特許第6074104号(P6074104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074104
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】自動車のアクティブノイズ低減
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20170123BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G10K11/16 H
   B60R11/02 B
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-500501(P2016-500501)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-512346(P2016-512346A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】US2014019359
(87)【国際公開番号】WO2014163966
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】13/796,644
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィス・ワイ・パン
(72)【発明者】
【氏名】アラガナンダン・ガネシュクマール
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−261276(JP,A)
【文献】 特開平05−173581(JP,A)
【文献】 特開平02−218297(JP,A)
【文献】 特開平05−027775(JP,A)
【文献】 特開平02−237298(JP,A)
【文献】 特開平09−303477(JP,A)
【文献】 特開平08−261278(JP,A)
【文献】 特開平05−303387(JP,A)
【文献】 米国特許第05910993(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備えた自動車用のアクティブノイズ低減システムを動作させるための方法であって、車両エンジン動作に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、前記アクティブノイズ低減システムが、その出力がエンジンノイズを低減するように仕向けられた1つまたは複数のトランスデューサを駆動するために使用されるノイズ低減信号を出力する1つまたは複数の適応フィルタを含み、前記方法が、
前記車両エンジン動作に関連する前記入力信号からエンジン高調波ノイズレベルを推定するステップと、
前記エンジン高調波ノイズレベルの前記推定に基づいて前記トランスデューサの前記出力を制限するステップと
を含み、
前記アクティブノイズ低減システムが、トランスデューサ電圧レベルと、トランスデューサ出力周波数に応じて打ち消される、結果として生じるエンジンノイズレベルとの関係を記憶するコンピュータメモリをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記トランスデューサの前記出力が、エンジン高調波ノイズを打ち消すように計算されたレベルに制限される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
入力信号が、エンジンRPMに関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
入力信号が、エンジン高調波ノイズ周波数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記制限するステップが、入力された前記エンジン高調波ノイズ周波数において前記推定されたエンジン高調波ノイズレベルを打ち消すために必要とされる前記トランスデューサ電圧レベルを判定するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アクティブノイズ低減システムが、前記エンジン負荷と、エンジン高調波ノイズ周波数に応じた前記結果として生じる音圧レベルとの関係を記憶するコンピュータメモリをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスデューサの前記出力が、車室に向けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エンジンを備えた自動車用のアクティブノイズ低減システムを動作させるための方法であって、エンジン高調波ノイズ周波数が、車両エンジン動作に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号として使用され、前記アクティブノイズ低減システムが、その出力がエンジンノイズを低減するように仕向けられた複数のトランスデューサを駆動するために使用されるノイズ低減信号を出力する複数の適応フィルタと、トランスデューサ電圧レベルと、トランスデューサ出力周波数に応じて打ち消される結果として生じるエンジンノイズレベルとの関係を記憶するコンピュータメモリとを含み、前記方法が、
前記車両エンジン動作に関連する前記入力信号からエンジン高調波ノイズレベルを推定するステップと、
前記エンジン高調波ノイズレベルの前記推定に基づいて前記トランスデューサの前記出力を制限するステップとを含み、前記トランスデューサの前記出力が、エンジン高調波ノイズを打ち消すように計算されたレベルに制限され、前記制限するステップが、入力された前記エンジン高調波ノイズ周波数において前記推定されたエンジン高調波ノイズレベルを打ち消すために必要とされる前記トランスデューサ電圧レベルを判定するステップを含む、方法。
【請求項9】
エンジンを備えた自動車用のアクティブノイズ低減システムの動作を制御するように構成されたデバイスであって、車両エンジン動作に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、前記アクティブノイズ低減システムが、その出力がエンジンノイズを低減するように仕向けられた1つまたは複数のトランスデューサを駆動するために使用されるノイズ低減信号を出力する1つまたは複数の適応フィルタを含み、前記デバイスが、
前記車両エンジン動作に関連する前記入力信号からエンジン高調波ノイズレベルを推定し、
前記エンジン高調波ノイズレベルの前記推定に基づいて前記トランスデューサの前記出力を制限する
ように構成されたプロセッサ
を含み、
前記アクティブノイズ低減システムが、トランスデューサ電圧レベルと、トランスデューサ出力周波数に応じて打ち消される、結果として生じるエンジンノイズレベルとの関係を記憶するコンピュータメモリをさらに含む、デバイス。
【請求項10】
前記トランスデューサの前記出力が、エンジン高調波ノイズを打ち消すように計算されたレベルに制限される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
入力信号が、エンジンRPMに関連する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
入力信号が、エンジン高調波ノイズ周波数を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項13】
前記トランスデューサの前記出力が、入力された前記エンジン高調波ノイズ周波数において前記推定されたエンジン高調波ノイズレベルを打ち消すために必要とされる前記トランスデューサ電圧レベルを判定することによって制限される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記アクティブノイズ低減システムが、前記エンジン負荷と、エンジン高調波ノイズ周波数に応じた結果として生じる音圧レベルとの関係を記憶するコンピュータメモリをさらに含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記トランスデューサの前記出力が、車室に向けられる、請求項9に記載のデバイス。
【請求項16】
エンジンを備えた自動車用のアクティブノイズ低減システムの動作を制御するように構成されたデバイスであって、エンジン高調波ノイズ周波数が、車両エンジン動作に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号として使用され、前記アクティブノイズ低減システムが、その出力がエンジンノイズを低減するように仕向けられた複数のトランスデューサを駆動するために使用されるノイズ低減信号を出力する複数の適応フィルタと、トランスデューサ電圧レベルと、トランスデューサ出力周波数に応じて打ち消される、結果として生じるエンジンノイズレベルとの関係を記憶するコンピュータメモリとを含み、前記デバイスが、
前記車両エンジン動作に関連する前記入力信号からエンジン高調波ノイズレベルを推定することと
前記エンジン高調波ノイズレベルの前記推定に基づいて前記トランスデューサの前記出力を制限するように構成されたプロセッサを含み、前記トランスデューサの前記出力が、エンジン高調波ノイズを打ち消すように計算されたレベルに制限することであって、前記制限することが、入力された前記エンジン高調波ノイズ周波数において前記推定されたエンジン高調波ノイズレベルを打ち消すために必要とされる前記トランスデューサ電圧レベルを判定することを含む、制限することと、
を行う、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車におけるエンジンノイズのアクティブ低減に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン高調波打消しシステムは、エンジン高調波ノイズを低減するまたは打ち消すために自動車で、たとえば車室内またはマフラーアセンブリ内で使用されるアクティブノイズ低減システムである。エンジン高調波打消しシステムは、入力トランスデューサとして1つまたは複数のマイクロフォンを使用する。また打ち消されるノイズに関連する信号が、適応フィルタに入力される。適応フィルタの出力は、音を生成する1つまたは複数のトランスデューサ(すなわちラウドスピーカ)に適用される。この音は、打ち消されることになる望ましくないエンジン音と音響的に反対のものである。適応フィルタは、入力信号の大きさおよび/または周波数を変えることができる。このシステムの目的は、対象となっている(1つまたは複数の)周波数でマイクロフォン信号を打ち消すことである。これを行うために、ラウドスピーカ出力は、負のゲインを有する。
【0003】
いくつかの状況では、これらのエンジン高調波打消しシステムは不安定になり、そのためエンジンノイズを打ち消すように設計されているラウドスピーカ音出力レベルを発散させる(diverge)可能性がある。このような不安定なエンジン高調波打消しシステムが、大きく、顕著なノイズアーティファクトを生成するおそれがある。このような不安定性の1つの原因は、車室の伝達関数の変化である可能性があり、この変化によりラウドスピーカ出力ゲインが事実上正になる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示のシステム、デバイス、および方法は、不安定なエンジン高調波打消しシステムによる可聴アーティファクトを最小にするのに効果的である。これは、RPM、トルク、または計算されたエンジン負荷など、車両エンジン動作に関連する信号に基づいて、エンジン高調波ノイズレベルを推定することによって実現される。エンジン高調波打消しシステム出力レベルは、次に、これらの推定されたエンジン高調波ノイズレベルを打ち消すための必要最小限に制限される。結果として、システムが不安定になるとき、エンジン高調波打消しシステム出力は、エンジンノイズの概算レベルよりも大きくならない。
【0005】
以下のすべての例および特徴は、任意の技術的に可能な方法で結合されることが可能である。
【0006】
1つの態様では、自動車用のアクティブノイズ低減システムを動作させるための方法であって、車両エンジン動作に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、アクティブノイズ低減システムが、その出力がエンジンノイズを低減するように仕向けられた1つまたは複数のトランスデューサを駆動するために使用されるノイズ低減信号を出力する1つまたは複数の適応フィルタを含み、この方法は、車両エンジン動作に関連する入力信号からエンジン高調波ノイズレベルを推定することと、エンジン高調波ノイズレベルの推定に基づいてトランスデューサの出力を制限することとを含む。トランスデューサ出力は、ノイズが打ち消されることになる車室または別の車両場所、たとえばマフラーシステムなどに向けられることが可能である。
【0007】
諸実施形態は、次の特徴のうちの1つ、またはその任意の組み合わせを含むことができる。トランスデューサの出力は、ノイズが打ち消されることになる車室または他の車両場所、たとえばマフラーシステムにおいて、エンジン高調波ノイズを打ち消すように計算されたレベルに制限されることが可能である。システム入力信号が、エンジンRPMに関連していることがある。アクティブノイズ低減システムは、トランスデューサ電圧レベルと、トランスデューサ出力周波数に応じて打ち消される、結果として生じるエンジンノイズレベルとの関係を記憶するコンピュータメモリを含むこともできる。入力信号が、エンジン高調波ノイズ周波数であることが可能である。制限するステップは、入力エンジン高調波ノイズ周波数において、推定されたエンジン高調波ノイズレベルを打ち消すために必要とされるトランスデューサ電圧レベルを判定することを含むことができる。アクティブノイズ低減システムはまた、エンジン負荷と、エンジン高調波ノイズ周波数に応じた結果として生じる音圧レベルとの関係を記憶するコンピュータメモリを含むこともできる。
【0008】
別の態様では、自動車の車室用のアクティブノイズ低減システムの動作を制御するように構成されたデバイスであって、車両エンジン動作に関連するアクティブノイズ低減システム入力信号があり、アクティブノイズ低減システムが、その出力がエンジンノイズを低減するように仕向けられた1つまたは複数のトランスデューサを駆動するために使用されるノイズ低減信号を出力する1つまたは複数の適応フィルタを含み、このデバイスは、車両エンジン動作に関連する入力信号からエンジン高調波ノイズレベルを推定し、エンジン高調波ノイズレベルの推定に基づいてトランスデューサの出力を制限するように構成されたプロセッサを含むことができる。トランスデューサ出力は、ノイズが打ち消されることになる車室または別の車両場所、たとえばマフラーシステムなどに向けられることが可能である。
【0009】
諸実施形態は、次の特徴のうちの1つ、またはその任意の組み合わせを含むことができる。トランスデューサの出力は、エンジン高調波ノイズを打ち消すように計算されたレベルに制限されることが可能である。システム入力信号が、エンジンRPMに関連していることがある。アクティブノイズ低減システムは、トランスデューサ電圧レベルと、トランスデューサ出力周波数に応じて打ち消される、結果として生じるエンジンノイズレベルとの関係を記憶するコンピュータメモリをさらに含むことができる。入力信号は、エンジン高調波ノイズ周波数を含むことができる。トランスデューサの出力は、入力エンジン高調波ノイズ周波数において、推定されたエンジン高調波ノイズレベルを打ち消すために必要とされるトランスデューサ電圧レベルを判定することによって制限されることが可能である。アクティブノイズ低減システムはさらに、エンジン負荷と、エンジン高調波ノイズ周波数に応じた結果として生じる音圧レベルとの関係を記憶するコンピュータメモリを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本革新のシステム、デバイス、および方法を実現するために使用されることが可能であるエンジン高調波打消しシステムの概略ブロック図である。
図2】一連のエンジン負荷曲線を示す図である。これらのエンジン負荷のそれぞれのエンジンノイズ音圧レベルは、エンジンノイズの周波数に応じて示される。
図3】一連のスピーカ電圧曲線を示す図である。出力周波数に応じたスピーカ出力音圧レベルは、スピーカ電圧レベルのそれぞれにおいて示される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面の図1の要素が、ブロック図において個別の要素として示され、説明される。これらは、アナログ回路またはデジタル回路の1つまたは複数として実行されることが可能である。代替的にまたは付加的に、これらは、ソフトウェア命令を実行する1つまたは複数のマイクロプロセッサを用いて実行されることが可能である。ソフトウェア命令は、デジタル信号処理命令を含むことができる。動作は、アナログ回路によって、またはアナログ動作に相当することを行うソフトウェアを実行するマイクロプロセッサによって、行われることが可能である。信号線は、個別アナログ信号線もしくはデジタル信号線として、別々の信号を処理することができる適切な信号処理を備えた個別デジタル信号線として、および/またはワイヤレス通信システムの要素として、実装されることが可能である。
【0012】
プロセスがブロック図に表される、または暗に示されるとき、諸ステップは、1つの要素または複数の要素によって行われることがある。諸ステップは、合わせて行われる、または異なる時間に行われることがある。活動を行う要素は、物理的に同じもしくは互いに近いことがある、または物理的に分かれていることがある。1つの要素は、2つ以上のブロックのアクションを行うことがある。音声信号は、符号化されても、符号化されなくてもよく、デジタル形式またはアナログ形式のいずれかで送信されることが可能である。従来の音声信号処理装置および動作は、いくつかの事例では図面から省略されている。
【0013】
図1は、開示される革新を取り入れたエンジン高調波打消しシステム10の簡略化された概略図である。システム10は、その出力が車室12に向けられた1つまたは複数の出力トランスデューサ14に信号を供給する適応フィルタ20を使用する。車室伝達関数16によって変更されるトランスデューサの出力は、入力トランスデューサ(たとえば、マイクロフォン)18によって拾い上げられる。車室内のエンジンノイズもまた、入力トランスデューサ18によって拾い上げられる。既存の車両エンジン制御システム28は、車両エンジン動作に関連する1つまたは複数の入力信号を供給する。例には、RPM、トルク、アクセルペダル位置、およびマニホールド絶対圧(MAP:manifold absolute pressure)が含まれる。負荷制限コントローラまたはプロセッサ30および正弦波発生器25は、車両エンジン動作と関連するエンジン制御システム28からの(1つまたは複数の)信号を入力され、これにより、打ち消されるエンジン高調波を判定することができる。コントローラ30が、これらの入力信号に基づいて、打ち消されるエンジンノイズの瞬時高調波レベルを推定する。この推定は、適応フィルタ20への制御信号として提供される。正弦波発生器25が、適応フィルタ20にノイズ低減参照信号を提供し、これは、モデル化された車室伝達関数24にも提供されて、修正された参照信号(revised reference signal)を生成する。修正された参照信号およびマイクロフォン出力信号は、掛け合わされ26、適応フィルタ20への入力として提供される。
【0014】
コントローラ30は、適応フィルタ20に、エンジン高調波ノイズレベルの推定に基づいてトランスデューサ14の出力を制限するのに効果的な信号を提供する。その結果、システムは、車室12におけるエンジンノイズの推定されるレベルよりも大きくない音のレベルを出力するように構成される。したがって、たとえシステム10が不安定になっても、出力トランスデューサ14によって生成される音圧は、エンジンの音圧よりも大きくない。
【0015】
エンジン高調波打消しシステムは、発散するとき、オフにされる必要がないことが、主題の革新の1つの結果である。別の利点は、システムの不安定性による検出可能なノイズアーティファクトが、最小化されることである。この革新は、音声エコーおよび余韻(afterglow)(エンジンノイズが急に下がるときの一時的ノイズゲイン)など、エンジン高調波打消しシステムの他のアーティファクトも低減することができる。また、不適切に調整された不安定性閾値の結果がそれほど極端にはならないので、エンジン高調波打消しシステム不安定性対応策のための調整はより容易で高速になる。たとえば、閾値が低すぎる設定にされる場合、結果は、ノイズ制御システムの誤ったシャットダウンではなく、わずかに少ないノイズ打消しとなる。閾値が高すぎる場合、システム出力は、非常に大きく受け入れ難いノイズアーティファクトを連続して生成するのではなく、発散されるときわずかに大きくなる。
【0016】
この革新が動作可能である方法の非限定的例について、図2および図3を参照して説明する。図2は、50〜59と明示された10個の一連のエンジン負荷曲線を示す。これらの10個のエンジン負荷のそれぞれのエンジンノイズ音圧レベルは、エンジンノイズの周波数に応じてグラフに描かれている。曲線50は、94%のエンジン負荷を示す。曲線51〜59は、それぞれ88%、83%、78%、73%、67%、62%、58%、49%、および39%のエンジン負荷を示す。特定のノイズ周波数に対応するエンジンRPMも、X軸に沿って設定される。
【0017】
図3は、4つの例示のスピーカ電圧レベル、すなわちそれぞれ最大電圧、2分の1最大電圧、4分の1最大電圧、および1/8最大電圧における出力周波数に応じたスピーカ出力音圧を示す4つの一連の曲線70〜73を示す。これらの曲線は、例示であって、限定ではなく、それは、システム10はそのコンピュータメモリに、実現されることが望まれる音制御制限のレベルに応じて、1つまたは複数のこのような曲線によって示される関係を表すデータを有することができるからである。データは、たとえばルックアップテーブルに記憶されることが可能である。
【0018】
この例では、エンジン負荷は、エンジン制御システム28からコントローラ30に入力される信号である。コントローラ30は、打ち消されるエンジンノイズの周波数もまた受信する(または、エンジン制御システム28からの入力に基づいて判定する)。対象の周波数における車室のエンジンノイズとほぼ同じレベルである出力を生成することを要求されるスピーカ電圧レベルを判定するために、対象の周波数におけるエンジンノイズレベルに一致する音圧レベル(SPL)を生成する電圧曲線70〜73が判定される。たとえば、94%のエンジン負荷(曲線50、図2)における46.7Hzでは、エンジンノイズSPLは、約100dBである。図3を見ると、この同じ周波数において、約2分の1最大値のスピーカ電圧(曲線71)が、約100dBのトランスデューサSPLを生成するのに適している。したがって、車室のエンジン高調波ノイズSPLにほぼ一致するSPLを生成するために、コントローラ30が、トランスデューサ14の出力を2分の1最大電圧に制限する。
【0019】
このことから、周波数およびエンジン負荷がわかると、また様々なスピーカ入力電圧におけるスピーカSPLを事前に決定することで、コントローラ30は、エンジン高調波打消しシステム10の出力を、対象となる周波数における車室内のエンジンノイズとほぼ同じレベルになるように、制限することができるということが理解できる。したがって、たとえばエンジンがアイドリング中である場合、エンジン高調波打消しシステムの出力は、ほとんど聞こえないように非常に低いレベルである。結果として、たとえシステムが不安定になっても、著しく大きいノイズアーティファクトは回避される。したがって、たとえシステムが不安定になっても、現在時々行われているようにシステムをオフにする必要はない。
【0020】
図2および図3は、主として単一のスピーカ打消しシステムに適用される。多くの場合、アクティブノイズ打消しシステムが、複数のラウドスピーカおよび/または複数のマイクロフォンを使用する。複数のスピーカ打消しシステムでは、出力制限は、上述とは異なることがある。複数のスピーカでは、いくつかのスピーカが、建設的にまたは破壊的に加わり、周波数に応じて様々に挙動することがある。各スピーカが、固有の適応フィルタによって独立して駆動されることが可能であること、および/またはノイズレベルが複数のマイクロフォンで監視されることがまた、究極のシステムSPLレベルを複雑にする。このような場合、上述の電圧対SPLテーブルではなく、システムは、あるノイズSPLレベルを打ち消すためにシステムに必要とされる電圧を記録することができる。スピーカが建設的に加わる周波数では、電圧は、単一スピーカに必要とされる電圧よりも小さくなる。スピーカが破壊的に加わる周波数では、電圧はより高くなる。
【0021】
上記は、車室におけるノイズ打消しに関して述べた。しかしながら、本開示は、他の車両場所におけるノイズ打消しにも同様に適用される。システムは、マフラーアセンブリにおけるノイズを打ち消すように設計可能であることが、1つの追加例である。このようなノイズは、エンジン高調波ノイズとすることができるが、当業者には理解されるように、他のエンジン動作関連ノイズとすることもできる。
【0022】
上述したデバイス、システム、および方法の諸実施形態は、当業者には明らかであるコンピュータ構成要素と、コンピュータにより実行されるステップとを含む。たとえば、コンピュータにより実行されるステップは、たとえば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、フラッシュROM、不揮発性ROM、およびRAMなどのコンピュータ可読媒体上に、コンピュータ実行可能命令として記憶され得ることは、当業者には理解されよう。さらに、コンピュータ実行可能命令は、たとえば、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、ゲートアレイなどの様々なプロセッサ上で実行され得ることは、当業者には理解されよう。説明を容易にするために、上述のシステムおよび方法のすべてのステップまたは要素について、本明細書でコンピュータシステムの一部として述べているわけではないが、各ステップまたは要素が対応するコンピュータシステムまたはソフトウェア構成要素を有する可能性があることを当業者はわかるであろう。このようなコンピュータシステムおよび/またはソフトウェア構成要素は、したがってその対応するステップまたは要素(すなわち、その機能)を説明することによって有効にされ、本開示の範囲内である。
【0023】
本開示の様々な特徴は、本明細書に記載するものとは異なる方法で有効にされることが可能であり、本明細書に記載する以外の方法で結合されることが可能である。いくつかの実行について説明した。それでもなお、本明細書に記載する発明の概念の範囲を逸脱することなく、さらなる変更形態が作成される可能性があり、したがって他の実施形態が、次の特許請求の範囲の範囲内であることは理解されよう。
【符号の説明】
【0024】
10 エンジン高調波打消しシステム
12 車室
14 出力トランスデューサ
16 車室伝達関数
18 入力トランスデューサ
20 適応フィルタ
24 モデル化された車室伝達関数
25 正弦波発生器
28 エンジン制御システム
30 負荷制限コントローラまたはプロセッサ、コントローラ
図1
図2
図3