(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074008
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】太陽光を用いた用水供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/35 20060101AFI20170123BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20170123BHJP
A01G 25/16 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
H02J7/35 J
G06Q50/06
H02J7/35 F
!A01G25/16
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-221101(P2015-221101)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-105683(P2016-105683A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0161089
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ウェイシル ローレンス
【審査官】
緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−183577(JP,A)
【文献】
特開平10−066281(JP,A)
【文献】
特開2012−147661(JP,A)
【文献】
特開2014−175478(JP,A)
【文献】
特開2014−99510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00−29/00
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を集光して直流を生成する太陽電池板と、
前記太陽電池板により生成された直流を昇圧して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流を交流に変換して出力するインバータと、
前記コンバータにより昇圧された直流の量を測定し、基準値以下であれば前記インバータから出力された交流がポンプに供給されるようにし、前記基準値を超えれば前記基準値を超えた分の直流が保存部に保存されるように制御する制御部と、
前記制御部の制御によって前記基準値を超えた分の直流を保存する保存部と、
前記インバータから供給された交流により用水を供給するように動作するポンプと、を含み、
前記制御部は、前記コンバータにより昇圧された直流の量が所定量以下となると、前記保存部に保存された直流を前記インバータに供給して交流に変換された後に前記ポンプに供給されるようにし、前記所定量は前記基準値より小さく設定される、太陽光を用いた用水供給システム。
【請求項2】
太陽光を集光して直流を生成する太陽電池板と、
前記太陽電池板により生成された直流を昇圧して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流を交流に変換して出力するインバータと、
外部の温度を検知する温度検知センサと、
前記温度検知センサで検知された温度が基準温度以下であれば前記インバータから出力された交流がポンプに供給されるようにし、前記基準温度を超えれば前記コンバータにより昇圧された直流のうち所定量の直流が保存部に保存されるように制御する制御部と、
前記制御部の制御によって前記コンバータにより昇圧された直流のうち所定量の直流を保存する保存部と、
前記インバータから供給された交流により動作するポンプと、を含む、太陽光を用いた用水供給システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度検知センサで検知された温度が所定温度以下となると、前記保存部に保存された直流を前記インバータに供給して交流に変換された後に前記ポンプに供給されるようにする、請求項2に記載の太陽光を用いた用水供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を用いた用水供給システムに関し、特に、太陽光の放射量に関係なく、太陽光を用いて用水供給のためのポンプを継続して使用できるようにする太陽光を用いた用水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽光発電は、太陽電池板により太陽光を集光し、太陽光により太陽電池板に電荷差が生じるとそれを利用して直流を発生させ、電力変換器により直流を交流に変換する過程などにより発電を行う。
【0003】
このような太陽光発電は、そのシステムを実現するにあたって高い初期設備費を必要とするが、一度設置しておくと、燃料を用いるのではなく太陽光だけで高いエネルギー効率を得ることができ、かつ反永久的に使用することができるという利点がある。
【0004】
よって、太陽光発電システムは、電力需給が厳しい地域で電力を自己調達するシステムとして使用されるなど、産業全般にわたって様々な応用分野に適用されている。
【0005】
このような太陽光発電システムの適用分野のうち、僻地に飲料水や農牧畜用水を供給する用途で太陽光発電ポンプ設備が多く設置されて使用されている。
【0006】
太陽光発電ポンプ設備は、太陽光発電システムにおいて生成されて変換された交流でポンプの交流モータを駆動してポンピングすることにより、必要な場所に用水を供給できるようにする。
【0007】
図4は従来の太陽光を用いた用水供給システムの概略構成図である。
【0008】
図4に示すように、従来の太陽光を用いた用水供給システムは、太陽光を集光して電流を生成する太陽電池板10、太陽電池板10により生成された電流を用いてポンプ30を動作させる制御部20、制御部20の制御によって動作して用水供給のためのポンプ30などから構成される。
【0009】
このような従来の太陽光を用いた用水供給システムは、複数の太陽電池モジュール(図示せず)からなる太陽電池板10により太陽光を集光することで電流を生成し、制御部20が太陽電池板10により生成された電流をポンプ30に供給してポンプ30を動作させることにより、田や畑などの必要な位置に用水が供給されるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、このような従来の太陽光を用いた用水供給システムは、太陽電池板10により生成された電流を別途保存することができないだけでなく、太陽電池板10により多量の電流が生成されても、ポンプ30の駆動に用いられる電流を除く残りの電流を用いることができないので、用水供給システムを用いる際の効率性が低いという問題があった。
【0011】
また、ポンプ30の駆動のための電流を別途保存しないため、太陽光の放射量の多い昼間にのみポンプ30を駆動することができ、太陽光の放射量の少ない夜間にはポンプ30を駆動することができないので、用水の供給に時間の制限が大きいという問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、太陽光の放射量に関係なく、太陽光を用いて用水供給のためのポンプを継続して使用できるようにする太陽光を用いた用水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1実施形態による太陽光を用いた用水供給システムは、太陽光を集光して直流を生成する太陽電池板と、前記太陽電池板により生成された直流を昇圧して出力するコンバータと、前記コンバータから出力された直流を交流に変換して出力するインバータと、前記コンバータにより昇圧された直流の量を測定し、基準値以下であれば前記インバータから出力された交流がポンプに供給されるようにし、前記基準値を超えれば前記基準値を超えた分の直流が保存部に保存されるように制御する制御部と、前記コンバータにより昇圧された直流の量が前記基準値を超えた場合、前記制御部の制御によって前記基準値を超えた分の直流を保存する保存部と、前記インバータから供給された交流により用水を供給するように動作するポンプとを含む。
【0014】
前記制御部は、前記コンバータにより昇圧された直流の量が所定量以下となると、前記保存部に保存された直流を前記インバータに供給して交流に変換された後に前記ポンプに供給されるようにしてもよい。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の第2実施形態による太陽光を用いた用水供給システムは、太陽光を集光して直流を生成する太陽電池板と、前記太陽電池板により生成された直流を昇圧して出力するコンバータと、前記コンバータから出力された直流を交流に変換して出力するインバータと、外部の温度を検知する温度検知センサと、前記温度検知センサで検知された温度が基準温度以下であれば前記インバータから出力された交流がポンプに供給されるようにし、前記基準温度を超えれば前記コンバータにより昇圧された直流のうち所定量の直流が保存部に保存されるように制御する制御部と、前記制御部の制御によって前記コンバータにより昇圧された直流のうち所定量の直流を保存する保存部と、前記インバータから供給された交流により動作するポンプとを含む。
【0016】
前記制御部は、前記温度検知センサで検知された温度が所定温度以下となると、前記保存部に保存された直流を前記インバータに供給して交流に変換された後に前記ポンプに供給されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による太陽光を用いた用水供給システムは、コンバータにより昇圧された電流のうちポンプの駆動に必要な電流を除く残りの電流を別途保存する保存部を設け、残りの電流を用いるようにすることにより、使用の効率性が向上するという効果がある。
【0018】
また、保存部に保存された残りの電流を、太陽光の放射量の少ない夜間や早朝などにポンプを駆動する際に用いるようにすることにより、用水供給のためのポンプを時間に制約されることなく継続して使用できるという効果がある。
【0019】
さらに、ポンプを時間に制約されることなく使用できるので、用水を用いて栽培される農作物の生産性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態による太陽光を用いた用水供給システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態による太陽光を用いた用水供給システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明による太陽光を用いた用水供給方法を示すフローチャートである。
【
図4】従来の太陽光を用いた用水供給システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明による太陽光を用いた用水供給システム及び用水供給方法について詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の第1実施形態による太陽光を用いた用水供給システムの構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による太陽光を用いた用水供給システムは、太陽電池板100、コンバータ110、インバータ120、制御部140、保存部130及びポンプ150を含む。
【0024】
太陽電池板100は、太陽から放射される太陽光を集光してポンプ150の駆動のための電流(直流)を生成する。
【0025】
ここで、太陽電池板100により集光されて生成される直流の量は、太陽から放射される太陽光の放射量に応じて増減する。
【0026】
コンバータ110は、太陽電池板100により生成された直流を昇圧してポンプ150の駆動に必要な直流にレベル変換する。
【0027】
インバータ120は、コンバータ110により昇圧されてレベル変換された直流を、ポンプ150に備えられた交流モータの駆動のための交流に変換する。
【0028】
制御部140は、コンバータ110により昇圧された直流の量を測定し、測定された直流の量が基準値(ポンプ150の交流モータの駆動に必要な最大電流量)以下であれば、インバータ120から出力された交流がポンプ150に供給されるようにする。
【0029】
それに対して、測定された直流の量が基準値を超えれば、基準値以下に対応する電流は、インバータ120により交流に変換されてポンプ150の交流モータの駆動のための動力として継続して供給されるようにし、基準値を超えた分の電流は、保存部130に保存されるようにする。
【0030】
ここで、コンバータ110により昇圧された直流の量が基準値以下であるだけでなく、所定量(ポンプ150の交流モータを正常動作させることができない電流量)以下となると、制御部140は、保存部130に保存された残りの電流をインバータ120に供給して交流に変換し、その後ポンプ150に供給してポンプ150の交流モータを駆動することにより、用水を供給するようにする。
【0031】
保存部130は、コンバータ110により昇圧された直流の量が基準値を超えた場合、基準値を超えた残りの電流を保存し、ポンプ150は、インバータ120から交流電源が供給されて交流モータが駆動されることにより、必要とするところに用水を供給する。
【0032】
本発明においては、太陽電池板100により集光された太陽光を用いて電流を生成し、生成される電流の量によって用水供給のためのポンプ150を駆動したり残りの電流を保存部130に保存することにより、ポンプ150を駆動する上で電流の不要な使用を防止し、ポンプ150の駆動に用いられない残りの電流は別途保存して用いるので、使用の効率性が向上する。
【0033】
また、太陽光の放射量の少ない夜間や早朝には太陽電池板100により生成される電流の量が少ないのでポンプ150の駆動が困難になるが、コンバータ110により昇圧された電流の量が所定量以下となると、保存部130に保存された残りの電流をポンプ150に供給することにより、太陽光の放射量に関係なくポンプ150を継続して駆動して用水を供給できるようにする。
【0034】
一方、
図2は本発明の第2実施形態による太陽光を用いた用水供給システムの構成を示すブロック図である。
【0035】
図2に示すように、本発明の第2実施形態による太陽光を用いた用水供給システムは、太陽電池板200、コンバータ210、インバータ220、温度検知センサ260、制御部240、保存部230及びポンプ250を含む。
【0036】
太陽電池板200は、太陽から放射される太陽光を集光して直流を生成し、コンバータ210は、太陽電池板200により生成された直流を昇圧してレベル変換し、その後出力する。
【0037】
インバータ220は、コンバータ210から出力された直流を、ポンプ250に備えられた交流モータの駆動のための交流に変換し、その後ポンプ250に供給する。
【0038】
温度検知センサ260は、外部の温度を検知し、制御部240は、温度検知センサ260で検知された外部の温度に基づいてポンプ150の駆動を制御する。
【0039】
制御部240は、温度検知センサ260で検知された外部の温度を受信し、所定の基準温度(ポンプ250を駆動するのに十分な電流を生成する太陽光の放射量を満たすときの温度)以下であれば、インバータ220から出力された交流がポンプ250に供給されるようにし、基準温度を超えれば、基準温度のときに生成される電流の量を基準としてそれを超える分の電流は保存部230に保存されるように制御する。
【0040】
ここで、基準温度は、用水を供給する田や畑などの大きさなどによって異なる温度に設定されるが、用水を供給する地域が大きければ、基準温度を高く設定してポンプ150の駆動のために供給される電流の量が多くなるようにし、用水を供給する地域が小さければ、基準温度を低く設定してポンプ150の駆動のために供給される電流の量が少なくなるようにする。
【0041】
また、外部の温度が基準温度以下であるだけでなく、所定温度(太陽光の放射量がポンプ250を駆動するのに足りない温度)以下となると、制御部240は、保存部230に保存された残りの電流をインバータ220に供給して交流に変換し、その後ポンプ250に供給してポンプ250を駆動することにより、用水を供給するようにする。
【0042】
保存部230は、制御部240の制御によって残りの電流を保存し、ポンプ250は、インバータ220から交流が供給されて交流モータが駆動されることにより、田や畑などに用水を供給する。
【0043】
以下、
図3を参照して本発明による太陽光を用いた用水供給方法について詳細に説明する。
【0044】
まず、太陽電池板100は、太陽から放射される太陽光を集光して電流(直流)を生成し(S101)、コンバータ110に供給する。
【0045】
生成された直流は、コンバータ110により昇圧されてレベル変換され(S103)、インバータ120に出力される。
【0046】
昇圧された直流は、インバータ120により交流に変換され(S109)、ポンプ150に供給される(S111)。
【0047】
このとき、制御部140は、コンバータ110により昇圧された直流の量を測定し(S105)、測定された直流の量が基準値以下であれば、昇圧された直流をインバータ120に供給して交流に変換された後にポンプ150に供給されるようにし、測定された直流の量が基準値を超えれば、基準値を超えた残りの電流が保存部130に別途保存されるようにする。
【0048】
また、コンバータ110により昇圧された直流の量が基準値以下であるだけでなく、所定量以下となると、保存部130に保存された直流をポンプ150に供給してポンプ150を駆動することにより、太陽光の放射量に関係なくポンプ150が継続して駆動されるようにする。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、様々な変化、変更及び均等物を用いることができ、上記実施形態を適切に変形して同様に応用できることは明らかである。よって、上記記載内容は特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0050】
100、200 太陽電池板
110、210 コンバータ
120、220 インバータ
130、230 保存部
140、240 制御部
150、250 ポンプ
260 温度検知センサ