【実施例】
【0021】
[実施例1]
図4は、本実施例の3軸相対変位計を不動点側からみた俯瞰図を示し、水平面に対し鉛直方向をX軸、水平方向をY軸、そして、X軸とY軸の交点を原点として、一端が自在継ぎ手に結合されるワイヤ1の長さ方向をZ軸としている。なお、インバー線などからなるワイヤ1の他端は、変位計測ポイントに埋設された杭等の固定部材(図示せず)に連結されている。
【0022】
図5は、不動点側の断面図を示し、
図6は、自在継ぎ手3をワイヤ1の軸線方向からみた図、
図7は、Z軸センサ10Zの要部拡大図を示す。
不動点側の本体2の内部には、X軸、Y軸、Z軸回りに自由に回転できる自在継ぎ手3が設けられており、この自在継ぎ手3に、ロッド4を介して、円筒状のケース5が連結されている。ケース5の内部には、Z軸センサロッド6を軸方向にスライド可能に案内する案内部7が形成されており、この案内部7に、一端がワイヤ1に連結されたZ軸センサロッド6が挿通されている。
【0023】
Z軸センサロッド6のワイヤ1側端には、ケース5の内部をスムースにスライドするバネ受け6aが設けられ、このバネ受け6aとケース5のワイヤ1側に形成された段差部5aとの間に、戻しバネ8が付勢された状態で配設されており、初期状態において、他端が変位計測ポイントに埋設された固定部材に連結されたワイヤ1に所定の張力を与えている。
なお、ロッド4のケース5側端部と、本体2に設けられた円形開口部との間には、ゴムや合成樹脂で形成されたブーツ9が設けられ、防水性を維持しながら、ロッド4が、自在継ぎ手3との連結点を基点としてスムースに円錐運動できるようになっている。
【0024】
ここで、地滑り等により、不動点に対し変位計測ポイントが、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にずれたとき、X軸方向及びY軸方向のずれは、
図6に示されるように、自在継ぎ手3のX軸回りの回転軸3X、Y軸回りの回転軸3Yにそれぞれ取り付けられたX軸角度センサ10X、Y軸角度センサ10Yにより検出される。
一方、Z軸方向、すなわちワイヤ1の長さ方向のずれは、戻しバネ6に抗したZ軸センサロッド6の軸方向の移動に伴い、回転するZ軸変位センサ10Zにより検出される。
【0025】
この実施例では、Z軸変位センサ10Zとして、
図7に示されるように、センサロッド6の外表面に圧接するゴムリングや、Z軸センサロッド6の外表面に軸方向に形成された凹凸と係合する凹凸に備えたリングを備えており、Z軸センサロッド6の軸方向の移動に対しスリップすることなく回転できるようにしている。
なお、X軸角度センサ10X、Y軸角度センサ10Y、Z軸変位センサ10Zとしては、ロータリエンコーダや、ポテンショメータ等を利用することができる。
【0026】
ここで、地滑り等が発生し、X軸角度センサ10X、Y軸角度センサ10Y及びZ軸変位センサ10Zの検出値が、正常時の(θx、θy、Z)に対し(θx+Δθx、θy+Δθy、Z+ΔZ)となった場合を想定すると、次の演算式により、X軸移動量、Y軸移動量、Z軸移動量を演算することができる。
ΔX=(L±ΔL)*(√(sin
2Δθy*cosΔθx
2/(sin
2Δθy*cos
2Δθx+cos
2Δθy)) (1)
ΔY=(L±ΔL)*(√(sin
2Δθx*cos
2Δθy/(sin
2Δθx*cos
2Δθy+cos
2Δθx)) (2)
ΔZ=(L±ΔL)*(√(cos
2Δθx*cos
2Δθy/(sin
2Δθx*cos
2Δθy+cos
2Δθx))−L (3)
なお、上記の演算式において、
ΔX:X軸移動量
ΔY:Y軸移動量
ΔZ:Z軸移動量
L±ΔL:全長±Z軸ポテンショセンサ変化量
Δθx:X軸ポテンショセンサ変化量
Δθy:Y軸ポテンショセンサ変化量
であり、Δθx、Δθyはポテンショセンサからの出力で角度の変化を表し、ΔLはポテンショセンサからの出力で長さの変化を表している。
これらの変化量を上式(1)〜(3)に代入することで、三次元のΔX、ΔY、ΔZの変化(長さ)を表すことができる。
【0027】
この演算を行うブロック図を
図8に示す。
X軸角度センサ10X、Y軸角度センサ10Y、Z軸変位センサ10Zからなるセンサ部10の出力変化量Δθx、Δθy、ΔZは、これらを電圧信号あるいは抵抗値信号を、マイコン等の制御部11内の演算処理部12で処理できるよう、制御シグナルコンディショナー(インターフェース)13を介して信号処理(AD変換)がなされる。なお、14、15、16は、それぞれメモリ、外部PCやLANに接続するための通信機、所定以上の地滑りが発生した場合に警報を発するためのランプ、ブザーを作動させる外部出力機である。
【0028】
出力変化量Δθx、Δθy、ΔZは、ワイヤの風による振動など、地滑り以外の要因でノイズを発生する可能性があるので、センサ部10とシグナルコンディショナー13の間に、低域通過フィルタLPFを介在させ、地滑りと関係のない周期の早い変化を除去するようにしてもよい。
また、この例では、X軸角度センサ10X、Y軸角度センサ10Y、Z軸変位センサ10Zを不動点側に設けたが、これらを計測点側に設け、内蔵するバッテリにより、各センサ及び通信を行うようにしてもよい。
【0029】
[実施例2]
実施例1では、装置をコンパクトにできるが、Z軸方向の検出範囲が戻しバネによりZ軸センサロッド6のストロークに限定されてしまうため、計測し得る変位量が限定されたものになってしまう。
そこで、この実施例では、
図9に示されるように、Z軸の変位量を既存の伸縮計と同様にワイヤの巻き取り量で検出する。すなわち、本体2の円形開口部には、ゴムブーツ9を介してワイヤ案内部17が自在継ぎ手3との連結点を基点として円錐運動可能に取り付けられており、ワイヤ案内部17の一端から挿通されたワイヤ1は、自在継ぎ手3のX軸とY軸の交点に位置するワイヤ案内部17の他端を介して、ワイヤ巻き取り部18に巻き取られている。
ワイヤ巻き取り部18は、コイルスプリング等により、初期状態において、ワイヤ1に所定の張力を与えるようになっており、地滑り等により、ワイヤ1がワイヤ巻き取り部18に巻き取られたり、あるいは繰り出された場合、ロータリエンコーダやポテンショメータ等を利用したZ軸変位センサ10Zにより検出される。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0030】
[実施例3]
この実施例では、X軸回転センサとY軸回転センサを結合した2角度検出ユニットを既存の伸縮計と組み合わせてより低コストを実現する。
すなわち、
図10〜
図11に示すように、既存の伸縮計19をZ軸センサとして使用し、その基台に、X軸回転センサ20XとY軸回転センサ20Yを結合した2角度検出ユニット20を配置し、ワイヤ1を、各センサ20X、20Yのワイヤ案内部に通した上で、既存の伸縮計19に連結する。
【0031】
全体構造の平面図、側面図である
図13、
図14に示すように、2角度検出ユニット20は、その台座が水平面となるよう固定されており、その台座に垂直方向に固定され、ワイヤ1を伸縮計19に向けて平行かつ垂直方向に案内する案内部20aが垂直方向に固定された、第1コの字型部材20bと、変位計測ポイントからのワイヤ1が挿通されるワイヤ案内部20cが垂直方向に取り付けられた、第2コの字型部材20dと、固定部材20bに対してX軸回りに回転可能に結合され、かつ、
図12に示されるように、第2コの字型部材20dをY軸回りに回転可能に連結する中間部材20eとから構成されている。
【0032】
中間部材20eは、
図12に示されるように、略正方形の枠体からなり、各面の中央部に、中心がX軸回転軸に一致するピン20f、20g、Y軸回転軸に一致するピン20h、20iが突出するよう固定されており、
図11に示されるように、第1コの字型部材20bの上面には、中間部材20eのピン20f、20g回りの回転角度を検出するY軸角度センサ20Yが取り付けられている。同様に、第2コの字型部材20dの側面には、第2コの字型部材20dのピン20h、20i回りの回転角度を検出するX軸角度センサ20Xが取り付けられている。
なお、第1コの字型部材20bの案内部20a先端は、ピン20fとピン20gを結ぶ線と、ピン20hとピン20iを結ぶ線の交点に一致するよう配置され、この先端が、X軸とY軸が交わる原点となっている。
【0033】
以上の構成により、
図15、
図16に示すように、既存の伸縮計からZ軸変位量を取得し、その基台に取り付けたX軸回転センサ20XとY軸回転センサ20Yから、X軸角度変位量θx、Y軸角度変位θyを取得できる。
そして、
図17に示されるように、既存の伸縮計からのZ軸変位量ΔLを外部入力回路30を介してシグナルコンディショナーに取り込めば、実施例1と同様に、X軸移動量ΔX、Y軸移動量ΔY、Z軸移動量ΔZを正確に演算することが可能となる。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0034】
[実施例4]
実施例3では、既存の伸縮計19を固設したが、本実施例では、この伸縮計19を固定する台座21をX回転軸及びY軸回転軸回りに回転自在に設けた。
すなわち、
図18〜
図20に示されるように、既存の伸縮計19を固定する台座21は、ベアリング22を介して、第1コ字型部材23の底面に取り付けられ、この第1コ字型23の底面と平行を維持しながらスムースに回転できるようになっている。
【0035】
一方、第1コの字型部材23の両部材23a、23bには、スライド溝23cがそれぞれ設けられ、ボルト23dを介して第2コの字部材24に連結されている。
第1コの字型部材23と第2コの字部材24は、第1コの字型部材23のワイヤ1側の側面が、第2コの字型部材24先端を折り曲げることにより形成したストッパにより、両者が常に垂直を維持するよう連結されており、
図20に示されるように、第1コの字型部材23の両部材23a、23bに形成されたスライド溝23cにより、第2コの字部材24に対し、第1コの字型部材23を上下方向に位置調整できるよう、ボルト23dにより固定される。
【0036】
また、第2コの字部材24は、不動点に対し垂直方向に立設して固定された第3コの字部材25に対し、水平方向のY回転軸回りに回転自在に連結されており、その回転軸は、既存の伸縮計19における計測原点を通過するようになっている。
そして、台座21の底面に垂直方向に固設された回転軸21aにX軸回転センサ26X、第2コの字部材24の両端から延設された回転軸24aにY軸回転センサ26Yをそれぞれ取り付ける。
【0037】
以上の構成により、ボルト23dを緩め、スライド溝23cにより、ワイヤ1が、この計測原点を通るように調整すれば、
図18に示されるとおり、実施例3と同様に、X軸回転センサ26X、Y軸回転センサ26Y、そして、既存の伸縮計19により、X軸移動量ΔX、Y軸移動量ΔY、Z軸移動量ΔZを正確に演算することが可能となる。その他の構成は、実施例1と同様である。