特許第6074106号(P6074106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6074106二重開始及び快速架橋結合EVAフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6074106
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】二重開始及び快速架橋結合EVAフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20170123BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20170123BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/357 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 5/375 20060101ALI20170123BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08L23/08
   H01L31/04 560
   C08K5/14
   C08K5/54
   C08K5/103
   C08K5/07
   C08K5/5313
   C08K5/357
   C08K5/3477
   C08K5/3435
   C08K5/3492
   C08K5/13
   C08K5/18
   C08K5/375
   C08J5/18
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-504480(P2016-504480)
(86)(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公表番号】特表2016-515649(P2016-515649A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】CN2014083889
(87)【国際公開番号】WO2015096484
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】201310739474.3
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515266061
【氏名又は名称】杭州福斯特光伏材料股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金▲萍▼
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−179810(JP,A)
【文献】 特開2005−179400(JP,A)
【文献】 特開2005−029588(JP,A)
【文献】 特表2013−500889(JP,A)
【文献】 特開2004−285141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08J 5/18
C08K 5/00−5/59
H01L 31/00−31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に質量配合比が下記の原料から製造される、二重開始及び快速架橋結合EVAフィルム:
エチレン酢酸ビニル共重合体 100部
フリーラジカル光重合開始剤 0.01〜1.5部
フリーラジカル熱重合開始剤 0.01〜1.5部
架橋助剤 0.5〜10部
粘着付与剤 0.1〜5部
光安定剤 0.01〜5部

前記エチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量は15〜33%、メルトフローインデックス範囲は7〜50g/10分、融点は35℃〜100℃であり;
前記フリーラジカル光重合開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルアセトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−(4−モルホリニル)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−アセトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル、2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−アセトン、及びベンゾイルぎ酸メチルの1種又は2種以上の混合物であり;
前記フリーラジカル熱重合開始剤は、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、及び2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンの1種又は2種以上の混合物であり;
前記架橋助剤は、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシグリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシトリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシペンタエリスリトールテトラアクリレート、2,4,6−トリ(2−プロペニルオキシ)−1,3,5−トリアジン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、プロポキシネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシビスフェノールAジアクリレート、エトキシビスフェノールAジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートの1種又は2種以上の混合物である。
【請求項2】
前記粘着付与剤は、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの1種又は2種以上の混合物である、請求項1に記載のEVAフィルム。
【請求項3】
前記光安定剤は、ビス(2,2,6,6−テトラメチルグリコール−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス−1−デカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オールセバケート、コハク酸と4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの共重合体、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4−ジクロロ−6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジンとの共重合体、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリニル)−1,3,5−トリアジンとの共重合体、N,N’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンとモルホリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの共重合体、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート/メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルセバケート混合物、及びコハク酸と(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンノール)との共重合体の1種又は2種以上の混合物である、請求項1に記載のEVAフィルム。
【請求項4】
前記EVAフィルムを製造する原料には、更に0.1〜1部の紫外線吸収剤及び/又は0.01〜1部の抗酸化剤が含まれる、請求項1に記載のEVAフィルム。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤は2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノンであり、前記抗酸化剤は2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールである、請求項4に記載のEVAフィルム。
【請求項6】
前記EVAフィルムを製造する原料の質量構成は下記のとおりである、請求項1に記載のEVAフィルム。
エチレン酢酸ビニル共重合体 100部
フリーラジカル光重合開始剤 0.01〜1.0部
フリーラジカル熱重合開始剤 0.01〜1.0部
架橋助剤 0.5〜3.0部
粘着付与剤 0.1〜1.5部
光安定剤 0.1〜1.0部
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重開始及び快速架橋結合EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは光エネルギーを電気に転換する設備として、ますます多く研究されており、現在では、太陽電池モジュールの90%以上は結晶シリコンモジュールである。その構造として、透明前基板ガラス、封止フィルム、電池ボード、封止フィルム、及び後基板バックボードを下から上への順で積層させ、その後高温で硬化封止する。太陽電池モジュールの効果封止の時間は通常20〜30分となるため、モジュール封止の効率に大きな影響を与えている。特に人件費がますます高くなる現在では、欧米や日本はほとんど全自動のモジュール封止生産ラインを導入しており、国内でも転換中である。将来、全自動機械化封止は普及する見込みである。投資の比較的大きな全自動生産ラインとしては、その封止効率は特に重要となり、単位モジュール硬化時間が半減できれば投資回収期間も半減できる。
【0003】
現在では、快速架橋結合EVAフィルムの特許も報道されたが、主に新型過酸化物を開始剤とし、同時に架橋剤を導入して、快速架橋結合を実現し、積層時間を10〜15分に短縮することができた。しかし、このフィルムには大量の過酸化物開始剤を添加したため、積層の際、過酸化物が分解して大量の小分子気体を放出し、モジュール硬化に気泡を生じさせ、モジュール硬化工程に比較的大きな影響を与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、二重開始及び快速架橋結合EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)フィルムを提供し、太陽電池モジュールの封止に使用して、現在の太陽電池モジュールの封止速度を大幅に高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記の技術方案を採用した:
二重開始及び快速架橋結合EVAフィルムで、主に質量配合比が下記の原料から製造される:
エチレン酢酸ビニル共重合体 100部
フリーラジカル光重合開始剤 0.01〜1.5部
フリーラジカル熱重合開始剤 0.01〜1.5部
架橋助剤 0.5〜10部
粘着付与剤 0.1〜5部
光安定剤 0.01〜5部
【発明を実施するための形態】
【0006】
上記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量は15〜33%、メルトフローインデックス範囲は7〜50g/10min、融点は35℃〜100℃である。
【0007】
上記フリーラジカル光重合開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−(4−モルホリニル)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル、2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−1−ケトン、及びベンゾイルぎ酸メチルの1種又は2種以上の混合物である。上記フリーラジカル光重合開始剤として好ましくは、2−メチル−2−(4−モルホリニル)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルから選択される。
【0008】
上記フリーラジカル熱重合開始剤は、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、及び2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンの1種又は2種以上の混合物である。上記フリーラジカル熱重合開始剤として好ましくは、1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、及び2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンから選択される。
【0009】
上記架橋助剤は、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシグリセリルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシトリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジメチロールプロパントリメタクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロポキシペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシペンタエリスリトールテトラアクリレート、2,4,6−トリ(2−プロペニルオキシ)−1,3,5−トリアジン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、プロポキシネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシビスフェノールAジアクリレート、エトキシビスフェノールAジメタクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートの1種又は2種以上の混合物である。 上記架橋助剤として好ましくは、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシトリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシグリセリルトリアクリレート、エトキシグリセロールトリアクリレート、プロポキシペンタエリスリトールトリアクリレート、及びプロポキシネオペンチルグリコールジアクリレートから選択される。
【0010】
上記の粘着付与剤は、本分野でよく使用されるシランカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。好ましくはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又はビニルトリメトキシシランである。
【0011】
上記光安定剤は、本分野のEVAフィルムによく使用される光安定剤として、ビス(2,2,6,6−テトラメチルグリコール−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス−1−デカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オールセバケート、コハク酸と4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの共重合体、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4−ジクロロ−6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジンとの共重合体、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリニル)−1,3,5−トリアジンとの共重合体、N,N’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンとモルホリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの共重合体、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート/メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルセバケート混合物、及びコハク酸と(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンノール)との共重合体の1種又は2種以上の混合物である。上記光安定剤として好ましくは、ビス(2,2,6,6−テトラメチルグリコール−4−ピペリジニル)セバケート又は2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリノ)−1,3,5−トリアジンである。
【0012】
上記のEVAフィルムは、必要により、その他のよく使用される機能助剤を添加することができる。上記のEVAフィルムを製造する原料に0.1〜1部の紫外線吸収剤及び/又は0.1〜1部の抗酸化剤を含めることができる。
【0013】
好ましくは、上記紫外線吸収剤は2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノンであり、抗酸化剤は2,6−ジ−tert−ブチル−4−クレゾールである。
【0014】
好ましくは上記のEVAフィルムを製造する原料の質量構成は下記のとおりである:
エチレン酢酸ビニル共重合体 100部
フリーラジカル光重合開始剤 0.01〜1.0部
フリーラジカル熱重合開始剤 0.01〜1.0部
架橋助剤 0.5〜3.0部
粘着付与剤 0.1〜1.5部
光安定剤 0.1〜1.0部
【0015】
本発明の二重開始及び快速架橋結合EVAフィルムは、二重開始系の2種の開始剤の組み合わせである二重開始系と多官能基のアクリレート又はメタクリレート系架橋助剤を使用して、二重開始により硬化を開始させる。硬化過程は非常に速く、硬化過程を10分以内に短縮して、モジュール封止の効率を大いに高めることができる。通常、EVAフィルムの快速硬化は過酸化物を開始剤として採用し、加熱条件で分解させてフリーラジカルを発生させ、EVAフィルムの硬化を開始させる。本発明の特許では、フリーラジカル光重合開始剤と熱重合開始剤とを同時に添加し、かつアクリレート系材料を架橋助剤することにより、硬化過程を更に加速した。アクリレート系材料は熱重合開始と紫外光重合開始に非常に敏感なので、理想的な架橋結合促進材料となる。
【0016】
本発明では、過酸化物開始剤は普通のEVAフィルムより減少したので、その熱分解により発生する小分子も減少し、積層の際の気泡の発生確率も減少し、モジュール封止の良品率は大いに上がる。また、光熱二重結合硬化により、硬化はより均一になり、架橋結合の密度が高く、ガラスとの粘着強度はより高く、耐老化性能はよりよい。
【0017】
本発明のEVAフィルムは、エチレン酢酸ビニル共重合体とその他の助剤を混合、溶解押出、キャスティングすることにより、フィルムに製作される。
【0018】
太陽電池モジュールの封止に使用する場合、本発明のEVAフィルムは、前基板ガラス、EVAフィルム、電池ボード、EVAフィルムを下から上へ順に積層し、紫外線照射室に送入し、20〜60秒照射し、その後バックボードを敷き、積層機に送入し、140〜160℃の条件で5〜10分間硬化する。
【0019】
本発明のEVAフィルムの有益な効果は主に下記のとおりである:本発明は、エチレン酢酸ビニル共重合体に光熱二重のフリーラジカル開始剤と多官能性アクリレート又はメチルアクリレート系架橋助剤を添加し、紫外線と熱プレスの二重硬化工程で太陽電池モジュールを製造する。硬化時間を5〜10分に短縮し、硬化収率が高い。硬化は均一的で、架橋結合密度は高く、ガラスとの粘着強度はより高く、耐老化性能はよい。
【実施例】
【0020】
以下において、具体的な実施例を通じて本発明を更に説明するが、本発明の保護範囲はそれらに限らない。
【0021】
実施例1:
質量分数で、VA(酢酸ビニル)質量含有量が33%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(アメリカのデュポン社EVA150)100部に、開始剤である2−メチル−2−(4−モルホリノ)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−アセトン(成都格雷西亜化学技術有限公司)0.05部を加え、更に開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(百霊威科技有限公司)0.6部、架橋助剤であるトリメチロールプロパントリメタクリレート(上海淳安国際貿易有限公司HC231)0.8部、粘着付与剤であるビニルトリメトキシシラン(日本信越有機シリコン社KBM−100)0.2部、及び光安定剤である2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリノ)−1,3,5−トリアジン(済南邦徳化工技術有限公司)0.1部を加え、かつ均一的に混合した。
【0022】
温度を90℃に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−1と記する。
【0023】
実施例2:
質量分数で、VA含有量が28%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(シンガポールTPC社KA−40)100部に、開始剤である2−メチル−2−(4−モルホリノ)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−アセトン(成都格雷西亜化学技術有限公司)0.4部を加え、更に開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(百霊威科技有限公司)0.4部、架橋助剤であるプロポキシグリセリルトリアクリレート(天津市天驕化工有限公司)0.8部、粘着付与剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(徳固賽化学有限公司KH570)0.3部、光安定剤であるビス−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルセバケート(上海波以爾化工有限公司)0.1部を加え、かつ均一的に混合した。
【0024】
温度を90℃以内に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−2と記する。
【0025】
実施例3:
質量分数で、VA含有量が33%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(アメリカのデュポン社EV150)100部に、開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル(百霊威科技有限公司)0.3部、開始剤である2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(百霊威科技有限公司)0.4部、架橋助剤であるトリメチロールプロパントリメタクリレート(天津市天驕化工有限公司)0.8部、粘着付与剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(徳固賽化学有限公司KH570)0.2部、及び光安定剤であるビス−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルセバケート(上海波以爾化工有限公司)0.1部を加え、かつ均一的に混合した。
【0026】
温度を90℃以内に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−3と記する。
【0027】
実施例4:
質量分数で、VA含有量が26%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(台湾塑膠工業股分有限公司7470M)100部に、開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル(百霊威科技有限公司)0.6部を加え、更に開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(AkzoNobel社)0.8部、架橋助剤であるプロポキシトリメチロールプロパントリアクリレート(天津聯合化学試薬廠)3部、粘着付与剤であるビニルトリメトキシシラン(日本信越有機シリコン社KBM−100)1.5部、光安定剤であるビス−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルセバケート(上海波以爾化工有限公司)0.5部を加えて、かつ均一的に混合した。
【0028】
温度を90℃に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−4と記する。
【0029】
実施例5:
質量分数で、VA含有量が33%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(アメリカのデュポン社EVA150)100部に、開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル(梯希愛(上海)化成工業発展有限公司 )1部、開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(AkzoNobel社)0.4部、架橋助剤であるプロポキシトリメチロールプロパントリアクリレート(天津聯合化学試薬廠)3部、粘着付与剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(南京聯珪化工有限公司KH−570)1.5部、及び光安定剤であるビス−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルセバケート(上海波以爾化工有限公司)1部を加え、かつ均一的に混合した。
【0030】
温度を90℃に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−5と記する。
【0031】
実施例6:
質量分数で、VA含有量が28%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(シンガポールTPC社KA−40)100部に、開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル(梯希愛(上海)化成工業発展有限公司 )0.01部、開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(AkzoNobel社)1部、架橋助剤であるプロポキシペンタエリスリトールトリアクリレート(上海淳安国際貿易有限公司EM2421)0.6部、粘着付与剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(南京聯珪化工有限公司KH−570)0.2部、0.1分の光安定剤である2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリノ)−1,3,5−トリアジン(済南邦徳化工技術有限公司)を加え、かつ均一的に混合した。
【0032】
温度を90℃に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−6と記する。
【0033】
実施例7:
質量分数で、VA含有量が28%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(シンガポールTPC社KA−40)100部に、開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル(梯希愛(上海)化成工業発展有限公司)、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(百霊威科技有限公司)0.01部、架橋助剤であるプロポキシネオペンチルグリコールジアクリレート(上海淳安国際貿易有限公司HC2251)1部、粘着付与剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(南京聯珪化工有限公司KH−570)1部、0.6分の光安定剤である2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリノ)−1,3,5−トリアジン(済南邦徳化工技術有限公司)を投じて、かつ均一的に混合する。
【0034】
温度を90℃に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−7と記する。
【0035】
実施例8:
質量分数で、VA含有量が28%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(シンガポールTPC社KA−40)100部に、開始剤である2−メチル−2−(4−モルホリノ)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−アセトン(成都格雷西亜化学技術有限公司)0.2部、開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(AkzoNobel社)0.2部、架橋助剤であるエトキシグリセロールトリアクリレート(成都格雷西亜化学技術有限公司)0.6部、粘着付与剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(南京聯珪化工有限公司KH−570)、0.1分の光安定剤であるビス−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルセバケート(上海波以爾化工有限公司)を加え、かつ均一的に混合した。
【0036】
温度を90℃に制御し、得られた混合物を押出機で混合・押出し、押出物をキャスティング、冷却、分割、及び巻取りをすることにより、厚さが0.45mmのEVAフィルムを得た。該フィルムをS−8と記する。
【0037】
比較例1:
ブリヂストンS11 EVAフィルムをD−1と記する。
【0038】
比較例2:
実施例1において、0.8部の架橋助剤トリメチロールプロパントリメタクリラート(上海淳安国際貿易有限公司HC231)に代えて、0.8部の硬化剤1,3,5−トリ−2−プロペニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(AkzoNobel社)を用い、他は同じ方法で得られたEVAフィルムをD−2と記する。
【0039】
上記の方法で製造されたEVAフィルム製品の性能指標を、下記の方法で測定する。
【0040】
1.架橋結合度
サンプル製作:サイズが150mm×150mmの厚さ3mmのガラス、EVAフィルム、及び試験用バックボードを用意し、実施例について、ガラス、2層EVAフィルムを下から上へ順に積層し、紫外線照射室に送入し、40WのUVAライトで30秒間照射し、次いでバックボードを敷き、積層機に送入し、150℃の条件で8分間硬化した。比較例1及び2について、ガラス、2層EVAフィルム、及びバックボードの順で真空積層機に入れ、150℃で8分間積層硬化した。硬化完了後、サンプルのバックボードを剥ぎ、ナイフでサンプルの中間から、ガラスから約1gの架橋結合硬化されたEVAフィルムを取って、架橋結合度測定に使用した。
【0041】
架橋結合度の測定方法は下記の通りである:
(1)原理
加熱硬化により架橋結合されたEVAフィルムについて、キシレン溶剤を使用してサンプルの未架橋結合部分を抽出することにより、架橋結合度を測定する。
【0042】
(2)計器設備
容量が500mlの24#すりガラス口付き三口丸底フラスコ。
24#すりガラス口付き回流凝縮管。
温度制御器付き電気加熱スリーブ。
精度が0.001gの電子秤。
真空オーブン。
ステンレスメッシュ袋:サイズが120mm×60mmの120目ステンレスメッシュを切り取り、それを60mm×60mmに折り、両縁をまた内側に5mmほど2回折り、かつ固定し、頂上開口のサイズが60mm×40mmのメッシュ袋に作った。
【0043】
(3)試薬
キシレン(A.R級)。
【0044】
(4)サンプル製作
上記で製作されたEVAフィルムS−1〜S−8、D−1、D−2を使用する。
【0045】
(5)試験過程
ステンレスメッシュ袋を洗浄し、乾燥させ、重量をW1(0.001gまでに精確する)とした。サンプルを0.5g±0.01g採取し、ステンレスメッシュ袋に入れてサンプル包に製作し、重量をW2(0.001gまでに精確する)とした。サンプル包の口を細い針金で封じ、標識を付け、サンプル包を三口フラスコの側口から挿入し、かつゴム栓で封じ、フラスコに1/2容積のキシレン溶剤を入れ、サンプル包を溶剤に浸入させた。約140℃までに加熱し、溶剤を沸騰させ、5時間回流させた。回流速度を20滴/分/に維持した。回流終了後、サンプル包を取り出し、掛けて溶剤液を除いた。次いで真空オーブンに入れ、温度を140℃に制御して3時間乾燥させ、溶剤を完全に除いた。サンプル包をオーブンから取り出し、針金を除いた後、乾燥器で20分間冷却後取り出し、重量をW3(0.001gまでに精確する)とした。
【0046】
(6)試験の結果
式(2)により架橋結合度を計算し、2組のサンプルの算術平均値を取り、0.1%までに精確した。
[式1]
【0047】
2.ガラス/封止フィルム粘着強度
測定方法は、国家標準GB/T2790「接着剤180°剥離強度試験方法フレキシブル材料対剛性材料」を参照した。
【0048】
サンプル製作:サイズが150mm×150mmの厚さ3mmのガラス、EVAフィルム、及び試験用バックボードを用意し、実施例について、ガラス、2層EVAフィルムを下から上へ順に積層し、紫外線照射室に送入し、40WのUVAライトで30秒間照射し、次いでバックボードを敷き、積層機に送入し、150℃の条件で8分間硬化した。比較例1及び2について、ガラス、2層EVAフィルム、及びバックボードの順で真空積層機に入れ、150℃で8分間積層硬化した。
【0049】
100mm/分の速度で引張機において測定し、引張強度数値を記録した。
【0050】
3.耐湿熱老化性能
GB/T2423.3の試験方法で湿熱老化試験を実施した。
【0051】
サンプル製作:サイズが150mm×150mmの厚さ3mmのガラス、EVAフィルム、及び試験用バックボードを用意し、実施例について、ガラス、2層EVAフィルムを下から上へ順に積層し、紫外線照射室に送入し、40WのUVAライトで30秒間照射し、次いでバックボードを敷き、積層機に送入し、150℃の条件で8分間硬化した。比較例1及び2について、ガラス、2層EVAフィルム、及びバックボードの順で真空積層機に入れ、150℃で8分間積層硬化した。
【0052】
試験条件は温度85℃、相対湿度85%、時間1000時間である。
【0053】
試験前後のサンプル黄変指数(△YI)は、国家標準GB2409「プラスチック黄色指数試験方法」に従い、HunterLab ColorQuest測色計を用いて測定され、ASTMに従って分析された。
【0054】
4.耐紫外線老化性能
GB/T19394−2003試験方法により、耐紫外線老化試験を実施した。
【0055】
試験機大小によって、ガラス、EVAフィルム、及びサンプル用バックボードを切り、実施例について、ガラス、2層EVAフィルムを下から上へ順に積層し、紫外線照射室に送入し、40WのUVAライトで30秒間照射し、次いでバックボードを敷き、積層機に送入し、150℃の条件で8分間硬化した。比較例1及び2については、ガラス、2層EVAフィルム、バックボードの順で真空積層機に入れ、150℃で8分間積層硬化した。
【0056】
試験条件は温度60℃、照射波長は280nm〜400nm、照射強度は120kWh/mである。
【0057】
試験前後のサンプル黄変指数(△YI)は、国家標準GB2409「プラスチック黄色指数試験方法」に従い、HunterLab ColorQuest測色計を用いて測定され、ASTMに従って分析された。測定結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
上記の性能測定指標より、本発明の快速架橋結合EVAフィルムは、架橋結合速度が速く、剥離強度が高く、耐老化性が良いなどの特徴があり、太陽電池モジュールの封止用に適している。