(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応生成物が、15〜40重量%のテトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマー、および60〜85重量%のヒドロキシル基を含有するエチレン性不飽和ポリエステル樹脂から調製され、ここで重量%は、前記反応生成物を調製するために使用される前記組成物中の不揮発性構成成分の総重量に基づく、請求項1に記載の周囲硬化コーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明のコーティング組成物は、テトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマーおよびヒドロキシル基(好ましくはエチレン性不飽和)を含有するポリエステル樹脂の反応生成物を含み、ここでポリエステル樹脂は、約1250〜約4000の数平均分子量、および約800〜約4500のヒドロキシル当量を有し、テトラアルコキシオルトシリケートのアルコキシ基とヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂のヒドロキシル基との比が、2:1〜40:1(アルコキシ基:ヒドロキシル基)の範囲である。
【0005】
塗料皮膜形成(paint skinning)は、塗料産業全体にわたって非常に一般的に生じることである。塗料皮膜形成とは、塗料容器内部の塗料が取扱い中、搬送中、着色中および/または通常使用中に蓋の下面と接触する場合の塗料皮膜の成長を意味する。条件が整う場合、蓋の塗料は乾燥して、皮膜を形成し、続いて塗料に落ちて戻り、ランプが塗料中に懸濁し得る。低VOC/高固形分塗料は皮膜を形成する可能性が高い。
【0006】
しかし、驚くべきことに本発明のコーティング組成物は、本発明の特許請求の範囲の範囲外である未変性ポリエステルまたはシリケート変性ポリエステルを含むコーティング組成物と比較して皮膜を形成する傾向が低減している。
【0007】
ポリエステルを含むコーティング組成物、例えば長鎖アルキドが公知である。しかし、こうした組成物は徐々に乾燥し、フィルム特性が劣る。
【0008】
ポリオールおよび有機シリコーン含有材料のブレンドを含むコーティング組成物が公知である。例えば、米国特許第4,613,451号には、(A)疎水性ポリオールおよび(B)有機シリコーン含有材料の混合物を含む液体組成物が開示されている。構成成分(A)および(B)が混合された後、組成物は、湿分および/または疎水性ポリオールと反応することによって連続フィルムに自己硬化できる。しかし、本発明の周囲硬化コーティング組成物とは異なり、硬化は、熱が適用される場合にのみ行われる(約121℃の温度)。周囲硬化コーティング組成物については述べられていない。(A)および(B)の反応生成物を含む組成物については述べられていない。
【0009】
英国特許第1423408号には、アルキド樹脂、オレフィン性不飽和モノマーを重合することによって得られた樹脂、および非常に少量(2〜10重量%)のアルコキシシランを反応させることによる塗料の調製が開示されている。結果は、2パックの熱硬化ポリオール−メラミンホルムアルデヒドシステムに使用するための低固形分ポリオール(約60%の固形分含有量)である。残留SiOR基を含む反応生成物を含む1パックの周囲硬化コーティング組成物については述べられていない。
【0010】
米国特許第5,457,166号には、アルコキシシランを、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂と混合し、混合物を酸触媒の存在下で加水分解および重縮合に供することによって調製されるポリエステル変性シリコーン樹脂が開示されている。しかし、米国特許第5,457,166号には、組成物を熱で硬化させなければならないことが教示されている。本明細書に定義されるポリエステルから調製される反応生成物を含む周囲硬化コーティング組成物については述べられていない。
【0011】
ヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂
反応生成物を調製するためのポリエステル樹脂は、約1250〜約4000の数平均分子量、および約800〜約4500のヒドロキシル当量を有する。
【0012】
数平均分子量は、ASTM方法D5296−11に従ってゲル透過クロマトグラフィを用いて測定できる。好ましくはポリエステル樹脂の数平均分子量は、約1250〜約2500、さらにより好ましくは約1500〜2500である。
【0013】
ポリエステル樹脂のヒドロキシル当量は、約800〜約4500でなければならない。これは、11〜70の範囲のヒドロキシル価に等しい。好ましくはポリエステル樹脂のヒドロキシル当量が、約800〜約3,000である。
【0014】
ヒドロキシル価は、ASTM方法E222(改訂10)試験方法Aに従って実験的に決定されてもよい。ヒドロキシル価(OHV)は、1グラムのポリオール中のヒドロキシル含有量と等価な水酸化カリウムのミリグラムである。
【0015】
すなわちヒドロキシル価=56.1×1000/ヒドロキシル当量、ここで56.1は水酸化カリウムの原子量であり、1000はサンプル1グラムあたりのミリグラム数であり、ヒドロキシル当量は、反応性OH基の1当量のために必要とされるポリオールのグラムである。
【0016】
好ましくは、ポリエステル樹脂は、エチレン性不飽和または実質的にエチレン性不飽和である。好ましくはポリエステル樹脂は、50〜120cg/gのヨウ素価を有する程度までエチレン性不飽和である。ヨウ素価は、ASTM方法D5768−02(2010)に従って測定される1グラムのポリエステル樹脂によって取得されるセンチグラムあたりのヨウ素の量である。
【0017】
ヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂は、1分子あたり平均2個未満のヒドロキシル基、例えば分子あたり平均1.5個未満のヒドロキシル基を有することが特に好ましい。ヒドロキシル官能性が顕著に2より大きい場合、これにより、ポリエステルをテトラアルコキシオルトシリケート(オリゴマー)と反応させる場合にゲル化の危険性が増大することになる。
【0018】
ポリエステルは、ポリオールおよびポリカルボン酸(場合により一価アルコール/酸との組み合わせ)を反応させることによって調製されてもよい。ポリエステル樹脂は、1つまたはそれ以上の脂肪酸で変性されてもよい(この場合ポリエステルはアルキド樹脂として公知である)。
【0019】
本発明のポリエステルの調製に有用なポリオールの例としては、単純ジオール、トリオール、および高級アルコールが挙げられる。許容可能なポリオールは、2〜14個の炭素原子を含むことが好ましい。ポリオールは一般に公知であり、これらの例としては:1,2−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール;1,5−ペンタンジオール;2,4−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;2−メチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−2,4−ペンタンジオール;2,4−ヘプタンジオール;2−エチル−1,3−ヘキサンジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;1,2−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン;2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート;ジプロピレングリコール;グリセロール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチレングリコールおよびジプロピレングリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいポリオールとしては、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
許容可能なポリカルボン酸の例としては、環状ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸および脂環式ポリカルボン酸が挙げられる。
【0021】
好適な芳香族ポリカルボン酸の例としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸が挙げられる。上記酸の無水物も、存在する場合は使用することができ、用語「ポリカルボン酸」によって、例えばフタル酸無水物およびトリメリト酸無水物も包含される。
【0022】
脂環式ポリカルボン酸の例としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸テトラクロロフタル酸およびメチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。上記酸の無水物も、存在する場合、使用でき、例えばテトラヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物およびメチルヘキサヒドロフタル酸無水物である。
【0023】
非環式ポリカルボン酸の例としては、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、オクテニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、2,2−ジメチルコハク酸、3,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。上記酸の無水物も、存在する場合、使用でき、例えばマロン酸のジメチルエステルおよびジエチルエステル、コハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、およびドデセニルコハク酸無水物である。
【0024】
好ましいポリカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸およびフタルポリカルボン酸およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
加えて、ポリエステルポリオールを形成するための酸と同様の様式で反応する特定の材料も有用である。こうした材料としては、ラクトン、例えばカプロラクトン、プロピロラクトンおよびメチルカプロラクトン、およびヒドロキシ酸、例えばヒドロキシカプロン酸およびジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0026】
トリオールまたは高級アルコールが使用される場合、モノカルボン酸、例えば酢酸および安息香酸は、ポリエステルポリオールの調製に使用されてもよい。
【0027】
ポリエステルポリオールを調製するために使用されてもよい任意の一価アルコールの例としては:エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ペンタノール;ネオペンチルアルコール;2−エトキシエタノール;2−メトキシエタノール;1−ヘキサノール;シクロヘキサノール;2−メチル−2−ヘキサノール;2−エチルヘキシルアルコール;1−オクタノール、2−オクタノール、1−ノナノール;5−ブチル−5−ノナノール、イソデシルアルコールなどが挙げられる。
【0028】
さらに、本明細書で使用される場合に用語ポリエステルポリオールは、脂肪酸または脂肪酸グリセリドオイル(すなわちこうした変性を含有する従来のアルキドポリオール)で変性されることもあるポリエステルポリオールを包含することが意図される。これらは、通常、多価アルコール、ポリカルボン酸および乾燥、半乾燥または非乾燥油から誘導される脂肪酸を反応させることによって製造される。アルキド樹脂を調製する技術が周知である。通常、プロセスは、ポリカルボン酸および脂肪酸またはこれらの部分的なグリセリドおよび多価アルコール(後者は、通常、化学量論過剰)を触媒、例えばリサージ、硫酸またはスルホン酸の存在下で共に反応させることを含み、水の蒸発を伴ってエステル化を行う。
【0029】
好適な脂肪酸の例としては、20個まで、好ましくは16個まで、一部の場合には12個までの炭素原子を含む飽和および不飽和酸が挙げられる。脂肪酸の例としては、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、リカン酸、エラエオステアリン酸、クルパノドン酸、アンテイソアラキジン酸(anteisoarachadic)、ベヘン酸、ボセオペンタエン酸、カプリン酸、カプリル酸、カタルプ酸、エイコサジエン酸、エリジオゲン酸(erydiogenic)、イソマルガリン酸、イソミリスチン酸、ジャカル酸、ラウリン酸、レスクエロール酸、ミリスチン酸、パリナリン酸、プニカ酸、リシネン酸(ricinenic)、ルーメン酸、ルメレン酸(rumelenic)、およびこれらの混合物が挙げられる。本発明のアルキドに有用なオイルの脂肪酸誘導体としては、亜麻仁油、大豆油、脱水ヒマシ油、原料ヒマシ油、レスクレラ油、ピーナッツ油、トール油、桐油、魚油、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、なたね油、オリーブ油、ココナッツ油、またはこれらの組み合わせの誘導体であってもよい。
【0030】
好ましい脂肪酸としては、トール油、桐油、ヒマワリ油およびサフラワー油およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
脂肪酸は、それらの包含を補うためにエステル化混合物に組み込まれる十分過剰な多価アルコールと共に遊離酸の形態であってもよい。しかし、多くの場合、アルキドポリオールの形成のために必要な量の利用可能なヒドロキシルを供給するように十分な量の多価アルコール、例えばグリセロールで部分的にアルコール化されているグリセリドオイルを使用するのが好ましい。
【0032】
テトラアルコキシオルトシリケート
シリケート変性エポキシ樹脂を調製するために使用できるテトラアルコキシオルトシリケートおよびこれらの部分的に縮合したオリゴマーは、式:
R−O−[−Si(OR)
2−O−]
n−R
によって表され、式中、各Rは、6個までの炭素原子を有するアルキルおよびアリール基および−Si(OR)
3基から独立に選択され、n=1〜20である。
【0033】
好ましくはテトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合したオリゴマーは、テトラC1−C5アルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合したオリゴマーである。
【0034】
好ましい実施形態において、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびブチルから選択されてもよく;最も好ましくはRはエチルである。
【0035】
好適なテトラアルコキシオルトシリケートの例は、テトラメトキシオルトシリケート、テトラエトキシオルトシリケート、テトラプロポキシオルトシリケート、テトライソプロポキシオルトシリケート、テトラブトキシオルトシリケート、およびこれらの部分的に重合した/オリゴマー化した形態である。最も好ましいテトラアルコキシオルトシリケートは、部分的なオリゴマー化テトラエトキシオルトシリケート、例えば市販のテトラエトキシオルトシリケートTES40(Wackerから)およびDynasil40(Degussaから)である。
【0036】
シリケート変性ポリエステル樹脂(「反応生成物」)の調製
本発明は、テトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合したオリゴマーおよびヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂の脱アルコール化縮合によって得ることができるシリケート変性ポリエステル樹脂に関し、ここでポリエステル樹脂は、約1250〜約4000の数平均分子量を有し、約800〜約4500のヒドロキシル当量を有し、ここでテトラアルコキシオルトシリケートにおけるアルコキシ基とヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂のヒドロキシル基との比が、2:1〜40:1(アルコキシ基:ヒドロキシル基)の範囲である。
【0037】
好ましくは、テトラアルコキシオルトシリケートにおけるアルコキシ基とヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂のヒドロキシル基との比は、6:1〜30:1の範囲、最も好ましくは8:1〜20:1の範囲である。
【0038】
ヒドロキシル基に対してアルコキシ基が過剰であるので、反応生成物は、SiOR官能基を含む。
【0039】
テトラアルコキシオルトシリケートにおけるアルコキシ基とヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂のヒドロキシル基との比が40:1を超える場合、配合物中のテトラアルコキシオルトシリケートの重量フラクションが、オルトシリケートの架橋中に生じるエタノールにより、低VOCコーティングをほとんど配合不可能になるような程度にまで十分大きい。
【0040】
テトラアルコキシオルトシリケートにおけるアルコキシ基とヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂のヒドロキシル基との比が、2:1未満である場合、樹脂は、脱アルコール化反応の間にゲル化しない場合に、低VOCコーティングへの配合が不可能であるような高粘度を有する。
故に、本発明はまた、触媒の存在下、テトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマーとヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂との混合物を加熱することによって、上記で記載されるようなシリケート変性ポリエステル樹脂の調製のためのプロセスに関する。
【0041】
脱アルコール化縮合反応の反応温度は、好ましくは80℃〜150℃、より好ましくは100〜120℃の範囲である。反応は、テトラアルコキシオルトシリケートの重縮合反応を防止するために、実質的に無水条件下で、好ましくは約1〜約12時間行われる。
【0042】
好適にはシリケート変性ポリエステル樹脂は、10〜40重量%のテトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマー、および60〜90重量%のヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂から調製され、ここで重量%は、反応生成物を調製するために使用される組成物中の不揮発性構成成分の総重量に基づく。
【0043】
不揮発性分含有量は、ASTM方法D2697に従って測定できる。
【0044】
より好適には、シリケート変性ポリエステル樹脂は、15〜40重量%(例えば20〜30重量%)のテトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマー、および60〜85重量%(例えば70〜80重量%)のヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂から調製され、ここで重量%は、反応生成物を調製するために使用される組成物中の不揮発性構成成分の総重量に基づく。
【0045】
この脱アルコール化縮合反応に好適な触媒は、従来から公知の触媒である。こうした触媒の例は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、ホウ素、カドミウム、およびマンガン、これらの酸化物、有機酸塩、ハライド、またはアルコキシドのような金属である。有機チタンおよび有機スズ化合物は好ましい触媒である。ジブチルスズジラウレート、およびテトラアルキルチタン化合物がさらにより好ましい。
【0046】
得られたシリケート変性ポリエステル樹脂は、一部の未反応ポリエステル樹脂および/または未反応テトラアルコキシオルトシリケートを含有してもよい。未反応テトラアルコキシオルトシリケートは、加水分解および縮合によってシリカに転換できる。加水分解および縮合を促進するために、少量の水は、使用される場合にシリケート変性エポキシ樹脂に添加されてもよい。
【0047】
コーティング組成物およびこれらの用途
本発明に従うコーティング組成物は、有利なことには1パックで配合される。1パック組成物は、二重の硬化機構(湿分硬化および自動酸化によって)を介して硬化する。故に、この組成物は、実質的に湿分を含むべきではなく、雰囲気酸素への曝露から保護されなければならない。
【0048】
本明細書において「実質的に湿分を含まない」とは、1.0重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の水を含有することを意味する。
【0049】
驚くべきことに、本発明者らは、シリケート変性ポリエステルは、高固形分の低VOC1パック組成物を製造でき、これは周囲および準周囲条件において、迅速な乾燥速度を有するコーティングを製造することを見出した。
【0050】
本発明に従うコーティング組成物はまた、Si−O−Si縮合のための触媒として作用する化合物を含有してもよい。一般に、コーティング組成物は、こうした触媒が存在しなくても、周囲温度および湿度条件下にて2〜10時間でタックのないコーティングに硬化できるが、触媒は迅速な硬化を与えるために好ましい場合がある。
【0051】
Si−O−Si縮合のための触媒の1つの例は、アルコキシチタン化合物、例えばチタンキレート化合物、例えばチタンビス(アセチルアセトネート)ジアルコキシド、例えばチタンビス(アセチルアセトネート)ジイソプロポキシド、チタンビス(アセトアセテート)ジアルコキシド、例えばチタンビス(エチル−アセトアセテート)ジイソプロポキシド、またはアルカノールアミンチタネート、例えばチタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、またはアルコキシチタン化合物(キレート、例えばテトラ(イソプロピル)チタネートまたはテトラブチルチタネートではない)である。チタンに結合するアルコキシ基を含有するこうしたチタン化合物は、チタンアルコキシド基が加水分解性であり、触媒はSi−O−Ti連結によって硬化した組成物に結合し得るので、触媒単独としては作用し得ない。硬化組成物中のこうしたチタン部分の存在は、さらにより高い熱安定性を与えるのに有利であり得る。チタン化合物は、例えば結合剤の0.1〜5重量%で使用できる。ジルコニウムまたはアルミニウムの対応するアルコキシド化合物も、触媒として有用である。
【0052】
Si−O−Si縮合のための代替触媒は、多価金属イオンの硝酸塩、例えば硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛または硝酸ストロンチウムである。硝酸カルシウムは、組成物も有機アミンを含む場合に、Si−O−Si縮合によってシリケートを硬化するのに有効な触媒である。硝酸カルシウムは、好ましくはその四水和物の形態で使用されるが、他の水和形態も使用できる。必要とされる硝酸カルシウム触媒のレベルは、一般に結合剤の3重量%以下、例えば0.05〜3重量%である。硝酸カルシウム触媒を用いて硬化したコーティングは、特に日光への曝露時の黄色化に対して耐性がある。
【0053】
好適な触媒の別の例は、有機スズ化合物、例えばジアルキルスズジカルボキシレート、例えばジブチルスズジラウレートまたはジブチルスズジアセテートである。こうした有機スズ触媒は、例えばシリケート変性エポキシ樹脂の重量に基づいて、0.05〜3重量%で使用できる。
【0054】
本発明のコーティング組成物における触媒として有効な他の化合物は、有機塩、例えばビスマスのカルボキシレート、例えばビスマストリス(ネオデカノエート)である。他の金属、例えば亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、カルシウム、コバルト、またはストロンチウムの有機塩および/またはキレート、例えばジルコニウムアセチルアセトネート、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、シュウ酸スズ、カルシウムアセチルアセトネート、カルシウムアセテート、カルシウム2−エチルヘキサノエート、コバルトナフタレート、カルシウムドデシルベンゼンスルホネート、または酢酸アルミニウムも触媒として有効であってもよい。湿分硬化反応はまた、塩基、アミン、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、およびグアニジンによって触媒される。
【0055】
本発明のコーティング組成物は、1つまたはそれ以上のさらなる成分を含有してもよい。それは溶媒を含有してもよい。しかし、好ましくは固形分含有量が少なくとも70体積%である。
【0056】
それはまた、1つまたはそれ以上の顔料、例えば二酸化チタン(白色顔料)、着色顔料、例えば黄色または赤色酸化鉄またはフタロシアニン顔料および/または1つまたはそれ以上の強化顔料、例えばマイカ状酸化鉄または結晶性シリカおよび/または1つまたはそれ以上の腐食防止顔料、例えば金属性亜鉛、リン酸亜鉛、珪灰石またはクロメート、モリブデートまたはホスホネートおよび/またはフィルター顔料、例えば重晶石、タルクまたは炭酸カルシウムを含有してもよい。組成物はまた、1つまたはそれ以上の増粘剤、例えば微粒子シリカ、ベントナイト粘土、水素添加ヒマシ油、またはポリアミドワックス、1つまたはそれ以上の可塑剤、顔料分散剤、安定剤、離型剤、表面改質剤、難燃剤、抗菌剤、かび防止剤、レベリング剤および消泡剤などを含有してもよい。
【0057】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、組成物リットルあたり溶媒250グラム未満(g/l)の揮発性有機分含有量(VOC)、および/または少なくとも70体積%の固形分含有量を含む。
【0058】
好ましくは計算された固形分含有量は、コーティング組成物中の構成成分すべての総体積に基づいて、75体積%を超える、より好ましくは80体積%を超える。
【0059】
好ましくはVOCは200g/Lを超えない。コーティング組成物のVOCは、EPA Federal方法24に従って決定されてもよい。
【0060】
コーティング組成物は2パック組成物の形態を有する場合、固形分含有量およびVOCは、両方のパックを混合した後の組成物の固形分含有量およびVOCに対応する。
【0061】
高固形分含有量および/または低VOCにかかわらず、本発明のコーティング組成物はまた、低粘度を有することができる。所望の低粘度は、ASTM D 4287 00に従って測定される場合に、25℃で20ポイズ未満(50%相対湿度)、さらにより望ましいことには25℃で15ポイズ未満、さらに望ましいことには25℃で10ポイズ未満である。低粘度は、そのコーティングが、標準技術、例えばスプレー、ローラーまたはブラシによって塗布できることを意味する。
【0062】
本発明のコーティング組成物が一般に、周囲温度またはさらに低い、例えば−5〜30℃(例えば50%RH)において硬化するので、熱硬化が実行不可能な大きな構造物に塗布するのに好適である。本発明のコーティング組成物は、所望により、別の方法として、高温にて、例えば30または50℃から100または130℃までで硬化されてもよい。
【0063】
ケイ素結合アルコキシ基の加水分解は、湿分の存在に依存し:ほとんどすべての気候において、雰囲気湿分は十分であるが、制御された量の湿分は、準周囲温度で硬化する場合または非常に低い湿度(砂漠)地域で硬化する場合にコーティングに添加することが必要とされる場合がある。水は、好ましくはケイ素結合アルコキシ基を含有するいずれかの化合物またはポリマーから分離してパッケージされる。
【0064】
本発明のコーティング組成物は、仕上げコーティングおよび/またはプライマーコーティングとして使用できる。本発明に従う仕上げコーティングは、種々のプライマーコーティング、例えば無機亜鉛シリケートまたは有機亜鉛が豊富なシリケートプライマーおよび有機、例えばエポキシ樹脂、亜鉛金属を含有するプライマー、腐食防止顔料、金属フレーク、またはバリア顔料にわたって適用できる。コーティング組成物は、例えば、建物、鋼構造物、自動車、航空機および他の乗り物、ならびに一般的な産業機器および備品に対して仕上げコーティングとして使用できる。仕上げコーティングは、顔料着色でき、または特に車またはヨットにおいてクリア(非顔料着色)コーティングであることができるコーティング組成物は、プライマー/仕上げとして調製された炭素鋼に直接塗布できる。本発明に従うプライマーコーティング組成物は、完全ではない表面、例えば経年ブラスト鋼または「ジンジャー」(ブラストされており、小さい点状に錆が生じ始めた鋼)、手加工の風化鋼および経年コーティングにおけるメンテナンスおよびリペアコーティングとして使用できる。
【0065】
コーティング組成物は、好ましくは、ポットライフを延長して、硬化の初期速度を制御するために1パックでパッケージされるアルコール、例えばエタノールまたはブタノールを含有してもよい。
【実施例】
【0066】
ここで、本発明は以下の実施例を参照して明瞭にされる。これらは、本発明を例示することを意図するが、いかなる様式においても本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0067】
実施例に使用されるテスト方法
不揮発性分含有量(NVC/固形分含有量%)は、公知の重量(約0.3g)のポリマー溶液を予め計量したアルミニウム皿に置き、105℃のオーブンにてサンプルを30分間加熱し、皿を再計量することによって決定した。不揮発性分含有量は、加熱前と加熱後とのサンプルの重量差から計算できる(ASTM方法D2697)。
【0068】
粘度は、25℃の温度において10,000〜12,000s
−1の剪断速度にて、ASTM D 4287 00に従って高剪断粘度計を用いて測定した。
【0069】
コーティング組成物の揮発性有機分含有量(VOC)は、EPA Federal Method24に従って決定された。
【0070】
コーティングを乾燥する時間は、BKドライトラックレコーダによって測定された(ASTM D 5895)。
【0071】
実施例1−未変性アルキドと比較したシリケート変性アルキドの乾燥時間の低下の実証。
Setal 291XX99(500g−Setal 291XX99は市販の長油性アルキドであり、ヒドロキシル当量は2250である)、TES40WN(テトラエチルオルトシリケート、124.33g)およびチタン(IV)ブトキシド(0.6g)を、機械的攪拌機、窒素入口、冷却器、および熱電対を備えた反応容器に添加した。反応容器を、窒素で15分間パージし、その後、反応容器の内容物を100℃に合計12時間加熱した。反応生成物は、クリアな橙色液体であり、粘度は11.4ポイズであり、94.5重量%の不揮発性分含有量を有していた。Setal291XX99は、20〜30ポイズの引用粘度を有し、不揮発性分含有量は>99%である。
【0072】
TES40WNは、部分的に縮合されたエチルシリケートポリマーであり、40は材料中のSi%を指す。TES40WNの
29Si NMRは、SiO
0.8(OEt)
2.4の実験式、ひいては62のエトキシ当量を有することを示唆する。この値は、ポリマー配合物におけるSiOR:OH比を計算するために使用された。この実施例において、比は9:1であった。
【0073】
アルキドシリケートによって達成可能な乾燥速度の改善を実証するために、上記で記載されるアルキドシリケートの乾燥時間を、未変性アルキド(Setal291XX99)の場合と並べて決定した。ポリマー(25g)は、Co乾燥剤(0.6g)、Ca乾燥剤(0.3g)およびジアザビシクロウンデセン(0.1g)と混合し、200μキューブアプリケータを用いてガラススライド上にフィルムをキャストし、25℃でコーティングを乾燥させる時間を、ASTM D 5895に従ってBK乾燥トラックレコーダによって測定した。実施例1からのアルキドシリケートは3時間以内に乾燥したが、未変性アルキドは3時間を超える乾燥時間を有していた。
【0074】
実施例2から7 本発明に従うアルキドシリケートの調製
【表1】
【0075】
第1の段階において、幅広丸底フラスコを、ペンタエリスリトール、イソフタル酸(IPA)、トール油脂肪酸(TOFA)およびチタン(IV)ブトキシドを触媒として充填した。フラスコを、窒素供給口、フラスコが置かれた加熱マントルに連結した熱電対、冷却器に適合したディーン・スターク装置、およびストッパを備えた5つの入口を有するフランジ蓋で閉じた。中心にはアンカー攪拌機があり、バンドを介して機械的に回転させた。モノマーを加熱して、250℃の最大温度にて、窒素下、<5mgKOH/gの酸価が達成されるまでエステル化反応を促進した。ディーン・スターク装置は、高い転化率を達成するのに役立つように、反応フラスコから水を除去できる。必要によりキシレン(約5重量%)を添加して、水の除去を促進でき、これらの実施例においてはそれを行った。
【0076】
アルキドとTES40WN(テトラエチルオルトシリケートオリゴマー)との第2段階の反応は、ディーン・スターク装置を除き、反応フラスコを還流に設定した同じ反応容器で行われた。TES40WNは、室温にてアルキド前駆体に添加した。反応混合物は、段階1において先に添加された触媒量のチタン(IV)ブトキシドを用いて、120℃で12時間加熱した。反応混合物は、初期に不相溶性であったが、アルキドポリマーとTESwoWNが反応するにつれて均質になった。
【0077】
粘度(25℃での)、不揮発性分含有量およびアルキド樹脂の硬化乾燥時間を測定し、表2に示す。
【表2】
【0078】
実施例8から10 本発明の教示から外れるアルキドシリケートの調製
【表3】
【0079】
実施例8から10のアルキド配合物を、上記実施例2から7に記載されるように調製した。実施例8のアルキドは製造中にゲル化した。実施例9のアルキドシリケートは、アルキドとTES40WNとの間の第2段階の反応中にゲル化した。実施例10のアルキドは、首尾良く調製されたが、実施例1に記載される条件下で硬化した場合に7日間以内に乾燥しなかった。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1. テトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマーおよびヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂の反応生成物を含む周囲硬化コーティング組成物であって、ここで
(a)前記ポリエステル樹脂は、約1250〜約4000の数平均分子量、および約800〜約4500のヒドロキシル当量を有し、
(b)前記テトラアルコキシオルトシリケートのアルコキシ基とヒドロキシル基を含有する前記エチレン性不飽和ポリエステル樹脂のヒドロキシル基との比が、2:1〜40:1の範囲である、
周囲硬化コーティング組成物。
項2. 前記反応生成物が、15〜40重量%のテトラアルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマー、および60〜85重量%のヒドロキシル基を含有するエチレン性不飽和ポリエステル樹脂から調製され、ここで重量%は、前記反応生成物を調製するために使用される前記組成物中の不揮発性構成成分の総重量に基づく、項1に記載の周囲硬化コーティング組成物。
項3. ヒドロキシル基を含有する前記ポリエステル樹脂がエチレン性不飽和である、項1または2に記載の周囲硬化コーティング組成物。
項4. ヒドロキシル基を含有する前記ポリエステル樹脂が分子あたり2個未満のヒドロキシル基を含む、項1から3のいずれか一項に記載の周囲硬化コーティング組成物。
項5. 前記テトラ−アルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマーが、テトラ−C1〜C5アルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマー、例えばテトラエトキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマーである、項1から4のいずれか一項に記載の周囲硬化コーティング組成物。
項6. 前記ポリエステル樹脂が、約1250〜約2500の数平均分子量、および約800〜約3000のヒドロキシル当量を有する、項1から5のいずれか一項に記載の周囲硬化コーティング組成物。
項7. 前記コーティング組成物が、少なくとも70体積%の固形分含有量および/または250g/lを超えない揮発性有機分含有量(VOC)を有する、項1から6のいずれか一項に記載の周囲硬化コーティング組成物。
項8. ヒドロキシル基を含有する前記ポリエステル樹脂がアルキド樹脂である、項1から7のいずれか一項に記載の周囲硬化コーティング組成物。
項9. 項1から8のいずれか一項に記載の周囲硬化コーティング組成物を含む、1パックコーティング組成物。
項10. テトラ−アルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合したオリゴマーおよびヒドロキシル基を含有するポリエステル樹脂の脱アルコール化縮合によって得ることができるシリケート変性ポリエステル樹脂であって、ここで
(a)前記ポリエステル樹脂は、約1250〜約4000の数平均分子量、および約800〜約4500のヒドロキシル当量を有し、
(b)前記テトラアルコキシオルトシリケートにおけるアルコキシ基とヒドロキシル基を含有する前記エチレン性不飽和ポリエステル樹脂のヒドロキシル基との比が、2:1〜40:1の範囲である、
シリケート変性ポリエステル樹脂。
項11. 触媒の存在下、前記アルコキシオルトシリケートまたはこれらの部分的に縮合されたオリゴマーとヒドロキシル基を含有する前記ポリエステル樹脂との混合物を加熱することによって、項10に記載のシリケート変性ポリエステル樹脂を調製するためのプロセス。
項12. 基材をコーティングするための、項10に記載のシリケート変性ポリエステル樹脂の使用。
項13. (i)項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物を基材に塗布する工程、および(ii)前記塗布されたコーティング組成物を硬化する工程を含む、基材をコーティングするためのプロセス。
項14. 硬化が−5℃〜30℃の範囲である温度で行われる、項13に記載のプロセス。
項15. 項13または項14のプロセスによって得ることができるコーティングされた基材。