(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073963
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】時打ち計時器のためのメロディ選択機構
(51)【国際特許分類】
G04B 21/08 20060101AFI20170123BHJP
G04B 21/02 20060101ALI20170123BHJP
G10F 1/06 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
G04B21/08 B
G04B21/02
G10F1/06 K
【請求項の数】26
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-100767(P2015-100767)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2015-222255(P2015-222255A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2015年5月18日
(31)【優先権主張番号】14169217.8
(32)【優先日】2014年5月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ベーラ
(72)【発明者】
【氏名】エドモン・カプト
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−189590(JP,A)
【文献】
特表2013−530403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 21/02 − 14
G04C 21/06 − 10
G10F 1/06
G10K 1/07 − 076
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時打ち計時器(1000)のための聴覚表示機構(100)において、前記機構は、同じ第1の時間測定パラメータのための、互いに平行な面で段状に配置した複数の第1の制御部品(1)を含むこと、所与の瞬間で、前記複数の第1の制御部品(1)のうちただ1つが、前記第1の時間測定パラメータに対応する第1の共通スネイル(2)と協働すること、前記聴覚表示機構(100)は、ユーザが操作するか又は前記計時器(1000)のムーブメントによって動作させるように構成した第1のメロディ選択手段(3)を含むこと、及び各前記第1の制御部品(1)は、前記第1のメロディ選択手段(3)内に含まれる第1の専用選択器機構(30)によって前記第1の制御部品(1)に特定である面で制御され、少なくとも1つの制御レバー(4)を介して、少なくとも1つのハンマの運動を制御して前記第1の制御部品(1)に特定であるメロディを演奏するか又は前記第1の制御部品(1)に特定である少なくとも1つのゴングを作動させることを特徴とする、聴覚表示機構(100)。
【請求項2】
前記機構は、それぞれを前記1つのハンマの枢動を制御するように構成したいくつかの前記制御レバー(4)を含むこと、及び各前記制御レバー(4)は、1回につき、異なる面に位置する前記いくつかの第1の制御部品(1)のうちただ1つの衝撃を受けて枢動するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項3】
各前記選択器機構(30)は、各前記第1の制御部品の段(1)上に少なくとも1つの第1の分離手段(5)を含み、所与の瞬間で、前記第1の共通スネイル(2)上で現在時刻に関する情報を収集するただ1つの前記第1の制御部品(1)が結合位置に接近でき、前記同じ所与の瞬間で、他の前記第1の制御部品(1)の全てを分離できるように構成し、それにより、前記他の第1の制御部品(1)の全てが前記第1の共通スネイル(2)の漸進する枢動フィールド(Z)の外側に留まり、前記他の第1の制御部品(1)の全てが前記第1の共通スネイル(2)に近づくのを阻止することを特徴とする、請求項2に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項4】
前記第1の分離手段(5)は、各前記段上に少なくとも1つの分離レバー(50)を含み、前記分離レバー(50)は、前記分離レバー(50)の角度位置に従って、前記段の前記第1の制御部品(1)が前記第1の共通スネイル(2)に近づくのを可能にするか又は阻止するように構成することを特徴とする、請求項3に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項5】
前記第1の制御部品(1)はそれぞれ、特定のメロディの実行を起動するための特定の歯部外形(6)を有することを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項6】
前記第1の制御部品(1)のうち少なくとも2つは、異なる歯部外形を有することを特徴とする、請求項5に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項7】
前記第1のメロディ選択手段(3)内に含まれる前記第1の選択器機構(30)の全ては同軸であることを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項8】
前記第1の制御部品(1)は第1のクォーター用部品であること、及び前記第1のスネイル(2)は第1のクォーター用スネイルであることを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項9】
前記第1の制御部品(1)は第1のアワー用部品であること、及び前記第1のスネイル(2)は第1のアワー用スネイルであることを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項10】
前記第1の制御部品(1)は第1のミニッツ用部品であること、及び前記第1のスネイル(2)は第1のミニッツ用スネイルであることを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項11】
前記第1のメロディ選択手段(3)は、第2の時間測定パラメータに対応する第2の共通スネイル(22)への接近も制御し、前記第2の共通スネイル(22)は、所与の瞬間で、互いに平行な面で段状に配置した複数の第2の制御部品(12)のうちのただ1つと協働すること、前記聴覚表示機構(100)は、第2のメロディ選択手段(32)を含むこと、及び前記各第2の制御部品(12)は、前記第2のメロディ選択手段(32)内に含まれる第2の専用選択器機構によって前記第2の制御部品(12)に特定である面で制御され、少なくとも1つのレバー(4)を介して、少なくとも1つのハンマの運動を制御して前記第2の制御部品(12)に特定であるメロディを演奏するか又は前記第2の制御部品(12)に特定である少なくとも1つのゴングを起動することを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項12】
各前記第2の専用選択器機構は、各前記第2の制御部品の段(12)上に少なくとも1つの第2の分離手段(52)を含み、所与の瞬間で、前記第2の共通スネイル(22)上で現在時刻に関する情報を収集するただ1つの前記第2の制御部品(12)が結合位置に接近でき、前記同じ所与の瞬間で、前記他の第2の制御部品(12)の全てを分離できるように構成し、それにより、前記他の第2の制御部品(12)の全てが前記第2の共通スネイル(22)の漸進する枢動フィールド(Z2)の外側に留まり、前記他の第2の制御部品(12)の全てが前記第2の共通スネイル(22)に近づくのを阻止することを特徴とする、請求項11に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項13】
前記第1の共通スネイル(2)及び前記第2の共通スネイル(22)は同軸であることを特徴とする、請求項11に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項14】
前記第2のメロディ選択手段(32)内に含まれる前記第2の選択器機構(302)の全ては同軸であることを特徴とする、請求項11に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項15】
前記聴覚表示機構(100)は、前記第1の共通スネイル(2)に同軸且つ前記第1の共通スネイル(2)の延在部に、少なくとも1つの第3の共通スネイル(23)も含み、前記第3の共通スネイル(23)は、第3の時間測定パラメータに対応し、3つの段のうちの3番目の段を含む第3の領域に対応し、前記第3の領域全てが、前記第3のパラメータに関連すること、前記第3の領域には、同じ前記第3の時間測定パラメータのための複数の段状の第3の制御部品(13)があること、前記第3の制御部品(13)は、前記第3の共通スネイル(23)と協働するように構成すること、前記聴覚表示機構(100)は、第3のメロディ選択手段を含むこと、各前記第3の制御部品(13)は、前記第3のメロディ選択手段内に含まれる第3の専用選択器機構によって前記第3の制御部品(13)に特定である面で制御され、少なくとも1つのレバー(4)を介して、少なくとも1つのハンマの運動を制御して前記第3の制御部品(13)に特定であるメロディを演奏するか又は前記第3の制御部品(13)に特定である少なくとも1つのゴングを起動することを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項16】
各前記第3の専用選択器機構は、各前記第3の制御部品の段(13)上に少なくとも1つの第3の分離手段を含み、所与の瞬間で、前記第3の共通スネイル(23)上で現在時刻に関する情報を収集するただ1つの前記第3の制御部品(13)が結合位置に接近でき、前記同じ所与の瞬間で、前記他の第3の制御部品(13)の全てを分離できるように構成し、それにより、前記他の第3の制御部品(13)の全てが前記第3の共通スネイル(23)の漸進する枢動フィールド(Z3)の外側に留まり、前記他の第3の制御部品(13)の全てが前記第3の共通スネイル(23)に近づくのを阻止することを特徴とする、請求項15に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項17】
前記第3のメロディ選択手段内に含まれる前記第3の選択器機構の全ては同軸であることを特徴とする、請求項15に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項18】
単一制御手段(600)は、一方で前記第1のメロディ選択手段(3)の枢動を制御し、もう一方で前記第2のメロディ選択手段(32)の枢動を制御し、及び/又は前記聴覚表示機構(100)が前記第3のメロディ選択手段を含む場合は前記第3のメロディ選択手段の枢動を制御することを特徴とする、請求項11及び15に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項19】
前記単一制御手段(600)は段状カムであることを特徴とする、請求項18に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項20】
前記単一制御手段(600)はコラム・ホイールであることを特徴とする、請求項18に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項21】
前記機構は、異なる種類のいくつかの制御部品を同時に制御するメロディ選択手段を含み、前記制御部品は、異なる時間測定パラメータに対応するスネイル上での読出しに対応することを特徴とする、請求項1に記載の聴覚表示機構(100)。
【請求項22】
請求項1に記載の少なくとも1つの聴覚表示機構(100)を含む計時器又は時計(1000)。
【請求項23】
前記計時器は、前記第1のメロディ選択手段(3)を動作させるムーブメントを含むことを特徴とする、請求項22に記載の計時器(1000)。
【請求項24】
前記ムーブメントは、複数のメロディ選択手段を動作させるように構成することを特徴とする、請求項23に記載の計時器(1000)。
【請求項25】
前記計時器(1000)は、一方で少なくとも1つのメロディ選択手段を動作させるように構成したムーブメント、及びもう一方で少なくとも1つのメロディ選択手段を動作させる、ユーザが利用可能な制御手段の両方を含むことを特徴とする、請求項23に記載の計時器(1000)。
【請求項26】
請求項1に記載の少なくとも1つの聴覚表示機構(100)を含むオルゴール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時打ち計時器のための聴覚表示機構に関する。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのそのような聴覚表示機構を含む計時器又は時計にも関する。
【0003】
本発明は、少なくとも1つのそのような聴覚表示機構を含むオルゴールにも関する。
【0004】
本発明は、聴覚表示器を含む計時器の分野、及びオルゴール若しくは同様のものの関連分野に関する。
【背景技術】
【0005】
従来、時打ち時計は、夜間に照明がなくてもいつでも時刻がわかるように発明された。
【0006】
改良により、例えば、オルゴールで使用するもの等の、穴又はピンを有するディスク又はシリンダにより調整した複数の配列を所定の順序で並置することによってメロディの演奏が可能になった。
【0007】
しかし、時打ち時計は、視覚表示器を有する時計が提供する全ての可能性、具体的には、昼/夜、午前又は午後(AM/PM)の間の識別、いくつかの時間帯(GMT)の間での識別、或いは更にはユーザが所望する特定の時間スケールに分割した帯域の間での識別を依然として提供していない。
【0008】
MONTRES BREGUET SAの名義の欧州特許出願第2498145A1号は、異なるチャイムを有する時打ち機構を開示しており、この時打ち機構は、枢動筒を有し爪の付いたクリックを支える駆動プレートを含むリピータ・ユニットのための段を有し、このクリックは、ばねによって戻され、時打ち動作制御機構と協働する移動止めラチェット・ピンの作用下で移動可能であり、この段はラチェットを含み、ラチェットは、筒を有し、筒内に含まれる歯部上でクリックの爪と協働するように筒上で枢動する。このことにより、第1のハンマ・レバーと協働する第1のアワー・ラックと一体であるラチェットの回転を可能にするか又は回転を妨げる。この段は、同じ軸周りに枢動し前記時打ち機構のハンマ・レバーと協働する第2のアワー・ラックを含む。
【0009】
CHRISTOPHE CLARET SAの名義の欧州特許出願第1770453A1号は、機械式計時器を開示しており、この機械式計時器は、第1の時間帯及び第2の時間帯の時刻を示す機構を含み、機構は、必要に応じてチャイムを鳴らす時打ちデバイスを備え、このチャイムは、第1の時間帯又は第2の時間帯の時刻に対応する。この時打ちデバイスは、制御部材によって制御される単一時打ち香箱により動力供給され、制御部材は、第1の時間帯及び第2の時間帯の時刻に対応する時打ちを解放することを意図する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願第2498145A1号
【特許文献2】欧州特許出願第1770453A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、聴覚表示器を有する計時器、特に、より汎用性のある時計の製造を提案するものであり、メロディの演奏及び/又はゴングの使用に従って特定の使用状況を区別可能にする形態をユーザに提供する。これらの改良形態は、オルゴールにも関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的で、本発明は、時打ち計時器のための聴覚表示機構に関し、機構は、同じ第1の時間測定パラメータのための、互いに平行な面で段状に配置した複数の第1の制御部品を含むこと、所与の瞬間で、前記複数の第1の制御部品のうちただ1つが、前記第1の時間測定パラメータに対応する第1の共通スネイルと協働すること、前記聴覚表示機構は、ユーザが操作するか又は前記計時器のムーブメントによって動作するように構成した第1のメロディ選択手段を含むこと、及び各前記第1の制御部品は、前記第1のメロディ選択手段内に含まれる第1の専用選択器機構によって第1の制御部品に特定である面で制御され、少なくとも1つの引上げ部品を介して、少なくとも1つのハンマの運動を制御して第1の制御部品に特定であるメロディを演奏するか又は第1の制御部品に特定である少なくとも1つのゴングを作動させることを特徴とする。
【0013】
本発明は、少なくとも1つのそのような聴覚表示機構を含む計時器又は時計にも関する。
【0014】
本発明は、少なくとも1つのそのような聴覚表示機構を含むオルゴールにも関する。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】時打ち機構の一部の概略平面図である。この時打ち機構では、時計ムーブメントの1つのホイールは選択手段を制御し、この選択手段は、同軸スターホイールを含み、クォーター用部品に作用するレバーの枢動を順次に制御して、所与の瞬間で、これらのクォーター用部品のうちただ1つが、クォーター用スネイルに接近でき、時打ちを実施するための情報を収集するようにする。この機構は、それぞれがこれらクォーター用部品のうち1つ又は複数と協働できるいくつかのハンマ制御レバー(図示せず)を含む。
【
図1A】ユーザが操作可能な制御手段がプッシュピースを作動させて前記スターホイールを含む同じ選択手段を制御する、一変形形態の詳細図である。
【
図2】
図1と同様の、それぞれが特定の時間測定パラメータに対応するいくつかのスネイルを含む機構を示す図であり、これらスネイルのそれぞれは、特定の組のハンマ・レバー制御部品と協働する。
【
図3】異なる時間測定パラメータに対応し、本明細書では同軸として示す2つのスネイルの概略部分側面図である。上側スネイルは、それぞれが2つ又は3つの制御レバーと協働するように構成した4つの制御部品と協働し、下側スネイルは、それぞれが上述の制御レバーとは異なる2つの他のレバーと協働するように構成した2つの制御部品と協働する。
【
図4】4つの重ね置いたカムの形態であって、それぞれが係止レバーの突起と協働する切欠きを含む4つの制御部品係止部品を制御する選択手段の例の概略平面図である。
【
図6】メロディ選択手段を作動させる制御手段を含む時打ち時計の図であり、開口は、選択したメロディを特定するマークを見せる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、グランド・ストライク型、スモール・ストライク型又はミニッツ・リピータ型又はアラーム型の時打ち計時器1000、或いはオルゴール型又は同様のもののための聴覚表示機構100に関する。本発明は、本明細書では計時器向けに説明するが、当業者はオルゴール又はあらゆる他の同様の機構に本教示をどのように適用するかわかるであろう。
【0018】
本発明は、特定のチャイムを鳴らすメロディ又はゴングをユーザが選択可能にすること、及び計時器1000のムーブメントによって直接行われる同様の選択も可能にすることを提案する。例えば、本発明の本実施形態では、ムーブメントは、正午前の時刻(AM)のための第1のチャイム・メロディ及び正午過ぎの時刻(PM)のための別のチャイム・メロディを動作できるか、又は連続する二日間に対してチャイムを差異化できるか、或いは第2の時間帯のための別のチャイムを開始する前に第1の時間帯のための第1のチャイムの演奏を開始できる。適用例は無限であり、チャイム及び/又はゴングの特定の組合せを有するそのような聴覚表示器は、天体時計又は時間帯時計或いは同様の時計上で読取りが困難であることがある視覚表示器よりも、ユーザにとって有意義なものとすることができる。
【0019】
本発明によれば、本機構100は、同じ第1の時間測定パラメータのための複数の第1の制御部品1を含む。
【0020】
好ましくは、こうした第1の制御部品1は、互いに平行な面で段状に配置する。
【0021】
これらの第1の制御部品1は、共通の基準スネイル、とりわけ、この第1の時間測定パラメータに対応する第1の共通スネイル2と協働するようにも構成する。所与の瞬間で、これら第1の制御部品1のうちただ1つが第1の共通スネイル2と協働して、適切な時打ちを実施するのに情報を収集する。
【0022】
この聴覚表示機構100は、ユーザが操作するか又は計時器1000のムーブメントによって動作させるように構成した第1のメロディ選択手段3も含む。聴覚表示機構100内に含まれる各第1の制御部品1は、第1の制御部品1に特定である面で、前記第1のメロディ選択手段3内に含まれる専用の第1の選択器機構30によって制御する。
【0023】
各第1の制御部品1は、少なくとも1つの制御レバー4を介して、少なくとも1つのハンマの運動を制御して第1の制御部品1に特定であるメロディを演奏するか、第1の制御部品1に特定である少なくとも1つのゴングを作動させる。
【0024】
図1は、午前(AM)のチャイムと午後(PM)のチャイムとを差異化する聴覚表示機構100を有する例示的実施形態を示し、この差異化は、ケースに応じて、時計器ムーブメントによってメロディ選択手段3に送信される時刻を基準として、午前のチャイムのための第1のメロディを演奏する第1のクォーター用部品101の作動を制御するか、又は午後のチャイムのための第2のメロディを演奏する第2のクォーター用部品102の作動を制御することによって行われる。
図5A及び
図5Bに示すこれらクォーター用部品101及び102は、機構100の制御部品1を形成する。
【0025】
好ましくは、聴覚表示機構100は、いくつかの制御レバー4を含み、各制御レバー4は、そのようなハンマの枢動を制御するように構成し、それぞれのそのような制御レバー4は、1回につき、異なる面に位置するいくつかのそのような第1の制御部品1のうちただ1つの衝撃を受けて枢動するように構成する。したがって、
図1は、4つの周辺レバー4と協働するクォーター用部品101を示し、ハンマ及びゴングは、図面を繁雑にしないため図示しない。
【0026】
それぞれのそのような第1の選択器機構30は、各第1の制御部品1の各段上に第1の分離手段5を含み、所与の瞬間で、
−軸Aの第1の共通スネイル2上で現在時刻に関する情報を収集し、包絡線体積部Zの境界を画定するただ1つの第1の制御部品1が、結合位置に接近できるように構成し、
−同じ所与の瞬間で、他の全ての第1の制御部品1を分離できるように構成し、それにより、他の全ての第1の制御部品1は、第1の共通スネイル2の漸進する枢動フィールドZの外側に留まり、他の全ての第1の制御部品1が第1の共通スネイル2に近づくのを阻止する。
【0027】
有利で単純な実施形態では、この第1の分離手段5は、それぞれのそのような段で少なくとも1つの分離レバー50を含み、この分離レバー50は、その角度位置に従って、関連する段に特定である第1の制御部品1が第1の共通スネイル2に近づくのを可能にするか又は阻止するように構成する。
【0028】
したがって、
図1の例によれば、第1のレバー501は、下側の高さで、その位置に従って第1のクォーター用部品101がスネイル2に近づくのを可能にするか又は阻止するように構成する。平行及びより高い面では、第2のレバー502は、より高い高さで、その位置に従って第2のクォーター用部品102がスネイル2に近づくのを可能にするか又は阻止するように構成する。この図では、星形又は同様の形態で作製した第2の選択器機構302は、第2のレバー502の突起504を押し戻し、このようにして、第2のレバー502の端部506が第2のクォーター用部品102のフィーラ・スピンドル11を阻止するように向けられ、第2のクォーター用部品102のあらゆる運動を阻止し、結果として共通スネイル2に近づくのを阻止する。反対に、第1の星形選択器機構301は、第1のレバー501の突起503が軸Bに向かって下がることを可能にし、後退させるので、第1のレバー501の端部505は、この場合第1のクォーター用部品101のフィーラ・スピンドル11が通過するのを妨害しない。このことは、第1のクォーター用部品101のフィーラ・スピンドル11がスネイル2上に情報収集位置で支持された状態を示し、したがって第1のメロディの演奏を可能にする。
【0029】
第1の制御部品1はそれぞれ、
図1及び
図5A、
図5B、
図5Cに示すように、特定のメロディの実行を起動するための特定の歯部外形6を有し、歯61及び63、歯の間の空間62及び距離は、周期的な配列を画定する。
【0030】
これらの第1の制御部品1のうち少なくとも2つは、チャイムを差異化するために異なる歯部外形を有する。
【0031】
一変形形態では、第1の制御部品のうち一部のみが所与の制御レバー4と協働する。
図3の例では、制御レバー40は、3つの第1の上側制御部品1にのみ接近できる。
【0032】
非限定的な様式で、図面が示す特定の実施形態では、第1のメロディ選択手段3内に含まれる第1の選択器機構30の全ては、同軸である。この場合、
図1の第1の選択器機構301及び第2の選択器機構302は、それらの共通軸Bを中心として同軸である。この実施形態では星形であるこれらの選択器は、ジャンパ310の端部311によって保持する。本例では、選択器の回転は、ホイール630を含む制御手段のフィンガ610によって引き起こされる。このホイール630は、ケースに応じて、計時器ムーブメントによって制御するか、又は(ミニッツ・リピータの制御によりアナログ式に)ユーザの動作によって制御するか、又は計時器の環境における物理的パラメータの変化に反応するセンサの作用によって制御できる。
図1Aは、ユーザが操作可能な、本明細書では非限定的に制御プル部品620によって形成した制御手段が、フィンガ610でプッシュボタンを起動しこれらの星形選択器機構を含む同じ選択手段を制御する、一変形形態である。
【0033】
図1に示す非限定的な適用例では、第1の制御部品1は、第1のクォーター用部品であり、第1のスネイル2は、第1のクォーター用スネイルである。
【0034】
図示しない変形形態では、第1の制御部品1は、第1のアワー用部品であり、第1のスネイル2は、第1のアワー用スネイルである。
【0035】
図示しない変形形態では、第1の制御部品1は、第1のミニッツ用部品であり、第1のスネイル2は、この場合第1のミニッツ用スネイルである。
【0036】
図2に示す特定の一実施形態では、メロディ選択手段は、第2の共通スネイル22への接近も制御する。この第2の共通スネイル22は、第2の時間測定パラメータに対応し、同じ第2の時間測定パラメータのための複数の第2の制御部品12と協働する。所与の瞬間で、これら第2の制御部品12のうちただ1つが第2の共通スネイル22と協働して、適切な時打ちを実施するための情報を収集する。
【0037】
こうした第2の制御部品12も、好ましくは互いに平行な面で段状に配置する。
【0038】
したがって、聴覚表示機構100は、
図2に示すのと同じ第1の専用メロディ選択手段3であっても、第2の専用メロディ選択手段32であってもよいメロディ選択手段を含む。第2の専用メロディ選択手段32である特定のケースでは、各第2の制御部品12は、第2のメロディ選択手段32内に含まれる専用選択器機構によって第2の制御部品12に特定である面で制御され、少なくとも1つの制御レバー4を介して、少なくとも1つのハンマの運動を制御して第2の制御部品12に特定であるメロディを演奏するか、又は第2の制御部品12に特定である少なくとも1つのゴングを作動させる。上記したものと同様に、機構100は、第2の制御部品12の各段上に少なくとも1つの第2の分離手段52を含み、所与の瞬間で、第2の共通スネイル22上で現在時刻に関する情報を収集する1つの第2の制御部品12が結合位置に接近でき、同じ所与の瞬間で、他の第2の制御部品12の全てを分離できるように構成し、それにより、他の全ての第2の制御部品12が第2の共通スネイル22の漸進する枢動フィールドZ2の外側に留まり、他の全ての第2の制御部品12が第2の共通スネイル22に近づくのを阻止する。
【0039】
特定の実施形態では、第1の共通スネイル2及び第2の共通スネイル22は、同軸である。
【0040】
特定の実施形態では、第1のメロディ選択手段3及び第2のメロディ選択手段32は、同軸である。
【0041】
特定の実施形態では、第2のメロディ選択手段32内に含まれる第2の専用選択器機構の全ては、同軸である。
【0042】
図3に示す特定の実施形態では、聴覚表示機構100は、第1の共通スネイル2に同軸且つその延在部に、少なくとも1つの第3の共通スネイル23も含む。
【0043】
この第3の共通スネイルは、第3の時間測定パラメータに対応し、3つの段のうちの3番目の段を含む第3の領域にも対応し、この第3の領域全てが、この第3のパラメータに関連する。
【0044】
したがって、
図3は、異なる時間測定パラメータに対応する、本明細書では同軸に組み付けた2つのスネイル2及び23を示し、上側スネイル2は、それぞれを2つ又は3つの制御レバー4又は40と協働するように構成した4つの制御部品1と協働し、下側スネイル23は、それぞれを上述の制御レバーとは異なる2つの他のレバー43と協働するように構成した2つの制御部品13と協働する。
【0045】
図3の上側部分は、4つの重ね合わせた第1の制御部品1の積重ねを断面で示すものであり、全ての第1の制御部品1は、1回につきただ1つの第1の制御部品1が同じスネイル2と協働するように構成し、全ての第1の制御部品1は、同様に1回につきただ1つの第1の制御部品1がレバー4と協働するように構成する。
【0046】
この第3の領域において、同じ第3の時間測定パラメータのための複数の段状の第3の制御部品13がある。これら第3の制御部品13は、第3の共通スネイル23と協働するように構成する。聴覚表示機構100は、第3のメロディ選択手段を含む。それぞれのそのような第3の制御部品13は、第3のメロディ選択手段32内に含まれる第3の専用選択器機構によって第3の制御部品13に特定である面で制御され、少なくとも1つのレバー4を介して、少なくとも1つのハンマの運動を制御して第3の制御部品13に特定であるメロディを演奏するか、又は第3の制御部品13に特定である少なくとも1つのゴングを作動させる。
【0047】
図3は、2つの第3の下側制御部品13が下側レバー43と協働する、一変形形態を示し、これら下側レバー43は、4つの上側第1の制御部品1と協働する上側レバー4とは異なる。
【0048】
上記の機構と同様に、それぞれのそのような第3の選択器機構は、好ましくは第3の制御部品13の各段上に少なくとも1つの第3の分離手段を含み、所与の瞬間で、第3の共通スネイル23上で現在時刻の情報を収集するただ1つの第3の制御部品13が結合位置に接近でき、同じ所与の瞬間で、他の全ての第3の制御部品13を分離できるように構成し、それにより、他の全ての第3の制御部品13が第3の共通スネイル23の漸進する枢動フィールドの外側に留まり、他の全ての第3の制御部品13が第3の共通スネイル23に近づくのを阻止する。
【0049】
特定の実施形態では、第3のメロディ選択手段内に含まれる第3の選択器機構の全ては、同軸である。
【0050】
特定の実施形態では、単一制御手段600は、一方で第1のメロディ選択手段3の枢動を制御し、もう一方では第2のメロディ選択手段32の枢動を制御し、及び/又は聴覚表示機構100が第3のメロディ選択手段を含む場合は第3のメロディ選択手段の枢動を制御する。
【0051】
図4は、4つの制御部品係止レバーを制御するための選択手段3を含む単一制御手段600に関する例を示し、選択器機構30は、それぞれが係止レバーの突起と協働する切欠き301A、302A、303A、304Aを含む4つの重ね合わせたカム301、302、303、304を含む。
【0052】
特定の実施形態では、この単一制御手段600は、段状カムである。
【0053】
また、特定の実施形態では、この単一制御手段600は、コラム・ホイールである。
【0054】
特定の実施形態では、聴覚表示機構100は、異なる種類のいくつかの制御部品を同時に制御するメロディ選択手段を含み、これらの制御部品は、様々である時間測定パラメータに対応するスネイル上での読出しに対応する。
【0055】
本発明は、少なくとも1つのそのような聴覚表示機構100を含む計時器1000、特に時計にも関する。この計時器1000は、従来の様式で計時器ムーブメントを含む。
【0056】
特定の変形形態では、このムーブメントは、少なくとも第1のメロディ選択手段3を動作させるように構成する。
【0057】
別の変形形態では、ムーブメントは、聴覚表示機構100内に含まれる、本発明による複数のメロディ選択手段又は全てのメロディ選択手段を動作させるように構成する。
【0058】
別の変形形態では、計時器1000は、少なくとも第1のメロディ選択手段3を選択し、これを動作させるように構成した、ユーザが利用可能な制御手段を含む。
【0059】
別の変形形態では、ユーザが利用可能な制御手段は、聴覚表示機構100内に含まれる、本発明による複数のメロディ選択手段又はメロディ選択手段の全てを選択し、これらを動作させるように構成する。
【0060】
別の変形形態では、時計器1000は、一方で少なくとも1つのメロディ選択手段を動作させるように構成したムーブメント、及びもう一方で少なくとも1つのメロディ選択手段を動作させる、ユーザが利用可能な制御手段の両方を含む。
【0061】
本発明は、少なくとも1つのそのような聴覚表示機構100を含むオルゴールにも関する。
【0062】
図6は、そのような時打ち時計1000を示し、この時打ち時計1000は、メロディ選択手段3を作動させる制御手段600を含み、開口306は、選択したメロディを特定するマーク305A、305B、305Cを見せる。このマークは、
図4又は他に示した種類の選択器のカム区分上に見せることもできる。機構100が特定の時打ちの選択以外の選択、例えばゴングの選択を実施する場合、同じ種類の表示器を使用できる。当然ながら、メロディ又はゴング又は時間測定パラメータの選択或いは他の選択を時計1000のムーブメントからの命令によって実施する場合、同じ種類の表示器を使用できる。
【0063】
手短に言えば、本発明の本質的な原理は、同一の性質をもついくつかの制御部品を平行に配置し、特定の表示音を生成するために1つの制御部品を選択することである。
【0064】
上記の例で記載したように、本発明は、メロディの選択だけでなく単なるゴングの選択も可能にする。
【0065】
段状レバーが制御部品を妨害することなく決められた段上に実装されると、聴覚表示に関する特定の変形形態が達成可能になる。
【0066】
適切なスネイルの選択による時間パラメータの選択も革新的である。したがって、選択手段は、例えば従来の表示:アワー/クォーター/ミニッツと、例えばテン・ミニッツのスネイルに関する情報の収集による特定の表示:アワー/テン・ミニッツ/ミニッツとの間の選択を可能にする。
【0067】
本発明の利点は、本発明が例えば
図2の実施形態と
図3の実施形態との組合せ、又は同様の実施形態の組合せによって、そのような変形形態の組合せを複雑な構成で容易に可能にすることである。
【0069】
本発明は、既存の聴覚表示機構の修正形態にも向いている。
【符号の説明】
【0070】
1 制御部品
2 共通スネイル
3 メロディ選択手段
4 制御レバー
5 分離手段
6 歯部外形
100 聴覚表示機構
1000 時打ち計時器