特許第6073949号(P6073949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073949
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】洗濯機及び洗濯機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/02 20060101AFI20170123BHJP
【FI】
   D06F33/02 F
   D06F33/02 K
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-47263(P2015-47263)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-167867(P2015-167867A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0027886
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ホ クァンチュル
(72)【発明者】
【氏名】チョン ソンウク
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−142390(JP,A)
【文献】 特開2014−008313(JP,A)
【文献】 特開2006−141566(JP,A)
【文献】 特開2002−028393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0000053(US,A1)
【文献】 特開平11−309294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽と、前記貯水槽内で垂直な軸を中心として回転可能に備えられる洗濯槽と、前記洗濯槽の下部に回転可能に備えられるパルセーターとを備える洗濯機の制御方法において、
(a)前記洗濯槽内で洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で前記洗濯槽を回転させるステップと、
(b)前記洗濯槽内の洗濯水を排水し、前記洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水するステップと、
を含み、
前記(a)ステップは、
前記洗濯槽の回転速度が所定の目標速度に至るまで加速回転させるステップと、
前記洗濯槽が前記目標速度を維持し、一定時間の間回転するように駆動するステップと、
前記洗濯槽の回転が停止するように制動するステップと、
前記洗濯槽が加速回転する途中に偏心量を感知するステップと、
を含み、
前記(b)ステップは、
前記感知された偏心量が偏心量許容値より低い場合に、前記制動により洗濯槽が停止した後に行われる洗濯機の制御方法。
【請求項2】
前記(a)ステップは、
前記感知された偏心量が前記偏心量許容値より大きい場合、洗濯物が洗濯水に浸されている状態で前記パルセーター及び前記洗濯槽のうち、少なくとも1つを回転させて洗濯物を分散させるステップと、
再度前記洗濯槽を加速回転させ、偏心量を感知するステップと、
をさらに含み、
前記(b)ステップは、
前記再度感知された偏心量が前記偏心量許容値より低い場合に行われる、請求項に記載の洗濯機の制御方法。
【請求項3】
前記洗濯槽が前記目標速度で回転する途中に、前記洗濯槽と前記貯水槽との間に上昇した水位は、前記洗濯槽の上端より低い、請求項に記載の洗濯機の制御方法。
【請求項4】
前記(a)ステップは、
前記洗濯槽が加速回転する前に、前記パルセーターを両方向に交互に回転させるステップをさらに含む、請求項に記載の洗濯機の制御方法。
【請求項5】
垂直な軸を中心として回転可能に備えられる洗濯槽と、
前記洗濯槽の下部に回転可能に備えられるパルセーターと、
前記洗濯槽内の洗濯水を排水させる排水部と、
前記洗濯槽及び前記パルセーターのうち少なくとも一つを回転させるモータと、
前記洗濯槽内で洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で前記洗濯槽が加速回転される途中に振動を感知する振動感知手段と、
前記洗濯槽が目標速度まで加速され、前記目標速度で一定時間の間駆動された後制動されるように前記モータを制御して、前記振動感知手段により感知された振動量が振動量許容値よりも低い場合、前記洗濯槽が停止した後に、前記排水部を制御して前記洗濯槽内の洗濯水を排水させ、前記パルセーターを制御して前記洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水させる制御部と、
を備える洗濯機。
【請求項6】
前記制御部は、
前記感知された振動量が前記振動量許容値より大きい場合には、前記モータを制御して前記洗濯槽及び前記パルセーターのうち、少なくとも1つを回転させる、請求項に記載の洗濯機。
【請求項7】
内部に前記洗濯槽が配置される貯水槽をさらに備え、前記洗濯槽が前記目標速度で駆動する途中に、前記洗濯槽と前記貯水槽との間での水位は、前記洗濯槽の上端より低い、請求項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機及び洗濯機の制御方法に関する。
【0002】
本出願は、2014年3月10日付で韓国特許庁へ出願された大韓民国特許出願番号第10−2014−0027886号の優先権を主張し、その全体開示は参照としてここに併合される。
【背景技術】
【0003】
一般に、洗濯機は、水と洗剤とを用いて洗濯物に物理的、化学的作用を加えて処理する装置であって、洗濯水が溜まる貯水槽と、洗濯物が収容されたまま貯水槽内で垂直な軸(axis)を中心として回転される洗濯槽と、洗濯槽内で回転され、洗濯物との間に作用する摩擦力によって洗濯物に付いた汚れを除去するパルセーターとを備える。このような洗濯機は、パルセーター及び/又は洗濯槽を回転させて洗濯物に付いた汚れを除去した後、貯水槽を排水させ、洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水させる。
【0004】
従来の洗濯機は、洗濯物が不均衡に配置された状態で脱水が行われることにより過渡な振動が発生することを防止するために、洗濯区間の最後の段階でパルセーターを両方向に交互に回転させて洗濯物をほぐす駆動を行った。その後、排水し、洗濯槽を回転させて偏心(imbalance)を感知してから、感知された偏心量が許容範囲内であれば、洗濯槽を高速で回転させる脱水を行った。
【0005】
しかし、このような方式は、円滑に洗濯物がほぐれていない状態で排水された場合において、感知された偏心量が許容範囲を外れた場合には、偏心を解消し難いという問題があった。なぜならば、洗濯槽内に洗濯水がなかった状態では、パルセーターや洗濯槽を回転させるとしても洗濯物の位置が容易に変わらず、絡まっている洗濯物をほぐすことも難しいためである。垂直な軸を中心として洗濯槽が回転される方式の洗濯機において洗濯物に作用する力は、重力方向の停止慣性力が主となり、このような力は、洗濯槽またはパルセーターの回転とは独立的な方向に作用するため、水流作用がない状況で洗濯物の状態変化が容易でないためである。
【0006】
したがって、偏心量が許容範囲内に至るまで再分散と偏心感知を繰り返さなければならない場合が頻繁であり、脱水進入までかかる時間が増加し、場合によっては、再分散の繰り返しにもかかわらず、それ以上偏心量が許容範囲内に減らずに、脱水自体が行われることができず、エラーを出力することにより、ユーザが直接偏心の原因を除去するように導かなければならないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、第1に、洗濯水が満たされた状態で洗濯槽が回転される区間において感知された振動量(または偏心量)を基に脱水実施可否を決定する洗濯機及び洗濯機の制御方法を提供することである。
【0008】
第2に、許容範囲を外れた振動量が感知されても、円滑に洗濯物を再分散させることのできる洗濯機及び洗濯機の制御方法を提供することである。
【0009】
第3に、脱水進入にかかる時間を減らし、脱水進入に失敗することを防止できる洗濯機及び洗濯機の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の洗濯機の制御方法は、貯水槽と、前記貯水槽内で垂直な軸を中心として回転可能に備えられる洗濯槽と、前記洗濯槽の下部に回転可能に備えられるパルセーターとを備える洗濯機の制御方法において、(a)前記洗濯槽内で洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で前記パルセーターを両方向に交互に回転させて洗濯物を洗濯するステップと、(b)前記洗濯槽内の洗濯水を排水させるステップと、(c)前記洗濯槽内に洗濯水を給水するステップと、(d)洗濯物が洗濯水に浸されている状態で前記洗濯槽を加速回転させるステップと、(e)前記洗濯槽が加速回転される途中に振動量を感知するステップと、(f)前記感知された振動量が振動量許容値より低ければ、前記洗濯槽内の洗濯水を排水させ、前記洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水させるステップとを含む。
【0011】
洗濯機の制御方法は、(g)前記感知された振動量が前記振動量許容値より大きい場合、洗濯物が浸されている状態で前記パルセーター及び前記洗濯槽のうち、少なくとも1つを回転させて洗濯物を分散させるステップをさらに含み、前記(g)ステップ後、前記(d)ステップを再度行い、前記(f)ステップでの脱水は、前記再度行われた(d)ステップで感知された振動量が前記振動量許容値より低い場合に行うことができる。
【0012】
前記(e)ステップは、前記洗濯槽が加速回転される途中に洗濯物の偏心量を感知するステップを含むことができる。前記偏心量は、前記洗濯槽の回転速度変化に基づいて求めることができる。
【0013】
前記洗濯槽が加速回転される途中に、前記貯水槽と前記洗濯槽との間に上昇した水位は、前記洗濯槽の上端より低いことができる。
【0014】
他には、本発明の洗濯機の制御方法は、貯水槽と、前記貯水槽内で垂直な軸を中心として回転可能に備えられる洗濯槽と、前記洗濯槽の下部に回転可能に備えられるパルセーターとを備える洗濯機の制御方法において、(a)前記洗濯槽内で洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で前記洗濯槽を回転させるステップと、(b)前記洗濯槽内の洗濯水を排水させ、前記洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水させるステップとを含み、前記(a)ステップは、前記洗濯槽の回転速度が所定の目標速度に至るまで加速回転させるステップと、前記洗濯槽が前記目標速度を維持し、一定時間の間回転されるように駆動するステップと、前記洗濯槽の回転が停止されるように制動するステップと、前記洗濯槽が加速回転される途中に偏心量を感知するステップとを含み、前記(b)ステップは、前記感知された偏心量が偏心量許容値より低い場合に行われる。
【0015】
前記(a)ステップは、前記感知された偏心量が前記偏心量許容値より大きい場合、洗濯物が洗濯水に浸されている状態で前記パルセーター及び前記洗濯槽のうち、少なくとも1つを回転させて洗濯物を分散させるステップと、再度前記洗濯槽を加速回転させ、偏心量を感知するステップとをさらに含むことができ、前記(b)ステップは、前記再度感知された偏心量が前記偏心量許容値より低い場合に行われることができる。
【0016】
前記洗濯槽が前記目標速度で回転する途中に、前記洗濯槽と前記貯水槽との間に上昇した水位は、前記洗濯槽の上端より低いことができる。
【0017】
前記(a)ステップは、前記洗濯槽が加速回転される前に、前記パルセーターを両方向に交互に回転させるステップをさらに含むことができる。
【0018】
本発明の洗濯機は、垂直な軸を中心として回転可能に備えられる洗濯槽と、前記洗濯槽の下部に回転可能に備えられるパルセーターと、前記洗濯槽及び前記パルセーターのうち、少なくとも1つを回転させるモータと、前記洗濯槽内の洗濯水を排水させる排水部と、前記洗濯槽内で洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で前記モータを制御して前記洗濯槽を加速回転させ、前記洗濯槽が加速回転される途中に偏心量を検出し、検出された偏心量に基づいて前記排水部と前記モータとを制御して脱水が行われるようにする制御部とを備える。
【0019】
前記制御部は、前記検出された偏心量が偏心量許容値より低い場合には、前記排水部を制御して前記洗濯槽内の洗濯水を排水させ、前記モータを制御して前記洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水させることができる。前記制御部は、前記検出された偏心量が前記偏心量許容値より大きい場合には、前記モータを制御して前記洗濯槽及びパルセーターのうち、少なくとも1つを回転させることができる。
【0020】
前記制御部は、前記洗濯槽が目標速度まで加速され、前記目標速度で一定時間の間駆動されてから制動されるように前記モータを制御することができ、前記偏心量は、前記洗濯槽が目標速度まで加速される区間で検出することができる。内部に前記洗濯槽が配置される貯水槽をさらに備えることができ、前記洗濯槽が前記目標速度で駆動される途中に、前記洗濯槽と前記貯水槽との間での水位は、前記洗濯槽の上端より低いことができる。
【0021】
他には、本発明の洗濯機は、垂直な軸を中心として回転可能に備えられる洗濯槽と、前記洗濯槽の下部に回転可能に備えられるパルセーターと、前記洗濯槽内の洗濯水を排水させる排水部と、前記洗濯槽内で洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で前記洗濯槽が加速回転される途中に振動を感知する振動感知手段と、前記振動感知手段により感知された振動量によって前記排水部を制御し、前記洗濯槽内の洗濯水を排水させ、前記洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水させる制御部とを備える。
【0022】
前記制御部は、前記検出された振動量が振動量許容値より低い場合には、前記排水部を制御して前記洗濯槽内の洗濯水を排水させ、前記モータを制御して前記洗濯槽を高速で回転させて洗濯物を脱水させることができる。
【0023】
前記制御部は、前記検出された振動量が前記振動量許容値より大きい場合には、前記モータを制御して前記洗濯槽及びパルセーターのうち、少なくとも1つを回転させることができる。
【0024】
前記制御部は、前記洗濯槽が目標速度まで加速され、前記目標速度で一定時間の間駆動されてから制動されるように前記モータを制御し、前記振動量は、前記洗濯槽が目標速度まで加速される区間で検出することができる。
【0025】
内部に前記洗濯槽が配置される貯水槽をさらに備えることができ、前記洗濯槽が前記目標速度で駆動される途中に、前記洗濯槽と前記貯水槽との間での水位は、前記洗濯槽の上端より低いことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る洗濯機を示した断面図である。
図2図1の洗濯機の主な構成間の制御関係を示したブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明するための順序図である。
図4】振動量が感知される区間での洗濯槽内の水位を示したものである。
図5】水平振動が発生される原理を説明するために参照される図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明するための順序図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明するためのものであって、時間によるモータの回転速度を示したグラフである。
図8】偏心感知駆動での(a)時間による回転速度変化(RPM軸)と(b)発生振動量変化(VB軸)とを示したグラフである。
図9】加速区間で測定された振動量と脱水中に測定された振動量との間の相関関係をみせるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態は、次の図面を参照して詳細に説明され、同じ図面符号は同じ構成要素を表す。
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付される図面とともに詳細に後述されている実施形態を参照すれば、明確になるはずである。しかし、本発明は、以下において開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形で実現されることができる。その実施形態は、本発明の開示が完全なようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有した者に発明の範疇を完全に知らせるために提供される。明細書の全体にわたって同じ図面符号は同じ構成要素を表すことができる。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る洗濯機を示した断面図である。図2は、図1の洗濯機の主な構成間の制御関係を示したブロック図である。
【0029】
図1図2に示すように、本発明の一実施形態に係る洗濯機1は、上部が開口されたキャビネット12と、ユーザから各種制御命令を受信する操作キー等と洗濯機の作動状態に対する情報を表示するディスプレイ(display)等とを備えて、ユーザインターフェースを提供するコントロールパネル11と、キャビネット12の開口された上部に設けられ、ほぼ中央部に洗濯物が投入される投入口が形成されたトップカバー14と、トップカバー14に回転可能に備えられて前記投入口を開閉するドア7とを備える。
【0030】
洗濯水が溜まる貯水槽2が支持ロッド15によってキャビネット12の内部に吊り下がり、貯水槽2内には、洗濯物を収容する洗濯槽3が回転可能に備えられ、洗濯槽3の底には、パルセーター4が回転可能に備えられる。
【0031】
洗濯水が洗濯槽3と貯水槽2との間を往来できるように、洗濯槽3には複数の孔が形成される。
【0032】
中央部が開口された貯水槽カバー10が貯水槽2の上端に設けられ得る。この場合、洗濯槽3の回転の際、貯水槽2と洗濯槽3との間で上昇された水流が貯水槽2の外部に溢れることが防止され、水位または洗濯槽3の回転速度によっては、前記上昇された水流が貯水槽カバー10に沿って案内されて洗濯槽2内に溢れ出ることができる。
【0033】
モータ13の回転によってパルセーター4及び洗濯槽3のうち、少なくとも1つが回転され得る。モータ13の回転力をパルセーター4または洗濯槽3に選択的に伝達するクラッチ(clutch)機構がさらに備えられ得るし、前記クラッチ機構の適切な切り換え動作によってパルセーター4のみが回転されるか、パルセーター4と洗濯槽3とが一体に回転され得る。
【0034】
支持ロッド15の一端は、トップカバー14に対してピボット(pivot)され得るように連結され、他端は、緩衝装置30によって貯水槽2の下部と連結される。
【0035】
緩衝装置30は、支持ロッド15と貯水槽2とを連結するとともに、洗濯機の作動中に発生する貯水槽2の振動を減少させる。
【0036】
緩衝装置30は、貯水槽2の外側面に固定されるキャップ31と、貯水槽2の振動によって弾性的に変形されるばね32とを備えることができる。
【0037】
支持ロッド15は、キャップ31を貫通し、その他端には、ばね32を支持する支持部33が形成される。貯水槽2の振動時、キャップ31が貯水槽2と一体に移動され、支持ロッド15に沿って昇降される。
【0038】
キャップ31が移動される過程で支持部33との間に作用する摩擦力、キャップ31の移動によって圧縮された空気がキャップ31の内周面と支持部33との間を介して抜け出ながら作用する粘性力、ばね32の弾性変形による弾性/復元力等の相互作用によって緩衝作用を行う。
【0039】
給水部50は、貯水槽2または洗濯槽3内に洗濯水を給水する。給水部50は、水栓等の外部水源と連結される給水流路5を取り締まる給水バルブ51を備えることができる。
【0040】
排水部20は、貯水槽2内の洗濯水を外部に排水させる。排水部20は、貯水槽2と連通された排水流路9を取り締まる排水バルブ21と、排水流路9上の洗濯水を洗濯機1の外部に押送する排水ポンプ22とを備えることができる。
【0041】
本実施形態では、排水バルブ21と排水ポンプ22とが共に備えられるが、必ずこれに限定される必要はなく、実施形態によって別の排水バルブ無しで、排水ポンプのみで排水の実施と中断がなされ得る。
【0042】
モータ13は、速度制御が可能なものであって、制御部41から印加される指令速度ω*を追従して速度制御がなされる。このために、モータ駆動部42は、モータ13の実際速度ωが前記指令速度を追従するように、モータ13に印加される電流または電圧のサイズを制御する制御機を備えることができ、このような制御機としては、広く知られたPI(proportional−integral)またはPID(proportional−integral−derivative)制御機を挙げることができる。
【0043】
制御部41は、洗濯機1の作動全般を制御し、特に、給水部50、モータ駆動部42、排水部20を制御する。以下、格別の説明がない限り、各部をなす構成等は、制御部41によって制御されることとする。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明するための順序図である。図3に示すように、洗濯機1は、パルセーター4及び洗濯槽3のうち、少なくとも1つを回転させて洗濯物に付いた汚れを除去してから貯水槽2を排水させ、その後、洗濯槽3を高速で回転させて脱水させる。このような一連の処理過程は、洗濯槽3内に洗濯水が溜まった状態、すなわち、洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態でなされるか、それとも、排水した後になされるかによって、洗濯槽3内に洗濯水が溜まった状態でパルセーター4及び洗濯槽3のうち、少なくとも1つの回転がなされる汚れ処理ステップと、排水後、洗濯槽3を高速で回転させる脱水ステップとに区分され得る。洗い行程、すすぎ行程、及び脱水行程と呼ばれる一般的な区分方法によれば、前記汚れ処理ステップは、洗い行程またはすすぎ行程中になされ、前記脱水ステップは、脱水行程中になされる。ところが、洗い行程またはすすぎ行程は、洗濯槽3内の洗濯水を用いて洗濯物に付いた汚れを除去するという点において共通しているところ、以下、両行程を特に区分する必要がない場合には、「洗い」、「洗いステップ」、または「洗い区間」と通称することとする。
【0045】
図3において、洗濯撹拌ステップS11、振動量感知ステップS12、脱水振動推定ステップS13、及び洗濯物のほぐれステップS14は、洗濯槽3内に洗濯水が満たされた状態、すなわち、洗濯区間でなされ、脱水S15は、脱水区間でなされる。以下、これらのステップ等をより詳しく説明する。
【0046】
洗濯撹拌ステップS11では、洗濯槽3は停止された状態であり、パルセーター4が両方向に交互に繰り返して回転される(以下、「撹拌回転」とする。)。洗濯撹拌ステップS11では、パルセーター4から洗濯物に加えられる強い物理力によって洗濯物に付いた汚れが積極的に除去される。ところが、洗濯撹拌ステップS11では、パルセーター4の回転方向が正方向から逆方向へと変わる途中に洗濯物が回転慣性によって依然として正方向に移動しようとするため、洗濯物の絡まりと、これから起因した洗濯物の偏心(imbalance)とが誘発され得る。
【0047】
振動感知ステップS12では、洗濯物の偏心のために誘発される振動が感知される。前記振動は、洗濯槽3が回転される途中に感知される、貯水槽2、洗濯槽3、または洗濯機1自体の変位を反映する値でありうる。
【0048】
垂直な軸(axis)を中心として洗濯槽3が回転される方式の洗濯機1において、垂直方向への振動はサスペンション30によってある程度緩衝され得るので、水平方向振動がより細かく管理されなければならない。図5に示すように、洗濯物Lが均等に分散された状態で洗濯槽3が回転する場合(a)には、洗濯槽3が停止された状態の幾何学的中心軸(geometrical axis、X)と洗濯槽3の実際回転軸X´とが一致するが、偏心が誘発された状態で回転される場合(b)は、実際回転軸X´が幾何学的中心軸Xに対して傾いた状態で洗濯槽3が回転される。このように、洗濯物の偏心によって実際回転軸が傾いた状態で回転されることが水平振動を誘発させる主な原因となる。
【0049】
特に、最近には、洗濯機の全体的な体積増加は最小化しつつも、洗濯物の処理容量と直結される洗濯槽3のサイズはなるべく増加させる傾向であり、このために、洗濯槽3と貯水槽2との間の間隔、または貯水槽2とキャビネット12との間の間隔は次第に狭くなっている。したがって、水平方向の振動が一定の水準で管理されなかった場合、前記構成等間に衝突が起こるという問題がある。
【0050】
この問題を解決するためには、脱水過程で発生される振動量を脱水前に予め予測することが重要であるが、脱水中には許容範囲以上の振動が発生して、これを感知したとしても、洗濯水がない状態で洗濯物が洗濯槽3の内側面に付着された状態であるため、洗濯物を再度分散させ難いためである。
【0051】
本実施形態では、洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態にある洗濯区間で振動を感知し(S12、振動感知ステップ)、感知された振動量によって脱水を行う。したがって、振動感知ステップS12で感知された振動量が許容範囲を外れた場合には排水をせずに、洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で洗濯物のほぐれS14を行うことにより、洗濯物の状態変化を円滑に導き、偏心を除去することができる。
【0052】
ところが、振動感知ステップS12において感知された振動量VBは、脱水の実施可否を決定する基準になるため、前提条件として感知された振動量VBが脱水中に発生されることと予想される振動量と相関性がなければならない。
【0053】
図9に示すように、出願人の実験によれば、洗濯物の少なくとも一部が洗濯水に浸された状態で洗濯槽3を加速回転させながら測定した振動量(以下、「加速区間で測定された振動量」とする。)は、所定の速度で脱水を行う途中に感知された振動量(以下、「脱水中に測定された振動量」とする。)と高い相関関係をみせた。特に、図9において点線で表示された部分に表示された点等は、洗濯機1の変位が5mm以上測定された場合であって、X軸に沿って加速区間で測定された振動量が増加されるほど、Y軸に沿って脱水中に測定された振動量もその値が増加することが分かる。
【0054】
一方、振動感知ステップS12において洗濯槽3が加速回転される場合において誘発される水流としては、次のような2つの態様を考慮してみることができる。
【0055】
第1に、図4に示すように、洗濯槽3と貯水槽2との間で遠心力により上昇された水位Sが洗濯槽3の上端を越えない場合である。この場合、水位Sは、洗濯槽3が所定の目標速度まで加速回転される区間は勿論であり、前記目標速度を維持し、回転される途中にも洗濯槽3の上端よりは低いことが好ましい。
【0056】
第2に、洗濯槽3と貯水槽2との間で遠心力により上昇した水位Sが洗濯槽3の上端を越えて貯水槽カバー10(図1参照)に沿って案内され、再度洗濯槽3内に溢れ出る場合である。
【0057】
振動感知ステップS12において洗濯槽3の回転は、前記2つの態様のいずれの場合も可能であるが、後者の場合は、洗濯槽3内に溢れ出る水流により、洗濯物の屈伸や絡まりが発生できるだけでなく、貯水槽2の底に溜まったリント(lint)などの汚れが洗濯槽3内に再流入され得るため、前者の場合がより好ましい。
【0058】
振動感知ステップS12において感知された振動量VBが振動量許容値VB0より小さければ、洗濯槽3を高速で回転させて洗濯物を脱水させる脱水ステップS15が行われ得る。逆に、感知された振動量VBが振動量許容値VB0より大きい場合には、洗濯槽3内の洗濯物を再分散させるために洗濯物のほぐれステップS14が行われ、その後、再度振動感知ステップS12が行われ得る。洗濯物のほぐれステップS14では、パルセーター4及び洗濯槽3のうち、少なくとも1つが撹拌回転される。
【0059】
一方、洗濯機1は、モータ13と別に振動を感知するための振動感知手段を備えることができる。
【0060】
前記振動感知手段は、固定体(例えば、キャビネット12)と振動体(例えば、貯水槽2)とにそれぞれ設けられた両極板間に導かれる静電容量の変化によって振動量を推定する静電容量性変位センサー(capacitive displacement sensor)で構成されることができる。しかし、洗濯槽3の回転中に感知された偏心量は、振動量を反映する指標になることができるので、別の変位センサーを備えずに、振動感知ステップS12では偏心量を感知し、脱水振動推定ステップS13では前記感知された偏心量を偏心量許容値と比較し、これに基づいて脱水ステップS15または洗濯物のほぐれステップS14が行われ得る。
【0061】
図6は、本発明の他の実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明するための順序図である。以下、図6を参照して本発明の他の実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明する。
【0062】
洗濯区間中に洗濯撹拌ステップS21が行われる。
【0063】
洗濯撹拌ステップS21では、パルセーター4が撹拌回転(洗濯槽3は停止状態)され、洗濯物の洗濯がなされる。
【0064】
排水ステップS22は、排水部20の制御によって貯水槽2内の洗濯水が排水され、その後、再度給水がなされる(S23)。給水ステップS23では、給水部50の制御によって設定水位まで洗濯槽3内に給水がなされる。前記設定水位は、後述する偏心感知駆動ステップS24において予め設定された速度で洗濯槽3が回転しても、遠心力により洗濯槽3と貯水槽2との間に上昇した洗濯水が洗濯槽3の上端を越えない範囲(図4参照)内で設定されることが好ましい。
【0065】
偏心感知駆動ステップS24では、洗濯槽3が目標速度まで加速され、一定時間の間前記目標速度を維持し、回転してから制動される。
【0066】
偏心感知駆動ステップS24が行われる途中に偏心量MBが感知される(S25、偏心感知ステップ)。前記偏心量は、洗濯槽3の回転速度変化に基づいて求められることができる。偏心量は、洗濯槽3の回転速度が目標速度まで上昇する加速区間、前記目標速度を維持するように制御され、回転される維持区間、または洗濯槽3が制動され、減速される減速区間のうち、前記加速区間で感知することが好ましい。
【0067】
図8は、偏心感知駆動での(a)時間による回転速度変化(RPM軸)と(b)発生振動量(VB軸)とを示したグラフであって、グラフを介して前記区間等のうち、特に加速区間では、振動が克明に表れることが分かるだけでなく、振動量が洗濯槽3の回転速度増加に相応して増加される傾向を有することが分かる。
【0068】
一方、洗濯槽3の回転速度変化は、モータ13の出力変化と相応するものであるため、モータ13から出力される電流値の変化に基づいて偏心量を求めることもできる。
【0069】
脱水振動推定ステップS26では、偏心感知ステップS25において感知された偏心量MBを偏心量許容値MB0と比較し、排水S28を行うか、または洗濯物のほぐれ駆動S27を行うか判断する。
【0070】
制御部41は、感知された偏心量MBが偏心量許容値MB0より小さい場合には、排水部20の制御によって洗濯水を排水する排水ステップS28と、排水後、洗濯槽3を高速で回転させて洗濯物を脱水させる脱水ステップS29とが行われるように制御し、逆に、感知された偏心量MBが偏心量許容値MB0より大きい場合には、洗濯物を再分散させる洗濯物のほぐれステップS27が行われ、その後、再度偏心感知駆動ステップS24が行われるように制御する。
【0071】
図7は、本発明のさらに他の実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明するためのものであって、時間によるモータの回転速度を示したグラフである。以下、図7を参照して本発明のさらに他の実施形態に係る洗濯機の制御方法を説明する。
【0072】
洗濯区間Wでは、洗濯撹拌W1が行われる。前述した実施形態等でのS11、S21ステップと同様に、パルセーター4が撹拌回転されて洗濯物の汚れが除去される。
【0073】
バランシング駆動W2が行われる。
【0074】
バランシング駆動W2は、洗濯槽3を比較的低い速度で一方向に回転させるものであって、洗濯槽3内の洗濯物の均衡状態(balancing)が改善される。
【0075】
偏心感知駆動W3は、洗濯槽3を回転させるが、洗濯槽3と貯水槽2との間に上昇された洗濯水が洗濯槽3の上端を越えない範囲内で洗濯槽3の回転が制御される。洗濯槽3が加速回転される区間で偏心量が感知される(S24、S25参照)。
【0076】
偏心感知駆動W3中に感知された偏心量MBが偏心量許容値MB0より小さい場合には、直ちに脱水Dが行われ、感知された偏心量MBが偏心量許容値MB0より大きい場合には、洗濯物を再分散させる洗濯物のほぐれ駆動W4が行われ得る。洗濯物のほぐれ駆動W4は、洗濯槽3内での洗濯物の位置を変動させるために、パルセーター4及び洗濯槽3のうち、少なくとも1つを撹拌回転させるものである。
【0077】
洗濯物のほぐれ駆動W4後、バランシング駆動W5と偏心感知駆動W6とが行われる。偏心感知駆動W6中に再度偏心量が感知される。実施形態によって、バランシング駆動W4を省略し、直ちに偏心感知駆動W6が行われることもできる。
【0078】
今、再度行われた偏心感知駆動W6中に感知された偏心量MBが偏心量許容値MB0より小さい場合には、脱水Dが行われる。
【0079】
逆に、偏心感知駆動W6中に感知された偏心量MBが偏心量許容値MB0より大きい場合には、再度バランシング駆動W5が行われ得る。
【0080】
脱水区間Dでは、貯水槽2内の洗濯水が排水された後、バランシング駆動D1と脱水駆動D2とが行われ得る。実施形態によって、バランシング駆動D1を省略し、直ちに脱水駆動D2が行われることもできる。
【0081】
脱水駆動D2は、目標脱水速度に至るまで洗濯槽3の回転速度が段階的に上昇する。脱水駆動D2後、再度バランシング駆動D3と以前の目標脱水速度よりさらに高い速度まで洗濯槽3が回転される脱水駆動D4がさらに行われ得る。
【0082】
本発明の洗濯機及び洗濯機の制御方法は、脱水進入にかかる時間を減らすことができ、脱水進入に失敗する頻度を画期的に減らすことができるという効果がある。
【0083】
また、本発明の洗濯機及び洗濯機の制御方法は、許容範囲を外れた振動量を感知しても、円滑に洗濯物を再分散させることができるという効果がある。
【0084】
なお、本発明の洗濯機及び洗濯機の制御方法は、脱水前に予め脱水時に発生される振動量を予測することにより、安定性の側面でより良い条件で脱水を行うことができるという効果がある。
【0085】
実施形態が多数の例示的実施形態を参照して説明されたが、種々の他の変形例及び実施形態が本開示の原理の範疇及び思想の範囲内で通常の技術者により案出され得る。より詳しく、様々な変形及び修正が本開示の範疇内で本結合配置の構成部品及び/又は配置において可能である。このような構成部品及び/又は配置における変形及び修正に加えて、代案的使用も通常の技術者に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9