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特許6074057X線蛍光分光法で利用するための複数試料の調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074057
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】X線蛍光分光法で利用するための複数試料の調製
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/04 20060101AFI20170123BHJP
   G01N 23/22 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G01N5/04 B
   G01N23/22 310
   G01N23/22 320
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-547928(P2015-547928)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公表番号】特表2016-503886(P2016-503886A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】US2013056480
(87)【国際公開番号】WO2014092818
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】13/711,915
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515149100
【氏名又は名称】ガルシア,ホセ マリア,ラス ナヴァス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ホセ マリア,ラス ナヴァス
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−051857(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0219944(US,A1)
【文献】 特開昭53−125096(JP,A)
【文献】 特開平01−158328(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0003016(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0175295(US,A1)
【文献】 台湾特許出願公開第201245720(TW,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/04
G01N 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉、該加熱炉内に設けられる試料ホルダ、及び、前記試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合する手段を有する熱重量分析装置であって、
前記混合する手段は、
上で前記試料ホルダが支持される前記加熱炉内部のプラットフォーム、
中心地点と該中心地点からオフセットされた直立ピンを備えるステーションを有する傾斜部、及び、
前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす手段であって、
前記試料ホルダは前記傾斜部のステーションと位置合わせし、かつ、
前記の位置合わせされた傾斜部のステーションのピンは、前記試料ホルダと隣接して、前記試料ホルダを第1方向に傾斜させる、手段、
を有する、熱重量分析装置。
【請求項2】
前記混合する手段が、前記プラットフォームを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を攪拌する手段をさらに有する、請求項1に記載の熱重量分析装置。
【請求項3】
加熱炉、該加熱炉内に設けられる試料ホルダ、及び、前記試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合する手段を有する熱重量分析装置であって、
前記混合する手段は、
上で前記試料ホルダが支持される前記加熱炉内部のプラットフォーム、
中心地点と該中心地点からオフセットされた直立ピンを備えるステーションを有する傾斜部、及び、
前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす手段であって、
前記試料ホルダは前記傾斜部のステーションと位置合わせし、かつ、
前記ピンは、前記試料ホルダと隣接して、前記試料ホルダを傾斜させ、その後前記プラットフォームを急激に順方向と逆方向に動かす、手段、
を有する、熱重量分析装置。
【請求項4】
加熱炉、該加熱炉内に設けられる試料ホルダ、及び、前記試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合する手段を有する熱重量分析装置であって、
前記混合する手段は、
上で前記試料ホルダが支持される前記加熱炉内部のプラットフォーム、
中心地点を有して直立ピンを備える第1ステーションを有する傾斜部であって、
前記第1ステーションのピンは、前記第1ステーションの中心地点から一の方向にオフセットされ、
前記傾斜部は、中心地点を有して直立ピンを備える第2ステーションを有し、
前記第2ステーションのピンは、前記第2ステーションの中心地点から他の方向にオフセットされる、傾斜部、及び、
前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす手段であって、
前記試料ホルダは、前記第1ステーションと前記第2ステーションの各々と順に位置合わせし、かつ、各部分と位置合わせされるときに、前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かし、
その結果、各ステーションのピンは、前記試料ホルダに隣接し、かつ、前記試料ホルダを前記の位置合わせされたステーションのピンの位置によって決定される方向に傾斜させる、手段、
を有する、熱重量分析装置。
【請求項5】
前記混合する手段が、前記プラットフォームを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を攪拌する手段をさらに有する、請求項4に記載の熱重量分析装置。
【請求項6】
加熱炉、該加熱炉内に設けられる試料ホルダ、及び、前記試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合する手段を有する熱重量分析装置であって、
前記混合する手段は、
上で前記試料ホルダが支持される前記加熱炉内部のプラットフォーム、
複数のステーションを有する傾斜部であって、
各ステーションは、中心地点を有し、かつ、直立ピンを備え、
前記ピンは、各ステーション内において前記中心地点から各異なる方向にオフセットされる、傾斜部、及び、
前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす手段であって、
前記試料ホルダは、前記ステーションの各々と順に位置合わせし、かつ、前記ステーションの各々と位置合わせされるときに、前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かし、
その結果、前記ステーションの各々のピンは、前記試料ホルダに隣接し、かつ、前記試料ホルダを前記の位置合わせされたステーションのピンの位置によって決定される方向に傾斜させる、手段、
を有する熱重量分析装置。
【請求項7】
前記混合する手段が、前記プラットフォームを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を攪拌する手段をさらに有する、請求項6に記載の熱重量分析装置。
【請求項8】
加熱炉、該加熱炉内の可動式プラットフォーム、及び、各々が中心地点と該中心地点から各異なる方向にオフセットされた位置に設けられる直立ピンを有する複数のステーションを有する傾斜部を有する型の熱重量分析装置内でX線分光分析用試料を調製する方法であって:
(a) 分析されるべき材料とフラックスを含む、X線分光分析での使用に適した試料ホルダを供する段階;
(b) 前記加熱炉内部で前記プラットフォーム上に前記試料ホルダを設けることで、試料とフラックスを加熱する段階;
(c) 前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かすことで、前記試料ホルダが前記傾斜部の連続するステーションと位置合わせし、かつ、各位置合わせされたステーションのピンは前記試料ホルダと隣接して、前記の位置合わせされるステーションのピンの位置によって決定される方向に前記試料ホルダを傾斜させることによって、前記分析されるべき材料と前記フラックスを前記加熱炉内部の前記試料ホルダ内で混合して、実質的に均一な混合物を生成する段階;
(d) 前記加熱炉から前記試料ホルダを取り外す段階;及び、
(e) 前記試料ホルダの内容物を冷却してX線フラックスビードを生成することを可能にする段階、
を有する方法。
【請求項9】
前記分析されるべき材料と前記フラックスを前記加熱炉内部の前記試料ホルダ内で混合する段階が、前記プラットフォームが動く際に前記試料ホルダを各異なる方向に繰り返し傾斜させる段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プラットフォームが、回転可能で、かつ、各異なる方向に前記試料ホルダを繰り返し傾斜させるように前記傾斜部に対して直線的に移動可能である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記プラットフォームを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を攪拌する段階をさらに有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記熱重量分析装置が外部はかりと内部はかりに関連づけられる請求項8に記載の方法であって:
(f) 前記分析されるべき材料と前記フラックスを有する前記試料ホルダを前記加熱炉内に設ける前に前記試料ホルダの重量計測を行う段階;
(g) 前記分析されるべき材料と前記フラックスを有する前記試料ホルダが加熱された後に前記試料ホルダの重量計測を行う段階;
(h) 前記試料ホルダを前記加熱炉内に設ける前の前記試料ホルダの重さと、前記試料ホルダが加熱された後の前記試料ホルダの重さとを比較することで、前記分析されるべき材料の強熱減量/強熱増量の値を決定する段階;及び、
(i) 前記X線分光分析において前記試料の強熱減量/強熱増量の値を用いる段階、
を有する方法。
【請求項13】
前記X線分光分析において前記試料の強熱減量/強熱増量の値を用いる段階が:
(j) 前記値を前記X線分光分析装置へ供する段階;及び、
(k) 前記値を用いて前記X線分光分析の結果を調節する段階、
を有する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時に強熱減量/強熱増量分析を含むX線分光分析用試料を調製する方法及び装置に関し、より詳細には、重量計測のために、加熱炉内部で試料ホルダを支持して、順次動かすカルーセルを有する型の熱重量分析装置でのX線分光分析用試料を調製する方法及び装置に関する。当該装置は、カルーセルが動く際に、試料ホルダを各異なる方向に繰り返し傾斜させることによって、分析されるべき材料とフラックスとを自動的に混合し、かつ、場合によっては、カルーセルを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって試料ホルダの内容物を混合することで、各試料ホルダ内に試料を生成する。
【背景技術】
【0002】
X線の蛍光(XRF)とは、高エネルギーX線又はガンマ線の衝突によって励起された材料からの特性「2次」(又は蛍光)X線の放出である。その現象は、元素分析及び化学分析−特に金属、ガラス、セラミックス、及び建築材料の調査−、並びに、地球化学、鑑識科学、及び考古学の研究に広く用いられている。
【0003】
溶融ビード法は、グレインサイズ及び鉱物学的効果に起因する不均一性を排除する方法なので、鉱石、岩石、及び耐火材料の正確なXRF分析結果にとって有効な試料調製方法である。分析されるべき試料は粉末状で、かつ一般的には、約1050℃で1:5、1:10、又は1:14の比でホウ酸リチウムと共に溶解する。比は非常に重要である。フラックスと試料の重さの精度は1〜0.1mgの範囲内であることが一般的には要求される。
【0004】
試料は通常決して純粋ではない。強熱減量/強熱増量分析は大抵、結晶水を加えて実行される。XRF分析装置が、揮発に起因して試料の重さが変化する結果として生じる試料中での材料のフラックス比のずれを補正するための数学的モデルが利用可能である。
【0005】
それでもなお、XRF分析前に強熱減量/強熱増量分析を実行し、かつ、強熱減量/強熱増量分析の結果をXRF分光装置へ導入することで、正確な結果を得ることは極めて一般的である。
【0006】
溶融試料(一般的には「ビーズ」と呼ばれている)の調製は、面倒で時間のかかる作業である。溶融試料の調製は、厳密な試料の重量計測、厳密なフラックスの重量計測、非常に熱い部材の操作、及び、クエン酸中でのるつぼの洗浄を必要とする。
【0007】
強熱減量/強熱増量分析が必要とされる場合、適切な分析結果を得るため、同一試料の各異なる部分の強熱減量/強熱増量の値を分析し、かつ、この情報をXRF分光装置に与える追加の動作が必要となる。
【0008】
熱重量分析装置(TGA)は、強熱減量/強熱増量分析を用いた灰(炭及びコークス)試料の湿気及び他の揮発性内容物を分析するのに用いられるものとして当技術分野において周知である。係る熱重量分析装置は、湿気及び揮発成分を蒸発させるため、つぼ内で試料を約1000℃にまで加熱する加熱炉を有する。試料は、加熱炉内に設けられる前及び加熱炉内部で所望の温度にまで加熱された後に、その重さが計測される。続いて重さは、試料中に存在する湿気及び他の揮発性物質の量を確認するために比較される。
【0009】
強熱減量/強熱増量分析処理は、上面に開口部を備える加熱炉を構築することによって自動化された。試料を含むるつぼは、前記開口部を介して、加熱炉内部へ挿入され、かつ、加熱炉内部から取り出され得る。それにより、加熱炉のドアを開けることなく、試料を加熱炉内に設け、かつ、加熱炉から取り出すことが可能となる。その結果、分析中に加熱炉のドアを繰り返し開けることに固有な熱損失及び温度ゆらぎが排除される。
【0010】
さらに試料を含む複数のるつぼを保持することが可能なカルーセルが加熱炉内部に供される。カルーセルは加熱炉内で加熱されているるつぼを支持し、その後重量計測のため、るつぼをはかりに対して1つずつ位置合わせするように搬送する。
【0011】
加熱及び重量計測のために内部カルーセル上にるつぼを設け、かつ、るつぼの重さが測定された後に内部カルーセルからるつぼを取り出すための自動搬送装置が供されて良い。この型の自動熱重量分析装置は特許文献1に開示されている。
【0012】
特許文献1は、ロボットアーム型の自動搬送装置を開示している。しかし他の型の自動搬送機構が、試料を含むるつぼを加熱炉へ挿入し、かつ、試料を含むるつぼを加熱炉から取り出すのに用いられて良い。たとえば複数のるつぼを保持する外部カルーセルを含むより洗練された自動搬送装置が用いられて良い。このより洗練された自動搬送装置は、回転可能で、かつ、加熱炉の開口部へ向かい、かつ、加熱炉の開口部から遠ざかるように直線的に移動可能である。そのような自動搬送装置は、南カリフォルニア州コンウエイのナーバスインスツルメンツ(Navas Instruments)から販売されている多重マトリックスの多重試料MMS-4000TGAにおいて供されている。
【0013】
強熱減量/強熱増量分析を実行する熱重量分析装置は、溶融試料を底面での最低地点に蓄積させるように設計された環状の底面を備えるセラミック製のるつぼを利用する。しかしかかるるつぼは、後述するようにX線分光分析には適さない。
【0014】
X線分光分析もまた、X線蛍光法を用いることによって材料−たとえば鉱石、セメント等−の組成を決定するものとして当技術分野において周知である。X線分光分析を実行するため、試料は、X線分光分析に適した試料ホルダ(るつぼ)内に設けられ、かつ、フラックス−たとえばホウ酸リチウム−と混合されることで、均一な混合物が生成される。試料とフラックスの混合物を備えるるつぼは、高温になるまで加熱炉内で加熱されて溶融される。均一な混合物は続いて、生成及び冷却のために鋳造皿へ通常通りに注がれる。その結果得られた材料はフラクサ(fluxer)と呼ばれる。
【0015】
この処理に適した鋳造皿は、フラクサの冷却後に皿の面にビードが付着するのを防止しなければならない。
【0016】
一旦ビードが冷却されると、フラクサビードを備える鋳造皿は、分析のためにX線分光分析装置へ搬入される。X線分光は、正確な結果を与えるため、鋳造皿が、上に冷却されたビードが存在する平坦な底面を有することを要求する。従って強熱減量/強熱増量分析に通常用いられる環状底部を備えるセラミック製のるつぼは、X線分光分析での使用には適さない。
【0017】
しかし強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析とは関連する。なぜならX線分光分析の精度は、試料とフラックスとの比が既知である試料を有することに依存するからである。試料を加熱してビードを生成することで、試料から揮発性材料の一部が排除するので、試料の試料とフラックスとの比が変化する。
【0018】
従って、X線分光分析の結果を調節して、試料中での揮発性材料の量を考慮することは知られている。試料中での揮発性材料の量がわからない場合、揮発性材料の量は、最初に熱重量分析装置内で強熱減量/強熱増量分析を実行することによって決定されて良い。その分析結果は続いて、X線分光分析装置に係るコンピュータへ与えられて良い。コンピュータは、X線分光分析の精度を向上させるため、強熱減量/強熱増量分析の結果を利用して、試料から揮発性材料の損失を調節する。
【0019】
現在のところ、強熱減量/強熱増量分析が試料上で実行されるとき、試料は2つの部分に分離される。試料の一の部分は熱重量分析に用いられる。試料の他の部分はX線分光分析に用いられる。熱重量分析装置内で実行される第1試料部分の強熱減量/強熱増量分析からのデータは、比を補正するために分光装置へ送られる。
【0020】
続いて試料の他の部分は容器内で重量計測され、測定された量のフラックスが試料に加えられる。その後試料とフラックスは、均一な混合物が得られるように十分に攪拌され、かつ、容器内の均一な混合物は、溶融のために加熱路内に設けられる。試料が溶融された後、試料とフラックスを備える容器は加熱炉から取り出され、かつ、混合物は、鋳造皿内に注がれて、フラクサビードが得られるように冷却されることが可能となる。
【0021】
強熱減量/強熱増量分析での利用に適したセラミック製のるつぼは概して、丸い底部を有する。しかしX線分析で用いられる容器は、金属で作られていて、かつ、物が付着しない表面と平坦な底部を有しなければならない。従って、X線分光分析用の試料の調製は現在のところ、強熱減量/強熱増量分析が連続の自動化処理で実行される熱重量分析装置内では実行できない。なぜなら熱重量分析装置内で用いられるるつぼは、X線分光分析での使用に適さないからである。
【0022】
それは、プラチナ製るつぼがX線分光に用いられる場合にさえも当てはまる。それは、試料とフラックスは、溶融ビーズを生成するのに必要な均一な混合物が得られるように十分に混合されなければならず、かつ、試料とフラックスとの混合操作は、加熱炉から試料を含むるつぼの取り出しを必要とするからである。
【0023】
しかし本発明によって、単一の装置内において連続的で十分自動化された処理で強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析用試料の調製を実行することが可能となる。本発明は、強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析用試料の調製の時間、労働、及び手間を実質的に軽減する。強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析用試料のいずれもいまや単一の装置内で行うことができる。特に独自の試料ホルダを用い、かつ、均一な混合物が得られるように試料とフラックスとを混合するために加熱炉内部に設けられた機構を用いることで、全部の処理を十分に自動化することが可能となる。その結果、いずれの作業も、混合のために試料を取り外す、つまりオペレータの支援を必要とすることなく、加熱炉内の複数の試料に実行することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第7172729号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って本発明の基本的な目的は、修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、強熱減量/強熱増量分析を実行することが可能な修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、強熱減量/強熱増量分析の有無にかかわらずX線分光分析用の試料の調製が実行可能な修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、試料の加熱中に失われる揮発性材料を補償するように、試料の強熱減量/強熱増量分析の値がX線分光分析を実行する際に考慮され得るように、修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0029】
本発明の他の目的は、単一の試料ホルダが強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析に用いられ得る、修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、冷却された試料が付着するのを防止する材料で作られて、かつ、X線分光分析に適した底部を有することで、一の容器から他の容器へ溶融試料を注ぐ必要がなくなるような形状を有する試料ホルダを用いることによって修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、分析されるべき材料とフラックスとの均一な混合物が加熱炉内部で分析されるべき材料とフラックスとを混合することにとって生成される、修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0032】
本発明の他の目的は、ビードを得るのに必要とされる均一な混合物が生成されるように、カルーセルが回転することで、試料ホルダを熱重量分析装置のはかりに対して位置合わせ及び位置外しするように搬送する際に、内部カルーセル上に保持される試料ホルダを様々な方向に繰り返し傾斜させるように修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0033】
本発明の他の目的は、試料ホルダが傾斜された後に試料ホルダを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって試料ホルダの内容物を攪拌するように修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0034】
本発明の他の目的は、複数の試料への強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析用の調製が単一の連続的な処理で行われ得る修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0035】
本発明の他の目的は、1つの試料への強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析用の調製がオペレータの支援なしに自動で行われ得るように修正された熱重量分析装置内でX線分光分析用に試料を調製する方法及び装置を供することである。
【0036】
本発明の他の目的は、X線分光分析用試料調製に適するように修正された熱重量分析装置を供することである。
【0037】
本発明の他の目的は、強熱減量/強熱増量分析とX線分光分析用の試料調製の両方に用いられ得る独自の試料ホルダを供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記目的は本発明によって実現される。本発明では、一の態様は、加熱炉、該加熱炉内に設けられる試料ホルダ、及び、前記試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合する手段を有する熱重量分析装置に関する。前記混合する手段は、上で前記試料ホルダが支持される前記加熱炉内部のプラットフォームを有する。中心地点と該中心地点からオフセットされた直立ピンを備えるステーションを有する傾斜部が供される。前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かすことで、前記試料ホルダは前記傾斜部のステーションと位置合わせし、かつ、前記の位置合わせされた傾斜部のステーションのピンは、前記試料ホルダと隣接して、前記試料ホルダを第1方向に傾斜させる、手段が供される。
【0039】
前記混合する手段は、前記プラットフォームを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を攪拌する手段をさらに有する。
【0040】
本発明の他の態様によると、加熱炉、該加熱炉内に設けられる試料ホルダ、及び、前記試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合する手段を有する熱重量分析装置が供される。前記混合する手段は、上で前記試料ホルダが支持される前記加熱炉内部のプラットフォームを有する。中心地点を有して直立ピンを備える第1ステーションを有する傾斜部が供される。前記第1ステーションのピンは、前記第1ステーションの中心地点から一の方向にオフセットされている。前記傾斜部は、中心地点を有して直立ピンを備える第2ステーションを有する。前記第2ステーションのピンは、前記第2ステーションの中心地点から他の方向にオフセットされている。前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす手段が供される。前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かすことで、前記試料ホルダは、前記第1ステーションと前記第2ステーションの各々と順に位置合わせし、かつ、各部分と位置合わせされるときに、前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす。その結果、各ステーションのピンは、前記試料ホルダに隣接し、かつ、前記試料ホルダを前記の位置合わせされたステーションのピンの位置によって決定される方向に傾斜させる。
【0041】
前記混合する手段は、前記試料ホルダを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を攪拌する手段をさらに有する。
【0042】
本発明の他の態様によると、加熱炉、該加熱炉内に設けられる試料ホルダ、及び、前記試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合する手段を有する熱重量分析装置が供される。前記混合する手段は、上で前記試料ホルダが支持される前記加熱炉内部のプラットフォームを有する。複数のステーションを有する傾斜部が供される。各ステーションは、中心地点を有し、かつ、直立ピンを備える。各ステーションのピンは、前記中心地点から各異なる方向にオフセットされる。前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす手段が供される。前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かすことで、前記試料ホルダは、前記ステーションの各々と順に位置合わせし、かつ、前記ステーションの各々と位置合わせされるときに、前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かす。その結果、前記ステーションの各々のピンは、前記試料ホルダに隣接し、かつ、前記試料ホルダを前記の位置合わせされたステーションのピンの位置によって決定される方向に傾斜させる。
【0043】
前記混合する手段は、前記プラットフォームを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を攪拌する手段をさらに有する。
【0044】
本発明の他の態様によると、加熱炉、該加熱炉内の可動式プラットフォーム、及び、各々が中心地点と該中心地点から各異なる方向にオフセットされた位置に設けられる直立ピンを有する複数のステーションを有する傾斜部を有する型の熱重量分析装置内でX線分光分析用試料を調製する方法が供される。当該方法は以下の段階を有する。
(a) 分析されるべき材料とフラックスを含む、X線分光分析での使用に適した試料ホルダを供する段階
(b) 前記加熱炉内部で前記プラットフォーム上に前記試料ホルダを設けることで、前記分析されるべき材料とフラックスを加熱する段階
(c) 前記傾斜部に対して前記プラットフォームを動かすことで、前記試料ホルダが前記傾斜部の連続するステーションと位置合わせし、かつ、各位置合わせされたステーションのピンは前記試料ホルダと隣接して、前記の位置合わせされるステーションのピンの位置によって決定される方向に前記試料ホルダを傾斜させることによって、前記分析されるべき材料と前記フラックスを前記加熱炉内部の前記試料ホルダ内で混合して、実質的に均一な混合物を生成する段階
(d) 前記加熱炉から前記試料ホルダを取り外す段階、及び、
(e) 前記試料ホルダの内容物を冷却してX線フラックスビードを生成することを可能にする段階
前記分析されるべき材料と前記フラックスを前記加熱炉内部の前記試料ホルダ内で混合する段階は、前記プラットフォームが動く際に前記試料ホルダを各異なる方向に繰り返し傾斜させる段階を含む。
【0045】
前記分析されるべき材料と前記フラックスを前記加熱炉内部の前記試料ホルダ内で混合する段階は、前記プラットフォームを急停止させることで急激に順方向と逆方向に動かすことによって前記試料ホルダの内容物を混合する段階を含む。
【0046】
前記プラットフォームは、回転可能で、かつ、各異なる方向に前記試料ホルダを繰り返し傾斜させるように前記傾斜部に対して直線的に移動可能である。
【0047】
前記熱重量分析装置は、外部はかりと内部はかりに関連づけられる。当該方法はさらに以下の段階を有する。
(f) 前記分析されるべき材料と前記フラックスを有する前記試料ホルダを前記加熱炉内に設ける前に前記試料ホルダの重量計測を行う段階
(g) 前記分析されるべき材料と前記フラックスを有する前記試料ホルダが加熱された後に前記試料ホルダの重量計測を行う段階
(h) 前記試料ホルダを前記加熱炉内に設ける前の前記試料ホルダの重さと、前記試料ホルダが加熱された後の前記試料ホルダの重さとを比較することで、前記分析されるべき材料の強熱減量/強熱増量の値を決定する段階、及び、
(i) 前記X線分光分析において前記試料の強熱減量/強熱増量の値を用いる段階
前記X線分光分析において前記試料の強熱減量/強熱増量の値を用いる段階は以下の段階を有する。
(j) 前記値を前記X線分光分析装置へ供する段階、及び、
(k) 前記値を用いて前記X線分光分析の結果を調節する段階
本発明の他の態様によると、X線分光分析に用いられる試料ホルダが供される。前記試料ホルダは、実質的に平坦な部分を有する底面を有する。傾斜した下部と、前記実質的に平坦な底面の部分に対して実質的に垂直な上部を有する概ね円筒形状の側壁が供される。外側を向くフランジが、上部の壁の部分上に設けられる。直立するこぼれ防止リングが、前記フランジ上方に延びる。
【0048】
前記試料ホルダは、プラチナ又はプラチナを含む材料で作られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の熱重量分析装置の外部カルーセル及び加熱炉の斜視図である。
図2】本発明の熱重量分析装置の外部カルーセル及び加熱炉の斜視図である。加熱炉の筐体は取り外されている。
図3】本発明の傾斜部の斜視図である。
図4】内部カルーセルと傾斜部の斜視図である。複数の試料ホルダが同時に傾斜した状態が示されている。
図5】本発明の熱重量分析装置の加熱炉の斜視図である。加熱炉の上部は取り外されている。
図6】本発明の熱重量分析装置の加熱炉内部の側部断面図である。内部カルーセルが上部位置に存在する状態が示されている。
図7】本発明の熱重量分析装置の加熱炉内部の側部断面図である。内部カルーセルが下部位置に存在する状態が示されている。
図8】本発明の試料ホルダの斜視図である。
図9】本発明の試料ホルダの上部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
上記目的及び以降で現れると思われる他の目的について、添付図面と共に、以降の明細書において詳細に説明され、かつ、請求項に記載されているように、本発明は、強熱減量/強熱増量分析を実行可能な型の熱重量分析装置内でX線分光分析用の試料を調製する方法及び装置に関する。
【0051】
本発明は、全体としてAで示される熱重量分析装置を用いる。当該熱重量分析装置は、その結果、熱の損失は起こらず、かつ、加熱炉はすべての処理を通じて均一な温度のままであるように、分析の全段階を通じて閉じたままのドア(図示されていない)を備える加熱炉チャンバ10を有する。試料ホルダは、加熱炉チャンバの上部に設けられた開口部12を介して、閉じられた加熱炉チャンバ10へ挿入され、かつ、加熱炉チャンバ10から取り出される。
【0052】
図8図9は、熱重量分析装置が、強熱減量/強熱増量分析とX線用試料の調製の両方を単一で連続する十分に自動化された処理で実行することを可能にする、本発明の一部として採用される試料ホルダの形状を表している。
【0053】
それらで図示されているように、全体としてHで示される試料ホルダは、平坦な底面11を有する。外側に傾斜する下部13を含む全体として円筒形の壁が、底面11から上方に延びている。下部13の壁の傾斜は、液化した試料が常に試料ホルダの底部へ向かって流れるようになっている。
【0054】
外側で延びる周辺フランジ19を備える(底面11に対して)垂直な壁部分15が、傾斜壁部分13の上方に位置している。フランジ19は、本発明においては試料ホルダを保持するカルーセルの表面上−具体的には、試料ホルダを支持するため、試料ホルダの本体が受け取られる開口部付近の表面の部分上−に存在するように構成される。試料ホルダが傾斜したときに、試料ホルダの液化した内容物が試料ホルダから飛び出すのを防止するように設計された直立こぼれ防止リング21が、フランジ19にわたって延びている。
【0055】
試料ホルダHは、試料が冷却及び固化される際にその試料をホルダから解放することを可能にする底部形状を備える金属−好適にはプラチナ又はプラチナと金の混合物−で作られる。
【0056】
試料を調製するため、各試料ホルダHは順次、容器の重さを得るため、加熱炉外部に設けられたはかり(図示されていない)上で重量計測される。続いて分析されるべき材料は試料ホルダ内に設けられる。分析されるべき材料を有する試料ホルダの重さが計測される。次に、フラックスが試料ホルダ内に設けられ、分析されるべき材料とフラックスを有する試料ホルダの重さが再度計測され、かつ、フラックスの量は、フラックスに対する分析されるべき材料の適切な比が得られるまで調節される。外部はかりは、各試料ホルダについて、各試料ホルダの容器の重さ、分析されるべき材料の重さ、及び、フラックスの重さを記録する記録システム又はコンピュータ(これも図示されていない)に接続される。材料の重さとフラックスの重さは、一定の比を維持するように厳密でなければならない。
【0057】
あるいはその代わりに、自動フラックス照射システムが、これらの重量計測操作のすべてを実行するのに用いられて良い。
【0058】
続いて重さが計測された試料ホルダは、加熱炉チャンバ10内部に設けられた可動式プラットフォームへ1つずつ搬送される。加熱炉は、試料ホルダの内容物を溶融してX線ビードを生成するように所望の温度に予熱された。加熱炉への試料ホルダの輸送は、外部カルーセル14の外周のまわりに設けられた複数の開口部のうちの各異なる1つの開口部内に重さが計測された試料ホルダを設けることによって実行される。
【0059】
カルーセル14と可動式エジェクタはともに、自動搬送機構を構成する。エジェクタは、垂直可動式ロッド26と台24を有する。自動搬送装置は、加熱炉チャンバの上面の開口部12を介して各試料ホルダを順次加熱炉チャンバ10内に自動的に設ける。外部カルーセルは、加熱炉チャンバ10内の開口部に位置合わせされた状態で各試料ホルダを設けるように、回転及び直線移動する。
【0060】
図2を見れば最もよくわかるように、一旦試料ホルダが開口部12に対して適切に位置設定されると、エジェクタロッド26と台24は、カルーセルの開口部から試料ホルダを持ち上げて拾い上げる。試料ホルダはカルーセル14の面の上方に保持される一方で、カルーセルは、そのカルーセルの下に位置する直線加速器又は同様のスクリュー駆動装置の動作によって引っ込む。続いてエジェクタの台は、開口部12を通り抜けて下方へ移動し、試料ホルダを加熱炉内部に設ける。特に試料ホルダは、加熱炉内に設けられた回転可能なカルーセル18である可動式プラットフォーム上に設けられる。
【0061】
内部カルーセル18は、各試料ホルダ内で分析されるべき材料とフラックスとを混合し、かつ、試料ホルダの内容物の重さを計測するため、加熱炉チャンバ内部で搬送された試料ホルダを操作する。カルーセル18は、回転可能で、かつ、中心軸に沿って上下に移動可能である。
【0062】
カルーセルは、外周のまわりに一連の離間する開口部20を有する。開口部20は、試料ホルダHを保持し、かつ、加熱炉チャンバ内部で試料ホルダを浮かせるように構成される。カルーセル18が搬入又は搬出のための位置をとるときに、内部カルーセル内の複数の開口部20のうちの1つが、加熱炉チャンバ10の上面内の開口部12と位置合わせされるように、加熱炉チャンバの上面の開口部12は位置設定される。
【0063】
加熱炉は、試料ホルダが加熱炉へ搬入される前に所望の温度に予熱される。内部カルーセル18上に設けられた加熱炉チャンバ内に存在する間、試料ホルダは加熱される。
【0064】
テストサイクル中での適切な時点で、カルーセル18はモータ21によって回転方向に一定間隔で動かされる(indexed)。その結果、試料ホルダの各々は順次、内部カルーセルの垂直運動によって、内部はかり22に係る直立ロッド16の端部に取り付けられた台17に位置合わせされ、かつ、台17上に自動的に設けられる。ニューマティックシリンダ28は、内部カルーセル18を上下させることで、内部はかり22の重量計測プラットフォームの台17に試料ホルダを設置し、かつ、試料ホルダを台17から取り外すことが可能となるように機能する。各試料ホルダの重さは、強熱減量/強熱増量分析を実行するテストサイクル中に何度も記録及び比較される。
【0065】
内部カルーセル18がシリンダ28によって上下される度に、内部カルーセル上に存在する試料ホルダは、内部で分析されるべき材料とフラックスとを混合するように様々な方向に自動的に傾斜される。カルーセルが回転する際に試料ホルダを様々な方向に傾斜させることによって試料ホルダの内容物を繰り返し混合する結果、均一な混合物が生成される。
【0066】
図3を見れば最もよくわかるように、傾斜作用は、内部カルーセル18と静止したリング形状の傾斜部30との間での相互作用によって引き起こされる。傾斜部30は、加熱炉チャンバの平坦な場所に存在し、かつ、本体の周りに設けられた16の離間した位置を有する。16の離間した位置には、14の傾斜ステーション32と2つの開口部34,36が含まれる。ステーション32と開口部34と36の各々は、内部カルーセル18内の16の開口部20のうちの各異なる1つと位置合わせする。
【0067】
傾斜部30上の各傾斜ステーション32は、中心地点の周りでパターンを構成するように離間する4つの凹部38を有する。各ステーションの中心地点は、その傾斜部のステーションの上方に位置する内部カルーセル18の開口部20と位置合わせする。傾斜部の各ステーション32は、複数の凹部38のうちの1つの内部に設けられる単一の直立ピン40を有する。図3に表されているように、複数のピン40のうちの1つが傾斜部の周りで進行する際に、複数のピン40は、複数の凹部38のうちの各異なる凹部内に設けられる。
【0068】
図4図7に表されているように、内部カルーセルが傾斜部にわたって下方へ移動することで、内部カルーセル18の開口部20内の試料ホルダは、傾斜部上の位置合わせされたステーション内のピンの位置に依存して、4つの異なる方向のうちの1つの方向に傾斜する。内部カルーセルは、モータ21によって、内部カルーセルの各上昇及び降下後に傾斜部の離間した位置間の距離に等しい距離だけ回転されることによって繰り返し一定間隔で動かされる。よって内部カルーセルの各開口部20は順次、傾斜部上の各傾斜ステーションに位置合わせされ、かつ、内部カルーセルが一定間隔で動かされる度に、各開口部20内の試料ホルダは、4つの方向のうちの各異なる1つの方向に傾斜される。内部カルーセルの各上下運動後に傾斜部に対して内部カルーセルを一定間隔で動かすことによって、試料ホルダは、各異なる方向に繰り返し傾斜される。それにより各試料ホルダ内の分析されるべき材料とフラックスは十分に混合されて、X線分析用フラクサビードを生成するのに必要とされる均一な混合物が生成される。
【0069】
場合によっては、試料ホルダの内容物を攪拌することで、均一な混合物を実現する賢明であることもありえる。これは、カルーセル18を急停止させることで急激に順方向と逆方向に回転するようにプログラムすることによって実現される。カルーセルを急停止させることで急激に順方向と逆方向に回転することによる試料ホルダの内容物の攪拌は、傾斜操作の少なくとも一部後に行われることが好ましい。よって、カルーセルを急停止させることで急激に順方向と逆方向に回転することによる試料ホルダの内容物の攪拌は、カルーセルが一定間隔で動かされた後に行われ、かつ、試料ホルダは、攪拌前に少なくとも一度各方向に傾斜されるように、4又は5回傾斜された。必要なときには、傾斜操作及び攪拌操作は、所望の結果が得られるまで繰り返し実行されて良い。
【0070】
各重量計測操作後、重さが測定された試料ホルダは、内部カルーセル18上に戻される。カルーセル18は一定間隔で動かされる。次の試料ホルダの重さが順次測定される。内部はかり22は、記録システム又はコンピュータ(これも図示されていない)に接続される。前記記録システム又はコンピュータは、試料ホルダを加熱炉へ搬入する前に外部はかりによって決定された試料ホルダの重さと、その試料ホルダの重量計測後に内部はかりによって決定された試料ホルダの重さとの差異を反映するデータを記録する。
【0071】
各々が直立ピン40を有する傾斜部30上の14の傾斜ステーション32の他にも、傾斜部30は2つの開口部34と36をも有することに留意して欲しい。開口部36は、自動搬送装置の台24の経路と位置合わせされる。開口部34は、内部はかり22の重量計測プラットフォームの台17と位置合わせされる。開口部34と36によって、搬入操作及び搬出操作並びに内部重量計測操作は、内部カルーセルの妨害を受けることなく行われ得る。
【0072】
一旦テストサイクルにおける最終重量計測が特定の試料ホルダについて実行されると、試料ホルダは、その試料ホルダ、外部カルーセル14、及びエジェクタ台26を導入するのに用いられた同一の自動搬送機構によって、加熱炉チャンバ10の上面上の開口部12を介して取り外される。試料ホルダは冷却可能となる。その後試料は、ホルダから取り外されて、かつ、X線分光装置内に設けられる。X線分光装置は、そのX線分光装置に係るコンピュータを有する。熱重量分析装置の外部はかりと内部はかりから得られて記録されたデータは、X線分光装置用コンピュータに与えられる。
【0073】
ここで本発明のシステムでは、各試料ホルダの重さ、分析されるべき材料の重さ、及び、フラックスの重さが得られた後に、試料ホルダが外部自動搬送装置内に設けられることに留意して欲しい。
【0074】
ここで本発明のシステムでは、各試料ホルダの重さ、分析されるべき材料の重さ、及び、フラックスの重さが得られた後に、試料ホルダが外部自動搬送装置内に設けられることに留意して欲しい。続いて試料ホルダは、1つずつ加熱炉チャンバへ搬入される。分析サイクルは、試料ホルダが加熱炉チャンバへ導入された瞬間に開始され、かつ、他の試料ホルダ及び試料に起因した手動による介入又は妨害なしに継続される。特定の試料ホルダ又はバッチのサイクルが完了するとき、試料ホルダ及び試料は自動的に加熱炉から取り外される。
【0075】
本発明のシステムは、従来技術と比較して多数の利点を供する。本発明のシステムは、強熱減量/強熱増量分析用の多種類の試料の自動に分析、及び/又は、X線分析用ビーズの同時調製を行う機能を供する。当該装置は安全に動作する。オペレータが手動システムで試料ホルダを手動で処理することによるやけどの危険性がなく、かつ、鋳造皿へ溶融フラックスを注ぐ必要もない。しかも処理全体で単一の試料ホルダしか使用しないので、従来の二重るつぼ鋳造皿操作(dual crucible casting dish operation)において必要とされるるつぼの洗浄の必要性を軽減することによって莫大な節約となる。本発明はまた、自動操作の便利さ、電気又はガスの節約、及び、分析結果の良好な再現性をも供する。
【0076】
本発明の1つの好適実施例しか例示目的で開示されていないが、多くの修正型及び変化型が可能であることは明らかである。「特許請求の範囲」で記載されているように、本発明の技術的範囲内に属するそれらの修正型及び変化型のすべてを網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9