特許第6073882号(P6073882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6073882-重質炭化水素の安定化方法 図000007
  • 特許6073882-重質炭化水素の安定化方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073882
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】重質炭化水素の安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 31/06 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   C10G31/06
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-522887(P2014-522887)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2014-524483(P2014-524483A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012047328
(87)【国際公開番号】WO2013019418
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月6日
(31)【優先権主張番号】61/513,457
(32)【優先日】2011年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511304464
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】オメル・レファ・コセオグル
(72)【発明者】
【氏名】アドナン・アル−ハッジ
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−138787(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0166250(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積物形成を減少するために、原料中に存在している堆積物前駆体であるアスファルテンの一部を除去することによって、貯蔵タンクおよび/または輸送ラインにおけるスラッジ形成を防止または減少するための、アスファルテンを含有する重質炭化水素の原料の安定化方法であって:
a.堆積物前駆体であるアスファルテンを溶剤凝集するために、所定量の溶剤とアスファルテンを含有する重質炭化水素原料を、添加剤を添加することなく混合する工程;溶剤は式C2n+2(式中、n=10〜20である)を有するパラフィン系溶剤、10〜20の範囲の炭素数を有する重質ナフサ溶剤およびこれらの混合物からなる群から選択される;
b.原料と溶剤の混合物を加熱し、原料中に堆積物前駆体である溶剤凝集したアスファルテンを生成する工程;
c.接触容器内の溶剤凝集したアスファルテンを含有する原料を、溶剤/炭化水素相と堆積物相に分離する工程;
d.溶剤/炭化水素相をフラッシングし、堆積物を含まない炭化水素画分と溶剤画分を生成する工程;
e.堆積物相をフラッシングし、堆積物底画分と軽質炭化水素画分を生成する工程;
f.軽質炭化水素画分をフラッシングし、堆積物を含まない炭化水素画分と溶剤画分を生成する工程;
g.工程(d)と(f)にて生成された溶剤画分を工程(a)に再利用する工程;および
h.工程(d)と(f)にて生成された堆積物を含まない炭化水素画分を回収する工程
を含む方法。
【請求項2】
溶剤と原料の比が容量で1:1〜10:1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接触容器の作動温度が80℃〜300℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
接触容器の作動圧力が1バール〜40バールの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
接触容器内の混合物の滞留時間が15分〜180分の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
堆積物前駆体であるアスファルテンを溶剤凝集させるために必要な溶剤と原料の比を決定するために、安定化方法に付される原料のサンプルを分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
処理された重質炭化水素原料から回収された溶剤凝集したアスファルテンの量が、原料の重量を基準に0.01W%〜10.0W%である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
原料が全原油、ビチューメン、タールサンド、シェール油、石炭液化液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される未精製炭化水素源に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
重質炭化水素原料が常圧残油、減圧残油、ビスブレーカー生成物、流動接触分解生成物または副生成物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される精製炭化水素源に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
重質炭化水素原料が36℃を超える温度で沸騰する混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
重質炭化水素原料が全原油であり、原料が溶剤と混合される前に原料をフラッシングする工程ならびに軽質ナフサおよび他の軽質成分を回収する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2011年7月29日に出願された仮特許出願USSN61/513,457に対する優先権を主張するものであって、その内容は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、貯蔵タンクおよび/または輸送ラインにおけるスラッジ形成を効率的に防止することによる、重質炭化水素の安定化方法に関する。
【0003】
関連技術の記載
原油およびそれらの重質炭化水素画分の組成は、それらの地理的起源およびタイプに依存して大きく変化する。様々な原油に由来するいくつかのサンプル減圧残油の性質を表1に示す。表1から明らかなように、減圧残油は0.2〜7.7W%の範囲の硫黄含有量および3800〜7800重量百万分率(ppmw)の範囲の窒素含有量を有しうる。減圧残油はニッケルおよびバナジウムなどの金属も含有しうるが、これらは用いられる触媒を不活性化または汚染するため、処理を困難にしている。
【表1】
【0004】
さらに、表1に示している減圧残油は、原油の源に依存して、0.3〜35W%の範囲であってよいアスファルテンを含有する。アスファルテンは、ノルマルペンタンなどの低沸点パラフィン溶剤の添加によって沈殿する粒子として定義される。それは本来固体であり、多環芳香族炭化水素を含む。
【0005】
アスファルテンの化学は複雑である。アスファルテンの分子組成は、用いられる溶剤タイプ、作動条件および油源に依存して、1つのアスファルテンと別のアスファルテンで異なることが知られている。アスファルテンの量はアスファルテンを分離するために用いられる溶剤の炭素数の増加と共に減少するが、処理された油の質の低下を伴うことも知られている。高炭素数溶剤を用いて回収されるアスファルテンは高度に凝縮された構造であり、例えば処理中または保存中に条件の変化があれば、堆積物を形成しやすい。
【0006】
油相の構造はファイファー(Pfeiffer)とサール(Saal)によってよく説明されているが、彼らは図1に模式的に示している石油のコロイドモデルを提唱した。このモデルによると、アスファルテンはアスファルテン−樹脂分散液のための溶剤として作用する芳香族などの樹脂分子および小分子に分散している;炭化水素は非溶剤として存在している。例えば、さらに炭化水素飽和物(saturates)を添加することにより、または反応もしくは物理的分離によって樹脂を除去することにより油組成が変化すると、油成分の間の平衡が変化し、その場合、アスファルテンは溶液から凝集し始め、癒合および沈殿しうる。
【0007】
一度溶液から凝集すると、アスファルテンは油貯蔵タンクおよび/または輸送ライン内で沈殿し始める。蓄積したアスファルテンの沈殿は「スラッジ」とも呼ばれる硬い堆積物を形成する。スラッジ形成によって生じる技術的問題は、パイプラインおよびバーナーノズルの閉塞、貯蔵容量の減少、ポンプ誤動作、腐食、誤測定ならびにプラッギングを含む。スラッジ形成を制御する因子は、酸化、静電帯電、凝固、揮発性ならびにワックスおよび固体成分の沈殿であり、通常、条件の変化に起因する。通常行われる貯蔵タンクの産業用メンテナンスは、不可避的に一時的な設備の作動不能を意味する。さらに、スラッジを除去するために従来の処理を用いると、非常に悪い環境影響の可能性がある。
【0008】
溶剤脱歴は、残油から有用な成分を抽出するために精油所で利用される方法である。抽出された成分は精油所にてさらに処理され得、そこでクラッキングされ、より軽質の画分、例えばガソリンおよびディーゼルなどに変換される。溶剤脱歴方法に用いられうる適切な残油原料は、例えば、常圧蒸留底残留物、減圧蒸留底残留物、原油、抜頭原油、石炭油抽出物、シェール油、およびタールサンドから回収される油を含む。溶剤脱歴方法は周知であり、例えばUSP3,968,023、USP4,017,383およびUSP4,125,458に記載されており、その開示のすべては参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0009】
典型的な溶剤脱歴方法では、1つ以上のパラフィン系化合物の組み合わせであってよい軽質炭化水素溶剤を残油原料と混合して凝集させ、油から形成された固体を分離する。脱歴方法に用いられる通常の溶剤およびそれらの混合物は、1〜7、好ましくは3〜7の範囲の炭素数を有するノルマルおよび/またはイソパラフィンを含み、最も好ましくは、プロパン、ノルマルおよび/またはイソブタン、ペンタン、ヘキサン、およびヘプタンを含む。温度および圧力上昇下では、一般的に溶剤の臨界温度未満で、混合物は以下の2つを含む液体流に分離される:(1)実質的にアスファルテンを含まない脱アスファルト油流、ならびに(2)アスファルテンおよび一部の溶解した脱アスファルト油を含む溶剤の混合物。
【0010】
溶剤脱歴方法は原料からほとんど全てのアスファルテンを除去し、それによってスラッジ形成を減少するのに効果的でありうる一方、原料の大部分は用いられる低炭素数パラフィン系溶剤の性質のためにアスファルトとして拒絶され、結果として収量の多くが失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵タンクおよび/または輸送ラインにおけるスラッジ形成を防止し、一方で処理される炭化水素流の質と収量の減少に対する有害作用を最小化するために、重質炭化水素原料を効率的に処理する方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概略
本発明は、堆積物前駆体であるアスファルテンの一部を除去することによって、およびさらなる堆積物形成を防止することによって、貯蔵タンクおよび/または輸送ラインにおけるスラッジ形成を防止する重質炭化水素の安定化方法を広範に包含し:
a.溶剤とアスファルテンを含有する重質炭化水素原料を混合し、原料中に存在している堆積物前駆体であるアスファルテンの一部を溶剤凝集させる(solvent-flocculate)工程;
b.原料と溶剤の混合流を加熱し、溶剤凝集したアスファルテンを含有する原料を生成する工程;
c.接触容器内の溶剤凝集したアスファルテンを含有する原料を溶剤/炭化水素相と堆積物相に分離する工程;
d.溶剤/炭化水素相をフラッシングし、堆積物を含まない炭化水素画分と溶剤画分を生成する工程;
e.堆積物相をフラッシングし、堆積物底画分と軽質炭化水素画分を生成する工程;
f.軽質炭化水素画分をフラッシングし、堆積物を含まない炭化水素画分と溶剤画分を生成する工程;
g.工程(d)と(f)にて生成された溶剤画分を工程(a)に再利用する工程;および
h.工程(d)と(f)にて生成された堆積物を含まない炭化水素画分を回収する工程
を含む方法を提供する。
【0013】
本明細書で用いられている用語「堆積物を含まない」画分は、便宜上用いられており、本発明の方法に従って処理される画分であって、堆積物を実質的に含まないが、少量の堆積物を含有しうる画分を意味する。
【0014】
本発明の方法に用いるのに適切な溶剤は、式C2n+2(式中、n=10〜20である)を有するパラフィン系溶剤、および10〜20の範囲の炭素数を有する重質ナフサ溶剤、ならびにそれらの混合物を含む。
【0015】
重質炭化水素原料は、本発明の溶剤凝集および処理方法により、わずか0.1W%〜最大10W%を除去することによって安定化されうる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に記載されている方法およびシステムは、以下の利点を提供する:
1.重質炭化水素が産生、貯蔵、輸送および精製工程の間に安定化される。
2.高炭素数パラフィン系溶剤または重質ナフサ溶剤、例えば、C10〜C20の溶剤が、堆積物前駆体であるアスファルテンを除去し、さらなる堆積物形成を防止するためにのみ用いられる。スラッジ形成は減少し、一方で収量の減少は最小化される。
3.接触容器内の相対的に低い温度および圧力作動条件が、相対的に低コストで方法の実施に必要な設備の追加を可能にする。用いられる方法に用いるのに適切な接触容器のタイプの選択は、非常に広範である。
4.本発明の方法は、重質炭化水素、特定の全原油およびその重質画分に広く適用できる。
【0017】
本発明の方法の他の態様、実施態様、および利点は、以下で詳細に議論している。さらに、前述の情報および以下の詳細な記載はいずれも様々な態様および実施態様の説明に役立つ単なる実例に過ぎず、請求項に記載の特徴および実施態様の性質および特性を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付の図面は、様々な態様および実施態様の実例およびさらなる理解を提供するために同封されている。該図面は、明細書の残部と共に、記載され、クレームされている本発明の態様および実施態様の原理および実施を説明するために役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
前述の概略、および以下の詳細な記載は、添付の図面と併せて読むと最もよく理解されうるであろう。図面の説明は以下の通りである:
【0019】
図1図1は、石油混合物のコロイド分散液の性質の代表例である模式的な実例である;
【0020】
図2図2は、本発明の重質炭化水素原料安定化システムおよび方法の模式的なフローダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な記載
ここで図2を参照すると、重質炭化水素安定化方法と装置10が模式的に示されている。装置10は加熱容器20、接触容器30、第一フラッシュ容器40、第二フラッシュ容器50、第三フラッシュ容器60、および溶剤タンク70を含む。別の実施態様では、装置10は、堆積物を含まない炭化水素貯蔵タンク80および堆積物底貯蔵タンク90を任意に含む。
【0022】
加熱容器20は、重質炭化水素原料を受け入れるための注入口21を含む。注入口21は導管73と流体連結しており、該導管は溶剤を移すための溶剤タンク70の排出口72と流体連結している。加熱容器20は、溶剤凝集したアスファルテンを含有する加熱された原料を排出するための排出口22も含む。
【0023】
接触容器30は、加熱容器20の排出口22と流体連結している注入口31、溶剤/炭化水素相を排出するための排出口32、および堆積物相を排出するための排出口34を含む。
【0024】
第一フラッシュ容器40は、接触容器30の排出口32と流体連結している注入口41、さらなる下流での処理または任意のタンク80内での貯蔵のために堆積物を含まない炭化水素を排出するための排出口42、および溶剤流を貯蔵タンク70に排出するための排出口44を含む。
【0025】
第二フラッシュ容器50は、接触容器30の排出口34と流体連結している注入口51、軽質炭化水素画分を排出するための排出口52、および堆積物底を任意の貯蔵タンク90に排出するための排出口54を含む。
【0026】
第三フラッシュ容器60は、第二フラッシュ容器50の排出口52と流体連結している注入口61、堆積物を含まない炭化水素を任意の貯蔵タンク80に排出するための排出口62、および溶剤流をタンク70に排出するための排出口64を含む。
【0027】
溶剤タンク70は、新たな溶剤を受け入れるための注入口74、ならびに回収された溶剤を受け入れるための第一フラッシュ容器40の排出口44および第三フラッシュ容器60の排出口64と流体連結している注入口71を含む。溶剤タンク70は、過剰な溶剤を排出するための排出口75および溶剤を加熱容器20に運ぶための導管73と流体連結している排出口72も含む。
【0028】
本発明の方法の実施において、アスファルテンを含有する重質炭化水素原料は、1:1〜10:1の溶剤と原料の容量比で溶剤と混合される。該比は、IP−390試験方法に従った、原料と処理されて安定化した原料の目標となる安定化の分析に基づいている。重質炭化水素原料は、本発明の溶剤凝集および処理方法によってわずか0.1W%〜最大10W%を除去することによって安定化されうる。混合流を加熱容器20の注入口21に導入し、100℃〜300℃まで加熱すると、原料中に溶剤凝集したアスファルテンが形成される。溶剤凝集したアスファルテンを含有する加熱された原料が接触容器30に移動し、そこで溶剤/炭化水素相と堆積物相を形成する。
【0029】
溶剤/炭化水素相は溶剤流の回収のために第一フラッシュ容器40に移動し、溶剤流は排出口44を経由して回収され、タンク70に貯蔵される;堆積物を含まない炭化水素流は排出口42を経由して排出され、タンク80に貯蔵されるか、またはさらなる下流の処理に付される。堆積物相は第二フラッシュ容器50に移動し、そこで軽質炭化水素画分が回収されて排出口52を経由して排出され、堆積物底が回収されて排出口54を経由して排出され、タンク90に貯蔵されるか、または適切な処分のために除去される。軽質炭化水素画分は堆積物を含まない炭化水素流の回収のために第三フラッシュ容器60に移動し、堆積物を含まない炭化水素流は排出口62を経由して排出され、任意にタンク80に貯蔵される;溶剤流はタンク70に排出される。
【0030】
特定の実施態様では、全原油等の原料は溶剤の添加前にフラッシュされ、軽質ナフサおよび他の軽質成分が除去される。軽質ナフサを実質的に含まない残りの部分は原油安定化装置10に移動し、上記方法に従って処理される。
【0031】
特定の実施態様では、堆積物底が回収され、タンク90に貯蔵される前に、5:1のヘキサデカンと原料の容量比にてヘキサデカンで洗浄され、および/または約1:1の範囲の溶剤と原料の容量比にてペンタンなどのC〜C軽質溶剤で洗浄され、残りの炭化水素原料および他の混入物が除去される。溶剤は再利用のためにフラッシュ容器内に回収されうる。
【0032】
本明細書に記載されている重質炭化水素安定化方法のための原料は、全原油、シェール油、石炭液化油、ビチューメン、およびタールサンドなどを含む天然源に由来する炭化水素、または減圧軽油、常圧残油もしくは減圧残油、コーキング、ビスブレーカーおよび流動接触分解操作の生成物などを含む精油工程に由来する炭化水素である。炭化水素原料は36℃を超える沸点を有する。
【0033】
適切な溶剤は、パラフィン系溶剤および重質ナフサ溶剤を含む。パラフィン系溶剤は、一般式C2n+2(式中、n=10〜20である)を有する。適切なパラフィン系溶剤は、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、およびn−エイコサンを含む。重質ナフサ溶剤は10〜20の範囲の炭素数を有してよく、原油または他の中間体精製工程、例えば水素化分解法に由来してよい。
【0034】
接触容器は、羽根車を有するバッチ容器、抽出容器、例えば遠心接触器、または接触カラム、例えばトレイカラム、スプレーカラム、充填塔、回転ディスク接触器およびパルスカラムであってよい。一般的に、接触容器のための作動条件は、80℃〜300℃の温度、特定の実施態様では100℃〜200℃の温度;1バール〜40バールの圧力;15〜180分の滞留時間、特定の実施態様では35〜90分の滞留時間、さらなる実施態様では約60分の滞留時間を含む。
【0035】
本発明の方法は、先行技術のスラッジ処理工程に対する改善を示すものであり、10〜20の範囲の炭素数を有する1つ以上のパラフィン系溶剤または重質ナフサ溶剤と原料を混合することによって、所定の相対的に少ない割合のアスファルテンを原料中に凝集させることで、重質炭化水素と関連するスラッジ形成を減少することによって達成される。本発明の方法によれば、重質炭化水素は安定化され、処理された炭化水素原料の収量および質は添加された溶剤による有意な影響を受けない。
【実施例】
【0036】
実施例1
初留点560℃を有する炭化水素サンプル(その性質は表2に示している)をヘキサデカンと1:1の容量比にて混合し、100℃および大気圧で1時間維持した。混合生成物を145〜175ミクロンの孔径を有するガラス濾過器を通して濾過し、0.1W%のアスファルテンを回収した。
【表2】
【0037】
実施例2
初留点290℃を有する炭化水素サンプル(その性質は表3に示している)をヘキサデカンと1:1の容量比にて混合し、100℃および大気圧で1時間維持した。混合生成物を145〜175ミクロンの孔径を有するガラス濾過器を通して濾過し、0.4W%のアスファルテンを回収した。
【表3】
【0038】
実施例3
初留点210℃を有する炭化水素サンプル(その性質は表4に示している)をヘキサデカンと1:1の容量比にて混合し、100℃および大気圧で1時間維持した。混合生成物を145〜175ミクロンの孔径を有するガラス濾過器を通して濾過し、0.5W%のアスファルテンを回収した。
【表4】
【0039】
実施例4
初留点36℃およびAPI度27.2°を有する原油サンプル(その性質は表5に示している)をヘキサデカンと、ヘキサデカンと原油の容量比が1:1となるように混合し、100℃および大気圧で1時間維持した。混合生成物を145〜175ミクロンの孔径を有するガラス濾過器を通して濾過した。ヘキサデカンと原油の容量比が5:1となるように残留物をヘキサデカンで洗浄し、次いでペンタンと原油の容量比が1:1となるようにペンタンで洗浄し、1.4W%のアスファルテンを得た。
【表5】
【0040】
実施例5
実施例4にて用いられたものと同一の原油サンプルをヘキサデカンと、ヘキサデカンと原油の容量比が1:5となるように混合し、100℃および大気圧で1時間維持した。混合流を145〜175ミクロンの孔径を有するガラス濾過器を通して濾過した。ペンタンと原油の容量比が5:1となるように残留物をペンタンで洗浄した。2.9W%のアスファルテンが得られた。
【0041】
本発明の方法およびシステムは上記され、かつ添付の図面に記載されている;しかしながら、本明細書を参照した当業者であれば本発明が修正されうることは明らかであろうし、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって決定される。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1] 堆積物形成を減少するために、原料中に存在している堆積物前駆体であるアスファルテンの一部を除去することによって、貯蔵タンクおよび/または輸送ラインにおけるスラッジ形成を防止または減少するための、アスファルテンを含有する重質炭化水素の原料の安定化方法であって:
a.所定量の溶剤とアスファルテンを含有する重質炭化水素原料を混合し、原料中に存在しているアスファルテンの一部を溶剤凝集させる工程;
b.原料と溶剤の混合物を加熱し、原料中に溶剤凝集したアスファルテンを生成する工程;
c.接触容器内の溶剤凝集したアスファルテンを含有する原料を、溶剤/炭化水素相と堆積物相に分離する工程;
d.溶剤/炭化水素相をフラッシングし、堆積物を含まない炭化水素画分と溶剤画分を生成する工程;
e.堆積物相をフラッシングし、堆積物底画分と軽質炭化水素画分を生成する工程;
f.軽質炭化水素画分をフラッシングし、堆積物を含まない炭化水素画分と溶剤画分を生成する工程;
g.工程(d)と(f)にて生成された溶剤画分を工程(a)に再利用する工程;および
h.工程(d)と(f)にて生成された堆積物を含まない炭化水素画分を回収する工程
を含む方法。
[2] 溶剤が式C2n+2(式中、n=10〜20である)を有するパラフィン系溶剤である、[1]に記載の方法。
[3] 溶剤が10〜20の範囲の炭素数を有する重質ナフサ溶剤である、[1]に記載の方法。
[4] 溶剤と原料の比が容量で1:1〜10:1の範囲である、[1]に記載の方法。
[5] 接触容器の作動温度が80℃〜300℃の範囲である、[1]に記載の方法。
[6] 接触容器の作動圧力が1バール〜40バールの範囲である、[1]に記載の方法。
[7] 接触容器内の混合物の滞留時間が15分〜180分の範囲である、[1]に記載の方法。
[8] 所定分量のアスファルテンを溶剤凝集させるために必要な溶剤と原料の比を決定するために、安定化方法に付される原料のサンプルを分析することを含む、[1]に記載の方法。
[9] 処理された重質炭化水素原料から回収された溶剤凝集したアスファルテンの量が0.01W%〜10.0W%である、[8]に記載の方法。
[10] 原料が全原油、ビチューメン、タールサンド、シェール油、石炭液化液、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される未精製炭化水素源に由来する、[1]に記載の方法。
[11] 重質炭化水素原料が常圧残油、減圧残油、ビスブレーカー生成物、流動接触分解生成物または副生成物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される精製炭化水素源に由来する、[1]に記載の方法。
[12] 重質炭化水素原料が36℃を超える温度で沸騰する混合物である、[1]に記載の方法。
[13] 重質炭化水素原料が全原油であり、原料が溶剤と混合される前に原料をフラッシングする工程ならびに軽質ナフサおよび他の軽質成分を回収する工程を含む、[1]に記載の方法。
図1
図2