特許第6074047号(P6074047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074047サンプルの製造方法およびターゲットの分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074047
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】サンプルの製造方法およびターゲットの分析方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170123BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20170123BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20170123BHJP
   G01N 30/96 20060101ALI20170123BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20170123BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170123BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170123BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20170123BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20170123BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20170123BHJP
   C07K 1/18 20060101ALN20170123BHJP
【FI】
   C12Q1/68 ZZNA
   C12N15/00 H
   G01N30/88 J
   G01N30/96 A
   G01N33/48 A
   G01N33/50 U
   G01N33/53 D
   G01N33/531 A
   G01N33/566
   !C07K16/00
   !C07K1/18
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-535355(P2015-535355)
(86)(22)【出願日】2014年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2014067118
(87)【国際公開番号】WO2015033650
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-183857(P2013-183857)
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】堀井 克紀
(72)【発明者】
【氏名】秋冨 穣
(72)【発明者】
【氏名】金子 直人
(72)【発明者】
【氏名】和賀 巌
【審査官】 藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−271388(JP,A)
【文献】 特表2003−507032(JP,A)
【文献】 特開2006−115730(JP,A)
【文献】 特開2001−178495(JP,A)
【文献】 特開2002−116120(JP,A)
【文献】 Analytical Chemistry,2009年,Vol.81, No.21,pp.9114-9119
【文献】 医用高分子シンポジウム講演要旨集,2013年 7月,Vol.42nd,pp.51-52
【文献】 バイオ・高分子シンポジウム講演要旨集,2015年,Vol.25th,pp.149-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 − 3/00
C12N 15/00 − 15/90
G01N 33/48 − 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体とカチオン性ポリマーとを含む水性混合液において、前記検体と前記カチオン性ポリマーとを接触させる接触工程、
前記水性混合液から、固液分離により、前記検体中のターゲットを含む液体画分を回収する液体画分回収工程、および、
水性溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーにより、前記液体画分から前記ターゲットを含むサンプルを回収するサンプル回収工程を含み、
前記サンプルが、触媒機能を生起する触媒核酸分子を用いたターゲットの分析方法に供するためのサンプルであることを特徴とする、サンプルの製造方法。
【請求項2】
前記検体が、生体由来の検体である、請求項1記載のサンプルの製造方法。
【請求項3】
前記検体が、乳または乳製品である、請求項1または2記載のサンプルの製造方法。
【請求項4】
前記検体が、牛乳または牛乳製品である、請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプルの製造方法。
【請求項5】
前記ターゲットが、非ペプチド、非タンパク質および非脂質である、請求項1から4のいずれか一項に記載のサンプルの製造方法。
【請求項6】
前記ターゲットがメラミンである、請求項1から5のいずれか一項に記載のサンプルの製造方法。
【請求項7】
前記水性混合液が、前記検体と前記カチオン性ポリマーと水性溶媒とを含む混合液である、請求項1から6のいずれか一項に記載のサンプルの製造方法。
【請求項8】
前記液体画分回収工程における固液分離が、前記混合液の遠心分離である、請求項1から7のいずれか一項に記載のサンプルの製造方法。
【請求項9】
前記カラムクロマトグラフィーの充填剤が、カチオン性イオン交換樹脂またはアニオン性イオン交換樹脂である、請求項1から8のいずれか一項に記載のサンプルの製造方法。
【請求項10】
前記カチオン性イオン交換樹脂が、2−カルボキシエチル基(−CHCH−COOH)および2−(4−スルホフェニル)エチル基(−CHCH−C−SOH)の少なくとも一方を有する樹脂である、請求項9記載のサンプルの製造方法。
【請求項11】
前記触媒核酸分子が、DNAzymeまたはRNAzymeである、請求項1から10のいずれか一項に記載のサンプルの製造方法。
【請求項12】
前記検体が、乳または乳製品であり、前記ターゲットが、メラミンであり、前記カラムクロマトグラフィーの充填剤が、カチオン性イオン交換樹脂である、請求項1記載のサンプルの製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の製造方法で製造したサンプルと、ターゲットに結合する第1結合物質と、触媒機能を生起する触媒核酸分子とを接触させ、前記サンプル中の前記ターゲットと前記第1結合物質と前記触媒核酸分子との複合体を形成する複合体形成工程、および、
前記複合体における前記触媒核酸分子の触媒機能を検出することによって、前記サンプル中のターゲットを検出するターゲット検出工程を含むことを特徴とするターゲットの分析方法。
【請求項14】
前記第1結合物質が、前記ターゲットに結合する結合核酸分子である、請求項13記載の分析方法。
【請求項15】
前記第1結合物質が、前記ターゲットに結合する抗体である、請求項13記載の分析方法。
【請求項16】
前記複合体形成工程が、前記サンプルに、前記第1結合物質と前記触媒核酸分子とが連結した分析素子を接触させる工程である、請求項13から15のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項17】
前記複合体形成工程が、前記サンプルに、前記第1結合物質と、前記触媒核酸分子で修飾され且つ前記第1結合物質に結合する第2結合物質とを、それぞれ別個に接触させる工程である、請求項13から16のいずれか一項に記載の分析方法。
【請求項18】
前記第2結合物質が、前記第1結合物質に結合する結合核酸分子である、請求項17記載の分析方法。
【請求項19】
前記第2結合物質が、前記第1結合物質に結合する抗体である、請求項17記載の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの製造方法およびターゲットの分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医療、食品、環境等の様々な分野において、ターゲットの検出が必要とされており、前記検出には、通常、前記ターゲットとの相互作用が利用されている。一般的には、前記ターゲットに結合する第1結合物質と、前記第1結合物質に結合し且つ標識物質で標識化された第2結合物質が使用され、例えば、以下のようにしてターゲットが検出される。まず、サンプル中の前記ターゲットと前記第1結合物質とを結合させ、さらに、前記ターゲットに結合した前記第1結合物質に、前記標識化第2結合物質を結合させ、前記ターゲットと前記第1結合物質と前記標識化第2結合物質との複合体を形成させる。そして、前記複合体における前記標識化第2結合物質の前記標識物質を検出することで、間接的に、前記サンプル中の前記ターゲットを検出できる。
【0003】
一般的に、前記第1結合物質および前記第2結合物質として、抗体が使用されており、前記標識物質として、ペルオキシダーゼ等の酸化還元酵素が使用されている。しかしながら、近年、抗体および酵素に代わる新たなツールとして、ターゲットに結合する核酸分子および酵素と同様の触媒機能を奏する核酸分子とを利用する方法が提案されている。前者の核酸分子(結合核酸分子)は、いわゆるアプタマーであり、後者の核酸分子(触媒核酸分子)は、DNAzymeおよびRNAzyme等である。このような核酸分子によれば、例えば、前記結合核酸分子と前記触媒核酸分子とを連結した核酸素子として、前記ターゲットの検出に利用することもでき、例えば、より簡便な分析、分析デバイスの小型化等が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tellerら, Anal.Chem., 2009年, vol.81, p.9114−9119
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検体によっては、以下のような理由から、前記触媒核酸分子を用いたターゲットの検出が困難である。前記検体の中でも、例えば、牛乳等の乳や粉ミルク等の乳製品は、例えば、タンパク質、脂質および前記触媒核酸分子の触媒機能を阻害する阻害物質等が夾雑物として含まれている。このため、前記触媒核酸分子を使用した検出方法を実施するには、前記検体に前処理を施して前記夾雑物を除去し、分析に供するサンプルを調製することが必要である。そして、前記検体からタンパク質や脂質等の夾雑物を除去するには、例えば、有機溶媒を用いた凝集処理が必要である。しかしながら、有機溶媒を用いて調製されたサンプルには有機溶媒が混入し、それが原因で、前記触媒核酸分子が機能しなくなることとの知見が、本発明者らにより得られた。このため、前記触媒核酸分子を用いたターゲットの検出において、有機溶媒を必須とすることなく検体の前処理を行い、サンプルを調製することが重要であることがわかった。
【0006】
そこで、本発明は、前記触媒核酸分子を用いたターゲット分析に供するサンプルを、有機溶媒を必須とすることなく調製する、サンプルの製造方法、および前記サンプルを用いたターゲットの分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサンプルの製造方法は、検体とカチオン性ポリマーとを含む水性混合液において、前記検体と前記カチオン性ポリマーとを接触させる接触工程、前記水性混合液から、固液分離により、前記検体中のターゲットを含む液体画分を回収する液体画分回収工程、および、水性溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーにより、前記液体画分から前記ターゲットを含むサンプルを回収するサンプル回収工程を含み、前記サンプルが、触媒機能を生起する触媒核酸分子を用いたターゲットの分析方法に供するためのサンプルであることを特徴とする。
【0008】
本発明の分析方法は、ターゲットの分析方法であって、前記本発明の製造方法で製造したサンプルと、ターゲットに結合する第1結合物質と、触媒機能を生起する触媒核酸分子とを接触させ、前記サンプル中の前記ターゲットと前記第1結合物質と前記触媒核酸分子との複合体を形成する複合体形成工程、および、前記複合体における前記触媒核酸分子の触媒機能を検出することによって、前記サンプル中のターゲットを検出するターゲット検出工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水性混合液中でカチオン性ポリマーによる凝集処理、および、水性溶媒を用いたカラムクロマトグラフィー等により、実質的に有機溶媒を必須とすることなく、前記触媒核酸分子を用いるターゲットの分析方法に供するサンプルを製造できる。本発明により調製されるサンプルは、実質的に有機溶媒を含まないため、前述のように、前記触媒核酸分子の機能への有機溶媒の影響を抑制できる。このため、本発明は、例えば、臨床医療、食品、環境等の様々な分野における研究および検査に、極めて有用な技術といえる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例1において、核酸素子を用いたメラミン分析の反応液の発光強度を示すグラフである。
図2図2は、本発明の実施例2において、カチオン性イオン交換クロマトグラフィーによるメラミンの溶出パターンを示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施例3において、メラミンの検出を表す発光強度の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<サンプルの製造方法>
本発明のサンプルの製造方法は、前述のように、検体とカチオン性ポリマーとを含む水性混合液において、前記検体と前記カチオン性ポリマーとを接触させる接触工程、前記水性混合液から、固液分離により、前記検体中のターゲットを含む液体画分を回収する液体画分回収工程、および、水性溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーにより、前記液体画分から前記ターゲットを含むサンプルを回収するサンプル回収工程を含み、前記サンプルが、触媒機能を生起する触媒核酸分子を用いたターゲットの分析方法に供するためのサンプルであることを特徴とする。
【0012】
本発明のサンプルの製造方法は、例えば、サンプルの調製方法、検体の前処理方法ということもできる。本発明のサンプルの製造方法において、前記接触工程、前記液体画分回収工程および前記サンプル回収工程は、例えば、検体の前処理工程ということもできる。
【0013】
本発明において、前処理の対象となる検体は、例えば、液体検体でも固体検体でもよい。前記検体の種類は、特に制限されず、例えば、食品検体、生体検体、環境由来検体等があげられる。前記食品は、飲料等の液体食品でもよいし、固形食品でもよく、例えば、牛乳等の乳、牛乳製品等の乳製品(例えば、ドライミルク、粉ミルク等)、原乳、加工乳等があげられる。前記生体検体は、例えば、血液、尿、唾液等があげられる。前記環境由来検体は、例えば、海水、河川水、池水、生活排水および工業廃水等の下水、汚泥、土壌等があげられる。
【0014】
本発明において、前記ターゲットは、特に制限されず、任意の物質を設定できる。前記ターゲットは、例えば、低分子化合物、微生物、ウイルス、食物アレルゲン、農薬、カビ毒等が例示でき、具体例として、メラミン等があげられる。
【0015】
前記接触工程は、前述のように、前記検体と前記カチオン性ポリマーとを含む前記水性混合液において、前記検体と前記カチオン性ポリマーとを接触させる工程である。
【0016】
前記カチオン性ポリマーは、カチオン性であればよく、その種類は、特に制限されない。前記カチオン性ポリマーは、例えば、以下のような化学特性を有することが好ましい。前記カチオン性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、例えば、50〜2000、100〜1000、150〜250である。
【0017】
前記カチオン性ポリマーは、特に制限されず、例えば、下記式(1)で表されるジメチルアミノエチルメタクリラートメチルクロリド塩ホモポリマー、下記式(2)で表されるポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム等が好ましい。下記式において、重合度(n)は、特に制限されない。
【0018】
【化1】
【化2】
【0019】
前記(1)のポリマーは、例えば、合成してもよいし、市販品を使用してもよく、例えば、商品名タイポリマー カチオン剤 TC−580、TC−580L、TC−580H、TC−580FL、TC−580VL、TC−580S、TC−570、TC−560(いずれも、大明化学工業株式会社)等が使用できる。
【0020】
前記(2)のポリマーは、その数平均分子量(Mn)が、例えば、50〜2000、100〜1000、150〜250である。
【0021】
前記(2)のポリマーは、例えば、合成してもよいし、市販品を使用してもよく、例えば、商品名タイポリマー カチオン剤 TC−7400、TC−7100、TC−7200、TC−7500(いずれも、大明化学工業株式会社)等が使用できる。
【0022】
前記カチオン性ポリマーは、例えば、一種類のみを用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。具体例として、例えば、前記(1)のポリマーおよび前記(2)のポリマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。両者を併用する場合、前記(1)のポリマーと前記(2)のポリマーとの体積比は、例えば、1:0.01〜0.1、1:0.01〜0.03である。
【0023】
前記接触工程における前記水性混合液は、例えば、実質的に有機溶媒を含まないことが好ましく、水性溶媒のみからなることが特に好ましい。実質的に有機溶媒を含まないとは、例えば、最終的に得られるサンプル中に有機溶媒が含まれる場合であっても、前記触媒核酸分子を用いたターゲットの分析方法に前記サンプルを供した場合に、前記触媒核酸分子の機能に影響を与えない範囲である。前記水性混合液に有機溶媒が含まれる場合、前記有機溶媒の含有割合は、例えば、50体積%以下、30体積%以下、10体積%以下、検出限界以下である。前記検出限界以下とは、例えば、HPLC等を用いた有機溶媒の検出において、検出できない閾値以下を意味する。
【0024】
前記水性混合液は、例えば、前記検体と前記カチオン性ポリマーとの混合により調製してもよいし、前記検体と前記カチオン性ポリマーと分散媒との混合により調製してもよい。前記分散媒は、例えば、水性溶媒である。
【0025】
前記水性溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等があげられ、前記緩衝液は、例えば、MES(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid)、Tris、MOPS、HEPES、TES等が使用できる。前記緩衝液のpHは、特に制限されず、例えば、5〜12、5〜9である。
【0026】
前記水性混合液の調製において、前記検体と前記カチオン性ポリマーと前記水性溶媒(分散媒)とを混合する場合、これらの混合順序は、特に制限されない。例えば、前記三者を同時に混合してもよいし、いずれか二者を混合した後、残りの一者を混合してもよい。後者の具体例としては、例えば、前記検体と前記水性溶媒とを混合した後に、前記カチオン性ポリマーを混合してもよいし、前記カチオン性ポリマーと前記水性溶媒とを混合した後に、前記検体を混合してもよいし、前記検体と前記カチオン性ポリマーとを混合した後に、前記水性溶媒を混合してもよい。取扱い性の点から、前記検体が固体の場合、例えば、前記固体検体を前記水性溶媒に分散して、前記カチオン性ポリマーと混合することが好ましく、また、前記カチオン性ポリマーは、例えば、予め、前記水性溶媒に分散して、前記検体と混合することが好ましい。
【0027】
前記水性混合液において、前記検体の割合は、特に制限されない。前記混合液において、前記検体(S)と前記カチオン性ポリマー(P)との体積比は、特に制限されない。
【0028】
前記水性混合液中での前記検体と前記カチオン性ポリマーとの接触条件は、特に制限されず、温度は、例えば、4〜60℃、4〜37℃あり、時間は、例えば、10秒〜60分、30秒〜5分ある。前記水性混合液は、例えば、各成分を撹拌により混合した後、静置することが好ましく、撹拌時間は、例えば、10秒〜10分であり、静置時間は、例えば、10〜60分である。
【0029】
つぎに、前記液体画分回収工程は、前述のように、前記水性混合液から、固液分離により、前記検体中のターゲットを含む液体画分を回収する工程である。
【0030】
前記固液分離の方法は、特に制限されない。前記固液分離は、例えば、前記水性混合液の静置により行ってもよいし、前記水性混合液を濾過することによって行ってもよいし、前記水性混合液の遠心分離により行ってもよい。
【0031】
つぎに、前記サンプル回収工程は、水性溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーにより、前記液体画分から前記ターゲットを含むサンプルを回収する工程である。前記カラムクロマトグラフィーによるサンプルの回収は、前記水性溶媒を使用することがポイントであって、その他の条件は、特に制限されない。
【0032】
前記カラムクロマトグラフィーの種類は、特に制限されず、例えば、ターゲットの種類に応じて決定できる。前記サンプルの回収は、例えば、前記カラムクロマトグラフィーにターゲットを吸着させた後、溶出させることで、前記ターゲットを含む吸着画分をサンプルとして回収してもよいし、前記カラムクロマトグラフィーに前記ターゲット以外の成分を吸着させ、前記ターゲットを含む非吸着画分をサンプルとして回収してもよい。
【0033】
前記カラムクロマトグラフィーは、例えば、取扱い性に優れることから、固相抽出カラムが好ましい。
【0034】
前記カラムクロマトグラフィーは、例えば、カチオン性イオン交換カラムクロマトグラフィーおよびアニオン性イオン交換カラムクロマトグラフィーがあげられる。前者のカチオン性イオン交換基は、特に制限されず、例えば、2−カルボキシエチル基(−CH2CH2-COOH)、2−(4−スルホフェニル)エチル基(−CH2CH2-C6H4-SO3H)等があげられ、具体例として、Strata WCX(商品名、Phenomenex Inc.)、Strata SCX(商品名、Phenomenex Inc.)等の市販品が使用できる。後者のアニオン性イオン交換基は、特に制限されず、例えば、3−(トリメチルアンモニウム)プロピル基(−CH2CH2-CH2-N(CH3)3)、4−アミノプロピル基(−CH2CH2-CH2-NH2)等があげられ、具体例として、Strata NH/WAX(商品名、Phenomenex Inc.)、Strata SX(Phenomenex Inc.)等の市販品が使用できる。
【0035】
前記カラムクロマトグラフィーは、前述のように、ターゲットの種類に応じて適宜決定できる。以下に、特定のターゲットに対するカラムクロマトグラフィーを例示するが、本発明は、これらの例示に制限されない。
【0036】
前記ターゲットがメラミンの場合、例えば、カチオン性イオン交換カラムクロマトグラフィーを使用し、前記吸着画分をサンプルとして回収することが好ましい。前記カチオン性イオン交換クロマトグラフィーのカチオン性イオン交換基は、例えば、2−カルボキシエチル基(−CH2CH2-COOH)または2−(4−スルホフェニル)エチル基(−CH2CH2-C6H4-SO3H)等が好ましい。
【0037】
前記カチオン性イオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて、メラミンを含むサンプルを回収する場合、例えば、以下のような条件で、前記液体画分のアプライ、カラムの洗浄、メラミンを含む吸着画分の溶出を行うことができる。
(1)アプライ
緩衝液の濃度:50mmol/L
緩衝液の種類:MES
緩衝液のpH:5.5〜6.5
(2)洗浄
緩衝液の濃度:50mmol/L
緩衝液の種類:MES
緩衝液のpH:5.5〜6.5
(3)溶出
緩衝液の濃度:100mmol/L
緩衝液の種類:HEPES
緩衝液のpH:7〜8
【0038】
このようにして得られたサンプルは、前述のように、前記触媒核酸分子を用いたターゲット分析方法に供するサンプルとして使用できる。
【0039】
前記触媒核酸分子は、特に制限されず、例えば、DNAzymeおよびRNAzyme等があげられ、具体的には、後述する分析方法における記載を援用できる。
【0040】
<ターゲットの分析方法>
本発明のターゲットの分析方法は、前述のように、前記本発明の製造方法で製造したサンプルと、ターゲットに結合する第1結合物質と、触媒機能を生起する触媒核酸分子とを接触させ、前記サンプル中の前記ターゲットと前記第1結合物質と前記触媒核酸分子との複合体を形成する複合体形成工程、および、前記複合体における前記触媒核酸分子の触媒機能を検出することによって、前記サンプル中のターゲットを検出するターゲット検出工程を含むことを特徴とする。
【0041】
本発明は、前記本発明の製造方法によって製造したサンプルを、前記触媒核酸分子を用いた分析方法に供することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0042】
前記ターゲットに結合する前記第1結合物質は、特に制限されず、例えば、前記結合核酸分子、抗体等があげられ、中でも、前記結合核酸分子が好ましい。前記結合核酸分子は、アプタマーということもできる。
【0043】
前記複合体形成工程において、前記第1結合物質と前記触媒核酸分子は、例えば、これらが予め連結した分析素子として使用してもよいし、それぞれ別個に使用してもよい。前記分析素子を使用する形態を、第1形態とし、それぞれ別個で使用する形態を、第2形態として、以下に例示する。なお、本発明は、これらの形態には制限されない。
【0044】
前記第1形態は、前記第1結合物質と前記触媒核酸分子とが予め連結された分析素子を使用する形態である。
【0045】
前記第1形態において、前記第1結合物質は、例えば、前記結合核酸分子および前記抗体のいずれでもよく、前記結合核酸分子であることが好ましい。前記分析素子は、例えば、前記結合核酸分子と前記触媒核酸分子とを連結させた分析核酸素子であることが好ましい。前記結合核酸分子と前記触媒核酸分子との連結の形態は、特に制限されず、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。
【0046】
前記第1形態は、例えば、前記サンプルと前記分析素子とを接触させることで、前記サンプル中のターゲットと前記分析素子の前記第1結合物質とを結合させ、前記ターゲットと前記分析素子(前記第1結合物質および前記触媒核酸分子)との複合体を形成する。そして、前記複合体における前記触媒核酸分子の触媒機能を検出することによって、前記ターゲットを間接的に検出できる。前記複合体形成工程と前記検出工程との間において、さらに、前記複合体の形成に関与していない前記分析素子を除去する工程を含んでもよい。
【0047】
前記第2形態は、前記第1結合物質と前記触媒核酸分子とを別個に使用する形態である。
【0048】
前記第2形態において、前記第1結合物質は、例えば、前記結合核酸分子および前記抗体のいずれでもよく、前記結合核酸分子であることが好ましい。前記第2形態において、前記触媒核酸分子は、例えば、前記第1結合物質に結合する第2結合物質により修飾されていることが好ましい。具体的には、前記サンプルに、前記第1結合物質と、前記触媒核酸分子で修飾され且つ前記第1結合物質に結合する第2結合物質とを、それぞれ別個に接触させることが好ましい。前記第2結合物質は、前記ターゲットに結合する前記第1結合物質に対して結合できる物質であればよく、前記ターゲットとは異なる物質であることが好ましい。また、前記第2結合物質は、例えば、前記第1結合物質に結合する結合核酸分子および前記第1結合物質に結合する抗体のいずれでもよく、前記結合核酸分子であることが好ましい。
【0049】
前記第2形態は、例えば、前記サンプルと、前記第1結合物質と、前記触媒核酸分子で修飾された修飾化第2結合分子とを接触させることで、前記サンプル中のターゲットと前記第1結合物質とを結合させ、さらに、前記第1結合物質に前記修飾化第2結合物質を結合させて、前記ターゲットと前記第1結合物質と前記第2結合物質との複合体を形成する。この際、前記サンプルとの接触順序は、特に制限されず、サンプルと前記第1結合物質と前記修飾化第2結合物質とを同時に接触させてもよいし、サンプルと前記第1結合物質とを接触させた後、前記修飾化第2結合物質を接触させてもよいし、サンプルと前記修飾化第2結合物質とを接触させた後、前記第1結合物質を接触させてもよいし、前記第1結合物質と前記修飾化第2結合物質とを接触させた後、これらとサンプルとを接触させてもよい。
【0050】
そして、前記複合体における前記修飾化第2結合物質の前記触媒核酸分子の触媒機能を検出することによって、前記ターゲットを間接的に検出できる。前記複合体形成工程と前記検出工程との間において、さらに、前記複合体の形成に関与していない前記第1結合物質および前記修飾化第2結合物質を除去する工程を含んでもよい。
【0051】
本発明において、前記触媒核酸分子は、触媒機能を生起する核酸分子であればよい。前記触媒機能は、特に制限されず、例えば、酸化還元反応の触媒機能である。前記酸化還元反応は、例えば、基質から生成物が生成される過程において、二つの基質の間に電子の授受を生じる反応であればよい。前記酸化還元反応の種類は、特に制限されない。前記酸化還元反応の触媒機能は、例えば、酵素と同様の活性があげられ、具体的には、例えば、ペルオキシダーゼと同様の活性(以下、「ペルオキシダーゼ様活性」という)等があげられる。前記ペルオキシダーゼ活性は、例えば、西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP)活性があげられる。前記触媒核酸分子は、DNA配列の場合、DNAエンザイムまたはDNAzymeと呼ぶことができ、また、RNA配列の場合、RNAエンザイムまたはRNAzymeと呼ぶことができる。
【0052】
前記触媒核酸分子は、G−カルテット(またはG−tetradという)の構造を形成する核酸配列が好ましく、より好ましくはグアニン四重鎖(またはG−quadruplexという)の構造を形成する核酸配列である。前記G−tetradは、例えば、グアニンが四量体となった面の構造であり、G−quadruplexは、例えば、前記G−tetradが複数面重なった構造をいう。前記G−tetradおよび前記G−quadruplexは、例えば、反復してGリッチの構造モチーフを有する核酸において、形成される。前記G−tetradは、例えば、パラレル型およびアンチパラレル型があげられるが、パラレル型が好ましい。
【0053】
前記触媒核酸分子は、ポルフィリンと結合可能な核酸配列が好ましく、具体的には、前記G−tetradを形成し且つ前記ポルフィリンと結合可能な核酸配列が好ましい。前記G−tetradを有する核酸配列は、例えば、前記ポルフィリンと結合して複合体を形成することによって、前記酸化還元反応の触媒機能を生起することが知られている。
【0054】
前記ポルフィリンは、特に制限されず、例えば、無置換体のポルフィリン、その誘導体があげられる。前記誘導体は、例えば、置換体のポルフィリンおよび金属元素と錯体を形成した金属ポルフィリン等があげられる。前記置換体のポルフィリンは、例えば、N−メチルメソポルフィリン等があげられる。前記金属ポルフィリンは、例えば、三価鉄錯体であるヘミン等があげられる。前記ポルフィリンは、例えば、前記金属ポルフィリンが好ましく、より好ましくはヘミンである。
【0055】
前記触媒核酸分子は、特に制限されず、任意の配列が設定できる。具体例としては、例えば、触媒機能を生起する公知の触媒核酸分子の配列、前記触媒核酸分子の部分配列等を採用できる。ペルオキシダーゼ活性を有する触媒核酸分子としては、例えば、下記論文(1)〜(4)等に開示されているDNAzymeが例示できる。
(1)Travascioら, Chem. Biol., 1998年, vol.5, p.505-517
(2)Chengら, Biochemistry, 2009年, vol.48, p.7817-7823
(3)Tellerら, Anal. Chem., 2009年, vol.81, p.9114-9119
(4)Taoら, Anal. Chem., 2009年, vol.81, p.2144-2149
【0056】
前記ターゲットに結合する前記結合物質は、例えば、前記任意のターゲットに応じて選択できる。具体例として、ターゲットがメラミンの場合、前記結合物質は、例えば、下記文献に開示された配列の結合核酸分子が例示できる。
Aihui Liangら, J. Fluoresc., 2011年, vol.21, p.1907-1912
【0057】
前記触媒核酸分子の構成単位は、例えば、リボヌクレオチド残基、デオキシリボヌクレオチド残基およびそれらの誘導体等のヌクレオチド残基があげられる。また、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)等の非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0058】
前記触媒核酸分子の触媒機能の検出方法は、特に制限されず、前記触媒機能に応じて適宜でき、例えば、前記触媒機能により生成されるシグナルとして測定することが好ましい。前記シグナルは、特に制限されず、例えば、光学的シグナルまたは電気化学的シグナルがあげられる。前記光学的シグナルは、例えば、発色シグナル、発光シグナル、蛍光シグナル等があげられる。
【0059】
前記シグナルは、例えば、前記触媒核酸分子の触媒機能により、基質から生成されることが好ましい。そこで、前記触媒機能の検出は、例えば、前記触媒核酸分子の触媒機能に応じた基質の存在下で、行うことが好ましい。
【0060】
前記基質は、例えば、触媒機能によって発色、発光もしくは蛍光の生成物を生成する基質、発色、発光もしくは蛍光の基質であり且つ前記触媒機能によって発色、発光もしくは蛍光が消失する生成物を生成する基質、また、前記触媒機能によって異なる発色、発光もしくは蛍光の生成物を生成する基質等があげられる。このような基質によれば、例えば、発色、発光もしくは蛍光の有無、または、発色、発光もしくは蛍光の変化または強度等をシグナルとして、目視で確認することにより、前記触媒機能を検出できる。また、例えば、吸光度、反射率、蛍光強度等をシグナルとして、光学的な手法で測定することにより、前記触媒機能を検出することもできる。前記触媒機能は、例えば、前述のような酸化還元反応の触媒機能があげられる。
【0061】
また、前記触媒核酸分子が、前記酸化還元反応の触媒機能を有する場合、例えば、電子の授受が可能な基質があげられる。この場合、前記触媒核酸分子により、例えば、前記基質から生成物が生成され、その過程において、電子の授受が生じる。この電子授受は、例えば、電極への印加により、電気シグナルとして、電気化学的に検出できる。前記電気シグナルの検出は、例えば、電流等のような、前記電気シグナルの強度を測定することにより行える。
【0062】
前記基質は、特に制限されず、例えば、過酸化水素、3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine(TMB)、1,2−Phenylenediamine(OPD)、2,2’−Azinobis(3−ethylbenzothiazoline−6−sulfonic Acid Ammonium Salt(ABTS)、3,3’−Diaminobenzidine (DAB)、3,3’−Diaminobenzidine Tetrahydrochloride Hydrate(DAB4HCl)、3−Amino−9−ethylcarbazole(AEC)、4−Chloro−1−naphthol(4C1N)、2,4,6−Tribromo−3−hydroxybenzoic Acid、2,4−Dichlorophenol、4−Aminoantipyrine、4−Aminoantipyrine Hydrochloride、ルミノール等があげられる。
【0063】
前記触媒機能の検出条件は、特に制限されず、温度は、例えば、15〜37℃であり、時間は、例えば、10〜900秒である。
【0064】
前記触媒機能の検出において、前記基質の他に、例えば、ポルフィリンを共存させてもよい。公知のDNAzymeには、例えば、ポルフィリンと複合体を形成することによって、さらに高い酸化還元活性を示すものがある。そこで、例えば、ポルフィリンを共存させて、前記触媒核酸分子とポルフィリンとの複合体として、酸化還元活性を検出してもよい。
【0065】
前記ポルフィリンは、特に制限されず、例えば、無置換体のポルフィリン、その誘導体があげられる。前記誘導体は、例えば、置換体のポルフィリンおよび金属元素と錯体を形成した金属ポルフィリン等があげられる。前記置換体のポルフィリンは、例えば、N−メチルメソポルフィリン等があげられる。前記金属ポルフィリンは、例えば、三価鉄錯体であるヘミン等があげられる。前記ポルフィリンは、例えば、前記金属ポルフィリンが好ましく、より好ましくはヘミンである。
【0066】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
メラミン添加検体を前処理して、サンプルを調製し、サンプル中のメラミンの分析を行った。
【0068】
(1)検体の調製
市販のドライミルク(商品名ドライミルクはぐくみ、森永乳業株式会社社)5.2gを水40mLに懸濁し、ドライミルク液を調製した。そして、前記ドライミルク液に、15mol/Lとなるようにメラミンを添加し、メラミン添加ドライミルク液を調製した。また、市販の牛乳(生乳100%、商品名明治おいしい牛乳、株式会社明治社)に、15mol/Lとなるようにメラミンを添加し、メラミン添加牛乳を調製した。メラミン未添加ドライミルク液、メラミン添加ドライミルク液、メラミン未添加牛乳およびメラミン添加牛乳を、それぞれ検体とした。
【0069】
(2)サンプルの調製
前記検体10mLに蒸留水を等量混合し、さらに、カチオン性ポリマー(商品名TC−7400、大明化学工業株式会社)を、終濃度1%となるように混合し10秒間撹拌した。次に、前記混合液に、カチオン性ポリマー(商品名TC−580、大明化学工業株式会社)を終濃度0.03%になるように混合し、10秒間撹拌を行い、水性混合液を調製した。前記水性混合液を5分間静置した後、遠心分離(15,000rpm、15分)に供し、液体画分を回収し、前記液体画分を同条件で再度遠心分離に供し、液体画分を回収した。
【0070】
前記液体画分を、以下の条件でカチオン性イオン交換カラムクロマトグラフィーに供し、吸着画分を回収した。この吸着画分をサンプルとした。
【0071】
イオン交換樹脂:Strata WCX(商品名、Phenomenex Inc.)
カラムサイズ:直径0.9cm×長さ6.5cm
アプライした液体画分:3mL
平衡化用緩衝液:3mmol/L MES buffer(pH5.5)
洗浄用緩衝液:50mmol/L Tris−HCl buffer(pH7.4)
溶出用緩衝液:100mmol/L Tris−HCl buffer(pH7.4)
温度:25℃(室温)
【0072】
(3)化学発光分析
つぎに、前記サンプルについて、メラミンに対するアプタマーおよびDNAzymeが連結した核酸素子を用いて、メラミン濃度の測定を行った。
【0073】
前記核酸素子は、メラミンに結合する結合核酸分子としてメラミンアプタマー(配列番号1)と、触媒核酸分子としてDNAzyme neco0584(配列番号2)とを備える一本鎖の核酸素子(配列番号3)を使用した。前記核酸素子の配列において、5’側の下線部が、DNAzymeであり、3’側の下線部が、メラミンアプタマーである。
メラミンアプタマー(配列番号1)
CCGCTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGCGG
DNAzyme (配列番号2)
GGGTGGGAGGGTCGGG
核酸素子(配列番号3)
TGGGTGGGAGGGTCGGGCCCTCCCGCTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGCGG
【0074】
エッペンドルフチューブに、前記サンプル1mL、下記試薬1および試薬2をこの順序で添加し、25℃で60秒反応させた後、前記反応液について、相対化学発光強度(RLU)を測定した。下記組成における濃度は、前記反応液における終濃度とした(以下、同様)。測定は、測定装置(商品名TECAN infinite、TECAN社)を使用した。基質は、ルミノール誘導体であるL−012(和光純薬社)を使用した。
【0075】
(試薬1)
250nmol/L 核酸素子
125nmol/L ヘミン
50mmol/L EDTA
20mmol/L KCl
(試薬2)
25μmol/L L−012
25μmol/L H
【0076】
これらの結果を図1に示す。図1は、前記反応液の発光強度(RLU)を示すグラフである。図1に示すように、メラミン未添加の検体から調製したサンプルについては、発光が確認されなかったが、メラミン添加の検体から調製したサンプルについては、発光が確認された。これらの結果から、本発明の方法によれば、牛乳またはドライミルクの検体から、有機溶媒を使用することなく水性溶媒のみで、タンパク質や脂質等の夾雑物を除去し、メラミンを含むサンプルを回収できることがわかった。また、有機溶媒を使用していないことから、DNAzymeを利用したメラミンの分析において、有機溶媒によるDNAzymeの機能の阻害が抑制され、メラミンを検出できた。
【0077】
(実施例2)
メラミン添加牛乳からサンプルを回収した。
【0078】
(1)検体の調製
市販の牛乳(生乳100%、商品名明治おいしい牛乳、株式会社明治社)5mLに、4mmol/Lとなるようにメラミンを添加し、メラミン添加牛乳(メラミン終濃度4mmol/L、牛乳終濃度100%)を調製した。このメラミン添加牛乳を検体とした。
【0079】
(2)サンプルの調製
全量の前記検体に、ポリマー終濃度が1%(v/v)となるように10%(v/v)カチオン性ポリマー(商品名TC7400、大明化学工業株式会社)1.3mLを添加して、10秒間混合した後、さらに、ポリマー終濃度が0.03%(v/v)となるように、0.5%(v/v)カチオン性ポリマー(商品名TC−580、大明化学工業株式会社)1.7mLを添加して、10秒間混合し、水性混合液を調製した。前記水性混合液を5分間静置した後、遠心分離(15,000rpm、15分)に供し、液体画分を回収し、前記液体画分を同条件で再度遠心分離に供し、液体画分4mLを回収した。
【0080】
前記液体画分4mLに、終濃度50mmol/Lとなるように、1mol/L MES緩衝液(pH5.5)210μLを添加した(メラミン終濃度2mmol/L、牛乳終濃度50%)。
【0081】
そして、前記液体画分を、以下の条件でカチオン性イオン交換カラムクロマトグラフィーに供した。
【0082】
イオン交換樹脂:Strata SCX(商品名、Phenomenex Inc.)
カラムサイズ:直径0.9cm×長さ6.5cm
アプライした液体画分:3mL
平衡化用緩衝液:50mmol/L MES緩衝液(pH5.5)3mL
洗浄用緩衝液:
1回目 50mmol/L MES緩衝液(pH5.5)3mL
2回目 50mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.4)0.5mL
溶出用緩衝液:100mmol/L Tris−HCl(pH8.0)
温度:25℃
【0083】
そして、カラムの回収画分(洗浄画分および溶出画分)について、経時的に、メラミンの吸収波長248nmの吸光度を測定した。前記検体について、3回同じ処理を行った。これらの結果を、図2に示す。図2は、カチオン性イオン交換クロマトグラフィーによるメラミンの溶出パターンを示すグラフであり、縦軸が吸光度を示し、横軸が、回収画分の体積量を示す。図2に示すように、3回ともに、合計溶液量1000μLで、メラミンを回収できた。
【0084】
(実施例3)
メラミン添加牛乳からサンプルを回収し、核酸素子を用いた光学発光分析によりメラミンの検出を行った。
【0085】
(1)検体の調製
市販の牛乳(生乳100%、商品名明治おいしい牛乳、株式会社明治社)5mLに、終濃度4mmol/Lとなるようにメラミンを添加し、メラミン添加牛乳(メラミン終濃度4mmol/L、牛乳終濃度100%)を調製した。このメラミン添加牛乳を検体とした。また、対象として、メラミン無添加の牛乳を使用した。
【0086】
(2)サンプルの調製
前記実施例2の(2)と同様にして、メラミン画分の回収を行った。カチオン性イオン交換クロマトグラフィーによるメラミンの溶出パターンは、前記実施例2と同様であり、合計溶液量1000μLで、メラミンを回収できた。この1000μLの回収画分をサンプルとした。
【0087】
(3)化学発光分析
つぎに、前記サンプルについて、前記実施例1と同様にして、前記核酸素子を用いて、メラミン濃度を測定した。また、比較例として、メラミン添加牛乳およびメラミン未添加牛乳について、未処理のまま化学発光分析を行い、また、前記カチオン性ポリマーで処理した後の前記液体画分について、前記カラムクロマトグラフィーに供することなく、そのまま化学発光分析を行った。
【0088】
これらの結果を図3に示す。図3は、前記反応液の発光強度(RLU)を示すグラフである。図3に示すように、メラミン添加牛乳およびメラミン未添加牛乳は、いずれも、未処理の場合、前記カチオン性ポリマー処理のみの場合、発光が確認できず、メラミン添加牛乳をメラミン未添加牛乳と区別することができなかった。これに対して、前記カチオン性ポリマー処理と前記カラムクロマトグラフィー処理を行った場合、メラミン添加牛乳は、メラミン未添加牛乳よりも、有意に高い発光強度を示した。この結果から、本発明の方法によれば、牛乳またはドライミルクの検体から、有機溶媒を使用することなくメラミンを回収し、メラミンを検出できることがわかった。
【0089】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0090】
この出願は、2013年9月5日に出願された日本出願特願2013−183857を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のサンプルの製造方法によれば、水性混合液中でカチオン性ポリマーによる凝集処理、および、水性溶媒を用いたカラムクロマトグラフィー等により、実質的に有機溶媒を必須とすることなく、前記触媒核酸分子を用いるターゲットの分析方法に供するサンプルを製造できる。本発明により調製されるサンプルは、実質的に有機溶媒を含まないため、前述のように、前記触媒核酸分子の機能への有機溶媒の影響を抑制できる。このため、本発明は、例えば、臨床医療、食品、環境等の様々な分野における研究および検査に、極めて有用な技術といえる。
図1
図3
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]