特許第6073877号(P6073877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073877粘着剤組成物、これを含む偏光板及び液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073877
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、これを含む偏光板及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20170123BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20170123BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20170123BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C09J133/00
   C09J11/06
   C09J7/00
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-518785(P2014-518785)
(86)(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-523946(P2014-523946A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】KR2012003824
(87)【国際公開番号】WO2013002489
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0062746
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE−CHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウン グ ハン
(72)【発明者】
【氏名】サン ジン リ
(72)【発明者】
【氏名】キョン モーン ジュン
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−241732(JP,A)
【文献】 特開2011−016990(JP,A)
【文献】 特開2007−169329(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0047030(KR,A)
【文献】 特開2005−179616(JP,A)
【文献】 特開2005−247909(JP,A)
【文献】 特開2000−095831(JP,A)
【文献】 特開昭62−199610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートと架橋可能な官能基を有するアクリル系共重合体と、トルエンジイソシアネート系架橋剤と、有機酸安定剤とを含み、
前記アクリル系共重合体は、イソシアネートと架橋可能な官能基を有する単量体として2−カルボキシエチル(メタ)アクリレートを含んで重合されたものであり、
架橋促進剤を含まない、粘着剤組成物。
【請求項2】
有機酸安定剤の沸点は150℃以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
有機酸安定剤は、酢酸、ギ酸、及びアクリル酸からなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
固形分含有量を基準として、アクリル系共重合体100重量部に対して有機酸安定剤を0.001〜12重量部含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
固形分含有量を基準として、アクリル系共重合体100重量部に対してトルエンジイソシアネート系架橋剤を0.01〜15重量部含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層された偏光板。
【請求項7】
液晶セルの少なくとも片面に、請求項に記載の偏光板を備える液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度変化が抑制されて工程安定性を向上させることができ、養生期間を短縮して生産性を向上させることができる粘着剤組成物、これを含む偏光板及び液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid crystal display device;LCD)は、液晶セルと前記液晶セルの両面に粘着剤層を介して接合された偏光板とを備える液晶パネルを具備する。
【0003】
液晶セルと偏光板との接合のための粘着剤は、基材との密着性、光漏れ防止性、耐熱及び耐湿熱耐久性のみならず、リワーク性のような物性をも同時に満足しなければならない。また、前述した物性と共に、粘着剤は、養生期間を短縮して生産性も向上させることが求められている。
【0004】
このように、従来の粘着剤として求められる物性を維持しつつも、養生期間を短縮するための方法として、韓国公開特許第2008−0047030号公報には、架橋反応を促進させる架橋促進剤として、ルイス酸を含む粘着剤組成物が開示されている。このように構成された粘着剤組成物は、粘着耐久性、切断性、光漏れ防止性、光透過性等を満たしつつ、養生期間を短縮して生産性を向上させることができるが、急激な粘度変化が生じ保存安定性に優れず、粘着剤のポットライフ(pot―life)が短くなるといった短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粘度変化が抑制されて十分なポットライフを確保し、工程安定性を向上させることができ、架橋促進剤を用いることなく養生期間を短縮して生産性も向上させることができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層された偏光板を提供することを他の目的とする。
【0007】
なお、本発明は、液晶セルの少なくとも片面に前記偏光板が備えられた液晶表示装置を提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.イソシアネートと架橋可能な官能基を有するアクリル系共重合体と、トルエンジイソシアネート系架橋剤と、有機酸安定剤とを含む、粘着剤組成物。
【0009】
2.前記項目1において、有機酸安定剤の沸点は150℃以下である、粘着剤組成物。
【0010】
3.前記項目2において、有機酸安定剤は、酢酸、ギ酸、及びアクリル酸からなる群から選択される1種以上である、粘着剤組成物。
【0011】
4.前記項目1において、固形分含有量を基準として、アクリル系共重合体100重量部に対して有機酸安定剤を0.001〜12重量部含む、粘着剤組成物。
【0012】
5.前記項目1において、固形分含有量を基準として、アクリル系共重合体100重量部に対してトルエンジイソシアネート系架橋剤を0.01〜15重量部含む、粘着剤組成物。
【0013】
6.前記項目1において、ルイス酸架橋促進剤をさらに含む、粘着剤組成物。
【0014】
7.前記項目1乃至6のいずれか1項目に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層された偏光板。
【0015】
8.液晶セルの少なくとも片面に前記項目7に記載の偏光板を備える液晶表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明による粘着剤組成物は、アクリル系共重合体とトルエンジイソシアネート系架橋剤との活性度を調節する安定剤の作用により、粘度変化が抑制されて保存安定性に優れ、十分なポットライフ(pot―life)を確保し、工程安定性も向上させることができる。
【0017】
また、本発明の粘着剤組成物は、従来の粘着剤として求められる物性を維持しつつも、架橋促進剤を用いることなく養生期間を画期的に短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、粘度変化が抑制されて工程安定性を向上させることができ、養生期間を短縮して生産性を向上させることができる粘着剤組成物、これを含む偏光板及び液晶表示装置に関するものである。
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0020】
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネートと架橋可能な官能基を有するアクリル系共重合体と、トルエンジイソシアネート系架橋剤と、有機酸安定剤とを含むことを特徴とする。
【0021】
イソシアネートと架橋可能な官能基を有するアクリル系共重合体は、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体と、イソシアネートと架橋可能な官能基を有する単量体との共重合体であり得る。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
【0022】
炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。そのうち、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、又はこれらの混合物が好ましい。
【0023】
炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、アクリル系共重合体の調製に用いられる全単量体100重量%に対して、好ましくは80〜99.9重量%含まれ、より好ましくは90〜98重量%である。含有量が80重量%未満の場合は、粘着力が十分に得られず、99.9重量%超過の場合は、凝集力の低下により耐久性に劣ることがある。
【0024】
イソシアネートと架橋可能な官能基を有する単量体は、イソシアネート系架橋剤との化学結合によって粘着剤組成物の凝集力又は粘着強度を補い、耐久性及び切断性を付与するための成分であって、例えば、ヒドロキシル基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、アミド基を有する単量体、三級アミン基を有する単量体、ビニル基を有する単量体等が挙げられ、これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0025】
ヒドロキシル基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレン基の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、そのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等の一価酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の二価酸、及びこれらのモノアルキルエステル;3−(メタ)アクリロイルプロピオン酸;アルキル基の炭素数が2〜3の2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキレン基の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキル基の炭素数が2〜3の2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加体に無水コハク酸を開環付加させた化合物等が挙げられる。
【0027】
アミド基を有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−三級ブチルアクリルアミド等が挙げられ、そのうち、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0028】
三級アミン基を有する単量体としては、N,N−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
ビニル基を有する単量体としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0030】
イソシアネートと架橋可能な官能基を有する単量体は、アクリル系共重合体の調製に用いられる全単量体100重量%に対して、好ましくは0.1〜20重量%含まれ、より好ましくは0.5〜10重量%である。含有量が0.1重量%未満の場合、粘着剤の凝集力が小さくなるため、耐久性が低下する恐れがあり、20重量%超過の場合、高いゲル分率によって粘着力が低下し、耐久性に問題が生じ得る。
【0031】
また、前記単量体以外に、他の重合性単量体が粘着力を低下させない範囲、例えば、10重量%以下でさらに含まれ得る。
【0032】
共重合体の調製方法は、特に限定されるものではなく、当分野において通常用いられる塊状重合、溶液重合、乳化重合、又は懸濁重合等の方法を利用して調製することができ、そのうちでも溶液重合が好ましい。また、重合の際に通常用いられる溶媒、重合開始剤、分子量制御のための連鎖移動剤等を用いることができる。
【0033】
アクリル系共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography;GPC)によって測定される重量平均分子量(Mw、ポリスチレン換算)が通常50,000〜2,000,000であり、好ましくは100,000〜1,500,000である。
【0034】
架橋剤は、アクリル系共重合体を適宜架橋することで粘着剤の凝集力を強化するための成分であって、イソシアネート系架橋剤の中でも、特にトルエンジイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0035】
トルエンジイソシアネート系架橋剤としては、トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパン等の多価アルコール系化合物1モルにトルエンジイソシアネート3モルを反応させた付加体、トルエンジイソシアネート3モルを自己縮合させたイソシアヌレ−ト体、トルエンジイソシアネート3モルのうち2モルから得られるトルエンジイソシアネートウレアに残り1モルのトルエンジイソシアネートが縮合されたビュレット体等が挙げられる。
【0036】
トルエンジイソシアネート系架橋剤は、固形分含有量を基準とし、アクリル系共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜15重量部含まれ、より好ましくは0.2〜5重量部である。含有量が0.01重量部未満の場合、架橋度の不足によって凝集力が小さくなり、浮きのような耐久性の低下を招いて切断性に劣り、15重量部超過の場合、過多な架橋反応により、かえって耐久性の低下を招いて保存安定性も劣り得る。
【0037】
本発明では、イソシアネートと架橋可能な官能基を有するアクリル系共重合体と、トルエンジイソシアネート系架橋剤との架橋反応の活性度を調節することができる有機酸安定剤を含むことを特徴としている。
【0038】
より詳しくは、有機酸安定剤は、塗工工程の前の粘着剤組成物中において、アクリル系共重合体とトルエンジイソシアネート系架橋剤との活性度を低下させ、粘度変化が抑制されて保存安定性を確保し、塗工の後に粘着剤組成物から揮発し、架橋反応の効率を高める。これにより、工程安定性及び養生短縮効果を同時に確保できるようになる。
【0039】
安定剤である有機酸の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、シュウ酸、酢酸、エトキシ酢酸、メトキシ酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、アクリル酸等を単独又は2種以上混合して用いることができる。これらの中で、沸点が150℃以下の酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、アクリル酸等が好ましく、より好ましくは沸点が120℃以下のものが、粘着剤組成物の塗工又は乾燥工程の後の揮発による除去が容易であるため、架橋反応の効率をさらに高められる点から好ましい。
【0040】
有機酸安定剤は、固形分含有量を基準として、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.001〜12重量部含まれ、好ましくは0.005〜8重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。含有量が0.001重量部未満の場合、粘着剤組成物の造液後にアクリル系共重合体と架橋剤との活性度を十分低下させ難いため、粘度変化の抑制が困難であり、12重量部超過の場合、乾燥の際に完全に揮発できずに粘着剤中に残存し、粘着物性及び耐久性を低下させかねない。
【0041】
前記粘着剤組成物には、ルイス酸架橋促進剤が含まれ得る。
【0042】
ルイス酸架橋促進剤の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、電子受容特性を有する下記化学式1で示される金属ハライド又は有機金属性化合物であり得る。
【0043】
[化学式1]
(RM(=O)
【0044】
前記化学式1中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アシル基で置換されるか非置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びアシルオキシ基からなる群から選択される1種以上の有機基であり、Mは、B、Mg、Al、Ca、Sn、Pb、又は3A〜7A族及び1B族のいずれか1族に属する遷移金属原子であり、nは、1〜6の整数であり、mは、0〜2の整数である。
【0045】
ルイス酸を形成する金属は、IUPACによる無機化学の命名法(1988)によって分類される。ルイス酸の具体的な例としては、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三塩化チタン、四塩化チタン、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化スズ(II)、四塩化スズ、臭化スズ(II)、四臭化スズ等の金属ハライド;トリアルキルボロン、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、モノアルキルアルミニウムハライド、テトラアルキルスズ、アルミニウムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズアセチルアセトネート、ジブチルスズジラウレート、マレイン酸ジオクチルスズ、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクタン酸カルシウム、オクタン酸マンガン、オクタン酸鉄、オクタン酸コバルト、オクタン酸亜鉛、オクタン酸ジルコニウム、オクタン酸スズ、オクタン酸鉛、亜鉛ラウレート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の有機金属化合物が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。これらの中で、ジブチルスズジラウレートが好ましい。
【0046】
ルイス酸架橋促進剤は、固形分含有量を基準として、アクリル系共重合体100重量部に対して、0〜1重量部含まれ、好ましくは0.001〜0.5重量部である。含有量が1重量部超過の場合、粘着剤による過度な硬化によりが低下しかねない。
【0047】
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0048】
シランカップリング剤の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ビニルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0049】
シランカップリング剤は、固形分含有量を基準として、アクリル系共重合体100重量部に対して、0〜10重量部、好ましくは0.005〜5重量部含まれる。含有量が10重量部超過の場合、耐久性が低下しかねない。
【0050】
前記のような成分の他に、粘着剤組成物は、用途に応じて求められる粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度、帯電防止性等を調節するために、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、腐食防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、染料、顔料、消泡剤、充填剤、光安定剤、帯電防止剤等の添加剤をさらに含むことができる。
【0051】
このように構成された粘着剤組成物は、従来の粘着剤として求められる物性を維持しつつも、有機酸安定剤の作用によって塗工工程前の粘着剤組成物の粘度変化が抑制され、十分なポットライフを確保して工程安定性を向上させることができ、塗工工程の後の架橋反応がさらに促進され養生期間も画期的に短縮し、生産性を向上させることができる。
【0052】
本発明の粘着剤組成物は、液晶セルとの接合のための偏光板用粘着剤のみならず、表面保護フィルム用粘着剤としても用いることができる。また、保護フィルム、反射シート、構造用粘着シート、写真用粘着シート、車線表示用粘着シート、光学用粘着製品、電子部品用粘着剤のみならず、一般商業用粘着シート製品、医療用パッチとしても使用可能である。
【0053】
本発明の偏光板は、粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されることを特徴とする。
【0054】
粘着剤層の厚さは、その粘着力に応じて調節することができ、通常3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。
【0055】
このような偏光板は、通常の液晶表示装置に全て適用可能であり、具体的には、粘着剤層が積層された偏光板が液晶セルの少なくとも片面に具備された液晶パネルを備える液晶表示装置を構成することができる。
【0056】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これら実施例は本発明の例示にすぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範疇及び技術思想の範囲内において、実施例に対する様々な変更及び修正が可能であることは当業者であれば明白なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0057】
[実施例]
調製例1.アクリル系共重合体
窒素ガスが還流され、容易な温度調節のための冷却装置が設置された1Lの反応器に、n−ブチルアクリレート(BA)97重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)2重量部及びアクリル酸(AA)0.5重量部、2−カルボキシエチルアクリレート(2CEA)0.5重量部からなる単量体混合物を投入した後、溶媒としてエチルアセテート(EA)100重量部を投入した。その後、酸素を除去するために窒素ガスを1時間投入して反応器を置換した後、温度を62℃に維持した。単量体混合物を均一に撹拌した後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.07重量部を投入して8時間反応させ、重量平均分子量が50万以上のアクリル系共重合体を調製した。
【0058】
実施例1
(1)粘着剤組成物
固形分含有量を基準として、調製例1のアクリル系共重合体100重量部、架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加体(COR−L、日本ポリウレタン工業製)0.5重量部、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学製)1重量部、安定剤として酢酸(AcA)0.5重量部を混合した後、コーティング性を考慮して25%濃度に希薄し、粘着剤組成物を調製した。
【0059】
(2)粘着シート
調製した粘着剤組成物をシリコーン離型剤がコーティングされたフィルム上に乾燥した後、厚さが25μmになるように塗布し、100℃で1分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その上に他の一層の離型フィルムをラミネートし、粘着シートを製造した。
【0060】
(3)粘着剤が粘着された偏光板
製造した粘着シートの離型フィルムを剥離した後、厚さ185μmのヨウ素系偏光板に、粘着剤層を粘着加工して積層し、粘着剤が粘着された偏光板を製造した。
【0061】
実施例2〜8、比較例1〜2
前記実施例1と同様に実施し、粘着剤組成物の成分及び含有量を下記表1のように用いた。ここで、含有量は重量部である。
【0062】
【表1】


【0063】
[試験例]
前記実施例及び比較例において調製した粘着剤組成物及び粘着剤が粘着された偏光板の物性を下記の方法を用いて測定し、その結果を下記表2に示した。
【0064】
1.保存安定性(粘度変化)
調製した粘着剤組成物の初期粘度と、常温で24時間放置した後の粘度とを、粘度測定計(Brookfield LVDV―II+B型(spindle no.3, 30rpm))を用いて測定した。測定した粘度の変化率(△η)を計算し、下記基準に基づいて評価した。
【0065】
<評価基準>
○:5%≦△η<10%
△:5%≦△η<15%
×:15%≦△η
【0066】
2.粘着力(N/25mm)
調製した粘着剤が粘着された偏光板を25mm×150mmのサイズで切断して離型フィルムを剥離した後、ガラス基板(#1737、コーニング社)に0.25MPaの圧力でラミネートし、オートクレーブ処理を施して試片を作製した。常温粘着力は、作製した試片を23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後に、加温粘着力は、試片を50℃、50%RHの条件下で48時間放置した後に、万能引張試験機(UTM、Instron)を用いて剥離速度300mm/分、剥離角度180°で粘着剤層を剥離して測定した。ここで、測定は23℃、50%RHの条件下で実施した。
【0067】
3.耐久性(耐熱、耐湿熱)
調製した粘着剤が粘着された偏光板を90mm×170mmのサイズで切断して離型フィルムを剥離した後、ガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)の両面に光学吸収軸が直交するように付着し、試片を作製した。この時、加えられた圧力は5Kg/cmであり、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業を行った。耐熱特性は、80℃の温度で1000時間放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察し、耐湿熱特性は、60℃の温度及び90%RHの条件下で1000時間放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察した。ここで、試片の状態を評価する直前に、常温で24時間放置した後観察した。
【0068】
<評価基準>
◎:気泡や剥離なし
○:気泡や剥離<5個
△:5個≦気泡や剥離<10個
×:10個≦気泡や剥離
【0069】
4.ゲル分率(%)
調製した粘着剤が粘着された偏光板を23℃、65%RHで1日間養生した。精秤した250メッシュの鉄網(100mm×100mm)に粘着剤が粘着された偏光板の粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れ出さないように包んだ。精密天秤で重量を正確に測定した後、鉄網をエチルアセテート溶液に3日間浸漬した。浸漬した鉄網を取り出して少量のエチルアセテート溶液で洗浄し、120℃で24時間乾燥した後、重量を測定した。測定した重量を用い、下記数学式1でゲル分率を計算した。
【0070】
[数学式1]
ゲル分率(%)=(C−A)/(B−A)×100
〔式中、Aは、鉄網の重量(g)、Bは、粘着剤層を貼付した鉄網の重量(B−A:粘着剤重量、g)、Cは、浸漬後に乾燥した鉄網の重量(C−A:ゲル化した樹脂の重量、g)である。〕
【0071】
【表2】


【0072】
前記表2のように、本発明によるアクリル系共重合体と、トルエンジイソシアネート系架橋剤と、有機酸安定剤とを含む実施例1乃至8の粘着剤組成物は、比較例1及び2の粘着剤組成物と比較して、粘着力及び耐久性に優れつつも粘度変化が抑制されて保存安定性に優れ、養生期間も短縮することができることが確認された。特に、有機酸安定剤が0.005〜8重量部含まれる場合、及び沸点が120℃以下の有機酸安定剤を用いる場合では、その効果がさらに向上し好ましいことが確認された。