特許第6074027号(P6074027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074027音波混合を用いて製品を混合するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074027
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】音波混合を用いて製品を混合するための方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20170123BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20170123BHJP
   A23L 5/30 20160101ALI20170123BHJP
   A23L 3/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   A23L5/00 Z
   A23L5/10 Z
   A23L5/30
   A23L3/02
【請求項の数】22
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-509544(P2015-509544)
(86)(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公表番号】特表2015-515858(P2015-515858A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】IB2013053416
(87)【国際公開番号】WO2013164766
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】61/641,542
(32)【優先日】2012年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】バトマッツ, エディス
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0005242(US,A1)
【文献】 米国特許第07188993(US,B1)
【文献】 特開平03−247262(JP,A)
【文献】 特開平06−327417(JP,A)
【文献】 特開2009−055856(JP,A)
【文献】 特開昭47−017834(JP,A)
【文献】 ロシア国特許出願公開第2158097(RU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を掻き混ぜるための方法であって、
食品を準備するステップと、
前記食品を熱処理しながら、音波混合装置を用いて前記食品を音波混合するステップと、
を含み、
前記音波混合は、前記食品に、5Hz〜1000Hzの力方向の変化率を与える、方法。
【請求項2】
前記音波混合は、前記食品に、150Gまでの加速度を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音波混合は、前記食品に、少なくとも20Hzの力方向の変化率を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食品は粒子状物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記食品は概ね均質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記食品は高粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理は、加熱、冷却、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
常温保存可能食品を製造するための方法であって、
前記食品の熱処理中に、音波混合装置を用いて前記食品を音波混合するステップを含み、
前記音波混合は、前記食品に、5Hz〜1000Hzの力方向の変化率を与える、方法。
【請求項9】
前記音波混合は、前記食品に、150Gまでの加速度を与える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
音波混合装置により前記食品を掻き混ぜるステップは、
外側容器によって密閉収容されるように構成され、配置された製品容器を含む熱処理容器を準備するステップと、
前記製品容器の少なくとも一部に食品を充填するステップと、
前記食品を前記熱処理容器内で同時に熱処理及び音波混合するステップと、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記外側容器の少なくとも一部に加熱又は冷却媒体を充填するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記製品容器と前記外側容器との間密閉するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記食品は粒子状物質を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記食品は概ね均質である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記食品は高粘度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記食品の加熱又は冷却中に前記食品の概ね均一な温度を達成するために、前記食品を掻き混ぜるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記食品の加熱又は冷却中に前記食品の概ね均一な温度を達成するために必要な時間が、他の方法に比べて低減される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記食品を音波混合するステップにおいて、前記食品は熱滅菌される、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記食品を音波混合するステップにおいて、前記食品は熱殺菌される、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記食品を音波混合するステップにおいて、前記食品を熱滅菌するために必要な時間は、他の方法に比べて低減される、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
前記食品を音波混合するステップにおいて、前記食品を熱殺菌するのに必要な時間は、他の方法に比べて低減される、請求項8に記載の方法。
【請求項22】
製品容器の内側壁に滞留する製品の量は、他の方法に比べて低減される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般的に、組成物の混合に関する。より具体的には、本開示は、より少ない時間で均一な温度プロファイルを達成するために音波混合(acoustic mixing)を用いて組成物を混合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]例えば、特定の製造プロセスにおいては、製品の粘稠性によって、製品全体にわたる均一な温度分布を達成するのに、不必要に長い時間がかかることがある。場合によっては、既存の技術では、かかる時間遅延を減らすために外部撹拌が用いられる。撹拌によって、処理される(例えば、加熱される、冷却される等)製品を掻き混ぜ、工程を通して静止したままの製品に比べると、比較的短時間で均一な温度を達成することができる。
【0003】
[0003]滅菌中にコンテナを撹拌するための種々の方法が、当技術分野において周知である。しかしながら、これらの周知の方法の有効性は、特に、製品の粘稠性及び製品に含まれる粒子に対して与え得る影響によって制限される。実際に、周知の撹拌方法に伴う最大の制限要因は、製品が高い粘度値を有するときの製品の粘稠性である。かかる高粘度の製品については、実験では、全体に均一な温度を達成するための時間遅延の改善がほとんど又は全く示されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]従って、製品の製造処理(例えば、加熱、冷却等)中に、全体に均一な温度分布を素早くもたらす、組成物を混合するための方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]音波混合を用いて食品を製造するための方法が提供される。一実施形態において、食品を掻き混ぜるための方法は、食品を準備することと、食品を熱処理しながら、音波混合装置を用いて食品を音波混合することとを含む。
【0006】
[0006]一実施形態において、音波混合は、食品に、約150Gまで、又は約125Gまで、又は約100Gまで、又は約75Gまで等の加速度を与えることができる。
【0007】
[0007]一実施形態において、音波混合は、食品に、5Hz乃至1000Hzの力方向の変化率を与えることができる。一実施形態において、音波混合は、食品に、少なくとも20Hz、又は少なくとも30Hz、又は少なくとも40Hz、又は少なくとも50Hz、又は少なくとも60Hz、又は少なくとも70Hz、又は少なくとも80Hz等の力方向の変化率を与えることができる。
【0008】
[0008]一実施形態において、食品は粒子状物質を含み及び/又は高粘度を有する。
【0009】
[0009]一実施形態において、熱処理は、加熱、冷却、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0010】
[0010]別の実施形態において、常温保存可能食品を製造するための方法が提供される。本方法は、食品の熱処理中に、音波混合装置を用いて食品を音波混合することを含む。
【0011】
[0011]さらに別の実施形態において、食品の加熱又は冷却中に食品の均一な温度をもたらす方法が提供される。本方法は、食品の熱処理中に、音波混合装置を用いて食品を音波混合することを含む。
【0012】
[0012]さらに別の実施形態において、食品の加熱又は冷却中に食品の均一な温度をもたらすのに必要な時間を減少させるための方法が提供される。本方法は、食品の熱処理中に、音波混合装置を用いて食品を音波混合することを含む。
【0013】
[0013]別の実施形態において、食品を熱滅菌するための時間を減少させるための方法が提供される。本方法は、食品の熱処理中に、音波混合装置を用いて食品を音波混合することを含む。
【0014】
[0014]さらに別の実施形態において、製品容器の内壁に滞留する製品の量を低減するための方法が提供される。本方法は、食品の熱処理中に、音波混合装置を用いて食品を音波混合することを含む。
【0015】
[0015]一実施形態において、音波混合は、食品に、約150Gまで、又は約125Gまで、又は約100Gまで、又は約75Gまで等の加速度を与えることができる。
【0016】
[0016]一実施形態において、音波混合は、食品に、5Hz乃至1000Hzの力方向の変化率を与えることができる。一実施形態において、音波混合は、食品に、少なくとも20Hz、又は少なくとも30Hz、又は少なくとも40Hz、又は少なくとも50Hz、又は少なくとも60Hz、又は少なくとも70Hz、又は少なくとも80Hz等の力方向の変化率を与えることができる。
【0017】
[0017]一実施形態において、食品は粒子状物質を含み及び/又は高粘度を有する。
【0018】
[0018]一実施形態において、熱処理は、加熱、冷却、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0019】
[0019]さらに別の実施形態において、常温保存可能食品を製造するための方法が提供される。本方法は、外側容器によって密閉収容されるように構成され、配置された製品容器を有する熱処理容器を準備することと、製品容器の少なくとも一部に食品を充填することと、食品を熱処理容器内で同時に熱処理及び音波混合することとを含む。
【0020】
[0020]一実施形態において、本方法は、外側容器の少なくとも一部に、加熱又は冷却媒体を充填することをさらに含む。
【0021】
[0021]一実施形態において、本方法は、製品容器と外側容器との間で流体移動がないように、製品容器を外側容器内に密閉することをさらに含む。
【0022】
[0022]一実施形態において、音波混合は、音波混合装置を用いて実行される。
【0023】
[0023]一実施形態において、音波混合は、食品に、約150Gまで、又は約125Gまで、又は約100Gまで、又は約75Gまで等の加速度を与えることができる。
【0024】
[0024]一実施形態において、音波混合は、食品に、5Hz乃至1000Hzの力方向の変化率を与えることができる。一実施形態において、音波混合は、食品に、少なくとも20Hz、又は少なくとも30Hz、又は少なくとも40Hz、又は少なくとも50Hz、又は少なくとも60Hz、又は少なくとも70Hz、又は少なくとも80Hz等の力方向の変化率を与えることができる。
【0025】
[0025]一実施形態において、食品は粒子状物質を含み及び/又は高粘度を有する。
【0026】
[0026]一実施形態において、熱処理は、加熱、冷却、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0027】
[0027]本開示の利点は、食品を混合するための改善された方法を提供することである。
【0028】
[0028]本開示の別の利点は、音波混合を用いた食品の混合方法を提供することである。
【0029】
[0029]本開示のさらに別の利点は、製品の均一な温度を素早く達成するための方法を提供することである。
【0030】
[0030]本開示のさらに別の利点は、全体的製品品質を改善し及び/又は維持する、食品を滅菌するための方法を提供することである。
【0031】
[0031]本開示の別の利点は、全体的製品品質を改善し及び/又は維持する、食品を冷却するための方法を提供することである。
【0032】
[0032]付加的な特徴及び利点は、本明細書で説明され、以下の詳細な説明及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示の一実施形態による、音波混合を組み込む加熱/冷却組立体の概略図を示す。
図2】本開示の一実施形態による、製品容器内のチキンヌードル製品の、容器の壁の近く及び容器の中心における製品の温度を示す。
図3】本開示の一実施形態による、製品容器内のバーベキューチキン・アンド・ライス製品の、容器の壁の近く及び容器の中心における製品の温度を示す。
図4】本開示の一実施形態による、製品容器内のパスタ・アンド・ビーフ製品の、容器の壁の近く及び容器の中心における製品の温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[0037]本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかに他に断りのない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1つのポリペプチド」への言及は2つ以上のポリペプチドの混合物を含み、他も同様である。
【0035】
[0038]本明細書で用いられる場合、「約(about)」とは、ある数値範囲の数を指すと理解される。さらに、本明細書における全ての数値範囲は、全体であれ又はその一部であれ、全ての整数を含むものと理解されたい。
【0036】
[0039]本明細書で用いられる場合、「製品容器」とは、滅菌容器、熱処理容器等を含むと理解される。
【0037】
[0040]高品質、安全、常温保存可能食品を製造するためには、食品は包装前又は包装後に滅菌(例えば、超高温/無菌処理、コンテナ内滅菌など)する必要がある。製品は、消費用に安全であることを確実にするために適切に滅菌する必要があるが、同時に、過剰調理又は過剰処理をするべきではない。実際に、過剰滅菌は、最終製品の感覚刺激的魅力を低下させる恐れがある。
【0038】
[0041]常温保存可能食品を製造する1つの方法は、レトルト処理である。レトルトは蒸気ベースの処理であり、一般に、食品、栄養補助食品、及び医薬品の滅菌に使用される4つの蒸気ベースの処理がある。蒸気は、直接加熱媒体(例えば、飽和蒸気)又は間接加熱媒体(例えば、水浸漬処理に用いられる蒸気加熱水)とすることができる。異なるタイプのレトルト処理として、(i)飽和蒸気(直接蒸気加熱)、(ii)回転式及び静止式両方の水浸漬(間接蒸気加熱)、(iii)回転式及び静止式両方の水噴霧(間接蒸気加熱)、及び(iV)回転式及び静止式両方の蒸気式空気(直接蒸気加熱)が挙げられる。
【0039】
[0042]飽和蒸気処理は、コンテナ内滅菌の最も古い方法である。空気は、絶縁媒体と考えられるので、レトルト容器を蒸気で飽和させることは、処理の要件である。処理中、容器から蒸気を溢れさせ、空気が逃がし弁から逃げられるようにすることによって、全ての空気がレトルトから排出される。空気は、いずれの滅菌ステップ中のどの時点でも、容器に入ることができないので、この処理の滅菌段階の間は、過剰圧力にはなり得ない。
【0040】
[0043]レトルト食品に関しては、製品の粘稠性に応じて、製品の容積内の全ての点が同じ温度になるには、通常、時間遅延が生じる。特定の場合には、既存の技術は、時間遅延を減らすために外部撹拌を用いる。撹拌を用いて、コンテナ内の製品が掻き混ぜられ、滅菌処理全体を通して静止したままの容器と比べると、比較的短時間で均一な温度が達成される。滅菌中の食品コンテナの撹拌のために、異なる方法が用いられてきたが、これらの方法の有効性には限度がある。製品の粘稠性は、有効性を制限する最大の要因であり、高粘度値を有する幾つかの製品については、実験では、均一な製品内部温度を達成するための時間遅延の改善がほとんど又は全く示されなかった。
【0041】
[0044]滅菌技術のための既存の非侵襲撹拌技術とは対照的に、本出願人は、例えば、食品、ペットフード、医薬品、栄養補助食品等を含む幾つかの産業において使用できる熱処理(例えば、滅菌、低温殺菌等)方法を開発した。従って、本開示の方法は、食品熱滅菌用途に音波混合を使用することにより従来技術の問題を解決する。音波混合は、低周波、高強度の音波エネルギーを用いて、例えば、気体/液体、液体/液体、液体/固体、又は固体/固体系を含む異なる状態の物質の均質な混合をもたらす。換言すれば、音波混合は、従来の機械的混合装置の代わりに、一様に分布した、均一な音波エネルギーを用いる。音波混合技術を提供するために使用される装置は、音波混合が可能な任意の装置とすることができ、例えば、Resodyn Corp.に付与された米国特許第7,188,993号及び米国特許第7,866,878号に開示された装置を含むことができる。しかしながら、当業者であれば、米国特許第7,188,993号及び米国特許第7,866,878号に記載された装置は、単に音波混合装置の例にすぎず、本方法において他の任意の音波混合装置を使用できることを認識するであろう。
【0042】
[0045]本方法は、滅菌処理(例えば、レトルト処理)中に製品を混合するための音波混合の使用を含む。この点で、密封(例えば、コンテナ内)食品の熱処理に対する音波混合技術の組み込みを用いて、密封食品を常温保存可能にできる。驚くべきことに、本出願人は、滅菌処理中のかかる音波混合により、食品の全体的熱滅菌時間が低減され、かつ滅菌処理を受ける製品の全体的製品品質(例えば、栄養素保持、感覚刺激特性等)が向上することを発見した。
【0043】
[0046]本方法は、滅菌処理(例えば、無菌又はレトルト熱処理)での使用に限定される必要はなく、組成物の均一な温度分布が必要とされる任意の用途にも使用できることを理解されたい。例えば、本開示の方法は、これらに限定されるものではないが、マイクロ波加熱、オーム加熱、伝導加熱、伝導冷却、対流加熱、対流冷却、放射加熱、放射冷却、レトルト、殺菌加熱、殺菌冷却、滅菌処理、又はこれらの組み合わせを含む、任意の加熱又は冷却処理において使用できることを理解されたい。さらに、本方法は、コンテナ内滅菌に限定されず、上述の加熱/冷却処理のいずれかのためにも使用できることを理解されたい。
【0044】
[0047]上述のように、製品の均一な温度プロファイルを達成するための既存の解決策における第1のかつ最大の欠点として、製品の粘稠性の増加に伴って既存の撹拌方法の有効性が著しく減少することが挙げられる。換言すれば、コンテナ内で製品混合を引き起こすためには、方向を変えながら容器に一定又は可変の力を印加して、製品内の頭隙が常にコンテナ内における相対的位置を変え、それにより製品混合が生じるようにする必要がある。既存の技術は、製品に加わる力が非常に小さい加速度値を有する方法を用いる。加速度値が大きくなり、方向の変化が速くなるにつれて、製品混合はより効率的になる。一例として、商業的に利用可能な最も効率的な非侵襲撹拌方法において製品容器に加わる最大加速度は、2〜3G(即ち、重力加速度)のオーダーである。
【0045】
[0048]対照的に、本開示におけるような音波混合の使用により、約75Gまで、又は約100Gまで、又は約125Gまで、又は約150Gまでの重力加速度を達成することができる。さらに、5Hzから1000Hzまで、又は少なくとも20Hz、又は少なくとも30Hz、又は少なくとも40Hz、又は少なくとも50Hz、又は少なくとも60Hz、又は少なくとも70Hz、又は少なくとも80Hzの力方向の変化率を達成することができる。高い混合強度を達成し制御する際のこの融通性により、他の混合技術を用いた場合に遭遇する制限が排除される。かかる効率的混合により、均一な容器温度をほとんど瞬間的に達成することができるので、全体の熱処理時間が著しく低減される(例えば、90%を上回るオーダーで)。その結果、加工食品の感覚刺激特性を向上させつつ、熱処理中に生じる栄養分の損失を最小限に抑えることができる。
【0046】
[0049]音波混合の使用によってもたらされる別の利点は、現在利用可能な熱処理技術を用いると、製品の焦げ付き(burn−on)が製品コンテナの内壁に起こり得ることである。これは、製品がコンテナの内壁で滞留し、加熱され、容器の内壁に焦げ付くときに起こる。音波混合の使用によって達成されるコンテナ内の均一な混合により、コンテナ内壁における製品の滞留層が除去され、それによりコンテナ内壁への焦げ付きの可能性が排除される。
【0047】
[0050]さらに、熱処理と結合した音波混合は、既存の技術を用いて達成されるバルク混合とは反対に、非常に短い(例えば、50マイクロメートルのオーダーの)混合長を用いることによって均一に混合する利点を有する。バルク混合は、食品粒子を含む製品についての粒子の完全性に悪影響を与えることが分かっている。多くの場合、粒子は、粒子サイズが滅菌前に導入された元のサイズよりも遥かに小さくなるまで剪断されるか、又は粒子が細かく不規則に砕かれる。
【0048】
[0051]図1は、本明細書で開示される方法による、食品の加熱及び/又は冷却のために使用できる概略的な製造ライン10を示す。この製造ラインが製品を加熱滅菌するために使用される一実施形態において、「入口」は蒸気供給部を含み、「出口」は蒸気排出部を含むことができる。この製造ラインが製品を冷却するために使用される別の実施形態においては、「入口」は冷水供給部を含み、「出口」は温水排出部を含むことができる。
【0049】
[0052]図1に示すように、一実施形態において、製造ライン10は、製品を加熱滅菌しながら食品を掻き混ぜるために使用される。従って、製造ライン10は、外側容器12の「入口」に、容器12内部を横断した後で容器12の反対の端部で排出される、蒸気供給部を含む。容器12内で生じるいかなる凝結も排水弁14によって排出され、排水管16に送られる。低く幅広の外側容器12として示されているが、当業者であれば、容器12が音波混合と組み合わせて加熱/冷却機能を提供できる限り、容器12は任意の適切なサイズ及び形状であってよいことを認識するであろう。例えば、容器12は、図1に示す容器12よりも高く薄い略円筒型の容器にすることもできる。
【0050】
[0053]外側容器12は、複数の食品コンテナ20を含む内側容器18を収容する。食品コンテナ20は、音波混合機構24の一部であるペイロード板22の上に位置する。上述のように、音波混合機構24は、食品コンテナ20内に含まれる製品を急速に撹拌して(例えば、振動させて)、製品の均一な温度を素早く達成するために使用される。さらに、粒子状物質を含み及び/又は高粘度を有する製品に対しては、音波混合機構24は、製品を長時間十分に高い温度に加熱して、製品全体にわたる滅菌を達成することができ、かつ製品がコンテナ20の内壁に「焦げ付く」のを防ぐ。製品の一定の音波混合により、周知の撹拌方法よりも遥かに速い速度で、製品全体のより均一な温度分布を達成できる。
【0051】
[0054]代替的な実施形態において、製造ライン10は、コンテナ20内に含まれる食品の冷却用に使用することもできる。冷却目的で使用される場合、製造ライン10は、冷水をコンテナ20に供給する噴霧ボール26の使用を含むことができる。
【0052】
[0055]限定ではなく一例として、以下の実施例は、本開示の種々の実施形態を説明する。以下の形態及び処理は例証のためのみに与えられ、当業者であれば、所望の特定の特徴に応じて、必要な範囲内で修正することができる。
【実施例】
【0053】
[0056]実施例
[0057]本出願人は、種々の製品形態を用いて実験を行い、加熱滅菌の間に音波混合を組み込む方法の混合効率を特定した。実験は、加熱又は冷却媒体を収容するための成形容器(例えば、製品容器)の周りに機械加工ジャケット(例えば外側容器)をもつ成形容器を有する加熱/冷却容器を用いて行った。加熱/冷却容器は、形状が略円筒型で、外側容器と製品容器との間を密封するためのO−リングを含むものであった。製品容器は、約8オンスの容積を有するものであった。2つの被覆型熱電対を加熱容器に接続し、1つは製品容器の壁に近い製品の温度を測定し、1つは製品容器の中心に近い製品の温度を測定した。
【0054】
[0058]実施例1−チキンヌードル製品
[0059]図2に示すように、チキンヌードル製品がジャケット側から加熱されると、壁(つまり縁部)の熱電対は、音波混合を適用しないときは、遥かにより速く温度が上昇する。さらに、音波混合を適用しない場合、壁と中心両方の従来式による温度測定値が250°Fより上になるのに2000秒以上かかった。他方、音波混合を適用すると、壁と中心両方の温度測定値は、ほとんど同時に上昇する。同じ効果は、チキンヌードル製品の冷却段階でもはっきりと見ることができる。
【0055】
[0060]実施例2−バーベキューチキン・アンド・ライス製品
[0061]図3に示すように、バーベキューチキン・アンド・ライス製品の中心及び壁の温度の両方(例えば、製品の全容積)を均一に加熱及び冷却することができる。従って、滅菌中にバーベキューチキン・アンド・ライス製品に音波混合を使用することによって、コンテナ内のコールドスポットに関するあらゆる問題が軽減される。
【0056】
[0062]実施例3−パスタ・アンド・ビーフ製品
[0063]図4に示すように、パスタ・アンド・ビーフ製品の中心及び壁の温度の両方(例えば、製品の全容積)を均一に加熱及び冷却することができる。従って、滅菌中にパスタ・アンド・ビーフ製品に音波混合を使用することによって、コンテナ内のコールドスポットに関するあらゆる問題が軽減される。
【0057】
[0064]本明細書で説明される現在の好ましい実施形態に対する種々の変更及び修正が、当業者には明らかになるであろう。本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ、その意図した利点を損なうことなく、そうした変更及び修正を行うことができる。従って、添付の特許請求の範囲によって、そうした変更及び修正を網羅することが意図される。
図1
図2
図3
図4