特許第6073906号(P6073906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コヴィディエン リミテッド パートナーシップの特許一覧

<>
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000002
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000003
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000004
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000005
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000006
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000007
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000008
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000009
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000010
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000011
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000012
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000013
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000014
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000015
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000016
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000017
  • 特許6073906-光学トロカールシステム 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073906
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】光学トロカールシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20170123BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A61B1/00 320E
   A61B17/34
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-537147(P2014-537147)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公表番号】特表2015-500671(P2015-500671A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】US2012060392
(87)【国際公開番号】WO2013059175
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】61/548,428
(32)【優先日】2011年10月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュボート, グレゴリー
【審査官】 ▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−516737(JP,A)
【文献】 特開2008−296027(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0033237(US,A1)
【文献】 特開2011−125709(JP,A)
【文献】 特開平08−266548(JP,A)
【文献】 特表2005−503230(JP,A)
【文献】 特表2008−504886(JP,A)
【文献】 特開2006−289083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学トロカールシステムであって、前記光学トロカールシステムは、
第1の直径を有する伸長管状部材であって、前記伸長管状部材は、遠位領域を有し、前記遠位領域は前記伸長管状部材の前記第1の直径と実質的に等しい直径を有する第1の直径区画を有し、前記伸長管状部材は、前記第1の直径未満の直径を有する第2の直径区画を有し、前記伸長管状部材は、長手方向ボアを画定し、前記長手方向ボアは、内視鏡を受け取るように構成されている、伸長管状部材と、
前記伸長管状部材の前記遠位領域に取着された光学部材であって、前記光学部材は、前記伸長管状部材の前記第2の直径区画を封入し、前記光学部材は、少なくとも部分的に透明であることで、前記内視鏡を用いた組織の可視化を可能にする、光学部材と
を備え
前記光学部材は、前記光学部材の外側表面が前記伸長管状部材の外径と実質的に同一の直径を有するように、前記伸長管状部材の前記遠位領域に成形されている、光学トロカールシステム。
【請求項2】
カニューレアセンブリをさらに備え、前記伸長管状部材は、前記カニューレアセンブリの中に挿入されるように構成されている、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項3】
前記光学部材は、前記伸長管状部材の最遠位端から遠位に延在する、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項4】
前記光学部材は、長手方向軸に対して斜めに配置される内部傾斜表面を画定する、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項5】
前記内部傾斜表面は、前記内視鏡の遠位端の最外の外周によって係合されるような構成およびサイズにされている、請求項に記載の光学トロカールシステム。
【請求項6】
前記内部傾斜表面は、前記内視鏡の前記遠位端と光学部材との間に空隙を提供する、請求項に記載の光学トロカールシステム。
【請求項7】
前記光学部材は、組織を切断または切開することなく、組織平面間を剥離するように構成されている、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項8】
前記光学部材は、その最遠位端において丸みを帯びた誘導突起を画定する、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項9】
前記光学部材の外側表面の中心区画は、直径方向に対向する一対の略凸状表面を含む、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項10】
前記光学部材の前記外側表面の前記中心区画は前記直径方向に対向する一対の略凸状表面間で円周方向に位置付けられる直径方向に対向する一対の略凹状表面をさらに含む、請求項に記載の光学トロカールシステム。
【請求項11】
前記伸長管状部材は、近位領域に筐体を含み、前記筐体は、内視鏡を受け取ってその保持を提供するために、開口部と前記開口部に隣接するスコープ保持部材とを含む、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項12】
前記光学部材は、中空である、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項13】
前記第2の直径区画は、少なくとも1つの隙間を含み、前記光学部材は、前記少なくとも1つの隙間の少なくとも一部を封入する、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【請求項14】
光学部材は、前記伸長管状部材の前記遠位領域成形されることによって、前記伸長管状部材の前記遠位領域に取着される、請求項1に記載の光学トロカールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2011年10月18日に提出された米国特許仮出願第61/548,428号の利益および優先権を主張し、それの全内容は、本明細書で参照により援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、身体組織を通して剥離するためのトロカールシステムに関する。より具体的には、本開示は、光学式の、刃を装備しないトロカールシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の背景
内視鏡および腹腔鏡の最小侵襲性手技は、医療デバイスを患者の内側に導入し、患者の生体構造の一部を視認するために使用されている。典型的には、所望の解剖学的部位を視認するために、外科医は、内視鏡を患者の内側に挿入し、解剖学的部位の画像を描画してもよい。内視鏡外科手術手技では、外科手術は、皮膚内の小入口創傷を通して挿入された狭い内視鏡管(カニューレ)を通して、身体の任意の中空器官または組織内で行なわれる。腹腔鏡手技では、腹部における外科手術は、小切開部(通常、約0.5〜約1.5cm)を通して行なわれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
例示的実施形態によると、本発明は、光学トロカールシステムであって、第1の直径を有する伸長閉塞具部材であって、伸長閉塞具部材は、遠位領域を有し、遠位領域は、実質的に伸長閉塞具部材の第1の直径と等しい直径を有する第1の直径区画を有し、第1の直径未満の直径を有する第2の直径区画を有する、伸長閉塞具部材と、光学部材であって、光学部材が伸長閉塞具部材の第2の直径区画と第1の直径区画の少なくとも一部とを封入するように、伸長閉塞具部材の遠位領域に取着される、光学部材とを備える、光学トロカールシステムに関し得る。光学トロカールシステムはまた、カニューレアセンブリを備えてもよい。伸長管状部材は、カニューレアセンブリ内への挿入のために構成されてもよい。
【0005】
有利には、光学部材は、管状部材の最遠位端から遠位に延在する。伸長管状部材は、長手方向ボアを画定してもよい。長手方向ボアは、内視鏡を受け取るように構成されてもよい。伸長管状部材は、近位領域に筐体を含んでもよく、筐体は、内視鏡を受け取ってその保持を提供するために、開口部と開口部に隣接するスコープ保持部材とを含む。光学部材は、少なくとも部分的に透明であることで、内視鏡で組織の可視化を可能にしてもよい。光学部材は、長手方向軸に対して斜めに配置される内部傾斜表面を画定してもよい。内部傾斜表面は、内視鏡の遠位端の最外の外周によって係合されるような構成およびサイズにされてもよい。内部傾斜表面は、内視鏡の遠位端と光学部材との間に空隙を提供してもよい。
【0006】
光学部材は、組織を切断または切開せずに、組織平面(tissue plane)間を剥離するように構成されてもよい。光学部材は、その最遠位端に、丸みを帯びた誘導突起を画定してもよい。光学部材の外側表面の中心区画は、直径方向に対向する一対の略凸状表面を含んでもよい。光学部材の外側表面の中心区画はまた、直径方向に対向する一対の略凸状表面間で円周方向に位置付けられる直径方向に対向する一対の略凹状表面を含んでもよい。光学部材は、光学部材の外側表面が実質的に伸長管状閉塞具部材の外径と同一の直径を有するように、管状部材の遠位領域に成形されてもよい。光学部材は、中空であってもよい。
【0007】
種々の実施形態では、第2の直径区画は、少なくとも1つの隙間を含んでもよく、光学部材は、少なくとも1つの隙間の少なくとも一部を封入してもよい。光学部材は、そこに成形される、例えばオーバーモールド成形されることによって、伸長閉塞具部材の遠位領域に取着されてもよい。例示的実施形態によると、本発明は、その遠位端に光学部材を有する伸長閉塞具部材を含む光学トロカールシステムであって、光学部材の外側表面の中心区画は、直径方向に対向する一対の略凸状表面を含み、光学部材の外側表面の中心区画はさらに、直径方向に対向する一対の略凸状表面間で円周方向に位置付けられる直径方向に対向する一対の略凹状表面を含む、光学トロカールシステムに関し得る。光学部材は、組織を切断または切開せずに、組織平面間を剥離するように構成されてもよい。光学部材は、その最遠位端に、丸みを帯びた誘導突起を画定してもよい。伸長管状部材は、近位領域に筐体を含んでもよく、筐体は、内視鏡を受け取ってその保持を提供するために、開口部と開口部に隣接するスコープ保持部材とを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
光学トロカールシステムであって、
第1の直径を有する伸長閉塞具部材であって、前記伸長閉塞具部材は、遠位領域を有し、前記遠位領域は、実質的に前記伸長閉塞具部材の前記第1の直径と等しい直径を有する第1の直径区画を有し、前記第1の直径未満の直径を有する第2の直径区画を有する、伸長閉塞具部材と、
光学部材であって、前記光学部材が前記伸長閉塞具部材の前記第2の直径区画および前記第1の直径区画の少なくとも一部を封入するように、前記伸長閉塞具部材の前記遠位領域に取着される、光学部材と
を備える、光学トロカールシステム。
(項目2)
カニューレアセンブリをさらに備える、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目3)
前記伸長管状部材は、前記カニューレアセンブリ内への挿入のために構成される、項目2に記載の光学トロカールシステム。
(項目4)
前記光学部材は、前記管状部材の最遠位端から遠位に延在する、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目5)
前記伸長管状部材は、長手方向ボアを画定する、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目6)
前記長手方向ボアは、内視鏡を受け取るように構成される、項目5に記載の光学トロカールシステム。
(項目7)
前記光学部材は、少なくとも部分的に透明であることで、前記内視鏡での組織の可視化を可能にする、項目6に記載の光学トロカールシステム。
(項目8)
前記光学部材は、長手方向軸に対して斜めに配置される内部傾斜表面を画定する、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目9)
前記内部傾斜表面は、前記内視鏡の遠位端の最外の外周によって係合されるような構成およびサイズにされる、項目8に記載の光学トロカールシステム。
(項目10)
前記内部傾斜表面は、前記内視鏡の前記遠位端と光学部材との間に空隙を提供する、項目8に記載の光学トロカールシステム。
(項目11)
前記光学部材は、組織を切断または切開することなく、組織平面間を剥離するように構成される、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目12)
前記光学部材は、その最遠位端に丸みを帯びた誘導突起を画定する、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目13)
前記光学部材の外側表面の中心区画は、直径方向に対向する一対の略凸状表面を含む、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目14)
前記光学部材の前記外側表面の前記中心区画はさらに、前記直径方向に対向する一対の略凸状表面間で円周方向に位置付けられる直径方向に対向する一対の略凹状表面を含む、項目13に記載の光学トロカールシステム。
(項目15)
前記伸長管状部材は、近位領域に筐体を含み、前記筐体は、内視鏡を受け取ってその保持を提供するために、開口部と前記開口部に隣接するスコープ保持部材とを含む、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目16)
前記光学部材は、前記光学部材の外側表面が、実質的に前記伸長管状閉塞具部材の前記外径と同一の直径を有するように、前記管状部材の前記遠位領域に成形される、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目17)
前記光学部材は、中空である、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目18)
前記第2の直径区画は、少なくとも1つの隙間を含み、前記光学部材は、前記少なくとも1つの隙間の少なくとも一部を封入する、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目19)
光学部材は、前記伸長閉塞具部材の前記遠位領域に、そこで成形されることによって取着される、項目1に記載の光学トロカールシステム。
(項目20)
光学トロカールシステムであって、
伸長閉塞具部材を備え、前記伸長閉塞具部材は、その遠位端に光学部材を有し、前記光学部材の外側表面の中心区画は、直径方向に対向する一対の略凸状表面を含み、前記光学部材の前記外側表面の前記中心区画はさらに、前記直径方向に対向する一対の略凸状表面間で円周方向に位置付けられる直径方向に対向する一対の略凹状表面を含む、光学トロカールシステム。
(項目21)
前記光学部材は、組織を切断または切開せずに、組織平面間を剥離するように構成される、項目20に記載の光学トロカールシステム。
(項目22)
前記光学部材は、その最遠位端に、丸みを帯びた誘導突起を画定する、項目20に記載の光学トロカールシステム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の前述および他の局面、特徴、ならびに利点は、添付の図面と関連して読み取られるとき、以下の詳細な説明に照らして、より明白となる。
【0009】
図1図1は、本開示の例示的実施形態による、光学トロカール、例えば、視覚化閉塞具、システムの分解斜視図であって、光学アクセス装置およびカニューレアセンブリを図示する。
【0010】
図2図2は、図1の実施形態による、完全に組み立てられた光学トロカールシステムの斜視図である。
【0011】
図3図3は、図1−2の実施形態による、光学トロカールの光学部材の拡大斜視図である。
【0012】
図4図4は、図1の光学部材の上面図である。
【0013】
図5図5は、図3の光学部材の軸方向図である。
【0014】
図6図6は、図4の上面図に対して半径方向に90°オフセット(radially offset 90°)された光学部材の側面図である。
【0015】
図6A図6Aは、そのおおよその長手方向中点における図6の光学部材の正面横断面図である。
【0016】
図6B図6Bは、図2の光学トロカールシステムの伸長管状部材遠位端領域および光学部材の横断面図である。
【0017】
図6C図6Cは、図6Bの光学アクセス装置の伸長管状部材遠位端領域および光学部材の横断面図であって、内視鏡がその中に位置付けられている。
【0018】
図7図7は、図1の完全に組み立てられた光学トロカールシステムの斜視背面図である。
【0019】
図8図8は、図1の光学アクセス装置の閉塞具筐体のスコープ保持部材の斜視図である。
【0020】
図9図9は、図2のカニューレアセンブリのカバーの上面図である。
【0021】
図10図10は、カニューレアセンブリのカバーの横断面図である。
【0022】
図11図11は、図1のカニューレアセンブリのカバーの斜視図である。
【0023】
図12図12は、図1のカニューレアセンブリの器具シールの斜視図である。
【0024】
図13図13は、図1のカニューレアセンブリの器具シールの断面図である。
【0025】
図14図14は、光学アクセス装置内に位置付けられ、身体組織にアクセスする内視鏡を図示する、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本開示の特定の実施形態は、添付の図面を参照して、本明細書に後述される。しかしながら、開示される実施形態は、単に、本開示の例示であって、種々の形式で具現化されてもよいことを理解されるべきである。公知の機能または構造は、本開示を不必要な詳細さで曖昧にすることを回避するために、詳細には説明されない。したがって、本明細書に開示される具体的構造および機能上の詳細は、限定としてではなく、単に、請求項の基礎として、および当業者が事実上任意の適切に詳細な構造において、本開示を様々に用いるための教示のための代表的基礎として、解釈されるべきである。類似参照番号は、図の説明全体を通して、類似または同じ要素を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「遠位」は、ユーザからより離れている、器具またはその構成要素の部分を指す一方、用語「近位」は、ユーザにより近い、器具またはその構成要素の部分を指す。
【0028】
本発明は、その種々の例示的実施形態によると、解剖学的、例えば、腹部の壁を通しての体腔へのアクセスを提供する、光学トロカールシステムに関し得る。この議論の目的のために、用語「光学トロカールシステム」は、多くの場合、用語「視覚化閉塞具システム」と同義的に本明細書で使用されることに留意されるべきである。有利には、本発明の光学トロカールシステムは、その種々の例示的実施形態によると、組織を切断または切開せずに、むしろ、外科手術手技の間、組織平面を分離することによって、そのようなアクセスを提供する。また、本発明の光学トロカールシステムは、その種々の例示的実施形態によると、閉塞具の遠位端に位置する透明光学部材を提供することによって、身体組織線維が分離されるにつれて、身体組織線維の可視化を提供し、それによって、体壁にわたる制御された横断を可能にしてもよい。
【0029】
次に、図1から14を参照すると、本発明の例示的実施形態による、光学トロカール、例えば、視覚化閉塞具、システムが、図示される。視覚化閉塞具は、内視鏡、例えば、腹腔鏡の外科手術手技において、組織平面を分離するよう意図され、特に、外科手術手技の間の腹腔膜のブラントジセクション(blunt dissection)に好適である。視覚化閉塞具は、内視鏡を受け取り、手術部位に向かう視覚化閉塞具の挿入および前進の間、組織の視認を可能にするように適合させられる。
【0030】
示される例示的実施形態によると、視覚化閉塞具システム10は、閉塞具アセンブリ11と、少なくとも部分的に閉塞具アセンブリ11を受け取る、カニューレアセンブリ100とを含む。閉塞具アセンブリ11は、伸長閉塞具部材14と機械的に協働するように配置される閉塞具筐体12を含み、長手方向軸「A−A」を画定する。伸長閉塞具部材14は、閉塞具筐体12から遠位に延在する。
【0031】
伸長閉塞具部材14は、その近位端において閉塞具筐体12に、その遠位端において光学部材20に、例えばそこにオーバーモールド成形することによって取着される、剛性(例えば、金属)の閉塞具シャフト18を含む。図3−6に示されるように、光学部材20は、近位区画22、中心区画24、および非外傷性誘導突起26を含む。光学部材20は、中空内部を有する。図6Cに示されるように、内視鏡の遠位視認先端は、本明細書に後述されるように、光学部材20内の傾斜/面取り表面と係合するように持ってこられる。図3−6を参照すると、想像線28(曲率を図示するために示される)は、近位区画22と中心区画24との間の境界を描き得る。
【0032】
図4を参照すると、光学部材20の上面図が、図示される。描写されるように、近位区画22は、直径方向に対向する一対の凸状表面222を含む。中心区画24は、直径方向に対向する一対の凹状表面242を含む。中心区画24から遠位に延在する、非外傷性誘導突起26は、略円筒形であって、丸みを帯びた端部262を含む。丸みを帯びた端部262は、組織に対して非外傷性であるような寸法にされた曲率半径を画定する。加えて、円錐を表す仮想線(phantom line)29と併せて示されるように、光学部材20の近位区画22および非外傷性誘導突起26の両方の一部は、円錐の寸法の外側にある。
【0033】
図5を参照すると、光学部材20の端面または軸方向図は、誘導突起26の円形外形、中心区画24lの卵形外形、および近位区画22の円形外形を図示する。
【0034】
図6を参照すると、光学部材20の側面図が、図示される。この側面図は、図4の上面図に対して半径方向に対して90°オフセットされている。示されるように、光学部材20の近位区画22はさらに、略線形および/または凸状である、直径方向に対向する一対の外側表面224を含む。中心区画24はまた、凸状である、一対の対向する外側表面244を含む。したがって、光学部材20の中心区画24は、光学部材20を中心として円周方向に離間した、略凹状表面242(図4)および略凸状表面244(図6)の両方を含む。このように、光学部材20は、「イルカの鼻状」または「放物線型形状」を有してもよい。加えて、図6における円錐を表す仮想線と併せて示されるように、光学部材20の近位区画22、中心区画24、および非外傷性誘導突起26の一部は、円錐の寸法の外側にある。
【0035】
図6Aは、光学部材20の、そのおおよそ長手方向中点で取られた正面断面図である。図は、光学部材20が、使用の間、組織平面に沿って、組織の分離を支援するように機能する、丸みを帯びた外側表面31を含むことを図示する。
【0036】
非外傷性誘導突起26は、組織に事前に形成された開口部、例えば、事前に切断されたメス切開内への初期挿入を可能にし、組織層間における光学部材20の前進を促進し、組織のいかなる切断または切開も伴わずに、組織を徐々に剥離させる。最初の挿入および続けられる遠位挿入後、中心区画24および近位部分22は、組織平面をさらに剥離させることによって、例えば、光学部材の丸みを帯びた外側表面31がそのクロッキング(clocking)動作の間に組織平面を分離させることによって、組織内の開口部を徐々に拡大させ続ける。
【0037】
図6Bおよび6Cを参照すると、光学部材20は、ポリマー材料、例えば、LEXANから製作されてもよく、透明、または少なくとも半透明であって、光線の通過を可能にする。組立の際、光学部材20は、金属閉塞具シャフト18上にオーバーモールド成形され、構成要素を接続してもよい。特に、閉塞具シャフト18は、長手方向軸A−Aに対して半径方向内向きに延びる、遠位シャフト区画を含む。光学部材20は、遠位シャフト区画を封入するように成形され、ポリマー材料の硬化の際、閉塞具シャフト18に固着される。光学部材20は、長手方向軸A−Aに対して斜めに配置される、内部面取りまたは傾斜表面201を画定する。面取り表面201は、外周内で半径方向に内視鏡の領域から透過される光が、面取りまたは傾斜表面201によって受け取られる前に、空隙を横断して進行するように、直接、内視鏡の遠位端の最外の外周によって係合される(図6C参照)。光学部材20は、光線の通過を可能にし、組織を通した視覚化閉塞具システム10の挿入および/または前進の間、光学部材20に隣接する組織の視認を可能にする(内視鏡によって)。
【0038】
閉塞具アセンブリ11の閉塞具筐体12は、開口部160(図7)および開口部160に隣接するスコープ保持部材170(図8に別個に図示)を含む。スコープ保持部材170は、エラストマー材料から製作され、内視鏡を受け取るための中心開口部172および中心開口部172から外向きに延在する4つの半径方向スリット174を画定する。半径方向スリット174は、内視鏡の挿入の際、スコープ保持部材170の撓曲および中心開口部172の拡大を可能にする。スコープ保持部材170は、内視鏡の外側表面にそれとの摩擦係合で係合し、閉塞具アセンブリ11内の内視鏡の相対的位置付けを保持するのを補助するように適合させられる。
【0039】
図1に戻って参照すると、視覚化閉塞具システム10のカニューレアセンブリ100は、長手方向軸「B−B」を画定するクリアな伸長部分102と、カバー110とを含んでもよい。カバー110は、器具シール130およびゼロ閉鎖シール(zero−closure seal)150を囲む。器具シール130は、ゼロ閉鎖シール150の近位に配置される。
【0040】
カバー110は、伸長部分102の近位部分に機械的に係合するように構成され、器具シール130およびゼロ閉鎖シール150をカニューレ筐体内に維持するのを支援する。図9を参照すると、カバー110は、外周116と、直径D1を有する開口120とを含む。勾配区画124は、外周116を開口120と相互接続する。加えて、開口120は、垂直内側側壁122間に画定される(図10)。カバー110はまた、一対の切り欠き126および一対の係合部分127をその上に含む。切り欠き126および係合部分127は、それぞれ、閉塞具部材14に配置される一対の隆起部23および一対のラッチ19によって、機械的に係合されるように構成される(図1参照)。図1を参照すると、ラッチ19上のボタン27は、閉塞具筐体12内の開口部21を通して延在し、ユーザが、選択的に、閉塞具をカニューレアセンブリ100に係止し、そこから脱係止することを可能にする(例えば、ラッチ19の近位端がカバー110の係合部分127に係合するように、ボタン27を押すことによって)。
【0041】
次に、図12および13を参照すると、器具シール130は、剛性プラスチック挿入体130a上にオーバーモールド成形される、エラストマー隔壁シール130bを含む。剛性プラスチック挿入体130aは、水平表面132、第1の垂直環状壁134、および第2の垂直環状壁136を含む。環状壁134の内側垂直表面134aは、直径D2を画定する。環状壁136の内側垂直表面136aは、直径D3を画定する。加えて、器具シール130のエラストマー隔壁シール130bは、環状壁136内に配置される、水平表面138を画定する。エラストマー隔壁シール130bは、直径D4を有する、開口139を含む。カバーの開口120の直径D1は、環状壁136の直径D3未満である。したがって、挿入の際、閉塞具部材14は、水平表面138および器具シール130の開口139を画定する壁のみに接触可能である。
【0042】
器具シール130はまた、水平表面132から下向きに延びる唇部140を含む。唇部140は、器具シール130が回転して(例えば、長手方向軸「B−B」を中心として)または半径方向に(例えば、長手方向軸「B−B」に対して横断して)移動することができないように、筐体上の対応する戻り止め(図示せず)に係合する。加えて、カニューレアセンブリ100が組み立てられると、器具シール130は、筐体102の一部に挟持され、したがって、器具シール130の軸方向(例えば、長手方向軸「B−B」に沿った)移動を防止し、さらに、器具シール130の回転および半径方向移動を防止する。
【0043】
使用時、視覚化閉塞具システム10の閉塞具アセンブリ11は、少なくとも部分的に、カニューレアセンブリ100内に導入され、閉塞具部材14が、器具シール130の開口139およびゼロ閉鎖シール150を通して延在する。患者における最初の切開が、例えば、外科用メスによって作られる。組み立てられた視覚化閉塞具システム10は、最初の切開内において、標的組織、例えば、腹腔膜に対して、位置付けられる。前述のように、内視鏡は、内視鏡の遠位視認端が透明光学部材20の面取り表面に対して位置付けられるように、閉塞具アセンブリ11を通して挿入されてもよい。内視鏡は、スコープ保持部材170によって、閉塞具アセンブリ11内のこの相対的位置に保持されてもよい。閉塞具部材14が器具シール130の開口139を通過すると(長手方向軸「A−A」が、実質的に、長手方向軸「B−B」と整列させられるとき、または長手方向軸「A−A」が、長手方向軸「B−B」と、整列させられない(例えば、離間される、および/または角度付けられる)ときのいずれか)、唯一の移動可能な器具シール130の部分は、開口139に隣接し、環状壁136の垂直表面136a内に半径方向に配置される、水平表面138である。器具シール130の他の部分(剛性プラスチック挿入体130a、および剛性プラスチック挿入体130aの外向きに配置されるエラストマー隔壁シール130bの一部)は、開口139に対して移動不可能である。
【0044】
前述のように、光学部材20は、組織に対して操作され、それによって、非外傷性誘導突起26が、組織に係合し、凹状および/または凸状外側表面244との組み合わせで、組織を徐々に剥離または分離させ、下にある空洞へのアクセスを得る。挿入の間、光学部材20に隣接する組織は、内視鏡によって視認される。視覚化閉塞具は、次いで、カニューレアセンブリ100から除去されてもよい。器具が、カニューレアセンブリ100内に導入され、外科手術手技を行なってもよい。
【0045】
次に、光学部材20を伸長閉塞具部材14の遠位領域205に形成する方法、例えば、オーバーモールド成形する方法について、論じる。例示的実施形態では、光学部材20は、伸長閉塞具部材14の遠位端部分の領域を封入するように成形される。例えば、光学部材20は、伸長閉塞具部材14の第1の(すなわち、より大きい)直径区画203と、第1の(すなわち、より大きい)直径区画203に対して遠位に位置決めされる第2の(すなわち、減少した)直径区画201との両方を封入するように成形されてもよい。加えて、光学部材20は、伸長閉塞具部材14内に少なくとも1つまたはそれよりも多くの隙間を封入するように成形されてもよい。ある実施形態では、例えば、前述のように光学部材20を形成するために、それを通して少なくとも一部の光透過を可能にするように、好ましくは、透明であるが、少なくとも半透明または半透過性の任意の好適な材料が、利用されてもよい。ある実施形態では、製造の際の光学部材20の材料は、示される配置内に、例えば、第1の(すなわち、より大きい)直径区画203と、第2の(すなわち、減少した)直径区画201とによって画定される空間内および伸長閉塞具部材14の少なくとも1つの隙間207内に流動し得るように、溶融形態であってもよい。有利には、光学部材20は、光学部材20の外側表面が実質的に伸長閉塞具部材14の外径と同一の直径を有するように、伸長閉塞具部材14の遠位領域に成形されてもよい。このように、光学部材20の外側表面と伸長閉塞具部材14の外側表面との間の遷移は、平滑である。この遷移の平滑性は、例えば、カニューレシールを通してのより容易な挿入を提供し得る。
【0046】
1つまたはそれよりも多くの隙間207は、任意の形状、例えば、図6Bおよび6Cに示される、半円形形状を有してもよい。加えて、または代替として、隙間207は、円形または任意の他の好適な形状を有してもよい。また、隙間207は、例えば、図6Bおよび6Cに示されるように、伸長閉塞具部材14の最遠位縁まで延在するように位置決めされてもよい。加えて、または代替として、隙間207のうちの1つ以上は、伸長管状部材14の最遠位縁まで延在せず、むしろ、隙間207が伸長閉塞具部材14の最遠位端に対して近位にある、その独自の最遠位縁を有し得るように位置決めされてもよい。
【0047】
ある実施形態では、閉塞具部材20の材料の少なくとも一部は、減少した(すなわち、第2の)直径区画201の近位の伸長管状部材14の第1の(すなわち、より大きい)直径区画203内に延在するように成形される。これは、光学部材20の外側表面の形状を形成する形状を有する成形型を使用して、かつ伸長閉塞具部材14を通して延在する工具ピン(図示せず)を使用することによって、行なわれ得る。工具ピンの最遠位端部分は、光学部材20の中空内部の形状を形成する形状を有する。工具ピンはまた、第2の表面を含んでもよく、第2の表面は、最遠位端部分に対して近位にあって、光学部材20の面取りまたは傾斜表面201を形成するように角度付けられる。
【0048】
ある実施形態では、その異なる直径の領域とその1つまたはそれよりも多くの隙間207とを有する、オーバーモールド成形された光学部材20を製造する方法は、光学部材20と伸長閉塞具部材14との間に改善された回転抵抗を提供する。加えて、これは、回転方向および軸方向の両方において、光学部材20を管状部材14の端部から係脱させるために非常に強い力が要求されることを確実にする。光学部材20の材料は、管状部材14の第1の(すなわち、より大きい)直径区画203内にあるように形成されるため、光学部材20を伸長管状部材20から押し外すよう、外科手術器具によって、光学部材20の面取り表面に対して印加されるのに要求される力は、非常に強い。他の実施形態では、光学部材20は、任意の他の好適な従来の手段、例えば、接着剤、セメント、ネジ山付き接続、バイオネットカップリング、スナップ嵌合配置等を通じて、伸長管状部材14に取着されてもよい。
【0049】
本発明の光学トロカールシステムは、その種々の実施形態によると、従来のトロカールシステムと比較して、種々の利点を提供し得る。例えば、従来のトロカールは、体腔に穿刺するための鋭利先端を有する、閉塞具を含み得る。鋭利先端を有する閉塞具を使用するときに存在し得る、安全上の懸念(例えば、不慮の組織穿通)に加え、そのような従来のトロカールは、不慮の穿通から保護するために、複雑な機械的配置を要求し、それによって、デバイス内の構成要素の数を増加させ、デバイスを製造し、組み立てるために要求される時間、デバイスの使用中の故障態様の数、デバイスのコスト等を増加させ得る。例えば、鋭利先端による不慮の組織切断を防止するために、一般に使用される配置の1つは、使用されていないとき、閉塞具の鋭利先端をカバーする、引き込み式保護シールドである。本発明の閉塞具トロカールシステムは、その種々の実施形態によると、閉塞具の遠位端が組織に偶発的に接触する場合でも、丸みを帯び、刃を備えていない表面が組織を切断せず、実際、切断不可能であるように、その遠位端に、丸みを帯び、刃を備えていない表面のみを有する、閉塞具を提供してもよい。本発明の光学トロカールシステムは、その種々の実施形態によると、配置を提供してもよく、従来のトロカールと比較して、より少ない構成要素を有し、それによって、デバイスの複雑性を低下させ、その製造を単純にし、そのコストを削減し、かつその信頼性を改善する可能性を提供する。
【0050】
本開示の種々の実施形態が、本明細書に図示および説明されたが、これらの実施形態は、ただの例として、提供されていることは、当業者に明白である。ここで、多数のバリエーション、変更、および代用が、本開示から逸脱することなく、当業者に想起される。故に、本発明は、添付の請求項の精神および範囲によってのみ、限定されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14