特許第6074067号(P6074067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074067フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを伴う汚損防止組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074067
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを伴う汚損防止組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20170123BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20170123BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20170123BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08L83/04
   C08L71/02
   C09D201/00
   C09D171/02
   C09D183/04
   C09D5/16
   C09D7/12
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-558454(P2015-558454)
(86)(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公表番号】特表2016-509110(P2016-509110A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2014053379
(87)【国際公開番号】WO2014131695
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】13156771.1
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/772,084
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ,ケビン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】タイソン,ブレント ビッカーズ
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−290489(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/035656(WO,A1)
【文献】 特開平09−286853(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/076856(WO,A1)
【文献】 特表2010−524676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C09D 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性ポリマー及びフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む汚損防止組成物であって、
前記硬化性ポリマーが、下記式の繰り返しユニット:
【化3】
(式中、R及びR10は独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル又はビニル基から選択される)
を含むオルガノシロキサン含有ポリマー又はその混合物であり、
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーが、
(a)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化1】
(式中、
複数のフッ素化部分が存在するならば、前記フッ素化部分は同じ又は異なっていてもよく、
pは独立して0又は1であってよく、
mは独立して、0〜6の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H;F;Cl;Br;場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基;又は、場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状のアルキルオキシアルカン基であってよい)
及び
(b)下記式の、平均してポリマー又はオリゴマーあたり4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分:
【化2】
(式中、
複数のオキシアルキレン部分が存在するならば、前記オキシアルキレン部分は同じ又は異なっていてもよく、
nは独立して、0〜4の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C16アルキル基であってよい)
を含む汚損防止組成物。
【請求項2】
前記オキシアルキレン部分がオキシエチレン部分である、請求項1に記載の汚損防止組成物。
【請求項3】
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーがOA−(F−OA)(式中、OAは1つ又は複数のオキシアルキレン部分のブロックであり、かつ、Fは1つ又は複数のフッ素化部分のブロックであり、かつ、nは整数である)の形態のものである、請求項1又は2に記載の汚損防止組成物。
【請求項4】
nが1であり、かつ、オキシアルキレン部分の各ブロックにおけるオキシアルキレン部分の平均数が独立して、2.0〜50.0の範囲である、請求項3に記載の汚損防止組成物。
【請求項5】
nが1であり、かつ、オキシアルキレン部分の各ブロックにおけるオキシアルキレン部分の平均数が独立して、2.0〜10.0の範囲である、請求項3又は4に記載の汚損防止組成物。
【請求項6】
前記ポリマー/オリゴマーの数平均分子量(Mn)が400〜40,000の範囲にある、請求項1からのいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項7】
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの末端における前記フッ素化部分及び/又はオキシアルキレン部分は、水素、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C12アルキル基、フェニル基又はアシル基で終端されている、請求項1からのいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項8】
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの末端における前記フッ素化部分及び/又はオキシアルキレン部分は、水素、メチル基、フェニル基又はエタノイル基で終端されている、請求項1から7のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項9】
、R、R及びRが独立して、F、−CF3、−CHOCHCF又は−CHOCHCFCFのいずれか1つ又は複数である、請求項1からのいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項10】
、R、R及びRが独立して、F又は−CFのいずれか1つ又は複数である、請求項1から9のいずれかに記載の汚損防止組成物
【請求項11】
、R6、及びRが独立して、H、−CH又は−CHCHある、請求項1から10のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項12】
、R6、及びRがHである、請求項1から11のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項13】
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーが液体である、請求項1から12のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項14】
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーが、粘度が25℃において10mPa.s〜1,000,000mPa.sである液体である、請求項1から13のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項15】
前記硬化性ポリマーはペルフルオロポリエーテル部分が存在しない、請求項1から14のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項16】
及びR10が独立して、メチル及びフェニルから選択される、請求項1から15のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項17】
及びR10の両方がメチルである、請求項1から16のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項18】
さらに殺生物剤を含む、請求項1から17のいずれかに記載の汚損防止組成物。
【請求項19】
水域環境における基板の汚損を阻止するための方法であって、請求項1〜18のいずれか一項に記載される汚損防止組成物を前記基板に塗布すること、前記汚損防止組成物を硬化させて、被覆を前記基板の表面に形成すること、及び、その後、前記被覆された基板を前記水域環境に設置することによる、方法。
【請求項20】
請求項1から18のいずれかに規定されるような汚損防止組成物により被覆された基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性ポリマー及びフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む汚損防止組成物、水域環境における汚損を阻止するための方法、並びに、該汚損防止組成物により被覆された基板に関する。
【背景技術】
【0002】
人工構造物、例えば、船(boat、ship)の船体、浮標、掘削用プラットフォーム、乾ドック設備、石油・ガス生産リグ、浮体式石油・ガス処理貯蔵積出設備、水産養殖用の設備及び漁網、エネルギー生成装置、発電所取水口、並びに、水及びタンクに沈められるケーブル及びパイプ、水の貯蔵及び輸送のために使用されるパイプ及び導管などは、水生生物(例えば、珪藻類、粘質性バイオフィルム、緑藻類及び褐藻類、フジツボ類並びにイガイ類など)による汚損を受けやすい。そのような構造物は一般に金属製であり、しかし、他の構造材(例えば、木材、ガラス強化プラスチック又はコンクリートなど)もまた含む場合がある。海洋環境におけるこの汚損は、水中移動時の摩擦抵抗を増大させ、その結果が、低下した速度及び増大した燃料コストであるので、船体に関して面倒なものである。汚損は、静的構造物に関して、例えば、掘削用プラットフォーム及び石油・ガス生産貯蔵処理積出リグの脚部などに関して面倒なものである。これは第1には、波及び流れに対する厚い汚損層の抵抗が、予測できない潜在的に危険な応力を構造物において生じさせる可能性があるからであり、また、第2には、汚損は、構造物を欠陥(例えば、応力亀裂及び腐食など)について検査することを困難にするからである。汚損は、パイプにおいて、例えば、冷却水の取水口及び排出口などにおいて面倒なものである。これは、有効断面積が汚損によって減少し、その結果、流速が低下するからである。
【0003】
汚損を阻止する商業的に最も成功した方法は、水生生物に対して毒性である物質(例えば、塩化トリブチルスズ又は酸化第一銅など)を含有する汚損防止被覆の使用を伴っている。しかしながら、そのような被覆は、そのような毒素が過度な量で水域環境に放出されるならば、毒素が有するかもしれない損傷影響のために、増大する不賛成とともに注視され続けている。従って、著しい毒性の物質を過度な量で放出しない汚損防止被覆が求められている。
【0004】
シリコーンゴム被覆が水生生物による汚損に耐えることが、例えば、英国特許第1,307,001号及び米国特許第3,702,778号に開示されているように、長年にわたって公知である。そのような被覆は、生物が容易に付着することができない表面を示すと考えられており、従って、そのような被覆は、汚損防止被覆ではなく、むしろ、汚れ剥離被覆と呼ぶことができる。シリコーンゴム及びシリコーン化合物は一般に、非常に低い毒性を有する。船体に適用されたときのこの汚損防止システムの欠点が、海洋生物の蓄積が軽減されるにもかかわらず、比較的大きい船速が、すべての汚損性生物種を除くために必要とされるということである。従って、一部の場合には、そのようなポリマーにより処理されている船体からの効果的な剥離のためには、少なくとも14ノットの速度で航行することが必要であることが示されている。この理由から、シリコーンゴムは限定的な商業的成功を得ており、これらの環境的に優しい被覆の汚損防止特性及び汚れ剥離特性の改善が求められている。
【0005】
仏国特許第2537985号は、メチルオルガノシロキサン樹脂、シリコーンエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル系バインダー及び溶媒又は希釈剤を含む汚損防止被覆組成物を開示する。ポリテトラフルオロエチレンはオキシアルキレン官能基を含有しないので、この文書は、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む被覆組成物を記載していない。
【0006】
欧州特許第0903389号は、光触媒性酸化物、シリコーン樹脂又はシリカ、及び、撥水性フッ素樹脂を含む汚損防止組成物を開示する。テトラフルオロエチレンが、好ましい疎水性フッ素樹脂として言及されており、実施例では、ポリテトラフルオロエチレン粒子が使用されている。この文書は、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む被覆組成物を記載していない。
【0007】
国際公開第02/074870号は、硬化可能又は架橋可能なポリマーと、液状のフッ素化されたアルキル含有又はアルコキシ含有のポリマー又はオリゴマーとを含む汚損防止組成物を開示する。この文書には、平均してポリマー又はオリゴマーあたり4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分を含むフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む被覆組成物は何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許第1,307,001号明細書
【特許文献2】米国特許第3,702,778号明細書
【特許文献3】仏国特許第2537985号明細書
【特許文献4】欧州特許第0903389号明細書
【特許文献5】国際公開第02/074870号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、硬化性ポリマー及びフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む汚損防止組成物であって、前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーが、
(a)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化1】
(式中、
複数のフッ素化部分が存在するならば、前記フッ素化部分は同じ又は異なっていてもよく、
pは独立して0又は1であってよく、
mは独立して、0〜6の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H;F;Cl;Br;場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基;又は、場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状のアルキルオキシアルカン基であってよい)
及び
(b)下記式の、平均して4個〜100個のオキシアルキレン部分:
【化2】
(式中、
複数のオキシアルキレン部分が存在するならば、前記オキシアルキレン部分は同じ又は異なっていてもよく、
nは独立して、0〜4の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C16アルキル基であってよい)
を含む汚損防止組成物を提供する。
【0010】
本発明の汚損防止組成物は、他の公知であり、また、開示された殺生物性でない汚損防止組成物よりも優れた汚損耐性特性及び汚れ剥離特性を有することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
硬化性ポリマー:
本発明の汚損防止組成物は硬化性ポリマーを含む。1つの実施形態において、硬化性ポリマーは、ポリペルフルオロポリエーテル部分が存在しない。
【0012】
硬化性(の)とは、ポリマー上に位置する官能基及び/又は(架橋する)架橋剤に位置する官能基との間での化学反応の結果として被覆を形成するために強くなること又は硬くなることが、溶媒蒸発によって、又は、他の物理的手段によって可能であるポリマーが意味される。硬化性ポリマーは熱可塑性ポリマー又は熱硬化ポリマーである場合がある。
【0013】
1つの実施形態において、硬化性ポリマーは、硬化したとき、「エラストマー被覆」を形成する。
【0014】
「エラストマー被覆」とは、塑性流動をほとんど示さず、かつ、伸長力からの迅速かつほぼ完全な回復を示すゴム様被覆が意味される。ASTM D638−10に従ってZwick引張試験機及びレーザー伸び計を使用して室温(25℃)で試験されるとき、エラストマー被覆は25%伸ばすことができ(歪み速度、30mm/分)、かつ、25%伸ばされ、5分間保持され、その後、解放された後では、解放後5分以内にその元の長さの10%以内に縮むことができる。この方法における試験のための無負荷フィルムは、ASTM D2370−98のセクション8.2.2に示される手順によって準備される90×15×0.5mmのサンプル寸法を有しなければならない。
【0015】
1つの実施形態において、硬化性ポリマーはオルガノシロキサン含有ポリマーである。オルガノシロキサン含有ポリマーは下記一般式の繰り返しユニットを含む場合がある:
【化3】
式中、R及びR10は独立して、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基及びビニル基から選択される。R及びR10は独立して、C〜C16アルキルから選択されるアルキル、フェニル、C〜C16アルキルフェニル又はC〜C16アルキレンから選択されることが好ましい。より好ましくは、R及びR10は独立して、メチル及びフェニルから選択される。別の好ましいオルガノシロキサン含有ポリマーが、R及びR10がメチルであるポリマーである。
【0016】
オルガノシロキサン含有ポリマーは、1つ又は複数の反応性官能基、より好ましくは2つ以上の反応性官能基(例えば、シラノール、ヒドロキシル、アルコキシ、アセトキシ、カルボキシル、ヒドロキシシリル、アルコキシシリル、アミン、エポキシ、ビニル、アクリル、メタクリル、イソシアナート、チオール、カルボン酸、カルボン酸エステル、ウレタン、エステル又はオキシムなどの官能基)を有する場合がある。
【0017】
1つの実施形態において、硬化性ポリマーは、テトラエチルオルトシリカート及び縮合硬化触媒(例えば、ジブチルスズジラウラート又はジオクチルスズジラウラートなど)との架橋によって硬化する縮合硬化性ポリジメチルシロキサン(ジヒドロキシ官能性)である場合がある。このポリジメチルシロアクスン(polydimethylsiloaxne)は、コーン・プレート型粘度計を使用してASTM D4287に従って測定される場合、粘度を25℃において10mPa.s〜1,000,000mPa.sの間に有することができる。
【0018】
硬化性ポリマーは、骨格に炭素を実質的に含まないシロキサン基を含有する場合がある(例えば、ポリジメチルシロキサン)(この場合、炭素を実質的に含まないは、1wt.%未満の炭素が存在することを意味する)。他の好適なポリマーが、国際公開第99/33927号に開示されるようなポリマー、特に、12頁23行〜31行に開示されるポリマー、すなわち、オルガノハイドロジェン(organohydrogen)ポリシロキサン又はポリジオルガノシロキサンである。ポリシロキサンは、例えば、ジオルガノシロキサンユニットと、オルガノハイドロジェンシロキサンユニット及び/又は他のジオルガノシロキサンユニットとのコポリマー、或いは、オルガノハイドロジェンシロキサンユニット又はジオルガノシロキサンユニットのホモポリマーを含む場合がある。
【0019】
ヒドロシリル化反応によって架橋されることが可能であるポリシロキサンもまた使用することができる。そのようなポリマーは「ヒドリドシリコーン(hydride silicones)」として公知であり、例えば、欧州特許第874032−A2号において3頁に開示されており、すなわち、式R’−(SiOR’m−SiR’のポリジオルガノシロキサンであり、但し、式において、それぞれのR’は独立して、炭化水素基又はフッ素化炭化水素基(この場合、分子あたり少なくとも2つのR’基が不飽和である)、又は、水素(この場合、分子あたり少なくとも2つのR’基が水素である)であり、かつ、mが、約10〜1,500の範囲における平均値を有する。上記式のポリジオルガノシロキサンに類似する環状ポリジオルガノシロキサンもまた用いられる場合がある。ヒドリドシリコーンは好ましくは、ヒドロゲンポリジメチルシロキサンである。
【0020】
ヒドリドシリコーンについての好ましい数平均分子量範囲が約1,000〜28,000の範囲にあり、これは、約13〜380の範囲におけるmの値に対応する。
【0021】
別の実施形態において、硬化性ポリマーは、異なる化学構造及び粘度の2つ以上のオルガノシロキサンを含む場合がある。
【0022】
代替において、硬化性ポリマーは、国際公開第2008/132196号に記載されるようなポリマーである場合があり、この場合、このポリマーはPS−(A−PO−A−PS)の形態のポリオルガノシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマーであり、但し、式において、PSはポリオルガノシロキサンブロックを表し、POはポリオキシアルキレンブロックを表し、Aは二価成分を表し、nは少なくとも1の値を有し、例えば、10〜250の値を有する。国際公開第2008/132196号に記載されるポリマーは、触媒の存在下又は非存在下で自己縮合及び架橋することがある2つ又は3つの反応基Xを分子あたりポリオルガノシロキサンブロックに有しており、これらの反応基は必要な場合には、前記の基Xとの反応性を有する2つ以上の基Yを含有する別のオルガノシリコン架橋剤と架橋させることができる。他の好適なポリマーが、国際公開第2013/000478号及び国際公開第2013/000479号において議論されるポリマーである。
【0023】
別の実施形態において、硬化性ポリマーは、1つ又は複数のシロキサン−アクリル・ハイブリッドポリマーである場合がある。このシロキサン−アクリル・ハイブリッドポリマーは、ペルフルオロポリエーテル部分が存在しない。好ましくは、シロキサン−アクリル・ハイブリッドポリマーは10wt.%未満のフッ素を含有し、より好ましくは1wt.%未満のフッ素を含有する。最も好ましいものが、検出可能な量のフッ素を全く含有しない硬化性ポリマーである。
【0024】
フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマー:
本発明の汚損防止組成物は、下記の(a)及び(b)を含むフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む:
(a)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化4】
(式中、
複数のフッ素化部分が存在するならば、前記フッ素化部分は同じ又は異なっていてもよく、
pは独立して0又は1であってよく、
mは独立して、0〜6の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H;F;Cl;Br;場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;又は、場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキルオキシアルカン基であってよい)
及び
(b)下記式の、平均して4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分:
【化5】
(式中、
複数のオキシアルキレン部分が存在するならば、前記オキシアルキレン部分は同じ又は異なっていてもよく、
nは独立して、0〜4の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C16アルキル基であってよい)。
【0025】
あらゆる疑念を避けるために、定義により、「フッ素化部分」は、少なくとも1つのフッ素原子を含有しなければならず、すなわち、フッ素化部分におけるR、R、R及びRのうちの少なくとも1つがフッ素(F)原子を含まなければならない。
【0026】
疑念を避けるために、用語「フッ素化部分」(「fluorinated moiety」及び「fluorinated moieties」)及び用語「オキシアルキレン部分」(「oxyalkylene moiety」及び「oxyalkylene moieties」)は、上記で定義されるような、また、本明細書中においてさらに定義されるような構造を有するとして理解されなければならない。
【0027】
ポリマー/オリゴマーあたりのフッ素化部分及びオキシアルキレン部分の数の定量的決定が、例えば、Macromolecules 1995、Vol 28、No 21、pages 7271-7275において概略されるように、従来のNMR分析(19F−NMR、H−NMR及び13C−NMR)によって求められる場合がある。
【0028】
好ましくは、平均して4.0個〜20.0個のオキシアルキレン部分が、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーには存在する。
【0029】
好ましくは、オキシアルキレン部分はオキシエチレン部分である。
【0030】
、R、R及びRは独立して、H;F;Cl;Br;場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基;又は、場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状のアルキルオキシアルカン基であってよい。
Fにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基の例示的例には、CF、−CFCF、−CFCFCF及び−CFCFCFCFが含まれる。
【0031】
場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状アルキルオキシアルカン基の例示的例には、−CHOCHCF又は−CHOCHCFCFが含まれる。
例えば、R、R、R及びRが独立して、F、−CF3、−CHOCHCF又は−CHOCHCFCFのいずれか1つ又は複数である場合があり、好ましくはF及び/又は−CFである場合がある。
【0032】
好ましくは、R、R、R及びRは独立して、H、又は、−CH、−CHCHであり、より好ましくは、R、R、R及びRはHである。
【0033】
フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの末端におけるフッ素化部分及び/又はオキシアルキレン部分は、水素、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C12アルキル基(例えば、メチル基など)、フェニル基又はアシル基(例えば、エタノイル基など)で終端されている場合がある。フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの末端に位置するフッ素化部分及びオキシアルキレン部分は好ましくは、水素、又は、アルキル基、例えば、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C12アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基であり、より好ましくは、H、又は、−CH(メチル基)、フェニル基若しくはアシル基(例えば、エタノイル基など)で終端されている。他の随意的なアシル基には、メタノイル、エタノイル、プロパノイル、ベンゾイル又はプロペノイルが含まれる。フッ素化部分及び/又はオキシアルキレン部分の末端となることがあるさらなる基には、カルボキシル、アミン、アミド、ホスファート、エポキシ、ビニル、アクリル、メタクリル、イソシアナート、チオール、カルボン酸、カルボン酸エステル、ウレタン、エステル若しくはオキシムの官能基、又は、フッ素化部分(例えば、−CFなど)が含まれる。
水素又はアルキル基で終端されたオキシアルキレン部分は、本明細書中では水素終端オキシアルキレン部分又はアルキル終端オキシアルキレン部分として示される場合がある。水素又はアルキル基で終端されたフッ素化部分は、本明細書中では水素終端フッ素化部分又はアルキル終端フッ素化部分として示される場合がある。
【0034】
一例として、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは下記の成分を含む場合がある:
(ai)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化6】
及び/又は
(aii)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化7】
並びに
(b)下記式の、平均してポリマー又はオリゴマーあたり4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分:
【化8】
【0035】
別の一例として、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは下記の成分を含む場合がある:
(ai)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化9】
及び/又は
(aii)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化10】
並びに
(b)下記式の、平均してポリマー又はオリゴマーあたり4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分:
【化11】
【0036】
別の一例として、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは下記の成分を含む場合がある:
(ai)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化12】
及び/又は
(aii)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化13】
並びに
(b)下記式の、平均してポリマー又はオリゴマーあたり4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分:
【化14】
【0037】
フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは数平均分子量(Mn)を400〜40,000の範囲に有する。より好ましくは、平均分子量(Mn)は750〜10,000の範囲にある。
数平均分子量は、S. Turri et al., Macromolecules, 1995, 28, 7271-7275、及び、S. Turri et al., Macromol. Chem. Phys., 198, 3215-3228 (1997)に従ってフッ素−19NMR分析によって求められる。
【0038】
フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは液体又は固体であることが可能である。好ましくは、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマーは、コーン・プレート型粘度計を使用してASTM D4287に従って測定される場合、粘度を25℃において10mPa.s〜1,000,000mPa.sの間に有する液体であり、好ましくは、粘度を25℃において50mPa.s〜100,000mPa.sの間に有する液体である。
【0039】
オキシアルキレン部分及びフッ素化部分は、ポリマー/オリゴマー骨格の一部として、又は、ポリマー/オリゴマー骨格から張り出ている基として位置する場合がある。
【0040】
好ましい実施形態において、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは、1つ又は複数のフッ素化部分のブロックと、1つ又は複数のオキシアルキレン部分のブロックとから構成される鎖(但し、これらのブロックは、本質的には直鎖状の様式で、例えば、交互又はランダムに連結される)を有する本質的には直鎖状のコポリマーとして定義される場合がある。好ましくは、オキシアルキレン部分のブロックは互いに独立して、平均してポリマー又はオリゴマーあたり2.0個〜50.0個のオキシアルキレン部分を含有し、より好ましくは、平均してポリマー又はオリゴマーあたり2.0個〜10.0個のオキシアルキレン部分を含有する。
【0041】
例えば、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは好ましくは、OA−(F−OA)の形態のものである。但し、式において、OAは1つ又は複数のオキシアルキレン部分のブロックであり、かつ、Fは1つ又は複数のフッ素化部分のブロックである。nは整数であり、好ましくは1である。ポリマー/オリゴマーの数平均分子量(Mn)は好ましくは、(上述のようにフッ素−19NMR分光法を使用して求められる場合)400〜40,000の範囲にある。フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーにおけるオキシアルキレン部分の平均数は4.0〜100.0である。好ましくは、nは1であり、かつ、オキシアルキレン部分の各ブロックにおけるオキシアルキレン部分の平均数は独立して、2.0〜50.0の範囲であり、より好ましくは2.0〜10.0の範囲である。好適には、OA部分は、水素又はアルキル基(例えば、C〜C12アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基)で終端されている。
【0042】
別の一例として、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーはF−(OA−F)の形態のものであり、但し、式において、OAは1つ又は複数のオキシアルキレン部分のブロックであり、かつ、Fは1つ又は複数のフッ素化部分のブロックである。nは整数であり、例えば、1などである。ポリマー/オリゴマーの数平均分子量(Mn)は好ましくは、(上述のようにフッ素−19NMR分光法を使用して求められる場合)400〜40,000の範囲にある。フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーにおけるオキシアルキレン部分の平均数は4.0〜100.0である。好ましくは、nは1であり、かつ、オキシアルキレン部分の各ブロックにおけるオキシアルキレン部分の平均数は独立して、2.0〜50.0の範囲であり、より好ましくは2.0〜10.0の範囲である。好適には、F部分は、水素又はアルキル基(例えば、C〜C12アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基)で終端されている。
【0043】
代替となる実施形態において、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは、1つ又は複数のオキシアルキレン部分のブロックが張り出ている1つ又は複数のフッ素化部分の骨格を有するポリマーである。
【0044】
さらなる実施形態において、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは、1つ又は複数のフッ素化部分の1つ又は複数のブロックが張り出ている、平均して4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分の骨格を有するポリマーである。
【0045】
代替において、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは上記実施形態のいずれかの組合せである場合がある。すなわち、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは、1つ又は複数のフッ素化部分のブロック並びに/又は1つ又は複数のオキシアルキレン部分のブロックから構成される鎖(但し、これらのブロックは、1つ又は複数のオキシアルキレン部分並びに/又は1つ又は複数のフッ素化部分のブロックが張り出ている本質的には直鎖状の様式で連結される)を有する本質的には直鎖状のコポリマーである場合がある。
【0046】
すべての実施形態において、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーあたりのオキシアルキレン部分の平均数は4.0〜100.0である。好ましくは、オキシアルキレン部分の各ブロックにおけるオキシアルキレン部分の平均数は2.0〜50.0の範囲であり、より好ましくは2.0〜10.0の範囲である。
【0047】
すべての実施形態において、好ましくは、ポリマー/オリゴマーの数平均分子量(Mn)は400〜40,000の範囲にある。
【0048】
フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの末端に位置するフッ素化部分及び/又はオキシアルキレン部分は好ましくは、水素又はアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)で終端されている。
【0049】
フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーにおけるオキシアルキレン部分は好ましくは、下記構造のオキシエチレン部分である:
【化15】
【0050】
平均して4.0個〜100.0個のオキシエチレン部分が、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーには存在する場合がある。好ましくは、オキシエチレン部分の各ブロックにおけるオキシエチレン部分の平均数は2.0〜50.0の範囲であり、より好ましくは2.0〜10.0の範囲である。
【0051】
好ましい実施形態において、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは、1つ又は複数のフッ素化部分のブロックと、1つ又は複数のオキシエチレン部分のブロックとから構成される鎖(但し、これらのブロックは、本質的には直鎖状の様式で、例えば、交互又はランダムに連結される)を有する本質的には直鎖状のコポリマーである。好ましくは、オキシエチレン部分のブロックは互いに独立して、平均して2.0個〜50.0個のオキシエチレン部分を含有し、より好ましくは2.0個〜10.0個のオキシエチレン部分を含有する。
例えば、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーはOE−(F−OE)の形態のオキシエチレン終端コポリマーであり、但し、式において、OEは1つ又は複数のオキシエチレン部分のブロックであり、かつ、Fは1つ又は複数のフッ素化部分のブロックである。nは整数であり、好ましくは1である。ポリマー/オリゴマーの数平均分子量(Mn)は好ましくは、400〜40,000の範囲にある。フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーあたりのオキシエチレン部分の平均数は4.0〜100.0の範囲であり、好ましくは4.0〜20.0の範囲である。好ましくは、nは1であり、かつ、オキシエチレン部分の各ブロックにおけるオキシエチレン部分の平均数は2.0〜50.0の範囲であり、より好ましくは2.0〜10.0の範囲である。
好適には、OE部分は、水素又はアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)で終端されている。
【0052】
1つの実施形態において、本発明の汚損防止組成物は、1つ又は複数又は2つ以上のフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む場合がある。
【0053】
別の実施形態において、本発明の汚損防止組成物は、国際公開第02/074870号に開示されるような1つ又は複数又は2つ以上の液体のフッ素化アルキル含有又はフッ素化アルコキシ含有のポリマー又はオリゴマーを含む場合がある。
【0054】
本発明の汚損防止組成物において使用することができるフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの例には、下記のものがある:Fluorolink(登録商標)E10−6、Fluorolink(登録商標)5144X及びFluorolink(登録商標)5147X(Solvay Speciality Polymers)、並びに、PolyFox(商標)PF−651及びPolyfox(商標)PF−652(Omnova Solutions Inc)。好適なフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの他の例が国際公開第2004/035656号及び欧州特許第1553123号に開示される。
【0055】
フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーは硬化性ポリマーに対して化学的反応性がなく、また、どのような架橋反応にも関与しないことが現時点では理解されている。
【0056】
フィラー:
本発明の汚損防止組成物はまた、フィラーを含む場合がある。本発明による被覆組成物において使用することができるフィラーの例が、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ又はケイ酸塩(例えば、タルク、長石及び白土など)(熱分解法シリカ、ベントナイト及び他の粘土を含む)、及び、固体シリコーン樹脂(これは一般には、縮合した分岐ポリシロキサンである)、例えば、式SiO4/2のQユニットと、式RSiO1/2のMユニットとを含むシリコーン樹脂(式中、R置換基は、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、Mユニット対Qユニットの比率が0.4:1から1:1までの範囲にある)などである。一部のフィラー(例えば、ヒュームドシリカなど)は、被覆組成物に対するチキソトロピー効果を有する場合がある。フィラーの割合は、被覆組成物の総重量に基づいて重量比で0重量%〜25重量%の範囲にある場合があり、好ましくは0重量%〜10重量%の範囲にある場合があり、より好ましくは0重量%〜5重量%の範囲にある場合がある。
【0057】
顔料:
本発明の汚損防止組成物はまた、顔料を含む場合がある。
顔料の例には、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、赤色モリブデン酸塩、黄色モリブデン酸塩、硫化亜鉛、酸化アンチモン、スルホケイ酸ナトリウムアルミニウム、キナクリドン類、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、インダントロンブルー、酸化コバルトアルミニウム、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス−アセトアセト−トリジオール(bis-acetoaceto-tolidiole)、ベンゾイミダゾロン、キナフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン及びキノフタロンイエロー、金属フレーク材料(例えば、アルミニウムフレーク)、或いは、他のいわゆるバリア顔料又は防食性顔料(例えば、亜鉛末又は亜鉛合金など)、或いは、他のいわゆる滑剤顔料(例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン又は窒化ホウ素など)が含まれる。
【0058】
好ましい顔料が、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、スルホケイ酸ナトリウムアルミニウム及び二酸化チタンである。
【0059】
顔料の割合は、被覆組成物の総重量に基づいて重量比で0重量%〜25重量%の範囲にある場合があり、好ましくは0重量%〜15重量%の範囲にある場合がある。
【0060】
触媒:
本発明の汚損防止組成物はまた、触媒を含む場合がある。使用することができる触媒の例には、遷移金属化合物、様々な金属の金属塩及び有機金属錯体、例えば、スズ、鉄、鉛、バリウム、コバルト、亜鉛、アンチモン、カドミウム、マンガン、クロム、ニッケル、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム及びジルコニウムなどの金属塩及び有機金属錯体が含まれる。塩は好ましくは、長鎖カルボン酸の塩並びに/又はキレート又は有機金属塩である。好適な触媒の例には、例えば、下記のものが含まれる:ジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジオクトアート、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズ2−エチルヘキサノアート、ジブチルスズジネオデカノアート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジベンゾアート、ジブチルスズアセトアセトナート、ジブチルスズアセチルアセトナート、ジブチルスズアルキルアセトアセトナート、ジオクチルスズジラウラート、ジオクチルスズジオクトアート、ジオクチルスズジアセタート、ジオクチルスズ2−エチルヘキサノアート、ジオクチルスズジネオデカノアート、ジオクチルスズジメトキシド、ジオクチルスズジベンゾアート、ジオクチルスズアセトアセトナート、ジオクチルスズアセチルアセトナート、ジオクチルスズアルキルアセトアセトナート、ジメチルスズジブチラート、ジメチルスズビスネオデカノアート、ジメチルスズジネオデカノアート、ナフテン酸スズ、酪酸スズ、オレイン酸スズ、カプリル酸スズ、オクタン酸スズ、ステアリン酸スズ、オクト酸スズ(tin octoate)、ステアリン酸鉄、2−エチルヘキサン酸鉄、オクト酸鉛(lead octoate)、2−エチルオクト酸鉛(lead 2-ethyloctoate)、2−エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、金属トリフラート、トリエチルスズタルタラート、オクト酸第一スズ(stannous octoate)、カルボメトキシフェニルスズトリスベラート、イソブチルスズトリセロアート。
【0061】
好適な触媒のさらなる例には、有機ビスマス化合物、例えば、2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス及びネオデカン酸ビスマスなどが含まれる。
【0062】
好適な触媒のさらなる例には、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機ハフニウム化合物、並びに、チタナート及びジルコナートエステル、例えば、ナフテン酸チタン、ナフテン酸ジルコニウム、テトラブチルチタナート、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタナート、トリエタノールアミンチタナート、テトラ(イソプロペニルオキシ)チタナート、チタンテトラブタノラート、チタンテトラプロパノラート、チタンテトライソプロパノラート、テトラブチルジルコナート、テトラキス(2−エチルヘキシル)ジルコナート、トリエタノールアミンジルコナート、テトラ(イソプロペニルオキシ)ジルコナート、ジルコニウムテトラブタノラート、ジルコニウムテトラプロパノラート、ジルコニウムテトライソプロパノラート、並びに、キレート化チタナート(例えば、ジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタナート、ジイソプロピルビス(エチルアセトアセトニル)チタナート及びジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセタート)など)などが含まれる。
【0063】
好適な触媒のさらなる例には、アミン(例えば、ラウリルアミンなど)、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン及び1,4−エチレンピペラジンなど)、又は、第四級アンモニウム化合物(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなど)が含まれる。
【0064】
好適な触媒のさらなる例には、グアニジン系触媒、例えば、1ブチル−2,3−ジシクロヘキシル−1−メチルグアニジンなどが含まれる。
【0065】
好適な触媒のさらなる例には、有機ホスファート、例えば、リン酸水素ビス(2−エチル−ヘキシル)、(トリメチルシリル)オクチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ビス(トリメチルシリル)オクチルホスファート及びホスホン酸水素(2−エチル−ヘキシル)などが含まれる。
【0066】
触媒は代替において、ルイス酸触媒であってよく、例えば、BF、B(C、FeCl、AlCl、ZnCl、ZnBr、或いは、一価芳香族成分が好ましくは、少なくとも1つの電子吸引性の元素若しくは基(例えば、−CF、−NO又は−CNなど)を有するか、又は、少なくとも2つのハロゲン原子により置換されているホウ素化合物、アルミニウム化合物、ガリウム化合物、インジウム化合物又はタリウム化合物であることが可能である。
【0067】
さらに、触媒は、酸基に対してα位にある炭素原子における少なくとも1個のハロゲン置換基、及び/又は、酸基に対してβ位にある炭素原子における少なくとも1個のハロゲン置換基を有するハロゲン化有機酸、或いは、そのような酸を縮合反応の条件のもとで形成するために加水分解可能である誘導体を含む場合がある。代替において、触媒は、下記のいずれかに記載されるようなものである場合がある:
欧州特許第1254192号、国際公開第2001/49774、米国特許出願公開第2004/006190号、国際公開第2007/122325A1号、国際公開第2008/132196号、国際公開第2008/055985A1号、国際公開第2009/106717A2号、国際公開第2009/106718A2号、国際公開第2009/106719A1号、国際公開第2009/106720A1号、国際公開第2009/106721A1号、国際公開第2009/106722A1号、国際公開第2009/106723A1号、国際公開第2009/106724A1号、国際公開第2009/103894A1号、国際公開第2009/118307A1号、国際公開第2009/133084A1号、国際公開第2009/133085A1号、国際公開第2009/156608A2号、国際公開第2009/156609A2号、国際公開第2012/130861A1号及び国際公開第2013/013111号。
【0068】
好ましくは、触媒は、被覆組成物の総重量に基づいて0.01重量%〜5重量%の量で存在する。
【0069】
架橋剤:
本発明の汚損防止組成物はまた、架橋剤を含む場合がある。
硬化性ポリマーが2つの反応性官能基(例えば、シラノール基)を含有するだけであるならば、さらなる反応剤を架橋剤として使用することが必要である場合がある。
【0070】
必要に応じて存在する架橋剤はアルコキシシランであることが可能である:例えば、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルオキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルオキシモ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、[(シクロヘキシルアミノ)メチル]トリエトキシシラン、N,N−ジブチルアミノメチルトリエトキシシラン又はビニルトリイソプロペノキシシラン、同様にまた、これらの加水分解−縮合生成物などであることが可能である。代替において、架橋剤は、国際公開第99/33927に開示されるようなものである場合がある。
【0071】
好ましい架橋剤がオルトシリカートであり、例えば、架橋剤はテトラエチルオルトシリカートである場合がある。
【0072】
好ましくは、架橋剤は、被覆組成物の総重量に基づいて0重量%〜10重量%の量で存在する。
【0073】
異なる架橋剤の混合物もまた使用することができる。
【0074】
溶媒:
本発明の汚損防止組成物はまた、溶媒を含む場合がある。
好適な溶媒には、脂肪族、脂環式及び芳香族の炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、並びに、これらの混合物が含まれる。好適な溶媒の例が、ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン及びナフサ溶媒、エステル(例えば、メトキシプロピルアセタート、n−ブチルアセタート及び2−エトキシエチルアセタートなど)、オクタメチルトリシロキサン、及び、それらの混合物である。
【0075】
溶媒の使用を環境上の理由で最小限に抑えるために、用いられる塗布技術と適合し得るできる限り高濃度の溶液を使用することが好都合である。溶媒は、存在するならば、典型的には、被覆組成物の総重量に基づいて5重量%〜50重量%を構成する。固形物含有量がASTM法D2697に従って求められる場合がある。
【0076】
殺生物剤:
本発明の汚損耐性組成物の1つの利点が、被覆が、殺生物剤の使用を伴わない場合、優れた汚損防止特性を有することである。本発明の1つの実施形態において、被覆組成物は殺生物剤を含まないか、又は、殺生物剤を実質的に含まない。
【0077】
代替において、汚損防止成績をさらに改善するために、殺生物剤が被覆組成物に含まれる場合がある。従って、代替となる実施形態において、本発明の汚損防止組成物は1つ又は複数の殺生物剤を含む場合がある。
【0078】
そのような殺生物剤は、水生生物(例えば、海洋生物又は淡水生物など)のための無機系殺生物剤、有機金属系殺生物剤、金属有機系殺生物剤又は有機系殺生物剤の1つ又は複数である場合がある。無機系殺生物剤の例には、銅塩、例えば、酸化銅、チオシアン酸銅、青銅合金、炭酸銅、塩化銅、銅ニッケル合金など、及び、銀塩、例えば、塩化銀又は硝酸銀などが含まれる;有機金属系殺生物剤及び金属有機系殺生物剤には、亜鉛ピリチオン(2−ピリジンチオール−1−オキシドの亜鉛塩)、銅ピリチオン、ビス(N−シクロヘキシル−ジアゼニウムジオキシ)銅、亜鉛エチレン−ビス(ジチオカルバマート)(すなわち、ジネブ)、亜鉛ジメチルジチオカルバマート(ジラム)、及び、亜鉛塩と錯化されたマンガンエチレン−ビス(ジチオカルバマート)(すなわち、マンコゼブ)が含まれる;有機系殺生物剤には、ホルムアルデヒド、ドデシルグアニジン一塩酸塩、チアベンダゾール、N−トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、N−アリールマレイミド(例えば、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミドなど)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(ジウロン)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2−メチルチオ−4−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、3−ベンゾ[b]チエン−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン4−オキシド、4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル)−3(2H)−イソチアゾロン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、ジヨードメチル−p−トシルスルホン、カプシアシン(capsciacin)、N−シクロプロピル−N’−(1,1−ジメチルエチル)−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバマート、メデトミジン、1,4−ジチアアントラキノン−2,3−ジカルボニトリル(ジチアノン)、ボラン類(例えば、ピリジントリフェニルボランなど)、5位及び場合により1位において置換されている2−トリハロゲノメチル−3−ハロゲノ−4−シアノピロール誘導体(例えば、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール(トラロピリル)など)、及び、フラノン類(例えば、3−ブチル−5−(ジブロモメチリデン)−2(5H)−フラノンなど)、並びに、それらの混合物、大環状ラクトン、例えば、アベルメチン類(例えば、アベルメチンB1、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、アマメクチン及びセラメクチンなど)など、並びに、第四級アンモニウム塩(例えば、ジデシルジメチルアンモニウム塩化物及びアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩化物など)が含まれる。
【0079】
さらなる実施形態において、殺生物剤は、全体として又は部分的でのどちらでも封入されるか、吸着させられるか、又は、担体から結合させられる。
【0080】
汚損防止組成物が殺生物剤を含むならば、当該殺生物剤が、(当該殺生物剤が硬化前の被覆組成物に混合されたという意味で)硬化した被覆層の本体の中に存在することが本発明者らによって意味される。
【0081】
添加物:
必要に応じて、本発明の汚損防止組成物はまた、殺生物剤によらない汚損防止効果を有することが公知である下記のような他の添加剤物質を含む場合がある:例えば、
非反応性の有機ポリシロキサン;例えば、欧州特許0885938号及び国際公開第2011/076856に開示されるようなポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン又は親水性の修飾ポリシロキサン;国際公開第2008/132195に開示されるようなカルボキシル官能性有機シロキサン;PCT出願番号PCT/EP2012/065920に開示されるような石油オイル又はラノリン及びラノリン誘導体並びに他のステロール類及び/又はステロール誘導体、また、それらの組合せ。
【0082】
塗布:
被覆組成物は、通常の技術によって、例えば、はけ塗り、ローラー塗り又は噴霧(エアーレス型及びエアーアシスト型)などによって塗布することができる。基板への適切な接着を達成するためには、下塗りされた基板に汚損防止被覆組成物を塗布することが好ましい。下塗り剤は、従来のどのような下塗り剤/シーラー被覆システムも可能である。良好な結果が、アクリル系シロキシ官能ポリマー、溶媒、チオキソトープ剤、フィラー及び必要な場合には水分スカベンジャーを含む下塗り剤を使用したとき、特に接着に関して見出された。そのような下塗り剤が国際公開第99/33927に開示される。本発明による被覆組成物を、経年した汚損防止被覆層を含有する基板に塗布することもまた可能である。本発明による被覆組成物がそのような経年層に塗布される前には、この古い層は、どのような汚損であれ、汚損を除くために高圧水洗浄によって清浄化される。国際公開第99/33927に開示される下塗り剤を、経年した被覆層と本発明による被覆組成物との間におけるタイコートとして使用することができる。
【0083】
必要に応じて、下塗り剤は、国際公開第2010/18164に開示されるような接着促進剤を含む場合がある。
【0084】
必要に応じて、下塗り剤は、国際公開第2012/175459に開示されるような殺生物剤を含む場合がある。
【0085】
被覆が硬化させられた後で、被覆は直ちに浸けることができ、汚損防止及び汚れ剥離による即座の保護をもたらす。上記で示されたように、本発明による被覆組成物は、非常に良好な汚損防止特性及び汚れ剥離特性を有する。このことが、これらの被覆組成物を、海洋用途のための汚損防止被覆又は非汚損性被覆としての使用のために非常に好適なものにしている。被覆は、動的構造物及び静的構造物の両方のために使用することができ、例えば、船体、浮標、掘削用プラットフォーム、乾ドック設備、石油及び/又はガスの生産リグ、浮体式石油・ガス処理貯蔵積出設備、水産養殖用の設備、漁網及びケージ、エネルギー生成装置(例えば、洋上風力タービン並びに潮汐エネルギー装置及び風力エネルギー装置など)、動力設備及び発電所のための冷却水取水口、並びに、水及びタンクに沈められるパイプ、水の貯蔵及び輸送のために使用されるパイプ及び導管などのために使用することができる。被覆は、どのような基板であれ、これらの構造物のために使用される基板、例えば、金属、コンクリート、木材又は繊維強化プラスチックなどに塗布することができる。
【0086】
その他:
別の実施形態において、本発明は、本明細書中に記載されるような汚損防止組成物により被覆された基板又は構造物に関連する。
【0087】
本発明のさらなる実施形態が、水域環境における基板の汚損を阻止するための方法であって、汚損防止組成物を基板に塗布すること、汚損防止組成物を硬化させて、被覆を基板の表面に形成すること、及び、その後、被覆された基板を水域環境に設置することによる、方法に対するものである。疑念を避けるために、本発明の関連における水域環境は、海洋及び淡水の水生生物(例えば、珪藻類、粘質性バイオフィルム、緑藻類及び褐藻類、フジツボ類並びにイガイ類など)による汚損が生じる環境である。
【0088】
本発明のさらなる実施形態が、基板における汚損を水域環境において阻止するための、本明細書において記載及び特許請求されるような汚損防止組成物の使用に対するものである。
【0089】
本発明が、下記の実施例を参照することにより説明されるであろう。
【実施例】
【0090】
実施例1〜7:
7つの異なる被覆組成物を、表1に示される成分を混合することによって調製した。
【表1】
【0091】
実施例1〜4は比較用の実施例である。
実施例1の組成物は、フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含有しない。
実施例2及び実施例3の組成物はフッ素化ポリマー又はフッ素化オリゴマーを含んでおり、しかし、このフッ素化ポリマー又はフッ素化オリゴマーはオキシアルキレン部分を含有しない。これらの比較例は、国際公開第02/074870のフッ素化ポリマー又はフッ素化オリゴマーの代表的な例として含まれる。
実施例4の組成物はフッ素化ポリマー又はフッ素化オリゴマーを含んでおり、このフッ素化ポリマー又はフッ素化オリゴマーは、平均してポリマー/オリゴマーあたり3個のオキシエチレン部分を含有する。
【0092】
(1)Fluorolink(登録商標)D10−H(Solvay Speciality Polymers)。(オキシアルキレン部分を含有しない;25℃での粘度=108mPa.s)
(2)PolyFox(商標)AT−1035(Omnova Solutions Inc)。(オキシアルキレン部分を含有しない;25℃での粘度=13,674mPa.s)
(3)Fluorolink(登録商標)E10−H(Solvay Speciality Polymers)。(平均してポリマーあたり3個のオキシアルキレン部分を含有する。オキシエチレン部分がポリマーの末端に位置する;25℃での粘度=144mPa.s)
(4)Fluorolink(登録商標)E10−6(Solvay Speciality Polymers)。(平均してポリマーあたり9個のオキシエチレン部分を含有する。オキシエチレン部分がポリマーの末端に位置する;25℃での粘度=443mPa.s)
(5)Fluorolink(登録商標)5147X(Solvay Speciality Polymers)。(平均してポリマーあたり13個のオキシエチレン部分を含有する。オキシエチレン部分がポリマーの末端に位置する;25℃での粘度=629mPa.s)
(6)Polyfox(商標)PF−652(Omnova Solutions Inc)。(平均してポリマーあたり16個のオキシアルキレン部分を含有する。オキシエチレン部分がポリマーの末端に位置する;25℃での粘度=6,214mPa.s)
(7)Dow Corning(登録商標)3−0213ポリマー(Dow Corning)(25℃での粘度=3,678mPa.s)
(8)Aerosil(登録商標)R972(Evonik)
(9)Molsiv(商標)5A−AP(OMYA)
(10)Tioxide(登録商標)TR92(Huntsman)
(11)Bayferrox(登録商標)318M(Lanxess)
(12)Wacker(登録商標)TES40(Wacker−Chemie)
(13)キシレン(総量)
(14)Tib Kat(登録商標)216(Tib Chemicals)
(15)Camdate(商標)PLE(Camida)
【0093】
汚損耐性試験(1)−チャンギ(シンガポール)
実施例の被覆組成物を、好適なアンダーコート剤により下塗りされた木材基板にブラシによって塗布した。被覆された基板を、海洋性汚損が生じることが公知である水域環境において沈めた(チャンギ、シンガポール)。被覆された基板を44週間の浸漬の後で評価し、汚損範囲の程度を百分率での汚損範囲率として記録した。試験の結果が表2に示される。
【表2】
【0094】
44週間後、実施例5及び実施例6は、実施例1、実施例2及び実施例4よりも低い汚染範囲率を有していた。実施例5及び実施例6に対する汚損がより少ないことは、国際公開第02/074870に開示される組成物と比較される汚損防止性能における改善を示す。
【0095】
汚損耐性試験(2)−チャンギ(シンガポール)
別個の試験において、実施例の被覆組成物を、好適なアンダーコート剤により下塗りされた木材基板にブラシによって塗布した。被覆された基板を、海洋性汚損が生じることが公知である水域環境において沈めた(チャンギ、シンガポール)。被覆された基板を35週間の浸漬の後で評価し、汚損範囲の程度を百分率での汚損範囲率として記録した。試験の結果が表3に示される。
【表3】
【0096】
35週間後、実施例7は、実施例3及び実施例4よりも低い汚染範囲率を有していた。実施例7に対する汚損がより少ないことは、国際公開第02/074870に開示される組成物と比較される汚損防止性能における改善を示す。
【0097】
汚れ剥離試験(1)−再循環水チャンバー
実施例の被覆組成物を、好適なアンダーコート剤により下塗りされたガラス基板にブラシによって塗布した。被覆された基板を、水及び環境条件が制御され、その結果、海洋性汚損バイオフィルムを成長させることができる再循環水チャンバーにおいて沈めた。80日の期間の後、汚損された基板を水流タンクに置いた。タンクにおける水流の速度を0m/sから1.5m/sに増大させ、その後、2.6m/sに増大させた。被覆された基板の汚損範囲の程度を記録し、除かれた汚損の%を計算した。試験の結果が表4に示される。
【表4】
【0098】
流速が増大するにつれて、いくらかの汚損が除かれる。実施例1、実施例2及び実施例4から除かれるよりも多くの汚損が、実施例5及び実施例6から除かれる。実施例5及び実施例6についての除去がより大きいことは、国際公開第02/074870に開示される被覆と比較される汚れ剥離特性における改善を示す。
【0099】
汚れ剥離試験(2)−再循環水チャンバー
別個の試験において、実施例の被覆組成物を、好適なアンダーコート剤により下塗りされたガラス基板にブラシによって塗布した。被覆された基板を、水及び環境条件が制御され、その結果、海洋性汚損バイオフィルムを成長させることができる再循環水チャンバーにおいて沈めた。7日の期間の後、汚損された基板を水流タンクに置いた。タンクにおける水流の速度を0m/sから1.5m/sに増大させ、その後、2.6m/sに増大させた。被覆された基板の汚損範囲の程度を記録し、除かれた汚損の%を計算した。試験の結果が表5に示される。
【表5】
【0100】
流速が増大するにつれて、いくらかの汚損が除かれる。実施例3及び実施例4から除かれるよりも多くの汚損が、実施例7から除かれる。実施例7についての除去がより大きいことは、国際公開第02/074870号に開示される被覆と比較される汚れ剥離特性における改善を示す。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。

[1] 硬化性ポリマー及びフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーを含む汚損防止組成物であって、前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーが、
(a)下記式の1つ又は複数のフッ素化部分:
【化1】
(式中、
複数のフッ素化部分が存在するならば、前記フッ素化部分は同じ又は異なっていてもよく、
pは独立して0又は1であってよく、
mは独立して、0〜6の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H;F;Cl;Br;場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基;又は、場合によりFにより置換されている1個〜16個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状又は環状のアルキルオキシアルカン基であってよい)
及び
(b)下記式の、平均してポリマー又はオリゴマーあたり4.0個〜100.0個のオキシアルキレン部分:
【化2】
(式中、
複数のオキシアルキレン部分が存在するならば、前記オキシアルキレン部分は同じ又は異なっていてもよく、
nは独立して、0〜4の整数であってよく、かつ
、R、R及びRは独立して、H、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C16アルキル基であってよい)
を含む汚損防止組成物。
[2]
前記オキシアルキレン部分がオキシエチレン部分である、[1]に記載の汚損防止組成物。
[3]
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーがOA−(F−OA)(式中、OAは1つ又は複数のオキシアルキレン部分のブロックであり、かつ、Fは1つ又は複数のフッ素化部分のブロックであり、かつ、nは整数である)の形態のものである、[1]又は[2]に記載の汚損防止組成物。
[4]
nが1であり、かつ、オキシアルキレン部分の各ブロックにおけるオキシアルキレン部分の平均数が独立して、2.0〜50.0の範囲であり、より好ましくは2.0〜10.0の範囲である、[3]に記載の汚損防止組成物。
[5]
前記ポリマー/オリゴマーの数平均分子量(Mn)が400〜40,000の範囲にある、[1]から[4]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[6]
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーの末端における前記フッ素化部分及び/又はオキシアルキレン部分は、水素、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のC〜C12アルキル基(例えば、メチル基など)、フェニル基又はアシル基(例えば、エタノイル基など)で終端されている、[1]から[5]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[7]
、R、R及びRが独立して、F、−CF3、−CHOCHCF又は−CHOCHCFCFのいずれか1つ又は複数であり、好ましくはF及び/又は−CFである、[1]から[6]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[8]
、R6、及びRが独立して、H、−CH又は−CHCHであり、好ましくは、R、R6、及びRがHである、[1]から[7]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[9]
前記フッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はフッ素化オキシアルキレン含有オリゴマーが液体であり、好ましくは、粘度が25℃において10mPa.s〜1,000,000mPa.sである液体である、[1]から[8]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[10]
前記硬化性ポリマーが、下記式の繰り返しユニット:
【化3】
(式中、R及びR10は独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル又はビニル基から選択される)を含むオルガノシロキサン含有ポリマー又はその混合物である、[1]から[9]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[11]
前記硬化性ポリマーはペルフルオロポリエーテル部分が存在しない、[1]から[10]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[12]
及びR10が独立して、メチル及びフェニルから選択され、好ましくは、R及びR10の両方がメチルである、[11]に記載の汚損防止組成物。
[13]
さらに殺生物剤を含む、[1]から[12]のいずれかに記載の汚損防止組成物。
[14]
水域環境における基板の汚損を阻止するための方法であって、[1]〜[13]のいずれか一項に記載される汚損防止組成物を前記基板に塗布すること、前記汚損防止組成物を硬化させて、被覆を前記基板の表面に形成すること、及び、その後、前記被覆された基板を前記水域環境に設置することによる、方法。
[15]
[1]から[13]のいずれかに規定されるような汚損防止組成物により被覆された基板。