特許第6073945号(P6073945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6073945-群管理制御装置及び行先階制御システム 図000002
  • 特許6073945-群管理制御装置及び行先階制御システム 図000003
  • 特許6073945-群管理制御装置及び行先階制御システム 図000004
  • 特許6073945-群管理制御装置及び行先階制御システム 図000005
  • 特許6073945-群管理制御装置及び行先階制御システム 図000006
  • 特許6073945-群管理制御装置及び行先階制御システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073945
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】群管理制御装置及び行先階制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   B66B1/18 L
   B66B1/18 K
   B66B1/18 M
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-43691(P2015-43691)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-160095(P2016-160095A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹森 裕司
【審査官】 大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−049555(JP,A)
【文献】 特開2011−051780(JP,A)
【文献】 特開平05−097331(JP,A)
【文献】 特開2012−131607(JP,A)
【文献】 特開昭60−161871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数号機の乗りかごを群管理制御する群管理制御装置であって、
利用者の行先階を示す行先階情報と、当該利用者を識別するための利用者識別情報とが対応付けられた登録情報を第1の外部装置から取得する登録情報取得手段と、
前記取得された登録情報に基づいて、前記各号機の中から、当該登録情報により示される利用者にとって好適な号機を選出し、当該登録情報により示される行先階を含んだ乗場呼びを、当該選出された号機に割り当てる割当制御手段と、
前記乗りかごに設けられる第2の外部装置から、当該乗りかごに乗車している利用者の利用者識別情報と、当該乗りかごの号機を示す号機情報とを取得する号機情報取得手段と、
前記取得された登録情報に基づいて選出された号機と、当該登録情報に含まれる利用者識別情報と同値の利用者識別情報と共に取得される号機情報により示される号機とが一致しているかどうかを判定する呼び追加判定手段と、
前記呼び追加判定手段による判定の結果として一致していない旨を示す結果が得られた場合、当該判定時に用いられた号機情報により示される号機に、当該判定時に用いられた登録情報により示される行先階を含んだ乗場呼びを追加で割り当てる割当追加手段と、
前記割当追加手段により新たな乗場呼びが追加された後に、前記新たな乗場呼びに含まれる行先階を含む元々の乗場呼びが割り当てられていた号機に割り当てられた他の乗場呼びが1つもない場合、前記元々の乗場呼びをキャンセルする乗場呼びキャンセル手段と
を具備し、
前記第1の外部装置は、前記利用者により操作される操作パネルと、前記割り当てられた乗場呼びに含まれる行先階と当該乗場呼びを割り当てられた号機とに関する情報を少なくとも表示する表示パネルとを有した行先階登録装置であることを特徴とする群管理制御装置。
【請求項2】
前記利用者識別情報は、前記利用者が身に着けているICタグに予め記録された情報である、請求項1に記載の群管理制御装置。
【請求項3】
複数号機の乗りかごを群管理制御する群管理制御装置と、行先階登録装置と、識別情報取得装置とを含む行先階制御システムであって、
前記行先階登録装置は、利用者の操作に応じて当該利用者の行先階を示す行先階情報と、当該利用者が身に着けているICタグに予め記録された当該利用者を識別するための利用者識別情報とを対応付けた登録情報を前記群管理制御装置に送信する登録情報送信手段を具備し、
前記識別情報取得装置は、乗りかごに乗車している利用者が身に着けているICタグに予め記録された利用者識別情報と、当該乗りかごの号機を示す号機情報とを前記群管理制御装置に送信する号機情報送信手段を具備し、
前記群管理制御装置は、
前記送信された登録情報に基づいて、前記各号機の中から、当該登録情報により示される利用者にとって好適な号機を選出し、当該登録情報により示される行先階を含んだ乗場呼びを、当該選出された号機に割り当てる割当制御手段と、
前記送信された登録情報に基づいて選出された号機と、当該登録情報に含まれる利用者識別情報と同値の利用者識別情報と共に送信される号機情報により示される号機とが一致しているかどうかを判定する呼び追加判定手段と、
前記呼び追加判定手段による判定の結果として一致していない旨を示す結果が得られた場合、当該判定時に用いられた号機情報により示される号機に、当該判定時に用いられた登録情報により示される行先階を含んだ乗場呼びを追加で割り当てる割当追加手段と、
前記割当追加手段により新たな乗場呼びが追加された後に、前記新たな乗場呼びに含まれる行先階を含む元々の乗場呼びが割り当てられていた号機に割り当てられた他の乗場呼びが1つもない場合、前記元々の乗場呼びをキャンセルする乗場呼びキャンセル手段と
を具備することを特徴とする行先階制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、群管理制御装置及び行先階制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の各階の乗場には、乗場呼びを登録するための乗場呼びボタンが設置されている。エレベータの利用者がこの乗場呼びボタンを操作すると、乗りかごが乗場呼びの登録階に応答する。利用者が乗りかごに乗り込み、かご操作盤の行先階呼びボタンを操作すると、行先階が登録され、乗りかごがその行先階に移動する。
【0003】
近年、上記した乗場呼びボタンとは別に、乗場にて直接行先階を登録可能な行先階登録装置を備えたエレベータの群管理システムが実用化されている。このような群管理システムを「行先階制御システム(DCS: Destination Control System)」と呼ぶ。
【0004】
この行先階制御システムでは、乗場で登録された行先階に基づいて割当号機が決定される。詳しくは、行先階を含んだ乗場呼びに基づいて、各号機の中から好適な号機が選出されて、その号機に当該乗場呼びが割り当てられる。なお、乗りかごが複数台存在する場合に、乗りかご1台1台のことを「号機」と呼び、乗場呼びが割り当てられた乗りかごのことを「割当号機」と呼ぶ。
【0005】
ところで、各号機には、割当号機が停止する階を示唆するための表示装置が設けられるのが一般的ではあるが、コスト節約の観点から、当該表示装置が設けられていない場合がある。このような状況下で、行先階登録装置とエレベータホールとが離れている場合、利用者は、行先階登録装置からエレベータホールまでの道中で、自身に割り当てられた割当号機を忘れてしまい、間違えて割当号機とは別の号機に乗車してしまう可能性がある。この場合、割当号機とは別の号機であるので、利用者が所望する階に停止しない可能性がある。
【0006】
このため、上記したような不都合を解消し得る新たな技術の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5260484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一形態の目的は、割当号機とは別の号機に乗車してしまったとしても、利用者が所望する階に停止するように乗りかごを制御可能な群管理制御装置及び行先階制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、複数号機の乗りかごを群管理制御する群管理制御装置は、登録情報取得手段と、割当制御手段と、号機情報取得手段と、呼び追加判定手段と、割当追加手段と、乗場呼びキャンセル手段とを具備する。前記登録情報取得手段は、利用者の行先階を示す行先階情報と、当該利用者を識別するための利用者識別情報とが対応付けられた登録情報を第1の外部装置から取得する。前記割当制御手段は、前記取得された登録情報に基づいて、前記各号機の中から、当該登録情報により示される利用者にとって好適な号機を選出し、当該登録情報により示される行先階を含んだ乗場呼びを、当該選出された号機に割り当てる。前記号機情報取得手段は、前記乗りかごに設けられる第2の外部装置から、当該乗りかごに乗車している利用者の利用者識別情報と、当該乗りかごの号機を示す号機情報とを取得する。前記呼び追加判定手段は、前記取得された登録情報に基づいて選出された号機と、当該登録情報に含まれる利用者識別情報と同値の利用者識別情報と共に取得される号機情報により示される号機とが一致しているかどうかを判定する。前記割当追加手段は、前記呼び追加判定手段による判定の結果として一致していない旨を示す結果が得られた場合、当該判定時に用いられた号機情報により示される号機に、当該判定時に用いられた登録情報により示される行先階を含んだ乗場呼びを追加で割り当てる。前記乗場呼びキャンセル手段は、前記割当追加手段により新たな乗場呼びが追加された後に、前記新たな乗場呼びに含まれる行先階を含む元々の乗場呼びが割り当てられていた号機に割り当てられた他の乗場呼びが1つもない場合、前記元々の乗場呼びをキャンセルする。前記第1の外部装置は、前記利用者により操作される操作パネルと、前記割り当てられた乗場呼びに含まれる行先階と当該乗場呼びを割り当てられた号機とに関する情報を少なくとも表示する表示パネルとを有した行先階登録装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る行先階制御システムに用いられる行先階登録装置とエレベータホールとの関係を示す図。
図2】行先階登録装置に設けられるキー入力方式の操作パネルの一例を示す図。
図3】行先階登録装置に設けられる液晶パネルに表示される画面例を示す図。
図4】実施形態における行先階制御システムの機能構成例を示すブロック図。
図5】登録情報のデータ構造の一例を示す図。
図6】実施形態における行先階制御システムの動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る行先階制御システムに用いられる行先階登録装置とエレベータホールとの関係を示す。なお、以下では、行先階制御システムに含まれるエレベータに乗車する者を、便宜的に、利用者と称する。また、本実施形態では、利用者が、利用者固有の識別情報(以下、利用者識別情報と表記)を記録したICタグ10を身に着けているものとする。なお、ICタグ10の形状は、任意の形状(例えば、シールラベル等)であって構わない。
【0012】
近年、エレベータホールにおける利用者の待ち時間を減らすために、例えば建物の入り口付近等に行先階登録装置20が設置されている。なお、図1には、1台の行先階登録装置20しか図示されていないが、複数台の行先階登録装置20が設置される構成であってもよい。
【0013】
この行先階登録装置20には、図1に示すように、キー入力方式の操作パネル21と、液晶パネル22とが設けられている。操作パネル21には、図2に示すように、複数の数字キー21a及び登録キー21bが設けられている。利用者は、これら数字キー21a及び登録キー21bを操作して、自身が行きたい階(行先階)を登録する。液晶パネル22は、利用者によって上記した操作パネル21が操作され、行先階が登録されると、例えば図3に示すように、割当号機に関する情報を表示する。割当号機に関する情報とは、行先階と、利用者が当該行先階に行くために乗車すべき号機である割当号機とを少なくとも含んだ情報(後述では、これらの情報に加えて、利用者識別情報を含むものとする)である。図3の表示例によれば、利用者は、行先階である5階に行くためには、A号機に乗車すればよいことを把握することができる。なお、ここでは詳しく説明しないが、液晶パネル22には、割当号機に関する情報として、割当号機の乗り場に利用者を案内するための案内情報が更に表示されてもよい。
【0014】
行先階登録装置20の先にエレベータホール30があり、そのエレベータホール30に複数台のエレベータ31a〜31eの乗場32a〜32eが配置されている。なお、ここでの「エレベータ」とは、基本的には「乗りかご」のことであり、複数台の乗りかごが存在する場合には「号機」と称するものとする。図1では、エレベータホール30内の各箇所にA〜E号機で示される各乗りかご31a〜31eに対応した乗場32a〜32eが配置されている。
【0015】
このような構成において、行先階登録装置20にて行先階が登録されると、当該登録された行先階に対応した割当号機に関する情報が液晶パネル22に表示されるので、利用者は割り当てられた号機に対応した乗場に向かうことで、エレベータホール30において少ない待ち時間で行先階に停止する号機に乗車することができる。
【0016】
なお、本実施形態では、図1に示すように、行先階登録装置20とエレベータホール30とが一定距離以上離れている場合を想定する。
【0017】
図4は、行先階制御システムの機能構成を示すブロック図である。図4に示すように、行先階制御システムは、行先階登録装置20、情報処理装置40、群管理制御装置50、各号機33a,33b,33c…の制御装置60a,60b,60c…及び各号機33a,33b,33c…内に設置される識別情報取得装置70a,70b,70c…を含む。なお、行先階登録装置20、情報処理装置40及び群管理制御装置50は、例えばネットワークを介して、それぞれ通信可能に接続される。同様に、群管理制御装置50と制御装置60a,60b,60c…とは、通信可能に接続される。更に、情報処理装置40と識別情報取得装置70a,70b,70c…とは、通信可能に接続される。なお、各装置間を接続する方法は、無線であってもよいし、有線であってもよい。
【0018】
行先階登録装置20は、図4に示すように、操作受付部201、識別情報取得部202、登録情報生成部203、通信処理部204及び表示処理部205等を備えている。
【0019】
操作受付部201は、行先階登録装置20に設けられた操作パネル21から、利用者の操作に応じた操作信号の入力を受け付ける。また、操作受付部201は、入力を受け付けた操作信号にしたがって、利用者の行先階を示す行先階情報を生成し、当該行先階情報を登録情報生成部203に対して出力する。
【0020】
識別情報取得部202は、利用者が身に着けているICタグ10に記録された利用者識別情報を当該ICタグ10から取得する。取得された利用者識別情報は、登録情報生成部203に送られる。
【0021】
登録情報生成部203は、操作受付部201から出力される行先階情報と、識別情報取得部202から出力される利用者識別情報とに基づいて登録情報を生成し、当該生成した登録情報を、通信処理部204を介して、情報処理装置40に送信する。登録情報とは、行先階情報と利用者識別情報とが対応付けられた情報であり、図5に示す登録情報によれば、例えば、利用者識別情報「id1」により識別される利用者の行先階が「5階」であることが示されている。後述する群管理制御装置50は、この登録情報を用いて割当制御を行う。
【0022】
表示処理部205は、通信処理部204を介して、群管理制御装置50から送信される割当号機に関する情報の入力を受け付けると、当該割当号機に関する情報を行先階登録装置20に設けられた液晶パネル22に表示させる処理を実行する。
【0023】
本実施形態において、行先階登録装置20に設けられる各部201〜205の一部または全ては、行先階登録装置20に内蔵される図示しないCPUに所定のプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0024】
情報処理装置40は、行先階登録装置20から送信される登録情報の入力を受け付けると、当該登録情報を群管理制御装置50に送信する機能を有する。また、情報処理装置40は、後述する識別情報取得装置70a〜70cから送信される利用者識別情報の入力を受け付けると、当該利用者識別情報を群管理制御装置50に送信する機能を有する。なお、これらの機能は、情報処理装置40に内蔵される図示しないCPUに所定のプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、IC等のハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0025】
群管理制御装置50は、各号機33a,33b,33c…の運転を群管理制御する。この群管理制御装置50には、各号機33a,33b,33c…に対応した制御装置60a,60b,60c…がそれぞれ接続されている。これらの制御装置60a,60b,60c…は、それぞれ個別に各号機の乗りかご31a,31b,31c…の運転を制御する。具体的には、乗りかご31a,31b,31c…を昇降動作させるためのモータの制御やドアの開閉制御等を行う。
【0026】
この群管理制御装置50は、図4に示すように、通信処理部501、呼び記憶部502、運転状態監視部503、割当制御部504及び呼び追加判定部505等を備えている。なお、ここでは便宜上、各部501〜505の全てを群管理制御装置50に配置して記述したが、必ずしも同一装置に配置する必要はなく、別々の装置に配置する構成であってもよい。
【0027】
呼び記憶部502は、通信処理部501を介して、情報処理装置40から送信される登録情報の入力を受け付けると、当該登録情報に含まれる利用者識別情報により示される利用者の行先階として、当該利用者識別情報に対応付けられた行先階情報により示される行先階を乗場呼びとして記憶する。なお、本実施形態では、建物の入り口付近に1つの行先階登録装置20が設置されている場合を例にとって説明しているが、例えば別の階に更なる行先階登録装置が設置されている場合、呼び記憶部502は、入力を受け付ける登録情報に基づいて、各階毎に、利用者の行先階を階床情報と共に乗場呼びとして記憶する。また、例えば他の階に上下の方向ボタンを有する通常の乗場呼び登録装置が設置されていた場合には、方向ボタンの押下によって指定された行先方向(上方向または下方向)を示す情報が階床情報と共に乗場呼びとして記憶される。
【0028】
運転状態監視部503は、各号機の制御装置60a,60b,60c…を通じて乗りかご31a,31b,31c…の運転状態(かご位置、運転方向、戸開閉等)を監視する。
【0029】
割当制御部504は、新たな乗場呼びが呼び記憶部502に記憶されたときに、運転状態監視部503から得られる乗りかご31a,31b,31c…の運転状態を考慮して、各号機の中から好適な号機を割当号機として選出する。この場合、同じ行先階を有する乗場呼びを同じ号機に割り当てるような割当制御がなされる。なお、割当制御については本発明とは直接関係しないため、その詳しい説明は省略するものとする。
【0030】
割当制御部504によって割当号機が選出されると、その割当号機に対応した制御装置に割当信号が出力される。例えば、A号機の乗りかご31aが割当号機として選出された場合には、A号機制御装置60aに割当信号が出力される。これにより、A号機の乗りかご31aが当該乗場呼びの登録階(利用者の行先階が登録された階)に応答する。
【0031】
一方、割当号機が決定されたときに、その割当号機に関する情報(例えば、号機名等)が、通信処理部501を介して、行先階登録装置20に対して送られる。これにより、行先階登録装置20に設けられる液晶パネル22には、図3に示したように、利用者の行先階と割当号機とが表示される。
【0032】
呼び追加判定部505は、通信処理部501を介して、識別情報取得装置70によって取得され、情報処理装置40から送信される利用者識別情報の入力を受け付けると、当該利用者識別情報と、割当号機に関する情報とに基づいて、乗場呼びを追加するかどうかを判定する乗場呼び追加判定処理を実行する。なお、乗場呼び追加判定処理については、図6のフローチャートの説明と共に後述するため、ここではその詳しい説明は省略する。
【0033】
本実施形態において、群管理制御装置50に設けられる各部501〜505の一部または全ては、群管理制御装置50に内蔵される図示しないCPUに所定のプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、IC等のハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0034】
各号機の制御装置60a,60b,60c…は、群管理制御装置50から送信される割当信号の入力を受け付けると、当該割当信号にしたがって、各号機の乗りかご31a,31b,31c…の動作を制御する機能を有する。この機能は、各号機の制御装置60a,60b,60c…に内蔵される図示しないCPUに所定のプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、IC等のハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0035】
識別情報取得装置70a,70b,70c…は、各号機の乗りかご31a,31b,31c…内にそれぞれ設置される。識別情報取得装置70a,70b,70c…は、乗りかご31a,31b,31c…内に利用者が乗車してきたことを検知すると、当該利用者が身に着けているICタグ10から当該ICタグ10に記録されている利用者識別情報を取得する。取得された利用者識別情報は、識別情報取得装置が設置された号機を示す号機に関する情報と共に、情報処理装置40に送信される(より詳しくは、取得された利用者識別情報は、情報処理装置40を介して、群管理制御装置50に送信される)。この機能は、識別情報取得装置70a,70b,70c…に内蔵される図示しないCPUに所定のプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、IC等のハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0036】
ここで、図6のフローチャートを参照して、以上のように構成された行先階制御システムの動作の一例について説明する。以下では、主に、乗場呼び追加判定処理の手順の一例について説明する。
【0037】
まず、利用者が建物の入り口付近に設置された行先階登録装置20の操作パネル21を操作すると、当該行先階登録装置20内の操作受付部201は、当該操作にしたがった操作信号の入力を受け付ける。そして、操作受付部201は、入力を受け付けた操作信号に基づいて、操作パネル21を操作する利用者の行先階を示す行先階情報を生成し、これを登録情報生成部203に出力する(ステップS1)。
【0038】
ここでは、利用者によって、操作パネル21に設けられた複数の数字キー21aのうちの「5」の数字キーと、登録キー21bとが押下された場合、すなわち、行先階として「5階」を示す行先階情報が生成され、これが登録情報生成部203に出力された場合を想定する。
【0039】
続いて、識別情報取得部202は、上記した利用者によって操作パネル21が操作されているときに、当該利用者が身に着けているICタグ10から当該ICタグ10に記録された利用者識別情報を取得し、これを登録情報生成部203に出力する(ステップS2)。ここでは、利用者が身に着けているICタグ10から「id01」を示す利用者識別情報が取得され、これが登録情報生成部203に出力された場合を想定する。
【0040】
次に、登録情報生成部203は、操作受付部201から出力された行先階情報と、識別情報取得部202から出力された利用者識別情報との入力を受け付けると、当該行先階情報と当該利用者識別情報とを対応付けた登録情報、つまり、「5階」を示す行先階情報と、「id01」を示す利用者識別情報とを対応付けた登録情報を生成し、これを通信処理部204を介して情報処理装置40に送信する(ステップS3)。
【0041】
ステップS3の処理により生成された登録情報によれば、「id01」により識別(特定)される利用者の行先階が「5階」であることが示される。なお、情報処理装置40は、行先階登録装置20から送信された登録情報の入力を受け付けると、当該登録情報を群管理制御装置50に送信する。
【0042】
続いて、群管理制御装置50内の呼び記憶部502は、通信処理部501を介して、情報処理装置40から送信された登録情報の入力を受け付けると、当該登録情報にしたがって乗場呼びを記憶する(ステップS4)。ここでは、上記した登録情報にしたがって、「id01」により識別される利用者の乗場呼び(行先階)として「5階」が記憶される。
【0043】
呼び記憶部502に乗場呼びが記憶されると、割当制御部504は、運転状態監視部503から得られる各号機の乗りかご31a,31b,31c…の運転状態を考慮して、各号機の中から好適な号機を割当号機として選出し、当該選出された割当号機に対応した制御装置に割当信号を出力する(ステップS5)。
【0044】
ここでは、「id01」により識別される利用者の行先階である「5階」に停止する号機として、「A号機」が選出され、このA号機に対応したA号機制御装置60aに割当信号が出力された場合を想定する。これにより、A号機制御装置60aは、A号機の乗りかご31aを5階に停止させるように、乗りかご31aの各種動作を制御する。
【0045】
また、ここでは、「id01」を示す利用者識別情報と、「5階」を示す行先階情報とが対応付けられた登録情報とは別の登録情報にしたがって、「10階」に停止する号機として「B号機」が選出され、「15階」に停止する号機として「C号機」が選出されているものとする。
【0046】
次に、割当制御部504は、利用者にとって好適な割当号機を選出すると、当該割当号機に関する情報、具体的には、利用者識別情報と、行先階情報と、割当号機を示す情報とが対応付けられた情報を、通信処理部501を介して行先階登録装置20に送信する(ステップS6)。なお、割当号機に関する情報は、群管理制御装置50内の図示しないメモリ等に適宜記録される。ここでは、「id01」により識別される利用者の行先階として「5階」を示し、当該利用者の割当号機として「A号機」を示す割当号機に関する情報が、通信処理部501を介して行先階登録装置20に送信される。
【0047】
続いて、行先階登録装置20内の表示処理部205は、通信処理部204を介して、群管理制御装置50から送信された割当号機に関する情報の入力を受け付けると、当該割当号機に関する情報を液晶パネル22に表示させる(ステップS7)。この処理により、図3に示したように、「id01」により識別される利用者の行先階である「5階」に停止する号機が「A号機」であることが示される。
【0048】
以下では、行先階登録装置20とエレベータホール30との距離が離れてしまっていることに起因して、「id01」により識別される利用者が間違えて「B号機」に乗車してしまった場合を想定する。通常であれば、B号機は、上記したように「10階」に停止する号機であるので、「id01」により識別される利用者は、目的の階である5階に行くことはできない。
【0049】
再び図6の説明に戻る。乗りかご31b内に設けられた識別情報取得装置70bは、ICタグ10を身に着けた利用者の乗車を検知すると、当該ICタグ10に記録された利用者識別情報を取得する(ステップS8)。
【0050】
ここでは、上記したように、「id01」により識別される利用者が間違えて「B号機」に乗車してしまった場合を想定しているので、識別情報取得装置70bは、「id01」を示す利用者識別情報を取得する。なお、取得された利用者識別情報は、どの号機にて取得された利用者識別情報であるかを判別可能な情報、すなわち、「B号機」にて取得されたことを示す情報(以下、号機に関する情報と表記)と共に、情報処理装置40を介して群管理制御装置50に送信される。
【0051】
次に、群管理制御装置50内の呼び追加判定部505は、通信処理部501を介して、利用者識別情報と号機に関する情報との入力を受け付けると、当該利用者識別情報と同値を示す利用者識別情報を含む割当号機に関する情報を、群管理制御装置50内の図示しないメモリから取得する(ステップS9)。この場合、「id01」を示す利用者識別情報を含む割当号機に関する情報が、図示しないメモリから取得される。
【0052】
続いて、呼び追加判定部505は、ステップS9の処理において取得された割当号機に関する情報と、ステップS9の処理において入力を受け付けた号機に関する情報とに基づいて、乗場呼びを追加するかどうかを判定する(ステップS10)。
【0053】
具体的には、呼び追加判定部505は、取得された割当号機に関する情報により示される割当号機と、入力を受け付けた号機に関する情報により示される号機とが一致しているかどうか(換言すると、利用者が割当号機に正しく乗車しているかどうか)に基づいて、乗場呼びを追加するかどうかを判定する。ここでは、割当号機に関する情報により示される割当号機が「A号機」であり、号機に関する情報により示される号機が「B号機」であり、つまり一致していないため、後述するステップS11の処理に進む。
【0054】
なお、ステップS10の処理において、割当号機に関する情報により示される号機と、号機に関する情報により示される号機とが一致している場合(ステップS10のYES)、利用者が割当号機に正しく乗車しているので、乗場呼びを追加する必要はないとして、ここでの処理を終了させる。
【0055】
一方で、ステップS10の処理において、割当号機に関する情報により示される号機と、号機に関する情報により示される号機とが一致していない場合(ステップS10のNO)、呼び追加判定部505は、利用者が割当号機に乗車していないので、乗場呼びを追加する必要があると判定し、号機に関する情報により示される号機の乗場呼びとして、割当号機に関する情報により示される行先階を追加する処理を実行し(ステップS11)、ここでの処理を終了させる。
【0056】
この場合、呼び追加判定部505は、号機に関する情報により示される「B号機」の乗場呼びとして、割当号機に関する情報により示される行先階「5階」を追加する処理を実行する。
【0057】
これにより、乗りかご31bは、「10階」だけにしか停止しない予定であったが、上記した乗場呼びの追加に伴い、「5階」にも停止することになり、「B号機」に間違えて乗車してしまった利用者は、目的の階(5階)に行くことができる。
【0058】
なお、本実施形態では、建物の入り口付近に行先階登録装置20が設置されている場合を例にとって説明したが、例えば行先階登録装置20に代えて、いわゆるセキュリティゲートが設けられている場合であっても、図6に示した乗場呼び追加判定処理は実現可能である。
【0059】
この場合、利用者識別情報に加えて行先階情報を、すなわち、登録情報をICタグ10に予め記録しておけばよい。この場合、セキュリティゲートには、行先階登録装置20内の識別情報取得部202、通信処理部204及び表示処理部205に相当する機能が少なくとも設けられていればよい。すなわち、識別情報取得部202に相当する機能部において、利用者が身に着けているICタグ10から当該ICタグ10に記録された登録情報を取得し、これを通信処理部204を介して情報処理装置40に送信する処理が実行されることで、上記した乗場呼び追加判定処理を実行することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る行先階制御システムは、上記した各種機能に加えて、乗場呼びを追加した後に、間違えて割当号機とは別の号機に乗車した利用者に元々割り当てられた号機(割当号機)に乗車する予定の他の利用者が1人もいない場合には、当該割当号機に対する乗場呼びをキャンセルする機能を更に有していてもよい。
【0061】
更に、本実施形態に係る行先階制御システムは、上記した各種機能に加えて、利用者が間違えて割当号機とは別の号機に乗車してしまったとしても、当該号機に乗車している全ての利用者に対する、間違えて当該号機に乗車してしまった利用者の人数の比率が所定の比率より低い場合、上記した乗場呼びの追加を行う処理を実行せずに、乗りかご内に警告メッセージを出力する等して、間違えて乗車してしまった利用者に注意を促す機能を更に有していてもよい。
【0062】
以上説明した一実施形態によれば、行先階制御システムは、乗場呼び追加判定処理を実行可能な群管理制御装置50を備えているので、割当号機とは別の号機に乗車してしまったとしても、利用者が所望する階に停止するように乗りかごを制御することができる。
【0063】
なお、本実施形態の処理は、コンピュータプログラムによって実現することができるので、このコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこのコンピュータプログラムをコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。
【0064】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10…ICタグ、20…行先階登録装置、40…情報処理装置、50…群管理制御装置、60…各号機の制御装置、70…識別情報取得装置、201…操作受付部、202…識別情報取得部、203…登録情報生成部、204…通信処理部、205…表示処理部、501…通信処理部、502…呼び記憶部、503…運転状態監視部、504…割当制御部、505…呼び追加判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6