(株)プライムポリマー製、エボリューSP2320、密度:919kg/m
3、MFR:1.9g/10分)
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):240MPa
(10)ポリオレフィン(C2)
低密度ポリエチレン(LDPE:密度:920kg/m
3、MFR:1.6g/10分)
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):140MPa
(11)ポリオレフィン(C3)
ランダムポリプロピレン(r−PP:(株)プライムポリマー製、プライムポリプロF219DA、密度:910kg/m
3、MFR:8.0g/10分)
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):960MPa
(12) ポリオレフィン(C4)
ホモポリプロピレン(ホモ−PP:(株)プライムポリマー製、プライムポリプロF113DA、密度:910kg/m
3、MFR:3.0g/10分)
曲げ剛性率(JIS K 7106準拠):1290MPa
【0149】
(13)ポリエーテルエステル成分(B−1)
商品名:イルガスタットP−16、BASFジャパン(株)製
(14)ポリエーテルエステル成分(B−2)
商品名:イルガスタットP−18、BASFジャパン(株)製
(15)ポリエーテルエステル成分(B−4)
商品名:ペレスタット230、三洋化成工業(株)製(融点(DSC測定):163℃)
【0150】
−2.物性測定方法−
ステルスダイシング用フィルム基材の物性については、後述する実施例及び比較例で製造したアイオノマーフィルム基材等を用いて測定を行なった。測定及び評価の結果は、下記表3〜表5に示す。
【0151】
(1)初期応力
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材の縦(MD)方向について、JIS K
7127に準拠し、下記の条件下で6%伸長したときの応力を測定した。
<条件>
・試験速度:500mm/sec
・試験片:幅10mm×長200mm
・チャック間:100mm
【0152】
(2)ヘイズ・分断性
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材について、上記〔A〕における場合と同様の方法にて、測定及び評価を行なった。
【0153】
(3)全光線透過率
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材について、(株)村上色彩研究所製のHM−150型を用い、23℃、50%相対湿度雰囲気下で、JIS K 7361に準拠して測定した。
【0154】
(4)拡張性(拡張率)
作製した各ステルスダイシング用フィルム基材から縦(フィルムのMD方向)300mm以上×横(フィルムのTD方向)300mm以上の4角形のフィルム基材片を切り取り、この切り取ったフィルム基材片に、141mm角の正方形を油性ペン等の筆記用具を用いて描いた(以下、測定対象2)。上記〔A〕と同様の方法にて、測定対象2に描いた正方形の各辺の長さ(辺長)を測定し、得られた辺長4点について、それぞれ伸び率(%;=拡張後の辺長/拡張前の辺長×100)を計算し、その平均値を求め、拡張率[%]とした。また、拡張後のフィルムに白化現象が発生する(有り)、発生しない(なし)を目視で確認した。
【0155】
(5)曲げ剛性率(オルゼン式)
原材料を190℃に設定したプレス成形機にてプレス成形し、250mm×250mm、2mm厚のプレスシートを作成した。作成した2mm厚のシートについて、JIS K
7106に準拠し、曲げ剛性率を測定した。
【0156】
[実施例28]
スクリュ径が45mmφの3種3層インフレーション成形機を使用し、粘着層と接する層X形成用樹脂としてIO−12(Mg)を、層Y形成用樹脂としてIO−13(Zn)を、層Z形成用樹脂としてIO−12(Mg)を用いて、ダイス温度:220℃の条件で、粘着層と接する層X/層Y/層Zの重層構造を有する3層フィルム(総厚80μm;ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この3層フィルムの粘着層と接する層X、層Y、及び層Zの層厚は、それぞれ25μm、30μm、及び25μmである。続いて、作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。結果は、下記表3に示す。
【0157】
[実施例29]
アイオノマー(IO−11(Mg))85質量部、イルガスタットP−16(ポリエーテルエステル成分(B−1))7.5質量部、及びイルガスタットP−18(ポリエーテルエステル成分(B−2))7.5質量部を、スクリュ径が40mmφの単軸押出機により溶融混練し、粘着層と接する層X及び層Zを形成するためのアイオノマー組成物を調製した。次に、実施例1において、粘着層と接する層X形成用樹脂としてこのアイオノマー組成物を、層Y形成用樹脂としてIO−14(Zn)を用いると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。併せて、表面抵抗率を測定したところ、表面抵抗率は、1.7×10
14Ω/sqであった。
【0158】
[実施例30]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−15(Zn)に、層Z形成用樹脂をIO−15(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から200℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。
【0159】
[実施例31]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−14(Zn)に、層Z形成用樹脂をIO−14(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から200℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。
【0160】
[実施例32]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC1に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代え、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの層X(A)、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ28μm、21μm、及び30μmとしたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。
【0161】
[実施例33]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC1に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。
【0162】
[実施例34]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC1に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代え、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの粘着層と接する層X、層Y、及び層Zの層厚をそれぞれ20μm、40μm、及び20μmとしたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記した。
【0163】
[実施例35]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をEMAAに、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から200℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。
【0164】
[実施例36]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。
【0165】
[実施例37]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をEVAに、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記する。
【0166】
[実施例38]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC2に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代え、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ28μm、22μm、及び30μm(3層フィルムの総厚み:80μm)に変えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記した。
【0167】
[実施例39]
スクリュ径が40mmφの3種3層キャストフィルム成形機を用いて、粘着層と接する層X形成用樹脂としてIO−16(Zn)を、層Y形成用樹脂としてEMAAを、層Z形成用樹脂としてIO−16(Zn)を使用し、ダイス温度:210℃の条件で、粘着層と接する層X/層Y/層Zの重層構造を有する3層フィルム(総厚77μm;ステルスダイシング用フィルム基材)を作製した。この作製した3層フィルムの粘着層と接する層X、層Y、及び層Zの層厚は、それぞれ29μm、20μm、及び28μmである。続いて、作成した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記した。
【0168】
[実施例40]
実施例39において、層Y形成用樹脂をC1に代えたこと以外は、実施例39と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記した。
【0169】
[実施例41]
アイオノマー(IO−16(Zn))85質量部、及びペレスタット230(B−4)15質量部を、スクリュ径が30mmφの二軸押出機により溶融混練し、粘着層と接する層X及び層Zを形成するためのアイオノマー組成物を調製した。次に、実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂としてこのアイオノマー組成物を、層Y形成用樹脂C2を、層Z形成用樹脂をこのアイオノマー樹脂組成物を用いると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表3に併記した。併せて表面抵抗率を測定した。表面抵抗率は、1.3×10
10Ω/sqであった。
【0170】
[実施例42]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC1に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例28と同様の条件で、層X/層Z/層Yの重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記する。
【0171】
[実施例43]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC2に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代え、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ30μm、20μm、及び30μm(3層フィルムの総厚み:80μm)に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、層X/層Z/層Y構成の重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記した。
【0172】
[実施例44]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC2に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代え、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ20μm、30μm、及び30μm(3層フィルムの総厚み:80μm)に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、層X/層Z/層Y構成の重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記した。
【0173】
[実施例45]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC2に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代え、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ20μm、40μm、及び20μm(3層フィルムの総厚み:80μm)に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、層X/層Z/層Y構成の重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記した。
【0174】
[実施例46]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC2に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代え、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ15μm、50μm、及び15μm(3層フィルムの総厚み:80μm)に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、層X/層Z/層Y構成の重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記した。
【0175】
[実施例47]
アイオノマー(IO−16(Zn))85質量部、及びペレスタット230(B−4)15質量部を、スクリュ径が30mmφの二軸押出機により溶融混練し、粘着層と接する層Xを形成するためのアイオノマー組成物を調製した。また、アイオノマー(IO−13(Zn))85質量部、及びペレスタット230(B−4)15質量部を、スクリュ径が30mmφの二軸押出機により溶融混練し、層Zを形成するためのアイオノマー組成物Zを調製した。
次に、実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂としてこのアイオノマー組成物を、層Y形成用樹脂としてC2を、層Z形成用樹脂としてこのアイオノマー樹脂組成物Zを用い、ダイス温度を220℃から210℃に代え、かつ、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ45μm、15μm、及び30μm(3層フィルムの総厚み:90μm)に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、層X/層Z/層Y構成の重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記した。併せて表面抵抗率を測定した。表面抵抗率は、1.5×10
11Ω/sqであった。
【0176】
[実施例48]
実施例47において、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ35μm、15μm、及び40μm(3層フィルムの総厚み:90μm)に代えたこと以外は、実施例47と同様にして、層X/層Z/層Y構成の重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記した。併せて表面抵抗率を測定した。表面抵抗率は、2.1×10
11Ω/sqであった。
【0177】
[実施例49]
実施例47において、3層フィルムの層X、層Y、及び層Zの層厚を、それぞれ40μm、15μm、及び25μm(3層フィルムの総厚み:80μm)に代えたこと以外は、実施例47と同様にして、層X/層Z/層Y構成の重層構造を有する3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表4に併記した。併せて、表面抵抗率を測定したところ、表面抵抗率は1.7×10
11Ω/sqであった。
【0178】
[
実施例F]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−13(Zn)に、層Z形成用樹脂をIO−13(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にしてフィルムを作製した。ここで、各層はいずれもIO−13(Zn)を用いて形成されており、実質的に作製したフィルムは単一層からなる。また、作製したフィルムに対して、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表5に併記する。
【0179】
[比較例
1]
実施例39において、粘着層と接する層X形成用樹脂をC4に、層Y形成用樹脂をC4に、層Z形成用樹脂をC4に代え、ダイス温度を210℃から240℃に代え、かつ、総厚みを80μmとした以外は、実施例39と同様にしてフィルムを作製した。ここで、各層はいずれもC4を用いて形成されており、実質的に作製したフィルムは単一層からなる。また、作製したフィルムに対して、初期応力、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表5に併記する。
【0182】
[
実施例G]
実施例28において、粘着層と接する層X形成用樹脂をIO−16(Zn)に、層Y形成用樹脂をC3に、層Z形成用樹脂をIO−16(Zn)に代えると共に、ダイス温度を220℃から210℃に代えたこと以外は、実施例28と同様にして、3層フィルムを作製した。この作製した3層フィルムについて、初期応力、ヘイズ、全光線透過率、及び拡張率の測定を行なった。これらの結果を下記表5に併記する。
【0183】
[実施例50〜69]
基材として、実施例28〜49で作製したアイオノマーフィルム基材を用意し、粘着層形成用の粘着材として、紫外線硬化型アクリル系粘着剤(荒川化学工業社製のビームセット575(ウレタンアクリレート系オリゴマー))を用意した。
上記の基材及び粘着剤を用いて、基材の上に、紫外線硬化型アクリル系粘着材を酢酸エチルに溶かしたものをバーコート塗布することで、
図2に示すようにアイオノマーフィルム基材11/乾燥厚み20μmの粘着層12の重層構造よりなるステルスダイシング用フィルムを作製した。
【0184】
[実施例70〜89]
実施例50〜69で作製したステルスダイシング用フィルムを用いて、
図3Aに示すように、各ステルスダイシング用フィルム1の粘着層12をウエハWの裏面に固定し、さらにステルスダイシング用フィルム1をその粘着層12の端部をダイシングテーブル6と接触させてダイシングテーブルに固定する。次に、ダイシングテープ1の基材11側からレーザ光を照射し、ステルスダイシング用フィルム1を介して導光することで、
図3Bに示すようにウエハWの内部のダイシングラインに沿って改質部W1を形成する。その後、
図4に示すように、ステルスダイシング用フィルム1の端部を矢印方向に引っ張ってフィルムを拡張し、改質部W1を起点として複数に分割する。その後、粘着層12に紫外線照射し、複数のチップを取り出すことで、所望とする電子部品が得られる。
【0185】
【表3】
【0186】
【表4】
【0187】
【表5】
【0188】
前記表3〜表5に示すように、実施例では、ヘイズ及び全光線透過率について良好な結果が得られているように透明性が高く、また、初期応力も良好な、ステルスダイシングに適するフィルム基材及びダイシング用フィルムが得られた。
これに対して
、比較例
1で
は、初期応力が高くなり過ぎ、ステルスダイシングでの拡張時に良好な拡張率が得られ
なかった。
【0189】
日本出願2011−284379、2012−053389、及び2012−122540の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、且つ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。