(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073889
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】外科用開創器システムおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-526262(P2014-526262)
(86)(22)【出願日】2012年8月17日
(65)【公表番号】特表2014-529431(P2014-529431A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2012051480
(87)【国際公開番号】WO2013028571
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】61/525,646
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/532,751
(32)【優先日】2011年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508296440
【氏名又は名称】ニューヴェイジヴ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ハント、レオネル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハント、ジュニア ガブリエル イー.
(72)【発明者】
【氏名】シーレ、ドリュー
(72)【発明者】
【氏名】コージー、グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】バークホルダー、アラン
【審査官】
沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0221394(US,A1)
【文献】
特表2007−526080(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/059498(WO,A1)
【文献】
米国特許第05928139(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0036746(US,A1)
【文献】
特開昭61−041445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用開創器であって、
作動軸を画定する長尺状要素と、
前記長尺状要素に固定されかつ第1ブレード面を備える第1ブレードと、
開口部を画定する第2ブレードであって、前記長尺状要素に移動可能に固定され、前記第2ブレードの上に位置する基準点を画定し、前記第2ブレードの移動により、前記基準点が前記作動軸に対して平行でありかつ前記第1ブレード面に対して直交する直線方向に移動する、第2ブレードと、
前記開口部内に取外し可能に受け入れられるガイド要素と、を含み、
前記第2ブレードが、前記第1ブレード面に対向して位置する第2ブレード正面と第2ブレード背面とを備え、前記ガイド要素が前記開口部内に受け入れられると、前記ガイド要素が前記第2ブレード背面と接触する、
外科用開創器。
【請求項2】
前記第2ブレードを前記長尺状要素に対して移動させる手段をさらに含む、請求項1に記載の外科用開創器。
【請求項3】
前記手段が、ラックおよびギア機構、親ねじおよびナット機構、リニアレールおよびスライド機構のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の外科用開創器。
【請求項4】
係止要素をさらに含む、請求項3に記載の外科用開創器。
【請求項5】
前記ガイド要素が解剖器具を含む、請求項1に記載の外科用開創器。
【請求項6】
前記第1ブレードおよび前記第2ブレードの少なくとも一方を前記長尺状要素に固定する枠材をさらに含む、請求項1に記載の外科用開創器。
【請求項7】
前記枠材が、ガイド要素を取外し可能に受け入れるように寸法が決められた枠材開口部を画定している、請求項6に記載の外科用開創器。
【請求項8】
前記第1ブレードおよび前記第2ブレードの少なくとも一方が溝を画定している、請求項1に記載の外科用開創器。
【請求項9】
前記溝が、シム、Kワイヤ、光源、プローブおよび支持フレームのうちの少なくとも1つを少なくとも部分的に受け入れるように構成されている、請求項8に記載の外科用開創器。
【請求項10】
前記枠材が、前記枠材を関節アームに接続する接続要素を含む、請求項6に記載の外科用開創器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎手術に使用される外科用開創器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
側方脊椎外科的処置用の現行の開創器システムは、主に頭尾方向に伸びる筋線維を含む腰筋を通る円形の開口部を形成する。これらのシステムは、手術部位を初期拡張器/Kワイヤ挿入点から半径方向に広げる、逐次挿入される円形拡張器を使用し、それにより椎体の横突起に対する神経および血管の圧迫がもたらされる可能性がある。既存の開創器システムは、腰筋に入っている各器具の最後部をモニタリングすることができるが、関心部位内により大きい器具を導入し続ける。これらの先行するシステムはまた、通常、2つ、3つまたは4つの円形拡張器を含み、それらを、開創器を最も大きい拡張器の周囲に挿入することができる前に、最初に筋組織内に押し込まなければならない。半径方向に広がるマルチブレード開創器と結合されたこれらの円形拡張器は、著しい筋肉外傷をもたらす可能性があり、周囲組織の神経根をさらに伸長させるかまたは圧縮する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができる外科用開創器システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本技術は、外科用開創器および使用方法に関する。一実施形態では、外科用開創器は、作動軸を画定する長尺状要素を備えている。第1ブレード面を有する第1ブレードが、長尺状要素に固定される。開口部を画定する第2ブレードが、長尺状要素に移動可能に固定され、その第2ブレードの上に基準点を画定している。第2ブレードの移動により、基準点が、作動軸に対して略平行でありかつブレード面に対して略直交する直線方向に移動する。ガイド要素が、開口部内に取外し可能に受け入れられる。
【0005】
別の態様では、側方進入を用いる脊椎手術を行う方法は、標的手術部位の上方の第1位置内にガイド要素を挿入するステップと、標的手術部位の上方の第2位置内にガイド要素を再配置するステップとを含む。第2位置は、第1位置より後方であり得る。本方法は、開創器デバイスをガイド要素に沿って挿入するステップを含み、開創器デバイスは、ガイド要素の第1側のみに沿って挿入される第1開創器ブレードおよび第2開創器ブレードを有している。第1開創器ブレードは、標的手術部位に係留される。本方法は、第2開創器ブレードを第1開創器ブレードから離れる方向に移動させることにより、第1開創器ブレードおよび第2開創器ブレードを分離するステップと、標的手術部位への開放アクセスを維持するように第1開創器ブレードおよび第2開創器ブレードを係止するステップとを含む。
【0006】
上述した概略的な説明および以下の詳細な説明はともに例示的かつ説明的なものであり、請求項に記載されている技術のさらなる説明を提供するように意図されていることが理解されるべきである。
【0007】
現時点で好ましい実施形態が図面に示されているが、本技術は、図示されている厳密な構成および手段に限定されないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、全体として、開創器デバイス102、ガイド要素104および駆動装置106を備える開創器システム100を示す。開創器デバイス102は、2つのブレード118、120が固定されている長尺状要素110に結合されたハンドル108を備えている。いくつかの実施形態では、ハンドル108は、選択的に長尺状要素110に結合されるかまたは長尺状要素110から取り外される取外し可能ハンドルである。ブレード118、120を、長尺状要素110に直接固定することができ、または1つもしくは複数の枠材(armature)114、116に固定することができる。
図1に示すように、一実施形態では、枠材114、116は、長尺状要素110の側部から延在し、それにより、長尺状要素110が邪魔にならずに、ブレード118、120によって形成される外科的開口部(surgical opening)に対して、手術を行う外科医がアクセス可能となる。枠材114、116の一方または両方を、長尺状要素110に対して移動可能に固定することができる。この特定の実施形態では、駆動装置106を使用して、移動機構を作動させて、この場合は、長尺状要素110に沿ってラックと係合するギアを回転させる。移動機構は、枠材114、116を分離し、したがってブレード118、120を分離するように動作することができる。この機構は、
図3Bにおいてより明確に示されている。他の移動機構を使用して、ブレード118、120を長尺状要素に対して移動させることができる。たとえば、親ねじ/ナット機構およびリニアレール/スライド機構を使用することができる。これらのシステムのうちのいくつかでは、後述するように、追加の係止要素が必要である場合がある。開創器ブレード118、120の一方(一実施形態では、後方ブレード120)は、長尺状のガイド要素104を受け入れるための開口部を画定しており、その使用については後述する。さらに、ブレード118、120の一方または両方を、1つまたは複数のシムを取外し可能に受け入れるように構成することができる。
【0010】
図2に、ガイド要素104およびガイド要素挿入装置202が示されている。図示する実施形態では、ガイド要素104は、略D字型輪郭を有する長尺状の解剖器具であるが、本開示は、楕円形、台形、長円形、三角形等を含む他の長尺状の解剖器具輪郭形状を企図している。ガイド要素104の鈍い先端204および輪郭形状は、挿入プロセスを簡略化し、筋線維の平面に沿って腰筋を分離するのにも役立つ。プローブ206を、ガイド要素104に沿って長さ方向に延在する溝206aまたは開口部内に配置することができる。挿入後、所望の位置が確認されると、Kワイヤを、同じ溝かまたは第2溝を介してガイド要素104を椎間板腔に合体させるように配置することができる。代替実施形態では、Kワイヤを、ガイド要素104が挿入される前にガイド要素104内に先に挿入してもよい。
図2には、Kワイヤを受け入れるように寸法が決められ、かつ、プローブ溝とは別個の、ガイド要素104における開口部、穴または溝210が示されている。この開口部210は、完全に閉鎖した溝、部分的に閉鎖した溝、またはそれらの何らかの組合せであってもよい。実施形態に応じて、Kワイヤ溝210を、ガイド要素104(図示のとおり)の中もしくは上に、枠材114もしくは枠材116に、または前方開創器ブレード118もしくは後方開創器ブレード120に配置することができる。
【0011】
ガイド要素104は、挿入装置202に対して係合面を提供する複数の切欠き214を有することができる。図示する実施形態では、挿入のために、X線透過性アーム212を有する鉗子が使用される。他のタイプの挿入装置を使用することができ、または望ましい場合は、ガイド要素104を手で配置することも可能である。X線透過性鉗子アーム212は、通常、X線透視法中には現れないが、位置決めに役立つように、アーム202にX線不透過性マーカ208を含めることができる。いくつかの要素の場所/位置を示す、他の位置に配置されたX線不透過性マーカ208を利用することができる。さらに、ガイド要素104もまたX線透過性であり得る。外科的処置中に挿入されるインプラントの中心および前方境界に近接して、X線不透過性マーカを配置することも可能である。
【0012】
図3A〜
図3Bは、開創器デバイス102とともに使用される解剖器具型ガイド要素104のさまざまな図を示す。上述したように、駆動装置を使用して、移動機構を作動して、この場合は、長尺状要素110に沿ってラック304と係合するギア302を回転させる。係止要素302aが、たとえばラック304と係合することにより、係合したときのギアのそれ以上の移動を防止することができる。ガイド要素104は、開創器ブレード118、120のうちの少なくとも一方によって画定された開口部306内に受け入れられる。図示する実施形態では、開口部306は、後方ブレード120内に位置している。別法としてまたはさらに、開口部306を、前方ブレード118に、または枠材114、116のいずれかもしくは両方に配置することができる。ガイド要素104が皮膚表面および筋組織の所望の深さまで挿入されると、開創器デバイス102は、開口部306内にガイド要素104を受け入れるように、軸Aに沿って移動する。
図3Bに示すように、略D字型ガイド要素104の平坦部分は前方に(すなわちブレード118に向かって)面しており、それにより、開創器デバイス102は、対向する開創器ブレード118、120の正面が互いに面した状態で、ガイド要素104の上を摺動する。ガイド要素104は、後方ブレード120の外面に画定された開口部306内に位置しているため、両ブレード118、120のすべてまたは実質的にすべてが、ブレード118、120を拡張器の両側(または周囲)に配置する拡張器/開創器システムとは異なり、ガイド要素104の同じ側に位置している。
図3Aは、ブレード120の背面に沿って位置するガイド要素104とともに、後方開創器ブレード120の先端部310を示す。一般に、開創器ブレード118、120の先端部310は、ガイド要素104の先端204より下方に挿入されるべきではないが、望ましい場合は、ブレード118、120をさらに挿入することができる。
【0013】
図3Bはまた、長尺状要素110に沿って後方ブレード枠材116の位置を固定し、長尺状要素110に沿った、枠材116、したがってブレード120の不注意の移動を防止するために使用される、開創器ロック302aを示す。この場合、開創器ロック302aを、
図1に関連して上述したように、ギア302を駆動装置106によって回転させる前に係合解除することができる。そして、開創器ロック302aを、枠材116のさらなる移動を防止するように再度係合させることができる。開創器ロック302aは、長尺状要素110と、ラック304自体において、または長尺状要素110に位置する別個の箇所においてのいずれかで係合することができる。各枠材114、116は、後述するもの等の関節アーム接続308を備えている。開創器ブレード118、120が腰筋内に挿入されると、関節アーム(図示せず)を前方ブレード枠材114または後方ブレード枠材116のいずれかに接続することができる。関節アームの反対側の端部は、(通常、手術台上の)固定箇所に接続されて、開放機構の動作中に開創器デバイス102を適所に保持する。関節アームが前方ブレード枠材114に接続される場合、開放機構の作動により、後方ブレード120が長尺状要素110に沿ってハンドル108に向かって移動する。関節アームが後方ブレード枠材116に接続される場合、開放機構の作動により、前方ブレード118が後方ブレード120から離れる方向に移動する。この第2構成では、後方ブレード枠材116が長尺状要素110に接続されているため、前方ブレード118、その枠材114、長尺状要素110およびハンドル108の各々は、開放機構が操作される際に固定した後方ブレード120に対して移動する。ガイド要素104の位置および外科的通路(surgical corridor)の所望の位置に応じて、術者は、必要に応じて関節アーム接続308を形成することができる。関節アームによって後方ブレード120の位置を固定することにより、横突起に対する圧力により神経を圧迫しかつ/または血流を制限する可能性が低減するかまたはなくなる。2ブレード、平坦ブレード設計は、筋線維の平面に沿って腰筋を分割するのに役立ち、それにより外傷が低減する。
【0014】
ブレード118、120の一方または両方を、任意の数の開口部、溝、または電極プローブを受け入れるのを可能にする他の構造があるように構成することができ、それにより、開創器デバイス102の挿入中、ブレード118、120の開放中、またはブレード118、120の開放後、神経の位置を特定することができる。神経の近接性および方向を識別するこうしたプローブの使用は、脊椎手術の分野内では周知であり、本明細書ではこれ以上説明しない。さらに、同じかまたは他の溝を使用して、外科用通路を照明するために使用される光源を保持することができる。
【0015】
図4は、開創器システム100の部分側面図を示す。いくつかの実施形態では、デバイスの開創器ブレード118、120に、外科手術中に特定の目的に役立つ1つまたは複数のシムを取り付けることができる。拡大シムを使用して、筋組織が外科用通路に侵入しないことを確実にするのに役立てることも可能である。延長シムを使用して、ブレード118、120の貫通の深さを有効に伸ばすことができる。椎間板内シムを使用して、椎間板にアクセスするように脊椎の椎間板腔を貫通し、開創器デバイス102のブレード118、120のうちの一方を脊椎に対して適所に保持することができる。
図4に示すように、前方ブレード118および後方ブレード120を、シム挿入器402が間の空間にアクセスすることができるようにわずかに分離させることができ、シム挿入器402は、ブレードに沿った適切な位置まで下方にシム404を案内するのに使用される。
図5Aおよび
図5Bは、それぞれ、巻付け型シム502および内部閉鎖型(internally−confined)シム504を示す。いずれのシムタイプも、前方ブレード118および後方ブレード120のいずれかまたは両方において開創器デバイス102とともに使用することができる。シムが設置されると、開創器ブレード118、120を所望の最大位置まで開放する前に、Kワイヤおよびガイド要素104の一方または両方を取り除くことが望ましい場合がある。いずれのシム502、504も、ブレード120に位置するラック508と係合するラチェット506を有することができ、それにより、シム502、504を所望の深さまで挿入し適所に保持することができる。
図5Aおよび
図5Bに示すシム502、504の両方は、ブレード120の位置を体内に固定するのに役立つように、椎間板腔内に挿入することができる先端510を有する椎間板内シムである。ラック508は、ブレード118、120の内部溝512の一部に沿って延在することができ、または内部溝512の全長にわたって延在することができる。
【0016】
図6A〜
図6Bは、筋組織内に外科用通路を形成する、開放位置で示されている開創器デバイス102の実施形態を示す。当然ながら、機能的外科用通路は、必ずしもブレード118、120が最大距離まで開放されることを必要としない。望ましいかまたは必要である場合、ブレード118、120の先端部310に対する支持を提供するために、ブレード118、120の間にフレーム612を配置することができる。これは、たとえば、周囲組織がブレード端310の内方のたわみを強制し、したがって外科用通路の狭窄をもたらす場合に有用であり得る。フレーム612を、ブレード118、120の一方または両方に位置する内部溝512を介して適所に保持することができ、挿入要素610(たとえば一対の鉗子)を用いて挿入することができる。
図6Aおよび
図6Bはまた、前方ブレード118に位置する延長シム614を示す。
【0017】
長尺状要素110に対するブレードの移動を、
図6Aに関連して説明する。長尺状要素110は、作動軸Oを画定する。前方ブレード118および後方ブレード120の各正面は平面を画定する。明確にするために、
図6Aには前方平面Pのみを示す。ブレード118、120の各々も、その上に基準点606を有している。基準点606は、ブレードの正面602または背面604に位置することができ、または、その上の画定された点、たとえば、重心、ブレード先端、X線不透過性基準点等であり得る。さらに、基準点606は、別個の物理的点である必要はない。代りに、本明細書では、その用語を用いて、ブレード118、120の移動をさらに画定する。上記に関らず、
図6Aでは、後方ブレード120の背面604に、所定の基準点606が識別されている。この例の目的では、上述した関節アームは前方ブレード枠材114に接続される。したがって、移動機構(ギア302)が操作されると、後方ブレード120がハンドル108に向かって移動する。それに関して、基準点606は、作動軸Oに対して略平行でありかつ前方ブレード平面Pに対して略直交する移動軸Mに沿って移動する。軸および平面のこの構成は、ブレード118、120の実質的に平坦な構成とともに、筋線維平面に沿った筋肉分離を確実にするのに役立ち、それにより筋肉外傷が限定される。当然ながら、関節アームが後方ブレード枠材116に接続される場合、前方ブレード118の同様の移動が発生する。前方ブレード118に位置する基準点は、作動軸Oに対して略平行であるとともに後方ブレード平面に対して略直交する軸に沿って移動する。また、関節アームが後方ブレード枠材116に接続される場合、後方ブレード120の移動をさらに制限するのに役立つように、図示する椎間板内シム504を椎間板内腔に挿入することができる。一般に、椎間板内シム504の先端510は、椎間板内シム504が設置されるブレード118、120の移動中にブレード先端310を越えて延在しない。
【0018】
図7は、外科的処置において開創器システムを使用する方法700を示す。本方法を、側方進入脊椎手術に関して説明するが、本明細書に記載するシステムおよび方法を、筋肉および/または神経の外傷が限定されることが望まれる実質的にいずれの外科手術においても使用することができる。筋線維の、限定され制御された分離が望ましい外科手術では、本明細書に記載する開創器システムは特に有利であり得る。さらに、
図7では一連の動作として示すが、方法700は、動作を組み合わせるかまたは動作を完全に排除することができる。たとえば、神経モニタリングおよびプローブに関する動作を、外科医が神経モニタリングを選択しない場合には省略することができる。最初に、ガイド要素が関心部位(この場合、腰筋)内に挿入され(動作702)、標的組織、器官または骨格構造(この場合は椎骨または椎間板腔)に向かって誘導される。電極プローブを、挿入の前のガイド要素内に配置し、ガイド要素と同時に導入することができる。そして、プローブに通電し、フィードバックをモニタリングして(たとえば腰神経叢における)神経反応を検査する(動作704)。特定の外科手術においては、ガイド要素は、椎間板の前方1/3の近くに中心が置かれるように配置される。ガイド要素を、必要または望ましい場合には、略好適な位置が見つかるまで再配置することができる(動作706)。位置が外科手術を続けるのに安全であることを確認するために、電極モニタリング(動作704)を繰り返すことができる。特定の実施形態では、ガイド要素は、所望の位置が見つかるまでわずかな刻みで後方に再配置され(動作706)、神経モニタリングは、外科手術を続けるのに位置が安全であることを示す。特定の実施形態では、ガイド要素は、可能な限り後方に配置され、それにより、後続する開創器ブレードの移動は、後方ブレードから離れる前方ブレードのみの移動となる。
【0019】
適切な位置が確認されると、腰筋に平面を形成し開創器が挿入される初期開口部を作成するように、ガイド要素を横方向に滑らかに動かすことができる(動作708)。その後、Kワイヤを、ガイド要素を介して標的領域に向かって挿入し(動作710)、椎間板腔に対して固定することができる。開創器デバイスを挿入する前に、モニタリングプローブをガイド要素から取り除き(動作712)、開創器ブレードのうちの一方に挿入することができる。これにより、状況によっては望ましい場合がある、開創器の挿入中の神経反応のモニタリングが可能になる。別法として、開創器とともに第2モニタリングプローブを使用することができる。開創器システムの一意の構成により、開創器ブレードは、ガイド要素の同じ側のそのそれより前の掃引移動によって形成された開口部内に挿入される。上述したように、これは、筋線維に沿った腰筋の分離に役立つ。さらに、両ブレードをガイド要素の同じ側に挿入することにより、ガイド要素を所望の手術部位の後方側に位置決めすることができ、後方ブレードはまた、所望の手術部位の後方側にも位置決めされる。
【0020】
開創器デバイスが初期外科用開口部内に挿入される(動作714)と、ガイド要素は、開創器ブレード、通常は後方開創器ブレードによって画定された開口部内に挿入される。開創器ブレードを筋肉内の一定距離まで挿入した後、プローブに通電することができ、フィードバックをモニタリングして、ブレードの位置および/または近くの神経に対する近接性を確認することができる(動作716)。しかしながら、このブレード位置モニタリング動作716は必ずしも行う必要はない。上記に関らず、開創器ブレードがそれらの所望の貫通深さまで達すると、関節アームを、後方ブレード枠材および前方ブレード枠材のいずれかに接続することができる(動作718)。上述したように、枠材のいずれかへの接続により、枠材のいずれが移動するか、したがって開創器ブレードの分離の方向(すなわち、前方にまたは後方に)が決まる。枠材に固定されると、外科的処置を完了するために多くの種々の行為を実質的にいずれの順序でも行うことができる。たとえば、ブレードをわずかに広げることができ、シムを挿入することができる(動作720)。シムは、上述した目的のいずれかを達成することができ、一実施形態では、ブレードのうちの一方の先端部をさらに係留させて、それを所望の手術部位に対して適所に固定するのに役立つ。その後、または別法として、ブレードをさらに広げることができ、フレームを挿入して(動作722)開創器ブレードの先端部に剛性を与えることができる。この場合もまた、このブレード分離を、他方のブレードが略適所に残っている間に単一のブレードのみが移動することによって行うことができる。いかなる時点においても、部分または完全椎間板切除術、および外科医の裁量によりインプラントの挿入等、所望の外科的処置を行うことができる(動作724)。当然ながら、必要に応じて、ブレードの挿入後のいかなる時点で外科的処置を行うことも可能であり、処置中のいかなる時点においてシムおよび/またはフレームを挿入することも可能である。たとえば、外科的処置が、フレームの挿入なしで、ただし処置中に開始される場合、外科的通路は収縮し始め、それにより、外科医が、シムおよび/またはフレームを挿入することができる。さらに、処置中に必要に応じて、係止機構を係止しかつ係止解除することができる。
【0021】
開創器システムの製造で利用される材料は、外科用機器で通常使用されるものであってよい。ステンレス鋼、チタン、および滅菌することができる他の頑強な金属を使用することができる。処置中に(たとえば本明細書に記載する脊椎外科的処置において)X線透視法が望ましいかまたは必要である用途では、X線透過性材料が特に望ましい可能性がある。それらの用途では、アルミニウム、陽極酸化処理されたアルミニウムおよび剛性ポリマーを利用することができる。カーボンファイバで補強されたポリマーは、軽量であり、極めて強力であり、滅菌することができるため、特に有用である。当然ながら、材料の組合せを利用する開創器システムを使用することができる。たとえば、ブレードに対してX線透過性材料を使用することができ、長尺状要素および枠材に対してより安価なX線不透過性材料を利用することができる。さらに、X線透過性材料をX線不透過性材料と不連続な位置に充填することができ、それにより、処置中に、全体的な可視性を妨げることなく、システムのいくつかの部分の位置を可視にすることができる。
【0022】
本明細書では、本技術の例示的かつ好ましい実施形態であると考えられるものが説明されているが、本技術の他の変更形態が、本明細書の教示から当業者には明らかとなろう。本明細書に開示した特定の製造方法および幾何学的形状は、本質的に例示的なものであり、限定するものとみなされるべきではない。したがって、本技術の趣旨および範囲内にあるこうしたすべての変更形態が、添付の特許請求の範囲において保証されることが望まれる。したがって、特許証によって保証されることが望まれるものは、以下の特許請求の範囲において定義され区別される技術およびすべての均等物である。