(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6074081
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】発電システム及び発電システム用弾性エネルギー蓄積装置
(51)【国際特許分類】
F03G 1/00 20060101AFI20170123BHJP
F03G 1/02 20060101ALI20170123BHJP
F03D 9/10 20160101ALI20170123BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20170123BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
F03G1/00 A
F03G1/02
F03D9/10
F03D80/00
H02J15/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-24348(P2016-24348)
(22)【出願日】2016年2月12日
【審査請求日】2016年8月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712008002
【氏名又は名称】西浦 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100169443
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】西浦 信一
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−056451(JP,A)
【文献】
特開2008−223747(JP,A)
【文献】
特開昭57−016270(JP,A)
【文献】
特開平10−131841(JP,A)
【文献】
特開2004−260896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/10
F03G 1/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生する蓄積装置と、
前記第2動力を電力に変換する発電装置と、
を備え、
前記蓄積装置は、帯状の部材により構成され半径方向に弾性変形可能な環体を含む弾性体を備え、前記第1動力により前記弾性体を弾性変形させることで弾性エネルギーを蓄え、前記弾性体の弾性変形の解放時において弾性エネルギーを前記第2動力に変換する、
発電システム。
【請求項2】
前記蓄積装置は、
レールと、
前記レールに沿って外周面を互いに接触させて配列された複数の前記環体と、
各前記環体を前記レールに対してスライド自在に取り付けるスライダと、
各前記環体のうち、一方の端の前記環体に接触するストッパと、
をさらに備え、
前記第1動力により各前記環体を前記ストッパに向けて圧縮させるか、或いは前記ストッパから離れる方向に伸張させることで、各前記環体が弾性変形する、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
エネルギーを受容して前記第1動力を発生する受容装置を更に備え、
前記受容装置と前記蓄積装置とを接続する第1シャフトと、
前記蓄積装置と前記発電装置とを接続する第2シャフトと、
をさらに備え、
前記第1動力は、前記第1シャフトの回転運動により前記蓄積装置に伝達され、
前記第2動力は、前記第2シャフトの回転運動により前記発電装置に伝達される、
請求項1又は2に記載の発電システム。
【請求項4】
エネルギーを受容して第1動力を発生する受容装置と、
前記第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生する蓄積装置と、
前記第2動力を電力に変換する発電装置と、
前記受容装置と前記蓄積装置とを接続し、前記受容装置が発生した前記第1動力を回転運動により前記蓄積装置に伝達する第1シャフトと、
前記蓄積装置と前記発電装置とを接続し、前記蓄積装置が発生した前記第2動力を回転運動により前記発電装置に伝達する第2シャフトと、
前記第1シャフトに設けられ、前記第1シャフトの回転速度を変速する変速機と、
を備え、
前記蓄積装置は、弾性体を備え、前記第1動力により前記弾性体を弾性変形させることで弾性エネルギーを蓄え、前記弾性体の弾性変形の解放時において弾性エネルギーを前記第2動力に変換し、
前記変速機による変速後の前記第1シャフトのトルクは、前記発電装置による発電に必要な前記第2シャフトのトルクよりも小さい、
発電システム。
【請求項5】
前記蓄積装置は、
第3シャフトと、
前記第3シャフトを軸として回転するカムと、
前記第1シャフトの回転運動を前記第3シャフトに伝達する第1ギア列と、
前記第3シャフトの回転運動を前記第2シャフトに伝達する第2ギア列と、
をさらに備え、
前記第1動力による前記第1シャフト、前記第1ギア列、及び前記第3シャフトの回転運動により前記カムが前記弾性体を弾性変形させ、
前記弾性体の弾性変形の解消に伴う前記カム、前記第3シャフト、及び前記第2ギア列の回転運動により前記第2シャフトを回転させる前記第2動力が発生する、
請求項4に記載の発電システム。
【請求項6】
前記蓄積装置は、
前記弾性体に接続されたラックと、
前記第1シャフトに接続された第1ギア及び前記第2シャフトに接続された第2ギアを含み、前記ラックに噛み合ったギア列と、
をさらに備え、
前記第1動力により前記第1ギアが回転して前記ラックが第1方向に移動するとともに前記弾性体が弾性変形し、前記弾性体の弾性変形の解放時に前記ラックが前記第1方向と反対の第2方向に移動するとともに前記第2ギアが回転して前記第2動力が発生する、
請求項4に記載の発電システム。
【請求項7】
前記蓄積装置は、前記第1動力による前記弾性体の弾性変形を許容する第1状態と、前記弾性体の弾性変形を解放する第2状態と、を切り換える切換機構をさらに備える、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項8】
入力された第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生し、この第2動力を電力に変換する発電装置に対して動力伝達可能に接続される発電システム用弾性エネルギー蓄積装置であって、
帯状の部材により構成され半径方向に弾性変形可能な環体を含む弾性体を備え、
前記第1動力により前記弾性体を弾性変形させることで弾性エネルギーを蓄え、前記弾性体の弾性変形の解放時において弾性エネルギーを前記第2動力に変換する、
発電システム用弾性エネルギー蓄積装置。
【請求項9】
レールと、
前記レールに沿って外周面を互いに接触させて配列された複数の前記環体と、
各前記環体を前記レールに対してスライド自在に取り付けるスライダと、
各前記環体のうち、一方の端の前記環体に接触するストッパと、
をさらに備え、
前記第1動力により各前記環体を前記ストッパに向けて圧縮させるか、或いは前記ストッパから離れる方向に伸張させることで、各前記環体が弾性変形する、
請求項8に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置。
【請求項10】
エネルギーを受容して前記第1動力を発生する受容装置からの前記第1動力を伝達する第1シャフト、及び、前記第2動力を前記発電装置に伝達する第2シャフトの各々が接続された、
請求項8又は9に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置。
【請求項11】
前記第1シャフトのトルクは、前記発電装置による発電に必要な前記第2シャフトのトルクよりも小さい、
請求項10に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置。
【請求項12】
前記弾性体に接続されたラックと、
前記第1シャフトに接続された第1ギア及び前記第2シャフトに接続された第2ギアを含み、前記ラックに噛み合ったギア列と、
をさらに備え、
前記第1動力により前記第1ギアが回転して前記ラックが第1方向に移動するとともに前記弾性体が弾性変形し、前記弾性体の弾性変形の解放時に前記ラックが前記第1方向と反対の第2方向に移動するとともに前記第2ギアが回転して前記第2動力が発生する、
請求項10又は11に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置。
【請求項13】
入力された第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生し、この第2動力を電力に変換する発電装置に対して動力伝達可能に接続される発電システム用弾性エネルギー蓄積装置であって、
エネルギーを受容して前記第1動力を発生する受容装置からの前記第1動力を伝達する第1シャフト、及び、前記第2動力を前記発電装置に伝達する第2シャフトの各々が接続され、
弾性体と、
第3シャフトと、
前記第3シャフトを軸として回転するカムと、
前記第1シャフトの回転運動を前記第3シャフトに伝達する第1ギア列と、
前記第3シャフトの回転運動を前記第2シャフトに伝達する第2ギア列と、
を備え、
前記第1動力による前記第1シャフト、前記第1ギア列、及び前記第3シャフトの回転運動により前記カムが前記弾性体を弾性変形させ、
前記弾性体の弾性変形の解消に伴う前記カム、前記第3シャフト、及び前記第2ギア列の回転運動により前記第2シャフトを回転させる前記第2動力が発生する、
発電システム用弾性エネルギー蓄積装置。
【請求項14】
前記第1動力による前記弾性体の弾性変形を許容する第1状態と、前記弾性体の弾性変形を解放する第2状態と、を切り換える切換機構をさらに備える、
請求項8乃至13のうちいずれか1項に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生エネルギーに基づいて発電する発電システム及び再生エネルギーに基づいて弾性エネルギーを蓄える蓄積装置に係り、特に、自然界に発生する風、海水の干満、波、川の流れなど、流体の流動や、その他の再生エネルギーを利用して発電する発電システム、好適には、平均的に低い再生エネルギー、そしてエネルギーの継続性に難のある環境での再生エネルギーを利用する発電システム、及びこれらの再生エネルギーを弾性エネルギーとして一旦蓄積し、この弾性エネルギーを発電に適したエネルギーとして発電機に送る発電システム用弾性エネルギー蓄積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生エネルギーを利用する発電システムは、高いエネルギーができるだけ継続的に得られる環境で使用されているのが一般的である。たとえば、風力発電においては、強い風が期待できる海岸や沖合、あるいは山頂、山腹などへの設置が主流である。さらに、そのエネルギー受容機構(ブレード)は、数十メートルの高所に配置される。また、波力発電においては、実用例は、はなはだ少ないが、これまで開発が試みられた例をみると、波高の高い沖合での設置が主流となっている。そして、これらは、ほとんどが大型の設備である。
再生エネルギーの地産地消がいわれて久しい。このため、民生品として実用的な、中型、小型のもので、かつ、一般的な環境である市街地での風力発電や入り江での波力発電などの実現が期待されている。しかし、現状は、きわめて補助的なものに限られ、代替の電力発生機としての能力を持つものはまだ現れていない。その最大の理由は、設置される環境にある。
【0003】
風力発電を例にすると、東京都内のビルの屋上の年間平均風速は3m程度である。風のない日も多く、エネルギーの継続性も悪い。民生用に販売されている風力発電機の中には、2000kWhの発電能力をうたっている製品があるが、それは、風速15mといった強風時を前提とした能力であって、都会では年に何回もない強風である。このような製品を実際に東京都内のような年間平均風速3m(前記風速の5分の1)の環境で使用すると、次のような種々の問題が生じて、発電力は前記風速の20分の1の100kWh程度に落ちてしまう。
【0004】
1.微風時では、システムの機械的負荷、例えばブレード(羽)などの重量、モーター軸のトルクなどによってブレードが回転しないという、エネルギー受容部の閾値の問題が生じる。
2.ブレード(羽)が回る風速に達しても、発電機のモーターが発電するまでの回転スピードに達しなければ利用できる電力とならないという、発電システムの閾値の問題が生じる。
3.発電できる回転スピードに達しても、システム内の負荷による電力ロスによって受容エネルギーが消費されてしまうという、発電効率の問題が生じる。
4.風力がブレードを回し十分な電力が発生してバッテリ等の蓄電装置に蓄えられても、風がなく発電しない時間が長く続くとバッテリ内で自然放電してしまうという、発電の非継続性によるバッテリ等の蓄電装置の蓄電性能の問題が生じる。
【0005】
他方、波の上下動(波高)をエネルギー源とする波力発電においては、沖合の年間平均数メートルの波高に対して、民生用として実用となる設置環境の海の入り江などは、年間平均数10センチメートルの波高であり、波高を風速と読み替えれば風力発電とまったく同様の問題が生じることは論を待たない。
このような問題の解決に、低速で発電できる多極発電モーターや電力のコンピュータ制御によるバッテリーチャージャなどが提案されているが、いずれも効果のわりに高価であって、対費用効果の点で採用されないのが現状である。このような事情から、民生用に供し得る、小型、中型で、再生エネルギー環境が悪い民生環境でも実用できる発電システムが求められていた。
【0006】
特許文献1には、外力により弾性体を歪ませることにより外部エネルギーを蓄積するとともに蓄積した外部エネルギーを略一定の仕事率で出力する力学的エネルギー蓄積手段と、前記力学的エネルギー蓄積手段より出力される外部エネルギーを電力に変換する発電手段と、前記発電手段により変換された電力を整流する整流手段とを具備した力学的エネルギー蓄積式発電装置が開示され、弾性体としてゼンマイ、つるまきバネ、板バネ、ゴム、形状記憶合金等が例示されている。
この発明では、蓄積手段に力学的エネルギーを蓄積させる外力は人力であり、例えば、回動摘みを指で摘んで回動させることにより、ゼンマイが動力入力軸に巻き付けられ、外部エネルギーはゼンマイに蓄積されることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、それ自体が移動されることにより生じる運動エネルギーを電気エネルギーに変換するカード型発電機であって、前記運動エネルギーを受けて機械的なエネルギーに変換する機械エネルギー変換手段と、この機械エネルギー変換手段が変換した機械エネルギーを蓄積する機械エネルギー蓄積手段と、この機械エネルギー蓄積手段から出力される機械エネルギーにより駆動されて電力を発生する発電手段とを備えた発電機構が、カード型に形成されたケースに内蔵されていることを特徴とするカード型発電機が開示されている。そして、機械エネルギー蓄積手段として、回転錘の回転により変形し、その変形により前記機械エネルギーを蓄積する弾性体(例えばゼンマイ)が例示されている。そして、利用する運動エネルギーは、携帯者の歩行等により生じる運動エネルギーであり、間接的ではあるが人力である。
【0008】
特許文献3には、水の運動エネルギー(通水路中に流れる水の運動エネルギー)を一時的に力学的エネルギーとして蓄積する力学的エネルギー蓄積手段と、前記力学的エネルギーを電気エネルギーへ変換する発電手段と、前記発電手段により得られる電気エネルギーを蓄える蓄電手段とを備えるよう構成した自動吐水装置へ電気エネルギーを供給する為の電源装置が開示され、力学的エネルギー蓄積手段として、力学的エネルギーをゼンマイやゴム、バネなどの弾性体が例示されている。そして、使用される運動エネルギーは、通水路中に流れる水の運動エネルギーである。
【0009】
特許文献4には、一方向に長手方向を有するラックバーと、ラックバーに対する相対移動にて回動されるピニオンと、ピニオンの回転力を利用して発電する発電手段とを備え、一方向の成分を有する運動力が与えられると、ラックバーとピニオンとが一方向に沿って相対移動を行い、この相対移動によりピニオンが回転される。ピニオンの回転により発電手段で発電される発電機が開示されている。そして、ラックバーおよびピニオンの少なくともいずれか一方には、このいずれか一方の相対移動方向に対して反対方向の反力を付与する反力付与手段(弾性体)を設けられ、弾性体として、コイルバネ、板バネ、ゴム等が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10-131841号公報
【特許文献2】特開2002-84726号公報
【特許文献3】特開2003-278216号公報
【特許文献4】特開2004-260896公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、従来の再生エネルギーの発電システムの前述した問題点が、再生エネルギーから取り出した運動エネルギーを発電機に直接接続し、再生エネルギーの取出しと発電とを同一の時系列で処理していることに起因していることを見出した。すなわち、再生エネルギーの取出しと発電とを同一の時系列で処理する場合、電力変換の効率は、再生エネルギーの高さと発電モーターの変換効率で決まってしまい、低い再生エネルギーの入力は前述の問題にあるように著しく不利である。また、エネルギーの継続性には何ら対策がないため、バッテリ等の蓄電装置における自然放電も回避できない。
【0012】
そこで、本発明者は、再生エネルギーの取出しと発電とを同一の時系列で処理せず、発電の前に一旦再生エネルギーを弾性エネルギーとして蓄積し、この弾性エネルギーを所定量蓄積した後に発電する機構を鋭意検討した。その結果、発電機の前に再生エネルギーを弾性エネルギーとしの蓄積する装置を備え、弾性エネルギーを積み上げることにより、小さな弾性エネルギーや断続的な弾性エネルギーを、大きな連続する弾性エネルギーに変換し、発電機に供給しうることに思い至り、都市部の風力発電や入り江での波力発電など民生用の再生エネルギーの実現に障害となっている再生エネルギーの低さ、断続的なエネルギーの発生といった環境の問題を克服しうることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、再生エネルギーの取出しと発電とを同一の時系列で処理せず、発電の前に一旦再生エネルギーを弾性エネルギーとして蓄積し、その再生エネルギー(弾性エネルギー)が発電に有効な所定量蓄積された後に発電することにより、民生用に供し得る、小型、中型で、再生エネルギー環境が悪い民生環境でも実用できる発電システム及びこの発電システムに適用される弾性エネルギー蓄積装置を提供することである。
【0014】
しかし、引用文献1〜4の方法では、いずれもエネルギー蓄積の大きさに限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、以下の構成を具備している。
発明1は、入力された第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生する蓄積装置と、前記第2動力を電力に変換する発電装置と、を備え
、前記蓄積装置は、帯状の部材により構成され半径方向に弾性変形可能な環体を含む弾性体を備え、前記第1動力により前記弾性体を弾性変形させることで弾性エネルギーを蓄え、前記弾性体の弾性変形の解放時において弾性エネルギーを前記第2動力に変換する、発電システムである。
【0016】
発明2は、
前記蓄積装置は、レールと、前記レールに沿って外周面を互いに接触させて配列された複数の前記環体と、各前記環体を前記レールに対してスライド自在に取り付けるスライダと、各前記環体のうち、一方の端の前記環体に接触するストッパと、をさらに備え、前記第1動力により各前記環体を前記ストッパに向けて圧縮させるか、或いは前記ストッパから離れる方向に伸張させることで、各前記環体が弾性変形する、発明1に記載の発電システムである。
【0017】
発明3は、
エネルギーを受容して前記第1動力を発生する受容装置を更に備え、前記受容装置と前記蓄積装置とを接続する第1シャフトと、前記蓄積装置と前記発電装置とを接続する第2シャフトと、をさらに備え、前記第1動力は、前記第1シャフトの回転運動により前記蓄積装置に伝達され、前記第2動力は、前記第2シャフトの回転運動により前記発電装置に伝達される、発明
1又は2に記載の発電システムである。
【0018】
発明4は、
エネルギーを受容して第1動力を発生する受容装置と、前記第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生する蓄積装置と、前記第2動力を電力に変換する発電装置と、前記受容装置と前記蓄積装置とを接続し、前記受容装置が発生した前記第1動力を回転運動により前記蓄積装置に伝達する第1シャフトと、前記蓄積装置と前記発電装置とを接続し、前記蓄積装置が発生した前記第2動力を回転運動により前記発電装置に伝達する第2シャフトと、前記第1シャフトに設けられ、前記第1シャフトの回転速度を変速する変速機と、を備え、前記蓄積装置は、弾性体を備え、前記第1動力により前記弾性体を弾性変形させることで弾性エネルギーを蓄え、前記弾性体の弾性変形の解放時において弾性エネルギーを前記第2動力に変換し、前記変速機による変速後の前記第1シャフトのトルクは、前記発電装置による発電に必要な前記第2シャフトのトルクよりも小さい、発電システムである。
【0019】
発明5は、
前記蓄積装置は、第3シャフトと、前記第3シャフトを軸として回転するカムと、前記第1シャフトの回転運動を前記第3シャフトに伝達する第1ギア列と、前記第3シャフトの回転運動を前記第2シャフトに伝達する第2ギア列と、をさらに備え、前記第1動力による前記第1シャフト、前記第1ギア列、及び前記第3シャフトの回転運動により前記カムが前記弾性体を弾性変形させ、前記弾性体の弾性変形の解消に伴う前記カム、前記第3シャフト、及び前記第2ギア列の回転運動により前記第2シャフトを回転させる前記第2動力が発生する、発明
4に記載の発電システムである。
【0020】
発明6は、
前記蓄積装置は、前記弾性体に接続されたラックと、前記第1シャフトに接続された第1ギア及び前記第2シャフトに接続された第2ギアを含み、前記ラックに噛み合ったギア列と、をさらに備え、前記第1動力により前記第1ギアが回転して前記ラックが第1方向に移動するとともに前記弾性体が弾性変形し、前記弾性体の弾性変形の解放時に前記ラックが前記第1方向と反対の第2方向に移動するとともに前記第2ギアが回転して前記第2動力が発生する、発明
4に記載の発電システムである。
【0021】
発明7は、
前記蓄積装置は、前記第1動力による前記弾性体の弾性変形を許容する第1状態と、前記弾性体の弾性変形を解放する第2状態と、を切り換える切換機構をさらに備える、発明
1乃至6のうちいずれかに記載の発電システムである。
【0022】
発明8は、
入力された第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生し、この第2動力を電力に変換する発電装置に対して動力伝達可能に接続される発電システム用弾性エネルギー蓄積装置であって、帯状の部材により構成され半径方向に弾性変形可能な環体を含む弾性体を備え、前記第1動力により前記弾性体を弾性変形させることで弾性エネルギーを蓄え、前記弾性体の弾性変形の解放時において弾性エネルギーを前記第2動力に変換する、発電システム用弾性エネルギー蓄積装置である。
【0023】
発明9は
、レールと、前記レールに沿って外周面を互いに接触させて配列された複数の前記環体と、各前記環体を前記レールに対してスライド自在に取り付けるスライダと、各前記環体のうち、一方の端の前記環体に接触するストッパと、をさらに備え、前記第1動力により各前記環体を前記ストッパに向けて圧縮させるか、或いは前記ストッパから離れる方向に伸張させることで、各前記環体が弾性変形する、発明8に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置である。
【0024】
発明10は、
エネルギーを受容して前記第1動力を発生する受容装置からの前記第1動力を伝達する第1シャフト、及び、前記第2動力を前記発電装置に伝達する第2シャフトの各々が接続された、発明8又は9に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置である。
【0025】
発明11は、
前記第1シャフトのトルクは、前記発電装置による発電に必要な前記第2シャフトのトルクよりも小さい、発明10に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置である。
【0026】
発明12は、
前記弾性体に接続されたラックと、前記第1シャフトに接続された第1ギア及び前記第2シャフトに接続された第2ギアを含み、前記ラックに噛み合ったギア列と、をさらに備え、前記第1動力により前記第1ギアが回転して前記ラックが第1方向に移動するとともに前記弾性体が弾性変形し、前記弾性体の弾性変形の解放時に前記ラックが前記第1方向と反対の第2方向に移動するとともに前記第2ギアが回転して前記第2動力が発生する、発明
10又は11に記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置である。
【0027】
発明13は、
入力された第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生し、この第2動力を電力に変換する発電装置に対して動力伝達可能に接続される発電システム用弾性エネルギー蓄積装置であって、エネルギーを受容して前記第1動力を発生する受容装置からの前記第1動力を伝達する第1シャフト、及び、前記第2動力を前記発電装置に伝達する第2シャフトの各々が接続され、弾性体と、第3シャフトと、前記第3シャフトを軸として回転するカムと、前記第1シャフトの回転運動を前記第3シャフトに伝達する第1ギア列と、前記第3シャフトの回転運動を前記第2シャフトに伝達する第2ギア列と、を備え、前記第1動力による前記第1シャフト、前記第1ギア列、及び前記第3シャフトの回転運動により前記カムが前記弾性体を弾性変形させ、前記弾性体の弾性変形の解消に伴う前記カム、前記第3シャフト、及び前記第2ギア列の回転運動により前記第2シャフトを回転させる前記第2動力が発生する、発電システム用弾性エネルギー蓄積装置である。
【0028】
発明14は、
前記第1動力による前記弾性体の弾性変形を許容する第1状態と、前記弾性体の弾性変形を解放する第2状態と、を切り換える切換機構をさらに備える、発明
8乃至13のうちいずれかに記載の発電システム用弾性エネルギー蓄積装置である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、民生用に供し得る、小型、中型で、再生エネルギー環境が悪い民生環境でも実用できる発電システム及びこの発電システムに適用される弾性エネルギー蓄積装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る発電システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、蓄積装置3の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、蓄積装置3の一構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、弾性エネルギー蓄積時における蓄積装置を示す図である。
【
図5】
図5は、弾性エネルギー蓄積量が最大となった蓄積装置を示す図である。
【
図6】
図6は、弾性エネルギー利用時における蓄積装置を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る発電システムの概略的な構成を示す図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る発電システムの概略的な構成を示す図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態に係る発電システムの概略的な構成を示す図である。
【
図10】
図10は、第5実施形態に係る蓄積装置の概略的な構成を示す図である。
【
図11】
図11は、弾性エネルギー蓄積時における蓄積装置を示す図である。
【
図12】
図12は、弾性エネルギー蓄積量が最大となった蓄積装置を示す図である。
【
図13】
図13は、弾性エネルギー利用時における蓄積装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る発電システム1の概略的な構成を示す図である。この発電システム1は、再生エネルギー受容装置2(以下、受容装置2と呼ぶ)と、蓄積装置3と、発電装置4とを備えている。
受容装置2は、再生エネルギーを受容して第1動力を発生する。再生エネルギーは、例えば、風力、海などの水面が上下動する力である波力、ダムの放水や河川において水が流れる力である水力など、流体の流動により生じる種々のエネルギーを利用し得る。また、再生エネルギーとして、潮の満ち引きの力である潮力や、地熱を利用して発生させた水蒸気などを利用しても良い。再生エネルギーは、再生可能エネルギーと呼ばれることもある。これら再生エネルギー受容装置自体は、例えば、特開2015-17614号公報や特開2015-17622号公報などにより当業者に知られている。なお、本発明の再生エネルギー受容装置は、特開2015-17614号公報や特開2015-17622号公報に記載された装置に限定されるものではないことは勿論である。
【0036】
受容装置2と蓄積装置3は、第1シャフト5によって接続されている。
図1の例において、受容装置2が発生した第1動力は、第1シャフト5を介して蓄積装置3に伝達される。
詳しくは第2乃至第4実施形態にて後述するが、受容装置2が再生エネルギーを受容して第1動力を発生する機構としては、種々のものを採用し得る。例えば再生エネルギーが風力である場合、受容装置2は、風力を受けて回転するブレードと、このブレードの回転に伴って第1シャフト5を回転させる動力発生機構とを備える。また、再生エネルギーが波力である場合、受容装置2は、水面とともに上下運動する浮体と、この浮体の上下運動に伴って第1シャフト5を回転させる動力発生機構とを備える。また、再生エネルギーが水力である場合、受容装置2は、水力を受けて回転するタービンと、このタービンの回転に伴って第1シャフト5を回転させる動力発生機構とを備える。
上記動力発生機構の構成は、特に限定されるものではない。例えば、風力や水力の場合には、ブレードやタービンの回転運動を第1シャフト5に伝達するギア列を含み得る。また、波力の場合には、浮体の上下運動に伴い往復運動するラックと、このラックに噛み合い、ラックの往復運動に伴って回転して第1シャフト5を回転させるギア列とを含み得る。
【0037】
ブレードやタービンの回転運動及び浮体の上下運動は、ケーブルの往復運動に変換された後に、第1シャフト5の回転運動に変換されても良い。上記ケーブルとしては、例えば、中空のアウターケーブルと、このアウターケーブルの内部に通されたインナーケーブルとを含み、インナーケーブルがアウターケーブルの内部で往復運動する構造を採用し得る。アウターケーブル及びインナーケーブルに柔軟性を持たせることで、インナーケーブルの往復運動を回転運動に変換する機構がブレード、タービン、或いは浮体の設置位置から離れた位置に設置された場合であっても、両者を容易に接続することができる。
【0038】
図1の例においては、受容装置2と蓄積装置3の間に変速機6が介在している。さらに、第1シャフト5は、受容装置2と変速機6を接続するシャフト5Aと、変速機6と蓄積装置3を接続するシャフト5Bとを含む。この構成においては、受容装置2の第1動力により、シャフト5Aが回転する。変速機6は、シャフト5Aの回転速度を変速(増速或いは減速)し、変速後の回転速度でシャフト5Bを回転させる。変速機6の増速比或いは減速比は、受容装置2で得られる回転数及びトルクや、蓄積装置3で必要な回転数及びトルクなどを考慮して、適宜に定めれば良い。
【0039】
蓄積装置3と発電装置4は、第2シャフト7によって接続されている。蓄積装置3は、詳しくは後述するが、第1シャフト5を介して伝達される第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄え、蓄えた弾性エネルギーを用いて第2動力を発生する。第2動力は、第2シャフト7の回転運動として発電装置4に伝達される。
発電装置4は、第2動力を電力に変換する。発電装置4の具体的な構成としては種々のものを採用し得る。一例として、
図1に示す発電装置4は、調速機41と、発電部42と、蓄電部43と、送電部44とを備えている。
【0040】
第2シャフト7は、調速機41及び発電部42に接続されている。調速機41は、第2シャフト7の回転速度を発電に適した速度範囲内に調整する。調速機41としては、例えば遠心ガバナーなどを用いることができる。発電部42は、第2シャフト7の回転運動に基づき、電力を発生する。このような発電部42の構成としては、公知の種々の構成を採用し得る。蓄電部43は、発電部42で発生した電力を蓄電するバッテリを含む。送電部44は、蓄電部43に蓄えられた電力を所定の電圧及び電流にて送電線に供給する。送電線は、既存の送電網の一部であっても良いし、工場、ビル、或いは家屋などの特定の建造物における用途に特化して設けられたものであっても良い。
【0041】
蓄積装置3は、弾性体を備えており、第1動力を用いて弾性体を弾性変形させることで、弾性体の弾性係数と変形量に応じた弾性エネルギーを蓄える。さらに、蓄積装置3は、弾性体が弾性変形を解消する際に、弾性体に蓄えられた弾性エネルギーを用いて第2動力を発生する。このように、蓄積装置3は、弾性体の弾性変形とその解消により、弾性エネルギーの蓄積と、利用とを行う。このような機能を発揮するものであれば、蓄積装置3の構造は特に限定されない。
【0042】
本実施形態において、第2動力は第1動力よりも大きい。また、第2動力は、少なくとも発電装置4の負荷を上回る。ここで、動力は、例えば単位時間当たりの仕事量であり、回転体に関して言えばトルクと回転速度の積に比例する値として定義することができる。
【0043】
なお、第1動力は不安定な再生エネルギーに基づいて発生するものであり、再生エネルギーの大きさに応じて変動する。そのため、第1動力が一時的に第2動力より大きくなる場合もあり得る。本実施形態において、「第2動力が第1動力よりも大きい」とは、このように一時的に第1動力が第2動力を超える場合を排除するものではなく、第1動力の時間的な平均値が第2動力より小さいことを意図している。
【0044】
図2及び
図3は、蓄積装置3の一構成例を示す図である。この例における蓄積装置3は、
図2に示すように、カム30と、第3シャフト31と、第1ギア列32と、第2ギア列33とを備えている。さらに、蓄積装置3は、
図3に示すように、弾性体34と、レール35と、ストッパ36と、スライダ37とを備えている。
第1ギア列32は、第1シャフト5(シャフト5B)の回転運動を第3シャフト31に伝達する。第2ギア列33は、第3シャフト31の回転運動を第2シャフト7に伝達する。
図2の例において、第1ギア列32は、互いに噛み合ったギア32A,32B(第1ギア)を含む。ギア32Aは、第1シャフト5(シャフト5B)に取り付けられており、シャフト5Bを軸として回転する。ギア32Bは、第3シャフト31に取り付けられており、第3シャフト31を軸として回転する。ギア32Aは、ギア32Bよりも小径である。ギア32Aは例えば1方向性のクラッチ機構を有しており、第1動力によりシャフト5Bがある方向に回転する際にはこの回転をギア32Bに伝達するが、他の方向に回転する際には空転する。
【0045】
一方、第2ギア列33は、互いに噛み合ったギア33A,33B(第2ギア)を含む。ギア33Aは、第2シャフト7に取り付けられており、第2シャフト7を軸として回転する。ギア33Bは、第3シャフト31に取り付けられており、第3シャフト31を軸として回転する。ギア33Aは、ギア33Bよりも小径である。
カム30は、第3シャフト31に取り付けられており、第3シャフト31を軸として回転する。例えば、カム30は、曲面である円周面と第3シャフト31との距離が回転角度に応じて変化する円板カムである。
【0046】
弾性体34は、例えば帯状の部材により構成された環体38を含む。環体38は、半径方向において弾性変形可能である。環体38は、例えばばね用鋼材などの金属材料又はゴム等で形成することができる。
図3の例において、弾性体34は5つの環体38を含んでいる。但し、弾性体34に含まれる環体38の数は4つ以下であっても良いし、6つ以上であっても良い。環体38は、例えば弾性変形していない自然状態において、正円形である。但し、環体38は、自然状態において、楕円形や多角形状などの他の形状であっても良い。なお、環体38の具体的な材料、肉厚、円周方向の幅、及び直径などは、求められる弾性力、設置スペース、及び製造コストなどを考慮して適宜に定め得る。
【0047】
弾性体34は、環体38に代えて、例えばU字型の部材、V字型の部材、或いはU字型の部材を2つ結合した環状の部材を含んでも良い。これらの部材は、環体38と同じく、鋼材などの金属材料で形成することができる。
各環体38は、スライダ37を介してレール35に取り付けられている。スライダ37は、レール35に沿ってスライド自在である。各環体38は、レール35に沿って直線状に並んでいる。隣り合う環体38の外周面は、互いに接触している。例えば、レール35とスライダ37との接触部にローラ或いはボールを配置することにより、摩擦によるロスを小さくできる。このようなローラ或いはボールは、レール35及びスライダ37のいずれに設けても良い。
【0048】
カム30の外周面は、
図3における左端の環体38の外周面に接触している。
図3における右端の環体38の外周面は、ストッパ36に接触している。ストッパ36、レール35、及び第3シャフト31の位置関係は固定的であり、カム30の回転によって変化しない。
続いて、蓄積装置3の動作につき、
図3乃至
図6を用いて説明する。
シャフト5Bが第1動力により回転すると、ギア32A,32B、第3シャフト31、カム30、ギア33A,33B、第2シャフト7が回転する。このとき、カム30の回転角度に応じて各環体38が弾性変形(弾性エネルギーの蓄積)とその解消(弾性エネルギーの利用)とを繰り返す。
【0049】
図4は、弾性エネルギー蓄積時の状態を示している。カム30の外周面が環体38に接触する位置と、第3シャフト31との間の距離が増加する期間においては、カム30が各環体38をストッパ36に向けて押す。これにより各環体38が図中の矢印で示す方向に弾性変形し、弾性エネルギーが蓄えられる。
なお、弾性エネルギー蓄積時において、弾性体34がカム30を押す力は、シャフト5Bの負荷(受容装置2及び変速機6の負荷)と、第2シャフト7の負荷(発電装置4の負荷)との合計よりも小さい。したがって、カム30が逆回転することはない。或いは、弾性エネルギー蓄積時においてカム30が逆回転しないように、別途の機構を蓄積装置3に設けても良い。
やがて、
図5に示すように、カム30の外周面が環体38に接触する位置と、第3シャフト31との間の距離が最大距離に到達すると、弾性エネルギーの蓄積量が最大となる。
【0050】
図6は、弾性エネルギー利用時の状態を示している。カム30の外周面が環体38に接触する位置と、第3シャフト31との間の距離が減少する期間においては、各環体38の弾性変形が解消するので、カム30が図中の矢印で示す方向に押される。すなわち、弾性体34に蓄えられた弾性エネルギーが利用される。
このとき、カム30は、第1動力による回転に加え、弾性体34に押される力によって回転する。このようなカム30の回転に伴い生じる動力が、上述の第2動力に相当する。この第2動力は第2シャフト7を介して発電装置4に伝達され、発電装置4が発電する。その後、カム30の外周面が環体38に接触する位置と、第3シャフト31との間の距離が最低距離に到達すると、再び弾性エネルギーの蓄積が開始される。
【0051】
なお、弾性エネルギー蓄積時においては第2シャフト7も回転するが、回転速度及びトルクが小さいために発電装置4は発電しない。或いは発電したとしても、極めて小さい電力しか発生しない。一般に、発生する電力が大きいほど発電装置の負荷が大きくなる。したがって、弾性エネルギー蓄積時における発電装置4の負荷は極めて小さいものとなる。
【0052】
他の観点から言えば、弾性エネルギー蓄積時には弾性体34が弾性変形するとともに発電装置4が発電しないように、変速機6の変速比が定められている。
すなわち、シャフト5Bを回転させるトルクN1は、発電装置4による発電に必要なトルクN2よりも小さい(N1<N2)。或いは、シャフト5Bを介して伝達される第1動力W1は、発電装置4による発電に必要な第3動力W3よりも小さく、且つ蓄積装置3による弾性エネルギーの蓄積に必要な第4動力W4と同等かそれ以上である(W4≦W1<W3)。なお、弾性エネルギー利用時に蓄積装置3で発生する第2動力W2は、第3動力W3と同等かそれ以上である(W3≦W2)。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る発電システム1は、弾性エネルギーの蓄積と利用を繰り返す。再生エネルギーから得られる第1動力は不安定であり、発電に適した値を常に得られるとは限らないし、時には停止することもある。従来の発電システムにおいては、受容装置からの動力が発電装置の負荷を下回る場合などには、発電装置が稼働せず、電力を得られない場合があった。この場合には、受容装置が発生する動力は無駄になる。
これに対し、本実施形態に係る発電システム1においては、受容装置2が発生する第1動力が小さい場合であっても、この第1動力を有効に活用して発電できる。すなわち、受容装置2からの第1動力は、一旦、蓄積装置3において弾性エネルギーとして蓄えられる。そして、弾性エネルギーが十分に蓄えられると、蓄積装置3はこの弾性エネルギーを用いて、発電装置4の負荷を上回る第2動力を発生する。この第2動力は、弾性体34が弾性変形を解放する際のエネルギーに相当するため極めて安定的である。
この他にも、本実施形態からは既述の種々の効果を得ることができる。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態における受容装置2の具体例を開示する。第1実施形態と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、主に第1実施形態との相違点について述べる。
【0055】
図7は、第2実施形態に係る発電システム1の要部構成を示す図である。ここでは、第1実施形態における受容装置2が波力を受けて第1動力を発生する構成を例示している。受容装置2は、浮体20と、ラック21と、ギア22とを備えている。
浮体20は、例えば海や湖などの水面WFに浮かべられている。浮体20は、波による水面WFの位置変化に応じて上下動する。ラック21は、浮体20に固定されている。ラック21は、浮体20の上下動の方向において直線状に並ぶ刃列21aを有している。ギア22は、ラック列21aに噛み合っている。ギア22は、シャフト5Aを軸として回転可能である。
【0056】
浮体20の上下動に伴い、ラック21が上下動する。ギア22は、例えば1方向性のクラッチ機構を備えており、ラック22の上昇時における回転をシャフト5Aに伝達し、ラック22の下降時における回転をシャフト5Aに伝達しない。この場合、ラック22の上昇時におけるシャフト5Aの回転運動が第1動力に相当する。これとは逆に、ギア22は、ラック22の下降時における回転をシャフト5Aに伝達しても良い。この場合は、ラック22の下降時におけるシャフト5Aの回転運動が第1動力に相当する。さらに他の例として、複数のギアを用いることで、ラック22の上昇時と下降時の双方における回転をシャフト5Aに伝達しても良い。この場合は、ラック22の上昇時及び下降時の双方におけるシャフト5Aの回転運動が第1動力に相当する。
なお、
図7では、浮体20とラック21が固定される例を示した。しかしながら、浮体とラック21とは上述のインナーケーブル及びアウターケーブルによって接続されても良い。この場合には、浮体20及び蓄積装置3などの設置位置の自由度が高まる。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態における受容装置2の他の具体例を開示する。第1実施形態と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、主に第1実施形態との相違点について述べる。
図8は、第3実施形態に係る発電システム1の要部構成を示す図である。ここでは、第1実施形態における受容装置2が風力を受けて第1動力を発生する構成を例示している。受容装置2は、ブレード23を備えている。蓄積装置3、発電装置4、及び変速機6は、支柱100により高所に支持されたナセル101に収容されている。発電装置4の一部、例えば蓄電部43や送電部44は、ナセル101の外部に設けられても良い。
図8の例では、弾性体34の各環体38及びストッパが、上下方向(重力方向,支柱100の延出方向)に並んでいる。
【0058】
ブレード23は、シャフト5Aを軸として回転可能である。この構成においては、ブレード23が風を受けて回転した際にシャフト5Aが回転する。このシャフト5Aの回転運動が第1動力に相当する。
なお、
図8では、ブレード23の回転運動がシャフト5Aに直接伝達される例を示した。しかしながら、ブレード23とシャフト5Aの間に上述のインナーケーブル及びアウターケーブルが介在しても良い。この場合、例えばブレード23の回転運動をインナーケーブルの往復運動に変換する機構と、インナーケーブルの往復運動をシャフト5Aの回転運動に変換する機構とを設ける。このような構成であれば、蓄積装置3や発電装置4はナセル101の外部に配置することができる。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態における受容装置2のさらに他の具体例を開示する。第1実施形態と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、主に第1実施形態との相違点について述べる。
【0060】
図9は、第4実施形態に係る発電システム1の要部構成を示す図である。ここでは、第1実施形態における受容装置2が河川などで流れる水の水力を受けて第1動力を発生する構成を例示している。受容装置2は、河川などに流れる流水Rに下方が浸かったタービン24を備えている。タービン24は、流水Rの力を受けて、シャフト5Aを軸として回転する。このシャフト5Aの回転運動が第1動力に相当する。
【0061】
なお、
図9では、タービン24の回転運動がシャフト5Aに直接伝達される例を示した。しかしながら、タービン24とシャフト5Aの間に上述のインナーケーブル及びアウターケーブルが介在しても良い。この場合、例えばタービン24の回転運動をインナーケーブルの往復運動に変換する機構と、インナーケーブルの往復運動をシャフト5Aの回転運動に変換する機構とを設ける。このような構成であれば、タービン24及び蓄積装置3などの設置位置の自由度が高まる。
【0062】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態では、蓄積装置3の他の例を開示する。第1実施形態と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、主に第1実施形態との相違点について述べる。
【0063】
図10は、第5実施形態に係る蓄積装置3の概略的な構成を示す図である。この蓄積装置3は、ギア130(第1ギア)と、ギア131(第2ギア)と、ギア132(第3ギア)と、ラック133と、可動部材134と、センサ135と、制御装置136とを備えている。さらに、蓄積装置3は、第1実施形態と同じくレール35と、ストッパ36と、弾性体34と、スライダ37とを備えている。
図10の例では、弾性体34が3つの環体38を含む。但し、環体38の数や形状は特に限定されない。
【0064】
ギア130は、シャフト5Bを軸として回転可能である。ギア131は、第2シャフト7を軸として回転可能である。ギア132は、シャフト137を軸として回転可能である。
ラック133は、直線状に並ぶ刃列133aを有している。可動部材134は、ラック133の一端に接続されている。さらに、可動部材134は、図中の左端に配置された環体38の外周面と接触している。
ギア132は、ギア130、ギア131、及び刃列133aと噛み合っている。ギア132の回転に伴い、ラック133及び可動部材134は、ストッパ36に近づく方向と、ストッパ36から離れる方向とに往復運動する。
【0065】
本実施形態において、ギア130は、駆動方向と空転方向とを切り換えることが可能な2方向性の第1クラッチ機構CL1を有している。この第1クラッチ機構CL1は、例えば電磁的な制御により駆動方向と空転方向を切り替えるもので、制御装置136によって制御される。
例えば、センサ135は、ラック133或いは可動部材134が第1基準位置及び第2基準位置に到達したことを検出する。第1基準位置は、例えばラック133に付されたマーカM1とセンサ135が正対する位置である。第2基準位置は、例えばラック133に付されたマーカM2とセンサ135が正対する位置である。センサ135は、マーカM1,M2を検出した際に、検出信号を出力する。例えば、センサ135は、マーカM1,M2を光学的に検出する光学センサである。センサ135は、マーカM1,M2を磁気的に検出する磁気センサなど、他種のセンサであっても良い。
【0066】
制御装置136は、センサ135の検出信号に基づいて、第1クラッチ機構CL1を制御する。すなわち、ギア130は、2方向性クラッチギアとして機能する。第1クラッチ機構CL1において、駆動方向はシャフト5Bとギア132の間で動力を伝達するギア130の回転方向であり、空転方向はシャフト5Bとギア132の間で動力を伝達しないギア130の回転方向である。
また、本実施形態において、ギア131は、駆動方向と空転方向を有するがこれらを切り換えることができない1方向性の第2クラッチ機構CL2を有している。すなわち、ギア131は、1方向性クラッチギアとして機能する。但し、第2クラッチ機構CL2として、2方向性のクラッチ機構を用いても良い。第2クラッチ機構CL2において、駆動方向は第2シャフト7とギア132の間で動力を伝達するギア131の回転方向であり、空転方向は第2シャフト7とギア132の間で動力を伝達しないギア131の回転方向である。
第1クラッチ機構CL1と第2クラッチ機構CL2とは、切換機構140を構成する。切換機構140は、弾性体34の弾性変形を許容する第1状態と、弾性体34の弾性変形を解放する第2状態とを切り換える。
【0067】
図10において実線で示す矢印は、弾性エネルギー蓄積時における各ギアの回転方向を示す。一方、破線で示す矢印は、弾性エネルギー利用時における各ギアの回転方向を示す。
シャフト5Bは、弾性エネルギー蓄積時と利用時のいずれにおいても同じ方向に回転する。弾性エネルギー蓄積時においては、ギア130がシャフト5Bの回転を受けて実線矢印の方向へ回転するように、第1クラッチ機構CL1の駆動方向と空転方向とが設定される。このギア130の回転を受けて、ギア132、ギア131、及びギア131が実線矢印で示す方向へ回転する。このとき、ギア131が空転して、第2シャフト7が回転しないように、第2クラッチ機構CL2の駆動方向と回転方向とが設定されている。ギア132の回転に伴い、ラック133及び可動部材134がストッパ36に向けて移動する。さらに、可動部材134に押されて各環体38が弾性変形する。
【0068】
弾性エネルギー利用時においては、弾性体34に可動部材134及びラック133がストッパ36から離れる方向に押され、これによりギア132が破線矢印で示す方向に回転する。このギア132の回転を受けて、ギア130及びギア131が破線矢印で示す方向へ回転する。
弾性エネルギー利用時においては、制御装置136の制御により、第1クラッチ機構CL1の駆動方向と空転方向とが逆転している。したがって、ギア130が空転するので、ギア130の回転はシャフト5Bには伝わらない。一方で、ギア131の回転は第2クラッチ機構CL2の駆動方向と一致するので、ギア131の回転を受けて第2シャフト7が回転する。第2シャフト7の回転(第2動力)を受けて、発電装置4が発電可能となる。
なお、弾性エネルギー蓄積時においては、弾性体34の弾性変形の解放を防ぐ必要がある。本実施形態では、シャフト5Bの負荷(受容装置2及び変速機6の負荷)と、第2シャフト7の負荷(発電装置4の負荷)とを用いて、弾性体34の弾性変形の解放を防いでいる。すなわち、弾性エネルギー蓄積時において弾性体34が可動部材134及びラック133をストッパ36から離れる方向に押そうとしても、このときのギア130及びギア131の回転方向はいずれも駆動方向と一致する。したがって、シャフト5B及び第2シャフト7の負荷が同時に作用して、可動部材134及びラック133の移動が防がれる。
なお、ここではシャフト5B及び第2シャフト7の負荷を用いて弾性体34の弾性変形の解放を防ぐ例を示したが、別途の機構を設けることにより、エネルギー蓄積時における弾性変形の解放を防いでも良い。
【0069】
続いて、蓄積装置3の動作につき、
図10乃至
図13を用いて説明する。
弾性エネルギー蓄積時、蓄積装置3は上述の第1状態に設定されている。このとき、
図11に示すように、シャフト5Bを介して伝達される第1動力によりギア130,132が回転し、ラック133及び可動部材134がストッパ36に向けて移動する。これに伴い各環体38が弾性変形し、この弾性変形に応じた弾性エネルギーが蓄積装置3に蓄積される。
【0070】
やがて、
図12に示すようにセンサ135がマーカM1に正対すると、センサ135が検出信号を出力する。センサ135からの検出信号の入力を受けて、制御装置136は切換機構140(主に第1クラッチ機構CL1)を制御し、蓄積装置3を上述の第2状態に切り換える。
第2状態に切り換わると、
図13に示すように、弾性体34の弾性変形の解放により可動部材134及びラック133が押され、可動部材134及びラック133がストッパ36から離れる方向に移動する。このときのギア132の回転を受けてギア131が回転し、さらにギア131の回転が第2シャフト7に伝達され、第2シャフト7が回転する。第2シャフト7の回転運動、すなわち第2動力を受けて、発電装置4は電力を発生する。
【0071】
その後、
図10に示すように、センサ135がマーカM2に正対すると、センサ135が検出信号を出力する。センサ135からの検出信号の入力を受けて、制御装置136は切換機構140(主に第1クラッチ機構CL1)を制御し、蓄積装置3を上述の第1状態に切り換える。これにより、再び蓄積装置3が第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄える。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る発電システム1においても、弾性エネルギーの蓄積と利用が繰り返される。本実施形態にて開示した蓄積装置3の構成は、第2乃至第4実施形態のいずれにも適用することができる。
【0073】
本発明は、以上説明した各実施形態の構成に対し種々の変形を加えて実施することができる。例えば、各実施形態にて開示した構成は、適宜に組み合わされても良い。発明の要旨を逸脱しない範囲で変形された形態は、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等の範囲に含まれる。
例えば、各実施形態においては、蓄積装置3が弾性体34を圧縮することにより弾性エネルギーを蓄える例を開示した。しかしながら、蓄積装置3は、弾性体34を伸張することで弾性エネルギーを蓄えても良いし、圧縮と伸長を連続的に行って蓄えてもよい。
【0074】
蓄積装置3は、受容装置2からの第1動力を、そのまま発電装置4に伝達する機構を備え、この機構と弾性エネルギーを蓄積する機構とを切り換え可能であっても良い。この場合、例えば強風が吹いているときなど再生エネルギーが十分に強い場合に、第1動力を用いて発電することができる。
第5実施形態において、制御装置136が第1状態と第2状態とを切り換える制御方式は、上述のものに限られない。例えば、センサ135がマーカM1を検出して第2状態に切り換えられた後、一定時間が経過した際に第1状態に切り換えても良い。この場合においては、マーカM2の検出が不要となる。また、センサ135がマーカM2を検出して第1状態に切り換えられた後、一定時間が経過した際に第2状態に切り換えても良い。この場合においては、マーカM1の検出が不要となる。また、一定時間ごとに第1状態と第2状態とを切り換えても良い。この場合には、センサ136が不要となる。また、ギア132などの回転数をカウントし、このカウント値に応じて第1状態と第2状態とを切り換えても良い。その他、種々の制御方式を採用し得る。
蓄積装置3において弾性体34を弾性変形させる方式は、カム30やラック133を用いたものに限られない。例えば、シャフト5Bの回転に伴い回転するスクリューと、このスクリューにボールを介してねじ込まれたナットとを含むボールスクリュー機構を利用することもできる。すなわち、このボールスクリュー機構において、ナットの移動に伴い弾性体34が圧縮或いは伸張するようにすれば、弾性体34を弾性変形させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、従来の再生エネルギーを利用する発電システムが抱えている多くの問題のうち、すくなくとも、エネルギー受容部の稼働開始閾値の問題、発電システムの閾値の問題、発電効率の問題、発電の非継続性によるバッテリ等の蓄電装置の蓄電性能の問題を解決することができる。すなわち、
(エネルギー受容部の稼働開始閾値の問題の解決)
従来の風力発電機は、運動エネルギーを発電機側の負荷に負けないトルクを持ったものとするためブレードは頑丈なものとする必要があり、重くなる傾向があった。このことにより、ブレードが回り始めるまでの風力の閾値は上がることになる。
本発明では、再生エネルギーの運動エネルギーを発電機ではなく、変速機を入口とすることで、エネルギー受容部の受ける負荷を、変速率により自由に軽くできる。このため、ブレードは極端に言えば布のような素材でつくり、微風でも簡単に回転できるような設計が可能になる。
【0076】
(発電システムの閾値の問題の解決)
従来は、ブレード(羽)が回る風速に達しても、発電機のモーターが発電するまでの回転スピードに達しなければ利用できる電力とならない。これに対して、本発明では、再生エネルギーの運動エネルギーは、一方向にのみ回転するように設定された回転子を回し連動するカムなどによって変形した弾性体の弾性エネルギーとして堆積するので、運動エネルギーの大小、非継続性に関わらず蓄積され、蓄積ロスを低減できる。
(発電効率の問題の解決)
従来のシステムでは、受容部によって発電機が発電できる回転スピードに達しても、そのスピードが低レベルでは、システム内の負荷による電力ロスによってそのエネルギーは消費されてしまう。これに対し、本発明では、発電機は、蓄えられた弾性体の発生する弾性エネルギーによって、発電に必要な駆動条件を満たしつつ、理想的な状態で稼働し発電する。従って、本発明では、発電システムの閾値の問題は発生しない。
(発電の非継続性によるバッテリ等の蓄電装置の蓄電性能の問題の解決)
従来のシステムでは、十分な電力が発生してバッテリ等の蓄電装置に蓄えられても、風がなく発電しない時間が長引けばバッテリ内で自然放電してしまう。これに対し、本発明では、弾性エネルギーの量を高く、あるいは並列させることでエネルギーを蓄え、バッテリに蓄電するタイミングを最適に制御できるので、自然放電の問題を低減可能である。
【0077】
以上説明したように、本発明によれば、比較的簡単な構成で発電効率を向上させることができ、安価に高効率の発電システムの実現が可能である。このことがシステムのパフォーマンスの向上ととともに民生用の風力発電や波力発電に大きく貢献することは論を待たない。
【0078】
さらに、本発明の弾性エネルギー蓄積装置は、再生エネルギー受容装置側の受けるトルクを必要に応じて軽くし得る変速機を配置しているので、再生エネルギー受容装置との組み合わせのほかに、人力やクレーン車のような外部動力と組んで、へき地用、緊急用の発電装置としても使用可能である。すなわち、ジャングルの中のようなへき地では、再生エネルギーの代わりに、人力を合力することで弾性エネルギーを蓄え、発電させることもできるし、緊急時には、クレーン車のような外部の力で装置の重りを持ち上げ、弾性エネルギーを加えることで、長時間の安定した発電を供給することもできる。
換言すれば、本明細書記載の発明には、特許請求の範囲に記載された発明と共に「外部動力である第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生する蓄積装置と、前記第2動力を電力に変換する発電装置と、を備える発電システム」、及び「外部動力である第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生して、これを発電に利用できるようにした発電システム用弾性エネルギー蓄積装置」を包含している。
【符号の説明】
【0079】
1…発電システム、2…再生エネルギー受容装置、3…蓄積装置、4…発電装置、5…第1シャフト、6…変速機、7…第2シャフト、30…カム、31…第3シャフト、34…弾性体、35…レール、36…ストッパ、37…スライダ、38…環体、133…ラック、134…可動部材、135…センサ、136…制御装置、140…切換機構。
【要約】
【課題】再生エネルギーを用いた発電効率を高めた発電システムを提供する。
【解決手段】本発明の発電システム(1)は、再生エネルギーを受容して第1動力を発生する受容装置(2)と、前記第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい第2動力を発生する発電システム用弾性エネルギー蓄積装置(3)と、前記第2動力を電力に変換する発電装置(4)とを備える。また、本発明の蓄積装置(2)は、前記第1動力を用いて弾性エネルギーを蓄えるとともに、蓄えた弾性エネルギーを用いて前記第1動力よりも大きい前記第2動力を発生する。
【選択図】
図1