特許第6074095号(P6074095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6074095
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ベルト蛇行規制装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20170123BHJP
   B65G 39/16 20060101ALI20170123BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G03G15/16
   B65G39/16
   B65H5/02 T
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-100910(P2016-100910)
(22)【出願日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年9月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599124426
【氏名又は名称】株式会社ディムコ
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】森田 一翠
(72)【発明者】
【氏名】日高 満
(72)【発明者】
【氏名】菅野 成人
(72)【発明者】
【氏名】三田 和彦
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−086448(JP,A)
【文献】 特開平07−267321(JP,A)
【文献】 特開平10−260590(JP,A)
【文献】 特開2008−100826(JP,A)
【文献】 特開2009−048083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
B65G 39/16
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ロールおよび従動ロールに張架された無端ベルトのロール軸方向への蛇行を規制するベルト蛇行規制装置であって、
前記駆動ロールまたは前記従動ロールのいずれか一方のロール軸の一端には該ロールの回転角を検出するロータリエンコーダが添設され、
前記駆動ロールおよび前記従動ロール間には一対の電動シリンダで軸支されて前記無端ベルトのリターン側を内側から下方に押圧するテンションロールが配置され、
前記無端ベルトのエッジライン上にはエッジライン位置を検出するラインセンサーが添設されるとともに、エッジライン上に付されたベルト周回マークを読み取る反射センサが添設され、
前記一対の電動シリンダは前記ラインセンサーの添設側に位置する第1の電動シリンダとその反対側に位置する第2の電動シリンダとからなり、該第1の電動シリンダおよび該第2の電動シリンダはそれぞれ独自に前記テンションロールを上下方向に移動させ、
前記無端ベルトの走行に伴って前記反射センサで読み取った前記ベルト周回マークを基点位置として前記ロータリエンコーダの所定間隔の回転角により該無端ベルトのエッジライン上に該回転角に対応した複数の測定ポイントを定め、
n周回目(n≧1の整数)および(n+1)周回目の同一測定ポイントにおけるエッジライン位置を前記ラインセンサーが読み取ってn周回データおよび(n+1)周回データとし、
前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分が規定値を超えてエッジラインが前記第1の電動シリンダ側に振れているときには該差分に応じて前記第1の電動シリンダが前記テンションロールを下方向に移動させるとともに前記第2の電動シリンダが該テンションロールを上方向に移動させ、
前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分が規定値を超えて前記第2の電動シリンダ側に振れているときには該差分に応じて前記第2の電動シリンダが前記テンションロールを下方向に移動させるとともに前記第1の電動シリンダが該テンションロールを上方向に移動させる、ことを特徴とするベルト蛇行規制装置。
【請求項2】
前記第1の電動シリンダの出入長さおよび前記第2の電動シリンダの出入長さは、その絶対値が略同一で方向は正反対である、ことを特徴とする請求項1に記載のベルト蛇行規制装置。
【請求項3】
前記第1の電動シリンダの出入長さおよび前記第2の電動シリンダの出入長さは、該第1の電動シリンダおよび該第2の電動シリンダに添設された前記テンションロールに対する前記無端ベルトの押圧力を検出するロードセルからの信号により前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分に応じた押圧力量により行われる、ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のベルト蛇行規制装置。
【請求項4】
前記第1の電動シリンダの出入長さおよび前記第2の電動シリンダの出入長さは、該第1の電動シリンダおよび該第2の電動シリンダに添設された前記テンションロールに対する前記無端ベルトの押圧力を検出するロードセルによる前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分に応じた押圧力量を出入長さに変換して行われる、ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のベルト蛇行規制装置。
【請求項5】
前記無端ベルトの表面温度を計測する温度センサを具え、
表面温度が所定値を超えたときには前記無端ベルトの表面温度に拠る伸び相当分の張力低下を前記第1の電動シリンダおよび前記第2の電動シリンダの同一出入長さによる前記テンションロールの下方向移動により補正する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のベルト蛇行規制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ロールと従動ロールとの間に張架された無端ベルトのロール軸方向への蛇行を規制するベルト走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置においては、トナー像をフィルム等の記録媒体に転写し、そのトナー像を定着装置に搬送し、定着装置で熱及び圧力を加えることにより記録媒体に定着させている。
【0003】
トナー像の転写に際しては、ロール間で張架した無端ベルトを回転させているとき、無端ベルトがロール軸方向に移動して蛇行する場合がある。無端ベルトの蛇行が発生すると、記録媒体上のトナー像の位置がずれて像が不鮮明になったり、所定の発色が得られない等の不具合が発生したりするばかりでなく、無端ベルトの蛇行の幅が大きくなると、ベルトの縁部が破損するおそれが生じる。
【0004】
そこで、ベルトの蛇行を抑制する技術が従来から提案されていて、例えば、 特許文献1、特許文献2および特許文献3に公開されている。
【0005】
特許文献1に公開されている技術は、発明の名称「カラーロールンタにおけるベルト蛇行制御方法及びその装置」に係り、「カラーロールンタにおけるベルトの蛇行を最小に抑えることができる制御方法を提供する」ことを課題としていて、その解決手段を「ベルトエッジを、ベルトの所定位置から微少区間毎に1周分を計測し、所定位置に対応した1回目のベルトエッジ位置データと2回目のベルトエッジ位置データとの差により全スキュー量を算出し、この全スキュー量から区間毎のスキュー補正量を算出し、このスキュー補正量で補正された補正ベルトエッジ位置データによりベルト1周全体での平均ベルトエッジ位置を算出し、この平均ベルトエッジ位置と所望のベルトエッジ位置データとの差を、微少区間毎の補正ベルトエッジ位置データから差し引いて、前記測定された微少区間毎のベルトエッジ位置データをオフセット補正してベルトエッジ学習値とし、各区間毎のベルトエッジ学習値とベルトエッジ位置データとに基づきステアリング機構の駆動を制御する」こととしている。
【0006】
また、特許文献2に公開されている技術は、発明の名称「画像形成装置」に係り、「駆動ロ−ラー及びテンションローラー等により張架されて搬送されるベルトを有する画像形成装置において、複雑な機構を設けることなくベルトの蛇行を抑制することによって、安定したベルトの駆動を実現した画像形成装置を提供する」ことを課題としていて、その解決手段を「中間転写ベルトの蛇行方向に対して反対方向である補正方向側の中間転写ベルトの外周面上に、蛇行補正物質としてのトナーにより構成される画像パターンを担持させ、画像パターンがクリーニングブレードの当接部で掻き取られることで、蛇行方向と逆方向である補正方向に中間転写ベルトがシフトし、中間転写ベルトの蛇行が補正される」こととしている。
【0007】
そして、特許文献3に公開されている技術は、発明の名称「ベルト駆動装置及びそれを備えた定着装置並びに画像形成装置」に係り、「安価で簡単な構成で長期間安定してベルト蛇行を規制するベルト駆動装置及びそれを備えた定着装置並びに画像形成装置を提供する」ことを課題としていて、その解決手段を「ベルト駆動装置は、熱ローラーを回転可能に支持し本体側板に対して熱ローラーと一体に軸方向に移動可能に支持される支持軸と、支持軸の軸方向の端部に設けられ、定着ベルトの蛇行による熱ローラーの軸方向への移動にともなう第1変位を、軸方向と直角方向であり且つ定着ベルトの蛇行を補正する方向の第2変位に変換する一対のカム平面と、第1変位方向及び第2変位方向への移動を可能とする一対の摺動平面とを有するカム部材と、本体側板に一体に設けられ、一対のカム平面に係合する一対の第1平面と、一対の摺動平面を摺動可能に案内する一対の第2平面とを有するカム支持部材とを備える」こととしている。
【0008】
しかし、特許文献1、特許文献2および特許文献3に公開されている技術はいずれもコンピュータによるきめ細かい制御が必要となり、装置も規模の大きなものとなる可能性がある上、メンテナンスも容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−122509号公報
【特許文献2】特開2011−197414号公報
【特許文献3】特開2013−228428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本願発明は、簡単な機械要素を組み合わせた装置であって、微少幅の蛇行が規制可能な精密制御のベルト蛇行規制装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係るベルト蛇行規制装置は、駆動ロールおよび従動ロールに張架された無端ベルトのロール軸方向への蛇行を規制するベルト蛇行規制装置であって、前記駆動ロールまたは前記従動ロールのいずれか一方のロール軸の一端には該ロールの回転角を検出するロータリエンコーダが添設され、前記駆動ロールおよび前記従動ロール間には一対の電動シリンダで軸支されて前記無端ベルトのリターン側を内側から下方に押圧するテンションロールが配置され、前記無端ベルトのエッジライン上にはエッジライン位置を検出するラインセンサーが添設されるとともに、エッジライン上に付されたベルト周回マークを読み取る反射センサが添設され、前記一対の電動シリンダは前記ラインセンサーの添設側に位置する第1の電動シリンダとその反対側に位置する第2の電動シリンダとからなり、該第1の電動シリンダおよび該第2の電動シリンダはそれぞれ独自に前記テンションロールを上下方向に移動させ、前記無端ベルトの走行に伴って前記反射センサで読み取った前記ベルト周回マークを基点位置として前記ロータリエンコーダの所定間隔の回転角により該無端ベルトのエッジライン上に該回転角に対応した複数の測定ポイントを定め、n周回目(n≧1の整数)および(n+1)周回目の同一測定ポイントにおけるエッジライン位置を前記ラインセンサーが読み取ってn周回データおよび(n+1)周回データとし、前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分が規定値を超えてエッジラインが前記第1の電動シリンダ側に振れているときには該差分に応じて前記第1の電動シリンダが前記テンションロールを下方向に移動させるとともに前記第2の電動シリンダが該テンションロールを上方向に移動させ、前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分が規定値を超えて前記第2の電動シリンダ側に振れているときには該差分に応じて前記第2の電動シリンダが前記テンションロールを下方向に移動させるとともに前記第1の電動シリンダが該テンションロールを上方向に移動させる、ことを特徴としている。
また、本願請求項2に係るベルト蛇行規制装置は、請求項1に記載のベルト蛇行規制装置であって、前記第1の電動シリンダの出入長さおよび前記第2の電動シリンダの出入長さは、その絶対値が略同一で方向は正反対である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係るベルト蛇行規制装置は、請求項1または請求項2のいずれかに記載のベルト蛇行規制装置であって、前記第1の電動シリンダの出入長さおよび前記第2の電動シリンダの出入長さは、該第1の電動シリンダおよび該第2の電動シリンダに添設された前記テンションロールに対する前記無端ベルトの押圧力を検出するロードセルからの信号により前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分に応じた押圧力量により行われる、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係るベルト蛇行規制装置は、請求項1または請求項2のいずれかに記載のベルト蛇行規制装置であって、前記第1の電動シリンダの出入長さおよび前記第2の電動シリンダの出入長さは、該第1の電動シリンダおよび該第2の電動シリンダに添設された前記テンションロールに対する前記無端ベルトの押圧力を検出するロードセルによる前記n周回データおよび前記(n+1)周回データの差分に応じた押圧力量を出入長さに変換して行われる、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係るベルト蛇行規制装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のベルト蛇行規制装置であって、前記無端ベルトの表面温度を計測する温度センサを具え、表面温度が所定値を超えたときには前記無端ベルトの表面温度に拠る伸び相当分の張力低下を前記第1の電動シリンダおよび前記第2の電動シリンダの同一出入長さによる前記テンションロールの下方向移動により補正する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により本願発明は以下の効果を奏する。
(1)無端ベルトの蛇行補正に必要なベルト張力の調整を駆動ロールあるいは従動ロールではなく、駆動ロールおよび従動ロール間に位置するテンションロールの上下移動に拠って行っているため、僅かな押圧力で蛇行補正をすることができる。また、無端ベルトのリターン側を内側からテンションロールで押圧することとしているため、被搬送体には何ら影響を及ぼさない。
(2)ロータリエンコーダで割り出した同一測定ポイントにおける無端ベルトの走行方向に直交する横方向の位置データを周回毎に測定し、前周回の位置データと比較してその差分を蛇行データとして捉え、各周回毎に張力調整を行うことができるので、素早い蛇行補正が可能となって、蛇行を微少幅に抑えることができる。また、同一測定ポイントでの比較なので、ベルトエッジラインが必ずしも正確な直線性を具えていなくとも精密に蛇行を規制することができる。
(3)テンションロールによる張力補正は、第1の電動シリンダの出入長さと第2の電動シリンダの出入長さについて絶対値が略同一で方向は正反対となるいわば「ゼロサム」状態で行うことから無端ベルト自体の張力に負担が及ばない。
(4)無端ベルトにはそのエッジライン上にベルト周回マークを付するだけであり、ロータリエンコーダ、ラインセンサ、反射センサおよび温度センサはともに無端ベルトに接触してはいないので、無端ベルトの交換等のメンテナンスは容易であり、各種センサの劣化を防止できる。
(5)第1の電動シリンダの送入出長さあるいは第2の電動シリンダの送入出長さはロードセルで検出した押圧力量で直接的に制御することが可能であり、さらに、押圧力量を電動シリンダの送入出長さに変換する変換テーブルを介してその差分をシリンダの送入出長さとするストローク制御することも可能である。
(6)無端ベルトの走行時間が長期に及んだり、あるいは、高温加熱雰囲気で使用したりすると、無端ベルト自体の温度が上昇して伸びが発生してその張力に変化が生ずるが、温度センサにより温度監視を行うことで無端ベルトの張力補正も素早く行うことができるので、被搬送体の品質に影響が及ぶことはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、ベルト蛇行規制装置の概略側面図である。
図2図2は、ベルト蛇行規制装置の概略平面図である。
図3図3は、ベルト蛇行規制装置の制御構成図である。
図4図4は、ベルト蛇行規制装置の蛇行規制フロー図である。
図5図5は、ベルト蛇行規制装置の蛇行規制の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明を実施するための形態に係るベルト蛇行規制装置について、図1ないし図5に基づいて説明する。なお、図1ないし図3において、符号1は実施例に係るベルト蛇行規制装置、符号11は駆動ロール、符号12は駆動モーター、符号13は従動ロール、符号14は無端ベルト、符号15はテンションロール、符号16はロータリーエンコーダ、符号17は電動シリンダ、符号171は第1の電動シリンダ、符号172は第2の電動シリンダ、符号18はラインセンサ、符号19はロードセル、符号191は第1のロードセル、符号192は第2のロードセル、符号21は反射センサ、符号22はベルト周回マーク、符号23は温度センサ、符号24は制御回路、である。
【0015】
先ず、図1ないし図3を参照してベルト蛇行規制装置1の構成を説明する。
ベルト蛇行規制装置1は、主に、駆動ロール11と、従動ロール13と、駆動ロール11および従動ロール13に張架される無端ベルト14と、駆動ロール11および従動ロール13間に配置されて無端ベルト14のリターン側を下方に押圧するテンションロール15と、駆動ロール11のロール軸の一端に添設されるロータリエンコーダ16と、テンションロール15の両端を軸支する一対の電動シリンダ17と、無端ベルト14の片側のエッジラインに添設されてエッジライン位置を検出するラインセンサ18と、無端ベルト14のエッジライン上に付されたベルト周回マーク22を読み取る反射センサ21と、無端ベルト14の表面温度を計測する温度センサ23と、電動シリンダ17に添設されて無端ベルト14の押圧力を検出するロードセル19と、それらのセンサからの信号を基に一対の電動シリンダ17の出入長さを制御する制御回路24と、から構成されている。
【0016】
駆動ロール11はその一端に連結された駆動モータ12によって駆動され、他の一端には駆動ロール11の回転角を読み取るロータリエンコーダ16が添設されている。ロータリエンコーダ16を従動ロール13の何れかの一端に添設するようにしても良いが、従動ロール13と無端ベルト14との間にズレが生じるおそれもあって、駆動ロール11の一端に添設する方が無端ベルト14上の測定ポイントの位置判断の正確性に勝る。
【0017】
実施例では、無端ベルト14にステンレススチール製を使用している。ステンレススチール製の無端ベルト14とすることで、ベルトエッジラインは出入りの少ないスムーズな直線とすることができるので、測定ポイントの多少のズレはエッジライン位置を検出するラインセンサ18の読み取り数値に殆ど影響を及ぼさない。そのため、ベルトエッジの測定ポイントから選択される制御の対象となる測定ポイントの間隔を広げることができて、走行中の無端ベルト14の1周分のベルトエッジの出入り制御の頻度を減らすことができる。さらに、ステンレススチールの鋼種毎の熱膨張率は既知であって均一であるので、温度変化による伸びの算定が容易で計算値と実測値が略一致する。
【0018】
ロータリエンコーダ16は、駆動ロール11の回転軸の回転の変位を検出する角位置センサである。一方、ラインセンサ18は受光素子と発光素子からなる一対のセンサで、無端ベルト14のベルトエッジを挟むようにテンションロール15の近傍に添設されていて、無端ベルト14のベルトエッジ位置を検出する。さらに、無端ベルト14のエッジライン上方にはエッジライン上に付されたベルト周回マーク22を読み取る反射センサ21が添設されている。そして、無端ベルト22の走行に伴って反射センサ21で検出したベルト周回マーク22の位置を基点位置として、ロータリエンコーダ16の所定間隔の回転角により無端ベルト14のエッジライン上にこの回転角に対応した複数の測定ポイントを定めて、例えばベルト移動距離10mm毎にベルトのエッジ位置が外側に何μm振れているか、あるいは内側に何μm振れているのかをエッジライン位置情報として、制御回路24に送って記憶するようになっている。
【0019】
テンションロール15の両端を軸支する一対の電動シリンダ17は、無端ベルト14を挟んでラインセンサ18側に位置する第1の電動シリンダ171と、その反対側に位置する第2の電動シリンダ172と、から構成されていて、電動シリンダ17には無端ベルト14の押圧力を検出するロードセル19が添設されている。すなわち、第1のロードセル191は第1の電動シリンダ171に添設され、第2のロードセル192は第2の電動シリンダ172に添設されている。そして、第1の電動シリンダ171および第2の電動シリンダ172はそれぞれ独立して出入自在となっていて、蛇行規制時には第1の電動シリンダ171の出入長さと第2の電動シリンダ172の出入長さは、絶対値が同一であるもののその出入方向は正反対となる。なお、実施例では、第1の電動シリンダ171および第2の電動シリンダ172は、いずれも無端ベルト14の下方に配置されていて、電動シリンダ17を送入することによりテンションロール15は下方向に移動し、電動シリンダ17を送出することによりテンションロール15は上方向に移動するようになっている。また、無端ベルト14の走行初期と温度補正による張力調整は、第1の電動シリンダ171および第2の電動シリンダ172の出入長さを同一にして行う。
【0020】
つぎに、図3ないし図5を参照してベルト蛇行規制装置1の蛇行規制の仕組みを順を追って説明する。
【0021】
(1)無端ベルト14が走行を開始すると、ロータリエンコーダ16により無端ベルト14のベルトエッジ位置を略等間隔に特定して測定ポイントとし、同時にその測定ポイントに対応するベルトエッジ位置の幅方向の出入り情報を1周回(n周回)分の蛇行情報として制御回路24に送って記憶する。
(2)無端ベルト14の走行が次周回((n+1)周回)に移行すると、(n+1)周回の蛇行情報を検出して、n周回の蛇行情報と比較する。
(3)(n+1)周回の蛇行情報がn周回の蛇行情報と比較して、蛇行制御可能範囲(2mm程度)を超える場合には、無端ベルト14は直ちに走行を停止して、無端ベルト14の位置を手動で修正する。
(4)(n+1)周回の蛇行情報がn周回の蛇行情報と比較して、蛇行制御可能範囲内で、かつ、その差分が規定値(実施例では20μm)を超えている場合であって、ベルトエッジ位置が第1の電動シリンダ171側に移動している場合は、制御回路24からの信号に基づいて電動シリンダドライブを介して第1の電動シリンダ171がこの差分に応じて所定長さが送入されるとともに第2の電動シリンダ172が同一長さ分送出される。この結果、第1の電動シリンダ171側の無端ベルト14の張力は第2の電動シリンダ172側の無端ベルト14の張力よりも大きくなって、テンションロール15位置における無端ベルト14は第2の電動シリンダ172側に移動する。
(5)また、(n+1)周回の蛇行情報がn周回の蛇行情報と比較して、蛇行制御可能範囲内で、かつ、その差分が規定値(実施例では20μm)を超えている場合であって、ベルトエッジ位置が第2の電動シリンダ172側に移動している場合は、制御回路24からの信号に基づいて電動シリンダドライブを介して第1の電動シリンダ171がこの差分に応じて所定長さが送出されるとともに第2の電動シリンダ172が同一長さ分送入される。この結果、第2の電動シリンダ172側の無端ベルト14の張力は第1の電動シリンダ171側の無端ベルト14の張力よりも大きくなって、テンションロール15位置における無端ベルト14は第1の電動シリンダ171側に移動する。
以上の仕組みにより、ベルト蛇行規制装置1では数μm単位の蛇行補正が可能となる。
【0022】
図5は横軸を無端ベルト14の移動距離(mm)とし、縦軸を無端ベルト14のベルトエッジ位置(μm)としたグラフである。無端ベルト14にはステンレススチール製を使用している。ここでは、ベルト移動距離10mm毎に測定ポイントを定めたが、蛇行規制に必要な制御ポイントを500mmとして、n周回のデータを点線で表示し、(n+1)周回のデータを実線で表示している。グラフから判るように、各測定ポイント毎の蛇行量は20μm以内に収まっていて、20μm以内であれば記録媒体上のトナー像の位置にずれを感じることがなく、所望の発色が得られる。
【0023】
なお、実施例では、第1の電動シリンダ171の出入長さおよび第2の電動シリンダ172の出入長さは、第1の電動シリンダ171および第2の電動シリンダ172に添設されたテンションロール15に対する無端ベルト14の押圧力を検出するロードセル19からの信号により、n周回データおよび(n+1)周回データの差分に応じた押圧力量により直接的に行なう押圧力制御で行ったが、押圧力量を電動シリンダの送入出長さに変換する変換テーブルを具えることにより、n周回データおよび(n+1)周回データの差分に応じた押圧力量を出入長さに変換してストローク制御とすることも可能である。
【0024】
また、ベルト蛇行規制装置1に無端ベルト14の表面温度を計測する温度センサ23を具えて、表面温度が所定値を超えたときには無端ベルト14の表面温度に拠る伸び相当分の張力低下を第1の電動シリンダ171および前記第2の電動シリンダ172の同一出入長さによる前記テンションロールの下方向移動に拠り補正することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 実施例に係るベルト蛇行規制装置
11 駆動ロール
13 従動ロール
14 無端ベルト
15 テンションロール
16 ロータリーエンコーダ
171 第1の電動シリンダ
172 第2の電動シリンダ
18 ラインセンサ
19 ロードセル
21 反射センサ
22 ベルト周回マーク
23 温度センサ
【要約】
【課題】簡単な機械要素を組み合わせて極微少幅に蛇行を規制する精密制御のベルト蛇行規制装置を提供する。
【解決手段】駆動ロールおよび従動ロールの間に、一対の電動シリンダで軸支されて無端ベルトを押圧するテンションロールが配置され、前記駆動ロールにはロータリエンコーダが添設され、無端ベルトのエッジライン上にはエッジライン位置を検出するラインセンサが添設され、エッジラインに付されたベルト周回マークを読み取る反射センサが添設され、ベルト周回マークを基点位置としてロータリエンコーダにより無端ベルトのエッジライン上に複数の測定ポイントを定めて、前周回目および後周回目の同一測定ポイントにおけるエッジライン位置をそれぞれの周回データとし、前周回データおよび後周回データの差分が規定値を超えた場合に第1の電動シリンダが送入または送出されるとともに第2の電動シリンダが送出または送入されるように構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5