(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の一態様を得るに至った経緯]
以下、実施の一態様を具体的に説明するに先立ち、実施の一態様を得るに至った経緯について説明する。
【0015】
近年、有機EL装置は表示装置や光源等に広く利用されているため、長寿命化の要請がさらに高まっている。そこで、発明者らは、発光層、電極を含む有機EL部への水や酸素等の侵入を抑制した有機EL装置を提供することで、この要請に応えようとした。
[実施の一態様の概要]
本発明の一態様に係る有機EL装置は、可撓性基板と、前記可撓性基板上に設けられた有機EL部と、前記可撓性基板上に設けられ、前記可撓性基板上の、前記有機EL部が設けられた領域と異なる領域に設けられ、前記可撓性基板上に設けられた配線を介して前記有機EL部と電気的に接続された外部端子と、無機材料を主成分とし、前記有機EL部を被覆する無機封止膜と、樹脂材料を主成分とし、前記無機封止膜を被覆する樹脂封止膜とを備え、前記可撓性基板は、前記有機EL部が形成された領域と、前記外部端子が形成された領域との間に屈曲部を有し、前記無機封止膜の前記外部端子側の延出端が前記屈曲部よりも前記有機EL部寄りに位置し、且つ、前記樹脂封止膜の前記外部端子側の延出端が前記屈曲部よりも前記外部端子寄りに位置する、ことを特徴とする。
【0016】
かかる構成の有機EL装置によれば、無機封止膜にクラックが入ることによる封止性の劣化を抑制することができる。
【0017】
また、樹脂封止膜の外部端子寄りの端部から有機EL部までの距離が大きくなり、封止膜と他の層との界面に沿って有機EL部に水や酸素等が侵入することを抑制できる。
【0018】
また、例えば、前記可撓性基板の屈曲部に前記配線が設けられており、前記屈曲部における前記配線上を前記樹脂封止膜が被覆していてもよい。
【0019】
かかる構成の有機EL装置によれば、可撓性基板が屈曲する際に屈曲部において配線および樹脂封止膜の両方に応力が加わるので、配線にかかる応力を緩和することが出来る。
【0020】
また、例えば、前記有機EL部を駆動するための駆動チップをさらに備え、前記配線は、前記外部端子から引き出され、前記駆動チップの入力端子に接続された第1配線と、前記有機EL部から引き出され、前記駆動チップの出力端子に接続された第2配線とからなり、前記駆動チップは、前記可撓性基板上において、前記屈曲部よりも前記外部端子寄りの位置で、前記樹脂封止膜に被覆されていてもよい。
【0021】
かかる構成の有機EL装置によれば、封止性を向上させた有機EL装置を提供できる。
【0022】
また、例えば、前記配線は、前記外部端子から引き出された第1配線と、前記有機EL部から引き出された第2配線とからなり、前記外部端子は、前記第1および第2配線の厚さと同じ厚さを有する第1層と、当該第1層上に形成された第2層とからなってもよい。
【0023】
かかる構成の有機EL装置によれば、外部端子の構造がより強固となり、外部駆動用回路との接続をより確実に行うことができる。
【0024】
また、例えば、無機材料を主成分とし、前記屈曲部よりも前記外部端子側に位置する周辺無機封止膜をさらに備えてもよい。
【0025】
かかる構成の有機EL装置によれば、屈曲部よりも外周側における封止性を良好に保つことができる。
【0026】
また、例えば、前記有機EL部は、第1有機EL領域と、第2有機EL領域とを含み、前記可撓性基板には、前記第1および第2有機EL領域の間に屈曲部がさらにあり、前記第1および第2有機EL領域の間の前記可撓性基板の前記屈曲部には、前記無機封止膜が形成されていなくてもよい。
【0027】
かかる構成の有機EL装置によれば、2つの表示領域を有し、且つ、2つの表示領域との間で屈曲可能な有機EL表示パネルを提供できる。
【0028】
また、例えば、前記第1および第2有機EL領域の間の前記屈曲部には、前記樹脂封止膜が形成されていてもよい。
【0029】
かかる構成の有機EL装置によれば、有機EL装置は屈曲部において応力が加わりやすいが、樹脂封止膜により有機EL装置に加わる応力を緩和することが出来る。
[実施の形態]
<実施の形態1>
以下、本発明の有機EL装置の一例として、有機EL表示パネルについて、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、説明のための模式図であり、各部の厚さおよび各部の大きさの比などは、必ずしも厳密に表したものではない。また、各図において、実質的に同一の構成部材については同一の符号を付す。
【0030】
なお、本実施の形態において屈曲部とは、可撓性基板の曲率半径が最も小さくなる箇所、もしくは、可撓性基板の曲率半径が50mm以下の箇所を言う。
【0031】
本実施の形態では、可撓性基板101の延伸方向が180度変化させた折り返し構造について説明する。以下、屈曲部を「折り返し箇所」と呼ぶ。
1.全体構成
図1の断面図に示すように、有機EL表示パネル100は、可撓性基板101と、可撓性基板101上に設けられた有機EL部103と、可撓性基板101上に設けられ、配線を介して有機EL部103と電気的に接続された外部端子105と、有機EL部103を被覆する封止膜111とを備える。
【0032】
封止膜111は、無機封止膜109と樹脂封止膜110とを含んでいる。無機封止膜109は、有機EL部103を被覆する。無機封止膜109の外部素子側の延出端109αは、折り返し箇所αよりも有機EL部103寄りに位置する。外部素子側の延出端とは、無機封止膜109の両端のうち外部端子側に近い側に位置する端部を意味している。
【0033】
樹脂封止膜110の外部端子側の延出端110αは、折り返し箇所αよりも外部端子105寄りに位置する。
【0034】
無機封止膜109は、少なくとも有機EL部を折り返し箇所αは、樹脂封止膜110により被覆されており、可撓性基板101と樹脂封止膜110との間には無機封止膜109は存在していない。
【0035】
さらに、有機EL表示パネル100は、外部端子105から引き出された第1配線106と、有機EL部103から引き出された第2配線102と、第1配線106からから入力された電圧を増幅する駆動チップ107とを備える。また、折り返し箇所αには、外部端子105と有機EL部103とを電気的に接続する、第1配線106もしくは第2配線102のいずれか形成されている。
【0036】
有機EL部103には、複数のTFT(薄膜トランジスタ)および平坦化層からなるTFT層と、陽極と、発光層と、陰極等とが形成されている。TFTを構成する電極には、選択線、電源線、および信号線等の第2配線102が接続されている。なお、有機EL表示パネル100は、発光層からの光を可撓性基板101の反対側から取り出すトップエミッション型である。以下、有機EL表示パネル100における各部構成を説明する。
2.各部構成
(可撓性基板)
可撓性基板101は、公知の樹脂材料、例えば、ポリイミドから構成されている。また、可撓性基板101の厚さは、10μm〜300μmであればよく、例えば、38μmである。
(外部端子、配線)
可撓性基板101上に設けられる外部端子105、第1配線106、および第2配線102は、同じ材料で形成される。そして、外部端子105、第1配線106および第2配線102は、例えば、Al合金層にインジウム酸化物層を積層したものである。Al合金層の厚さは、例えば、200nmである。インジウム酸化物層の厚さは、例えば、20nmである。なお、外部端子105、第1配線106および第2配線102は、同じ材料で形成されるに限らず、別の材料で形成されてもよい。
【0037】
外部端子105は、駆動チップ107から引き出された配線のうち、封止膜111により被覆されていない部分である。そして、可撓性基板101のうち、外部端子105の設けられた領域が、接続領域122にあたる。外部端子105と外部駆動用回路との接続は、例えば、外部駆動用回路の端部に設けられたクリップで、樹脂封止膜110から露出された外部端子105および可撓性基板101を挟むことにより行われる。当該クリップを用いた接続により、有機EL表示パネル100は、接続領域122で、外部駆動用回路と接続される。
【0038】
第1配線106は、駆動チップ107の入力端子と接続され、外部駆動用回路から入力される電圧を、駆動チップ107に出力する機能を果たす。
【0039】
第2配線102は、駆動チップ107の出力端子と接続され、駆動チップ107から入力される電圧を、有機EL部に含まれるTFTの対応する電極に出力する。
(有機EL部)
有機EL部103は、画素毎に設けられた発光層と、発光層を挟む電極対とにより構成される。可撓性基板101のうち、有機EL部103の設けられた領域が、表示領域121にあたる。有機EL部103が電極対に電圧が出力されることで発光層が発光し、所望の画像を表示することができる。例えば、有機EL部103は、TFTおよび平坦化層を含むTFT層と、TFT層上に形成された隔壁と、隔壁により画素毎に区画された陽極とを備える。また、有機EL部103において、各陽極上に、ホール輸送層と、電子輸送性発光層と、電子注入層とが積層されている。さらに、有機EL部103は、画素全体に拡がる陰極を備える。
(駆動チップ)
駆動チップ107は、例えば、ICチップである。また、駆動チップ107の入力端子は第1配線106と接続される。さらに、駆動チップ107の出力端子は第2配線102と接続される。これにより、駆動チップ107は有機EL部103と電気的に接続されている。なお、駆動チップ107の入力端子および出力端子は、例えば、はんだやACFによる接合部108によって第1配線106および第2配線102にそれぞれ接続される。(無機封止膜、樹脂封止膜)
無機封止膜109は、無機材料、例えば、窒化シリコンから構成される。無機封止膜109の厚さは、例えば、2μmである。樹脂封止膜110は、樹脂材料、例えば、エポキシ系樹脂から構成される。樹脂封止膜110の厚さは、例えば、20μmである。なお、無機封止層は主成分が無機材料であればよく、樹脂封止層は樹脂材料を主成分とするものであればよい。樹脂封止膜110は、折り返し箇所αよりも外部端子105寄りの位置で、駆動チップ107を被覆している。これにより、有機EL装置100の封止性を向上できる。
【0040】
次に、
図2を用いて、有機EL表示パネルの折り返しについて説明する。
図1は、
図2(a)の上面図のA−A´断面図に相当する。
図2(b)は、基板を表示領域側から見た斜視図であり、
図2(c)は基板を表示領域の反対側から見た斜視図である。なお、本発明の実施の形態1における有機EL表示パネルは、アクティブマトリクス方式で駆動される。
【0041】
有機EL表示パネル100は、可撓性基板101上に、表示領域121と接続領域122と、表示領域121と接続領域122との間に存在する折り返し箇所αとを有する。また、可撓性基板101は、折り返し箇所αで折り返される。可撓性基板101を折り返し箇所αで折り返すと、
図2(b)、
図2(c)に示すようになる。この折り返しにより、駆動チップ107および接続領域122は、表示領域121の反対側に位置することとなる。
3.封止構造についての考察
図1に示すように、表示領域121には、有機EL部103、有機EL部103を被覆する無機封止膜109が形成されている。また、無機封止膜109は樹脂封止膜110に被覆されている。ここで、折り返し箇所α(折り返し箇所α)には、有機EL部103は設けられていない。これは、折り返しにより有機EL部103が破損することを抑制するためである。また、折り返し箇所αには、無機封止膜109は設けられていない。折り返し箇所αにおいて無機封止膜109にクラックが入ると、クラックは無機封止膜109内を伝達し、有機EL部103が位置する領域の封止性が劣化する恐れがある。それに対して、折り返し箇所αには、無機封止膜109が形成されていないことにより、有機EL部103における封止性の劣化を抑制することができる。
【0042】
なお、無機封止膜109の材料は、可撓性基板101および樹脂封止膜110の材料に比べて可撓性が小さい。本実施の形態では、封止膜111が無機封止膜と樹脂封止膜を有する構成について述べたが、材料は本実施の形態に限られない。有機EL表示パネル100は、有機EL部103を被覆する第1の封止膜と、第1の封止膜よりも可撓性が大きい第2の封止膜を有していればよい。
【0043】
また、折り返し箇所αには樹脂封止膜110が形成されている。折り返し箇所αにおいて可撓性基板101は折り曲げられているため、当該領域には応力が加わりやすい。樹脂封止膜110を折り返し箇所αに形成することで、折り返し箇所αに配線(第1配線106、第2配線102)が形成されている場合、配線にかかる応力を緩和することができる。
【0044】
なお、封止膜111は、折り返し箇所αよりも外部端子105側の位置まで延在している。
【0045】
有機EL装置の封止性を向上させ、第2の経路での有機EL部への侵入を抑制するためには、封止膜111の端部と有機EL部103との間の距離を大きくすればよい。
【0046】
ところで、一般に、封止膜は有機EL部を被覆するように基板上に広く形成することができる。しかしながら、基板上における有機EL部に電気的に接続される外部端子を露出する接続領域を、封止膜で被覆することはできない。一方、一般にFPCは折り返し箇所で折り返される。従って、基板における接続領域は、FPCの折り返し箇所よりも有機EL部寄りに位置する。その結果、封止膜の端部は、FPCの折り返し箇所よりも有機EL部寄りに位置することとなる。
【0047】
これに対して、本実施の形態では、基板として可撓性を有するフレキシブル基板を用いることで、別個にFPC配線基板を形成することなく、フレキシブル基板とFPC配線基板とを一体化して構成されている。そして、一体のフレキシブル基板に有機EL部および外部端子を形成することで、封止膜を有機EL部上から接続領域の手前まで伸ばせることを見出した。具体的には、可撓性基板に外部端子を形成し、可撓性基板が、有機EL部が形成された領域と外部端子が形成された領域との間の折り返し箇所で屈曲されている。さらに、封止膜が折り返し箇所よりも外部端子寄りの位置まで延在している。その結果、本発明の一態様にかかる有機EL装置において、有機EL部への水や酸素等の侵入を抑制し、封止性を向上させた有機EL装置を提供できる。
【0048】
以下、有機EL表示パネル100のポイントである封止構造について、
図3を用いて説明する。
図3(a)は、
図1に示した有機EL表示パネル100の上面図であり、
図3(b)は、比較例にかかる有機EL表示パネル800の上面図である。本発明および比較例の差異は、基板および外部端子の構成にある。本発明では、外部端子は可撓性基板上に形成される。一方、比較例では、外部端子はフレキシブル基板(以下、FPCと呼ぶ)に形成されている。さらに、比較例では、FPCと可撓性基板とが、異方導電性接着材(以下、ACFと呼ぶ)により接続されている。なお、本発明および比較例にかかる各部材の厚さや材料等の構成は、特に記載が無い限り同じものとする。
【0049】
有機EL表示パネル100では、外部端子105と外部駆動用回路とを接続するため、接続領域122において外部端子105を露出する必要がある。そのため、封止膜111は、接続領域122を除く領域に拡がっている。具体的には、封止膜111は、表示領域121を被覆し、且つ、可撓性基板101の折り返し箇所αよりも外部端子105寄りの位置まで延在している。
【0050】
一方、有機EL表示パネル800は、表示領域821を有し、且つ折り返し箇所αで折り返される可撓性基板801を備える。また、ACF834により、可撓性基板801と、外部端子805等が形成されたFPC833とが接続されている。有機EL表示パネル800では、可撓性基板801とFPC833とを接続するため、ACF834で接着される領域を露出する必要がある。そのため、封止膜811は、ACF834で接着される領域を除く領域に拡がっている。具体的には、封止膜811は、表示領域821を被覆し、且つ、可撓性基板801の折り返し箇所αよりも表示領域821寄りの位置まででとどまっている。
【0051】
次に、本発明および比較例における有機EL表示パネルの封止性について考察する。一般に、封止膜による封止性は、封止膜の厚さと拡がりとによって変化する。すなわち、封止膜の厚みが大きいほど、あるいは、封止膜の面積が大きいほど、一般に封止性が向上する。そして、本発明および比較例においては、封止膜の拡がりの差異により、封止性の差異が生じている。以下、具体的に説明する。
【0052】
表示領域121、821を囲む4辺と平行である封止膜111、811の4つの端部のうち、封止膜111、811で位置が異なるものは、折り返し箇所αに平行な辺であって外部端子105、805に近い延出端111α、811αである。そして、封止膜111、811の延出端111α、811αが異なる位置にあることにより、表示領域121、821における端部121α、821α近傍の封止性の差異が生じると考えられる。上述のように、封止膜111は、可撓性基板101の折り返し箇所αよりも外部端子105寄りの位置まで延在している。一方、封止膜811は、可撓性基板801の折り返し箇所αよりも表示領域821寄りの位置まででとどまっている。そのため、表示領域121の端部121αと封止膜111の延出端111αとの距離L
1aは、表示領域821の端部821αと封止膜811の延出端811αとの距離L
1bよりも大きい。なお、端部121αと折り返し箇所αとの距離L
2aは、端部821αと折り返し箇所αとの距離L
2bと同じである。これは、狭縁化の要請から、表示領域と折り返し箇所αとの距離はできるだけ小さくすることが必要であるためである。そのため、設計時において、表示領域と折り返し箇所αとの距離は所定の値に定まることとなる。
【0053】
表示領域121の端部121αと封止膜111の延出端111αとの距離L
1aが大きいほど、延出端111αから封止膜111の界面に沿って、有機EL部103に水や酸素等が侵入することを抑制できる。このように、本発明の有機EL表示パネル100では、比較例にかかる有機EL表示パネル800よりも封止性が向上している、といえる。なお、有機EL表示パネル100における距離L
2aと有機EL表示パネル800における距離L
2bとは同じであるため、有機EL表示パネル100においても狭縁化の要請には応えることができる。
4.効果
以上のように、無機封止膜109の外部端子105側の延出端109αが折り返し箇所αよりも有機EL部103寄りに位置し、且つ、樹脂封止膜110の外部端子105側の延出端110αが折り返し箇所αよりも外部端子105寄りに位置する。そのため、無機封止膜109にクラックが入ることによる封止性の劣化を抑制することができる。
【0054】
また、樹脂封止膜110の外部端子105側の延出端が折り返し箇所αよりも外部端子105寄りに位置する構成となっていることで、良好な封止性を有する有機EL表示パネル100を提供できる。
【0055】
5.その他
本実施の形態では、屈曲部が折り返し箇所αであるとして説明を行った。しかし、屈曲部は折り返し箇所αのように、可撓性基板101が可撓性基板101上の裏面に向けて折り返されている構造に限られない。例えば、可撓性基板101が所定の角度(例えば45度)屈曲している構成であればよい。以下の実施の形態についても同様である。
【0056】
また、封止性の観点から、無機封止膜109は、複数に分離しておらず、有機EL部103の上方の領域で連続した構成であることが好ましい。樹脂封止膜110についても同様である。ただし、有機EL表示パネル100は、無機封止膜109及び樹脂封止膜110を複数有していてもよい。例えば、無機封止膜109が屈曲部よりも有機EL部側で複数に分離していてもよい。また、屈曲部よりも外部端子105側に、さらに周辺無機封止膜を有していてもよい。
【0057】
また、
図1〜
図3では、フレキシブル基板とFPC配線基板とが一体化して構成されている実施の形態について説明した。
【0058】
外部駆動用回路との接続のためにFPCを設け、ACFにより可撓性基板とFPCとを接続する従来の構成では、当該接続部分が剥離してしまい電気的接続が切断され、電源供給ができなくなってしまうおそれがある。これに対し、有機EL表示パネル100では、ACFによる接続部分が存在しないので、電源供給をより確実に行うことができる。
【0059】
しかしながら、フレキシブル基板とFPC基板とは別体で構成されるものであってもよいことは言うまでもない。すなわち、外部端子105からACFを介してFPCと接続していてもよい。
【0060】
<実施の形態2>
図4は、本発明の実施の形態2における有機EL表示パネルの断面図である。実施の形態2における構成と実施の形態1の構成との差異は、外部端子の厚みがより大きくなっている点である。なお、実施の形態1と同一の構成は同一の符号を記して説明を省略する。1.構成
有機EL表示パネル200は、可撓性基板101上に形成された外部端子205および第1配線206を備える。外部端子205は、第1配線206および第2配線102と同じ厚さを有する第1外部端子205aと、第1外部端子205a上に形成された第2外部端子205bとからなる。
【0061】
第1配線206および第1外部端子205aは、実施の形態1と同様に、例えば、Al合金層にインジウム酸化物層を積層したものである。Al合金層の厚さは、例えば、200nmである。インジウム酸化物層の厚さは、例えば、20nmである。一方、第2外部端子205bは、銀合金から構成される。第2外部端子205bの厚さは、例えば、4μmである。なお、第2外部端子205bは、例えば、印刷法により形成する。
2.効果
有機EL表示パネル200では、第1外部端子205a上に第2外部端子205bを形成することで、外部端子205全体での厚さが大きくなる。このように、外部駆動用回路との接続に用いる外部端子205の厚さを大きくすることで、構造がより強固となり、外部駆動用回路との接続をより確実に行うことができる。
【0062】
ところで、第2外部端子205bの材料である銀合金の導電率は、第1外部端子205aの材料であるAl合金およびインジウム酸化物の導電率よりも高い。また、配線の電気抵抗は、長さが同じである場合、断面積が大きいほど小さくなる傾向がある。そして、外部端子205の厚さを大きくすることにより、断面積も大きくなっているといえる。これにより、第2外部端子205bが第1外部端子205aに積層されることにより、外部端子205の電気抵抗を小さくできる。
<実施の形態3>
図5は、本発明の実施の形態3における有機EL表示パネルの上面図である。また、
図6は
図5に示した有機EL表示パネルの断面図である。実施の形態3における構成と実施の形態1、2の構成との差異は、表示領域が2つある点と、可撓性基板に2つの折り返し箇所α、βが形成されている点とである。なお、実施の形態1、2と同一の構成は同一の符号を記して説明を省略する。
1.構成
図5に示すように、有機EL表示パネル300は、可撓性基板301上に2つの表示領域321a、321bを有する。2つの表示領域321a、321bの間には折り返し箇所βがあり、折り返し箇所βにおいて可撓性基板301の折り返しが可能である。封止膜311は、可撓性基板301の折り返し箇所αよりも外部端子305寄りの位置まで延在している。第1外部端子305a上に第2外部端子305bが形成されている。
【0063】
また、
図6に示すように、表示領域321a、321bには、有機EL部303a、303bおよび有機EL部303a、303bを被覆する無機封止膜309a、309bがそれぞれ設けられている。封止膜311は、無機封止膜309a、309bと樹脂封止膜310とで構成される。ここで、折り返し箇所βには、有機EL部303a、303bは設けられていない。これは、折り返しにより有機EL部303a、303bが破損することを抑制するためである。また、折り返し箇所βには、無機封止膜309a、309bは設けられていない。これは、折り返しにより、無機封止膜309a、309bが破損することを抑制するためである。無機封止膜309a、309bの破損を抑制することにより、例えばクラックが有機EL部303a、303bの領域まで広がり有機EL部の封止性の劣化を抑制することができる。
【0064】
なお、有機EL部303a、303bに含まれる陰極および無機封止膜309a、309bの材料は、可撓性基板301および樹脂封止膜310の材料に比べて可撓性が小さい。
【0065】
また、折り返し箇所α、βには、樹脂封止膜310が形成されていることにより、折り曲げにより可撓性基板301にかかりやすい応力を緩和することができる。また、折り返し箇所α、βに配線構造が形成されている場合には、配線構造に加わる応力を緩和し、配線構造の損傷を抑制することができる。
2.効果
この構成によれば、2つの表示領域321a、321bを有し、且つ、2つの表示領域321a、321bとの間で折り返しが可能な有機EL表示パネル300を提供できる。
<変形例>
以上、実施の形態を説明したが、以下のような変形例が考えられる。
1.有機EL表示パネル
上記実施の形態等では、アクティブマトリクス方式で駆動される有機EL表示パネルを説明した。しかしながら、これに限らず、例えば、パッシブマトリクス方式の有機EL表示パネルにも、本発明を適用できる。パッシブマトリクス方式の場合は、アクティブマトリクス方式の構造における配線が、陽極としての機能を果たすこととなる。
【0066】
また、上記実施の形態等では、有機EL表示パネルにおける有機発光層の発光色については言及しなかったが、単色表示、および、フルカラー表示の有機EL表示パネルに適用できる。フルカラー表示の有機EL表示パネルにおいては、1つの発光層に対応する部分が、RGB各色のサブピクセルに相当し、隣り合うRGBのサブピクセルが組み合わさって一画素が形成され、この画素がマトリクス状に配列されて画素単位の表示領域が形成される。
【0067】
さらに、上記実施の形態等では、トップエミッション型の有機EL表示パネルを例に説明したが、ボトムエミッション型の有機EL表示パネルであっても同様に実施可能である。
2.駆動チップ
上記実施の形態等では、有機EL表示パネルは1つの駆動チップを備えた。しかしながら、これに限らず、複数の駆動チップを備えてもよい。これにより、大画面の有機EL表示パネルを提供できる。さらに、上記実施の形態等では、駆動チップにおいて、入力端子の数が出力端子の数と等しかった。しかしながら、これに限らず、入力端子の数と出力端子の数とが異なる駆動チップを用いてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、可撓性基板上に設けられた引き出し配線上に駆動チップをはんだにより接続した。しかしながら、これに限らず、例えば、外部駆動用回路に駆動チップを設置してもよい。
3.外部駆動用回路との接続
上記実施の形態等では、露出させた外部端子が形成された基板を、外部駆動用回路に設けたクリップで挟みこむことで、外部駆動用回路と有機EL表示パネルとを接続した。しかしながら、これに限らず、例えば、外部端子と外部駆動用回路に設けた配線とをACFで接着してもよい。
4.封止構造
上記実施の形態等では、可撓性基板上に接続配線および選択線等の配線を直接形成した。しかしながら、これに限らず、可撓性基板上に、水分を遮断する窒化シリコンから構成されるバリア層および、アクリル系樹脂から構成される平坦化層を形成してもよい。これにより、有機EL表示パネルの封止性をさらに向上できる。
【0069】
また、上記実施の形態等では、無機封止膜と樹脂封止膜とで構成される封止膜により有機EL部を被覆し、封止性を確保した。しかしながら、これに限らず、樹脂封止膜上にさらに可撓性基板を形成してもよい。これにより、有機EL表示パネルの封止性をさらに向上できる。
5.本発明の適用
上記実施の形態等では、本発明の有機EL装置として、有機EL表示パネルを説明した。しかしながらこれに限らず、本発明の有機EL装置は照明装置等にも適用できる。