特許第6074061号(P6074061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6074061-同期ヒートセットの丸メリヤス編機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074061
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】同期ヒートセットの丸メリヤス編機
(51)【国際特許分類】
   D04B 37/02 20060101AFI20170123BHJP
   D06C 7/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   D04B37/02
   D06C7/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-551121(P2015-551121)
(86)(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公表番号】特表2016-508192(P2016-508192A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】CN2014074023
(87)【国際公開番号】WO2015081645
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】201310644804.0
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201320791055.X
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515034828
【氏名又は名称】青▲島▼即▲発▼集▲団▼股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武玉勤
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲為▼▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲解▼珍香
(72)【発明者】
【氏名】于希超
(72)【発明者】
【氏名】文元▲慶▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼▲斌▼
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103352315(CN,A)
【文献】 特開昭53−143757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 15/88
D04B 35/00
D04B 37/02
D04B 39/00
D06C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期ヒートセットの丸メリヤス編機であって、
前記同期ヒートセットの丸メリヤス編機は、フレーム、糸巻ブラケット、ニードルシリンダ、引張巻取装置、制御ボックス及び同期ヒートセット装置を備えており、
前記同期ヒートセット装置は、前記糸巻ブラケットに取付けられた昇降装置付きのヒートセットドラムを備え、前記ヒートセットドラムはヒートセットドラム制御ボックスに接続され、前記ヒートセットドラムは引張巻取装置における引張巻取ローラの上方に位置され、前記昇降装置によって昇降を駆動し、ヒートセットドラムの軸線とニードルシリンダの軸線とを一致させ、ヒートセットドラムの外径はニードルシリンダの内径より小さいことを特徴とする同期ヒートセットの丸メリヤス編機。
【請求項2】
前記昇降装置は、シリンダの取付リング板、シリンダ、空気管、絞り弁、電磁弁を備え、前記シリンダの取付リング板は水平に糸巻ブラケットの頂部に取付けられ、前記シリンダの上端はシリンダの取付リング板に固定され、前記ヒートセットドラムはシリンダのピストンロッドに取付けられ、前記シリンダは空気管、絞り弁、電磁弁を介して外部の圧縮空気の接続端に連結され、前記電磁弁は前記制御ボックスに接続されることを特徴とする請求項1に記載の同期ヒートセットの丸メリヤス編機。
【請求項3】
前記ニードルシリンダに密着布の断熱筒が取付けられ、密着布の断熱筒の軸線とニードルシリンダの軸線とを一致させ、密着布の断熱筒の外径はニードルシリンダの内径より小さく、密着布の断熱筒の内径はヒートセットドラムの外径より大きく、ヒートセットドラムはニードルシリンダ内の筒状メリヤス生地の内部の位置に降下すると、ヒートセットドラムと密着布の断熱筒との間にメリヤス生地を通す隙間が形成され、ニードルシリンダの上方まで上昇すると、ヒートセットドラムは前記筒状メリヤス生地と離れることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の同期ヒートセットの丸メリヤス編機。
【請求項4】
前記シリンダの取付リング板の周囲に三つのシリンダのピストンロッド用孔が均一に設置され、前記シリンダは三つがあり、三つのシリンダの三本のシリンダのピストンロッドはそれぞれ対応するシリンダのピストンロッド用孔に垂直に挿入され、前記ヒートセットドラムは三本のシリンダのピストンロッドの下端に取付けられることを特徴とする請求項3に記載の同期ヒートセットの丸メリヤス編機。
【請求項5】
前記ヒートセットドラム内に温度センサが設置され、前記温度センサはヒートセットドラム制御ボックスに接続され、前記ヒートセットドラムに温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品が配置され、前記温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品はヒートセットドラムの制御ボックス上に取付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の同期ヒートセットの丸メリヤス編機。
【請求項6】
前記ヒートセットドラム内に温度センサが設置され、前記温度センサはヒートセットドラム制御ボックスに接続され、前記ヒートセットドラムに温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品が配置され、前記温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品はヒートセットドラムの制御ボックス上に取付けられることを特徴とする請求項4に記載の同期ヒートセットの丸メリヤス編機。
【請求項7】
前記ヒートセットドラムの加熱方式は電磁誘導加熱、電気抵抗線加熱又は熱伝導油加熱であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の同期ヒートセットの丸メリヤス編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メリヤス編機及びメリヤス生地の製造プロセスの技術分野に属し、具体的には同期ヒートセットの丸メリヤス編機及び熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地は編地の編機から卸した後の一時保管、貯蔵運送などの過程において、各応力による押圧で編物の表面に不規則及び褶曲できる状態となる。よって、寸法安定及び外観平坦のためには熱可塑性繊維を含有する大部分のメリヤス生地は染色前に予備ヒートセットを行う必要がある。現在熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の通常のプロセス工程は以下の二つがある。即ち、1.編み→スリッチング→開口幅予備ヒートセット→メリヤス編み接ぎ→染色→スリッチング→開口幅ポストボーディング、最後に開口幅メリヤス製品の生地が得られる。2.編み→円筒高温予備ヒートセット→染色→脱水→加湿幅拡大→乾燥→円筒予備収縮光沢カレンダリング、最後に筒状メリヤス製品の生地が得られる。現在のプロセス工程には以下の欠陥がある。即ち、予備ヒートセット工程は染色整理工場の幅出しヒートセット機又は円筒高温ヒートセット機で完成するため、設備投資が大きく、プロセス工程が長く、エネルギーの消費が高く、製造コストが高い。編地を機械から卸した後、未ヒートセットの繊維の収縮、押圧による盛り上がり、生地の元に戻らない褶曲が容易に形成され、予備ヒートセット工程でも完全に修復できず、生地の補修が必要になったり等級低下となってしまう。
【0003】
中国実用新案出願(出願番号201120239336.5)は幅開き布巻きヒートセット一体の装置を開示し、当該装置は、ヒートセット編物巻取機構、駆動アーム、主動加熱ローラ及びギヤ変速ボックスを備え、前記ヒートセット編物巻取機構は、編物拡張ブラケットと編物巻取ローラからなり、当該編物拡張ブラケットの底部に編物拡張リングが設置され、編物拡張リングの外側の両端にそれぞれ編物スリッチング用刃が設置されている。ヒートセット編物巻取機構の中間位置に主動加熱ローラが設置され、主動加熱ローラの一側に受動加熱ローラが設置され、前記主動加熱ローラと受動加熱ローラの両側にそれぞれゴムローラが設置されている。編物拡張ブラケット、編物スリッチング用刃、加熱ローラ及び編物巻取双ローラからなるヒートセット編物巻取り一体の装置を設置することによって、編物スリッチングとヒートセットを同時に行うことを実現できる。当該実用新案のヒートセット方式は、編物巻取りローラに熱伝導ローラが追加で取付られ、スリッチングの生地に対して伝導ヒートセットを行い、熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の製造プロセス工程及びヒートセットプロセスに係わっていない。
【0004】
中国発明特許出願(出願番号201310302518.6)は丸メリヤス編機に設置されている同期円筒ヒートセット装置を開示し、当該装置は、丸メリヤス編機の編み装置と生編物引張巻取り装置の間に高周波誘導発熱装置が取付けられる。筒状メリヤスは高周波誘導発熱ドラムの表面を滑るため、編物後に機械から卸していない過程で生地に対するヒートセットを完成する。当該発明特許出願の加熱ローラはいつも丸メリヤス編機の中心縦ロッドに固定され、設備の昇温過程及び停機時に気動編物支持部材によってメリヤス生地とドラムの外表面との分離を実現する。メリヤス生地の拡張には一定の限度があり、さらに設備のニードルシリンダ内部の空間が制限されることによってメリヤス設備が停機する時でも、ドラムは生地に対する加熱を継続し、メリヤス生地は局部的にヒートセットが過度に行われてしまう(メリヤス設備は糸切れ又はその他の原因で停機が非常に頻繁に発生し、生地の品質に大きな影響を与える)。当該発明特許出願は開示された同期ヒートセット装置に断熱装置がないため、熱量の散失で熱エネルギーの利用率が低下し、エネルギーの消費が増加し、一方ヒートセットドラムはメリヤス設備のニードルシリンダを蒸焼きにしてしまい、メリヤス設備の潤滑条件及びニードルシリンダの寸法精度を悪化させ、メリヤス編機の使用寿命及び生地の品質にも大きな影響を与える。また、当該発明特許出願は熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の製造プロセス工程及びヒートセットプロセスを開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
如何なる熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地にも適用できる製造プロセス及び設備を設計し、丸メリヤス編機はメリヤス編みとヒートセットを同時に行うことを実現でき、均一に加熱し、ヒートセット効率が高い。開口幅メリヤス生地の染色整理工程の幅開き、予備ヒートセット、メリヤス編み接ぎ工程を省略した。筒状メリヤス生地の染色整理工程の円筒高温予備ヒートセット工程を省略した。生地の製造コストを大幅に低減し、同時にエネルギーの消費を低減し、既製服の生産率及び生地の利用率を向上することができる。これらは現在この技術分野で解決する必要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術に存在する上記課題を解決するため、本発明は同期ヒートセットの丸メリヤス編機及び熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の製造方法を提供する。丸メリヤス編機はメリヤス編みとヒートセットを同時に行うことを実現することができ、同期ヒートセット装置の設計は合理的であり、メリヤス生地に対して均一に連続に加熱することができる。生産プロセスでは染色整理工程の予備ヒートセットを省略し、プロセスを簡易化し、生地の製造コストを大幅に低減することができると共に、エネルギー消費を低減し、既製服の生産率及び生地の利用率を向上させることができる。
【0007】
本発明の目的は以下の技術案によって実現する。即ち、
同期ヒートセットの丸メリヤス編機であって、当該同期ヒートセットの丸メリヤス編機は、フレーム、糸巻ブラケット、ニードルシリンダ、引張巻取装置、制御ボックス及び同期ヒートセット装置を備えており、同期ヒートセット装置は、前記糸巻ブラケットに取付けられた昇降装置付きのヒートセットドラムを備え、前記ヒートセットドラムはヒートセットドラム制御ボックスに接続され、前記ヒートセットドラムは引張巻取装置における引張巻取ローラの上方に位置され、昇降装置によって昇降を駆動し、ヒートセットドラムの軸線とニードルシリンダの軸線とを一致させ、ヒートセットドラムの外径はニードルシリンダの内径より小さいことを特徴とする。
【0008】
上記技術案に対して改善を行う。即ち、前記昇降装置は、シリンダの取付リング板、シリンダ、空気管、絞り弁、電磁弁を備え、前記シリンダの取付リング板は水平に糸巻ブラケットの頂部に取付けられ、前記シリンダの上端はシリンダの取付リング板に固定され、前記ヒートセットドラムはシリンダのピストンロッドに取付けられ、前記シリンダは空気管、絞り弁、電磁弁を介して外部の圧縮空気の接続端に連結し、前記電磁弁は前記制御ボックスに接続されることを特徴とする。
【0009】
上記技術案に対してさらに改善を行う。即ち、前記ニードルシリンダに密着布の断熱筒が取付けられ、密着布の断熱筒の軸線とニードルシリンダの軸線とを一致させ、密着布の断熱筒の外径はニードルシリンダの内径より小さく、密着布の断熱筒の内径はヒートセットドラムの外径より大きい。ヒートセットドラムはニードルシリンダ内の筒状メリヤス生地の内部の位置に降下すると、ヒートセットドラムと密着布の断熱筒との間に筒状メリヤス生地を通す隙間が形成され、ニードルシリンダの上方まで上昇すると、ヒートセットドラムは前記筒状メリヤス生地と離れる。
【0010】
上記技術案に対してさらに改善を行う。即ち、前記シリンダの取付リング板の周囲に三つのシリンダのピストンロッド用孔が均一に設置され、前記シリンダは三つがあり、三つのシリンダの三本のシリンダのピストンロッドはそれぞれ対応するシリンダのピストンロッド用孔に垂直に挿入され、前記ヒートセットドラムは三本のシリンダのピストンロッドの下端に取付けられることを特徴とする。
【0011】
上記技術案に対してさらに改善を行う。即ち、前記ヒートセットドラム内に温度センサが設置され、前記温度センサはヒートセットドラム制御ボックスに接続され、前記ヒートセットドラムに温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品が配置され、前記温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品はヒートセットドラムの制御ボックス上に取付けられることを特徴とする。
【0012】
上記技術案に対してさらに改善を行う。即ち、前記ヒートセットドラムの加熱方式は電磁誘導加熱、電気抵抗線加熱又は熱伝導油加熱であることを特徴とする。
【0013】
上記の同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて、熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の製造方法であって、
下記のAプロセス又はBプロセスを備える。即ち、
Aプロセス:上記の同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて編物同期予備ヒートセット→染色→脱水→スリッチング→開口幅ポストボーディングを行い、最後に開口幅メリヤス製品の生地が得られ、
Bプロセス:上記の同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて編物同期予備ヒートセット→染色→脱水→加湿幅拡大→乾燥→円筒予備収縮光沢カレンダリングを行い、最後に筒状メリヤス製品の生地が得られる、
ことを特徴とする。
【0014】
上記技術案に対して改善を行う。即ち、前記の編物同期予備ヒートセット工程は以下のステップを備える。即ち、丸メリヤス編機を起動し、筒状メリヤス生地は丸メリヤス編機のニードルシリンダの筒口に生地が形成された後、引張巻取装置に移動すると共に、設定のヒートセット温度まで昇温したヒートセットドラムは降下し、ニードルシリンダ内の筒状メリヤス生地の内部に進入し、筒状メリヤス生地は密着布の断熱筒とヒートセットドラムとの間の隙間を通り、ヒートセットドラムの外側面は筒状メリヤス生地に密接に接触し、筒状メリヤス生地のヒートセットを実現し、メリヤス生地は引き続き下へ移動して、ヒートセットドラムとの接触から離れ、自然降温した後に引張巻取装置に進入し、全ての編みヒートセットの過程を完成し、丸メリヤス編機を停機させ、昇降装置はヒートセットドラムを上昇し、ヒートセットドラムはニードルシリンダの上方まで上昇し、筒状メリヤス生地と離れることを特徴とする。
【0015】
上記技術案に対して改善を行う。前記の編物同期予備ヒートセットのプロセス条件は以下の通りである。即ち、
ヒートセットドラムの高さh、ヒートセットドラムの外径d、編み速度v、ヒートセット時間t、ヒートセット温度T、筒状メリヤス生地の機械卸下の幅L、ヒートセット効率p、ニードルシリンダの直径D、温度の変動Δtであり、
ヒートセットドラム外径:0.7≦d/D≦0.9、
ヒートセット時間:t=h/v≧10秒、
ヒートセット温度:250℃≧T≧150℃、
温度変動:Δt≦2℃、
ヒートセット効率:p=2L/πd≧85%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の利点及び有益な効果は以下の通りである。即ち、
本発明はヒートセットドラムを用いて生地に対して均一に連続的に加熱することを実現し、メリヤス編みと同期にヒートセットを行うことを実現する。昇降装置を有する同期ヒートセット装置は丸メリヤス編機の従来構造と上手く合わせてメリヤス編みとヒートセットの一体化を実現し、昇降装置はヒートセットドラムの昇降を自動的に制御することができ、筒状メリヤス生地は丸メリヤス編機のニードルシリンダの筒口に生地が形成された後、引張巻取装置に移動すると共に、設定のヒートセット温度まで昇温したヒートセットドラムは昇降装置の制御によって降下されて、筒状メリヤス生地の内部に進入し、ヒートセットドラムの外側面は筒状メリヤス生地と密接に接触し、筒状メリヤス生地のヒートセットを実現する。メリヤス生地は引き続き下へ移動して、ヒートセットドラムとの接触から離れ、自然降温した後に引張巻取装置に進入し、全てのメリヤス編みとヒートセットの過程を完成する。丸メリヤス編機を停機する場合、昇降装置はヒートセットドラムを上昇し、ヒートセットドラムはニードルシリンダの上方まで上昇し、筒状メリヤス生地との接触から離れ、メリヤス生地の局部の過度なヒートセットを防止することができる。
【0017】
ヒートセットドラムの影響により丸メリヤス編機のニードルシリンダの温度は高すぎてしまうことを避けるため、ニードルシリンダの内部に密着布の断熱筒が追加で取付けられ、密着布の断熱筒は耐高温の断熱材料から作製され、メリヤス編機が作動する時、メリヤス筒状生地がヒートセットドラムの外表面に密接に接触し、ヒートセットドラムと密着布の断熱筒との間の隙間を滑っていく。密着布の断熱筒はヒートセットドラムがメリヤス設備のニードルシリンダを蒸焼きにすることを防止し、一方メリヤス生地を位置限定する役割を果たし、メリヤス筒状生地がヒートセットドラムの外側面に密接に接触することを保証し、ヒートセット効率を向上する。
【0018】
ヒートセットドラム中に温度センサを設置し、前記温度センサはヒートセットドラム制御ボックスを接続し、ヒートセットドラムの外側面の温度を精密制御することが実現できる。
【0019】
温度設定及び表示の装置、加熱制御部品はヒートセットドラム制御ボックス上に取付けられ、ヒートセットドラムの昇降装置は電磁弁を介して制御ボックスに接続され、昇降装置と丸メリヤス編機とを同期制御することが実現する。
【0020】
本発明は従来の二つの熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の製造プロセスを以下のように変更する。即ち、1.同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて、編物同期予備ヒートセット→染色→脱水→スリッチング→開口幅ポストボーディングを行い、最後に開口幅メリヤス製品の生地が得られ、従来プロセスの幅開き、予備ヒートセット、メリヤス編み接ぎ工程を省略し、生地の利用率を向上することができた。2.同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて編物同期予備ヒートセット→染色→脱水→加湿幅拡大→乾燥→円筒予備収縮光沢カレンダリングを行い、最後に筒状メリヤス製品の生地が得られ、従来染色整理工程の円筒高温予備ヒートセット工程を省略し、筒状メリヤス生地の服の製造効率を向上し、筒状生地で製造された側接ぎが無い服の快適性も開口幅メリヤス生地で製造された側接ぎがある服より良い。且つ、染色整理設備の投資を減少し、プロセスを短縮し、エネルギー消費及び製造コストを低減した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の同期ヒートセットの丸メリヤス編機の斜視図である(ヒートセットドラムが丸メリヤス編機のニードルシリンダの上方まで上昇した状態)
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に附図及び実施例を併せて本発明についてさらに詳しく説明する。
図1を参照すると、本発明の同期ヒートセットの丸メリヤス編機の実施例であり、当該同期ヒートセットの丸メリヤス編機は、フレーム、糸巻ブラケット2、ニードルシリンダ7、引張巻取装置、制御ボックス8及び同期ヒートセット装置を備えており、前記同期ヒートセット装置は、前記糸巻ブラケット2に取付けられた昇降装置付きのヒートセットドラム13を備え、前記ヒートセットドラム13はヒートセットドラム制御ボックス11に接続され、前記ヒートセットドラム13は引張巻取装置における引張巻取ローラ10の上方に位置され、前記昇降装置によって昇降を駆動し、ヒートセットドラム13の軸線とニードルシリンダ2の軸線とを一致させ、ヒートセットドラム13の外径はニードルシリンダ2の内径より小さい。
【0023】
具体的に言えば、前記昇降装置は、シリンダの取付リング板3、シリンダ14、空気管4、絞り弁5、電磁弁6を備え、前記シリンダの取付リング板3は水平に糸巻ブラケット2の頂部に取付けられ、前記シリンダ14の上端はシリンダの取付リング板3に固定され、前記ヒートセットドラム13はシリンダのピストンロッド1に取付けられ、前記シリンダ14は空気管4、絞り弁5、電磁弁6を介して外部の圧縮空気の接続端15に連結し、前記電磁弁6は前記制御ボックス8に接続される。
【0024】
前記ニードルシリンダ2に密着布の断熱筒12が取付けられ、密着布の断熱筒12の軸線とニードルシリンダ2の軸線とを一致させ、密着布の断熱筒12の外径はニードルシリンダ2の内径より小さく、密着布の断熱筒12の内径はヒートセットドラム13の外径より大きく、ヒートセットドラム13はニードルシリンダ2内の筒状メリヤス生地9の内部の位置に降下すると、ヒートセットドラム13と密着布の断熱筒12との間に筒状メリヤス生地を通す隙間が形成され、ニードルシリンダ2の上方まで上昇すると、ヒートセットドラム13は前記筒状メリヤス生地9と離れる。
【0025】
前記シリンダの取付リング板3の周囲に三つのシリンダのピストンロッド用孔が均一に設置され、前記シリンダ14は三つがあり、三つのシリンダ14の三本のシリンダのピストンロッド1はそれぞれ対応するシリンダのピストンロッド用孔に垂直に挿入され、前記ヒートセットドラム13は三本のシリンダのピストンロッド1の下端に取付けられる。
【0026】
前記ヒートセットドラム13内に温度センサが設置され、前記温度センサはヒートセットドラム制御ボックス11に接続され、前記ヒートセットドラム13に温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品が配置され、前記温度設定及び温度表示の装置、加熱制御部品はヒートセットドラムの制御ボックス11上に取付けられる。
【0027】
前記ヒートセットドラム13の加熱方式は電磁誘導加熱、電気抵抗線加熱又は熱伝導油加熱である。好ましくは電磁誘導加熱方式である。
【0028】
本発明は上記の同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて、熱可塑性繊維を含有するメリヤス生地の製造方法の具体的な実施方式であって、下記のAプロセス又はBプロセスを備える。即ち、
Aプロセス:上記の同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて編物同期予備ヒートセット→染色→脱水→スリッチング→開口幅ポストボーディングを行い、最後に開口幅メリヤス製品の生地が得られ、
Bプロセス:上記の同期ヒートセットの丸メリヤス編機を用いて編物同期予備ヒートセット→染色→脱水→加湿幅拡大→乾燥→円筒予備収縮光沢カレンダリングを行い、最後に筒状メリヤス製品の生地が得られる。
【0029】
具体的に言えば、前記の編物同期予備ヒートセット工程は以下のステップを備える。即ち、丸メリヤス編機を起動し、筒状メリヤス生地は丸メリヤス編機のニードルシリンダの筒口に生地が形成された後、引張巻取装置に移動すると共に、設定のヒートセット温度まで昇温したヒートセットドラムは降下して、筒状メリヤス生地の内部に進入し、筒状メリヤス生地は密着布の断熱筒とヒートセットドラムとの間の隙間を通り、ヒートセットドラムの外側面は筒状メリヤス生地と密接に接触し、筒状メリヤス生地に対するヒートセットを実現する。メリヤス生地は引き続き下へ移動して、ヒートセットドラムとの接触から離れ、自然降温した後に引張巻取装置に進入し、全てのメリヤス編みとヒートセットの過程を完成させる。丸メリヤス編機を停機する場合、昇降装置はヒートセットドラムを上昇し、ヒートセットドラムはニードルシリンダの上方まで上昇し、筒状メリヤス生地との接触から離れる。
【0030】
前記の編物同期予備ヒートセットのプロセス条件は以下の通りである。即ち、
ヒートセットドラムの高さh、ヒートセットドラムの外径d、編み速度v、ヒートセット時間t、ヒートセット温度T、筒状メリヤス生地の機械卸下の幅L、ヒートセット効率p、ニードルシリンダの直径D、温度の変動Δtであり、
ヒートセットドラム外径:0.7≦d/D≦0.9、
ヒートセット時間:t=h/v≧10秒、
ヒートセット温度:250℃≧T≧150℃、
温度変動:Δt≦2℃、
ヒートセット効率:p=2L/πd≧85%である。
【0031】
ヒートセットの温度はヒートセット効率に影響を及ぼし、最終的にメリヤス生地の製品の幅及び平方メートルの重量に影響を及ぼすため、生地に含有する熱可塑性繊維の種類、割合及びヒートセットの時間などの総合的な要素によってヒートセットドラムの設定温度を上記範囲に保つ。
【0032】
温度変動:Δt≦2℃
温度変動はメリヤス生地の製品の幅及び平方メートルの重量の安定性に影響を及ぼすため、精密な温度制御システムによって温度変動を上記範囲に確保する。
【0033】
ヒートセット効率:p=2L/πd≧85%
ヒートセット効率は上記総合的要素の影響を受けるため、互いに協同で調整して、ヒートセット効率を上記範囲に保ち、メリヤス生地の製品の幅及び平方メートルの重量はプロセス要求を満たす。
【0034】
上記熱可塑性繊維は主にスパンデックス、テトロン、アクリル、ナイロンなどの繊維の一種又は多種である。
【実施例1】
【0035】
18インチ28G単面の小丸メリヤス編機に上記実施例の同期ヒートセット装置を取付ける。メリヤス生地の品種は40S綿+20Dスパンデックスの高弾性肌着生地である。単面の小丸メリヤス編機の回転数は20回/分であり、編機の給糸本数は52本であり、編み速度は13mm/秒であり、ヒートセットドラムの高さは300mmであり、ヒートセットドラムの直径は370mmであり、ヒートセット温度は200℃であり、筒状メリヤス生地がヒートセットドラムの外側面を通るヒートセット時間は23秒である。ヒートセットした筒状メリヤス生地の編地の編機から出た幅は520〜530mmである。当該生地は染色→脱水→加湿幅拡大→乾燥→円筒予備収縮光沢カレンダリングを経て、最後に得られた筒状メリヤス製品の生地は、幅が460mmであり、平方メートルの重量は160g/mである。生地の外観品質、水に漬けた後の収縮率、平方メートルの重量は全て設計要求を満たす。
【実施例2】
【0036】
30インチ28G単面の大丸メリヤス編機に上記実施例の同期ヒートセット装置を取付ける。メリヤス生地の品種は1500Dテトロン+30Dスパンデックスの高弾性肌着生地である。単面の大丸メリヤス編機の回転数は16回/分であり、編機の給糸本数は90本であり、編み速度は20mm/秒であり、ヒートセットドラムの高さは320mmであり、ヒートセットドラムの直径は600mmであり、ヒートセット温度は190℃であり、筒状メリヤス生地がヒートセットドラムの外側面を通るヒートセット時間は16秒である。ヒートセットした筒状メリヤス生地の編地の編機から出た幅は900〜930mmである。当該生地は染色→脱水→スリッチング→開口幅ポストボーディングを経て、最後に得られた開口幅メリヤス製品の生地は、幅が1750mmであり、平方メートルの重量は180g/mである。生地の外観品質、水に漬けた後の収縮率、平方メートルの重量は全て設計要求に満たす。
【0037】
勿論、以上の記載は本発明を限定するものではなく、本発明は上記の実施例に限定されず、当業者にとって、本発明の技術主旨及び内容を逸脱しない範囲で、変更、改良、追加又は置換を行うことは、全て本発明権利の保護範囲にあるとみなす。
【符号の説明】
【0038】
1 シリンダのピストンロッド
2 糸巻ブラケット
3 シリンダの取付リング板
4 空気管
5 絞り弁
6 電磁弁
7 ニードルシリンダ
8 制御ブックス
9 筒状メリヤス生地
10 引張巻取りローラ
11 ヒートセットドラム制御ポックス
12 密着布の断熱筒
13 ヒートセットドラム
14 シリンダ
15 圧縮空気の接続端
図1